61. レミーのおいしいレストラン
《ネタバレ》 事前の予告編から想像していたのは、料理の得意なねずみのレミーが、冴えない見習いシェフ、リングイニの黒子となって見事な料理の腕を発揮、そして色々な事件、葛藤の末ダメ男のリングイニは、レミーの助け無く、ひとりの男として、人間として大きく成長していく、というものでした。 しかし、実際観た物語はそうではなく、リングイニ自身は相変わらずレミーや厨房の先輩であり恋人のコレットの助けなくしては一本立ちできないという「成長」が全く見られないまま終わってしまいます。 しかもリングイニがレミーあってこその料理人だとわかったのに、恋人コレットは彼の元を離れない(彼の何処に魅力を感じたのか?)。 これではドラえもんののび太状態のままです。彼が物語の軸になるには解せない(題名は確かにリングニイの物語、とはなっていませんが)。 ではねずみのレミーの物語なのかというと、確かに彼は自分の「ねずみ」であるという宿命を打ち破り、レストランをリングイニとともに開業するのですが、それだけではリングイニやコレットにとって果たしてそれで良いのかと若干の物足りなさが残ります。 とはいえ各シークエンスの細かい演出には驚かされたり、うっとりしたり、大笑いしましたし、レミーやその他のキャラクターは表情豊かで暖かく愛らしい。 特に「後ろばかり見てると、未来から来るものを見逃すよ」と敬愛する名シェフグストーの霊に促され、薄暗い下水道から駆け上っていくレミー。そして登り詰めてみると、そこは彼が夢見、憧れたパリの街だった・・・。 このシーン、鳥肌が立ちました。映画史に残る美しいシーンだと思います。 ピクサー作品のCGには毎回驚かされますが、今作に至って、もはや芸術的とも言える境地に達したと思えるのは、ソフト、ハードのテクノロジーの進歩に助けられた画面上の質感の向上という面だけでなく、キャラクターの生き生きとした動きと豊かな表情の変化です。 どんなにデフォルメされた人間であろうと、地を這うネズミであろうと、彼らがスクリーンのなかで間違いなく生きているんだと確信させるほどの説得力を持っていました。 これは製作過程に於いて、徹底的に研究を重ね労力を惜しまず追求してはじめて生み出される、職人芸ともいえるものだと思います。 こういう部分にもピクサー作品の映画に対する愛と真摯な姿勢を感じるのです。 [映画館(字幕)] 9点(2007-08-03 13:58:47)(良:2票) |
62. dot the i ドット・ジ・アイ
《ネタバレ》 犯人の動機がいかにも映画オタクが考えそうで幼稚だし貧弱なんですよね。バーナビーが延々と告白するところで一気に映研の自主製作臭が漂ってしまいました。二段オチのラストもちょっとしつこいですね。変な陰謀のオチを無くして純粋な恋愛ものだったら7点でもいいかなあ。カルメン役のナタリア・ベルベケは本当に綺麗です。 [DVD(吹替)] 6点(2007-07-09 21:24:02) |
63. 遠い空の向こうに
自分のアイデンティティを確立できずに将来に不安を持つ若者に是非観てもらいたい映画です。目標に向かって突き進む先には困難も多く待ちかまえているだろうけど、それは必ず自分の糧になるし、将来に繋がるのだと思わされます。 [DVD(吹替)] 7点(2007-07-06 21:51:40) |
64. ドリームガールズ(2006)
うーむ、微妙ですね。ミュージカルとしても音楽映画としても中途半端と感じました。ドリームガールズの面々も美しいし脇を固める俳優陣も豪華なんだけど、物語、登場人物に思い入れ出来るほどのものはないし、このストーリーに130分は長いです。一番痛いのは楽曲が今ひとつインパクトに欠けたことです(記憶に残ったのはワン・ナイト・オンリーだけ)。もっとエピソードを整理して100分程度に凝縮、音楽に次ぐ音楽でたたみ掛けた方が良かったのではないかと思いました。 [DVD(吹替)] 6点(2007-07-05 18:40:11) |
65. バベル
魂揺さぶられる映画でした。一発の銃弾から紡ぎ出される世界各地の物語を時間と場所を巧みに組み合わせ構成した脚本は見事と言うほかありません。 この物語は特殊なようでいて、実はこの世界の営みを象徴しているように感じました。 この世は不条理と人は嘆くけれども、それは愚かで浅はかな人間同士の出会いやすれ違い、偶然の連鎖が絡み合って絡み合ったその集大成、その混沌は自らが生み出したものなのだということを。 それでも世界はまわり、人々はその中で生きていく。そんなわずかな希望の光をのこして物語は終わります。 それを見つめる監督の目線は冷めているようで暖かい。この点は「21グラム」と同じ空気を感じました。 本作では菊池凛子のアカデミーノミネートが話題になりましたが、彼女だけでなく、どのキャストも素晴らしい存在感でした。 彼らが俳優であり、キャメラの前で演技しているのだと言うことをしばし忘れました。 誰もがスクリーンの向こうの世界で生々しく生きていました。 特にメキシコ人家政婦、アメリア役のアドリアナ・バラッザは素晴らしい。 [映画館(字幕)] 10点(2007-07-04 08:56:38)(良:2票) |
