601. 移動都市 モータル・エンジン
《ネタバレ》 人類を絶滅寸前にまで追い詰めいた世界最終戦争から1700年後、人々はそれまでとは違う新たな文明を築き上げていた。それは、住んでいる都市を丸ごと移動させながら生活すること――。それぞれの都市は資源を求めて互いに闘い合いながら、ただひたすら荒野を移動し続けていた。弱肉強食の荒廃した社会で、世界の頂点に君臨するのは大都市ロンドンだ。そこで暮らす平凡な青年トムはある一人の女性と出会ったことから、この世界を揺るがす壮大な陰謀へと巻き込まれてゆく……。移動する都市同士が激突するという特異な未来社会を舞台に、様々な事情を抱えた主人公たちの波乱万丈の旅路を壮大なスケールで描いた冒険活劇。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが制作したという本作、色んなところで悪評を目にしていたし、本国アメリカでも大コケだということだったので、どんなもんじゃろと今回鑑賞してみました。結果は……、「いや、そこまで悪くないじゃん」というのが僕の率直な感想です。確かに、脚本がしっちゃかめっちゃか過ぎる、大風呂敷を拡げすぎてもはや世界観が破綻している、主人公カップルが揃いも揃ってことごとく魅力がない、といった明らかな欠点はあるのですが、この最先端の映像技術を駆使したアクションシーンはなかなかの迫力で、それを眺めているだけでも僕は充分楽しめました。まあストーリーは完全に『天空の城ラピュタ』に『ハウルの動く城』をブレンドしただけでしたけどね。そのうちこのアジア系の女海賊が「40秒でしたくしな」って言いそう、ヒューゴ・ヴィーウィング演じる悪役がそろそろ「ははは、まるで人がゴミのようだ」って笑い出しそう、世界を破滅に追いやった最終兵器の暴走を止めようとするクライマックスなんてまんまですやん、などといろいろ突っ込みながら観てました。ちゅうわけで中身とかには全く期待しなければ、この荒唐無稽すぎるぶっ飛んだ設定やらふんだんにお金をかけたであろう迫力の映像なんかはそこそこ楽しめると思います。 [DVD(字幕)] 6点(2019-11-14 01:33:24) |
602. ストレンジャーズ/地獄からの訪問者
《ネタバレ》 親戚夫婦が営む湖畔の小さなロッジへとバカンスでやって来た、とある四人家族。反抗期の長女がこれから全寮制の高校へ入学するので、家族水入らずの夜を過ごすために両親が半ば強引に計画したのだ。いやいや連れてこられた長男とともに、小さなトレーラーハウスでギクシャクした夜を過ごす家族たち。すると、唐突にドアをノックする音が。母親がドアを開けてみると、そこには見慣れない若い女が立っていた。「タマラは居ますか?」――。謎の問いかけを残し、すぐに夜の闇へと立ち去ってゆく女の子。不審に思いつつもまた見せかけの家族団欒へと戻る両親と子供たち。だが、彼らはまだ知らない。その謎の言葉こそ、血に塗れた殺人ゲームの開始を告げる合図だということを……。シーズンオフの真夜中のキャンプ場を舞台に、突如として現れた三人の残虐な殺人鬼によって恐怖の一夜を過ごすことになった家族を描いたスプラッター・スリラー。リブ・タイラーが主演したという前作は未見。低予算ながらキレのいい演出と小気味の良いストーリー展開でスマッシュヒットを飛ばした『海底47m』のヨハネス・ロバーツが監督したということで今回鑑賞してみました。いやー、相変わらずこの監督の“画”への拘りは凄いですね~。不穏な映像が醸し出す、このいや~~~な空気感は素晴らしかったです。神出鬼没の三人の殺人鬼たち(彼らの被るマスクもヤバい!)が現れるタイミングも、絶妙の間で画面に出てくるもんだから、もうこれが怖いったらありゃしない。ゲームの開始を告げる謎の言葉の意味を最後まで明かさないのも、終始ほとんど無言で襲い掛かって来る殺人鬼も、不条理な恐怖が炸裂しまくり!緊迫感を煽る不気味な音楽の合間に急に軽快なポップソングを流すとこなんかも、この監督、良いセンスしてますね~。きれいな照明に照らされた、こじゃれたプールでの殺人鬼との血みどろの攻防なんてそのハイセンスな演出が冴えまくりです。最後、トラック炎上でさすがに死んだと思われていた殺人鬼が実は生きていて、燃え盛るトラックで追いかけてくるとこなんか、「も、もう止めてくれ~」と何度も叫んじゃったし。いやー、この監督さん、なかなか才能あるんじゃないですかね。まあ肝心のお話の方は余りにもシンプル過ぎて若干物足りなくもありますが、僕は最後まで充分楽しませてもらいました。うん、面白かったです! [DVD(字幕)] 7点(2019-11-11 00:42:47)(良:1票) |
603. エア・ストライク(2018)
