Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さんの口コミ一覧。22ページ目
ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
>> カレンダー表示
>> 通常表示
421.  TIME/タイム 《ネタバレ》 
アンドリュー・ニコルの作品は、SF映画として鑑賞すると落胆させられることが多いように感じます。大成功した『トゥルーマン・ショー』や傑作と呼ばれる『ガタカ』ですら世界観の作り込みが甘く、設定に腑に落ちない点が多すぎるのです。例に漏れず本作も、基本的な設定部分はボロボロ。ニコルはこの点を取り繕う気すらなかったようで、冒頭のナレーションで主人公に「なぜこんな世界になったのかは俺にもわからない」と身も蓋もないことを言わせる始末。ニコル作品はSFではなく寓話として観るのが正解で、基本設定へのツッコミは忘れてあげるのが作法のようです。。。 一部の大金持ちが貧乏人の命を搾取してその繁栄を維持している世界。ジュード・ロウ主演の『レポゼッション・マン』と同じく、サブプライム問題で露呈した強欲なアメリカ資本主義をデフォルメした内容となっています。はたまた、人類は不老不死の夢を叶えたがその夢を享受しているのは一部の金持ちだけという構図は、マイケル・ムーアの『シッコ』でも描かれたアメリカの歪んだ医療保険制度を象徴しているとも解釈できます。つまりこの映画が描いているのは未来世界ではなく、現代のアメリカ社会なのです。。。 そんな目の付け所は面白いし、これを『人生の残り時間が通貨となった世界』という図式にまで落とし込んだアイデアには脱帽させられますが、この映画が優れているのってそこだけなんですよね。主人公の行動原理にイチイチ不明な点が多いし(身の危険を冒してまで見ず知らずの金持ちを救おうとした理由は?100万年もの時間の強奪に成功しながらそれに一切手を付けず、ヒロインともども死にかけたのはなぜ?)、キレ者に見えて実はマヌケなタイムキーパーにもガッカリさせられます。特に目を引く見せ場があるわけでもなく、主人公がやることは全てうまくいくのでスリルやサスペンスの演出にも失敗しています。娯楽映画としては赤点寸前の出来なのですが、美しい出演者達(2006年の佳作『アルファ・ドッグ/破滅へのカウントダウン』の出演者多し)は見てて飽きないので5点としておきます。
[DVD(字幕)] 5点(2012-08-05 03:29:12)(良:2票)
422.  ダークナイト ライジング
IMAXシアターにて鑑賞。 関係者の想定以上によく出来てしまった『ダークナイト』の続編。傑作になることを義務付けられた完結編という相当な重荷の中、上がりまくったハードルをきっちり超える映画に仕上がっています。アクションはより派手に、ストーリーはより重厚に、世界が見たがっているバットマンを正確に理解した映画となっているのです。『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』『マトリックス・レボリューションズ』等、要らないものを足しすぎて失敗する完結編が多い中で、ここまで過不足なく綺麗にまとめられた完結編は珍しいと思います。とにかくクリストファー・ノーランの仕事が圧倒的。日本のオタク以上に厄介なアメリカのオタクを納得させてきたストーリーテリングの手腕はさすがのものだし、アクション演出は前作以上に的確です。『ビギンズ』の時には演出に固さがあったものの、娯楽部分の演出はどんどん巧くなってきています。007を思わせるスカイアクションにはじまり、ウォール街襲撃に、バットマン再登場に、ゴッサム陥落にと圧倒的な見せ場が連続するのですが、CG全開のマーブルヒーローとは一味も二味も違うリアリティある見せ場には大変恐れ入りました。。。 物語については賛否が割れているようですが、私は良い内容だったと思います。最大の武器であった財力とテクノロジーを奪われた時、ブルース・ウェインはどう戦うのか?というのが本作のテーマ。なかなか面白い点に目を付けたなぁと感心しました。第2のロシア革命を目論むベインという敵にも、完結編に相応しい重厚さがありました。無目的な狂人であったジョーカーでは完結編の主役は務まらなかったはずであり、バットマンとは相要れぬ信念のために突き進む怪人こそが、サーガの幕引きには適任だったと思います。。。 そして最期に一言。どんなに扱いが悪くてもシリーズに出演し続けたキリアン・マーフィの度量は素晴らしすぎる!
