41. さすらい(1957)
《ネタバレ》 1957年の作品で、しかも特別メジャーな作品というわけでもないので、画像の状態は良いとは言えなかった。 でも最近は1950年代~60年代のモノクロ作品を見慣れてきたせいか、大して苦にならなかった。 むしろ、アントニオーニ地獄にぐいぐいと引き込まれてしまった。 スティーヴ・コクラン演じる主人公の男はかなり横暴なキャラで、(内縁の)妻に暴力ばかり振るっている。 とてもじゃないが、共感できるような主人公ではない。 しかしただ単に乱暴な亭主かと言えばそうでもない。 一人娘をかわいがったり、妻に捨てられ弱いところを見せたりするのだ。 主人公の見せるこの「ギャップ」がとてもよかった。 妻に捨てられ、小さい娘を連れて「さすらい」の旅に出る辺りから、“ロードムービー”的な色を帯びてくる。 旅先で仕事を見つけるのだが、娘のことを考えて仕事をするのをやめてしまう。 なんて娘想いの父親なんだ・・・と思いきや、今度は唐突に娘を母親の元へ送ってしまったりと相変わらずハチャメチャな主人公。 そして最後は悲劇的な結末を迎えてしまう。 結局、最後まで優しい人なんだか何なんだか分からないキャラで、最後まで主人公に対して共感することができなかった。 しかし、何故だか主人公に対して愛着を感じた。 時折見せる「弱さ」みたいなものが、日頃横暴なキャラだけに際立ち、そこから人間味を感じ取ることができたからではなかろうか。 なんか最後まで救いようのない話で終始するんだけど、単純なハッピーエンドではないだけに、かえって心に残る一本となったようだ。 [地上波(字幕)] 8点(2007-09-01 20:25:44) |
42. 猫と庄造と二人のをんな
本作を選んだ理由、それはもちろん大好きな香川京子目的。 しかもハスッパで不良な役を珍しく演じていると評判の作品なので、ずっとレンタルするのを楽しみにしていた。 そして監督は豊田四郎。 恥ずかしながら、初見の監督だ。 なので、こちらも楽しみであった。 いつもながら、初見の監督の作品を観る瞬間というのはワクワクする。 主演は40代の頃の森繁久彌。 雰囲気としては、渥美清のキャラクターに間寛平のシャベリを混ぜ合わせたノリ。 (例えが適切でないと思いますが、分かりやすいかと思い、敢えてこの表現でいかせて頂きました。) その母親役に浪花千栄子。 何度か観たことのある女優だが、相変わらず小気味がよくて切れ味のある凄い演技をする女優だ。 あっぱれ。 そしてその妻役(先妻)に山田五十鈴。 これがまた陰険な役を自然な感じで演じており、凄いの一言。 口元をひきつらせつつ、嫌味を言うところなんぞ、気持ち悪いくらいに自然に演じている。 そしてそして、森繁の後妻役に香川京子。 いやー、本作を観て良かったぁー! 終始、下着か水着です。 その露出の多い肌を、森繁が撫で回す。 うーん、いいねー、いいなー。 つい先日、75歳になる彼女のトークショーに行ってきたばかり。 そんな彼女の若い頃の作品を観るにつけ、古い作品を観た時にしか感じることのできない、“時間の経過が織り成す不思議な感覚”を堪能することができた。 本作は、終始喜劇的なノリで進んでいくのだが、最後はとても恐ろしい顛末へと向かっていく。 それでも表面的には喜劇的体裁。 だけど、それだけに余計に怖い。 感情むきだし欲望むきだし意地むきだしの女性3人を前にして、森繁はこうつぶやく。 「やっぱり畜生(猫)が一番だよ」 と。 人間の愚かさと狡猾さを、猫と対比しつつ、喜劇的な手法で表現してみせた本作。 豊田四郎監督の凄さを一発で体感できた。 しかし最後は怖かったなー・・・ [ビデオ(邦画)] 8点(2007-09-01 00:19:03)(良:1票) |
43. 宗方姉妹
まず“宗方姉妹”の妹の方を演じた高峰秀子。 高峰秀子の出演作は『浮雲』をはじめ、意外と沢山観てきているが、本作での高峰秀子は最強のインパクトであった。 「本作における彼女は、彼女らしくない」と、批判の声も聞こえるようだが、いやいやかなり良かった。 特に、「~であった。」と、寅さんばりの独り語りをみせるところが秀逸。 ここに、彼女の特異な才能を見出すことができた。 次に姉の方を演じた田中絹代。 溝口作品で沢山観てきた女優だが、今まではどうも魅力を感じなかった。 特に、“女性として”の魅力を。 ところが、本作では不思議と、その“女性として”の魅力を感じることができたのだ。 あの慎ましやかな女性像。 現代の男にとっては憧れですね。 そして、その姉妹二人から想いを寄せられる色男役に上原謙。 終始、ニヤついた演技を見せている。 ずっと、いつでもニヤついているのだ。 ニヤつき頻度は、私が今まで観てきた映画の中でもナンバー1。 しかも、そのニヤつきが板についているから凄い。 さすがは上原謙。 ニヤつき上原謙。 上にも書いたように、高峰秀子が独り語りで、様々な魅力あふれる小話を披露する。 その中でも、最も私が心奪われた小話を、ここに引用してみよう。 ある寒い日、二人は皇居のお堀端を歩いていた。 男は手をつなぎたかった。 だけどつなげなかった。 二人は若かったのだ。 いつまでも歩いていたい二人であった。 しばらくして男は女に訊いた。 男「ねぇ、寒くないかい?」 女「いいえ。」 そして女はショールを肩に上げながら言った。 女「あなたは寒くないですか?」 最近、これに似た淡い経験をしたばかりなので、妙に心に沁みた。 人は自己の経験とオーバーラップするシーンを、映画の中に見出したりすると、妙に感動するもんですね。 誰もが経験する自分の中の青春の1ページ。 それと似たようなシーンが、映像として刻まれている作品。 そんな作品を観た時、自分ならではのオリジナルな感動を味わえるのだ。 そして、それが映画の持つ固有の魅力なのだろうと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2007-08-24 06:58:10) |
