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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  くちづけ(1955)
第一話『くちづけ』… いかにも石坂洋次郎原作らしいユニークなボキャブラリーと気取った台詞回しが楽しい。会話の中に『IT(あれ)』なんて単語が出てくるのも映画ファンにとっては一興。青山京子と太刀川洋一が教授(笠智衆)の前でホールドアップする身振りのコミカルさなどは『石中先生行状記』の杉葉子の一場面を連想させる。  第二話『霧の中の少女』…あぜ道、橋の上、温泉街、そして駅のホームを、次女(中原ひとみ)が風のように走りまわる。その軽やかな走り・躍動感がこの挿話最大の魅力といって良い。彼女を始めとする一家の屈託無い笑顔も素晴らしい。小泉博を迎えた夕飯の席、あるいは山の温泉で祖母(飯田蝶子)と姉妹たちが横並びになって「小原庄助さん」を歌うショットの和やかな幸福感。 まるでホークス映画のジャムセッションのような充実感。  第三話『女同士』…キャスティングはいわずもがな。短編ながら、自転車・チンドン屋といったお馴染みの意匠の数々が成瀬映画の刻印として登場する。表玄関を入ると一本廊下、診療室と並んで中村メイ子の下宿部屋といった特徴的な家屋構造もまた然り。 冒頭ではパッとしない彼女だが、自室でくちずさむ鼻歌を上原謙らに何気なく隣室で聞き流され、勝手口での八百屋の青年(小林桂樹)との会話を高峰秀子に廊下で立ち聞きされ、あるいは高峰秀子に日記を読まれるという、空間共有の劇を経ていくことで最後には不思議なほど魅力的なキャラクターへと変貌していく。 嫁入りのために表戸を駆け出していく彼女の姿が非常に感動的だ。 さらに最後。見事に「振り返」って作品を締める八千草薫も実に可愛らしい。 
[映画館(邦画)] 9点(2009-03-06 21:30:42)
22.  コタンの口笛
現地ロケを活かした川辺のコタンの風情が素晴らしい。  隣家の病に臥した老婆のために秋味を密漁する場面での朝もやの美しさ、姉弟が父の遺体と共に朝を迎える場面で窓から入射する陽光の荘厳な様。成瀬組らしい美術・照明・撮影の技能が結集している。  病や怪我や死で横臥した人間を傍らからいたわるように見(看)つめる場面が多く、若い姉弟の悲しみや苦悩を印象的な光のもとに滲ませる演出は本作でも傑出している。  同時代的テーマ重視型の橋本忍脚本との相性は疑問だが、長大な二部構成の児童文学をシンプルにまとめながら、単純な差別・被差別の構図に陥らせない主題提示と脚本構成が巧い。  また忘れてならないのが、北海道出身でアイヌの伝承芸能に造詣の深い伊福部昭による音楽演出の貢献である。アイヌ民具の図柄が描かれた和紙を背景としたメインタイトルをはじめ、要所でその伝統古謡をモチーフとした声楽曲の旋律がリフレインされ、民族の苦難を重厚に浮かび上がらせる。  一方、主人公姉弟を慈しむように流れるピアノ曲の旋律もリリシズムに溢れ清らかで美しい。
[映画館(邦画)] 9点(2009-01-17 22:22:48)
23.  雪の女王(1957) 《ネタバレ》 
透過光のふんだんに使われた幻想的な氷の宮殿や、氷の宝石の光沢、あるいは暖炉の炎の照り返しなど、特殊効果の贅沢な用法に光への意識の高さが窺える。  生命感あふれるカモメやカラスや鹿たちの動きや、主人公の少女の細やかな仕種・動作のアニメーションが絶品だ。(髪を梳かす場面の質感表現の見事さ。旅の途中でお世話になった人々や動物たちに都度丁寧にお礼をするその仕種も大変愛らしい。)  とりわけ特徴的なのは波や風雪の表現の多彩さで、旧ソビエトの風土ならではだろう。日本語が多様な雨の種類を使い分けるのと同様、本作では彼地の特色たる多様な降雪がこだわりをもって描き分けられており面白い。  キャラクター設定だけでなく、映像表現の面でも日本のアニメーションへの影響が多々窺われる作品であると思う。  様々な民族の助けを経ながらの旅といった要素が旧ソビエト的でもあり、大団円が「雪解け」であるのも象徴的だ。