[映画館(字幕)] 9点(2012-07-29 01:08:11)(良:1票)
423.  インモータルズ/神々の戦い
脚本が平凡な上に監督がストーリーテリングに無関心なようで、お話しはまったく面白くありません。前半は「つまらん映画だなぁ」と思いながら観ていたのですが、ギリシャ軍vsハイペリオン軍の合戦がはじまると突如として面白くなりました。圧倒的兵力を見せつける敵にひよった自軍を鼓舞する演説はこの手の映画にありがちなのですが、本作はこれを意外なほどかっこよく演出してみせています。多くの兵が入り乱れる合戦は大迫力だし、満を持しての神様戦隊登場は笑ってしまうくらいかっこよく決まっていました。ここまでやってくれれば大満足、前半のつまらなさはクライマックスですべて帳消しになりました。。。 美しさを伴う残酷描写にスーパースローの多様と、ターセム・シンの画作りはザック・スナイダーとよく比較されますが、コミックのカットの忠実な再現を目指すザック・スナイダーに対して、動く絵画を目指すターセム・シンの画作りはより高度。『ザ・セル』を観た時には”小さなリドリー・スコット”という印象を受けたのですが、本作を観るにターセム・シンは映像派と呼ばれる監督群の中でも独自のポジションを確立しつつあるようです。そろそろまともな脚本を受け取って、ラッセル・マルケイ化する前に代表作を作って欲しいものです。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-07-16 16:46:53)(良:1票)
424.  シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム
前作に比べてアクションの比重が増し、よりジョエル・シルヴァー色の強くなった第2作。とにかく爆破アクションの連続なのですが、ひとつひとつの見せ場が緻密に作りこまれていて単なるバカアクションに終わっていない点がシルヴァーらしいと言えます。ハイライトである兵器工場での戦闘では、素晴らしい見せ場の連続に大興奮させられました。俳優のチョイスもシルヴァーらしく、前作のヒロインを早々に退場させ、代わってスウェーデン版『ドラゴン・タトゥーの女』のノオミ・ラパスをヒロインに据えるというチャレンジングなキャスティングがなされています。ブラッド・ピットやダニエル・デイ・ルイスの登板が噂されていたモリアーティ教授も蓋を開ければシェイクスピア俳優ジャレッド・ハリス(名優リチャード・ハリスの息子)に落ち着いたわけですが、この辺りにも「スターは一人か二人いれば十分。あとは実力ある中堅・ベテランで固めるべし」というシルヴァーイズムが現れています。こうしたキャスティング面でのこだわりも本作においては吉と出ており、作品としては一定のクォリティに達していると思います。。。 ただし問題もあります。前作と同じく観客が推理に参加する形となっておらず、ホームズの長台詞を一方的に聞かされるのみというストーリーの展開方法にはややストレスを感じました。ホームズはもはや19世紀のジェームズ・ボンドと化しており、シャーロック・ホームズである必要性がほぼなくなっている点も問題。映画としては面白いのですが、シャーロック・ホームズというコンテンツの扱い方には再考の必要があると思います。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2012-07-16 02:35:01)
425.  ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-
リドリー・スコットやマーティン・スコセッシといったハリウッドの巨匠達から愛される脚本家ウィリアム・モナハンの監督デビュー作ということで期待の大きかった本作なのですが、案の定、よくできたクライムサスペンスでした。ヤクザの世界から足を洗いたい主人公と、それを許してくれない闇社会というありがちな物語でありながら、キレの良いセリフ回し、印象に残る選曲、スコセッシ譲りの暴力描写によって水準を超える仕上がりとなっています。俳優陣の配置も絶妙で、ヤクザのボスをレイ・ウィンストンに演じさせて重量級の存在感を発揮させる一方で、デヴィッド・シューリスの飄々とした個性によって作品に独特の軽さを出しています。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの終了とともにめっきり見なくなったキーラ・ナイトレイが引退した元スター女優というセルフ・パロディのような役回りで出演しているのですが、「脱ぎの仕事も文句を言わずに引き受けていた」という自虐的なセリフで笑わせます。。。 問題に感じたのは、主人公が元スター女優のボディガードであるという設定が本筋とうまく絡んでいないという点。結末から振り返ってみて、主人公の恋の相手がセレブリティである必要性が感じられません。彼女に張り付いているパパラッチを利用した反撃作戦でもあれば面白くなっただけに、もうひと捻りが欲しかったところです。 
