681. 火の馬
《ネタバレ》 短編「ピロスマニのアラベスク」といった作品が強烈な印象を残すパラジャーノフだが、パラジャーノフの最高傑作を1つあげるとなるとやはりこの作品になるだろう。 「ざくろの色」に比べるとややインパクトに欠けるかも知れないが、この作品は二人の男女の悲しき運命の果てを強烈なビジュアルで綴る映画だ。 劇中で度々画面をよぎる火の馬は、流される血のように紅く燃えている。 冒頭の雪が降り積もった森で、少女のようにあどけない男の子の顔が映される。 その幼い子供の父親に、無残にも倒木が襲い掛かる。木が上から倒れてくるカットが強烈。 死者の魂を高らかに送り出す奏者たちの音楽。死者を奉る場で新たな死者が出てしまう悲劇。 ウクライナのカルパチア山地、二つの氏族は何世代にも渡り争いが耐えなかった。子供たちも今は良き友人であったり愛し合っているが、大人になればやがて殺しあうような日がくるかも知れないのだ。葬式での悲劇は、そうやって何度も繰り返されてきた悲劇の一つに過ぎない。 女の裸体を徹底的に見せない拘りも良い。裸で戯れる少年と少女。 シャツを着たら次の瞬間には青年に成長しているイワンコ。マリチカもまた、立派な大人の女性へと姿を変えていた。 雨の中濡れる二人。しかし民謡がうるせえ。ポンとお腹に触る婆さんの心意気。 まるで狩人たちが女の命を狙うように迫るシーン 崖の上での悲劇。マリチカは断崖の子羊を救おうとして・・・。 揺れながら迫るカメラが、サスペンスを異常に盛り上げる。 木の間から女の表情を追うカメラがヤケにサスペンスフルだ。 終始異様なテンションが、亡き女性を忘れられない男の狂気を物語る。 新たな女性と首にかける梯子は、まるで首枷のよう。 女を忘れられない男は、いつも何処か余所余所しい。前の女に比べたら、他の女はみんな羊みたいなものか。そんなもん誰だって他の男に逃げたくもなるわ。 祈る新妻の姿は、裸で他の男を誘っている風にしか見えない。 窓から覗く子供たちの笑みが不気味に見える。 イワンコは、父親と同じ運命を歩んでしまう。 グルグルと人々の顔を映し狂騒を演出。葬式は盛大にかつ楽しく送られる。死体の前で次のカップルが愛し合い始めるんだもの。 葬式に始まり葬式に終わる。 さまよう魂は、真っ赤な木々の向こうで愛しき人と再会するのであった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-18 05:48:34) |
682. ヒート
《ネタバレ》 この映画は恐らく1回見ただけでは余りピンと来ない人もいると思う。 確かに銃撃戦の鮮やかさには一発で魅せられ、3時間近い長さをまったく感じさせない演出には脱帽する。 が、肝心の登場人物たちの描き方は何処か軽薄なようにも感じる。 しかし軽薄が故に「何故彼らは銃を握るのか」という事を考えたくなる。 2度、3度見る事でどんどん深味を増す作品の一つと言えよう。 とにかくアル・パチーノ&ロバート・デ・ニーロとか最高すぎる組み合わせ。 列車が駅に着き病院に行く男、工場で爆薬を買う男、そしてベットで朝の情事を愉しむ男。この映画の主人公たちが出揃い、物語は銀行襲撃までのシークエンスを積み重ねはじめる。 最初のトラックで警察車両を襲撃するまでのシークエンスが面白いし、その後も警察と強盗団の徐々にスリルを増す駆け引きで手に汗握る。 強盗たちを取り巻くそれぞれの女のドラマも見応えがある。夜景の美しさや、薬莢がカランカランと音を立てて転がる様子も気持ち良い。 アル・パチーノの狂気地味た尋問シーンは怖いっつうの。もう犯罪者に憎しみつのらせまくりというか、家庭環境が上手くいかない奴当た(ry 誰もが子供をめぐって解れ、一方で和解する。 駐車場での狙撃、物々交換、取引が命のやり取りに。 倉庫におけるやり取りも、一瞬鳴る“音”が総てをうち壊す緊張。 夜のハイウェイにおけるジリジリとした追跡、カフェでの会話も印象的だ。 いつも片方の顔だけがハッキリ映り、もう片方は後姿かボヤける奇妙なツーショット。 