《ネタバレ》 日中戦争の真っ只中、戦略上の重要な拠点であった重慶を巡る日中の決死の攻防を迫力の映像で描いた戦争スペクタクル巨編。ブルース・ウィリスとエイドリアン・ブロディという二大ハリウッドスター共演ということで今回鑑賞してみましたが、実はこれって100%中国資本の映画だったのですね。普段、中国映画は全くと言っていいほど観ないのですが、なんだかその中国映画のダメな部分の見本市のような、恐ろしく程度の低い作品でした。本作の最大の見どころであるはずの日中両軍の空中戦が予算の関係かかなりショボいCGなのはまあ目をつぶるとしても、肝心の脚本がお粗末すぎてもう見られたもんじゃありません。一応群像劇と言っていいのでしょうけど、誰が誰で物語上いまいったい何をしているのかという基本的な部分がおろそかにされているせいで、ストーリーがさっぱり頭に入ってこないのです。ところどころ苦笑してしまうほどの前時代的なクサい演出が繰り返されるのも見ていて痛々しいったらありゃしない。また、中国映画だけに日本軍の残虐行為が何度も強調されるのはまぁそういうもんなんでいいんですが、これでもかと強調されるあからさまな中国礼賛描写には思わず苦笑しちゃいました。中国人が何故かみな流暢な英語を喋るのも違和感しか湧いてきません。しかもこれが何故か全員アフレコなので口の動きと声が微妙にあっていないのも意味不明で、かなりストレス。ブルース・ウィリスも完全に金のためにやっつけで仕事してる感ありまくりで、しかも実の娘まで出して親子で荒稼ぎする始末。エイドリアン・ブロディにいたっては何のために出てきたのかさっぱり分かりません。極めつけは全てのことが終わった後の麻雀大会のエピソード。蛇足以外の何者でもない茶番劇そのもので、しかもこれがブリザードレベルのかなり寒いコント。もはや怒りを通り越して失笑しか湧いてきませんでした。率直な結論を述べさせてもらうと、もはや映画と呼ぶのさえ憚られるような、最低レベルのクソ映画でありました。 [DVD(字幕)] 1点(2019-11-11 00:12:53) |
604. チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛
《ネタバレ》 17世紀、オランダ。そこでは東洋から持ち込まれた美しい花、チューリップの球根を巡り、富める者も貧しい者も投機に熱中していた。買ってから数日も経てば倍以上の値が付くとあって、皆が全財産をつぎ込むほどの熱狂ぶり。小さな球根は人々の剥き出しの欲望によって、どんどんと危険な水域にまで値を釣り上げていた――。アムステルダムにある小さな孤児院で貧しい生活を送っていたソフィアは、持って生まれた美貌から一回り以上も歳の離れた豪商に見染められ、彼の元に嫁ぐことに。それまでの貧しい生活は一変、彼女は何不自由ない暮らしを手に入れる。だが、そこには愛だけが足りなかった。子供を求める夫の欲求に応えることが出来ず、次第にギクシャクしてゆく夫婦。そんな折、彼女の肖像画を描くためにヤンという若く貧しい画家が雇われる。自分の絵を描いてもらううちに、その情熱的な目をしたヤンという男にソフィアは次第に惹かれてゆく。やがて、二人はとうとう一線を越えてしまうのだった。ソフィアとの新たな生活を夢見るヤンは、資金を稼ぐためにチューリップ投資に目を付ける。そんななか、家の召使の予期せぬ妊娠を知ったソフィアは、とある計画を思いつく……。世界初の経済バブルと言われるオランダのチューリップ投機を背景に、交錯する愛憎の果てに破滅へと向かってゆく男女の姿を描いた歴史ラブ・ロマンス。ディン・デハーンをはじめとする何気に豪華な役者陣共演に惹かれ、今回鑑賞してみました。しっかりとした時代考証に基づいているであろう映像は終始美しく、まるでフェルメールの絵画の世界に入り込んだかのような世界観は見応え充分でした。許されぬ恋に身を焦がすヒロインもその画の力に負けず劣らず美しく、ディン・デハーンとの大胆なラブシーンも官能的でとてもいい。そんな美しい世界と対照をなすかのように描かれる闇の部分――チューリップ熱で身を滅ぼしてゆく人々の浅ましい姿もより画の美しさを強調させることに成功しています。ただ、全体的に演出に雑な部分が散見されるのが本作の残念なところ。細かいところに「?」な部分が多すぎて、いまいち物語に入り込めないのです。チューリップ熱、若く貧しい画家との不倫、召使の赤ちゃんを自分が産んだように画策しようとする主人公、その召使の恋人の失踪、これらの要素が最後までうまく纏まっていきません。なんだかいろいろ詰め込み過ぎて物語の焦点がぼやけてしまっているように感じました。物語の語り手をその召使にしている意義も、正直見出すことが出来ませんでした。映像的にはすこぶる良かっただけに、お話の方がなんとも残念な作品でありました。 [DVD(字幕)] 5点(2019-11-10 23:44:00)(良:1票) |
605. 狂人ドクター