[DVD(吹替)] 7点(2012-07-16 01:49:52)(良:1票)
426.  ルーザーズ 《ネタバレ》 
アクションコメディの割に込み入った内容、おまけに説明が駆け足なもんで、何度も話を見失いそうになりました。32話からなるアメコミ原作を100分程度に圧縮した作品であるため脚本にムリが生じた結果なのでしょうが、原作の再現にこだわって一本の映画として破綻寸前にまで追い込まれるくらいなら、映画用に適度な改変を加えるべきだったと思います。謎の美女アイーシャの正体が判明する場面や、ルーザーズの一人が裏切る場面なども事前のフリのマズさからサプライズになっておらず、ストーリーテリングという点においてこの脚本は失敗しています。ルーザーズ達のコミカルなやりとりも作り手が意図したほど楽しくはなく、悪い意味でピーター・バーグ(『ハンコック』『バトルシップ』)らしい脚本だと言えます。。。 一方で、見せ場が素晴らしいのが本作の救い。製作費2,500万ドルというハリウッド映画としては小規模な作品なのですが、アクションのノウハウを知り尽くしたジョエル・シルヴァーが背後に控えているおかげで大作並みの満足度が得られます。ゾーイ・サルダナやクリス・エヴァンスなど俳優陣のハマり具合も完璧、久々に見かけたジェイソン・パトリックも楽しげに悪役を演じており、見てくれはよく出来ています。 
[DVD(字幕)] 6点(2012-07-05 23:16:29)(良:1票)
427.  ツリー・オブ・ライフ 《ネタバレ》 
『地獄の逃避行』も『天国の日々』も『シン・レッド・ライン』も肌に合わなかったので覚悟して鑑賞したのですが、今回のテレンス・マリックはイケました。わかったようなわからんようなポエム、あまりに長くクドすぎる環境映像と今回もマリック節は全開なのですが、父と子の対立と和解というわかりやすいドラマが横糸に入ったおかげで随分と腹に落ちやすい映画となっています。。。 この映画のテーマは神の存在なのですが、神とその創造物である人類との関係を極限にまで凝縮し、ある親子の関係を通して神の存在を描いています。「男の子にとって父親は神に等しい存在である」という言葉そのままに。神とは全知全能ではあるが必ずしも人格者ではなく、良い決断もするが、時に気まぐれな決断もする厄介な存在であるとマリックは考えているようです。我々人類はそんな神の気まぐれに付き合わされ、正しい方向へ導かれたり、野放図にされた悪に苦しめられたり、訳の分からん試練を課せられたりして右往左往しているわけです。あたかもそれは、主人公ジャックが父オブライエンに振り回されているかのように。オブライエンはあまりにクセの強い思考回路を持っているため、子供達にとっては頼もしい父親であると同時に巨大な脅威でもあります。ジャックはこの圧倒的な脅威に対してまず恐怖心を抱き、次に反発を覚え、最終的に和解するのですが、この流れは人類の信仰プロセスと合致します。。。 このドラマにおいて、テレンス・マリックは素晴らしいストーリーテリングの技術を披露しています。ジャックとオブライエンの関係は決して特殊なものではなく、多くの男子が共感できる普遍的なものです。裏を返せば何の変哲もない少年の成長物語なのですが、それをここまでドラマティックに仕上げ、おまけに哲学的なメッセージも込めている。これは圧倒的な仕事だと思います。願わくば、訳の分からん環境映像やポエムは控え目にして、見る側の生理に配慮した作りにしてくれれば最高だったんですけどね。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-06-30 19:20:37)(良:1票)
428.  マネーボール
