2201. コール
《ネタバレ》 この誘拐計画、巧妙なようで穴だらけなので(大体、誘拐犯が素顔見せてどうする!犯行後被害者は絶対に警察に届けるぞ!) 犯人三人組みのおバカな行動も納得させられちゃいます。ケヴィン・ベーコンの誘拐目的が「あれ」だなんて、ジェニファー・ティリーの『コード』を思い浮かべてしまいました(面白さは雲泥の差ですが)。笑ったのは終盤ベーコンとセロンが乗った車が横転した時ですが、トランクから閉じ込められていた車の持ち主が出てきたことです(ベーコンが駐車場で車を強奪してトランクに押し込んだのですが、観ていてすっかり忘れてました)。他に幾つもほったらかしの伏線があるのに、よりによってこの伏線を回収するとは、実に奇妙な脚本でした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-01-12 01:04:22) |
2202. スパイナル・タップ
《ネタバレ》 大槻ケンヂ大絶賛のカルト・ムーヴィー。架空のロック・バンド『スパイナル・タップ』の全米公演を記録したこれまた架空のドキュメンタリーなのですが、このバンドのキャラがまた良く創り込まれていて実在のバンドとしか思えないリアルさ。実際クリストファー・ゲストらは演奏もできて、フレディー・マーキュリー追悼コンサートにスパイナル・タップとして出演したそうで、もはや『半架空』バンドと言えるのでは。ロック好きならすぐ判るネタが満載ですが、私のようにイマイチその方面に疎い者でも十分楽しめます。冷静に考えれば冗談だと判るネタでも、ドキュメンタリー風に描かれると違和感がないということに驚きました。また演奏される曲の歌詞が下ネタだらけで笑わせてくれます。ただ難点は字幕翻訳で、どう見てもおかしな訳ばかりで何とかしてほしいところです。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-11 15:34:32) |
2203. インテルビスタ
《ネタバレ》 国外の製作映画からは暴利をむさぼると悪評が高いチネチッタ(テリー・ギリアムの『バロン』事件は有名)が設立50周年記念で製作された映画。監督は生涯ほとんどチネチッタで自作を撮ったフェリーニですが、さすがフェリーニだけあって現実と過去と空想が織り交ざった作品になりました。『インテルビスタ』とはイタリア語で『インタビュー』という意味らしいのですが、日本から来たTVクルーの取材を受けて映画を製作する現代と、監督になる前の若き日のフェリーニが記者としてチネチッタで大女優を取材する過去が混然となって進行してゆきます。そして圧巻はアニタ・エグバーグとマストロヤンニが再会する彼女の自宅でのシークエンスで、エグバーグがすっかりフェリーニ好みの巨漢女になってしまったのには驚きました。でもこの二人がツー・ショットで画面に登場するともうそんなことはどうでもよくなり、思わず感涙してしまいました。エグバーグが感動のあまりキッチンで涙ぐむシーンがあるのですが、これは演技ではなく実感情なのではないかなと思います。フェリーニがいわば『ラス前』でこの映画を撮ったことには感慨深いものがあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-01-10 11:26:40)(良:1票) |
2204. 歌え!ロレッタ 愛のために
《ネタバレ》 とにかく一度観てください、シシー・スペイセクの歌の上手いことにびっくりしますから。カントリーは日本では一番なじみがないジャンルですが、ロレッタ・リンは美空ひばり、カントリーは演歌だと思えば判りやすいかも。シシー・スペイセクは13歳のロレッタまで演じていますが、不思議と違和感がないんです。またトミー・リーがいい味出しているのですよ、髪の色が金髪っぽいので始めは彼とは気づきませんでしたが。お舅さんとの約束を簡単に破るところなぞキレまくるいつものトミー・リーかと思いきや、これが奥さんを深く愛してマネージャーに徹するいいキャラでした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-09 20:49:57) |
2205. ガルシアの首
《ネタバレ》 恋人が殺されてからはまるで高倉健主演の東映任侠映画を観ている様な展開で、ウォーレン・オーツの散りっぷりはこれぞペキンパー。ストーリーも確かに凄いけど、登場人物(特に男)の人相がみなごつくて悪人面で、写真でしか判らないガルシアが一番男前みたいに感じるところは皮肉です。ウォーレン・オーツ生涯最高の名演技をご堪能あれ、という感じですね。 [映画館(字幕)] 8点(2010-01-09 12:00:39) |
