381. アマロ神父の罪
《ネタバレ》 良くまとまった面白い映画だった。しかしこの重苦しさはいかんともしがたい。見終わった直後、誰かに助けて欲しいような気分になった。若き神父アマロは、神父としても人間としてもまだまだ未熟な存在。出世のための世渡り術にしても、アメリアへの想いにしても、手探りで一歩一歩先に進んでいるような感じだ。ただ、一貫して神父としてのキャリアに執着があり、物語を見守るものを唖然とさせるラストもそれによって引き起こされる。私は、未熟で身勝手なひとりの若者の行動に人間臭さを感じ、「呆れた人だ…」とため息をつきながらも、なぜかあまり腹立たしさを感じなかった。僅かばかりかもしれないが彼の中にきらめく“良心”を、この出来事が一生ギリギリと締め付けるのかな、と思うと少しやるせない気持ちにもなる。不謹慎だろうか?でも大罪を胸深く仕舞いこんで生きていく辛さは、どんな罰より厳しいだろう。最近個人的に注目しているメキシコの風景と流れてくる聖歌の美しさも手伝い、暗い物語ながら一度は見て欲しいと人に勧められる作品だ。 8点(2004-05-29 02:58:06) |
382. メルシィ!人生
《ネタバレ》 ふむ。最初は、こういう生真面目で不器用な人をせせら笑う物語って好きじゃないな、と思っていましたが、ちょっと違った。主人公ピニョン自身が自分を卑下していたけれど、それはやはり自分の人生に様々な彩りを添えることを怠っていたことになる。隣人のじいさんにペンキをぶっかけられるような形で、やっとカラフルになってきたピニョンの人生。自己を認め前を向くようになった彼に、及第点を付けましょう。あまりにもうまく行き過ぎなんですけど、ラストの自信ある彼の笑顔に免じて…。役者はうまい人揃いで、特にドパルデューには感心しました。隣人とピニョンが出会うきっかけになった子猫ちゃんがべらぼうに可愛いのと、大人の女(経理部長)がなかなかステキだったのも良かったです。 7点(2004-05-22 19:36:25) |
383. ギャラクシー・クエスト
《ネタバレ》 面白かった!!B級の皮をかぶったA級作品。サーミアン人のいちいちおかしな行動は可笑し過ぎて足で拍手しながら観たし、後半の攻防戦は文字通り手に汗握った(たまに笑いながら)。豪華俳優陣の真面目なおバカもステキ。アラン・リックマンは後半トカゲ頭から白髪はみ出させながら熱演でした。宇宙人の見てくれもオタクキャラの活躍も、細かなところまで本当に楽しめます。で、シガニー・ウィーバーのボディとこの映画のCG、どっちがお金掛かってるんでしょう? 8点(2004-05-16 10:31:49) |
384. アメリカン・ビューティー
ひとつの作品としての出来は良いと思う。でも、なんだか好きになれないのだ。起承転結で魅せる話ではなく、割と淡々と日常を映していたと思う。見た目は整っていても、みんな心のどこかがほころんでいる。平凡で単調な現状から、みんなもう一歩飛び出してみたい。不満と焦燥感を胸に必死にバランスを取る人々の姿は、現代のアメリカと言わず日本もかなり近くなってきた感じで少し怖い。物語の進行とともにため息も増えた。何年か前、アメリカで「悩み事を相談する相手は誰?」というアンケートをとったら家族、友人ではなく「セラピスト」が1位だったという。観ながらそんなことを思い出した。 5点(2004-05-12 20:50:53)(良:1票) |
385. 必殺4 恨みはらします
深作映画だったのか…納得。必殺シリーズの面白さと、監督の力一杯の映画制作がうまくかみ合っていなかったかなあ。やたら町人が殺されているし、愚連隊の異常すぎるテンションにはちょっとついて行けなくて。私にはTVの必殺の方が性に合っているようです。これも職場の慰安旅行のバス車中で観た。横浜シーパラで爽快に遊んだ後鑑賞。いつもの必殺が持つ痛快さが感じられず、爽快感は真田広之に持って行かれてしまった。観賞後感想を言う人もなくお昼寝タイムは延々と続いた。ガイドさんごめんね。こんな時は釣りバカの方がハズれないかもよ。 3点(2004-05-11 23:45:35) |
386. ギフト(2000)