オスカー大量ノミネートも納得の仕上がりで、欠点らしい欠点がないほどよくできた映画でした。この映画がうまかったのは野球映画として作られていないところで、変革者の苦悩や人生における決断の重要性といった普遍的なテーマを中心に扱っているおかげで、間口の広い映画となっています。野球をまったく観ない方でも楽しめるのではないでしょうか。。。 本作が興味深いのは、スターの存在を否定するマネーボール理論とは正反対の方法論で製作されていること。なんせ、主演は世界一のスターであるブラッド・ピットですからね。脚本は、これまたハリウッド一の脚本家であるスティーブン・ザイリアン。金満ディノ・デ・ラウレンティスをして「ザイリアンは良い仕事をしてくれるが、その分ギャラが高い。本当に高い」と言わしめたスター脚本家が本作を手掛けているわけです。監督は『カポーティ』のベネット・ミラーが担当していますが、当初は、これまたスター監督であるスティーブン・ソダーバーグが予定されていました。マネーボール理論を扱った本作が、マネーボール理論の根本的な発想を否定しているという構図は非常に興味深いと思いました。
[DVD(吹替)] 7点(2012-06-28 00:27:14)(良:1票)
429.  アメイジング・スパイダーマン 《ネタバレ》 
IMAXシアターにて鑑賞しましたが、スパイディの背中をカメラが追う3D映像はかなりの迫力と面白さで、映画館で観てよかったなぁと思う作品でした。今回のピーター・パーカーは松潤似のルックスに天才科学者並みの頭脳、ハリー・ポッターばりにいわくつきの両親を持つ特別な人物となっていて、平凡な高校生がスーパーヒーローになるというサム・ライミ版とは大きく異なる物語ではあるのですが(ドラえもんの主人公がのび太から出木杉君に代わったくらいの大きな変更)、前シリーズを丁寧に研究して作られているおかげでこの方向転換に違和感は覚えませんでした。スパイダーマンは正義のあり方について常に思い悩むし、敵も絶対悪ではない。人情が複雑に絡み合う湿っぽい構図は健在なのです。スパイディが市井の人々に支えられているという描写もきちんとなされていて、NY市民が負傷したスパイディのために道を作る場面にはファイトシーン以上に興奮させられました。これぞスパイダーマンです。。。 旧キャストによる「スパイダーマン4」の製作がキャンセルされ、代わりに娯楽作の経験のないマーク・ウェブが新監督に抜擢された時には不安を覚えたのですが、完成した作品を見るにこの判断は正解だったようです。サム・ライミが不得意としていた恋愛パートの演出も彼にとってはお手の物だし、アクション演出は期待以上に的確です。CG全開のヒーローバトルはもちろんのこと、マスクをかぶる前のピーターが街のチンピラを倒して回るライブアクションも流れるように決まっています。粋なラストはこの監督ならではで、今後も彼が担当するのであれば、このシリーズはかなり期待できると思います(私が鑑賞した吹替版と字幕版とではグウェンの父親の最後の言葉の翻訳に違いがあるため、どちらを鑑賞したかでラストの評価は割れている様子ですが)。。。 なお、私の周囲ではウェブシューター(糸を発射する機械)の登場に戸惑いの声があがっているのですが、原作に忠実なのは本作の方。前シリーズでは「平凡な高校生が高度な機械を発明することは不自然」との理由で手首から糸を発射するという設定となっていましたが、ピーターを天才とした本作では原作通りの描写に戻されたようです。
[映画館(吹替)] 8点(2012-06-24 16:30:38)(良:4票)
430.  ドラゴン・タトゥーの女
ハリウッド最強の脚本家と監督が組んだ作品だけあって安定感は抜群。娯楽性と芸術性の間で見事にバランスをとっています。主演2人はもちろん脇を固める俳優陣も素晴らしく、映画としての完成度は非常に高いと思います。しかし、とにかく上映時間が長い。目を見張る展開やド派手な見せ場のない本作で2時間半オーバーは厳しすぎます。。。 インディーズスタジオだったニューラインシネマズで「セブン」と「ゲーム」を成功させて以降、デヴィッド・フィンチャーはスタジオからの口出しを受けずに映画を撮れる地位を確立しましたが、それ以後に彼が撮った映画はどれも長い。確かにこの監督のヴィジュアルは完璧であり、どのシーンも美しく撮られているためにすべてを使いたくなることは理解できるのですが、同時に映画全体をどうまとめあげるのかという視点も持っていただきたいものです。同じくヴィジュアルの巨匠であり、自由に映画を撮れる立場にいるリドリー・スコット師匠などは毎回本編を短めに刈り込み、DVD化の際にディレクターズ版を発表することが恒例となっています。リドリー・スコットは”適正な上映時間”というものを常に意識しており、時には個々の場面の重要性よりも映画全体のテンポを優先させるという判断を下しているのです。フィンチャーも、早くこの域に達して欲しいものです。
