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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
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401.  雲ながるる果てに(1953) 《ネタバレ》 
特攻隊員たちが皆人間臭い。そのぶん尊さが募る。軍国主義の世界で養われた思想を持ち、自爆攻撃を誇りにすら思う主人公でさえ、独りになれば子供のように泣く。家族に会いたい。怖い。死にたくない。そしてけして自らが特攻隊として出撃するはずのない上官たちのあまりな態度に、国家の犠牲となる個人という図式を明確にし、反戦のメッセージとしている。隊員たちがとうとう出撃して映画が終わるのではない。たいした戦果をあげられなかったことが報告される。そして上官たちの「なに、特攻隊はまだまだいるよ」という非情なセリフが放たれ、次のカットに子供たちが歌う姿が映し出される。ここは強烈。
[ビデオ(邦画)] 7点(2009-08-07 13:53:59)
402.  双生児
原作からは「双子の成り代わり」というシチュエーションだけを借りただけの全くのオリジナルストーリーなんだけど、正直、原作よりも面白い。しかも乱歩小説の映画化の際にこぞって描こうとする乱歩的世界観を、いくら原作から逸脱しているとは言え、はなから作り出そうとしていないってところが素晴らしい。塚本晋也はメジャー作品であろうが、監督・脚本・撮影・編集をこなすことで思い通りの作品に仕上げてゆく。貧民窟に住む者たちのド派手な衣装もまた監督のアイディアなのだろうか。色彩豊かな衣装が良い意味での荒唐無稽さを出している。「成り代わり」から発するサスペンスを軸にしながら、復讐と愛憎のドラマは見事に純愛へと昇華する。84分か。テンポがいいなあとは思ったけど、凄い。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-31 16:52:40)(良:1票)
403.  スラムドッグ$ミリオネア
ダニー・ボイルはデビュー作『シャロウ・グレイブ』から一貫してスタイリッシュな映像の中に風刺を色濃く潜ませてきた。その風刺の矛先はいつも人間のエゴである。娯楽と割り切ったような『28日後...』ですらそこは変わらない。エゴへの風刺がそのまま娯楽へと転化されるストーリーだといいのだが、むりやりにエゴへの風刺を入れた『28日後...』には不満が残る。もっと単純に行こうよと。小難しい風刺劇なんていらんよと。そしてこの作品だが、見るまでもなく物語の背景には「貧困」があり、当然そこには人間のエゴが浮き彫りにされているはずである。そう。ムリヤリ入れる必要がないのだ。そのことで実に活き活きとした作品に仕上がった。ダニー・ボイルのスタイリッシュな映像が少年時代の波乱に富んだ人生をリズミカルに見せてゆくことに貢献する。重くなりそうなシーンの連続もスリリングな逃亡と同化することで重さを軽減する。疾走する列車の屋根に立つ少年をとらえた画がそのバックに映される広大な空とともにものすごく印象に残っている。現代のシーンだけで構成される後半からクライマックスにかけてがやや停滞ぎみだが、最後のダンスで盛り返す。インド映画に欠かせないダンスで締めるのは、世界一映画が多く作られ世界一映画が多く楽しまれるインド映画界に対する敬意の印なんだと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2009-07-14 11:28:37)
404.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 
始まってしばらくして不穏な空気を感じた。不穏な空気の原因が最初はわからなかったのだが、両端に夫婦、真ん中に娘が座るダイニングテーブルのシンメトリーな構図を見て確信した。異様なほどの画面の美しさとあまりに完璧すぎてかえって不自然な構図こそが私が感じた不穏な空気の正体であった。これはドライヤーの『ガートルード(ゲアトルーズ)』で感じたものと同種のものだ。ただこの作品はその部分をコメディで濁している。なぜ濁すのか。そこが重要だからだろう。物質主義に彩られカタチだけは立派な家庭の内情はドラッグ、ゲイ、DV、リストラ、不倫等々の諸問題を抱えていた。アメリカンビューティという名のバラの美しい花弁がトゲを覆い隠しているように。人にどう思われるかが重要である登場人物たちは肉体改造に勤しみ、新しいマイホームだけに注力し、整形手術を夢見る。隣人はゲイであることを隠し、娘の友人は遊び人を装う。娘はありのままを盗み見られることで本当の自分を見出してゆく。ラストにはそれぞれの皮が剥ぎ取られてゆき、同時にその副作用が容赦なく飛び込んでくる。そこには大団円的心地よさと何かが終わりを告げたときの寂しさが同居する。つまり素晴らしい終焉があった。   