44. アスファルト・ジャングル
《ネタバレ》 ジョン・ヒューストン監督は見応えのある作品を作るなぁ。 『黄金』もそうだったけど作品に強く引き込まれた。 アメリカ映画は全般的に苦手だけど、ジョン・ヒューストン監督は好きなアメリカ人監督の一人だ。 とはいえ、悪人は最後全員滅んでしまった。 誰か一人くらいは逃して欲しかった。 勧善懲悪が行き過ぎている嫌いがある。 悪人が美味しい思いをするのは時代的に許されなかったのだろうか。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-04-07 20:08:31) |
45. ラ・ポワント・クールト
《ネタバレ》 倦怠期を迎えた夫婦が夫の故郷を二人で散策するうちに、いつの間にやら仲直りをする。 そんな単純な話だが、何故だか面白い。 牧歌的な村の風景と素朴なモノクロ映像、そこに奇妙な音楽が混じり合うことによって、独特の味わいを生み出している。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-09-16 18:34:53) |
46. わが青春のマリアンヌ
《ネタバレ》 鑑賞後、マリアンヌは結局実在したのかよ!?夢か現かどっちなんだよ!という野暮な疑問に襲われたけど、これはまあ一つの寓話というか、結論なんてあってないようなものでは?というところに、自分の感想は最終的に着地した。 色んな解釈や議論が生まれる作品としてみても、とても幻想的で美しく、そして魅力的な作品ではないかと思う。 まさしくクラシック名画と呼ぶにふさわしい作品だ。 [DVD(字幕)] 7点(2023-01-01 23:37:33) |
47. 再会(1953)
《ネタバレ》 これって、一人勝ちしたのは菅井一郎じゃないか! 強烈な悪役の三國連太郎ですら久我美子をものにできなかったのだから。 悲劇で終わるのは好みではないけれど、かなりの力作であり大作だと思うので、この点数で。 (追記) 久我美子さんがいまだご存命なのは嬉しい限りです。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-10-29 11:46:46) |
48. 七つの弾丸
《ネタバレ》 三國連太郎を目当てで鑑賞。 銀行強盗を企む男、結婚間近の銀行員とその彼女、タクシードライバーとその妻、昇進試験に向けて頑張る警察官。 これらの登場人部達は物語の途中まで交わることがなかったが、終盤になって一気にその人生が交錯する。 一人の狂った男により、何人もの人生が一瞬にして破壊された。 終盤のたたみかけと緊迫感、そして三國連太郎の鬼気迫る演技が素晴らしい。 犯人に関わった人物達が総崩れの中、銀行員の婚約者の女性だけは早々に見合いをして、新しい男をゲットしていた。 この女の気持ちの切り替えの早さとしたたかさは、ある意味、犯人よりもおぞましかった。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-10-27 20:48:05) |
49. 怪盗ルパン
《ネタバレ》 軽妙洒脱とは、まさにこの作品のことを言うのではないだろうか。 様々なトリックもしっかりと見せてくれるのも楽しい。 ヒロインの女優さんはとにかく美しい。 アメリカ女優なんかより断然魅力的だ。 ルパンの私生活を覗けるのもまた楽しい。 ジャック・ベッケルの作品にハズレ無し!と言いたいところだが、何かが足りない。 そうだ!平手打ちだ! ビンタが一度も出てこなかった。 だからどこか物足りないんだ。 [DVD(字幕)] 7点(2022-10-15 17:10:44) |
50. マーティ
《ネタバレ》 細かくリアルに描かれており楽しむ事はできた。 その反面、ガールフレンドと自分の親との確執や、嫁姑問題、ガールフレンドが出来た時の友人のやっかみ等、リアル過ぎて見ていて疲れる部分も多々あった。 主人公の男女は、たとえこの後、結婚までゴールインできたとしても、その先には嫁姑問題や絶えない夫婦喧嘩が待っているのだろう。 それがまた、人生のリアルなんだと思う。 そして、それが嫌で結婚しなければ、この映画の冒頭で主人公が言われた「良い歳して独身なんて恥ずかしくないの?」と言う言葉を浴びせられる。 結婚と独身、どちらの道に進んでも、それぞれ苦労や苦悩が続く。 その内容を描いた本作は、時代が移れど変わらない普遍的なものを描いている。 本作は現実的過ぎる内容の為、映画を見て現実を忘れたい人には不向きな作品だ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-08-13 16:40:12) |