[DVD(吹替)] 6点(2012-06-23 02:16:33)(良:3票)
431.  トランジット
この映画、序盤はとにかくつまらんです。主人公一家はどいつもこいつも面倒臭い性格で好きになれないし、強盗団は安っぽくてまったく怖くありません。しかし、いよいよ強盗団が一家に接触すると突如として緊張感が高まります。それと同時に主人公一家に愛着を覚えるようになり、最後には「親父がんばれ!」と力いっぱい応援してしまうのでした。クライマックスで突如ランボー化するお母さん、異常に機転の利く長男などジョエル・シルヴァーならではのやりすぎ感も不思議とアダになっておらず、それどころかどんどんエスカレートしていく展開からはかなりのカタルシスが得られました。。。 カーチェイスや銃撃戦などの見せ場も意外と細かく作りこまれています。田舎道を2台の車が走っているだけという貧相なシチュエーションでありながら、撮影や編集の丁寧な仕事のおかげでスリリングな見せ場を作り上げているのです。この辺りの手慣れた仕事もさすがジョエル・シルヴァーといったところです。。。 この映画、ジョン・キューザックとモーガン・フリーマンが共演した「ザ・スナイパー」という映画とまんま同じ話なのですが、退屈で死ぬかと思った「ザ・スナイパー」と比較すると本作の面白さは際立っています。スタッフの仕事の手際の良さや適材適所のキャスティングなど(長男役の子供はどこで見つけてきた?)、B級アクションに必要な下準備がきちんとできているのです。決して傑作ではないが、観て損のない小品だと思います。 
[DVD(吹替)] 7点(2012-06-20 10:12:54)
432.  ワイルド・スピード/MEGA MAX
“1””2”は各々劇場公開時に鑑賞したものの、あまり面白く感じなかったためどちらも一度しか観ていません。”3””4”に至っては未見であり、シリーズの予習は不十分な状態でこの”5”に臨んだのですが、ありがたいことに予備知識がなくても楽しめる仕上がりとなっています。主要キャラにまつわる過去のいきさつをセリフでそれとなく説明してくれるのですが、こうした細かな配慮には好感を持ちました。。。 映画は序盤からハイテンション。「どう考えても死んでるだろ」というシチュエーションでも決して死なない主人公、一発殴ると簡単に倒れてくれるその他大勢の敵というご都合主義の塊のようなアクションが洪水のように垂れ流されるのですが、天井知らずのやりすぎ感が滅法楽しく、まったく不快に感じませんでした。一方で、ブラザー達による「オーシャンズ11」がはじまる中盤は中弛みしまくりなのですが、ここで一息ついたことで映画全体の呼吸はうまく整えられています。この中弛みのおかげで、クライマックスのしつこいカーアクションが立ちまくっているのです。このカーアクションがとにかく凄いの一言で、マイケル・ベイが泣いて悔しがるほどの面白さ。歴史に残るアクションだと思います。。。 カーアクション以外で注目すべきは、ドウェイン・ジョンソン演じるルーク・ホブス捜査官でしょう。完全武装の部下を従え、メガフォースを思わせる特殊車両でブラジル出張という登場場面ですでにバカ。設定上は敏腕捜査官のはずなのに、どうやっても軍隊の特殊部隊にしか見えないルックスには目が釘付けなのでした。捜査らしい捜査はせず、腕力で強引に突き進むのみ。部下を殺されて怒り狂えばブラジルの警察署までを襲撃し、敵の親玉は無抵抗であっても容赦なく射殺という狂犬ぶりも最高で、「コマンドー」のジョン・マトリックス大佐に匹敵する逸材だと思いました。本作のラストを見るに”6”以降でも主要キャラとして登場し続ける様子ですが、引き続きネジの飛んだ大活躍を披露して欲しいものです。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-06-18 11:42:17)(笑:2票)
433.  リミットレス
