281. カフカの「城」<TVM>
《ネタバレ》 原作未読。うー、カフカをハネケが映画化だもんね。「変身」「審判」しか原作は読んだことがないが、この居心地の悪さは、むしろ予想通り。オーソン・ウエルズの『審判』とは全く違う趣きながら、不条理さ全開。フリーダといい、頭の悪そうな(でも良さそうな)助手の2人といい、まったくもってイラつく存在。しかし、最もイラつくのはK自身。・・・てところを、ハネケはうまく描写していると思う。自分のことしか考えないKが、彷徨い出会う人間たちが浮かべる無表情だったり、嘲笑のような笑みであったり、冷徹さであったり、すべてがKを追い詰めていくところはハネケの底意地の悪さの面目躍如といったところでしょ。そして、あのデッドエンド。ひゃ~、ここまでやられると、文句も言えません。ハネケさん、あなたもエゲツナイお方よのぉ。私はあなたにどこまでも着いて行くぜ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-13 11:00:12) |
282. シルク(2007)
《ネタバレ》 自己陶酔映画ですね。「高尚な作品撮りました」みたいな製作サイドの独りよがりで、見る方はポカ~ン、という感じ。行間読め! というのなら、書いてあるものがしっかりしていなくては、読みようがないんですよ。なぜエレーヌは夫の日本での浮気を勘付いたのか、がこの映画のキモなのに、そこが分からないって、致命的。夫婦のベッドシーンで読み取れってことなんですかねえ・・・。それにしちゃあ、随分、ありきたりな濡れ場でした。なんか、誰々がどーしてこーして、こーなりました! というだけの映画だったような。日本語のセリフも聞き取りにくいところがあったし。唯一の救いは、中谷美紀サマでした。改めて、良い女優さんだと感じました。 [DVD(字幕)] 3点(2009-01-07 14:07:05) |
283. ピンチクリフ・グランプリ
寝正月のひと時、眠い目をして漫然とBSを見ていたら始まったアニメ。オープニングからなんだか「ただならぬ」空気を感じ、ついつい見続けていたら、半開きだったおめめ全開パッチリ! おぉ、なんと素晴らしいアニメーション映画! アニメには疎いけれど、それでも、この作品がどれほど凄いかは分かります。いやぁ、これ、35年も前の作品だった・・・! ビックリです。レースのシーンなど圧巻。アニメであることを忘れます。CGなどなかった時代に、このリアリティを実現させたのには、とにもかくにも驚嘆します。製作に5年・・・、そりゃ掛かるでしょうよ、納得です。NHKもこういう逸品をさりげな~く放映しちゃわないで、予告をもっと入れて、ゴールデンタイムにオンエアしてくれよ、と思いました。たまたま見ることが出来たから良かったけれど、こういう作品こそ、もっと広めてほしいなぁ。ストーリーは単純ながら、おじいさんは温厚かつ天才、かつ勇猛果敢と、非の打ち所のないキャラにもかかわらず嫌味でなく、彼をとりまくソランとルドビクも可愛いことこの上ない・・・。また、エンディングが素晴らしい。涙系ではなく、見ていると自然に顔がニマ~ッとなる静かな感動を覚えます。『チェブラーシカ』も良いが、こちらはまた別次元の良さが光ります。新年早々ラッキーな巡り合わせで、今年は良い年になりそうだ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-01-05 14:34:28) |
284. 幻影師アイゼンハイム
《ネタバレ》 中世~近代ヨーロッパが舞台の映画は、美術的に見て楽しいので好き。音楽もなかなか良いです。内容的には、・・・かなり喰い足りないですが。長い時を経て再会を果たした二人が、また恋に落ちる、にしては、再会の瞬間、互いに見ただけでは気付かないのってどーなのかしらん。アイゼンハイムはあの瞬間ソフィーの名を聞かなければ、二人はそのまま何事もなく終わってたんじゃないかなあ。つまり、互いの引力はその程度だ、ってことなのに、わざわざ皇太子という存在を出すことで、無理やり燃え上がらせちゃった、という感じです。だから、見ている方も、一緒に「落ちる」ことができないのです、二人の恋に。そもそもこれって、予告編がネタバレです。コピーでオチが分かってしまうっていうのは、コピーとしてどうなんでしょ? ま、雰囲気を味わう映画です。 [DVD(字幕)] 6点(2008-12-26 13:24:12) |
285. 追憶(1973)