《ネタバレ》 ライミとブランシェットということで期待が大きすぎました。サスペンスとしては、それほど珍しい内容には感じられなかったです。真犯人も途中で予測が付いてしまいました。ブランシェットが予知能力者という設定は、彼女の持つイノセントな雰囲気とぴったりでした。キアヌ・リーブスよりもずっと活躍していたリビシ(よくやった!エライ!)も、お得意のちょっとマッドな役柄 ではまっていて、彼のさらなる活躍を期待できる演技です。で、色々な方が書かれてますが、あのパンチラは必要あったのかなあ…私には妙に浮いて見えました。 5点(2004-05-10 19:50:51) |
387. いつまでも二人で
《ネタバレ》 ウィンターボトム作品の中では、明るくて観やすい仕上がりになっていて、嫌いじゃない作品。抗争の街ベルファストが舞台になっていますが、そんな暗さは微塵もなかったです。お国のカラー緑色がとても綺麗に映っていて(なにしろ警官の制服まで緑だった)曇り空が多い割には明るくて開放的な画が多かったです。内容は、不妊や失業なども盛り込まれていたけれど、日常の機微や誰でも感じているような不安、苛立ちをあくまでさらさらっと描いていました。だから深く考えることも、気持が重たくなることもなく私もさらっと観てしまった感じです。劇中、U2の「With or without you」が使われていて(原題はそのまんまですね)、主人公が懐かしく、楽しそうに歌っているシーンがあり、彼らと同世代の私としてはそれだけで評価がアップしてしまいます。エヘヘヘ。 7点(2004-05-09 23:20:28) |
388. スリング・ブレイド
《ネタバレ》 見応えのある映画。でも悲しすぎる。始まって少しして「殺す必要のある人間はもういない」と主人公カールが言ったところで、何となく結末はわかってしまったし…。木訥で真面目なカールには、幸せになって欲しい、と観ている間ずっと心の底で願っていたけれどかなわなかった。途中穏やかで幸せな雰囲気のところもあるので、最後ガツンと落とされた感じで余計悲しい。殺された男は、観て3秒でゲッと思うほど嫌なヤツだったし…。出てくる人はみんな決して裕福ではなくささやかに穏やかに暮らしている。その中に馴染み心を通わせ、友の痛みに自らの心をも痛めたカールが、優しい人の幸せを願って人を殺める。カールは友の将来を夢見て穏やかかもしれないが、観ているこちらはやはりやりきれない思いでいっぱいになる。ちょっと辛い映画。また、目に浸みるような緑の景色が美しい映画で、その中を黙々と歩くカールの姿がなんだか印象に残っている。 7点(2004-05-09 13:14:56) |
389. 夢のチョコレート工場
《ネタバレ》 ありゃ~、ツボをつかれた感じ。好きです。単純な寓話の中にところどころブラックな味付けが盛り込まれていまして、とても楽しかったですよ。貧しい主人公がアタリ券が欲しくてチョコを開封するところなんて、彼と一緒になってすごくドキドキしました。誓約書やコート掛けで目が点になった後、お菓子工場の中はカラフルな色彩でウキウキします。で、ハッと気が付くとウンパルンパ族!あの妙な歌とダンスに目が飛び出しました。他にもオススメシーン色々!怪しげなワンカ社長もグッド!子どもと一緒に観る前に、大人だけでひっそり夜中に観るとまた楽しさ倍増かもしれませんよ。 9点(2004-05-08 20:16:26) |
390. メリー・ポピンズ
今回初めて通しで観た。なにしろ長い。ダンスなどとってもカッコいいけれど、ちょっと長すぎてくどさを感じる部分もあった。しかし、メリー・ポピンズが登場してすぐに教えてくれる“つらいと思うことも、自分で少しでも面白味を加えるとずっと違った印象になる”という話はずっと胸に置いておきたいと思うし、空想の世界で遊ぶ楽しさをダイレクトに表現しているところも素直に楽しそうだなあ、と思えたので合格点。映画は絵空事。でも絵空事の中でしかできないことは沢山あって、それを活かして観ている人たちに愉快な時間を提供する、これをそのまま地でいった映画だと思う。とりあえず今夜夢の中でメリー達に出会えたら、「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドゥーシャス!」と言ってみようかな、と練習しながら余韻に浸っている。 7点(2004-05-05 02:23:02)(良:1票) |
391. ゲロッパ!