かなり満足できたサスペンス映画でした。魔法のアイテムを手に入れて浮かれていたら後で大変なことになったというのび太チックな物語なのですが、本作の監督と脚本家は基本設定がとにかく雑であることをきちんと認識していたようで (財界の大物が欲しがるアイテムをなぜ街のチンピラが持っている?そして、なぜそれを主人公に飲ませた?etc…)、設定を深掘りせず主人公のサバイバルに物語の焦点を絞っています。この戦略が吉と出ていて、90分の勢いあるサスペンス映画としては年に数本出会えるかどうかというレベルの面白さとなっています。特殊な設定のおかげで先読みの難しい物語に仕上がっているのですが、同時にこの設定のアラを観客に見透かされる前にさっさと話を終わらせているのです(これ以上設定をいじくっていれば、映画は空中分解していたことでしょう)。観終わった後から振り返れば、主人公が執筆した小説、今カノと元カノ、主人公の殺人容疑等、投げっぱなしのネタがいくつも見つかるのですが、スピーディな語り口のおかげで観ている間は特に気になりません。ブラッドリー・クーパーの飄々とした個性も設定のアラを隠すことに貢献しており、これは映画化の勝利だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2012-06-17 03:13:59)(良:1票)
434.  テイカーズ
固い絆で結ばれた金持ち強盗団vs仕事一筋の鬼刑事という典型的な「ヒート」症候群の一作ですなのですが、マイケル・マンのようなディティールに対するこだわりはほとんど感じられません。ひたすらに見てくれのゴージャスさ、カッコよさを追求した画面はトニー・スコットを思わせ、さらにはキャラクター造形も雑なので男臭さも皆無に等しい状態です。ドラマパートはジェイソン・ステイサムが出るような作品群と大差のないレベルで、ロクな見せ場もない前半部分にはかなり退屈させられました。。。 しかし、物語が折り返し地点に差し掛かり、目玉である銀行輸送車襲撃がはじまると、映画は凄まじい勢いで疾走をはじめます。二転三転する怒涛の展開に、スピード感ある見せ場の連打。製作費3,200万ドルという中規模予算のアクション映画としては、恐ろしいぐらいにサービスしてくれます。これにはお腹いっぱいになりました。決して出来の良い作品ではありませんが、大きな期待をしなければ十分に楽しませてくれるアクション映画です。。。 なお、本作のDVDジャケットには「全米No.1大ヒット!」とデカデカと書かれていますが、本作が全米1位を獲れたことには理由があります。アメリカでカリスマ的な人気を誇るヒップホップアーティストT.I.とクリス・ブラウンが強盗役で出演しており、さらにポール・ウォーカーとヘイデン・クリステンセンという2人のイケメン俳優が彼らをサポート。若い人が好むキャスティングをしたことがヒットの要因であり、決して作品の質が評価されたわけではないという点にはご注意ください。
[DVD(吹替)] 7点(2012-05-13 17:15:52)(良:1票)
435.  カウボーイ&エイリアン
ダニエル・クレイグとハリソン・フォードはいつもながら男らしいし、VFXの扱いに慣れたジョン・ファブローによる見せ場作りも悪くありません。特にラストバトルはハリウッド大作らしいボリュームできっちり楽しませてくれるので、観たことを後悔する映画ではありません。。。 ただし、右往左往する脚本が本作の足を引っ張っており、”悪い映画ではないが、決して褒められた出来ではない”というレベルに落ち着いています。「カウボーイ&エイリアン」、、、男子中学生が考え付いたような適当なアイデアではありますが、西部劇とSFとを違和感なく組み合わせることは非常に困難な作業だったようです。97年の発案当初から数えると12名もの脚本家が本作の執筆に関わり、脚本家が変わる度にコミカルとシリアスのバランスは大きく変動。結局、複数人の脚本家が出してきたアイデアのうち、良いものをパッチワークするという形で決定稿が作られたために、なんだかとっ散らかった印象を受ける仕上がりとなったようです。致命的だったのが、クレイグ、フォード以外のキャラクター達の個性の薄さで、多くのキャラクターが入り乱れる物語だったはずなのに、観客に好かれる者は皆無という状態となっています。悪徳牧場主、牧場主に苦しめられる市井の人々、治安を乱す盗賊団、白人社会と敵対関係にあるインディアン、これらの人々がラストバトルを前に主人公の元に結集し、”オール西部”で侵略者に挑むという燃える展開を準備しながら、個々のキャラクターの完成度の低さゆえに不完全燃焼で終わっています。この決戦前夜がビシっと決まっていれば、映画全体が締まったはずなんですけどね。
[DVD(吹替)] 5点(2012-05-07 01:33:56)(良:1票)
436.  ウィンターズ・ボーン