2206. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月
《ネタバレ》 前作でやめときゃよかったという出来ですね。ストーリーもご都合主義が一段とひどくなって、お約束の噴水でのコリン・ファースとヒュー・グラントの殴り合いぐらいしか笑えるところがないというのは困ったものです。麻薬の密輸エピソードですが、ありゃ女友達は確信犯としか思えない演技だったと思うのですが、あんな落ちで良いのでしょうか… [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-01-07 01:20:28) |
2207. アンダーグラウンド(1995)
《ネタバレ》 この映画の味付けはコテコテのどろソース風味ですが、奇想天外なプロットを重厚な悲喜劇として見せてくれて、やはりこの監督クストリツァは天才です。彼の映画に欠かせない祝宴シーンは三十分に一度の割合で出てきますが、ヨヴァンの結婚式で花嫁が空中浮遊する場面は素晴らしかった。そしてラストでひょうたん島のように河辺が流れだすシーンには、内戦の果てに消滅していったユーゴ・スラビアという国への惜別がひしひしと伝わってきます。本作は自分にとって『奇跡の映画』です。 [ビデオ(字幕)] 10点(2010-01-07 00:02:56)(良:2票) |
2208. コットンクラブ
《ネタバレ》 なんと申しましょうか、これほど登場するキャラのエピソードがバラバラな映画は珍しいのでは。リチャード・ギアとグレゴリー・ハインズのそれぞれのカップルですが、どこに接点があったのかって観終わってもよく判りませんでした。ラストも「なんじゃ、こりゃ」と言いたくなる代物ですし、コッポラはやはり『地獄の黙示録』で才能使い果たしちゃったのだと思わざるを得ません。 [ビデオ(字幕)] 4点(2010-01-06 01:03:58) |
2209. オーシャンズ13
《ネタバレ》 シリーズ三作目は再びヴェガスに戻ってきましたが、ストーリーはネタ切れなので『イレブン』の楽屋落ちみたいなネタばかりで興ざめです。ダイヤ強奪の展開もなんだかとってつけた様な不自然な感じが否めませんね。さすがにパチーノは存在感を見せますが、反対にアンディ・ガルシアがどんどん情けないキャラになってゆくのが悲しい。一作目のガルシアは良かったのになあ。そしてライナスの家族ネタがまた使われるのにはちょっとあきれました。3年ごとに製作されてきたので今年は『フォーティーン』を見せられるところでしたが、バーニー・マックが亡くなっているのでさすがにそれはないでしょう。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-05 01:04:03) |
2210. ブリジット・ジョーンズの日記
《ネタバレ》 レネー・ゼルヴィガーの激太ぶりにびっくり仰天。でもさすが(?)太ってもレネー、セクシーなのでモテナイ30女に見えません!ヒュー・グラントと『国によっては禁止されている』行為までしちゃうなんて、凄すぎます。まあこの映画はラブコメというよりはセクシーコメディだと思って観れば楽しめるでしょう。ブリジットのお母さんも、結構暴走していましたし。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2010-01-04 01:20:04) |
2211. ゴーストワールド
《ネタバレ》 不思議な切ない映画でした。『やりたくないことは判るけど、自分が何をしたいかが判らない』って思春期には誰もが持つ悩みだし、そしてその答えがいつ見つかるかは人それぞれでしょう。ラストシーンは色々な解釈ができるでしょうが、私はイーニドは新しい自分を創るために違う土地に旅立ったと思います。『ゴースト・ワールド』とは彼女たちが住んでいる街のことを指しているのではないかな。始めは似たもの同士だったイーニドとレベッカですが、レベッカがどんどん現実的な、良く言えば大人になってゆく、というよりも性格が悪くなってゆくのが面白い。スカーレット・ヨハンソンの地が出ているようで、なんか演技とは思えないのが可笑しいです。 [DVD(字幕)] 8点(2010-01-03 23:58:24) |
2212. オーシャンズ12
もう突っ込みどころが多すぎて切りがないのですが、シリーズ三作中最低の出来かな。いくらスタイリッシュな映像とカッコ良い音楽で見せられても、全編演技者同士のおふざけと楽屋落ちの連続ではねえ。『ナイト・フォックス』のキャラと行動はまるで安物のアニメに出てくる怪盗そのものですし、そもそも脚本の辻褄がどうも合ってないような気がします。ゼタ・ジョーンズが良かったので、1点プラスです。 [DVD(字幕)] 4点(2010-01-02 11:28:15) |