《ネタバレ》 19世紀に実在した、悪徳精神科病棟の狂気の世界を描いたサイコ・スリラー。あまりにも直接的なタイトルと実力派俳優ジェームズ・フランコが監督・主演を務めているということで今回鑑賞してみました。感想は……、鬼のようにつまらない映画でありました。それ以上でもそれ以下でもありません。主演女優さんのキレイなおっぱいに+1点!! [DVD(字幕)] 2点(2019-11-10 23:18:47) |
606. 孤独なふりした世界で
《ネタバレ》 ゴミを拾うたびに、宇宙のカオスが一つ減る――。ある日突然、謎の現象により人類の99%が死に絶えてしまった未来社会。そんな終末を迎えつつある世界で、たった一人、街に残った人々の死体を片付けて廻る孤独な男、デル。家々に残る乾電池を集め、シーツに包んだ死体を山の中に弔い、遺された故人の写真をファイリングする静かな日常。誰とも会話することなく、一日の最後に赤ワインを嗜み、図書館で本を読みながら眠りに就くような彼の前に、ある日、謎の少女グレースが現れる。もともと孤独を愛するデルだっだが彼女に強引に押し切られ、やがて一緒に暮らすようになる。ともに協力して街の遺体を弔い続ける二人。最初は疎ましく思っていたデルも、心優しいグレースに次第に心を許してゆくのだった。だが、彼女は誰も知らないとある秘密を抱えていて…。ゆっくりと死に絶えてゆく世界で出会ったそんな孤独を愛する男と孤独を嫌う女、彼らの静かな交流を詩情あふれる映像で綴ったディストピア・ドラマ。偏屈な主人公を演じるのは、あくの強い演技で独自の存在感を発揮するピーター・ディンクレイジ。等身大の魅力を放つヒロイン役には、いま最も注目を集める人気若手女優エル・ファニング。この美女と野獣ならぬ、美女とブ男(失礼!)という組み合わせがなんとも味わい深い作品でしたね、これ。世界がこうなってしまわなければ、決して交わることのなかったであろうこの二人の、静かに少しずつ心を許してゆく過程がとても繊細に描かれています。ともすれば退屈になりそうなお話なのに、この詩情豊かな雰囲気が観ていてとにかく居心地がいい。ずっと静かに進んでいってたところに、急にハードロックの轟音が鳴り響くとこなんかもいいセンスしています。「街に1600人居た時の方が俺は孤独だった」などといった、印象的な言葉が時おり差し挟まれるのもポイント高いです。ただ、残念なのは急展開を見せる後半部分。グレースが抱えたこの世界の秘密が明らかにされるのですが、これがいまいちよく分からない。この“孤独なふりした世界”の真実をもっと作り込んでくれたら(例えば、高度に発展したハイテク社会がそこにあって、彼女はそこから逃げ出したアンドロイドだった!等々)、より完成度の高い傑作になっていたかもしれないのにね。この雰囲気のある世界観は凄く魅力的だっただけに、結末がなんとも惜しい。 [DVD(字幕)] 6点(2019-11-07 21:07:24) |
607. デス・ウィッシュ
《ネタバレ》 彼の名は、ポール・カージー。優秀な外科医として総合病院に勤務する彼は、愛する家族とともに幸せな生活を送っていた。だがある日突然、家へと押し入ってきた強盗団によって妻を殺され、一人娘も瀕死の重傷を負わされてしまう。巧妙な犯人たちはほとんど証拠も残さず、金庫の中身を持ってまんまと逃走。すぐに捜査は開始されたものの、警察は続発する凶悪事件に忙殺され犯人は一向に捕まらない。哀しみに暮れるカージーはやがてある一つの決断を下すのだった――。「法律など何の役にも立たない!ならば、俺の手で世に蔓延る悪を裁いてやる!!」。目深にフードを被り、慣れない銃を手にしたポール・カージー。夜の街へと繰り出した彼は、野蛮な犯罪者どもを次々と血祭りにあげていくのだった。そんな彼のことを撮影した動画がSNSを中心に拡がってゆき、やがて彼は街のヒーローとして人気を得ていく。そんな折、再び手術室へと戻った彼の元に、なんと亡き妻の時計をしたチンピラが運び込まれてきて…。愛する家族を奪われた外科医の血に塗れた復讐劇をハードに描いたバイオレンス・リベンジ・アクション。復讐に燃える主人公を演じるのは人気俳優ブルース・ウィリス、監督はどぎついバイオレンス&グロ描写で独自の地位を築いた鬼才イーライ・ロス。ハリウッド資本の影響だろうけど、この監督の良くも悪くも持ち味であるそのあくの強い演出は今回は控え目でした。なので、僕はそこそこ楽しめたかな。まあ、ベタっちゃあベタですけど、分かりやすいストーリーテリングやキレのいいアクションなどはぼちぼちのクオリティ。ブルース・ウィリスが全く外科医に見えないのはご愛敬ですけどね。ただ、新しい部分は一切ないので、三日も経てばほとんど内容を忘れてしまうだろうことは自信を持って言えます(笑)。結論。ヒマつぶしで観る分にはそこそこ楽しめるんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2019-11-04 21:56:15) |