[DVD(字幕)] 7点(2009-07-13 14:34:01)(良:2票)
405.  エクステ 《ネタバレ》 
最近、ラジオのホラー映画の宣伝かなんかで誰かが「ホラー好きなので思いっきり悲鳴あげて楽しんできます」みたいなこと言ってる人がいて、ホラーが好きな人って怖くないんじゃなくて怖いのが楽しいんだってことに今さらながら納得して、で、やっぱり私はホラー映画の楽しみ方を知らないのだと再確認した。だからこの映画がホラー映画としての楽しみがあるのかどうなのかは分かりません。でもこの映画は面白いと思った。ナレーションを自虐的に利用した冒頭シーンで一発かましてくれるわけだが、ここでの栗山千明の延々と発せられる声がなかなかに心地よい。そして長い説明は彼女がごくフツウの女性であることはよく分かるが内面に抱えたものまではけして語らない。そういった部分はその後もけしてセリフに組み込まない。そのあたりが実に繊細。『紀子の食卓』に続いて園映画出演のつぐみが主人公とどうやら母親を異にする姉を演じているのだが、その部分も深く切り込んでゆかない。虐待母の過去をいちいち語らないところがいい。主人公がなぜ少女を必死に守るのか。その様はまるで母。つぐみの短いセリフに主人公は小さいときにこの鬼姉に同じようにいじめを受けていたらしいことを伺わせる。そのとき守ってくれたのは母だったのかもしれない。だから同じような仕打ちを受ける少女のために今度は自分が母になって守ってやる。なんてことを想像させてくれる許容範囲の深さはむやみに説明しつくさない映画の強みだ。で、この鬼姉(母)は当然キャラ的に犠牲となるわけだが、最期のシーンでもそのオラオラキャラ(勝手に今命名したが伝わるよね)を維持しながら死に際の言葉を吐くところは思わず笑ってしまったが素晴らしい。そしてちょいとキョーレツすぎる大杉漣(衣装のセンスの悪さがサイコー)の最期もまた爆笑ものだ。美容院にはありえないほどいろんな種類の美人がそろっっているのも嬉しい。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-18 16:08:47)(良:1票)
406.  紀子の食卓
すごく面白かった。園子温バンザイ。『自殺サークル』の自殺が自殺をする役を演じたに過ぎないという驚愕の事実となぜそうするのかという哲学に圧倒されたのだが、この作品の面白さはその哲学にはなく、その哲学を謳う者と信仰する者、あるいはそのまわりの者の人生を事細かに見せてゆき、尚且つその莫大な量の物語を退屈させずに見せるところにある。紀子の物語に属する妹、妹の物語に属する紀子、クミコの物語に属する姉妹、、、と、とめどない物語が2時間半に凝縮される。ナレーションが実に効果的に物語を進行させると共に絶妙な効果音ともなっている。とくに妹=吉高由里子の声がいい。さらにその「心の声」と行動のギャップが、現実世界とネットの世界、あるいは家族とレンタル家族、はたまた写真に映る不満顔と母の絵に改変される笑顔という作品内に存在する二対という構図との相乗効果で重要度を上げている。この二つの世界の戦いともいえる本物と偽物がごちゃまぜの家族の団欒が壮絶!!結末も素晴らしいと思った。登場人物のそれぞれのドラマの展開のさせ方やナレーションの挿入は以後、園子温の印となる。いや、ナレーションは初期作品でもあったが。これって元が詩人ゆえの大胆さだろうか。映画にとってナレーション多用はけして褒められるものじゃないだろうに園子温映画の場合はなくてはならないアイテムとなっている。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-16 14:07:01)
407.  ウンベルトD 《ネタバレ》 
