321. KT
《ネタバレ》 金大中拉致事件を扱った本作ですが、どうも面白くない。韓国内での政治的イザコザが発端で日本を舞台に韓国人同士で起こした暗殺未遂事件で、罪なき人間が何人も殺されたというわけでもないので、はっきりいって地味。映画内でもこの事件に積極的にかかわった日本人は、一人の自衛官だけ。しかも、関わるまでの流れが強引。 事件背景はほとんど描かれず、金大中が日本に亡命する流れも最初に字幕で流れるだけなので、どうもわかりにくい。人間ドラマと観るには、主人公ですら薄いし、新聞記者、体に傷のあるヒロイン、日本語をしゃべれない在日のボディーガードなども存在意義も深味もほとんどない。 この事件後に日韓の関係がどう変わったかなども描かれるわけではないし、どちらも批判的に描かれるわけでもないのは冷静でいいのだが、熱を感じなく、最終的にアメリカだけを悪者にしてまとめてしまった感もある。 結局何で日本人監督が日韓合作でわざわざこの題材を取り上げたのかが不明。日朝間の数ある根深い問題の中で、この事件を取り上げた以上はもうちょっと観るべきところ、考えさせるべきところを作って欲しかった。やはり色々枷があったのだろうか。 阪本監督のジトっとした重厚な作風は好きなんですけどね。 [DVD(邦画)] 5点(2009-04-12 06:27:33) |
322. おくりびと
《ネタバレ》 もっくんの納棺師っぷりは非常に格好良く、惚れぼれ。納棺師になりたがる若者達が続出することでしょう。給料も良いしっ! さて、内容はと言えば、序盤に少し軽さがあり、わりととっつきやすい映画ではあるんですが、中盤以降は笑いの場面はほとんどありません。山崎努のせっかくの良いキャラクターも物語にそれほど影響を与えていない。チェロ弾きの設定も過剰にもっくんをカッコよく見せていて、一人で外で弾きまくってるシーンの演出はかなり恥ずかしい。 良くも悪くもクソ真面目な映画で手抜きは感じられないものの、意外な展開や面白味は薄く、後半は同じようなシーンの繰り返しは退屈で、ラストの展開は日本の感動映画のお決まりパターンといったところ。 納棺師の仕事を見せるという意味では、綺麗な死体だけを映していて、腐った死体の場合はどう処理するのかなども気になるし、その職業が汚らわしいと言われてしまう側面も見せてくれないと職業差別にもピンと来ないので深みを感じられない。 こぎれいで万人受けする優等生な感じのする映画。 [DVD(邦画)] 6点(2009-04-08 00:34:13) |
323. TOKYO!
一作目、ひとつのカップルが部屋探しをして、いつのまにか不思議ワールドになりますが、映像の拘りも見えて心地は悪くないです。藤谷さんが可愛かったです。 二作目、これホラー? ホラー風シュールコメディを狙ったのでしょうか? 渋谷の歩道橋のシーンはよく通る場所のせいか印象的でしたが、後は全然面白くない…。 三作目、一風変わった世界観ができていて、蒼井優の雰囲気と香川さんの冴えない中年っぷりは流石だし、話としてもまとまっているし、ちょっと素敵でした。 三作目が良かったせいか悪い印象はないですが、二作目が酷かったな。海外の映画監督が日本で映画を撮るという企画自体は面白いですが、日本人監督が悔しがるような刺激作にはなっていない感じです。東京をテーマにしてる割に東京観がステレオタイプかなー。愛を感じません。 [DVD(字幕)] 5点(2009-04-06 00:04:24) |
324. ハンサム★スーツ
《ネタバレ》 見た目のコンプレックスにスポットを当てたソコソコ笑えるコメディ。印象的な色遣いもソコソコの好印象。中盤からの不細工の苦難が描かれるシーンはなかなかヘビーで、身につまされて泣きそうでした。こうなると、もうオチ次第で傑作になりえると期待したのですが後半からの展開がいただけない。 都合の良い事故シーンと、アメリカ的演説シーン、絶対脱げないスーツという一番大事な設定をいとも簡単に棄却するという暴挙。そして、一番やってほしくなかった予想範囲内のラストにがっかり。 北川景子が出番が少ないのはともかく、自分がきれいだから中身を見てもらえないというただの傲慢女で終わってるためラストにもイマイチ喜べない。琢郎には「俺は本江さんの見た目もひっくるめて好きだったのに!」と言ってほしかった。中身至上主義になってしまうと「なんだ結局はキレイごとかよ」と、ひねくれものの僕は思ってしまうのでした。 見た目と中身を合わせて一人の人間だと思うんですよね。あのラストに琢郎が喜んでしまうと、この映画のメッセージもぶれちゃうでしょ。塚地、大島、谷原の三人は面白かったです。洋服の青山さん、試作品でもいいからハンサムスーツ売ってくれ。 [DVD(邦画)] 5点(2009-04-01 00:17:47)(良:1票) |