これは典型的な”評論家からは支持されるが、一般客は対象となっていない映画”です。質の高い演技、自然を背景とした美しい撮影、独特の空気感、そして重々しいテーマと、高く評価される映画に必要な要素はすべて備えており、「これは何か賞をやらなければ」と思わせる完成度を誇っています。しかし、展開があまりに淡々としていて物語に山も谷もないので、正直言って面白くありません。ジョン・ホークス演じるティアドロップが出ているところだけは妙に映画っぽいのですが、それ以外は役者と監督の技見せに付き合わされたという印象です。私は楽しめませんでした。。。 あと、”おきて”の扱いにも疑問を持ちました。本作における”おきて”は、いわゆるマクガフィン的な扱いを受けており、その内容は最後まで明らかにされません(集落全員が似たような顔つきをしているので、ある程度の察しはつきますが)。しかし、「思いがけず村のおきてと戦うこととなった少女」という物語にあって、そのおきての正体が最後まで伏せられたままというのは、ちょっとズルいかなという気がしました。
[DVD(字幕)] 4点(2012-05-07 00:47:47)(良:1票)
437.  ザ・ウォード/監禁病棟 《ネタバレ》 
10年も監督業をサボっていただけにカーペンターの演出力が落ちているかもという不安があったのですが、嬉しいことにB級映画の巨匠の腕前は健在でした。飛び上がりそうになるほど驚かされる場面がいくつかあるし、脱走シーンにはハラハラさせられます。舞台となるウォード(病棟)には適度なキナ臭さが漂っており、サスペンスホラーに必要な空気作りもばっちり。ここまで来ると職人芸であり、80年代にはホラー映画の先頭を走っていた御大の"技"を大いに堪能しました。 ただしこの映画、オチがバレバレだったのが苦しいところ。他作品のネタバレは禁止されているためはっきりとは言いませんが、お話は数年前のアノ映画とよく似ています。結末は10年前に公開されたサスペンス映画とまったく同じだったし、多少映画を観ている人ならば遠の昔に見飽きた題材です。復活作でなぜこの脚本を選んだのだろうかと、作品選びのセンスのなさにガッカリさせられました。
[DVD(吹替)] 5点(2012-05-05 00:32:31)
438.  4デイズ 《ネタバレ》 
ポール・ハギスの「スリー・デイズ」にレニー・ハーリンの「5デイズ」と紛らわしくて仕方がない”デイズもの”の一本ですが、これがなかなかよくできています。ワンシチュエーションもののサスペンスとしては年に一本出会えるかどうかというレベル。設定に無理はあれど90分ならば勢いで乗り切れる。これは思わぬ拾いものでした。 【注意!ここから壮絶にネタバレします】 とにかく凄いのが脚本で、観客の先読みを巧みに利用する形で物語をぐいぐいと進めていきます。「実は核爆弾などなかったことがラストで明かされ、拷問の無意味さを説いて映画は終わる」、私はこんな結末を予想しながら観ていました。私以外の多くの観客も同じようなことを考えたのではないでしょうか。しかしそんな浅はかな先読みなど脚本家は百も承知であり、この”狂言説”はまんまと中盤のトリックに利用されます。「どうせ”狂言でした”がオチだろう」と思っている観客の目の前で53人の市民を爆殺してみせ、この犯人はホンモノであることを強く印象付けるのです。こうして予想を裏切られた観客はその後の展開がまったく見えなくなるのですが、観客が真っ白になったところで「ここからが本番だ」とばかりに二転三転の怒涛の展開を叩き込んでくる周到さには舌を巻きました。。。 この結末が読めない物語の中では、観客は己の倫理観をも問われることとなります。容疑者を痛めつけることは悪いことだということは明らかです。一方で、本気で人を殺そうとしている犯人を相手にした時には、綺麗ごとだけでは解決しないこともまた事実。では、どこまでの強硬手段ならば許されるのか?現実の戦いを知っているサミュエルは徹底的にやろうとしますが、トリニティらオーディエンス達はいつまで経っても腹を決められません。ショッピングモールを爆破された直後には殺意を持って犯人に襲いかかるものの、怒りが喉元を過ぎると再び生温いヒューマニズムが頭をもたげる。最終的には、米国人の良識によって核爆発が引き起こされるという皮肉な結末を迎えます。エグイ拷問をやっているサミュエルと犯人は、実は冷静な計算の中で動いており、良識派ぶってその拷問を眺めているオーディエンスの方が感情に流されているという構図こそが本作のミソ。「世論は本当に戦いを理解しているのか?」ということを鋭く問いかけてきます。