51. 賭博師ボブ
《ネタバレ》 アンリ・ドカエによる冴え渡る映像美と、ボブを演じた俳優のダンディズムを堪能する映画かと。 しっかし、モノクロの映像美は素晴らしいの一言! 夜の街のネオンの輝きがこの上なく虚しくて、心奪われる。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-09-06 00:33:32) |
52. 黄金の腕
《ネタバレ》 薬物依存の恐ろしさを感じた。 同時に、女性の怖さ、愛情の深さ、そして強さも。 終盤の畳み掛ける展開もお見事! [インターネット(字幕)] 7点(2021-05-25 11:59:44) |
53. くちづけ(1957)
《ネタバレ》 純愛映画としてコンパクトかつスピーディ。 川口浩も個性を発揮している。 野添ひとみが住んでいるボロアパート、これがまた独特の風情があり、アパート脇の坂がとても印象的。 でも題名通りの「くちづけ」だけでは満足してもらえず、やはり言葉も必要なのか、はぁ。。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-23 15:23:44) |
54. 青春怪談(市川崑監督作品)
《ネタバレ》 1950年代の日本映画の良さが詰まった作品。 そして北原三枝はスタイルが美しい! 細いだけでなく、姿勢が良いんだろな。 あと、テキパキとした所作と、さっぱりとした語り口、実に魅力的な女優さんだ。 それに対し一番笑ったのが、轟夕起子が池で溺れかけて、それを助けようとした山村聰が思わず「重い」と言ってしまう場面。 思わず言葉に出てしまった感がすごくあって、妙にリアルで爆笑してしまった。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-05 22:12:13) |
55. 陽のあたる場所
《ネタバレ》 これはとても秀逸な恋愛劇であり、サスペンスでもあります。 アメリカ映画的というよりも、フランス映画的な感じがします。 フランス映画のような繊細さを持った作品でした。 この男は悪い男ですが、同情はします。 貧しい生まれで、あのようなお嬢さんとお近づきになれたら… 前途揚々たる、夢の生活を手放したくない、ならばいっそのことあの女を、、と考えてしまうのはあり得ることでしょう。 しかしそれを実行してはならないと思います。 それにしても、あの女工が不憫でならない。 あまりに気の毒すぎます。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-03-13 22:18:20)(良:1票) |
56. 吸血鬼ドラキュラ
《ネタバレ》 ピーター・カッシングにしても、クリストファー・リーにしても、スター・ウォーズで知った私としては、こうして彼らの若い頃の作品を見るというのは非常に興味深いものがあった。 ハマーフィルムの作品を見るのも初めてだったし、まるで異世界の映画を見ているような新鮮味があった。 内容自体もスピーディで、絵的な色合いも良い。 荘厳な雰囲気が漂っているのが、これまた良いね。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-03-08 22:04:53)(良:1票) |
57. 旅情(1955)
《ネタバレ》 ベネチアにおける男女の出会い。 美しいベネチアの街並みと共に、とても切なく描かれている。 旅先での運命的な出会いであり、限られた時間の中で互いに愛し合うからこそ盛り上がる。 この男女にとって、この出会いは一生の思い出となることでしょう。 子供からの万年筆のプレゼント、これもとても良かった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-02-20 19:14:52) |
58. 社長三代記
《ネタバレ》 楽しめました。 特に森繁と小林桂樹の掛け合いが面白い。 司葉子も杉葉子も綺麗! [CS・衛星(邦画)] 7点(2020-11-27 15:35:04) |
59. 地上より永遠に(1953)
《ネタバレ》 個人的に最近見たアメリカ映画は不作続きだったが、久しぶりにアメリカ映画で楽しめた。 バート・ランカスターがやはり良い。 軍隊モノとしての要素と恋愛モノとしての要素が、うまく融合した作品。 軍隊内での階級が事細かに出てきて面白い。 将軍に将校に下士官。 大尉、曹長、伍長、二等兵。 この辺の階級に関わる興味は男ならではのもの。 女性は興味ないだろなぁ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-10-29 16:08:48) |
60. 三人の狙撃者
コンパクトにまとまっており緊迫感があって、なかなか楽しめた。 最初から最後まで退屈せずにみる事ができた。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-10-16 22:57:17) |