2213. デス・レース2000年
《ネタバレ》 まず驚かされるのが、登場する五台の車のデザインのショボさで、将に小学生の漫画レベルです。2年後に『ロッキー』で天下をとるスターロンが頭の悪い悪役で出ていますが、彼の車のデザインときたら、フロントグリル正面にでっかいナイフ、ヘッドライトのところにトンプソン短機関銃をそのままくっつけたという抱腹絶倒さですよ。いかにも低予算らしく、全米横断殺人レースという割には山の中や田舎ばっかり走っていますし、結構スピード出してるなと思いきやロースピード撮影の早回しでした。また音楽がひどく安っぽくいのですが、冷静に考えると却ってこの映画のチープなテイストにあっているかなとも思えます。ストーリーは思ったよりトンデモ度が低かったので肩すかしを食いましたが、出てくるねえちゃんたちが無意味に脱ぎっぷりが良いので、5点献上いたします。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-02 11:12:42) |
2214. 日本のいちばん長い日(1967)
《ネタバレ》 本年は『坂の上の雲』がついに映像化されましたが、『坂の上の雲』の行きついた果てがこの映画に描かれた日本だということは悲しくなりますね。反権力・庶民派の岡本喜一が日本の最高権力者たちを主人公とした群像劇を撮ったということは皮肉ですが、終戦前夜に児玉基地から出撃する特攻隊搭乗員たちの幼い顔は、何度観ても泣かされてしまう名シーンです。これはこの映画の価値を損ねるものではないのですが、当時の陸海軍の高級軍人や政治家たちは『戦争の終わらせ方』ということを本当に判ってなかったのだということです。『英霊たちに申し訳がつかない』という情緒的な言い訳を駆使して、惰性で本土決戦まで引っ張ろうとした軍人たちの無能ぶりにはただあきれるばかりです。青年将校たちのクーデター騒動にしても、『国を思う』という言葉とは裏腹に、実際には『戦争に負ければ自分たちの組織(陸軍・海軍)が消滅してしまう、責任を追及される』ことを回避するためだったことに彼ら自身も気がついていなかったのでしょう。戦争はやるからには勝たなければならない、勝つ見込みがなければ戦争をしてはいけないということでしょう。明治の元勲たちはそれが良く判っていたが、昭和の軍人たちは全く理解していなかったのです。 [映画館(邦画)] 8点(2009-12-30 22:03:20) |
2215. バーバー
《ネタバレ》 コーエン兄弟にしては珍しくグロテスクなキャラがほとんどいない映画でした(鬘の詐欺師がちょっとそれらしかったが)。まあそれはそれで良いのですが、このようなお話をわざわざ脚本書いて映画にすることもなかろうに、というのが率直な感想です。主人公の床屋さんは、それまで平凡ながら人生がそれなりにつながっていたのに、ふとしたはずみで自分を試したくて悪事を働いたばっかりに、物事がすべて悪い方に転がるようになり、人を椅子に座らせて商売していた自分が最後には椅子に座って人生を終える。コーエン兄弟はとことん『人生の皮肉』を観客に見せたかったのでしょうが、ブラックユーモアの味付けなしでは後味が悪すぎますね。最後までビリー・ボブ・ソーントンが演じる人物の頭の中が理解できませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2009-12-29 20:24:10) |
2216. フィッシャー・キング
《ネタバレ》 ロビン・ウィリアムスという役者に抵抗感があり彼が主演というだけで今まで避けてきた作品が多かったのですが、本作ではそのアレルギーが払拭された良い演技でした。『呪われた映画作家』テリー・ギリアムが、こんなにハリウッド映画の伝統に則したヒューマンな作品を撮るなど想像もつきませんでした。この映画、前半は1メートルぐらいの位置から仰ぐように撮った映像が多用されていますが、これが中盤以降しだいに目線以上の高さに上がって行くところなど、主要登場人物の心理が投影されているようで良かったです。そして駅の雑踏が突然舞踏会に変わるシーンは、その発想の素晴らしさと見事なカメラワークで映画史に残る名シーンとして記憶されるでしょう。素直に観て良かったなと思える作品です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-12-28 22:47:25) |