[ビデオ(吹替)] 9点(2005-08-14 23:27:24)
24.  ピカソ-天才の秘密
ピカソの絵画制作過程が、特殊キャンパスの裏面を通して直に画面上に描写される。  モノクロの簡素な描画(スタンダード画面)から始まり、 最後には大掛かりな油彩(シネスコサイズ)にスケールアップして 変幻自在に絵筆が展開される様が非常に圧巻であり、劇的な構成も工夫されている。  中盤では、色鮮やかなキャンパスと対比して色を落とした硬質な画面で 撮影風景が挿入されその手法の種明かしをしてくれると共に、 フィルム残量を示しながらの時間制限のサスペンス要素を取り入れたりと、 『恐怖の報酬』の監督らしい趣向が凝らされている。  最後の油彩制作過程は裏面からのリアルタイムの撮影は当然出来ない為、 表面側からコマを割っての撮影となり必然的に画家の試行錯誤の「間」は 省略されてしまっているのが残念だが、 このクライマックスの画面変化は凄まじい。  完成品の内側に込められた膨大な下書きと手直しの過程。 絵がまさに躍動する。 モーション・ピクチュア=映画である。 
[DVD(字幕)] 9点(2005-03-05 17:52:51)
25.  天使の顔(1953) 《ネタバレ》 
裁判を有利に進めるために、弁護士はロバート・ミッチャムにジーン・シモンズとの偽装結婚を勧めるシーンがある。 すると、次のショットではいきなり病院のベッドサイドで二人の挙式が執り行われているので驚かされる。 これも撮影スケジュール上の都合だろうか、唐突な展開にも思えるが、その大胆な編集が却って二人の危うい関係と末路を強く仄めかすこととなる。  継母の乗る車が土埃をあげて転落するショットと、ジーン・シモンズがピアノを弾くショットがクロスカットされる。 ピアノの静かな調べと、事故の荒々しい轟音の対が見事である。  それが再び反復されるラストの断崖のショットもさらに凄惨さを増す。事故と入れ替わりで屋敷に到着するタクシーの静けさが余韻として効く。
[DVD(字幕)] 8点(2016-12-08 00:00:05)
26.  グランド・キャニオンの対決 《ネタバレ》 
S字のカーブを華麗にワインディングしながらの序盤のカーチェイスが 遠心力に抗しながらの高速・水平アクションであるなら、 クライマックスのケーブルカー上の格闘は 低速運動とブレーキングによる振り子運動の遠心力と重力とに抗うアクションだ。  とりわけそのクライマックスは、空撮ロケによるロングショットと、 スタジオ撮影の近景ショットとのカッティング・イン・アクションが非常に絶妙で、 グリーンのドレスを纏ったヴィクトリア・ショウが開閉ドアと共に 外側に煽られるスタントなどをはじめとして巧みに編集されており、 一連のアクションの流れがまったく滞らない。  人物落下を捉えた空撮ショットはまさに息を呑む。  それらのアクションシーンは勿論のこと、 グランドキャニオンの雄大な俯瞰・人物配置いずれにおいても シネマスコープサイズを効果的に使った構図がいちいち決まっており素晴らしい。  廃鉱となった鉱山町を見下ろす高台に腰掛け、 ヴィクトリア・ショウの思い出話に耳を傾けるコーネル・ワイルドのシーンの 静かな叙情もいい。 
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 8点(2014-11-16 21:56:45)
27.  条理ある疑いの彼方に 《ネタバレ》 