608. ボーダーライン ソマリア・ウォー
《ネタバレ》 カナダの小さな町で高級ナプキンの営業マンをしている冴えない青年、J・バハダ。本当は作家志望の彼は、書き上げた原稿を出版社に送り続けるも没続きの鬱屈した日々を過ごしていた。そんなある日、彼は伝説的ジャーナリストのシーモア・トルビンという男に出会う。「本当のジャーナリズムを知りたければ、紛争が起こっている現地へと行くことだ」というトルビンの言葉に感銘を受けたバハダは、考えた末にとある決断を下すのだった――。「長びく内戦から無政府状態へと陥り、凶悪な海賊が普通に跋扈する最貧国ソマリアへと向かい、現地で得た情報を糧に本を執筆しよう」。ダメ元で依頼したソマリアのラジオ局から奇跡的に招待を受けたバハダは、最低限の資金だけを手に何もかもを捨ててソマリアへと旅立つのだった。だが、そこは人の命など羽毛のように軽い危険な地。銃を持った海賊や民間兵がそこら中にうろうろし、強い麻薬が当然のように売られている世界だった。果たして彼は無事に本を書き上げ、生きてこの地から帰ることが出来るのか?危険な紛争地へと無謀にも渡ったそんな一人の青年の極限の体験を実話を基にして描いたサバイバル・ドラマ。ちなみにベニチオ・デル・トロが出ている某シリーズとは何の関係もございません。内容の方もいったいコレの何処がボーダーラインなのか、最後まで観てもさっぱり分かりませんでした。ここらへん、こんな安易な邦題を付けた日本の配給会社に猛烈な抗議を送りたいところ。ただ、そういうのを抜きにしても、なんだか演出が全体的に中途半端な作品でありましたね、これ。ブラックな笑いを狙ったシニカルなシーンがあったかと思うと急にリアルな紛争地のシーンに戻ったり、自分はジャーナリストだという嘘がばれそうになる主人公の緊迫感溢れる描写があったかと思うと唐突にスラップスティックなアニメになったり…。作品としてのトーンに統一感が皆無で、最後までなんとも落ち着かない。観客を引き込む物語のフックが弱いのも本作の弱点。ただ、監督自らの体験を基にした自伝的作品だけあって現地の臨場感溢れる描写はなかなかリアルでした。主人公をサポートする通訳役を、『キャプテン・フィリップス』でも海賊役を演じてアカデミー賞にノミネートされた人が演じているのですが、この人こんな役させたら本当に巧いですね~。もはや本物の海賊にしか見えないんですけど(笑)。主人公をそそのかす大物ジャーナリストを演じたアル・パチーノも胡散臭さ爆発で大変グッド。それだけに内容の方がなんとも惜しい。 [DVD(字幕)] 5点(2019-11-04 00:23:31) |
609. フロントランナー
《ネタバレ》 民主党の次期大統領選の最有力候補(フロントランナー)と目されていたゲイリー・ハート上院議員。彼が突然持ち上がった自身の女性スキャンダルによってどんどんと自滅していくさまを実話を基にして描いた政治ドラマ。監督は丁寧な心理描写には定評のあるジェイソン・ライトマン。ちょっとした心の緩みによって瞬く間に落ちてゆく中堅政治家を演じるのは、まさに嵌まり役とも言うべきヒュー・ジャックマン。このゲイリー・ハートという一政治家に過度に肩入れするわけでもなく、かといって終始批判的な目線で描くわけでもない、あくまで客観的なこの作品のスタンスには好感が持てました。英雄色を好むと言われたのはもはや過去の話、小さな女性スキャンダルが政治家にとって命取りとなる今の時代を読み違えてしまったこの人の自業自得の自滅劇はなかなか面白かったです。彼の浮気相手とされた女性と長年連れ添った妻とのそれぞれのドラマも見応え充分。特に浮気相手のケア役として親身になって相談に乗っていたと思われていた女性選挙スタッフが役目を終えた途端、飢えたマスコミの群れへと彼女を放り出すシーンは見ていてとても切なかったですね。「今はまだ離婚しない。でも、いつかは…。それまで自分がしたことの重荷に苦しめばいい」と怒りを抑えながら静かに言い放つ奥さん、とっっっっっても怖かったです。うん、皆さんも下半身のことにはなるだけ気を付けましょう(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2019-11-02 22:04:06) |
610. LBJ ケネディの意思を継いだ男