二人はあくまで敵と味方、水と油であり、二人揃って観客に挨拶を交わす“友人”にはなれない。 およそ10分に渡る銀行強盗から市街地における激しい銃撃戦。薬莢もガンガン排出される。 ロバート・デ・ニーロの仲間たちへの“弔い”。最後まで信頼してくれた者たちへの報恩、裏切った者たちへの報復。 女たちもまた、愛する者のためにあえて裏切りを選ぶ。ただ“立ち上がる”だけで居様な緊張が生まれる演出が凄い。 愛する女だからこそ、それを守るために“諦める”男たちの引き際。ある者は手の動きで察し、ある者は目の前に迫る宿敵によって。路上ですれ違う一瞬が忘れられない。 最後の最後、光と音、そして影のみで構成されるクライマックス。極限まで緊張が高められ、眩いばかりの閃光と共に決着は付く。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-17 00:17:24)(良:1票) |
683. 100人の子供たちが列車を待っている
イグナシオ・アグロエによる心暖まるドキュメンタリー。 映画を製作する側から見せて、見終わった後に「ああ映画が好きで良かったな~」って元気になれる映画っていっぱいあるよな。 ティム・バートンの「サム・ウッド」とか、フランソワ・トリュフォーの「アメリカの夜」とかさ。 アグロエは、こんなにも素敵な良い映画を残してくれた。 リュミエール兄弟の「ラ・シオタ駅への到着」で衝撃を受けた当時の人々の興奮を、このアグロエの映画は感じさせ・・・いや“思い出させてくれる”。 会った事も無いのに、あたかも以前出会っているような・・・そんな感じ。 子供たちのキラキラ輝りだす瞳もキレイだが、子供たちに熱弁を振るう女性教師の瞳の燃えるような輝きも印象的だった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-16 22:52:30) |
684. ざくろの色
《ネタバレ》 音楽&伝記もので面白い映画を探している人に是非ともオススメな作品であり、加えてアンドレイ・タルコフスキー好きにはもっとオススメしたい作品。 タルコフスキーの盟友であるセルゲイ・パラジャーノフが送る不思議な音楽伝記映画。 アルメニア生まれの詩人サヤト・ノヴァの生涯を独特の映像世界で描いていく。 タルコフスキーのような映像の美しさ、狂気、幻想的な空間。 ノヴァの恋人からミューズや天使と複数の演技をこなすソフィコ・チアウレリの見事な演技。 普通、前衛的な映画はストーリーが無いので難解で取っ付き難い。 だが、この物語はノヴァの生涯に渡って繰り返される苦悩が強烈な映像によって綴られているのだ。 いかにノヴァが苦しみもがいているのかを、少しでも眼で感じられるように。 もしかしたら、言葉では現せないほどの苦悩とノヴァは戦ったのかも知れない。 物語で流される柘榴(ざくろ)の“鮮血”は、彼が血を振り絞るほどの苦悩を繰り返したという事なのだろうか。 「我が生と魂は苦悩の中にある・・・」のセリフと共に。 生涯に渡って渇き、潤いと安らぎを求めた詩人の数奇な物語。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-14 17:27:54) |
685. 悪魔のような女(1955)
《ネタバレ》 「恐怖の報酬」「情婦マノン」と傑作が多いクルーゾーだが、中でも強烈な“どんでん返し”を味わえるのが今作「悪魔のような女」。俺はこの作品が一番好き。 澱んだ水面が拡がるプールの不気味さ。 男を男の愛人とその妻が共謀して殺してしまうのだから恐ろしい。 「恐怖の報酬」が一種ホモセクシャルな部分があるとすれば、本作はレズビアンの匂いがしてくる。どちらも願い下げだ。 しかし「恐怖の報酬」は野郎共の競争と友情という物語で、ホモの匂いなんて微塵も感じなかった。淀川長治さんに言わせれば「太陽がいっぱい」もホモ的な何かがあるらしい。 俺は願い下げだ。 一方、「悪魔のような女」は男の暴力で妻は心が離れ、皮肉にも男の愛人と心が通う。 