21. エディット・ピアフ~愛の讃歌~
誰もが指摘するように、マリオン・コティヤールがすばらしい。フランスを代表する美人女優さんの1人だと思っていましたが、そんなイメージを良かれ悪しかれ一掃するような迫真の演技でした。特に終盤の老いた姿(といっても40歳代)は、嫌が上にも死期が近いことを感じさせてくれます。人間はこうやって萎れていくんだなあと。 ただし、ドラマとしては今ひとつ。主人公の再現に力が入っている一方、ストーリーらしいストーリーはないというか。だいたい、いろいろな人物が入れ代わり立ち代わり登場し、特に後半は取り巻きのスタッフも大勢いるわけですが、顔と名前を特定できたのはほぼ「マイケル」のみ。私の注意力散漫のせいでもあるでしょうが、1人を除いて誰とも深くは絡んでいない感じがします。そのマイケルの登場も、長い上演時間の一部でしかありません。それだけ孤独な人生だった、という演出かもしれませんが、何か物足りなさが残ります。 それを補って余りあるほど、マリオン・コティヤールがすばらしかったと言えばそれまでですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-08-24 02:59:49) |
22. シャイロックの子供たち
《ネタバレ》 最初に佐々木蔵之介と柳葉敏郎が出てくるあたりは緊張感があって期待しましたが、話が進むにつれてヌルくなります。阿部サダヲはたいへん稀有な役者だと思いますが、出てくるだけでバラエティ感・コメディ感が強くなるというか。なんかうまく立ち回って万事解決するんだろうなあと思っていたら、本当にそのとおり。むしろ予想以上の〝活躍〟ぶりでした。最近話題の「地面師たち」とも設定がちょっと似ていますが、あれほどのバイオレンスではないにせよ、もう少しお金絡みならではのヒリヒリするような緊張感を味わわせてほしかったなと。 [インターネット(邦画)] 4点(2024-08-19 02:29:16) |
23. アンブレイカブル
《ネタバレ》 アメコミと実写の融合という感じでしょうか。もっと合理的に謎が解明されるお話だと思っていた私がアホでした。まあアメコミを〝言い訳〟にすればどんな超人キャラでも成り立つわけで、家宅侵入犯たった1人を成敗するだけで満足せず、その特異な能力を世界平和のために使ってねと思わずにはいられません。 余談ながら、いかにも史実を匂わせるような最後のテロップにも少々イラッと来ます。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-08-16 00:00:17) |
24. 張込み(1958)
《ネタバレ》 「砂の器」と同様、前半から中盤にかけては、ひたすら刑事たちの徒労が描かれます。つまり「張込み」がいかに大変な仕事かがわかるわけですが、それは同時に物語が動くようで動かないことを意味します。見ている側もどっと疲れそうですが、なぜかそうはなりません。本筋とは関係ありませんが、日本の地方都市のあまりにも古い街並みや古い旅館、団扇しかない暑そうな夏など、つい郷愁を誘われる映像が多々あるからでしょう。 それに、「七人の侍」で超絶クールな武士を演じた宮口精二が、この作品ではモモヒキ姿で寝転がったり暑がったり。そんなふつうのオッサン姿が魅力的でした。 で、物語はようやく終盤に動きますが、ここから先はむしろ雑な印象があります。追跡はすぐにバレそうな距離だし、一旦見失っても奇跡的に再発見するし、それまで一緒にかんばってきた宮口精二は急に出てこなくなるし。あくまでも「張込み」の様子を描くのが主で、その後の逮捕劇はオマケみたいなものですかね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-08-13 02:03:28) |
25. プロヴァンスの休日
その昔、『南仏プロヴァンスの◯◯』とかいう本がベストセラーになったことがありました。まったく関心の外だったので立ち読みすらしませんでしたが、おそらくこの映画のようなことが書いてあったのかなという気がします。 豊かな自然に囲まれ、ほぼ善人しかいない村に暮らすすっかり好々爺のジャン・レノ。モチーフとしてはそれだけです。こういうのんびりした暮らしもいいなと一瞬は思います。まして近くにアンナ・ガリエナのような妖艶な女性がいれば、もう言うことなし。しかし結局、数週間もいればきっと飽きて都会に戻りたくなることでしょう。隣の芝生は青く見えるということで。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-08-11 10:37:28) |
26. 96時間
《ネタバレ》 「絶望的状況→一縷の望み→クリア!」のループ。途中で主人公が倒れたり娘が犠牲になったりしたら元も子もないわけで、ハッピーエンドは最初から予想できます。それにしても、よくぞこれだけのバリエーションを考えるものです。それを楽しむだけで十分でしょう。後には何も残りません。 リーアム・ニーソンは、こういう理不尽な犯罪に巻き込まれ、単身知恵と暴力で立ち向かう作品の主演がやたら多い気がします。もはや「リーアム・ニーソン系」と呼んでもいいほど。マーケティング的に成績がいいのか、それとも本人が好きなのかな。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-08-09 23:54:15) |
27. TINA ティナ
《ネタバレ》 ティナ・ターナーを歌手として初めて知ったのは、遠い昔、アメリカのドラマ「アリー my Love」に本人が本人役でゲスト出演したときです。レギュラー出演者たちの憧憬と尊敬に満ちた演出を見て、かの国ではこういう存在なんだなと認識したものです。それはおそらく、ステージ上での圧倒的なパフォーマンスもさることながら、そこに至るまでの過酷な道のりも広く知られていたからでしょう。この作品は、その顛末を克明に表現していたように思います。痛々しくて見ちゃおれんシーンも多々ありましたが。 それから本人が憑依したようなアンジェラ・バセットもいい。おそらくご本人よりずっと細身なので、余計に痛々しく見えます。そしてラスト、本人のライブ映像にすり替わるシーンではついゾゾゾっと来てしまいました。 実はこの方、たしかイェール大学院卒のたいへんなエリートなんですよね。やはりアメリカのドラマ「ER」の最終盤のシーズンで、ER部長を凛として演じられていた姿が印象に残っています。まあ余談ですが。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-08-04 03:39:41)(良:1票) |
28. ローカル・ヒーロー/夢に生きた男
なんかこう、すごく緩い感じ。コメディ風のストーリーとして緩いのはいいのですが、描写そのもののネジが緩んでいるというか、何を言いたいのかよくわからないシーンがしばしば。 ト書きによれば「外から来た買収者に対して地元民は反対どころか大賛成」とのことでしたが、これを事前に知っていなければ、地元民の言動からは理解できなかったかもしれません。それらしいセリフはありましたが、なぜ彼らはそれほど地元を捨てたいのか、カネが欲しいのか、よくわからず。 それから「老人1人が反対」とのことでしたが、その老人の存在も実に中途半端。チマチマ喋ってはいましたが、説得力を感じません。あるいは常にバイクで疾走する人とか、上空を飛ぶ戦闘機とか、意味ありげながら特にストーリーには絡まず。全体として、演出にもう少しメリハリのようなものがあってもよかったんじゃないかと思います。 で結局、「ローカル・ヒーロー」って誰のこと? たしかに景色は見事でしたけどね。 [インターネット(字幕)] 3点(2024-07-31 02:39:16) |
29. REDリターンズ
イ・ビョンホンがいい味出してます。マルコヴィッチも相変わらず。反面、前作同様にヒロインの魅力が今ひとつ伝わってきません。それからレクター博士の劣化版のようなキャラもあまり見たくなかったような気が。 まあ終盤の展開が少々ゴチャついていますが、要するに派手派手なシーンの連続を楽しめれば十分かなと。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-07-30 01:57:45) |
30. 22年目の記憶
韓流映画の過激な暴力描写も「そんなアホな」というストーリー展開もけっして嫌いではないのですが、これはハズレかな。暴力は相変わらずとしても、「アホな」が過ぎる気が。そもそも国策として役者を教育するという設定自体が嘘くさくて、早々に興味が半減。また中盤以降の父子物語の展開も、取って付けた感じというか紋切り型というか。無理やり悲劇に仕立てて泣かせようという意図が見え透いて、ついに興味が全減しました。 [インターネット(字幕)] 2点(2024-07-27 23:48:15) |
31. ブルーに生まれついて
ものすごく地味なお話なので、ジャズやチェット・ベイカーに興味のない人にはあっさりスルーされることでしょう。当方も特に詳しいわけではありませんが、突出した才能を持ちながら挫折したり伸び悩んだりする人生というのは、何ら才能のない者からすれば蜜の味なところがあるもので。 とにかく弱々しくて終始危なっかしい雰囲気を漂わずイーサン・ホークがいい感じ。それを献身的に支える恋人もすばらしい。しかし極度の緊張下に置かれた人が、つい麻薬とか酒とかに逃れたくなる気持ちもわからなくはありません。その弱さこそが人間らしさなのかなと。 トランペットも歌も十分に聞けたので満足なのですが、最後のもっとも重要と思われるシーンだけ、ちょっと描写がわかりにくかったような気がします。そこだけ残念。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-07-24 23:52:40) |
32. モガディシュ 脱出までの14日間
《ネタバレ》 これは傑作。「アルゴ」のソマリア・朝鮮半島版という感じ。南北の問題も絡むので、余計に楽しめます。〝素材〟の多い国はいいですね。大げさな暴力とユーモアはいかにも韓流です。 まあこうなるんだろうなあという予想どおりに進行するわけですが、山場はやはり、最終盤のクルマ4台による突破劇。しかしあれほど縦横無尽に撃たれながら、あの結果というのがすごい。ジェームズ・ボンドもイーサン・ハントもびっくりでしょう。 惜しむらくは2つ。1つは、思わせぶりな終わり方でしたが、その後、彼ら(特に北朝鮮側)がそれぞれ祖国でどういう処遇を受けたか教えてほしかった。史実ベースなので、結果は出ているはず。一説によれば、「転向」を咎められることなく金正日に歓待されたとか。正確なところは知りませんが。 もう1つ、アフリカの地理にも歴史にも疎い私は、「モガディシュ」というタイトルをすぐに忘れそう。これは個人的な問題ですが。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-16 01:43:16) |
33. フォックスキャッチャー
ある意味でスポーツ映画ですが、いわゆるスポ根ものとは真逆。物語はあまりにも淡々と進行します。面白いかと言われれば素直には頷けないし、衝撃の結末にもただただ驚くばかりで、納得感はありません。 しかし、全編に貫かれたピンと張り詰めた緊張感と恐怖感は見もの。ふつう圧倒的な上下関係やパワハラを描くとなると、怒鳴ったり暴力を使ったり、陰謀で貶めたりして屈服させることが多いと思います。その点、スティーヴ・カレルは終始一貫冷静・無表情で、声を荒げることもありません。天井に向けて銃を一発撃つ程度です。それでいて、画面に登場するたびにヒヤッとさせられる。逆らったら大変な目に遭うぞと予感させられる。これが役者としての存在感なのか、それとも演出の妙なのかはわかりませんが、なかなか珍しい感覚を味わわせてもらいました。 ついでに言うと、いつもの明るく饒舌なスティーヴ・カレルを見たくなります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-07-14 01:46:52) |
34. やさしい女
《ネタバレ》 ドストエフスキー原作(未読)ということで期待したのですが、すいません私には意味不明でした。年齢差のある夫婦が倦怠期を迎え、なんとなく関係が冷めきってヨメが自殺する、その顛末を淡々と追っているだけという感じ。だいたいかの文豪の作品にしては、主人公(ダンナ)がスマートすぎるんじゃないかと。ヨメが「スカ引いた!」と思うほど下劣で嫌らしいダンナだったとしたら、もう少し同情なり共感なりできたと思うのですが。まあドミニク・サンダのクールビューティな感じをずっと拝めたことが、収穫といえば収穫でしょう。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-07-10 02:34:20) |
35. RED/レッド(2010)
なーんにも考えずに見れる痛快アクション映画ということで。しかしブルース・ウィリスは当時まだ50歳代。隠居には早すぎるんじゃないかと。年金なんか貰ってないで、世のため人のためにもう少し働きましょうよと。かの国の大統領選なんて80歳代の戦いですからねえ。 しかしこういう映画に出てくるマルコヴィッチの行っちゃってる感、無敵感はなかなか見応えがあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-06-30 20:12:52) |
36. デイ・アフター・トゥモロー
《ネタバレ》 今さらながら初見。自然の脅威に対する人間や文明の無力感が伝わってきます。しかし、氷河期ってこんなに急速かつ極端に訪れて、なおかつ急速に緩和していくものなんですかねぇ。それに時流に乗るように人為的なものだと決めつけていましたが、だとしたら太古の時代から周期的に訪れていた氷河期の説明がつかないんじゃないでしょうかねぇ。まあ映画的には急速かつ人為的でなければお話にならないわけですが。 それはともかく、専門家として対処の陣頭指揮を執るべき主人公が、その職務を放り出し、仲間を犠牲にしてまで息子に会いに行くってどうよと。しかも会ったところで救える手立てはないはずだし。まあ「何よりファミリーが大事」なアメリカ映画によくあるパターンですが、もし主人公が高倉健や三船敏郎だったら、絶対こんな行動はとらないだろうという気がします。どちらがいいという話ではありませんが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-06-26 23:19:44) |
37. 空中庭園
《ネタバレ》 終始一貫して不穏な空気が流れていますが、結局のところ何も起きません。要は些細なサイコサスペンスということで。しかしつまらないわけでもなく、世の中の一部を切り取ってデフォルメした感じ。「思い込み」というフレーズは陳腐に思いましたが、「学芸会」はなかなか秀逸。家庭もそうですが、職場やその他の人間関係も、お互いにわかっていながら白々しく〝演技〟している部分が少なからずあるんじゃないかと。おかげで世の中は円滑に回っているわけで、そう思うとけっこう捨てたもんじゃないなという気がしてきます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-06-23 23:46:04) |
38. ザ・ファン
《ネタバレ》 一野球ファンとして、ロバート・デ・ニーロの気持ちもわからなくはありません。ただしそれはあくまでも前半までの話。ベニチオ・デル・トロに対する実力行使のあたりから、いよいよヤバい奴の本領を発揮されて、共感どころではなくなります。そこから先はホラーというかコメディというか。結局、スター選手に何を求めていたのか、よくわからないまま大団円を迎えてしまいました。 それにしても、この作品のみならず「アンタッチャブル」や「ヒート」や「ケープ・フィアー」等々、悪役のロバート・デ・ニーロには底なしの恐ろしさを感じます。顔色一つ変えず、むしろ微笑しながら人を殺してしまうような。これが役者の存在感というものでしょうか。 ついでに言えば、チンピラ役が定番と思っていたジョン・レグイザモが、意外とインテリ役も似合うことに驚き。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2024-06-04 02:38:04) |
39. 華の乱
要するに与謝野晶子の半生記ということで。いかにも深作監督らしい騒々しいシーンもときどきありましたが、全体的には地味。有島武郎との逢瀬もなんだか中途半端で、あまり燃え上がっているようには見えません。結局、波多野秋子に全部持っていかれるわけで。むしろ与謝野鉄幹の出奔や帰還のほうがよほど真に迫っていました。 それはひとえに、吉永小百合の演技の幅の狭さにあるように思います。この方が汚れ役や背徳な役を演じても、どうにも嘘くさいのです。途中で成田三樹夫の「女はすべて人形だ」みたいなセリフがありましたが、吉永小百合こそ日本映画界の人形だったんじゃないかなと。 それはともかく、最終盤の松田優作と成田三樹夫が絡むシーンは、ストーリーとは関係なく感慨深いものがあります。つくづく、いいコンビだったなあと在りし日を思い出しました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-06-03 01:33:08) |
40. 天国の日々
すいませんただただ退屈でした。景色は美しいけれど、物語としてはひと昔前の昼ドラレベル。いや昼ドラのほうがもっと複雑でドロドロで興味をつないでくれたように思います。 しかも淡々と、きわめて少ないセリフとナレーションで、ほとんど抑揚なく進行するだけ。リチャード・ギアも策士なのか粗暴なのか単に無神経なのかキャラが定まっていないし、サム・シェパードも超イケメンながら農場主として優秀なのか単なるお人好しなのか判別できず。いずれにしても魅力的には見えません。いっそ人間ではなくイナゴを主役にしてくれたほうが、ヒッチコック映画のように楽しめたかも。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2024-05-27 23:03:40) |