《ネタバレ》 1963年11月22日、ケネディ大統領がダラスで暗殺されたその日、当時副大統領だったリンドン・B・ジョンソンは規定により新大統領に就任することとなった。それまで政治的に限定されたお飾りのような地位にいた彼が、いかにしてアメリカという巨大な国家を動かす最高権力者となっていったのか?本作は、その激動のアメリカ現代史の裏に隠された真実にスポットライトを当てた政治ドラマだ。監督はハリウッドを代表する実力派のロブ・ライナー、実在したアメリカ大統領を貫禄たっぷりに演じるのは個性派俳優ウディ・ハレルソン。ケネディ大統領が愛する妻の目の前で凶弾に倒れたまさにその日のドラマを縦軸に、LBJことリンドン・B・ジョンソンがいかにして副大統領にまで上り詰めたのかを過去の回想シーンを差し挟みながら描くその構成はなかなかのものだった。単調になりがちなこの手の作品を巧く料理した、ベテラン監督のその匠の技が光る。ケネディの実弟である司法長官や南部の重鎮であるテキサス州知事との政治的確執も分かりやすく描かれており、人間ドラマとしてもなかなか見応えがあった。深い愛情を感じさせる、彼と長年連れ添った妻との小さなエピソードの数々も味わい深いものがある。ただ、良くも悪くも優等生的作品なので、いまいち心に響くものがないのが本作の弱いところか。最後まで興味深く観られたが、そこまで印象に残るものはなかったというのが自分の正直な感想だ。 [DVD(字幕)] 6点(2019-11-01 21:10:50) |
611. マンディ 地獄のロード・ウォリアー
《ネタバレ》 イカれたヒッピーカルト教団に、目の前で妻を惨殺された男の血に塗れた復讐劇を独創的な映像で魅せるバイオレンス・リベンジ・スリラー。毎度おなじみニコラス・ケイジが、血走った目で次々と悪のヒッピー野郎どもを血祭りにあげる狂気の復讐者をのびのびと演じております(笑)。なんだか定期的にこの手の作品って制作されてますよね~。60年代、70年代のハード・ロックやヘヴィメタル、幾多のカルト映画などに多大な影響を受けたであろうサブカル系のB級作品。最近で言えば、賛否は別にしてロブ・ゾンビなどがその手の作品を幾つか作っておりますが、本作もその系譜に連なる作品であります。毒々しい原色を多用した映像にノイジーでエキセントリックな音楽、そして荒唐無稽なバカバカしい内容…。確かに唯一無二の独自の世界観を構築した中毒性の強いトリップ・ムービーであることは僕も認めるところなのですが、いかんせん前半の展開が死ぬほど退屈なのが本作の弱点。やたらとスローモーションを多用し、意味のよく分からないモノローグが延々と繰り返されるので、もう眠たくって仕方ありません。「とっとと本題に移行しろや!!」と何度もキレそうになっちゃいました。ただ、嫁が惨殺されてニコケイが復讐を開始する中盤あたりからようやく面白くなります。常人にはもはや考えつけないであろうぶっ飛び展開が次から次へと繰り出されてくるので、なんだか軽くラリっちゃったような気分に。白ブリーフ姿のニコラス・ケイジが雄叫びをあげながら、変な形の武器を一から創り始めるとこなんてもはや何が何だか分かりません(笑)。悪役たちも負けずと変な笛を吹いて、全身とげとげの謎のバイクライダーを助っ人として呼び出してくるという謎展開。こいつらがチェーンソーでひたすらチャンバラするシーンなんて何処まで真面目に創ってるんでしょうね。途中に流れるチェダー・ゴブリンのCMなんて頭おかしいとしか言いようがありませんわ。んで最後はラスボスのカルト教祖様の頭を素手でぶっ潰した血みどろニコケイが、土星をバックに車で立ち去って終わり……。なんやねん(笑)。と、この後半のぶっ飛びまくりのカルト・ムービーっぷりがすこぶる良かっただけに、前半のかったるい展開がなんとも惜しい。いらんシーンをバッサリ削って90分くらいの映画にしてくれたら、もしかしたら伝説のカルト映画になれたかも知れないのにね。 [DVD(字幕)] 6点(2019-10-31 22:49:03) |
612. 蜘蛛の巣を払う女
《ネタバレ》 女を暴力で支配しようとする男どもへの華麗なる復讐者、“ドラゴン・タトゥーの女”リスベットが帰ってきました!とは言っても、監督はおろか、主演二人もまさかの降板……(泣)。原作は世界的ベストセラーだけあって、お話自体はしっかりしていて普通に面白かったのですが、いかんせん前作のイメージが強烈過ぎて観ている間中、コレジャナイ感が半端ないんですよね、残念ながら。新リスベットを演じたクレア・フォイさんもプレッシャーに負けず頑張っていたとは思うし、こんなこと言っても詮無いことだと分かってはいるのですが、やはりルーニー・マーラのリスベットをもう一回見たかったです。ダニエル・クレイグが演じていたミカエル記者にいたっては、誰これ?って感じでした。まあ前述したとおり、お話自体はしっかりとよく描けていたし、北欧らしい乾いた空気感もスタイリッシュで大変良かったので、公正なジャッジを期して7点!にしても、あのラバー素材布団圧縮袋?に詰め込まれるのだけは死んでもヤですねー。 [DVD(字幕)] 7点(2019-10-30 21:01:08)(良:2票) |
613. マイル22