50年代のネオレアリズモ映画で描かれた高齢者の孤独、貧困問題、年金問題が古びるどころか普遍性を増し、新しくさえあることに驚かされる。とはいってもけして社会問題を描いた映画ではなく、それらは背景に過ぎないことはネオレアリズモ映画に共通する。主人公の老人はけして弱々しい老人ではない。実に人間らしいずるさも見せる。頑なに弱者とならんとするプライドもある。そこがネオレアリズモであり生々しさの源泉となっている。老人だけでなくアパートで働く若い女もまた社会的弱者として登場するところがまた「現実」の非情さを助長している。「暗い」と言われるネオレアリズモ映画にあって老人の庇護すべき子供のような、それでいて最高の理解者であり友人である雑種犬の健気な仕草が作品全体を和やかな雰囲気にしている。と同時にラストの感動的なシーンを見事に演じている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-02 14:04:41)
408.  プロジェクトA
先日『チョコレート・ファイター』(面白かった!)を鑑賞して椅子やテーブルを巧みにアクションに取り入れる様にこの作品を想起したのですが、同時にジャッキーのアクションシーンって見てて全然疲れなかったなあと。昨今のアクションシーンって躍動感を出すためなのか被写体に寄り過ぎて速い動きがよく見えなかったり、カメラがやたら瞬間的に動いたりして疲れるんだけど、ジャッキーのアクション、少なくとも『プロジェクトA』の頃はカットの切り替わりが速くても速さを感じないし、ちょっと長めの連続したアクションシーンのカメラの動きもその動きをあまり感じさせない。けしてジャッキーの動きが遅いわけじゃないのに。この作品は『ヤング・マスター/師弟出馬』で当時がっかりさせられたせいで(5年ほど前にレビューしてます)映画館では見てないんだけど、その後コレだけはビデオをダビングして何度も楽しませてもらってます。アクションそのものも凄いんだろうけど、その類稀なる肉体の動きを全て「笑い」へと昇華させているってことがもっと凄いように思う。それってサイレント喜劇の基本だったりする。だから何度でも楽しめちゃうのかもしれない。 と言いつつ長らく見てないので今見ても楽しめるかは確信持てないんだけど・・。いや、楽しめるはず・・・。
[ビデオ(字幕)] 7点(2009-06-01 17:24:32)(良:1票)
409.  スリ(1959)
才能ある一部の特別な人間は罪を犯してもよいという哲学はまぎれもなくドストエフスキーの「罪と罰」だが、様々なテーマを内包するこの小説とは違いブレッソンはテーマを無視し物語すら端に追いやりひたすら「動き」を映すことに専念する。ただ泥棒が泥棒をして捕まるという筋があってそれらが映されるだけでそこに主人公の罪に対する葛藤のドラマもなければ貧困あるいは不信や不満といった社会背景が描かれるわけでもない。映画は動くものを映すものという原理のみを追求する。それだけでも楽しめるのが映画なのだ。というかこれが映画。スリの場面は手がアップで映される。その動きの美しいこと!物語は消失し画面では堂々と「手」が主役を張っている。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2009-05-19 14:16:52)
410.  罪の天使たち
修道院内というほぼ限定された場所を舞台としているせいか、その後のブレッソン映画には見られない「劇」的なものを感じた。もちろん「罪」をテーマとしているところやその「罪」が元来人間に備わったものであるかのような描き方はいかにもブレッソンなのだが、「劇」的であることでブレッソン独特の生々しい厳しさが緩和されているような気がする。さらにブレッソン印の無感情な人たちとは相反する主人公も「劇」的であることに貢献している。長編デビュー作ゆえというところだろうか。でもそれはけして悪いことではなく、後年確立されたブレッソンの作風とは異にするというだけのことだ。むしろブレッソンのノワール(この作品自体はノワールじゃないけど)を見られる喜びがある。室内に差し込む計算づくの光があたりまえのように映されている。「罪」よりもその「救済」のほうが色濃く描かれた作品。
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-18 16:36:30)
411.  ハプニング 《ネタバレ》 