法廷内に据えられたテレビカメラが、審理の模様を中継している。 米国ならではの光景だ。 被告席に座るダナ・アンドリュースは彼に向けられたカメラを正面からじっと見据える。 彼を追い詰めていくのは、自らが捏造した状況証拠だけでなく、 マスメディアのレンズでもある。 『暗黒街の弾痕』のラストで、ヘンリー・フォンダを捉えるライフルの照準器のように。  映画のラスト、奥のドアへと退出する彼に、カメラのフラッシュが追い討ちをかける。 彼に浴びせられる、その唐突な白光が容赦無い。  予断を煽る新聞のセンセーショナルな大見出しや 儚く灰となる、証拠写真のネガ。  そこにメディアの危うさもまた浮かび上がってくる。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-01-25 23:56:24)
28.  ヨーロッパ一九五一年
ネオリアリスモの作品においては、 単に荒廃した街のロケーションが映し出されるだけではなく、 そうした光景を目撃する人々もまた映し出されているということを喝破したのが、 ジル・ドゥルーズ。  目撃する者が写し込まれているからこそ、 その映画の情景はより生々しく強度を帯びるという分析である。  この映画でも、 無機質な工場のラインを、川辺の貧困家庭を、低所得者の安アパートを 目撃するイングリッド・バーグマンの表情が写し込まれることで、 彼女の視線に擬えて捉えられた情景はより印象深く、迫真のものとなる。  そして映画のラストにおいて、 バーグマンもまた子供たちの見上げる視線によって目撃の対象となることで、 その表情のクロースアップは一段と映える。  ノワール風の夜の照明も含め、全体のムードはペシミズムを漂わせながらも、 ラストの微笑の聖性と、ジュリエッタ・マシーナの快活さ、そして子供達の純真さに ロッセリーニのオプティミズムが滲む。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-06-22 23:58:33)
29.  ひろしま(1953)
敗戦から7年。 GHQによる映画検閲の廃止に伴い、原爆被害の言説に関する厳しい規制がようやく解かれ、新藤兼人監督の『原爆の子』と、本作『ひろしま』が製作公開される。  アピールの形式はそれぞれ異なるが、どちらの作品の画面にも表現の自由を束縛されてきた鬱憤を晴らさんとする作家の情熱と、「記録すること」への意思、そして犠牲者への想いとが尋常でない強度で充溢している。  それを支えたのが、当時第二の黄金期を迎えていた日本映画産業の充実したスタッフワークだ。  3分弱のシンボリックなカットで被爆の状況を表現した『原爆の子』に対し、本作で表象された被爆の図は、美術セットも衣装もメイクも、そして芝居も現在に至るまでに作られた原爆映画の中でも最も凄惨で、迫真的で、生々しいものだろう。 それだけに、戦争犯罪者に対する怒りと糾弾は直截的だ。  が、本作が指弾するのは、原爆投下者だけではない。 「何故か」当日空襲警報を出さず、新型爆弾の情報隠蔽を画策した軍上層部の棄民体質。 過去の痛みを忘れ、次なる朝鮮戦争特需へ向かおうとする世。 原爆症に対する無知。  現在からすれば、「8年しか経っていない」1953年だが、当時からすれば記憶の風化に対する危機感、切迫感が相当にあった事が映画の語りからは伺える。  硬直した作劇と台詞が貶しどころではあるが、その愚直さゆえに止むにやまれぬ思いが 伝わるのも確かだ。 原発事故一年後の現代日本とを重ねずにはおれない。  
[ビデオ(邦画)] 8点(2012-05-29 21:31:54)
30.  心のともしび