《ネタバレ》 アメリカで秘密裡に暗躍する特殊工作員たちの活躍を臨場感たっぷりに描いたハード・アクション。監督はこの手の分野を得意とするピーター・バーグ、主演を務めるのは彼の作品のもはや常連とも言えるマーク・ウォールバーグ。他にハリウッドの名バイプレーヤー、ジョン・マルコヴィッチが名を連ねております。まあこの監督らしいと言えばそれまでなんですけど、なんだか演出が全体的に大味な作品でありましたね、これ。冒頭の一軒家におけるテロリストたちとの銃撃戦こそかなりの迫力だったのですが、その後の主人公たちのドラマの描き方が正直かなり大雑把。彼らがそれぞれいったいどんな背景を抱えているかがいまいちよく分からないまま、強引にお話だけが進行していくので観客はだいぶ置いてけぼりを食らっちゃいます。そもそも主人公たちの属する組織がいったいどんなものなのかもよく分かりません。そこに東南アジア政府やロシアのKGBなどが絡んでくるうえに、主人公の現代の尋問シーンなども差し挟んでくるのでお話が無駄にややこしい。物語も中盤を過ぎたあたりで、ようやく「大量破壊兵器の秘密を知る亡命者を22マイル先の空港まで護送する」という本筋が見えてくるのですが、「え、そんな単純なお話やったんかい!!」と思わずずっこけそうになっちゃいました。ウォールバーグ演じる主人公がやたらイライラして悪態つきまくるうえに、腕のゴムをひたすらパッチンパッチンやるのも見ていて不愉快。瀕死の重傷を負った仲間のおばちゃんには手榴弾を渡し自爆を強要するという非情さを見せながら、違う仲間のええおねーちゃんが危機に陥ったら全てを危険にさらしてまで助けに駆けつけるという彼の一貫性の無さには、もはや呆れを通り越して失笑してしまいましたわ。あんた、えこ贔屓しすぎやろ(笑)。うーん、正直、観る価値はなかったかな。 [DVD(字幕)] 4点(2019-10-29 22:17:26) |
614. ルイスと不思議の時計
《ネタバレ》 愛する両親を事故で亡くし、天涯孤独となってしまった少年ルイス。途方に暮れる彼の元に、長年疎遠となっていた叔父のジョナサンから手紙が届けられる。内容は、君さえよければ一緒に暮らさないかというものだった。選択の余地などないルイスは、さっそく荷造りをし、トレードマークのゴーグルと重い百科事典だけを手に叔父さんの館へとやって来る。そこは、とてつもなく広い古びた館だった。そして何故か館内には、たくさんの大小さまざまな時計が溢れ返っていた――。ジョナサン叔父と一緒に暮らす謎めいたツィマーマン夫人とともにここで生活することになったルイス。だが、彼は次第にこの館の不穏な秘密に気付き始める。話し掛けてくる絵画に密かに動く家具、夜な夜な蠢きだす謎の生き物…、そうジョナサンとツィマーマン夫人は魔法使いだったのだ!彼らの弟子となって魔法を習い始めたルイスは、やがてこの館に隠された呪われた真実と向き合うことになる……。魔法使いの弟子となった少年が世界を救うために大活躍する姿を描いた冒険ファンタジー。監督は僕の苦手とするイーライ・ロスだったのですが、ケイト・ブランシェットが出ているということで今回鑑賞してみました。冒頭からルイス少年が迷い込むことになる、この広い洋館の不穏な空気に満ちたおどろおどろしい雰囲気はなかなかのもんでした。彼を迎え入れることになる二人の魔法使いも怪しさ爆発で、特にブランシェット演じる夫人の気品に満ちた佇まいは華があって大変グッド。子供が見たら泣くんちゃうかってくらい不気味な自動人形たちの造形も、ティム・バートンファンの僕にとってはけっこう好物でした。ただ、この監督の個性でもある後半の下品&グロ描写のやり過ぎ感を許容できるかどうかが本作の評価の分かれ目。僕は当然受け入れられませんでした。かぼちゃお化けの吐く大量のゲロなんてホント汚らしいし、ジャック・ブラックが髭面のまま赤ちゃんになるトコなんてマジ気持ち悪すぎ!!この監督って、どうしてもこういうことしないと気が済まない人なんでしょうね。ただ、そういうのを抜きにしても、全体的に演出が雑なところが大きなマイナスポイントでした。特にルイス少年が通うことになる学校の描写が適当すぎて、意図がさっぱり分かりません。と、僕の好みからは大きく外れる本作ですが、それでも独自の世界観はあるので嵌まる人には嵌まるかもですね。 [DVD(字幕)] 5点(2019-10-29 00:52:34) |
615. 喜望峰の風に乗せて