2217. リオの男
《ネタバレ》 この映画、監督は狙っていたのでしょうが、はっきり言ってちょっと変です。連続した場面なのに夜がいきなり昼になったり(エド・ウッドか!)、千キロ距離があるリオとブラジリアをオンボロ車で一昼夜で走破したり、『そんなあほな!』と突っ込みたくなるシーンの連続ですが、そのいい加減さが妙にいい味出しているのも確かです。結構危険そうなシーンも軽々こなしている足が長いベルモンドを観ていると、そう、ルパン三世を思い出しますね。そして観たらご理解いただけますが、なんと本作は『レイダース』の元ネタだったのです。ラスト20分は『レイダース』で使われたネタのオンパレードです。ヒロインのフランソワーズ・ドルレアックがわがまま放題のまた変な娘で、笑わせてくれます。フレンチコメディ独特のあくの強い作風なので好き嫌いが別れそうですが、後のアニメやアクション映画に少なからぬ影響を与えた異色作として再評価されても良いのではと思います。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-12-27 13:09:01) |
2218. 百一夜
《ネタバレ》 映画誕生百年を記念した作品ということで確かに映画愛というものは伝わってきますが、それと本作が面白いかというと話は別ですね。途中からムッシュ・シネマのひ孫の偽物というサブ・ストーリーが始まるのですが、まずこのエピソードを挿入する意味が不明ですし話の落ちの付け方もあいまいで良く判らん。全体的にフワフワした出来の悪いヌーベルバーグ風の映画という印象でしょうか。ハリソン・フォードやイーストウッドと言ったハリウッドスターは、出演しているうちに入らないようなニュース映像の断面みたいでちょっと看板に偽りありですね。引用される過去の映画はイタリア・フランス映画が多くて、マルチェロ・マストロヤンニを観ているとフェリーニが無性に観たくなりました。 [ビデオ(字幕)] 4点(2009-12-23 12:57:23) |
2219. 素晴らしき戦争
《ネタバレ》 ソフトが未発売なのでなかなか観る機会がない名作のひとつです。本作はリチャード・アッテンボロー初監督作で、第一次世界大戦をミュージカル仕立てでシニカルかつシュールに描いています。まず出演俳優が凄い!ローレンス・オリヴィエを筆頭に名前にサーとデイムがつく当時の英国演技陣の重鎮が勢ぞろいで、ハリウッドのスターは一人も見当たりません。それまで脇役俳優としてのキャリアしかなかったアッテンボローがこれだけの出演者を集めたことは、彼の監督としての非凡な才能なのでしょう。この作品は政治家や高級軍人が官僚的に戦争を進めるシュールなパートと、庶民のスミス一家が志願して戦場におもむく割とリアルなパートに分かれますが、政治家や将軍たちを例の豪華な俳優陣が演じて兵士たちは無名の俳優が割り当てられているのが面白い。また第一次世界大戦が海辺の遊園地のアトラクションとして表現されるのが斬新です。兵士や庶民の生活は、すべて当時流行した曲の替え歌が使われたミュージカルになっていて、有名な『ティぺラリー・ソング』も使われています。レビュー仕立ての新兵募集イベントをミュージック・ホールで観てスミス一家は志願するのですが、このシーンでは珍しいマギー・スミスの歌が聴けます。これが意外と私にはツボで、『土曜は新兵を男にしてあげる日よ❤』なんて色っぽい声で囁かれたら、ついふらふらと入隊しちゃいますね。まあオールスター映画の通例ですが、ほとんどの俳優はワンシーンの登場で終っちゃうのが非常に残念です。実はTV録画に失敗してラスト20分が映ってなかったので未見なのですが、丘を覆い尽くす戦死者の十字架が映されるラストが素晴らしいシーンだそうです。是非観てみたいものです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-12-23 11:09:29) |
2220. オーシャンズ11
《ネタバレ》 この手の映画は、『七人の侍』みたいに仕事人を集める過程が見せ場ですが、その点が軽視されているので印象が悪い。それに11人の中でキャラがかぶっているのが何組かいるので、ますますストーリーが散漫になってしまいました。ソダーバーグは基本的に小ネタを散らばして映画を撮るのが得意なのですが、こういう大掛かりなお話しには向いていない監督なのかな。ジュリア・ロバーツの歩く姿も確かに変でしたが、アンディ・ガルシアもゴリラみたいに肩ゆすってのし歩いていたのが凄くみっともなかったです。登場キャラの中で一番光っていたのでちょっと残念です。 [DVD(字幕)] 6点(2009-12-22 00:40:21) |