『ジョニー・べリンダ』で口と耳の不自由を演じたジェーン・ワイマンが、本作では目の不自由を演じる。  宗教的主題という点でも通じており、本作では神格化された高徳の医師は表象されることがない。  ストーリーは通俗的ながら、屋内の人物に影を濃く落とすラッセル・メティのローキー画面の艶によってヒロインの失明のドラマと相乗させ、しっかりと映画にしている。  特に舞台をスイスへ移して以降のホテルのシーンは、暗がりの中にランプの灯りやヒロインの衣装のワインレッド、ライラックの青紫がよく映えて艶めかしい。  前半の湖畔のロケーションも良いが、単調になりがちなセット撮影パートも背景奥に窓外の風景を採り入れた多層的な構図によって画面を充実させている。  クライマックスの手術室上方のガラス窓に、執刀するロック・ハドソンの反射像と、それを見守るオットー・クルーガ―の像が重なり一体化するショットがその白眉だ。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-04-30 23:37:42)
31.  ギターを持った渡り鳥
雄大な山肌を背にした一本道を荷車が往くファーストショットから素晴らしすぎる。 灌木が疎らに散らばる平原。あたかも演出されたかのような雲の表情。それはいかにも北米西部の荒野の風情だ。函館方向と大沼方向を示す道標から、背後の山が北海道大沼の駒ケ岳とわかる。  続いて函館山から俯瞰した市街、その夜景、そして歓楽街の街路へと画面は移り、バーの店内ではアメリカ人らしき船員らが揉めている。そのバーの長いカウンターテーブルの美術がまた彼国風でいい。 そこへ至る一連の流れも鮮やかだ。  映画は港の倉庫街、連絡船乗り場、湾内の堤防、函館独特の坂道などを奥深いパースを用いながらシネスコ画面を目一杯使って的確にフレーミングしてみせる。  とりわけ、序盤で通りがかりの子供のために風船を買ってやる小林旭の、橋を使った縦構図のロングショットなどは絶品だ。  洋上の船の荒々しいローリングも素晴らしく、ロケーションの魅力が全編に亘って存分に詰まっている。 その揺れる船上で対決する小林旭と宍戸錠も相当なタフであり、殴り合い主体の擬斗シーンもカットを割ることなく、持続的なアクションを当人が見事にこなしている。  ビリヤード台を挟んだ二人の、因縁の対決の瞬発性。 主人公の過去を数ショットに留め、多くを語らない経済性。 シンプルな物語を効率よく語りながら、主題歌のメロディを明確に印象付けてしまう洗練された技能。  それらが、充実しながら無駄のない77分を創り出している。 
[DVD(邦画)] 8点(2012-02-26 21:51:53)
32.  殺したのは誰だ
長廻しやクレーンショットと共に、深い奥行きで捉えられた四谷・銀座界隈のロケーションが生きている。  通行人を危うく轢きそうな勢いでストップする自動車のアクション、小林旭らの乗った自動車の後部座席から進行方向を捉えたヌーヴェル・ヴァーグ風ショットの瑞々しさも眼を瞠る。  菅井一郎と山根寿子が川端でかき氷を食べるシーンの背後に落ちる木漏れ日の繊細な揺れ。 そして渡辺美佐子を後部座席に乗せ菅井が運転する車のフロントガラスを雨滴が打ち始めるショットの何とも形容し難い叙情が素晴らしい。(そこに静かに流れてくる伊福部昭の音楽)  屋内シーンでも背景の窓外には街路の往来が映し出され、屋内の暗がりには屋外から入ってくる反射光や雨垂れの影などが常に揺れている。  いずれもキャメラマン姫田真佐久による、作為を感じさせない作為による光の見事さだ。  反逆光気味のいわゆる「レンブラント・ライティング」が創り出す人物の陰影の厚みもドラマの悲劇性に合致している。  また、居酒屋に住まう蠅、鼠、蜘蛛のインパクトや、ビリヤード場に出前を届けに来た少女が掛け金の札束を思わず覗きこんでしまうさりげないリアクションなど、わずかな登場シーンながら印象的な身振りを見せる端役の配置も豊かだ。 
[CS・衛星(邦画)] 8点(2012-02-20 22:24:43)
33.  毒婦高橋お伝