66. イカとクジラ
90分もない短い作品ですが、観ていてとても疲れました。かつて愛した人への感情的な鬱積、言葉の行き違い、喧嘩、生々しい性への欲望、とてもリアルで誰もが身につまされると思います。しかしこれを映画にして人々に見せるだけの価値があるのか、意味があるのかがわかりません。自分は誰ひとりとして感情移入できる登場人物も無く、虚脱感とイライラだけが残りました。 [DVD(吹替)] 5点(2007-06-22 11:53:32) |
67. 守護神
ハリウッド青春映画の定番を馬鹿正直にてんこ盛りした毒にも薬にもならない作品。ひねくれ大人の自分にはパロディを観ているような気にさえなった。「逃亡者」「ダンス・ウィズ・ウルブス」という名作を生み出したふたりが関わっているにしては寂しい限り。デートに選ぶ作品としては無難だが20代以上なら底の浅い男と見切られる可能性アリ。とはいえ日々人命救助に命をかける沿岸警備隊の努力と勇気には敬意を表する。 [DVD(吹替)] 6点(2007-06-22 03:34:41) |
68. ディパーテッド
本作が「インファナルアフェア」のリメイクだと言うことは知っていましたが、「インファナルアフェア」自体も観たことが無く、ストーリーも殆ど知らないままの鑑賞でした。この物語を最初にひねり出した人は天才ですね。よくここまで入り乱れた筋を考えたものだと観ながら感心しきりでした。ハリウッドドリームチームのような豪華キャストはやはりスコセッシの人望のなせる技なのか、ディカプリオは言うまでもなく天性を感じさせるものがありますし、特にジャック・ニコルソンのあのふてぶてしい存在感はまさに名人芸。「アバウト・シュミット」でのくたびれた初老の紳士と同一人物だとはとても思えません。大した役者、まさにスターです。 ただし、これが名匠スコセッシが映画化するにふさわしい作品なのかというと、ちょっと疑問ですね。いまだに「タクシー・ドライバー」の印象で見ているからかも知れませんが、彼にはもっと内省的で観客を挑発するような尖った作品をつくってもらいたい。 他の娯楽映画職人監督がつくったというのなら8点ですが、名匠スコセッシですから、ちょっと厳しめに7点を献上させていただきます。 [DVD(吹替)] 7点(2007-06-20 16:00:32) |
69. アポカリプト
マヤ文明が舞台であること。これ以外の情報は全く知らないで観てきました。事前の予想では、マヤ、アステカ文明がスペインによって滅ぼされた時代の壮大な歴史絵巻を想像していたのですが、それは裏切られました。 歴史を俯瞰して描くと言うことよりも、もっとパーソナルな、ある男の勇気と生きる力が試される試練の物語でした。こういうテーマなら、何もこの地、この時代に舞台を持ってこなくてもいいのではないかと思いますが、メル・ギブソンには何か考えがあったのでしょう。しかし自分にはそれが何であるかはわかりませんでした。 主人公は卓越した度胸と体力、そして運を兼ね備えていますが、家族を持つ男性なら、彼に感情移入できるかも知れません。男として家族を守ること。試練に立ち向かうこと。どんな苦境でも諦めないこと。自分ならどうだろうかと。この物語ほど過酷ではない、平和な日本ではあるけれど、やはり自分に置き換えてみるのではないでしょうか。 ところでこの映画を観た後にマヤ文明について調べてみたのですが、公式サイトでははっきり「マヤ文明」と記述しているにもかかわらず、その中身はマヤ、アステカなど、メソアメリカ文明と呼ばれる中央アメリカの文明圏のディティールをごちゃまぜにしているようです。映画のような生け贄の儀式のやり方はマヤではなく、アステカ文明独特のものであり、言語もマヤ語ではありません。 「300」でもそうですが、米国の映画が他国の文化・歴史を題材にする時に、時に無神経ともいえる(製作側に悪意がなかったとしても)改ざん、脚色をして物議を醸します。本作も例外ではなく、この文明の末裔である主にメキシコの人々がどう反応するのか気になるところです。 本作は主にハイビジョンで撮られたと聞いていますが、やはり映画館の大きさではハイビジョンは解像度が足りません。最近観た映画で言うと、フィルムカメラで撮られた硫黄島二部作や「300」と比べると格段に解像度が低く、ディティールが甘いです。これはスター・ウォーズ最新3作でも、最近の邦画でも感じることです。 製作側にとってはコスト面やデジタル処理に都合が良いなど、メリットが多い規格かもしれませんが、劇場鑑賞にはやはり厳しいフォーマットであると感じました。 [映画館(字幕)] 7点(2007-06-19 17:00:50)(良:1票) |
70. 300 <スリーハンドレッド>