[DVD(吹替)] 8点(2012-05-04 02:03:16)(良:1票)
439.  ザ・タウン
「ヒート」が好きで好きで仕方がないベン・アフレックが撮ったクライムアクションは、案の定「ヒート」そっくりでした。とにかくディティールにこだわるマイケル・マンの長所を本作も引き継いでおり、大胆でありながら頭の良い犯罪計画はなかなかの見応えがあります。床屋で街中の男の頭髪を集めてきて、犯行で使用した車にそれをばらまくことでDNAによる追跡を不可能にするというアイデアなんて、「その手があったか!」と犯罪者でもない私も大興奮なのでした。ひとつひとつのアクションもしっかりと作りこまれていて、こちらもマイケル・マン作品に匹敵する仕事ができていると思いました。 ただし、ドラマパートはもうひとつかなという印象です。「ヒート」には”静かな緊張感”というものがありましたが、本作はただ静かなだけ。中盤はかなり退屈します。最重要容疑者としてFBIに面が割れた後のFBI捜査官とのやりとりや、恋人に自分の正体をどう明かすのかといった点にドラマやサスペンスがあったと思うのですが、勿体ないことにそういったおいしい点に限って軽くスルーされています。パッと見は冴えない中年だが恐ろしく頭が切れるというFBI捜査官も、主人公との絡ませ方が巧くなかったために作り手が意図したほど面白いキャラクターになりえていませんでした。これらについては、作品全体の取捨選択に問題があったのだと思います。ウダウダ悩む主人公という観客がさして見たいわけでもない要素に目一杯フォーカスしてしまい、クライムアクションを見に来た観客がもっとも関心を持つ点(FBIとの攻防、ヤクザ者としての仁義etc…)を捨ててしまったために、中途半端な仕上がりとなってしまったようです。とはいえアフレック監督の手腕は本物なので、彼の次回作には大きく期待しています。次のイーストウッドになるのはアフレックですよ。
[DVD(吹替)] 6点(2012-04-30 00:49:48)
440.  アナザー プラネット 《ネタバレ》 
【注意!壮絶にネタバレしています】 これまた評価に困る映画です。「もしあの事件がなければ、自分の人生はどうなっていたのか?」誰もが漠然と考える話を「もうひとつの地球」というSF設定に落とし込んだアイデアと構成力には素直に感心しました。現実的なドラマを主軸にしながらも、空に浮かぶ地球というシュールなイメージによってちゃんとSFしているバランス感覚はお見事だし、低予算映画とは思えないほど演技もしっかりしています。ただし内容にはほとんどメリハリがなく、正直言って退屈します。アート系ぶってる作りは時に鼻につき、もうちょっと観客にサービスしても良かったのではないかと思います。鑑賞中は「良い点と悪い点を差し引いて5点くらいが妥当かな」なんて考えていました。。。 しかし、クライマックスで作品の評価は一転しました。これは紛れもない傑作ですよ。ラスト、主人公はもう一人の自分と遭遇します。つまり、「もうひとつの地球」でも主人公は同じ悲劇を経験していたのです。この映画は「人生に”もし”はないのだ。起こったことは常に自分で背負わなければならない」と訴えているのです。そして、「その延長にある赦しもまた、自分自身でしか与えられない」と主張します。主人公は被害者の父親と親しくなり、一時的には心を通わせました。しかし、彼女の罪が明らかになった途端に被害者は再び心を閉ざし、彼女に赦しは与えられませんでした。結局、彼女は「アナザープラネット」へ行く権利を父親に譲り、家族と再会する機会を彼に与えることで赦されようとしますが、この結末はその願いをも全否定します。そこいらの安っぽいドラマであればこれら一連の心の交流で彼女は赦されるところですが、本作は「"罪と決別する点"は自分で見つけるしかない」と突き放すのです。その点を見つけられなかった老人は自分自身を完全に壊してしまいましたが、主人公が同様の末路を辿らないためには自らの判断で罪と決別するしかありません。しかしこれは他人に赦しを請うよりも難しいこと。本作は非常に重い主張をしているのです。SFという変化球でこんな重いことを言われるとは思いもよりませんでした。本作の構成は神がかっていますよ。
[DVD(吹替)] 8点(2012-04-25 01:48:55)(良:2票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS