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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  パラノーマル・アクティビティ 《ネタバレ》 
殺人鬼やモンスター・ゾンビを登場させて、派手な流血を好むと一般的に思われているアメリカ人としてはなかなかユニークな作品を作ったという印象。恐怖を与える存在が具象化されることはなく、音や影や足跡などを利用して得体の知れない“存在”で驚かせる発想やアイディアはそれなりに評価したいところ。 また、(実際には大して起こらないが)何かが起こるかもしれないという人間の感じる恐怖感を上手く煽り、恐怖感を効果的に利用するできているのではないか(個人的にはそれほどの恐怖は感じなかったが)。製作者の計算なのか、予算の関係なのかは分からないが、観客の“恐怖”が発散されずに最後まで“維持”されていくので、ラストに上手く繋がっていく。さらに、素人のような俳優、ブレまくるカメラの映像、いい位置にセットしてある寝室のカメラなどのマイナス的な要素も逆手にとって効果的に利用している。しかし、全体的に作り込みの甘さ、粗さ、稚拙さも目立つ作品(意見は分かれるかもしれないが、「ブレアウィッチ」の方が作り込み度は高かったと思われる)。 低予算による試験版のようなものなので、この程度でも仕方がないかもしれないが、もうちょっとだけでも丁寧に作成し、もう少し様々なアイディアを盛り込むことができていれば、評価はもっと高まっただろう。夜間に突っ立っているだけ、突然ベランダに行くといったネタもあるが、ラスト付近で突然おかしなことを言い始めるといった“不気味さ”などをもっと前面的に押し出してもよかったか(ラスト後の余韻は評価)。序盤は楽観的な雰囲気を出していてもよいが、楽観が悲観に上手く変わるような演出も求めたいところ。 ところで、やむを得ず、渋谷で鑑賞することとなったが、観客層が非常に若かった。 驚いた声を出す・隣の連れと常にしゃべり続ける・前の席の後ろに足裏をくっ付けるような体勢で見るといったように鑑賞態度は非常に悪かったが、リアルに感情を表してくれるので、本作のような作品を鑑賞するにあたっては、悪くはない環境だった。 予告編や紹介VTRなどを見ていると、ラストではだいたい“アレ”が来ることが分かるので、自分は構えることができたが、不意を付かれると相当にビビルようだ。 後ろの席から、どれほどビックリすれば、そのような衝撃を与えることができるのかと思えるほどの衝撃が自分の席を直撃した。 映画よりも、それが一番ビビった。
[映画館(字幕)] 6点(2010-02-20 13:41:41)(笑:1票)
42.  ラブリーボーン 《ネタバレ》 
素晴らしい作品だと思うが、同時につまらない作品でもある。ジャッジするのはかなりやっかいな作品だ。ただ、ピーター以外には作れないような作品に仕上がっており、独創性は評価したいところ。初見では上手く感じ取れなかったが、何回か見ることがあれば、評価は変わると思われる。 「事件の真相」「殺された少女が幽霊になり、家族にメッセージを送って犯人を暴く」「残された家族が犯人に復讐をする」といった視点からみてしまうと、はっきり言ってつまらない作品としか思えないだろう。本作はそういった視点をメインには描こうとしていない。大人の事情からかサスペンスタッチが前面に出ているテイストとなっているが、ピーターはそういった面はもっとカットしたかったのではないかと思えるほどだ。スタンリー・トゥッチが必要以上に頑張り過ぎてしまったのも誤算だったか。おかげでバランス感が悪くなった点は否定しがたい。 本作は「殺された少女が天国に行くまでの過程」及び「残された家族・関係者が再生していく姿」を描いた作品であると思われる。そういった視点から見てみると、本作の評価はがらりと変わると思う。ピーターにとっては、犯人の存在なんて本当はどうでもよかったのではないかと思われる仕上りだ。 殺された少女の少女らしい想いや、家族の苦しみや悲しみが、ストレートではないものの、時間を掛けてゆっくりと丁寧に描かれている。しかし、本来描きたい部分を何故か真正面から十分なヒカリを当てずに描こうとしており、豪華な俳優を起用しているのも逆に計算外だったか。各キャラクターを活かしきれていないと感じてしまうのは仕方がない。 面白いと感じられる点は、関係者それぞれが“愛”を見出して、スージーの死を受け入れていくところだ。スージーのボーイフレンドや妹は新たなパートナーを見つけて愛を感じたことで、スージーの死を受け入れることができたのではないか。また、娘の死という事態に上手く向き合っていくことができなかった父母も時間の経過とともに悲しみを癒して、それぞれの壊れかけた“愛”を再認識することで娘の死と向き合うことができるというまとめ方はなかなか感動的なところだ。喪失感・無力感から救われていく“希望”のような光が見えたような感じがした。しかし、つまらなさを否定しにくく、アプローチが監督の思惑とはズレていったようなところがあるので、賞賛しにくい映画ではある。
[映画館(字幕)] 6点(2010-02-09 23:03:10)(良:1票)
43.  重力ピエロ 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 雰囲気や仕上りは悪くはないので、評価は低くはない。しかし、「どこが良かったか」と問われると、なかなか答えが見当たらないという困った作品。家族の絆に対して感動できるものでもなく、不可思議なストーリーやサスペンスに関しては文句を付けるレベルではないが、回りくどさにやや疑問点も生じてしまう。 “たかだか・・・”という事柄がいかに関係者を苦しめるかが痛いほどに伝わってくるが、一歩間違えれば「改心しない犯罪者は殺してもよい」という極端な結論が導かれてもおかしくはない。どんなに苦しいことがあっても、笑って明るくしていればよいというメッセージは心に響くので、ありきたりでキレイごとのオチになるかもしれないが、“復讐”を果たすことなく、犯罪者にある程度のダメージを与える程度に済ませてもよかったかもしれない。復讐を果たすことである程度スッキリとするかもしれないが、別の苦しみにさいなまれることになるだろう。しっかりとしていないかもしれないが、兄なのだから、やはり弟を止めないといけない。兄だからこそ、弟を止めないといけないというべきだろうか。逆に、兄が犯罪を企てているとすれば、弟だからこそ、兄を止めるということもあるだろう。「グレープ」のやり取りのように一緒になって、笑って明るくすれば、弟の心の傷を癒してやることができるのではないか。“血”よりも家族の“絆”は濃いのであり、“最強の家族”というのはそういうことではないだろうか。 (統計学的なデータは分からないが)暴力的な性質は先天的にひょっとして遺伝するかもしれないが、犯罪に対して犯罪で仕返しをするというのはいかがなものか。自己の遺伝子を否定したいにも関わらず、自らそれを認めることにはならないか。せっかく産んで育ててくれた父母の恩に報いることにもならないだろう。どんなに苦しいことがあっても、“復讐”をしなくても最強の家族の“絆”はそれを乗り越えることができるはずだ。 もし、“復讐”を肯定ないし是認できるレベルにもっていきたいならば、もう少し深く兄弟の内面に切り込まないといけない。“法律”“倫理”といったものを超越できる作品レベルに達しないと、「殺人はやっぱりダメだよ」という意見が多くなっても仕方がないだろう。原作を読んでいないので、こういうことしか言えない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-08 23:09:26)
44.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 「フィッシュストーリー」という一曲が世界を救うという流れだが、ほとんど直球がなくて、大部分が変化球というところは逆に面白い仕組み。 『それ関係ないやん』という突っ込みを観客に入れさせることを当然に念頭に置かれて製作されているだろうが、狙い通り突っ込みを入れたくなる流れとなっている。 マジメに直球を待っていると、意外な変化球に戸惑わされることになるだろう。 この世の中では何が起きても不思議ではないということをユニークな視点から感じさせる作品となっている。 また、70年代はパンクロックに情熱を燃やす青年たちを描き、80年代はオカルトチックな昭和テイストを感じさせ、00年代はアクション作品を描き、10年代はSFテイストを交えながら、終末をまさに迎えようとする3人の男たちによる独特な世界を描かれており、年代ごとに演出のテイストを変えていることは評価したいところ。 ただ、どういう趣旨かは分からないが、多部未華子が出演している大部分のシーンにはどこか違和感を覚えさせる。 いい意味でのアンバランスなバランス感覚に優れている作品だが、この部分が悪い意味で失敗しているように思われる(別に彼女のことは好きでも嫌いでもない)。 「正義のみかた」というキーワードから、特撮やアクションヒーローのようなテイストに振りすぎてしまったか。 もともとリアリティのある作品ではないが、胡散臭さが倍増したというイメージ。 こういうテイストが好きな人もいるとは思うので、正解・不正解という単純な割り切りはできないが、個人的な感覚では少し合わなかったという印象。 また、「シージャック発生○分前」というテロップを出すことに対しても違和感がある。 そんな種明かしをすることによって、どういう効果を期待しているのだろうか。 こういうことは、むしろ突然やった方が観客にインパクトを与えられるのではないか。 逆鱗による居酒屋での“フィッシュストーリー”の種明かしも、彗星の爆発のあとのオーラスに持ってきた方がいいかなという印象。 “フィッシュストーリー=ほら話”というオチをもってくると、今までのこと全て現実なのか虚構なのか、観客に対して“混乱”させる効果を生じさせることができるだろう。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-07 20:37:03)
45.  ラッシュライフ
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 原作未読のためか、終始疎外感を覚えてしまった。 学生が製作に関わっているようであり、自分の世界を構築することにこだわりすぎて、観客の目を意識するまでには至らなかったようだ。 しかし、それほど嫌いではないテイストにはなっている。 原作を読んでいないので何ともいえないが、調理するのは難しい題材だったのだろうか。 もう少し練り込めばもうちょっと良い作品に仕上がった気がする。 また、個別エピソード自体理解できないものがないが、あまりにも漠然かつふんわりとしすぎてしまったか。 全体を通して、何を伝えたいのか完全にボヤけてしまった。 4人の監督がそれぞれを受け持っているようなので、バランスも少々悪くなっている。 黒澤編のような分かりやすい作品にするのも何か違和感を覚えてしまう。 そのアンバランスさが本作の“味”のようなものにもなっているが、一般受けするのは難しいだろう。
[DVD(邦画)] 4点(2010-02-06 23:20:33)
46.  Sweet Rain 死神の精度 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 原作未読のためか、終始ズレを感じてしまった。 47年近い時間のズレを製作者は懸命に表現しようとしたのかもしれないが、それが上手くマッチしてないという印象。 難しいところだが、時間のズレなどは思い切って無視して演出してもよかったのではないか。 詰まらないことに監督はコダワリを持ったようであり、観客からするともっと他の事をきちんとして欲しいと言いたくなる。 また、ステレオタイプ型の表現が多く、それが違和感を与えているばかりか、全体的に表面の部分をすくったようにしか思えないために深みを感じられない。 さらに“死”を問い切れていないように思えたので、高く評価することはしにくい。 死神の立ち位置も曖昧のような気がした。 死神よりも、ある意味で藤木さんの方が達観しているのには違和感を覚える。 ラストでは成長しているようには感じられるものの、死神としての成長を描くということも重要なことではないか。 死神は全てのことは知っているが、人間の感情を理解していないということといった設定を付加するとよかったかもしれない。 そういう意図は込められていたようだったが、雨が止まないのは、死神としての途中の状態であり、人間の感情を理解して初めて一人前の死神になれるというようなことでもよかったか。 一人の女性を描くのならば、『なぜあの時に殺さなかったのか』ということをもう少し問うてもよかっただろう。 生き続けることによって、不幸で苦しい思いをしたことは間違いないが、生き続けることによって、素晴らしい経験もできたということを藤木さんに伝えてもよい。 映画内では、藤木さんの方で自己解決してしまっており、死神をただの使い走りにしているのはちょっと違うのではないかという印象。
[DVD(邦画)] 5点(2010-02-05 23:31:21)
47.  ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
原作未読。長尺だが、飽きることがなくストーリーに集中でき、鑑賞後は素直に面白かったと感じたので評価は高めにしたい。宗教ネタや重いネタも絡んではいるが、事件のネタ自体はそれほど驚かされるものではなく、比較的ありふれた猟奇的殺人事件がベースとなっているものの、捜査の推移を見守っていれば、それなりに楽しむことができる。事件の謎や人間関係は一見複雑にみえるが、比較的シンプルで丁寧な作りとなっているので、付いていきやすいと思われる。観客を置き去りにして、製作者の都合でストーリーをガンガン進めるというようなハリウッド映画のような作りではなくて、捜査を依頼された雑誌記者と同じような目線で観客はゆっくりと丹念に事件を見つめることができるのも好印象だ。シンプルで丁寧な作りとはいっても、訳の分からない伏線を張って自滅したり、登場した瞬間に「オマエ犯人だろう」というような単純な作りではなっておらず、犯人や事件の真相は最後まで分かりにくいので、ハリウッド映画とは異なる“新鮮味”を感じられる。スウェーデンの最近の映画はあまり見たことがなかったので、この機会に見られてよかった。 また、ハリウッド映画とは異なり、派手さがない一方で、エログロ度が高いというのも特徴。殺そうとする直前に、水を飲ませてやるといったやり取りなどは、なかなか興味深い視点からも描かれている。 リスベットとミカエルの微妙な関係も物足りないながらも、興味深く描かれている。この二者の関係がより深まるのは“続編”を待つしかないようだ。ただ、自己の感情は押し殺し、暴力的な感情に満ちているように見えるリスベットだったが、ミカエルにメールを送付した時点で、心のどこかで何かを求めているのではないかと推測もできる。 リスベットは消えない“過去”をもっているからこそ、ノーマルとはいえないアプローチを図り、一緒に寝ようとするミカエルに対してストレートな対応ができないところも何かを雄弁に語っている。抱いてはいけない感情が溢れてきたから、あの時に姿を消したのだろうか。忘れることができないから、刑務所に逢いに来たのだろうか。 サスペンスの面白みだけではなくて、こういった複雑な感情が入り混じっている点も面白みの一つとなっている。単純化された相対する性格のコンビとはやや異なるタイプのコンビであり、二者の微妙で単純ではない関係も本作を豊かなものにしている。
[映画館(字幕)] 7点(2010-02-04 23:04:01)
48.  陽気なギャングが地球を回す 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 原作は読んだことがないが、原作者が本作を見たら何と言うのだろう。 設備が整った厨房で最高の食材を“素人”が調理したら・・・こうなるのかなという作品。 おでんの中からステーキが出てきたというようなぶち壊し感で溢れている。 おふざけが酷すぎるだけではなくて、ストーリーの繋がりも悪く、個人的には全く合わなかった。 苛立ちしか覚えなかったのでこのような評価となった。 「そろそろ勘弁してくれ、さすがにもうすぐ終わるだろう」とDVDプレイヤーの表示をみたら、たった60分しか過ぎていなかったときには絶望を味わった。 監督の努力は認めたいが、努力だけでは評価に繋がらない。 『俺ってセンスいいだろう』と声を大に自慢げに言われると、うっとうしく感じるのは仕方がないのではないか。 本当にセンスが良ければ賞賛を与えたいが、センスがなければ痛々しさが加重的に増加していく。 本当にセンスが良い者は『俺ってセンスいいだろう』というようなことを言わないようなセンスを持ちあわせている。 また、本作のセンスは監督のオリジナルのセンスではなくて、他の映画やドラマからの引用やマネのような気がする。 自分が本当に身に付けたセンスではないので、しっくりとこないのではないか。 「ラストはラブストーリーあり、裏切りあり、大どんでん返しありの誰も見たことのない凄いものにするぜ」という声が聞こえてくるが、バランスが悪く、美しさもロマンも何もないただのごった煮という仕上り。 本作にこれほどの俳優が揃ったことが不思議だ。 “伊坂原作”という点に惹かれたのだろうか。 それとも脚本は読まずに原作を読んだのか。 ただ、出演者たちが楽しそうに、きちんと演技をしていただけが救いだった。 薄っぺらなキャラクターになんとか深みを出そうと懸命に努力をしているだけに監督の罪は重いかもしれない。 ファッションについてはそれなりに楽しめるので、この点だけは評価したい。
[DVD(邦画)] 1点(2010-02-03 23:44:04)(良:1票)
49.  CHiLDREN チルドレン 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 ストーリーはほとんど理解できるが、全体的に漠然としており、言いたいことが分かるようで分からないメッセージで構成されている。しかし、駄作なのかと問われれば、そうでもないように思われた。完全に頭で理解できるメッセージではないが、心の中に何かが残るように感じられる。ぼんやりとはぐらかすような描き方であり、核心部分に触れてなさそうに思われるが、実は静かに鋭く核心に迫っているのではないか。 子どもに対する接し方については、明確な答えは存在しないのであり、本作のようなぼやっとした描き方は実は正解に近いのではないかと思う。 真似することは難しいが、大森の役柄のように子ども目線で接するのも一つの方法だろう。坂口の役柄のようにストレートにマジメに向き合うのもまた一つの方法だろう。國村の役柄のような方法で子どもと心を通わせるような“奇跡”もあり得る。「ダメな奴はいつまでもダメだ」と諦めて突き放すことは簡単かもしれないが、それでは子どもの心に傷が残り、大人になってもその傷は癒えない。難しいかもしれないが、手を差し伸べないと何も始まらない。本屋のオヤジのアプローチも好ましいものだ。万引きしたからといって「謝りなさい」と言って謝らせることには意味がなく、少年の存在を認めてやることであの少年も変わることができたのではないか。 小西の役柄については結局スルーするのかと思ったが、ラストであれほどコンパクトにまとめるのはなかなか上手いことをすると思われた。印象深くまとめられており、冗長に説明するよりも多くの想いを語っている。 坂口の役柄についても子ども時代については何も語られていない。もちろん非行をするような子ども時代ではなかったと想像できるが、悪いことをしていないにも関わらずすぐに謝る姿勢、日焼けサロンに篭り外界との遮断を試みている姿、料理にこだわる姿、週末に一人で過ごす姿をみると、彼も心に何かを抱えているものがあるのかと想像できる。 もちろん大森の役柄についても同様なことを感じさせる。 原作に何かが書かれているのか、それとも何も書かれていないのは分からないが、そのように感じさせることが演出家・脚本家としては必要なことだろう。 映像に描かれていることだけではなくて、それだけではない+α的な要素が加味されていることは評価したい。
[DVD(邦画)] 7点(2010-02-02 22:22:04)(良:1票)
50.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 前知識が何もなかったせいか、不思議な感覚にさせてもらえた。 感動というわけでもなく、友情に心を熱くさせるわけでもなく、不可思議なストーリーに驚かされるわけでもない(瑛太がドルジということくらい見ていけば分かるはず、自分はお弁当屋のお握りのシーンでだいたいの謎が解けた)。 しかし、ふわっとはしているが、心に何かを響かせるものを感じさせる作品だ。 切ないようでどこか暖かいような感覚。 がっちりとした絆ではないけど、人間と人間が深い部分で繋がりあったような感じだろうか。 このような独特な感覚を与えている点を評価したいところだ。 日本人同士ではなくて、国籍が違う二人という点もユニークなところ。 それをアヒルと鴨で表現している点もなかなかセンスが良い。 ただ、あえて触れないが、全てを完全にまとめきれていない部分もありそうなので、その辺りが減点材料となるだろうか。 また、河崎が神と崇めていたディランの曲を琴美が聴き、琴美が歌っていたディランの曲をドルジが聴き、椎名が歌っていたディランの曲をドルジが聴き、出会うはずのない椎名とドルジを音楽が引き合わせるという展開も面白い。 「フィッシュストーリー」等の伊坂作品にも表れるが、“音楽によって人を結び付ける”ということが、彼の作品らしいと感じさせるところ。 瑛太も濱田も松田も個人的に嫌いではないもののそれほど好きではない役者だったが、変な色を付けずにナチュラルに演じていたように思われる(濱田は色を付けていたかもしれないが)。 序盤、瑛太はなぜ変にはっきりとした喋り方をしているのかと思ったが、彼なりに役柄を検討した結果なのだろう。 ラストもややボカしている点も悪くはない。 犬を助けようとする男が轢かれるわけがないと思うのか、そうでないかは観客に委ねられている。 いずれの結果にせよ、あの二人は一歩成長して前に進めたということが伝わってくるラストとなっている。
[DVD(邦画)] 7点(2010-02-01 23:03:14)
51.  ゴールデンスランバー(2009) 《ネタバレ》 
原作未読。原作は面白いと聞いており、ストーリーは面白いと言わざるを得ない。特徴のあるキャラクターが多数おり、それぞれが活きたキャラクターとなっている点も評価したい。しかし、本作中にあるような「たいへんよくできました」という評価はしにくく、「よくがんばりました」というところか。 冒頭の首相暗殺及び警官の突然発砲からグイグイストーリーに引き込まされるが、肝心の終盤に従い、だんだんと失速していったような気がする。いつ捕まってもおかしくない、いつ殺されてもおかしくないという緊張感や、這いつくばっても逃げてやるという気迫、真相はいったい何なんだというような不気味さが若干薄れており、少々ヌルい空気感も漂っていたところがマイナスというところか(監督のテイストなのでこの点を評価する者もいるとは思うが)。 やや現実離れした部分に関しては許容できるレベル。本作のリアリティと非リアリティのバランスはそれほど問題なく感じられるのではないか。訳の分からないキャラクターの登場や訳の分からない展開になっても、クエスチョンマークが付くようなことにはならず、あれはあれで比較的良い味付けになったと思われる。 ただ、本作にとって必要不可欠な“大学時代の回想シーン”だが、そのウエイトがやや重すぎたかもしれない。もちろん、青柳の一人のチカラで逃げ切れるわけではなくて、3人の助けや彼を“信頼”してくれた者たちのおかげである。“花火”“壊れかけのクルマ”“大外刈り”といった青春時代の思い出によって彼は救われる結果になり、それらを有効に描くためには“大学時代の回想シーン”をじっくり描き込む必要があるという流れは分かる。 時間を掛けて、“大学時代の回想シーン”を一生懸命に描いているが、結局のところ現代版に対する“伏線”に用いられているだけのような気がしてならない。 そのようなことをぐだぐだと描くよりも、4人が繋いで渡したビートルズの“ゴールデンスランバー”が入ったIpodというキーアイテムが彼の命を救ったということをもっと印象的に描いた方がよかったような気がする。 ビートルズの“ゴールデンスランバー”という曲が4人にとっての“絆”のような存在ならば、その“絆”が深く響くように端的な仕上がりにした方がよいか。 “友情”を描いておきながら、“友情”がガチッと描かれた仕上がりにできていないところがもったいない。
[映画館(邦画)] 7点(2010-01-31 20:57:04)(良:2票)
52.  かいじゅうたちのいるところ 《ネタバレ》 
原作未読。単純な面白みは得られないが、独特な世界観を構築するとともに、様々な感情を喚起させられ、映画としてはそれほど悪くはなかったと思われる。色々な遊びを考えながら、永遠に遊んでいたいと願っていた子ども時代を思い出し、少しノスタルジックな気持ちにさせられる。また、映画館を出た後の空気に少し違和感を覚えさせられた。やっぱり、また“現実”という荒波の中で、もがくしかないのかなというような、物悲しい気持ちにさせる作品。マックスでさえも何かに気付いたのだから、そろそろ自分も“現実”に気付いた方がいいのかもしれない。この世の中に誰もが皆幸せになれる世界や、自分が思い描いたような理想郷のようなものは存在しない。自分は王様でなければ、魔法使いでもなければ、ガンダムのパイロットでもなく、ドラえもんも助けてくれなければ、魔法使いに騙されたお姫様も白馬に乗った王子様も現れないのである。 “現実”では、友達たちとの楽しかった関係が永続することはなく、ある程度の人間が集まればいざこざや不協和音が生じるということは避けられない。ぶち壊されたり、ぶち壊したり、自然に消滅したりという形で関係は消えていく。そういったことを経て何かを失って、また“孤独の耐え方”や“社会のルール”といった何かを得て、我々はつまらない人間になって変わっていくしかない。それが大人や社会人になることという“現実”を改めて認識させられてしまった。“映画”という現実逃避の手段を用いておきながら、過酷な“現実”を認識させられることはちょっと厳しい気持ちにさせられるが、それもまた“映画”の役割だろうか。 しかし、過酷な“現実”だけではなくて、本作には普遍的なことも描かれている。 どんなに傷ついても、どんなに傷つけることがあっても、友達たちと遊んだ楽しい思い出は消えることはない。つまらなそうにしていたあの不気味なかいじゅうの一言が心に残った。また、社会でどんなに傷ついても、“家族”という帰る場所があることも描かれている。友達との関係とは異なり、親子の関係は壊そうとしても壊れずに永続していく。母親も姉も自分には構ってくれなかったが、永遠に突き放すことはないのである。 夢オチや妄想といった次元の話が展開されなかったことも評価。あれはあれで一つの現実なのだろう。もっとも現実であろうと、虚構であろうと、そんなことはどうでもいい話だが。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-30 14:08:47)
53.  サロゲート 《ネタバレ》 
素材は悪くないが、煮込み具合が足りず、全体的に中途半端な仕上り。ディズニー映画らしく変にマジメっぽく説教臭いところは個人的には嫌いではないが、アクションとしてもサスペンスとしてもSFとしても物足りない。科学技術の発達に伴う人間性の喪失、夫婦の絆の回復を描いたヒューマンドラマ的テイストが盛り込まれており、それがいい意味での裏切りとはなっているが、上手くハマっていないところがもったいない。土台よりもメッセージの方が大きすぎて、バランスを欠いている。 サスペンスがメインの作品ではないにせよ、伝道師の正体、殺人事件の真相、両黒幕の存在などの見せ方に工夫がないのではないか。ただ、ストレートに“事実”を伝えるだけというのはあまりにも無策。例えば、伝道師が殺された際に、伝道師の正体をあの場面においてわざわざ見せる必要があっただろうか。伝道師が殺されたと観客にミスリードさせておいて、博士の家に着いた際に再登場させてネタ晴らししてもよいはずだ。刑事の相棒の女性についても乗っ取られたことをあからさまに見せるよりも、終盤まで観客に違和感を与えておいて、ラストにネタ晴らしすることで観客に驚きを与えることもできたはずだ。事件の真相についても違和感が残る仕上り。特殊かつ貴重な銃を殺し屋に渡しておいて、依頼主がその殺し屋をきちんとフォローしないという展開が許されていいのか。 また、「サロゲートシステム=悪」という単純な図式についても違和感があるところ。 “痛み”を感じないように殻に閉じこもっているところに問題があるが、生身の体になれば心の痛みに対して向き合えるかというのは分からず、擬似体だからこそお互いの気持ちに素直になれるということもあるはずだ。ネットやメールの方が素直に自分をさらけ出せるということがあるだろう。 よくよく考えると、「サロゲートシステム」の恩恵を一番受けていたのは、ブルース・ウィリスが演じた男だったのではないかとも思える。本気で妻と息子の死について向き合いたければ、初めから扉を蹴破って妻と話せばよいはずだ。妻が「サロゲートシステム」に閉じこもったことによって、ブルースは子どもの死や傷ついた妻と向き合うことから逃げることができていた。現実と向き合っていそうで、現実から目を背けていたのはブルース本人だったという気がしてならない。だからこそ、ラストの決断に繋がったのだろうが。
[映画館(字幕)] 5点(2010-01-28 23:29:30)(良:2票)
54.  オーシャンズ 《ネタバレ》 
興味を惹かれる映像や、迫力のある自然の驚異的な映像には確かに圧倒される。 我々が知っていると思っている“海”という存在の新たな一面を垣間見ることができる。 ただ、映画としては面白みに欠ける作品。ドキュメンタリーなので面白みに欠けるのは仕方ないとはいえるが、既存のドキュメンタリーの枠からは飛び出している訳ではなく全体的に単調な仕上がり。前半は新鮮さがあるため画面に集中できるが、後半に進むと慣れてきて飽きてくるところもある。 驚異的なシーンだけで構成して観客に驚きを与えるのではなくて、『食物連鎖』『自然と自然との共生』『自然の驚異』『人類の過ち』『南極と北極』といったテーマが見えるような仕組みで構成している。こういった作りには好感を持てたが、全体的に“サプライズ”感が乏しい。多くのシーンは脳裏には焼きついたが、「シャコが結構強い」ということがインパクトの残るデキでは物足りないのではないか。 また、「アース」ならば人類が登場してきてもおかしくはないが、「オーシャンズ」で人類が登場するのはやや違和感あり。 乱獲という問題はあったにせよ、広大な海洋において人類が影響を与えられるほど、人類の能力はそれほど高くないのではないか(衛星からの写真によって川による海洋への汚染の影響はあったが、どういった影響が実際にあるかは不明)。 多くの海洋生物は確かに滅んだかもしれないが、それは自然の摂理であって、果たして人類の責任といえるかは分からない。 人類の影響を描くにするのならば、もっともっとエゲツナイ映像も用いてもらわないと観客に訴えるチカラには欠ける。 網に掛かった魚たち、ヒレだけを切られて投げ捨てられるサメ(実際にはロボットサメ)、海に捨てられたショッピングカート程度では手ぬるいと言わざるを得ない。 本作を観た者に本気で“海”のことを考えてもらいたいという気迫がない。 そもそも何をして欲しいというメッセージがないので、観客は混乱しそうだ。 ストレートに『自然を大切にしましょう』ということを大きな声で発することは大事なことかもしれないが、“映画”ならではのスマートな伝え方というものがあるのではないか。 子ども達に対するメッセージなのでストレートに伝えたいのかもしれないが、やはりこの辺りはもう一工夫して欲しいところ。 もっとも海がダメになる前に、人類が先にダメになるだろう。
[映画館(吹替)] 6点(2010-01-24 01:02:27)
55.  (500)日のサマー 《ネタバレ》 
監督のマーク・ウェブは「スパイダーマン」の新シリーズの監督に抜擢されるだけのことはある。既存のルールや公式には従わずに、自由自在・変幻自在に演出を試みて、自らの豊かな才能を発揮させている。いったり来たりと目まぐるしいのは男女の関係でもよくあることであり、カレンダーどおりにストーリーを展開させない演出は上手い。 ストーリーは多くの人が経験あるような事柄が描かれており、共感を得られることだろう。 なんだかんだで最後は二人が結ばれるというカードの偽善的な言葉のような結果にはならず、“現実”がきちんと描かれているのは評価したいところ。自分の中ではこれこそ最高のハッピーエンドだった。自分も若かりし頃に一目見ただけで“運命の女性”だと信じて、無謀とも思える戦いを挑んだことがあったのを思い出した。二人で食事をしたり、映画を見たり、ドライブしたり、旅行したりできるまで関係を膨らませることはできるけど、どうしても“友達”という一線を相手は超えさせようとはさせなかった。自分自身が大したことがないということが大きな理由だが、本作を見ると「それだけではないのかな」という気がする。『運命ではなかった』という言葉の重みが自分にはずしりと響いた。 鑑賞後、「面白かったけど、そんな運命の出会いなんてないよな」といったことを思いながら席を立とうとしたら、すぐ傍に若い女性モノの定期入れが落ちているのを発見した。「しばらく待っていたら本人が戻ってくるんじゃねえの?ひょっとしてこれが運命の出会いか」というようなことをリアルに一瞬思ったけど、面倒くさいので係員に渡して帰った。この辺りが“現実”と“映画の中の世界”が違うところ。しかし、実際の出会いはなかったけど、現実でもこういう偶然や奇跡のような出会いのようなものが溢れているのかもしれないと、ふと感じられた。“現実”と“映画の中の世界”の違いは、実際に一歩踏み出すかどうかの違いなのかもしれない。本作のラストにおいても、いったんは何のアクションもせずに面接に向かおうとするところを主人公は立ち止まっていた。一方、女性の側もいったんは誘いを断ろうとしていた。躊躇してしまうというのは実際にもよくあることであり、躊躇いながらも一歩踏み出そうとしている点は、現実に即しながらもキレイにまとめあげている。自分も一歩踏み出してもいいかなと思える非常に好感のもてるラストだった。
[映画館(字幕)] 9点(2010-01-23 12:56:22)(良:1票)
56.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
お世辞抜き、文句なしの満点作品。全てがあまりに完璧すぎて涙が出そうになった。 人間が製作できるレベルを超えている映画。ジェームズ・キャメロンは不可能を可能にしたといっても過言ではない。圧倒的な才能を持つ者が尋常ではない努力を重ねた成果に生まれた作品であり、凡人にはもはや到達できない地点に達している。 映像については、CGとは思えないリアルで違和感のないデキとなっている。最初は3Dにアタマと眼が慣れていないためか、「こんなのゲームムービーじゃないか」と思っていたが、あっという間に世界観にリンクできる。映画館にいるというよりも、パンドラという星に実際に立っているかのような気分になれるほどだ(六本木ヒルズの映画館の高性能のおかげもあるが)。 映像だけではなくて、ストーリーも恐ろしくデキがよい。ストーリーが非常にナチュラルに流れていき、世界観に調和している。また、伏線やエピソードも全てを拾いきっており、全てが何かに活かされている。本作に描かれていることで無駄なものなど何一つもないといえる完璧な脚本。 さらにメッセージにも溢れている。『異文化との交流』『自然破壊・自然との共存』『戦いの悲惨さ』など時事にマッチングしたものばかりだ。ジェイクとナヴィ族の女性との交流が、実に穏やかでリアルかつ自然に描かれていることが非常に好感をもてる。彼らが豊かな時間を共有することで二人に“絆”を築かれていき、観客である我々もナヴィ族という異文化を理解する助けになっている。最初はジェイクや他の地球人同様に、野蛮で醜い下等な生物かエイリアンと思っていたはずなのに、次第に彼らは我々と近い存在と思えるような感情となり、見ている我々にも“友情”のようなものが育まれていく。ジェイクの行為は、地球人を裏切るようなものなのかもしれないが、彼の裏切りが理解でき、共感できるものとなった。我々にとっては単なる巨木・単なるモノなのかもしれないが、彼らにとっては生命そのものといえるほど非常に神聖なものということを理解させてくれる。自分の利益を追求し、従わない者を服従させることばかりではなく、お互いを知り理解し尊重することが共存に繋がるということをキャメロンは本作を通して伝えたかったことだろう。 最先端の映像技術の素晴らしさを体験するだけではなく、メッセージに溢れた作品であり、現代の我々が見るべき映画に仕上がっている。
[映画館(字幕)] 10点(2009-12-23 18:32:41)(良:3票)
57.  Disney'sクリスマス・キャロル 《ネタバレ》 
3D吹替え版を鑑賞。プロの声優が担当しているので全く違和感はないばかりか、逆に意外と満足できる仕上りとなっている。 今ままではクリスマスを何か特別なこととはそれほど深く考えていなかったが、本作を見るとちょっとだけ考え方が変わるような映画になっている。誰しもが幸せな気分になれるクリスマス、誰かのために何かをしてあげたいという気持ちにもなれる。 映像的なレベルにも大満足できる仕上りとなっている。現時点での最高峰まで到達したといっても過言ではないだろう。「ポーラー・エクスプレス」からのたゆまぬ努力が結実している。イマジネーションを相当に駆使されており、丁寧に仕上げられているため、実写や2Dアニメでは味わえない臨場感を堪能できる。それだけではなくて、リアルでも味わえないような美しさも感じられる。 ただ、素晴らしい作品だが、何か物足りなさも覚えるところもある。ストーリーは道徳的なものに終始している。子ども向け(大人にこそ痛みが分かる作品だが)にそういう映画を作りたいという製作趣旨は理解できるが、人間というのはアタマで分かっていても、それほど簡単に変われるものではなく、人を見る目もそれほど簡単には変わらない。今まで嫌な奴が突然善人に変わっても、周囲の者はすぐに好きになれるというわけではない。クリスマス向けのハッピーなおとぎ話に対して、楽観的すぎると文句を付けるのは見当違いもはなはだしいが、それにしてもやや甘すぎる。 子ども向きということもあって甘いケーキのような作品であり、大人としてはもう少しビターな味付けの方が好みだったかもしれない。 例えば、改心して善行を行っても一向に誰も自分のことなど気に掛けてもらえないが、何かの機会をきっかけにして彼の善行が明らかになり、周囲の者が彼を評価していくというようなワンクッションを挟むと少々印象も変わったかもしれない。 いったん絶望なほどの孤独を味わせてから、最終的に皆と分かり合えると感動もより深まるだろう。 製作サイドとしても何か物足りなさを覚えたのか、ロケットのようなもの(過去の精霊)が爆発して吹き飛んだり、小人化してプチアドベンチャーさせたり、という手法を取っているが、これも悪くいえば子どもだまし的なところがある。 こういった手法だけではなくて、何か別のアプローチで観客を楽しめるもう一工夫をすれば、完璧な作品に仕上がったことだろう。
[映画館(吹替)] 7点(2009-12-21 23:48:42)
58.  脳内ニューヨーク 《ネタバレ》 
強引に点数を付けるとこの程度となるが、点数を付けにくい映画。 満点を付けてもいいかもと思うほど、ある種のレベルを超えている映画でもある。 ぶっちゃけると1割も理解はできなかったと思う。 何を描きたいのかについては、ボンヤリとしたイメージしか伝わらず、言葉で表現するのは難しい。 “死”“生”“人生”についての映画なのかな程度としか言いようがない。 “自分”というものは、存在しているようで存在していないものなのだろうか。 ただ、この不可思議さや難解さは、「フザケルナ」と頭にクルようなものではなくて、どこか心地よさを感じられるものだ。 描かれている事象はそれほど難解ではないので、まったく飽きることはなく、不可思議な世界に酔いしれることができる。 “緑の○○○”“燃えている家”など、あまり意味など深く考える必要はなく、何も考えずにアタマを映画に委ねた方がよさそうだ。 終盤でリアルな“現実”が明らかになり、種明かしでもあるのかと思っていたら、そういうこともなく、“混乱”させたままスパッと観客を突き放す辺りも常人とは思えない発想。 “現実”や“虚構”と考えること自体が凡人の発想なのかもしれない。 映画に描かれた世界は、全てが“現実”であり、全てが“虚構”でもあり、又はどちらともいえない第三の世界と捉えるのが、カウフマンの発想なのだろうか。 毒にも薬にもならない映画に見飽きている人にはおススメできる映画に仕上がっている。 それにしても映画監督はこういう難解な作品にチャレンジしたがるものなのだろうか。 初映画監督作品でこのような作品を作ってしまう、カウフマンはやはりとんでもない奇人だ。 次回作も楽しみだが、いきなりハードルを上げてしまうと飛び越せなくなってしまう。 カウフマンのことだから、またいい裏切りをしてくれそうだが。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-21 23:36:39)