ヒッチコックの『鳥』を念頭に置いているとかいないとか。たしかに原因不明のままに人が攻撃されてゆく展開は『鳥』そのものだ(いや、敵の姿を全く見せずにここまで引きつける力は『鳥』をも凌駕している)。そして何よりも初めて画面に登場するズーイー・デシャネルのどこかいってる目はまぎれもなくヒッチコック映画、とくに『鳥』の女だ。ご親切にも「あの顔は妻になれる顔じゃない」とジョン・レグイザモに言われたあとにこのいっちゃってる目をしたズーイーが映される。しかも彼女はどうやら後ろめたい何かを隠している。そんな女は『サイコ』よろしく殺される運命にある。しかしである。どうも浮気だと思ったらティラミス(だったっけ?)を食べただけらしい。そうなると話は変わってくる。レグイザモに「守り抜けないなら触るな」と言い放たれた後に少女の小さな手をしっかりと握るその姿に少なくとも少女は死なないことを確信させる。そしてズーイーもまた少女に向ける優しい目を画面にさらけだすことで彼女の死もないことを確信させる。もともとシャマランがそんなことするはずもないのだがこの確信させてくれるシーンをちゃんと見せてくれるのが嬉しい。何故毒素が発生したのか?何故主人公たちは助かるのか?そんな野暮なことを聞いちゃいけない。それでも聞かれればこう答えるしかない。それが「ハプニング」であり「奇跡」であると。シャマランはこれまでも「奇跡」を描いてきた。奇跡に何故?はない。そして奇跡はハプニングなのだ。もしかしたら「奇跡」「ハプニング」は神の啓示かもしれないと他の作品では示唆していた。毒素発生も救済も、そして夫婦の危機も円満もまた「奇跡」であり「ハプニング」なのだ。シャマランにとってのみならず映画はこの「奇跡」と「ハプニング」で成り立つ。映画は何が起こっているかを描くものであってその意味を描くものではない。昨今、こんなにも映画に素直に向き合った作品もそうはない。この作品が酷評されることのほうが私には「何故?」である。
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-01 14:13:23)(良:3票)
412.  復讐するは我にあり 《ネタバレ》 
凄い。唐突に始まる惨劇。その男の半生を振り返るがそこに殺人鬼の明確な根源は無い。しかし殺人鬼になるべくしてなったと思わせるものが緒形拳から発せられる。逃亡先で犯す殺人。逃亡資金を得るため?いや、ここでも殺人の意味を描かない。突発的なものではなく計画的な殺人であるにもかかわらず無差別に殺す。そこに怒りや快楽を描かない。ただ殺す。しかもその理不尽を必然のように思わせてしまう。この説得力はどこからくるのだろう。そして殺人鬼の妻と殺人鬼の父が最後に見せる喜劇的ショットに仰天。遺骨を放り投げても落ちてなるものかと空中で止まろうとしているのか。緒形の演技は圧巻だったが遺骨となってもまだ存在感を発揮する。凄い映画だった。
[DVD(邦画)] 7点(2009-04-24 10:59:35)
413.  ゾディアック(2007)
未解決の連続殺人事件を描いた韓国映画『殺人の追憶』が時代の闇を描いていたように『ゾディアック』もまた60年代後半から始まる(ベトナム戦争真っ只中からキング牧師とJFK暗殺から始まる)アメリカ史の闇が描かれていたのかもしれない。フィンチャーが『ベンジャミン・バトン』を撮ったことでそれは確信めいたものに変わる。物語のメインはゾディアック事件に翻弄される男たち。彼らは犯人というより「暗号」に翻弄されていたのかもしれない。そして皆が皆、人生を狂わせてゆく。法と規則から離れた存在の挿絵漫画家が最後まで異常な執着をみせてゆく。「暗号」の謎に。誰かが解かなきゃいけない。そう思い込む心理は、真実が露見しない社会の中で生きる人たちの心理なのかもしれない。しかししかし、フィンチャーは社会派ではなかった。殺しのシーンの怖さは尋常じゃない。ものすごく怖い。これがあるから長尺に耐えれた。これがあるから重さを感じた。フィンチャーがどう考えているのか知らないけれど、これがあるからアメリカの闇という壮大さは消し飛んで小さな犯罪に収束する。つまりフィルム・ノワールなのだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-21 15:04:58)(良:1票)
414.  チャイナタウン 《ネタバレ》 