《ネタバレ》 1960年代、イギリスで開催された単独無寄港での世界一周ヨットレース「ゴールデン・グローブ・レース」。このプロでも尻込みするような過酷なレースに、素人ながら無謀にもチャレンジしたある一人の男がいた。彼の名は、ドナルド・クロ―ハースト。ヨットのセールスマンでもあった彼が、自社の宣伝のためにこのゴールまで何百日もかかる危険なレースに名乗りを挙げたのだ。本作は、そんな彼の無謀とも言える挑戦を実話を基に描いた冒険ドラマだ。監督は前作『博士と彼女のセオリー』でスマッシュヒットを飛ばしたジェームズ・マーシュ。たった独り大海原へと繰り出し、時に精神を病みながらも冒険を続ける主人公を演じるのは人気俳優コリン・ファース。他に、主人公を献身的に支える妻をレイチェル・ワイズが演じております。端的に述べさせてもらうと、このドナルドという男は単なる目立ちたがりの大バカ者ですね。碌に準備も出来ていないのに、自らの大言壮語を撤回することも出来ず、ずるずると引き返せなくなって仕方なくスタートを切ったものの、やはりすぐに過酷な目に遭っちゃって早くも心が折れそうに。でも、大借金をしてまで繰り出してきたし、自分の子供たちにも大見えを切った手前、引き返すことも出来ず、挙句の果てに最後は……。正直、自業自得というほかありません。現代で言うと、視聴回数を稼ぐために危険な動画を投稿していたユーチューバーが最後は最悪の事態になっちゃったようなもんです。と、現代のイカロスとも呼ぶべきこの男の無謀な挑戦をあくまで客観的に描くという本作のテーマは分からないでもないのですが、若干掘り下げが足らない印象。このドナルドという男の狂気性や遺された家族の葛藤や哀しみをもっと踏み込んで描いていれば、より完成度の高い作品になっていたと思うのですが、そこらへんがどうにも甘い。ただ、大海原を優雅に泳ぐクジラやイルカ、容赦なく襲い来る過酷な嵐など、そのダイナミックな自然描写はさすがにBBCが絡んでるだけあってなかなかの迫力でした。また、単調になりそうな主人公の孤独な航海も回想シーンや遺された家族の描写をうまく挟むことで最後まで普通に見ていられます。それだけにテーマ性という点でなんとも惜しい作品でありました。 [DVD(字幕)] 6点(2019-10-28 01:03:00) |
616. メリー・ポピンズ リターンズ
《ネタバレ》 ディズニーの超有名なファンタジーの古典『メリー・ポピンズ』が、約半世紀の時を経て帰ってきました!と言っても僕はその名作と呼ばれる前作は観たことありませんし、内容もよく知らないんですけどね。ちょっと前にトム・ハンクス主演で映画化されたウォルト・ディズニーの伝記で、本作の原作者がかなり偏屈なクソばばあ(失礼!)だったってことを知っている程度。何気に豪華な役者陣に惹かれ今回鑑賞してみたのですが、なるほど、こういう内容だったのですね。確かに最新のCG技術の粋を極めたであろう映像はかなりのクオリティで、そこはもう見ているだけで楽しくなっちゃいます。特に中盤の二次元アニメの世界に三次元主人公たちが入り込んじゃうとこは、当時の合成技術の限界を逆に活かした華やかなもので大変グッド。いやあ、こういうCGの使い方もあるんですね~。主人公メリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラント姉さんも終始キラキラしててけっこうな嵌まり具合です。監督が『シカゴ』のロブ・マーシャルだけあって、たまに彼女があの頃のキャサリン・ゼタ・ジョーンズに見えるとこも個人的に嬉しい発見でした。ただ、肝心の内容の方は正直、超絶薄っぺらいですけど。観終わった直後だというのに、物語の最初の方はもう忘れていってます(笑)。特に最後、時間を戻すと高らかに宣言したメリー・ポピンズが何もせず、仲間たちが時計塔に昇っていって針を戻すだけというのはいくら何でもアホ過ぎます!とまあいろいろ書いてきましたけど、映像的には素晴らしいクオリティなんで暇つぶしで観る分にはそこそこ楽しめるんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2019-10-26 22:06:56)(良:1票) |
617. マグダラのマリア
《ネタバレ》 あの世界でもっとも有名な物語の古典、新約聖書の世界をマグダラのマリア目線で映像化した歴史ドラマ。まあ観る前から大方の予想はついていましたが、最初から最後までもうとにかく眠たくなるほどオーソドックスな宗教ドラマでしたね、これ。ただ、マグダラのマリア役を今を時めく人気女優ルーニー・マーラが演じているということ、その一点のみで今回鑑賞してみました。確かにマリア役を演じた彼女の清楚な佇まいはまさに嵌まり役で、見ていてほれぼれするほどキレイでした。でも、本作の見どころと言えばそれぐらいかな。きっと熱心なキリスト教徒の方なら楽しめるんでしょうけど、僕のようなそうじゃない人間にとってはさすがにこれは退屈で退屈で仕方なかったです。新しい部分と言えば、これまで娼婦とも言われ罪深き女などとも称されたマグダラのマリアを、最もキリストのことを考えていた普通の人として描いているところぐらい。まあそれも僕にとっては、「へー、そうなんですか」くらいの感想しか残りませんでした。また、肝心のイエス・キリスト役をあのいまもっとも勢いのあるホアキン・フェニックスが演じているのですが、これがミスキャストもいいところ。でっぷりと貫禄ありまくりで、正直まったくキリストに見えないんですけど!だから語られる言葉もさっぱり心に響いてきませんし、あのキリストが取り乱して感情的になるシーンなんて見ていて違和感しか感じませんでした。予想だけど、これってキリスト教徒の人たちにも評判悪いんじゃないですかね?キリストの最期を知りたければ、メル・ギブソンの『パッション』の方が100倍くらい出来はいいんで、そちらを観ることをお勧めいたします。 [DVD(字幕)] 4点(2019-10-25 21:48:23) |