本来憎み合う筈の女二人がだ。 さて、そんなウフフン状態の二人だが待ち受ける結末が何とも・・・ネタバレと書いたが、ネタバレするのが嫌になる、忘れてしまいたくなるような怖すぎるラスト。 ヒッチコックはクルーゾーのこの作品に嫉妬したらしく、ホラー映画「シェラ・デ・コブレの幽霊」を手掛けたジョセフ・ステファノの協力を得て「サイコ」を撮ったらしい。 ヒッチコックの一瞬背筋が寒くなる巧みさ、そしてクルーゾーのねっとりとした恐怖を徐々に肌に塗られていくような戦慄。 見比べて見るのも面白い。 シャロン・ストーンには悪いが、ジェレマイア・チェチェックの「悪魔のような女」もポール・バーホーベンの「氷の微笑」も、クルーゾー映画の怖い女性たちを知ってしまうと霞んで見えてしまう。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-14 17:23:27)(良:1票) |
686. ミルドレッド・ピアース
《ネタバレ》 「深夜の銃声」または「偽りの結婚」の題でも知られるフィルム・ノワールロマンス。 カーティスの最高傑作は「カサブランカ」なんて退屈なメロドラマじゃない。 高密度でフルスピードの本作こそ、そしてジョーン・クロフォードにとっても最高の1本! これが本当にあの臭い映画を監督した人間が撮った映画なのだろうか。信じられないくらい面白いのである。何故こんな傑作が日本ではVHSどころかDVDもまともな形でリリースされていないのだ!これほど頭にくる事はないぞ! まず波と共に現れ波にさらわれていくオープニングクレジットからして面白い。 この映画は鏡の映画だ。 年頃の娘が見つめる鏡、下から女の表情を鏡のように映すもの、弾痕が刻まれる鏡、遊んだ後に結ばれた髪をほどく女を映す鏡。 摩天楼、銃撃からはじまるファースト・シーンの衝撃!女の名前を一言もらす最期、鏡に刻まれた弾痕。 走り去る車、波止場、橋の上を歩く女の悲しき表情、ミンクのコートは遠出を予定している証。 手すりを叩く音、窓を叩いて女を呼び止める男。 机の下に放置される男、乾杯、男のコップを叩き落として口づけをことわる、、螺旋階段、ドアを閉めて男を密室に閉じ込め“擦り付ける”、倒れた電燈によって発見される遺体、自ら電話線すら絶ってしまう。 実に鮮やかな、見事なスタートダッシュから始まった12分間。 そこから警察署でめぐりあう知り合い、取り調べ、焦り 新たな男の登場と動揺。 20分を境に始まるミルドレッドの回想。 初っ端から険悪な雰囲気、子供たちとのやり取り、写真、引き出しにしまわれた凶器。 肉欲を求める野蛮な訪問者、ローブの紐をやらしい手つきで触ったり引っ張る素振り。女はそれを嫌そうな表情で払いのける。口づけ、肩を撫で回す。 二階には幼い娘と年頃の娘が二人、娘の尻を優しく叩く時の愛情とは大違い。 娘たちのために仕事につく母親の姿、着替える仕草、胸元がちょっとはだけているだけなのにあんなにも色っぽい。クロフォードの素晴らしい演技。 「風と共に去りぬ」やジョージ・キューカーの「ザ・ウィメン」でも見たことのあるような黒人の女中(バタフライ・マックイーン(Butterfly Mcqueen)の方。ハティ・マクダニエルじゃなくて)。 スカートで膝を隠す一瞬、何度も交わされる口づけ、家族がいない間の情事、水着で他の男と泳ぐ、謎の音、男が見てしまった女の帰り際。 浮気の時に起こった悲劇、メーターが物語る命が消える瞬間。 女は悲しみを忘れるために前にも増して働く、プレゼントをゴミ箱に捨ててしまう野蛮人、注文で敷き詰められた回転からメモがなくなりお開き、見てしまったカウンターでの口づけ、何度も叩き落とされるグラス。 30分後には再び現代に戻ってくる。 また語られる過去、車、娘もどんどん破滅へと向かって歩みを加速させる、狂っていく娘の活き活きとした表情よ! 黒衣、女が破り捨てれば娘が頬をひっぱたく、亀裂の入る瞬間、列車、舞台の上で踊る目を疑う光景。 幼い娘の写真、一時の安息、誕生パーティーの裏で行われる蠢く黒い影、電話と決意・裏切りへの銃撃。家族を救うための身代わり、受話器の前でのやり取り・・・何もかも素晴らしい。 [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-05-13 22:42:13)(良:1票) |
687. 大砂塵
ジェームズ・ディーンの「理由なき反抗」やフィルム・ノワールの大傑作「夜の人々」で知られるレイの異色作。 レオーネが「ウエスタン」を作る際に参考にした傑作の一つ・・・らしい。 本作は歌の西部劇。 とにかく五月蠅い。 ギターと酒場が大惨事。 主題歌の「ジャニー・ギター」の戦慄は美しい。 ラストの意外な決闘にはビックリしたよ。 それにしてもこれほどヒロインがうっとおしいと思った映画は無いわ(泣) 「ミルドレット・ピアース」や「ユーモレスク」「雨(ルイス・マイルストン)」で美しかったジョーン・クロフォードも、本作はカラーの色合いもあってか年増でケバい。 「オール・ザ・キングス・メン」や「去年の夏突然に」で印象的だったマーセデス・マッケンブリッジも今作は顔が怖い。 鑑賞の際は是非ともクライテリオン版のDVDで。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-12 18:44:50) |
688. 若き獅子たち
「地上より永遠に」と似たようで違う3時間の大作。 戦争を複数の若者の視点で見る映画はウンベルト・レンツィの「戦争と友情」等幾つかあったが、ドミトリクのこの作品は屈指の完成度がある。 怪我をする前のモンゴメリー・クリフトが「地上より永遠に」で柔らかい演技を見せたのに対し、この作品は負傷後の硬直した不器用な人間像が描かれる。後遺症で彼の持ち味が殺されてしまった事は悔やんでも悔やみきれないが、死の手前まで役者として葛藤を続けた彼の生き様がこの作品にも刻まれている。 風前の灯となりかけたクリフト、そして増々燃え盛る炎となろうとしていたマーロン・ブランドの共演。二人が会話する場面を少しでも見たかっただけに残念。 それにブランドはあくまで良心であり、ドイツ軍はやはりユダヤ人を迫害する悪として描かれてしまう。だが、アメリカも必ずしも肯定的に描かれていない部分に注目。 ブランドはドイツだけを一方的に悪として描くハリウッドに抗議したそうだ。「史上最大の作戦」のエルヴィン・ロンメルですら、果たして善悪を超えた存在として描かれたのだろうか。 憎めないドイツ人将校マクシミリアン・シェル、器用に生き抜くディーン・マーティンやリー・ヴァン・クリーフの存在感も凄い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-12 15:49:18) |
689. SOSタイタニック 忘れえぬ夜
ジェームズ・キャメロンは好きな監督だが・・・何故か「タイタニック」だけは惹かれなかった。 その理由がジャン・ヴィゴの「アタラント号」やロナルド・ニームの「ポセイドン・アドベンチャー」、そしてこのロイ・ウォード・ベイカーの「タイタニック」にある。 1958年に公開されたこの作品は、あくまでドキュメンタリー風のタッチでタイタニック号が沈みゆく姿を描いていく。 登場人物の描写は「タイタニック」よりも希薄だし、キャメロンの映像に比べるとこの作品は見劣りしてしまうかも知れない。 けれども、この作品は無駄なものが無く、船が沈むまでの人々の動静を克明に映像化した作品だ。 登場する船もセットも総て本物ではないのかという危機迫る映像、白黒画面の黒い映像がより沈みゆく船の恐怖を倍増させている。 死を前に人は何をすべきか? 最後まで船に残り最善を尽くそうとする人々の生きる姿。 善悪のあるドラマではなく、人間味のあるドキュメンタリーだからこそ極限状態の緊張感と凄惨な絶望感を肌で感じられると思う。 この作品の持つメッセージやドラマ性の方が、キャメロン版より圧倒的に上だ。 かつてキャメロンの「タイタニック」を酷評した淀川長治さんも、恐らくこの作品を見ていた事だろう。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-08 20:56:41)(良:2票) |
690. オペラハット
《ネタバレ》 財産を相続したクーパーは世間ではドラ息子、本当は誰よりも正直者で優しい男。 本当の彼を知るのは、皮肉にも他人の秘密を暴き立てて生計を立てる新聞記者のジーン・アーサーのみ。 クーパーとアーサーは金ではなく、心からの信頼で固く結ばれる。 疑い深い新聞記者がだ。 「スミス都に行く」のジェームズ・スチュアートもそうだが、フランク・キャプラは最後の最後まで人を信じようと努力し続ける映画を撮り続けた。そんなキャプラの暖かさが滲み出た作品の一つ。とにかくクーパーファンは見て損無し。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-08 02:01:23) |
691. コンドル(1939)
《ネタバレ》 否、ケーリー・グラントのカッコ良さに惚れる逸品である。 ケーリー・グラントと言えばコメディやヒッチコック作品で有名だが、若い頃はもっぱらコメディだ。 しかし、若い頃も落ち着きのある冷静でカッコイイ役もそつなくこなしてる。 冒頭のシーンが凄い。 特撮技術よりも、飛行機音と無線機から聞こえる音響だけでスリリングな着陸シーンを演出してしまう妙技。 ケーリーの演技も相まって、必見のシーンとなっている。 「コンドル」戦争を背景にした航空映画だが、一番の醍醐味は男たちの人間ドラマだ。 「ヘンリー4世」を引用するシーンの粋なやり取り、リチャード・バーセルメスのカッコ良さ、後半から出てくるコミカルなやり取り。 実に硬派で、ロマンティックで、楽しい映画だ。 スクリュー・ボール・コメディではドアや電話といったアイテムのやり取りが殺人的な笑いを産む。 毎回笑いすぎてしばらく腹痛になってしまうのが毎回の悩みだ。 ジーン・アーサーの変貌振りはギャグとしか言いようがない。 男たちの友情に押され気味のジーン・アーサーよりも、一瞬とはいえ元恋人として強烈な印象を残すリタ・ヘイワースの方が魅力的である。 とにかくオススメ! [DVD(字幕)] 9点(2014-05-07 20:01:47) |
692. 新婚道中記
《ネタバレ》 夫婦喧嘩は犬も食わないという。じゃあ誰が食うのか? 笑いに飢えている我々観客のお腹をいっぱいにしてくれるのだ。 新婚ホヤホヤの夫婦が繰り広げる壮絶な喧嘩。ケイリー・グラントはいつも受身のキャッチャー。毎回殺人的な剛速球や変化球をブン投げる淑女のお相手だ。 後の「Mr.&Ms.スミス」が銃による喧嘩なら、本作はマシンガントークによる破壊力で我々の腹筋を破壊してくれる。 同じマッケリーの「邂逅」でシリアスな役をやるヒロインを見た後だと、余計にギャップが凄まじい。 愛犬スミスの兄弟も愛らしい。どうしてスクリュー・ボール・コメディは動物が大活躍するのだろうか。 来るはずの無い人間がバツも悪く来てしまう「お約束」。大掃除で爆音が響くのは夫婦喧嘩と戦争(浄化という名の焦土作戦)だけです。 ドアのやり取りも最高! [DVD(字幕)] 9点(2014-05-07 19:16:30) |
693. 邪魔者は殺せ
リードによるサスペンスの佳作。 相変わらず白黒画面の美しさは抜群だが、やや哲学臭く説教臭い内容には辟易してしまう。 しかし、必死に逃げる逃亡犯に手を貸す者や拒む者等それぞれの思惑が交錯するストーリーは悪くない。 前半の逃走劇、後半の心理劇・・・見て損はしない作品だ。 [DVD(字幕)] 8点(2014-05-05 18:18:44) |
694. テオレマ
とにかくパゾリーニが苦手という方に「奇跡の丘」「カビリアの夜(フェデリコ・フェリーニ監督)」等と共にオススメしたい作品。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-05 17:49:24) |
695. バンド・オブ・ブラザース<TVM>
《ネタバレ》 スピルバーグの戦争映画は傑作が多いが、彼の戦闘描写とドラマを1時間に圧縮してしまう贅沢さ、それをどんどん積み重ねていくドラマ特有の厚み。スピルバーグ指揮の元作られた最高傑作はこの作品ではないだろうか。 「プライベート・ライアン」も良い映画だが、俺はこの作品の方が好きだ。 TVドラマとは思えない迫力、そして1時間毎に深味を増していくストーリーが良い。 日本でも六部作という「人間の條件」シリーズがあるが、コチラは合計10時間だ。 一個中隊が開戦から終戦まで駆け抜けていく様子はサミュエル・フラーの傑作「最前線物語」を思い出す。 一見するとアメリカ賛辞の映画にも思えるが「勝って生き残ったんだ。喜んで何が悪い! 俺は死んだ仲間の分も生きなきゃならんのだ」という叫びも聞こえてくる。 実際、この作品は戦争の残酷さも色濃く描いている。アメリカ軍に味方した市民が、次の瞬間にはドイツ兵士に拷問されている等、見返す度にその細かいドラマ性に驚く。リアルな戦闘描写もそうだが、銃撃戦が無くとも市民の犠牲は出続けるのだ。 軍人、市民と様々な立場を通して戦争の残酷さを我々に伝えてくれる。とにかく色んな人に見て貰いたい作品。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-03 22:50:50) |
696. リオ・ロボ
《ネタバレ》 「リオ・ブラボー」、「エル・ドラド」三部作のトリを飾る作品。 パワーでグイグイ引っ張って来たジョン・ウェインも、60代に入り流石に一人だけで牽引するには限界を感じる本作。 しかし、他の作品と違ってこの作品は冒頭いきなり列車をまるごとジャックしてみせる豪快さ! 遺作とは思えないアイデアとパワーを感じさせる。 南北戦争の巨大な陰謀を影にしているが・・・そんな巨大な圧迫感はウェインたちの楽しいやり取りであんまり感じない。 昨日の敵は今日の友。 “列車を奪う”という1本のレールによって彼らは強い絆で結ばれているのだ。 当然、裏切り者は許さねえ! キレイなねーちゃんがさらわれた、救出だ! 悪徳保安官はブッ飛ばせ!! ホークスとウェインの関係を記憶する上で外せない、とにかく最後の最期まで痛快だったホークスの遺作。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-02 19:46:52) |
697. 友情ある説得
《ネタバレ》 南北戦争を舞台にした大作。ワイラーの西部劇はこれが一番好きだ。 「西部の男」はゲイリー・クーパーとウォルター・ブレナンの演技以外見所が無いと言っても良いパッとしない作品だったし、 「大いなる西部」は「丘の一本松」の二番煎じだし何より主人公の正義面が鼻に付いた。 大根ペックに絵に描いたような善人なんかやらせるな。ペックは「アラバマ物語」や「無頼の群」みたいに少しひねた男や熱血漢の方がずっと魅力的だしカッコイイ。 「友情ある説得」は、そういった説教臭さや博愛主義的な正義面が無いのが良い。 レッド・パージ(赤狩り)への批判は元より、“本当の勇気とは何か”を考えさせてくれる。 暴力を否定するクェーカー家教の一家は、暴力のぶつかり合いで全てを片そうとする南北戦争について疑問を持つ。 本作のクーパーは、一家の長として温厚で落ち着きのある父親だ。妻の言いなりかと思いきや、負けず嫌いだったりいざという時には頼りになる男でもある。 アンソニー・パーキンスの青臭い正義感を抱いた優しくおっとりした様子は、若きクーパーの風格(「オペラ・ハット」等)を感じさせる。 ストーリーは基本ユーモアがあるが、抱える問題はフランク・キャプラのように「笑いの中の重さ」を持っている。 「或る夜の出来事」がコメディのフリをした恋愛映画だったように、この作品は心暖まるほのぼのとした情景の裏に、戦争という理不尽な暴力と辛い現実を映し出した映画でもある。 パーキンスが兵士として人を殺めてしまった場面は、彼の主義と現実との心の葛藤が伝わってくる。 一番暴力を否定していたあの母親ですら、家族を守るために南軍兵をほうきで殴ったりしていた。 戦争とは、何かを奪うために始まるのだろうか。 それとも、何かを守ろうとしていつの間にか大切な何かを奪ってしまうものではないのだろうか。 祈るだけで現実から逃避する宗教とは違い、クェーカー教は行動によって集団に訴えかける考えがあるそうだ。 あの母親も、パーキンスも、クーパーも「誰かを守るため」に自ら行動を起して行く・・・。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-02 19:21:04) |
698. 大人は判ってくれない
《ネタバレ》 俺は「アメリカの夜」の方が好きだが、彼の最高傑作はやはりこの作品になるのだろう。 トリュフォーの自伝的内容のこの映画は、「野性の少年」で描かれた内面的な自伝要素とはかなり違う。生々しい、外に向かって放たれる痛々しさ。 彼の師であるアンドレ・バザンに捧げられた言葉と共に映画は始まる。教室でテストを受ける生徒たち。彼等は教師の目を盗んでポスターを回し、不運にも先生に見つかった生徒は人身御供として差し出される。 アントワーヌは日頃からチョークを投げつける教師に目を付けられ問題児扱いされ、家に帰っても母親に「成績が悪いのも当然ね」などと平然と言い放つ厳しさ、片身の狭さ。父親と同級生が心の支えになっていたが、そんな父も母親の顔色を伺い、母も共働きで不仲。アントワーヌも無理に家事を手伝わされ宿題も手につかないという有様。 寝る場所も裏口という寒い場所。アントワーヌはタバコやワインまで飲んでしまう不良小学生となっていく。教師が彼を目の敵にすればするほど、アントワーヌの心は益々荒んでいく。円筒形のアトラクションで遊ぶアントワーヌ。遠心力で動きがままならなく様子は、人々に振り回され閉所に押し込められていくアントワーヌのその後を暗示するよう。 アントワーヌが見てしまった母の情事。アントワーヌの怒りと失望に満ちた表情。アントワーヌは父を気遣いその事を中々言い出せない。彼にとっても信じがたい、嘘であってくれという現実。 勢いで飛び出す家、路上で人に見つからぬように牛乳を盗んで飲む、証拠隠滅まで図る。それでも一応心配して彼を抱きしめ母親、体を洗ってくれる愛情の欠片。 ヒビの入った家族をどうにか繋ぎ止める映画。疲れた父親すらハッスル(嫁の胸を乳揉み)させるエネルギー、母の言葉、本との出合い。せっかくやる気になってがむしゃらに頑張っても報われない虚しさ。だからといって丸写しで停学とはいくら何でも酷い。 一度付いた嘘は延々と足を引っ張る鎖になっていく。 売れなかったとはいえ盗み出したタイプライターを一人で戻しにいく健気さ。だが子供でも罪は罪、親友すら赤の他人という素振り、親にすら半ば見捨てられ彼の心は死んでいく。子も子なら親も親。夜の市街を見つめる眼差し。 脱走し走って走って走っても見えない出口。ようやく辿り付いた浜辺で、彼は何を思うのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-01 21:11:46) |
699. 太陽(2005)
これは、まず日本じゃ撮れない。日本は主観で天皇像をやたら特別視しすぎるきらいがある。天皇もせっかく「私も人間だ」といったのだから、日本人はもっと砕いて描いても良い筈だ。 その点、ソクーロフは客観的で、あくまで一人の人間として天皇を描いた。 口ももごもごし、まるで子供のように植物の研究に明け暮れ、「人間て良いな~」と謳歌していそうな、何処にでもいそうな感じに。これほどユーモアと気品を両方感じさせる天皇、中々いない。 [DVD(字幕)] 9点(2014-04-30 19:12:36) |
700. アナと雪の女王
デュエットが素晴らしい。 ダブルヒロインはD.W.グリフィスの「嵐の孤児」を思い出す。 現実的に生きる女性像が素敵だ。実写でCGとなると違和感があって余りノレないけど、やはりフルCGは良いね。 [映画館(字幕)] 9点(2014-04-29 15:30:44) |