《ネタバレ》 うぅ、、、これは泣ける映画です。B・ストライサンドもR・レッドフォードも好きな俳優とは言いがたいが、この作品の2人は特別。不器用だけれどひたむきにハベルを愛するケイティはストライサンドだからこそ成り立つ役柄。ハベルも一見ノンポリ優男風だが、バランス感覚に長けた、精神的にヒジョーに大人なイイ男。ケイティに寄り切られてハベルは結婚したのではなく、合わないのを承知でもやはり彼女を愛しており、彼女の強烈な引力から逃れられず結婚に踏み切ったんでしょう。そういう描写だったでしょ? 友人たちとの集まりの中で、ハベルが時折ケイティの口元をそっと手で覆うシーンが、非常に良いです。ケイティのそういうところ、ちょっと難アリだと思うけど愛しい、というハベルの気持ちが、そのしぐさによく出ています。ラスト、ケイティは再婚したと答えるけれど、彼女の生き方から推測すればシングルマザーの可能性の方が高いでしょう。でも、そこは2人とも深く探らない。しみじみと抱き合って別れるのです。あー、なんと心に染み入るステキな映画でしょう。あの有名なテーマ音楽とともに、忘れられないセリフがちりばめられた、素晴らしい映画です。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-12-11 15:46:51) |
286. ぜんぶ、フィデルのせい
《ネタバレ》 つまるところ「子どもは親を選べない」ってこと。んでもって「親が子どもに与える影響は計り知れない」ってこと。子育て中の親御さんが見ると良い映画かも。とにかく、アンナが愛くるしい。ちょっと怒っているような表情が大半なのだが、たまに見せる笑顔がたまらない。まあ、あのお父さんも、所詮は「お坊ちゃま活動家」なので、その後のスペインの急速な民主化・資本主義化に混乱しまくって、ド・ラ・メサ家は結構波乱の歴史を辿ったのではないかと、勝手に想像してしまう。でも、アンナは最終的に自らの意思で転校を選び、新しい境遇へ歩み出したわけで、髪がちょっとだけ伸びて、ほんの少しだけ成長したアンナの新しい学校での俯瞰映像によるラストシーンはとても爽やか。あと、字幕は、文字数制限があるのも分かるが、少し訳がマズ過ぎる。吹き替えで見直すと、多少疑問が埋まる。もう少し工夫して欲しい。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-11 15:09:55) |
287. リング(1998)
これは、ゼンゼン怖くないからダメである。呪いのビデオはよく出来ていると思ったが、主人公は原作どおり男性のまま、高山と元夫婦なんぞにしない方が良かったと思う。原作も、怖いというより、謎に引き込まれる感じではあったが。例のブラウン管から貞子が這い出てくるシーンは見応えあり。でも、怖いかと聞かれると、やっぱり怖くないんだよな。オンエアされるたびに何度か見ているが、最初から怖いと思えなかったので、見るたびに自分の中でパロディー化していくのを止められない。困ったもんだ。 [地上波(邦画)] 4点(2008-12-09 15:44:14) |
288. 巨人と玩具
なんだかなー、このハイテンション・・・。結局、最後までこっちは置いてけぼり状態。セリフ回しが早すぎて、所々、聞き取れないし。わ、わ、わ♪ わーるーどきゃらめる、わ、わ、わ♪ が頭の中をグ~ルグル。でも、これ50年代の作品なんだよね。それがスゴイ。やっぱり増村保造という監督、恐るべし。忘れられたオタマたちに合掌。 [DVD(邦画)] 5点(2008-12-09 15:24:35) |
289. フロム・ダスク・ティル・ドーン
うー、バカバカし過ぎて、コメントする気にもならない・・・。借りたDVDのchapter24だけどうしても再生できなかったんだけど、展開的にゼーンゼン問題なかった。・・・脱力。 [DVD(字幕)] 2点(2008-12-05 15:41:29) |
290. 小さな悪の華
《ネタバレ》 とにかく、出てくる男たちが徹底的に貶められた描写がされており、そのマヌケ振りに笑いを超えて哀れみさえ覚える。とはいえ、オンナの私が見ても、彼女たちの行動はちょっとやり過ぎでカタルシスはないし、鳥の首を絞めたり、放火したり、ってのは、また次元の違う話じゃない? という感じ。終始流れるピアノが、どことなく「背信的な」感じを醸し出している。クリスチャンでない私にとっては「衝撃の問題作!」というほどのものではなかったが、そこそこ印象には残る作品だと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2008-12-04 10:46:27) |
291. ヴィーナス(2006)
《ネタバレ》 むむー、ビミョーな映画。欧米人の場合、かなりのお歳になっても、ラブシーンが汚くならないところがスゴイと思うのですが、ピーター・オトゥールはどうみてもヨボヨボの爺さんで、ちょっとヤバイ。映画の内容云々を語る前に、そこが気になってしょうがない。・・・とは言え、この爺さんは自分から積極的に若い女のコに溺れに行っているところが、むしろ好感を持てます。欲望をひた隠すエロジジイより100倍カワイイ。爺さんをおちょくる小娘役のジョディ・ウィッテガーも、可愛げのない図々しい感じをよく出していて、その後の展開に効いていました。まあ、あの爺さんはあれで大往生ってことでしょう。線香花火の最後のキラメキでしたね。・・・でも、まあ、あまり感動するとかそういう類の映画ではありませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2008-11-21 15:44:51) |
292. それでも生きる子供たちへ
そう、子どもは逞しい。「それでも生きる」生き物なんだよな。逞しい、というより、生きるしかないと思っている。これが、大人になってくると「死にたい」とか「生きてる意味あるのか?」という概念が湧いてくる。誤解を恐れずに言えば、ある種、子どもは動物みたいなものだと思う。動物は、生きるために生きる。自分の生存価値なんて考えない。子どももそう。だから、逞しく、というよりあらゆる手段を講じて生きようとする。この映画の作品群に出てくる子どもも、皆、逞しい。傷ついたり悲しんだりするが、絶望はしていない様に見える。でも、残酷なことに、時間は必ず一定の速度で前に進んでいくんだよな。彼らの今後を思うと切ない。 [DVD(字幕)] 6点(2008-11-21 15:23:20) |
293. クリント・イーストウッド アウト・オブ・シャドー
俳優イーストウッドを愛しているのだが、中でも、70年代の彼(若すぎず老けすぎず)が一番好きである。で、この作品の中では、彼の「俳優」としての側面に主に光を当ててくれていたのが良かった。もちろん、「監督」についても語られているが、私的には、監督イースドウッドはあまり共感できない部分が多いので。俳優としての彼を(勝手に)愛して20年以上だけれど、考えてみれば、彼の人生観が反映される監督作品は軒並みあまり好きではないし、ソンドラ・ロックとの泥沼破局なんかを見ても彼の女性観も多分、私には受け入れ難いものがあるんだろうから、恐らく人間イースドウッドとなると、私は彼のことがあまり好きじゃないんだと思う。でも、私が彼に触れるのはスクリーンを通してのみだし、詰まるところルックスと佇まい(と演技)だけで20年以上愛してきたわけだ。・・・という感慨(?)を、この作品を見ながらかみしめた。Ultimate Collector's Edition、購入して良かった! [DVD(字幕)] 7点(2008-11-20 15:17:06) |
294. マディソン郡の橋
《ネタバレ》 イカツイ体のメリル・ストリープが可憐な花柄ワンピースを当てて鏡を見る姿や、土砂降りの中で髪がモズクの様に額に張り付いたイーストウッドの顔に、役者魂を感じるか、映像的なNG感を抱くか、はたまたロマンを感じるか・・・。まあ、私は、苦笑してしまったクチなんだが、それはこの作品では瑣末なこと。不倫も、中年の恋も、出会ってすぐに恋に落ちるのも、人生にはアリだと思う。しかし、私がこの作品の中で一番許しがたいのは、フランチェスカの「ロバートと一緒に行ったら、私たちは終わり」という思考回路だ。つまり、非現実の時間(=4日間)だからこそ、「素敵な恋の想い出」を喰ってどうにか現実の余生を生きて行けるんだわ、ということを、このオバハンは最初から悟っていたということである。こんな客観視しているオンナが、その4日間を「真実の愛」の様に語っていることが、噴飯モノなわけ。男女の「愛」って、本来そんなキレイなもんじゃないと思うし、そもそも命懸けで愛する気もないのに、何が「ホンモノ」だ! と言いたい。そういう意味では、ロバートの方が、後先考えずに「一緒に行こう」と言うだけ、まだマシだ。彼女の家庭を壊したという罪悪感と一生向き合うことを受け入れる覚悟を無意識のうちにしていただけ、彼の方がまだ「真剣」だったと見える。とは言え、もともと、この原作も私はあまり好きじゃなかったし、メリル・ストリープとイーストウッドで映像化されると聞いたときは、そのベタすぎるキャスティングに思わず笑ってしまったくらい。こういうフランチェスカのような、自分は安全圏にしっかり身をおきつつ非現実な甘い想い出に陶酔している人間が、私は一番嫌いなのである。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2008-11-13 13:41:04)(良:1票) |
295. once ダブリンの街角で
ときどき、こういう映画に出くわす。客観的になっている自分が別にいて、その自分は「割とイイ映画だったんじゃない?」と言っている。しかし、もう一人の自分は、形容しがたい嫌悪感にも似た感じを抱き、どよ~んとしてしまっている。不思議なんだが、自分の中で評価が分かれているのだ・・・。最近で言うと『イン・ザ・スープ』がそうだった。この作品もそう。音楽は、まあまあ聴かせてくれたし、良いシーンも所々にあった(とはいえ、分からないのはロンドンへ逃げていった主人公の男の元彼女。電話で男に「早く来て」とか何とか言っていたが、逃げたくなった男が追っかけてこようとしているのを歓迎するオンナなんて、ヘーンなの)。しかし、何だろう、この何ともいえないスッキリしない気持ちは。こうして書いてきて思うに、どうも、主人公の男の顔が生理的に好きじゃないのと、彼の言動もイチイチ癪に障るものがあり、恐らくそこが一番、私自身この映画に形容しがたい「厭さ」を感じる理由なんだろうな・・・。 [DVD(字幕)] 4点(2008-11-11 15:42:37) |
296. エレンディラ
《ネタバレ》 まー、とにかくキョーレツな映画でした。強欲婆VS美しい孫娘の壮絶な人生。赤茶色の大地に真っ青な空が印象的。映像はどこをとっても美しいのに、お話は極めて悲惨。強欲婆は大量毒入りケーキ(しかも毒々しい色この上ない)をムシャムシャ喰うわ喰うわ。えー? なんで死なないの? 悲惨なはずなのに、苦笑してしまう。なかなかの傑作。蜷川エレンディラを昨年見逃したのがいまだに心残り。望む、再演! 余談だが、この映画のビデオ、字幕が非常に読みにくかったことを思い出す。(字幕改善の上)望む、DVD化! [ビデオ(字幕)] 8点(2008-11-06 14:25:18) |
297. 地上5センチの恋心
大人のファンタジー。ヨン様(古い?)などの「追っかけオバサマ」たちにはとてつもない夢を与える映画かも・・・。 [DVD(字幕)] 5点(2008-11-05 11:06:34) |
298. 譜めくりの女
《ネタバレ》 復讐譚ということは新聞の評で知ってはいたのですが、なんだか想像とはかなり違う方向へ話が進んで意外。劇場に見に行きたかったのだけれど、行かなくて良かった。復讐されるアリアーヌにも、復讐するメラニーにも、共感できず。結果的に、メラニーはアリアーヌの家族を壊すことで復讐を完遂するわけだが、カタルシスもさほどなく、心理的にハラハラさせられるシーンは全くない。これって、こういうジャンルでは致命的。まあ、チェロ弾きのセクハラおやじの足を、メラニーがチェロのピンで突き刺すシーンは、(痛いけど)爽快でしたが・・・。でも、カトリーヌ・フロという女優さんはピアノも実際弾かれており(音は吹き替えかも知れないが)、嘘っぱち臭さがなかった点は良かったかな。あと、85分という短さも。 [DVD(字幕)] 4点(2008-11-05 11:03:12) |
299. ペルセポリス
素晴らしいアニメーションと音楽、これだけで得した気分。・・・といっても、原作を読んでいたので最後まで食い入るように見られたけれど、いきなり映画を見たら、少し散漫な印象は否めなかったかも。原作にはもっと人間臭くて面白い、また悲惨なエピソードてんこ盛りだったのだけど、端折ってしまった感じかな~。私は、やっぱり、マルジの両親がトルコ旅行のお土産としてマルジのために購入したアイアン・メイデンのポスターを、折ってしまったら傷がついてマルジががっかりするだろうと考えた末に、お母さんがお父さんのコートの背に縫いこんで、お父さんがアメフト選手みたいな肩して帰ってきたエピソードは絶対入れて欲しかったんだけど・・・、残念。でも、サトラピ家と彼らを取り巻く人々の知性と先見性に満ちた雰囲気は十分伝わってきたし、なにより、マルジのキャラは原作どおり最高! ってことで、DVD購入決定かな。 [DVD(字幕)] 8点(2008-11-04 15:46:09)(良:1票) |
300. ファニーゲーム
もし、ハネケとの最初の出会いがこの映画であったら、私は、彼のその他の作品を見る気にはならなかっただろうな、と思ったりもする。いや、でもやっぱり見たかな。ウンザリするような不条理劇。あの巻き戻しで、ハネケの底意地の悪さ全開であった。白い手袋に、短パン・・・、この視覚的効果の凄さよ。もぉ~、いい加減にしてくれッ! 見た後、勝手に「あの時、○○が××していたら・・・」などとあれこれシミュレーションしてしまったよ。どんなにシミュレーションしたって、強引にリモコンで巻き戻されるのにね・・・。でも、そうせずにはいられなかったのだよ。ハネケ自身がリメイクしたそうですが、あんまり見る気せず。・・・でも、見ちゃうかな、やっぱり。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-11-04 15:31:06)(良:1票) |