325. おいしい殺し方 -A Delicious Way to Kill-
《ネタバレ》 元々はテレビ用だったためか、映像は映画のそれでないのが残念だが、全てのシーンに笑いを入れようとする徹底っぷりは見事。軽快な会話の絶妙なずれっぷりに最初から最後まで笑わせもらいました。誰が一番とは言えない、それぞれがぶちぬけてる主演の三人のキャラクターのせめぎあいが素晴らしいし、脇のキャラクターの使い方も巧い。いい加減すぎる人々が描かれるだけあって、いい加減すぎる結末にも気持のよい脱力感。すっとぼけまくったバカサスペンス。 [DVD(邦画)] 7点(2009-03-31 00:03:35) |
326. 助太刀屋助六
真田広之の江戸っ子なしゃべくりが気持ちよい。90分もないシンプルな仇討ち物語はちょっと物足りない。祭囃子風ジャズのBGMは堪らなくかっこよい。晩年の喜八監督が肩の力を抜いて作ったと思われる現代的センスの軽快で粋な小品時代劇。 [DVD(邦画)] 6点(2009-03-31 00:01:39)(良:1票) |
327. パコダテ人
《ネタバレ》 なんでこんなにシリアスなんだ? ある日突然尻尾が生えてきた女の子をとりまく微笑ましく頭を空っぽにして楽しめるコメディじゃないのか? 異端に対する人々の個のない無責任な悪意はシザーハンズを思い起こさせるが、この映画での表現は異様に不快。そんな胸糞悪い展開誰も求めてないって。 そうでなくても、こんなふざけた設定なのに、展開は普通の上に家族愛やらで感動でもさせようとする狙い方がすべってる。笑いどころは全くと言っていいほどないので、宮崎あおいの愛くるしさだけが救いの悪い意味でバカバカしいだけの映画。 [DVD(邦画)] 3点(2009-03-30 23:59:53)(良:1票) |
328. 容疑者Xの献身
《ネタバレ》 ドラマ・原作未見。小説のドラマ化のそのまた映画化というと駄作の匂いがプンプンしますが、評判の良さにつられ鑑賞。本作の場合、ドラマの映画化という側面を控え目にし、小説のタイトルで勝負していることからも意気込みの高さは感じられます。主要人物の描き方が薄いのは気になりましたが、ドラマをみてなくてもしっかりと一本の映画として成立していました。シンプルなストーリーですが、展開の仕方と堤さんのただならぬ雰囲気の力で思いもよらないほど重厚な一本になっていたのに感嘆。 おそらく原作とか観てないと福山の演じる湯川がどんな人物かわからないため、主役なのに漫画っぽいキャラクターが一人浮いているように感じてしまったのは残念。脇の魅力も弱く、堤さんの独り舞台になっていましたが、無償の愛に心震えましたので甘め。 [DVD(邦画)] 7点(2009-03-29 21:01:45) |
329. スカイ・クロラ The Sky Crawlers
《ネタバレ》 大人になれない病気(?)「キルドレ」の子供たちが主人公なのだが、まず絵柄の問題かそのキャラクター達が子供なのかどうかが視覚的にわからないので、自己申告されないとわからないのは問題かと。言われても何歳くらいの外見なのかわからないし…。 また、それぞれがその病気のせいで、どれだけ長い間生きていて、どういうことにどれだけ苦悩してきて絶望してるかが描かれてないし、伝わってもこない。 また意図的にしても誰と闘っているかわからなく、戦う理由もないならば観ている方としても盛り上がれない。中盤過ぎにそういう設定だとキャラクターに口頭で説明させてしまうのも雑に感じたし、特殊な設定・舞台の物語は序盤でその紹介をしてくれなければ、いつまでたってもその世界に入りこめないので、説明されたころには映画への興味を失ってしまっていました。 以上のことから物語としては完全に観客置いてきぼり感が強い。かと言って、美麗に書きこまれた絵柄を楽しむようなものでもなく、空中戦のシーンだけCGというのも多大に違和感があって嫌だ。そのせいで余計に人物がペラペラに見える。すかしたセリフ回しも好きじゃないし。うーむ、惹きこまれない。 [DVD(邦画)] 3点(2009-03-28 19:03:25) |
330. かぞくのひけつ
《ネタバレ》 女癖の悪い親父とその妻と愛人のトライアングルと性病や彼女のことなどに頭を痛める思春期の少年の苦悩が暖かい目線で描かれています。大げさでない日常的な笑いに満ちた生ぬるい世界観が心地よい。キャストも皆魅力的。 こうやって少年は成長していくんだなぁ、と頷きながら観れる地味ながらある意味真っ当な青春映画だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2009-03-26 00:57:16) |
331. アイアンマン
《ネタバレ》 アメコミ特有の根暗ウジウジ青年主人公ではなく、精神的にたくましいオッチャンが主人公とあって、久方ぶりに爽快でド派手なアクション活劇を期待しつつ拝見。じれったい序盤から、いつ面白くなるんだろうとワクワクしながら観ていたら、1時間を過ぎてやっとアイアンマン登場。アイアンマンの大活躍を期待するも、それほどの盛り上がりをみせぬまま、終わってしまいました。社会派サスペンス+ほんのちょこっとのロボットアクション…? 面白くなかったなー。続編ありきなのか? [DVD(字幕)] 4点(2009-03-24 01:47:42) |
332. ショーン・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 序盤から中盤は緊張感のないコンビ芸等が可笑しくてニヤニヤしながら観れました。後半は真面目にゾンビ映画していて、ほどよくスリリングに、ほどよく哀愁のあるシーンなども入っていて、締まりはあります。 徹底したところがなく、もっと笑いに走ってほしい気がしないでもなかったが、細かい伏線などは丁寧。 ゾンビを愛するが故にスタンダードなゾンビ映画の枠内に綺麗におさまってしまっているため、飛び抜けた作品にはなり損ねている気もしますが、その中途半端な真面目さによってしっかりと一つの作品として出来上がっています。安心して楽しめる爽やかなゾンビ映画と言えるでしょう。 「ゾンビーノ」は、ある意味これの続編なんだな。と、繋がっていくゾンビワールドにほくそ笑むのでした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-03-23 00:42:45)(良:1票) |
333. 香港国際警察/NEW POLICE STORY
《ネタバレ》 導入部の恐ろしいゲーム感覚の虐殺のヘヴィーさに面くらいましたが、掴みとしては最高。シリアスすぎて、笑顔のないジャッキーは寂しいがこのガチっぷりにつられ、かなり真剣に観させられてしまいました。落ちぶれた状態から徐々に力を取り戻してくるジャッキーと同様にこちらも話が続くにつれどんどん熱中していくことになります。 顔が良くて金持ちで運動神経が抜群でオタクって、最強じゃないか。こんだけ恵まれてたら親が厳しいだけじゃグレないでしょ、とも思いますが、今までにないタイプの敵役なので、なかなか新鮮。二時間強の尺を一息たりも退屈させないド派手で肉体派のアクションは今まで見た中でもトップクラスの面白さ。こんなの見せられたらそんじょそこらのアクションは見れないっす。 [DVD(字幕)] 9点(2009-03-22 19:16:33) |
334. 秒速5センチメートル
《ネタバレ》 スタンダードなアニメーションとしては申し分ないほど丁寧な絵柄と美しい構図でできていて、見た目には文句のつけどころはほぼありません。しかし、内容はというと全くなんの変哲もない、悪意の全くない、甘酸っぱくほろ苦い恋物語。 登場人物に魅力がなく、やたら安っぽい文学風な独白が多いのもなんだか鬱陶しいし、映像のおまけにストーリーがあるようでした。 ラストの五分くらいは出来の良いミュージックビデオのようでしたが、結局名曲の力を借りてやっと初めて映像に息吹が吹きこまれたような気がしました。 [DVD(邦画)] 5点(2009-03-21 20:45:36) |
335. ジャージの二人
《ネタバレ》 やはり鮎川さんの日本語は素でどこか妙。演技もあまりする気がなさそうだし、こんな人をメインキャストに起用するのはかなりの冒険だったと思います。しかし、自然に割と普通の変人であると思しき彼からは、演技で作られた変人からは出てこないであろう味とおかしみと愛嬌がふんだんに出ております。 激ゆる避暑ムービーなので、真夏の昼下がりに冷房のキンキンにきいた部屋でうとうとしながら見ると良いような気がします。ほどよく楽しかったです。 東京の猛暑の天気予報を見て小さくガッツポーズをするシーンがとても好きです。 [DVD(邦画)] 7点(2009-03-18 11:33:41) |
336. ウォンテッド(2008)
《ネタバレ》 弾丸の軌道を曲げられたり超絶ジャンプしたりするわりに、銃で簡単に死んでしまう中途半端な超人っぷりが微妙。アンジェ、モーガンの無駄使いのような、奥行きも魅力もない登場人物が、妙な組織で盲目的に一生懸命な姿もバカバカしい。異常に過酷な特訓シーンが妙にスポコンで笑えて、回復風呂が気持ちよさそう。意外な展開をみせたがってるストーリーもそれほど意外ではなくハラハラできない。アクションは派手だけど、何かが飛びぬけてるわけでもない。バイオレンス、コメディの要素が中途半端だったり。突っ込みどころはいっぱいあっても、別にぶっとんでるわけでもないし、どうにも熱を感じない。しかし、なんか全体的な中途半端さのバランスが絶妙で、意外と面白かったりするのが不思議。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-15 01:01:21) |
337. ベルヴィル・ランデブー
温かみのあるタッチの絵柄ながらも、キャラクターの姿かたちや部分部分が異様。その世界観に酔いしれることができたら勝ち。 主要キャラクターが全然喋らないのも特徴的だが、中途半端に脇が喋るためバランスが悪い。これだったら、セリフ一切なしでもイケたんではないか。もっとも、僕はセリフが余りに少ない映画を観るとすぐ眠くなってしまうんですが。 犬がうるさかったなぁ。 [DVD(吹替)] 6点(2009-03-09 12:08:35) |
338. ゴスフォード・パーク
《ネタバレ》 でっかいお屋敷に集まった貴族、付き人、メイドたちのなかで繰り広げられる会話と、サスペンス。いくらなんでも登場人物が多すぎる(30人くらい?)ので、最後まで整理しきれずに終わったものの、映像や会話のテンポなど造りが丁寧なので退屈には感じませんでした。1回目なんかは逆に何も考えず、なんとなく見るぐらいが正しい楽しみ方なのかも。殺人事件が起こるのは開始80分後って。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-09 11:42:02) |
339. ドラゴン・キングダム
まさに摩訶不思議アドベンチャーといった感じの世界観と安っぽいストーリー展開に、過剰なワイヤーアクションとスローモーションはせっかくのカンフーを間抜けなものにしてしまっていて、緊張感がどうにもない。なんかアメリカ人が浮いててベストキッドみたいだし。決してつまらなくはないんですが、二人の共演そのものの価値を除いてしまうと凡庸です。 [DVD(字幕)] 5点(2009-03-08 02:16:15)(良:1票) |
340. アキレスと亀
《ネタバレ》 芸術家を題材にした伝記は数あれど、この映画はただ絵が好きで、特別に技術が高い訳でも独創性があるわけでもなく、自分がどんな絵を描けばいいのかもわかってない平凡な男が主人公で、そんな男をここまで真剣かつコミカルに描ききったものは他にないだろう。 監督自らの絵を使ったという劇中の絵の数々はバリエーションがあって素人目には随分面白い。その絵を劇中で辛辣かつ的確に批評するキャラクターがいるのも面白い。 芸術へのアプローチは突き詰めれば、お笑いも同然となり、これを観ていると全盛期の武の命がけのバラエティ番組を思い出し、ニヤニヤしてしまった。やたらと死が身近なのは、芸術をつきつめることのシビアさ、悲しさを表すと同時に滑稽さをも表現しているようにも見える。命をはれるくらいじゃないと話にならず、死など大したことではないのだという気概がなきゃダメなんだ。と。 いい歳して子供作ってまでこんなに金にならないことをやって周りに迷惑かけてるのは本当にどうしようもない。どうしようもないがどうにも憎めない。暖かく見守りながらも甘いものじゃねーんだぞとも言っているような芸術に対する監督の眼差しが感じられます。すべての芸術家を志す人、夢を追う人に観てもらいたい一品。 芸術やら何やらわけわかんないものを追いかけてることよりも、そんな奴を愛する人がいるってことこそが一番幸せなことですよね。誰でもピカソとかでも、一人者でどうしようもない芸術家の方がずっと多いですし。 [DVD(邦画)] 9点(2009-03-03 23:47:56)(良:2票) |