依頼されたのは浮気調査に過ぎない。だからその奥に大事件が潜んでいようがこの男には興味が無い。ところが浮気調査自体が計画の一片で、自分がある陰謀のコマに使われたに過ぎないことに対する憤慨と元警官ゆえの臭覚と好奇心が男を駆り立てる。話はどんどん大きくなってゆくが映画は社会派へも告発モノへも、あるいは大河ドラマへも行かず上質のノワールに留まり続ける。男は巨額をむさぼる悪を追及する気はない。一人の女を助けたい。その小さな世界でしか思考しない。だから面白い。だから切ない。人間の中にある「悪」とその「悪」がのうのうと存在し続ける理不尽をまざまざと見てきたポランスキーらしい苦い味わいのエンディング。その「悪」(社会悪でありながら人道悪という最悪な悪者)を演じたジョン・ヒューストンが前に出すぎずに憎いまでの存在感を出している。大きな絆創膏で顔の真ん中を隠したニコルソンが滅法カッコイイ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-16 16:57:06)
415.  ロング・グッドバイ
舞台は70年代のLA。50年代の原作の世界から20年後のマリファナにまみれたハリウッドがある街に、時代にそぐわないうらぶれたヒーローを放り込む。原作のマーロウからは想像できなかったグールド=マーロウがはまるはまる。そして原作には無い冒頭の猫との掛け合いが素晴らしいのだが、猫がマーロウの飼っている猫としての自然な振る舞いを見せてくれるのも素晴らしいがそれ以上にキャットフードを買いに出る冒頭シーンでグールド=マーロウのうらぶれた感満載の魅力とその後ドラマのつなぎを見事に果たすマーロウの棲家の一風変わった造りと変わった隣人をさりげなく完璧に見せてしまうのがもう上手すぎ。結末の改変はいかにもというか、どこかで見たことあるようなありふれたものでガッカリなんだけど、全体的には複雑なカラクリをよくここまでわかりやすくできたもんだと感心もする。それはさておき、やはりフィリップ・マーロウを(製作当時の)今の時代に蘇らせてしまうアルトマンは並みの監督じゃない。単に今の時代を背景にするだけじゃなく、ちゃんと今の時代を描いている。傑作。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2009-04-14 14:15:17)
416.  レンブラントの夜警
富と名声を得た巨匠レンブラントが突然破産へと追いやられる。なぜ?その原因は世界三大名画の一つ「夜警」にある。というグリーナウェイの仮説。「最後の晩餐 」に秘められたダ・ヴィンチ・コードならぬ「夜警」に秘められたレンブラント・コード。こういうの好き。グリーナウェイの映画は苦手な人もけっこう多いと思うが私もその一人で、生と死を独特のエログロで表現したその見た目がどうも受け付けがたかったのだが、これは大丈夫。体が警戒態勢を布いていたってのもあるんだろうけど。あと、グリーナウェイの映画ってシンメトリーな構図も相まってどこか絵画的な印象を受けるが、本作は描かれるものがものだけにその絵画的なるものがことさらに印象深かった。レンブラントといえば映画の世界では「レンブラント照明」というのがあって、有名なところだと『ゴッドファーザー』のビトー(マーロン・ブランド)の真っ黒な背景に浮かぶ顔、そして目を影で隠してしまうあの照明。これがこの作品でもふんだんに使われていて単に舞台劇っぽいだけに終わらないレンブラントの絵画との融合的空間を作り出しているように感じた。ただの伝記でもなく創作されたミステリー伝記ってだけでもなく、ゴダールの『パッション』の作中の監督じゃないけど、映画と絵画の間にあると勝手に思い込んでるものを取っ払ってしまったようなものを目指してるんじゃないだろうか。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-08 15:27:03)(良:1票)
417.  サブウェイ・パニック
列車と管制室を切り返しながら見せてゆくシンプルな構成。犯人のバックボーンや地下鉄幹部と警察のエゴをくどくどと語らないシンプルなシナリオ。シンプル・イズ・ベスト。(今年公開予定のリメイク作も楽しみだ。)緊張感が足りない!というのはたしかにそうで、リアルさを求めるときついかもしれない。しかし例えばコロンボや古畑の現実味の無いキャラを楽しめるならこれだって楽しめるはず。最後のマッソーの表情はまさにこの世界観を象徴しています。下手(シタテ)に出ながら堂々と去って行った国鉄職員たちはこの翌年に新幹線ひかり109号に爆弾を仕掛けられることをまだ知らない(『新幹線大爆破』は1975年公開)。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-02 14:32:34)(良:2票)