時計台からクレーンダウンし、活気ある明治の街並みを再現したオープンセットを捉えるファーストショットから引き込まれる。  神社の鳥居と石段、貸間、長屋の風情など、いずれのセットもぬかるみや汚しが絶妙に施され、見事な出来だ。(美術:黒澤治安)  そのセットに配された襖、天窓、鏡が、狭い路地裏と共にフレーム内フレームとしてドラマ効果を発揮しており、また坂道のロケーションや俯瞰を多用したセット撮影との組み合わせの妙とも相俟って、明治の風俗が立体的に浮かび上がっている。  『無法松の一生』的な人力車のリズミカルな車輪の回転運動は日傘の回転へ、そして横浜篇の賭場のルーレットへと流転し、浴槽や川面の光の揺れや暖炉の炎、簾、雨垂れの反映といった様々な揺らぎがメロドラマを彩る。  女性、母親、そして復讐者としての多面的表情を見せる若杉嘉津子の横顔を捉えるショットの官能性もまた素晴らしく、『東海道四谷怪談』コンビの前哨としても納得の出来栄えだ。
[DVD(邦画)] 8点(2011-10-23 20:46:21)
34.  マンハッタンの二人の男 《ネタバレ》 
ネオンが輝く夜の街路を緩やかな縦移動で捉える冒頭からして、ニューヨークの街そのものが映画の主役といって良い。  地下鉄内のメルヴィル自身を映し出すゲリラ的な撮影スタイルに、摩天楼の背景とアパートベランダの男たちとを同格で捉える構図に、つまりは人間と街の空気をまるごと捉えようとする画面自体に、アメリカ狂らしい「街」への偏愛が滲んでいる。  メルヴィル自身が監督・脚本・主演のみならず、撮影までこなしているのもその証左だ。  深夜のマンハッタンを中心にラストの明け方の街路に到るまで、屋外シーンは生々しい感覚と魅力に満ち、混沌としている。  一方で、病院内で面会を強行するシーン、女優のアパートで真相を知るシーンといったセット撮影での静かな緊張感も陰影の深い撮影によって印象強い。  さらには聞き込み先の録音スタジオ、ダイナー、バーの各所で効果的に採り入れられるジャズ演奏も、相乗的にノワールムードを盛り上げている。 
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-07-17 19:03:56)
35.  秘められた過去 《ネタバレ》 
ウェルズが監督を始め、製作、脚本、衣装、美術、編集と多才ぶりを発揮。 ロケーションもスペイン、フランス、ドイツ、メキシコと幅広い。  港湾シーンの影の乱舞や、天井を取り込みながらウェルズの威容を強調する不安定な斜め仰角ショットに凄味がある。 とりわけ、船のローリングに合わせて背景セットと手前の人物の揺れをずらす効果は絶大で眩暈すら誘う。  中盤までは回想形式の叙述でありながらも、ジャン・ブールゴワンから引き出されたそのノワールスタイルの暗黒画面によって醸しだされる切迫感がただならない。  『市民ケーン』的な謎解きのドラマに、古城での仮装パーティの喧騒では怪奇映画ムードすら加わって映画的スリルは多彩だ。  クライマックスは天井のスピーカーを通した娘と父との、視線の交わらない対話。俯瞰と仰角の切返し編集、そしてノイズが悲劇性を強調する。
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-05-21 21:01:13)
36.  人生模様(1952)
O・ヘンリーの有名短編を原作とするオムニバス5話。各々20分弱の短編だが監督はFOXを代表する錚々たる顔ぶれである。  第一話「警官と賛美歌」:チャールズ・ロートンの傘ナイスキャッチと空振りキックは抱腹絶倒。その驚愕の反射神経ととぼけた表情のアンバランスが絶妙だ。  第二話『クラリオン・コール』:鏡像を使った演出。そしてギャング役リチャード・ウィドマークの憎々しい悪役像の魅力。  第三話『最後の一葉』:雪と強風の実感描写、ドアの開閉を契機とした場面転換が見事。美術商と画家の無言のやりとりのさりげさが良い。  第四話:『赤酋長の身代金』:子供に翻弄される誘拐犯の表情のリアクションが可笑しい。人間と熊が共演するショットのハラハラする面白さはハワード・ホークスの真骨頂。  第五話『賢者の贈り物』:主演(ファーリー・グレンジャー&ジーン・クレイン)の若夫婦が抱き合うツー・ショットの至福感。原作が豊かに膨らまされ、貴金属店の主人の粋な計らいと帰り道での募金というオリジナルエピソードが、ささやかながら情話を巧く盛り上げている。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-01-03 22:30:00)
37.  暗黒街の女 《ネタバレ》 
シド・チャリシーに危害を加えることを仄めかしてロバート・テイラーを脅迫するリー・J・コッブの凄みに呑まれる。 彼が裏切り者を容赦なく滅多打ちにして粛清する様は、後の『アンタッチャブル』に受け継がれたのだろう。 その彼らのアジトの窓外を高架鉄道が走り、その騒音が響いてくる緊張感も『ゴッドファーザー』でより効果的に活かされただろう。  ショウガール役:シド・チャリシーはカラフルな衣装だけでなく、そのダンスも艶めかしい。
[ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2016-10-26 23:46:06)
38.  黒い牡牛 《ネタバレ》 
ダルトン・トランボの偽名、ロバート・リッチのアカデミー最優秀ストーリー賞受賞で有名だが、 ジャック・カーディフ撮影の蒼空と積乱雲が鮮やかに映えてより印象に残る。 様々な動物たちの駆け回る雄大な放牧地から、後半は車が走り回るメキシコ市内へ。 クライマックスの闘牛場はさらに華々しい色彩に彩られ、悲壮を引き立てる。  少年が間一髪で牡牛を救うものと思いきや、さにあらず。 大統領に嘆願するため街中を彷徨い歩く少年と、闘牛場を駆けまわる牡牛が対となるが、 牡牛自身の尊厳と勇敢が勝利する、というストーリーがやはり泣かせる。 二人が寄り添いながら出口へと向かうシルエット、そのラストショットが素晴らしい。
[ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2016-08-25 23:59:43)
39.   《ネタバレ》 
今井監督初のカラー作品だが、監督本人が語るように色彩を殊更に誇示するような画面にはしていない。 村祭りの場面などは華やかな人工色が彩るが、あくまで霞ヶ浦の水面や青空、木々の緑など自然物の色彩を鮮やかに映し出している。 とりわけ、大きな帆を張った帆曳船の出漁シーンの情景描写は素晴らしい。  米というタイトルながら、中心となるのは土地がないため半農半漁によって生活する零細農民達であり、その為にここで描写されるのは 米作と湖上労働である。  物語ではなく、農村の四季と労働に重点を置いて点描していくスタイルによって、今現在ではもはや見ることも出来ない様々な農機具や 機織り機などが活躍しており、それが情趣を伝えるだけでなく貴重な映像記録ともなっている。  出演俳優たちの語る方言もまたいい味を出している。
[DVD(邦画)] 7点(2015-11-23 23:57:33)
40.  第五福竜丸 《ネタバレ》 
序盤のマグロ漁の実録シーンはハワード・ホークスの『虎鮫』には劣るものの、瑞々しい活気が画面に漲って素晴らしい。 甲板上で頭を打擲され解体されていく鮫がのたうつ生々しさは、後にベッド上でもがき苦しむ宇野重吉の姿とも重なるだろう。  被曝までの約20分間で描写される船員たちの生活ぶり・仕事ぶりが丹念でいい。  被曝の瞬間、無音の中に白い閃光が画面を覆う。その数秒後に轟音と爆風が船を襲う、という描写が迫真である。 白い灰が降る中を滑る福竜丸の合成ショットが不気味だ。  前半の動に対して、静の際立つ後半、米国側調査団と日本側医師団との問答を通訳が介す。 その事務的口調の冷徹な響き。  宇野らの柔和なキャラクターもまた、映画の抑制的なトーンを象っている。
[DVD(邦画)] 7点(2015-09-20 23:58:34)
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