惜しい。笑いのツボがちょっとずれたかなあ。「ちょっとやりすぎ」と「ちょっと足らない」の波が繰り返し起こり、ラストに向かって「ちょっとやりすぎ」が増え、最後のあたりは「やりすぎ!!」の連続になってしまった感あり。しかし役者さん達の演技はみんな良かったです。普段あまり好きではない常盤貴子も好感が持てました。これだけチョイ役に至るまで良い俳優を使ったんだから、ベタベタな物語の細部に凝った笑いを織り込んでもらえたら、もっと好みだったかな、と思います。最も目を惹いたのは藤山直美。あのダンス、特訓の成果なのか芸人の才能なのか…今後も注目せざるを得ません。あとは子役の女の子の生意気で可愛いところに思わず微笑みました。 5点(2004-05-03 21:31:47) |
392. バックドラフト
もう、ずーっとずーっと前に一度見たきりなのですが、かなり感動した憶えがあります。一言で言うと「火消しの兄弟愛」がテーマ。火事現場など派手で迫力ある映像と感情移入しやすいストーリーで、ある意味観やすい映画だったと思います。B・ホーンズビーのテーマ曲でさらに盛り上がってラストあたりはべそべそ泣いていました。観た後に消防士に無茶苦茶憧れてしまったっけかなあ。 8点(2004-05-02 18:30:35) |
393. セクレタリー
《ネタバレ》 ちょっと共感できなかったので…。自虐行為で逆に自分の苦しみから逃れようとする主人公の痛みは、こちらにもよく伝わってきました。弁護士との一風変わった恋愛も、ハッピーエンドなのでまあまあ。弁護士は自分の変わった部分を受け入れ難く主人公を一度突き放しますが、治まるところに治まったという具合。多少変わっていても二人の波長がぴったり来ていて、幸せな空気が流れるなら躊躇の必要は無い。なるほどその主張には頷けるけど、やっぱり二人の趣味に共感できなかったです。あと、好きな人がいながら他のBFとズルズル付き合う主人公の気持ちもよくわからないな。傷付けられることに人一倍敏感なはず、他人の気持ちはどうでもいいのかい、と思いました。 [DVD(字幕)] 5点(2004-05-01 12:35:43) |
394. サウスパーク/無修正映画版
「ボウリング・フォー・コロンバイン」に出てきたので興味を持ちました。テレビシリーズは未見。子どもに悪影響を与える作品として名高いそうで…。ポムポムと丸くて可愛いキャラクター。だけどセリフは毒づくし。R指定という規定にケンカふっかけてるような作品ですね。個人的には、これってアメリカ人の腹の中むき出し、という印象です。子どもに「見ちゃダメ!!」とキリキリしながら言うほどのものだろうか。そもそもR指定ってなんなのさ、と思いがけず真面目に考えちゃったりしました。作品としてはちょっと長くて後半だれたので6点。テレビシリーズの方が簡潔で面白いかもしれないですね。 6点(2004-04-27 13:54:04) |
395. マークスの山
悲しい物語。幸せに恵まれなかった青年が起こす、深い因縁を含んだ殺人事件の話です。映画を見て納得いかない部分が多く、映画館からの帰り道に原作を購入した記憶があります。映画と小説は別物、と割り切ってみても、読んでしまうと物足りないという気持ちがさらに大きくなってしまって…。ちょっと見るに堪えない暴力シーンなどもあって、私には厳しい映画でした。ただ悲しい青年役の萩原聖人はよく頑張っていたと思います。 4点(2004-04-25 18:56:17) |
396. 翼をください
このタイプの映画が好きなので点数は甘いかもしれない。この映画は、森の美しさと少女期の危うさ儚さが溢れかえっていて、私は目を離せなかった。P・ペラーボが出色。若葉とか飛行機雲のような、スッキリと清々しい怜悧な印象を持つ少女ポーリー。ハヤブサを育てる姿はまるで妖精のよう。妥協や駆け引きを認めない真っ直ぐな愛を抱え、壁にぶつかり破裂してしまう。彼女の持つ空気の美しさは素晴らしかった。彼女が泣くシーンが多く、その思いの熱さに何度かポロポロともらい泣きをした。若いってそれだけでつらいんだよね、うまく言えないけど。そして、絶妙なタイミングで現れ、短いセリフで締める庭師のおじさん。女の子ばかりの甘い雰囲気のなかで、名優G・グリーンの落ち着きぶりがかえって目立った。 8点(2004-04-24 03:46:01) |
397. キルトに綴る愛
《ネタバレ》 深い思い出をキルティングという地味な行為で刻みつける女性達は、静かだけれど年齢を重ねたぶん熱い甘い思い出を持っていました。ひとつひとつのエピソードが、彼女たちの心のひだを丁寧に追っていて、派手さはないけれど興味深かったです。同じ女の視点で観ると、このしっとりした物語はなかなか考えさせてくれました。でも主人公ウィノナはとても可愛いのですが、この女性達の回想に比べると、ウィノナのエピソードやラストへの話の流れは単調に感じました。ウィノナは結局元サヤに収まって結婚するようでしたが、私のこの作品を見た感想は「結婚はほんのスタートに過ぎない」。確かにそうですけどね。 7点(2004-04-22 06:52:03) |
398. 座頭市(2003)
北野作品初見、座頭市という物語も初見。血や日本刀がびらびらと舞うのは非常に苦手な私で、R-15になるほど他のものも飛び散りギョッとしましたが、この作品は面白くて最後までしっかり観ました。解り易い痛快な物語と、全編通して失われない軽快なリズム。この作品をひっさげてベネチアに参加した監督は終始ニコニコでしたが、浅草お笑い出身の監督が持つ、独特の「芸人エッセンス」の香りが高いところが自信の理由だったのかなと思いました。ひょうきん族で育った私です、気に入るわけですね。殺陣もダンスも、生きるもの全てが持つ鼓動のリズムに合わせて非常にテンポが良かったです。エンターテイメントとしてこれは必須項目。ああ、芸名はビートたけしでしたね。やられた。 8点(2004-04-19 07:13:01)(笑:1票) (良:1票) |
399. リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
《ネタバレ》 剣型のノーチラス号がベニスの水路をスイーッと進む…なかなかファンタジックで素敵な画でしたよ。ストーリーの方は、安直な部分もありますがまずまずってところです。細かい中身よりも世界観を楽しむくらいのつもりで観るのがちょうど良いです。伝説の7人を集結させるアイディアと、ケニア、ロンドン、ベニス、モンゴルの氷結湖と世界中を舞台にしたスケールの大きさで目にも楽しく、私は合格点を付けられます。ドリアン・グレイは知らない人物だったので調べてから拝見。ちょこっと調べておいた方が物語を楽しめるかな(先も読めちゃうけど)。しかしショーン・コネリー頑張りますね。ちゃんと格好良い冒険家として映ってましたよ。あとは髭やターバンなど、なかなかお洒落なネモ船長に注目。 7点(2004-04-18 20:14:16) |
400. クレオパトラ(1963)
《ネタバレ》 豪華。ローマでのシーザリオンお披露目行進なんてすごかったですよね。それでまたツーンとプライドの高い、「女王でしてよ」と顔に書いてありそうなE・テイラー。この役のオファーがあったとき、自分にぴったりと思ったに違いないですよ、彼女。このような歴史や文芸映画って、一回観ただけでもいろいろと勉強になるので重宝しています。その上これは豪華なシーンもあり、映画が娯楽だった時代、みんなこぞって観に行ったというのも納得いく作品です。 6点(2004-04-15 23:20:43) |