618. ファースト・マン
《ネタバレ》 人類で初めて月に降り立った男、〝ファースト・マン〟ことニール・アームストロングの半生を実話を基にして描いた伝記映画。監督は『セッション』『ラ・ラ・ランド』で切れ味鋭い演出を見せたデイミアン・チャゼル。決して諦めない不屈の男を演じるのは、前作に引き続きタッグを組んだライアン・ゴズリング。正直、僕の感性とは全く合わない作品でしたね、これ。リアリティを重視したのかもしれないけれど、お話的に地味すぎて最後まであくびが止まりませんでした。また、終始手持ちカメラで撮ったかのように、画面が微妙に揺れまくるのも見辛くて仕方なかったです。うーん、昔からこの監督とはいまいち相性が悪いなぁと感じていたのですが、今回は特にそれが顕著でした。すんません、4点で。 [DVD(字幕)] 4点(2019-10-23 21:56:06) |
619. ダンボ(2019)
《ネタバレ》 最新のCG技術を駆使し、過去の名作アニメを実写化するという今や定番とも言えるディズニーの人気シリーズ。今回のテーマは空飛ぶゾウとしてお馴染みの人気キャラクター、ダンボ。僕の大好きなティム・バートン監督作ということで今回鑑賞してみました。結果は…、うーん、さすがに今回はあきませんでしたね、これ。やはりティム・バートンのアクの強いセンスと、この誰からも愛される元祖ゆるキャラみたいなダンボとの相性は全く合っていませんでしたわ。例えるなら、子供に大人気のハンバーグをこってり濃厚なもつ鍋にぶっこんだ感じ?違うか(笑)。んでも、サーカスの個性豊かなメンバーたちにはいかにも彼らしいセンスを感じたし、マイケル・キートンやダニー・デヴィート、エヴァ・グリーンといったバートン作品でお馴染みの人たちの新旧共演はなかなか楽しかったので、5点! [DVD(字幕)] 5点(2019-10-21 21:31:31) |
620. REVENGE リベンジ(2017)
《ネタバレ》 砂漠の真ん中にある一軒の豪華な別荘。見渡す限りの荒野に囲まれたこの館に、ヘリコプターに乗ってとある男女がやってくる。女の方の名は、ジェニファー。どうやらこの別荘の持ち主である裕福なこの男と不倫の関係にあるらしい。誰も居ない砂漠の別荘で、彼女は男とともに優雅なバカンスを楽しむためにやって来たのだ。だが、その次の日、男の知り合いである二人の中年男も合流してくる。あからさまに嫌らしい目つきで自分を見つめてくる二人に、戸惑いを隠せないジェニファー。すると、その中年男は突然隙を突いて彼女をレイプするのだった――。当然彼氏に被害を訴えるも彼はジェニファーの訴えに聞く耳を持たないばかりか、なんと全てを水に流せと言ってくるのだった。「こいつら、きっとグルだ!」。男たちの隙を突き、別荘から逃げ出したジェニファー。だがすぐに捕まり、彼氏に崖下へと突き落とされてしまう。瀕死の重傷を負いながらかろうじて生き延びた彼女は、卑劣な男どもに復讐を誓うのだった……。美しき復讐者と化した若い女と男の嫌らしさの権化のような三人の男ども、彼らの命を懸けた闘いが今、幕をあげる。いかにも低予算で撮られたそんなシンプルな本作なのですが、これが映像が凝りに凝っていて絵的に充分楽しませていただきました。レイプしようと彼女にすり寄って来る男の嫌らしさを存分に強調した映像は、もうぞくぞくするほどエキゾチック(あのお菓子をねちょねちょ食べる男の口元アップ映像は鳥肌もんでした!)。崖下に生えた木に突き落とされ串刺しとなったジェニファーの血が、地面を這う小さな蟻に降りかかるとこを大写しで撮るところなんかも、なかなかいいセンスしてます。まあ完全に死んだと思われた彼女が、その後、何故か奇跡の復活を遂げるという設定の無茶苦茶ぶりはご愛敬(笑)。お腹の傷を塞ぐために熱した空き缶を押し付けたらその鷹のマークがタトゥーみたいになっちゃうとこなんて、バカバカしいけどかっこいい!復讐の鬼と化した彼女と嫌らしい男どもの闘いも、どれもエッジが効いていて大変グッド。最後の別荘での闘い、男、取り敢えずパンツ穿けよ(笑)。ただ、あまりにもストーリーがシンプル過ぎるのが本作の弱点かな。もうひとひねりあればなお良かったけど、それでも今から次作が楽しみな才能に出会えました。監督はこれが長編デビュー作となる、フランスの新進気鋭の女性監督コラリー・ファルジャ。うん、覚えとこ。 [DVD(字幕)] 7点(2019-10-18 15:20:55) |