418.  ダージリン急行 《ネタバレ》 
冒頭のカーアクションがかっこいい!その車から降りたビル・マーレーが走る列車に飛び乗ろうとする。スローモーションになる。誰かがビル・マーレーを追い越す。・・・あれ?なんとビル・マーレーの出番終了!!(最後にちょこっと出てくるけど)オイオイ(笑)!!でもこのオープニングはサイコー。そしてこの走りゆく列車に乗り込むスローモーションがラストにまた登場するのだが、いやあ、いいなあ、スローモーション。その間はたしかにグダグダしてる。間ってのは最初のスローモーションと最後のスローモーションの間だから、まあ映画のほとんどだ。三兄弟がグダグダしてるだけでなく列車もグダグダだから笑っちゃう。決まったレールを行くはずの列車が迷子になっちゃうという素晴らしいグダグダ。母に会ってどうとか、父の葬儀の回想とか正直どうでもいいというか、もうグダグダしすぎとか思ってたりもするんだけど、むちゃくちゃな展開に行きそうで行かないという不満はあるんだけど、笑かしてくれそうで笑えない消化不良感もあるんだけど、終わってみればロードムービーってやっぱりいいねってなる。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-30 16:05:30)(良:1票)
419.  母(1926)
飲んだくれの父ちゃんのあまりな扱いにびっくり。体制側、つまりは悪の象徴というわけでもなくほとんど最初からいなかったかのように無情に消えてゆく。しかし母が息子を救うためにしたことが息子を窮地に追い込んだように、父もまた息子を窮地に追いやるべき道具にされたにすぎないことは確かで、父のここでのあまりな扱い自体が体制側の卑劣さを表現しているのかもしれない。クライマックスへと向かうデモ行進は雪解けと共に海氷が割れてゆく様とのカットバックによってスピード感とダイナミックさを得てクライマックスへと向かっていることを予見させている。おどおどとしていた母の顔が変わり、その顔がどアップにされたときのインパクトは凄まじいかぎり。これも母の人間性を丁寧に描いてきたからこそのインパクト。この後半のくだりはほとんど同じ画の繰り返しのため、ことさらに印象に残りやすい仕掛けとなっている。同時に観たエイゼンシュテインの『ストライキ』と似ているようで似ていない。その差異はタイトルが示すとおり。プドフキンは事象そのものよりも人間ドラマを見せることでその事象を語っている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-03-12 15:32:24)
420.  サッド ヴァケイション
つらつらとレビューを眺めると「セリフの音量が小さすぎて聞き取れない」という意見が多いようですが、映画館では全くそんなことはなかったのでDVD化の過程で起こった問題なのでしょう。こんなことで評価を下げられるのはなんとももったいない。さて作品ですが、監督のデビュー作『Helpless/ヘルプレス』の続編というだけでワクワクする。正直なところ「ヘルプレス」にあった底冷えするような空恐ろしい感覚を多少なりとも期待して見た私はこの作品全体を覆う和やかな雰囲気に最初は戸惑いました。見ているうちに続編であることを忘れていきました。その意味では「ヘルプレス」を見ていなくてもいいかもしれないし、見ていないほうが変な期待をせずに見られるかもしれません。暴力が描かれた『Helpless/ヘルプレス』、暴力後が描かれた『EUREKA ユリイカ』に対し、この作品は暴力の根源が描かれているように思った。根源は環境にある。家族にある。母にある。暴力はこの世界に常にある。そのことをその根源とともに受け入れたとき、ようやく悲劇を、世界を、そして自分自身をも受け入れられる。先に書いたように前作を見ずともいいとは思う。しかし、浅野忠信の唐突な暴力シーンは「ヘルプレス」を見た者だけが「ヘルプレス」の空恐ろしさを思い出すシーンである。宮崎あおいがオダギリジョーの頭を優しく撫でるシーンは「ユリイカ」を見た者だけが「ユリイカ」での発見を思い出し感慨にふけることが出来るのだ。やっぱり通しで見ましょう。
[映画館(邦画)] 7点(2009-03-11 13:08:36)(良:1票)
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