59.  パブリック・エネミーズ 《ネタバレ》 
評価しようと思えば、いくらでも評価はできる作品には仕上がっている。 映像面においては、素晴らしいシーンや素晴らしいアングルなど、見所で溢れている。 例えば、森の中でデリンジャーが銃を乱射するシーンを映しながら、相手の動きまでをも同時に捉える場面などには唸らされる。また、個人的に気に入ったのは、“静”から一気に“動”へと展開していく演出だ。冒頭の脱獄シーン、銀行強盗シーン、アパートやクルマの中にいる捜査官を襲う各シーンなど、少なくとも4~5ヶ所はそういった演出を試みている。このような演出により、作り物らしくはないリアリティさは生まれている。ただ、マイケル・マンらしい臨場感のある演出は冴えているが、映画としては面白みに欠けるような気がする。 特に、人間ドラマが希薄のように感じられた。ジョン・デリンジャーという人物がはっきり言って見えてこない。人質に取った女性にコートを貸してやるところを含めて、もちろん断片的にはどのような人物かは分かるが、デリンジャーに共感したり、彼の生き様に感動したりはできにくい。ジョニー・デップの圧倒的な存在感により、彼の姿は確かにカッコよくは描かれているが、彼の内面を深く描けば、もっともっとデリンジャーは輝きを増したのではないか。本作のメインになると思われたデリンジャーと恋人のビリーの肝心な関係も深くは描かれていない。深まりそうになったところで、逮捕されてしまうので仕方がないところはあるものの、彼らの関係には物足りなさを覚える(ラブシーンは綺麗に撮られていたが)。 デリンジャーとFBI捜査官のパーヴィスの関係も何も伝わってくることはなく、パーヴィスの執念といったものは感じられない。出番の少なかったフーヴァーの方が存在感を発揮するようではダメだろう。緊迫感を伴って追われる者を描くためには、追う者の存在感が強くなければ、面白みがなくなる。 そして、デリンジャーとその仲間たちの関係もイマイチなので、初見では誰かが死んでも、訳の分からない奴が死んだとしか感じられない。FBIサイドとしても増強したメンバーを含めて、彼らの存在感が強くはないので、この部分においても面白さが感じにくい(見に行く映画を当てるというシーンなどはあるが)。 人間ドラマをメインにしたタイプの映画ではないということもできるが、ストーリー上の面白さを感じにくいタイプの映画になってしまった。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-13 22:32:18)(良:2票)
60.  カールじいさんの空飛ぶ家 《ネタバレ》 
3D字幕版を鑑賞。それなりに楽しむことはできる作品には仕上がっている。妻を亡くし孤独になって旅に出るという少々センチメンタルで感傷的なストーリーになると思っていたのに、いつのまにか“奇妙な鳥を巡る戦い”になってしまったのは物足りないが、子ども向き作品なのでこの辺りは諦めるしかない。ただ、それなりには楽しめたが、それだけで良かったかは疑問が残るところ。ピクサー作品は失敗が許されなくなってしまったためか、ディズニーに完全買収されて歯車が狂ったのか、近年の作品は心に響く作品でもなく、ドタバタ感だけが残るという印象が強い。他のピクサー作品ももちろんドタバタしているが、「メッセージ性」「ストーリー」「アクション・映像」が三位一体となっており非常にバランスが優れていた。しかし、本作は「アクション・映像」の比重が多く、ややバランスが悪いような気がする。小さなお子さまは喜ぶかもしれないが、これでは見終わった瞬間「面白かったね」だけで終わる作品となってしまう。ピクサー初の3D作品だから、「アクション・映像」の比重が多いのかと思ったものの、それほど3Dを活かした作品でもなかった気がする。「カールじいさんがアルバムを眺めるシーン」など、もちろん素晴らしいシーンもあるが、“夢の実現”“冒険への憧れ”“過去の思い出に囚われて生きる希望を見出せない”“孤独か友情か”といったメッセージ性が深く感じ取れないところがある。深く感じ取れないのは、マンツに思い出の詰まった家に火を付けられて、ケヴィンよりも家を守ろうとするシーンと、家を放り出してラッセルやケヴィンを助けようとシーンの対比が上手く働いていないといったところにもあるような気がする。「たかが家だ」というカールじいさんのセリフはカッコいいが、カールじいさんの心境の変化が分かるように、もっと分かりやすく演出した方がよかったのではないか。また、“滝に辿り着いて夢を実現したものの、孤独のままで何も変わらない”というシーンももっと感傷的に描いて欲しかったところ。過去の楽しい思い出ももちろん重要だが、我々は現在を生きているわけであり、現在の仲間たちと過ごす時間もまた重要で楽しいものというメッセージに繋げたい。ケヴィンとラッセルを助けたいというカールじいさんの“情熱”を肌で感じられるレベルまでに仕上げることができたら、もうちょっと高い評価をしたかもしれない。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-05 23:06:48)
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