301. アリオン
《ネタバレ》 壮大なオリンポスの国風土記。 神話の世界は、洋の東西を問わず魅力的だ。 しかも主人公はかなりの二枚目。安彦良和氏のキャラクターデザインで、それも二倍増し。 おまけに音楽は久石譲で、映画のスケール感を増すことに一役も二役も買っている。 ゼウスを倒すためにオリンポスへ向かう動機があまりにもパーソナルなものなんだけど、所詮世の中は男と女でできているのだ。 嫉妬に狂ったアテネがレスフィーナを鞭打つ所もなんて人間的。 アリオンを密かに慕うセネカの切ない告白も嫌いじゃない。 ただ、肝心のアリオンの人間が見えてこなかったのが残念。 他のキャラクターが魅力的だっただけに、余計にそれが目立ってしまった。 古き良き日本のアニメーション。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-07-01 21:13:59) |
302. 雲の中で散歩
《ネタバレ》 好青年を演じさせたら、キアヌ・リーヴスの右に出る者はいないのではないかと思わせるほどの爽やかぶり。 ちょっとズルいくらいに、いい奴でカッコいい。 ビクトリア役の女優さんも知的で品位があって好印象。 難点は、二人とも恋愛経験が乏しくて思い込みが激しいこと。 まあこれは多分に脚本に拠るところが大きいのだけども。 若過ぎる二人を取り巻くブドウ農園の人たちが素晴らしい配役。 特にヴィクトリアの母親と、すぐに泣いちゃうメイドが良い。 ロマンスもドキドキ感があるし、家族愛も織り込んで、なかなか欲張りな映画。 ただ、あんなシーンを観ると、年代物のワインは飲むのを遠慮したくなったかな(笑) [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-29 22:18:05) |
303. ホワイトアウト(2009)
これから観る方向けに。 この映画を観る上で、一つ条件があります。 それは、とにかくケイト・ベッキンセールが好きだ、或いは美しい人をひたすら堪能することも映画の楽しみの一つだ、と割り切れる人。 ストーリーはそれなりに起伏もあって、謎解きも楽しめますが、それはさておいて。 私はケイト様をひたすら堪能しました。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-27 08:32:52) |
304. 幸せのレシピ
《ネタバレ》 ケイトがもう少し料理とか私生活でとんがってたら、ニックとの掛け合いがもっと生きたと思うんだけど、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ演じる彼女はそんなにバランスが悪くない印象。姪っ子のゾーイを預かる上で、もっと衝突や葛藤が観たかったんだけど、逆に重たい映画は今観たくないって人には丁度いいドラマ加減かもしれない。 なにせ、アビゲイル・ブレスリンの芸達者ぶりが光る映画。3人の主演の一人としてとっても魅力的。 そして母親を失って食欲を失っているゾーイにパスタを食べさせてしまうアーロン・エッカートが憎いばかりのいい男。 この人、表情も好きだけどやっぱり声がいいんだよね。 さほど波風も立たず、最後は最高のハッピーエンドに。 甘すぎるけど、そんな映画が観たい日もある。 キャサリンの割れた顎と、ふざけた客にキレる演技にスッキリ加点。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-26 13:19:21) |
305. ヴィジット
《ネタバレ》 前科があるシャマラン監督だから、途中まさか宇宙人が乗り移ってる?と思わせる、自らの映画を使ってミスリードする掟破りの展開。 まんまと引っかかったから、母親がそれは両親じゃないって言った時には結構怖かった。 しかし、パソコンのカメラで遠目で写した映像で、そんなことまでわかるものなのかは少し疑問。 血をドバドバ出さないながらも、生理的な嫌悪感で震えさせる手腕はさすが。 オムツで顔拭かれた割に能天気な弟には少し辟易(笑) [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-20 22:11:17) |
306. デンジャラス・ビューティー
《ネタバレ》 サンドラ・ブロックが好きな私には、彼女のイヤミなほどズバズバ言う割に、意外に乙女な魅力爆発の作品ではあるのだが、流石に作りが杜撰過ぎやしませんか。 シチズンなる爆破魔の捜査はほぼ放置されて、FBIの捜査官がミスコンに出るという本来の趣旨が薄れてしまっているし、同僚との恋も、それまでにそんな雰囲気を全く匂わせないもんだから、観ている方もちっとも盛り上がれない。 しかも特技を披露する舞台でのあのお下げの髪型と衣裳にはかなりがっかり。 ちゃんとサンドラをキュートに見せて欲しかった。 配役としては、やはりマイケル・ケインの演技が見応えがあった。彼の出るシーンに関しては、吹替で観た方がより楽しめたのかもしれない。 設定はマイフェアレディ的で面白かったのに、ちょっと残念なポイントが目立つ映画。 サンドラ・ブロックに頼り過ぎたのかなあ。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-06-14 21:19:34) |
307. アトラクション 制圧
《ネタバレ》 とにかく予告編の出来が素晴らしい。 いろんな映画でそうだけど、宇宙人より地球人の方がよっぽど問題が多いのだが、それにしても彼氏の豹変ぶりには少し疑問符がつく作り。 水の造形や異星人のスーツなどは、確かにアバターやアビスに近い。地球人がスーツを着る設定は、まんま第9地区? とはいえVFXは見事な出来栄えで及第点。 600年後に絶滅しないように、今から環境問題に取り組まないと。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-13 19:34:23) |
308. ゆれる
《ネタバレ》 猛が取り戻そうとした兄とは、結局猛自身が勝手に作り上げた虚像だったのではないか。 そのことに勝手に腹を立て、法廷で自分が真実と思い込んでいる吊り橋での出来事を証言したのではないか。 兄のためではなく、あくまで自分自身のために。 7年の空白の後も、猛に変化があったとは思えない。 母が死ぬ前もきっと、自分以外のことは彼にとっては他人事だったのではないか。 この映画で「ゆれる」のは、他ならぬ観ている我々の心ではなかったか? お前も猛と同じ生き方をしてはいないか?と。 とにかく俳優陣の演技が見応えがあった。 オダギリと香川照之はもちろん、伊武雅刀と蟹江敬三の凄みは流石。 そしてまだ端役の新井君。役者としては素晴らしいと感じた。 音楽とカット割も素晴らしく、私が言うのは僭越だが、映画としての完成度が非常に高い。 いい映画を観た。 [インターネット(邦画)] 8点(2021-06-13 08:40:38) |
309. THE 4TH KIND フォース・カインド
アビゲイル博士なる人物を見つけた製作陣に拍手。 予備知識なしにドキドキワクワクしながら観るべき映画。 ただ、音量に注意してご覧ください。 [インターネット(字幕)] 4点(2021-06-13 08:11:01) |
310. ブレイド3
《ネタバレ》 これはもうストーリーではなく、キャラクターを楽しむ映画ではないかと。 ハードボイルドなウェズリー・スナイプスと、おちゃらけたライアン・レイノルズのバランスがなかなか楽しい。 そして若きジェシカ・ビールが抜群にカッコいい。この人ロマンスとかドラマより、こういう役が合ってると思うんだよなあ。 それに、弓を引く、という女性の姿がそもそもポイント高いんだから、ジェシカ・ビールのクールさで魅力も倍増。 主役はほぼジェシカ、という悲しくも嬉しい3作目。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-06-08 22:12:44) |
311. 第9地区
《ネタバレ》 ドキュメンタリー風にこれまでの経緯をスパッと解説。 これならダラダラ説明しなくてもいいし、裏切りってなんだ?というような興味も持たせて一石二鳥。 上手いこと考えたね。 なんで母船への燃料を吸い込んだだけでエビ人間に遺伝子が変化するのか、さっぱりわからないのが問題なくらいで、気に入らない奴を片っ端から熱線で吹っ飛ばす、スカッとしながら意外と胸が熱くなる映画。 しかしこれ、ダメな人は冒頭で観るの諦めちゃうんじゃないかな。エビ人間の生態がリアル過ぎる上に不快な感じ。 敢えてのデザインなんだろうけど、もうちょっと愛くるしくならなかったのかな。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-05 18:19:34) |
312. タイタンの戦い(2010)
《ネタバレ》 マッツ・ミケルセンが最高にカッコいい。 こういう脇役がいると、映画が締まる。 特撮には特撮の味があるけど、CGで作ると動きも滑らかでもはや実写にしか見えない。 難点は神々の会議。 あれ本気で撮っているのかと少し疑わしいレベル。 ゼウスとか完全に聖闘士星矢なんだけど。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-05-31 21:23:02)(笑:1票) |
313. ジャーヘッド
《ネタバレ》 戦闘のこと以外は一切思考を停止し、ひたすら任務を果たす。 訓練の段階から、徐々に一つの個体、マシンとして余計なことを考えさせない訓練がなされるのだなと改めて感じた。 まあそうじゃないと、普通の神経ではとても砂漠に百数十日もいられない。 何のための戦争なんて、だから描く必要なんてない。 ただ、マシンとして戦えばいい。 疑問を持ったら神経をやられてしまう。 ジェイク・ギレンホールは、この映画でもやはり抜群。 観てるのは苦しいが、完全に振り切った演技を堪能できた。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-05-31 21:16:28) |
314. サウンド・オブ・サンダー
これは観る人を選ぶ映画かと。 2005年製作とはいえ、CGはかなりいけていない。 いや、むしろそれを狙ったのではないかと思うほどのレベル。 敬愛するレイ・ブラッドベリ原作でなかったら、映画館で怒っていただろうなと。 ただ、原作を読んだ人なら、よくまああの短編をここまで広げたものだとその点に感心できるかも。 原作に忠実に作れば、おそらく10分くらいのショートムービーにしかならないから、映画化はまず期待できない。 だから、あれこれくっつけて長編にして映画化してくれたことに感謝。 ブラッドベリ先生も寛大な心で許してくれるはず。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-05-29 21:31:56) |
315. コンテイジョン
《ネタバレ》 現在のコロナ禍で観ると、作りがスタイリッシュ過ぎて少々不謹慎に見えてしまうほどの良作。 冒頭、感染拡大の2日目から始まる所がポイントで、感染源探しは途中放棄されたかに見せておいて、妻のデジカメから核心に突き進む。 森林破壊を続ける妻の会社のブルドーザーからコウモリ、豚へと繋がり、料理長との握手を通して彼女自身へ。 それが1日目。 憎いくらいにスタイリッシュだけど、今観ると複雑な思いが交錯するから、作り手としてはいいような悪いような。 それにしても、ケント・ウィンスレットもグィネスも容赦のない扱い。 特にグィネス。 セブンでは首を切断され、コンテイジョンでは開頭されるという運命。 あの絵はかなり強烈だった。NGのないグィネスに拍手。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-23 18:27:02)(良:1票) |
316. ヒトラー 最期の12日間
狂気の男と、その男を崇拝する狂信者たち。 人類史上に刻まれる負の記憶は、そこに端を発している。 その異常性を淡々と描いていく手法も俳優も見事。 後戻りできない悲惨さは、世界共通なのだろう。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-23 18:12:55) |
317. 市民ケーン
《ネタバレ》 バラのつぼみ。 何もかも手に入れた男が、最期に残した言葉の意味を探る旅のような映画。 ラストシーンで、彼が本当に求めていたものが明かされる。 しかし、それはお金では買えないし、そもそも歳取った彼には手に入れられないものだった。 彼はそのことに気づいていたのだろうか。 それとも、代わりになるものをずっと探し続けていたのだろうか。 なんだか、北斗の拳の聖帝サウザーを思い出した。 いや、名作と言われる映画を冒涜するつもりはないので念のため。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-21 21:32:03) |
318. LOOPER/ルーパー
《ネタバレ》 次々と現れる悪党を躊躇なく撃ち殺し、フランスで優雅に暮らすための資金を貯める。 いつかは未来の自分が送り込まれて来ることは覚悟の上、とは言っても、親友が無惨に殺されるのを見れば、自らの生き方に疑問を覚えるのも無理はない。友人役のポール・ダノは恐らく体の末端から少しずつ切り刻まれていったのだろうが、このシーンは本当に悲惨だった。 自分の生き方に疑問が生まれ、世界の秩序を破壊しようとするレインメーカーを作り出さないために主人公が取った行動は、唐突だったが、理解できる。近未来感が映像の中にもう少し感じられたらなお良かったのだが、その点は残念。 ブルース・ウィリスは少しクセが強い気がするが、ジョセフ・ゴードン・レヴィッドはハードボイルドもなかなか様になっていて良い。 そして半分はエミリー・ブラント目当てで観たのだが、彼女の衣装がいちいちツボで文句なし。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-05-20 18:49:55)(良:1票) |
319. パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間
《ネタバレ》 皆さんのレビューにあるように、ケネディ暗殺に翻弄された人たちを描いた、珍しい映画。 いわゆるザプルーダーフィルムの撮影者もその一人。 テレビ中継もない街角のパレードで、偶然暗殺の一部始終を撮影したザプルーダー氏。 その衝撃は凄まじいものだったに違いない。 「彼のように立派な人物が、尊厳のない死に方をしたことが許せない」と憤ったザプルーダーのセリフが非常に心に残った。 そしてオズワルドの兄も、決して弟を見捨てず、自らの責任を全うした素晴らしい人物に思えた。 ケネディが運ばれた救急治療室に、その暗殺犯とされるオズワルドも運ばれるのだが、その時治療に当たった医師たちの胸にどんな思いが去来していたのだろうか。 当時のアメリカの悲しみがいかほどのものであったのかわからないが、亡くなった指導者のために多くの国民が心から哀悼の意を捧げる姿に、羨ましさを禁じ得ない昨今の日本である。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-17 23:21:37) |
320. 別離(2011)
《ネタバレ》 少し退屈かな、と思いながら観ていたら、途中から完全に心を掴まれてしまった。 父の介護だけで済んでいた二人の溝が、夫の裁判でより明確になってゆく…んだけども、そもそもが離婚を決意するような決裂には思えなかった。だから、夫の裁判が決定的な理由ってことになるのかな。 自らの名誉を重んじる夫と、娘の安全を最優先する妻。 ラスト数分のガラスを隔てた二人の距離が、この夫婦がもう元に戻れないことをよく暗示していて、上手い。 そしてこの映画でこの夫婦以上の熱演を見せたのは、娘。 身勝手に思える母親と、保身のために嘘をつく父親だが、娘にとってはかけがえのない両親。 だが、その両親も夫婦として二人揃っていなければ、彼女にとってはダメなところだけ目につく大人なのかもしれない。 父親と暮らすか、母親と暮らすのか、彼女の選択は気になる所だけど、そこは描かず。 セリフのない長めのラストで、観るものを裏切りつつ考えさせる見事な演出。 イラク映画は多分初めてだけど、見応えのある2時間だった。良作。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-05-16 22:38:43) |