《ネタバレ》 今先行から帰ってきたところです。スパルタの史実もフランク・ミラーのコミックも知らないで書きます。この映画、全編血みどろの戦いが続きますが、色調、構図、キャラクター、編集、とにかく何もかもが超絶に美しい。フランク・フラゼッタなら知っていますので比較できますが、彼のアートがそのまま動画になったような、本当に息をのむ美しさです。重量のある大振りな剣を振り回し、パワーで押し切る戦闘形態は、狩猟・肉食白人文明のマッチョな美意識そのものであり、その至高を見せつけられたような気がします。日本だって侍という戦士が居ましたが、細身で鋭利な日本刀で極力無駄な動きをせずに戦う古武道のそれとは全く違う文明圏のものだということがよくわかります。ただし、その根底に流れる精神、自らを律する心や自己犠牲などは日本武士道に通じるものがあると感じました。唯一ハリウッド映画だなと現実に引き戻されたのが、(史実を知らないで書きますが)、スパルタの王や兵士が「自由」「正義」「民主主義」という近年手垢が付くほど使い古された言葉で自らを正当化するところです。美しく強く気高いスパルタに対して、ペルシアは悪の帝国、血も涙もない悪魔の軍団として描かれます。ペルシア軍には得体の知れないモンスターも登場しますので、史実を忠実に再現した歴史物語というよりはスパルタVSペルシアの戦いをベースにクリエイトした架空の物語だとは思いますが、実在の国名を出す以上、イランのアハマディネジャド大統領が「ペルシアの歴史を侮辱している」と激怒するのも致し方無しかとも思いました。まあ、あまりこの映画に現実の国際関係や戦争の意義などを絡めて観るのも野暮だと思いますので、分別ある大人として、デジタルテクノロジーとヒロイックファンタジーアートの粋を集めた映画芸術の最先端を体験するというスタンスで楽しむのが良いと思います。 [映画館(字幕)] 8点(2007-06-03 00:37:29)(良:3票) |
71. サンシャイン 2057
《ネタバレ》 日本では地味な宣伝も足を引っ張り、GW前には早々に上映館が無くなってしまいましたが、本作に興味があったのに劇場で観れなかった人は人生で大変な損をしました。この映画は視界全てがスクリーンになるような、そして地響きがする程重低音まで再現できる優れた音響のある劇場で観てこそこの世界を味わい、乗組員と一緒に旅が出来るのです。おそらく家庭のTVやパソコンの小窓から眺めても、暗黒の宇宙、太陽の灼熱や光、重責を担うクルーの焦燥感や孤独なども他人事にしか感じられないと思います。 [映画館(字幕)] 9点(2007-04-28 14:12:13)(良:1票) |
72. 時をかける少女(2006)
《ネタバレ》 筒井康隆の原作とはなっていますが、「タイムリープ」の設定だけを借りた全く別の物語ですね。そしてそのタイムリープというSF的設定は物語の主ではなく、あくまでも主題はマコトの人生の想い出になるであろう一夏の物語。自分にはもう四半世紀前になってしまいましたが、あの頃の夏の空気や汗の匂いが甦ってくるようでした。 [DVD(邦画)] 8点(2007-04-28 13:59:28) |
73. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 この映画のディティールに対するこだわりはすごい。2027年の絶望の世界を構築するために画面の隅々まで細心の注意が払われ労力を惜しまずに手が入っており、CGIも出しゃばらず効果的に使われている。そして挑戦的な長尺カットが観るものを20年後の絶望の世界へ放り込む。スクリーンの外、エンドロールの向こう側の世界への想像力をかき立てられる。あの後、世界はどうなるのだろうか。キーと、愛娘ディランの運命は。観終わった後もそんなことばかり考えてしまう。 [DVD(吹替)] 10点(2007-03-30 19:44:34) |
74. フラガール
《ネタバレ》 これ本当にあった話なんですね。最後で紹介されるまで知りませんでした。まあもちろん脚色はあるでしょうけど。導入からのテンポの良い物語の展開は好感が持てますが、途中からちょっとたどたどしさが出ましたね。平山まどかが生徒達とうち解けていく過程が急ぎすぎて唐突だし、逆に中盤の興業の旅の過程、クライマックスの大舞台は間延びに感じました。あの大舞台は製作側にとっても力の入った思い入れのあるシーンだと思いますが、そこに溺れてはいけない、溺れていると悟られてはいけない。昭和40年らしい風俗と炭坑の疲れた感じは良く表現されていて、美術部門の奮闘に拍手した気持ちですが、そんな全体のバランスを唯一ぶち壊していたのが豊川悦司。あの髪型はないでしょう。祖父の代から炭坑で生きてきた男の髪型ではない。なぜなのか。他の作品を掛け持ちしていたから?ギャラ?それとも豊川自身の作品への思い入れの無さなのか?ついでに言えば彼の東北弁も大いに違和感ありでした。邦画でいつも腹立たしいのは一部に見られるスター級役者のそういったぞんざいな役作りですね。作品としては8点でもいいのですが、彼が足を引っ張ったと言うことでー1です。 [DVD(邦画)] 7点(2007-03-29 03:15:11) |
75. 太陽(2005)
昭和天皇の人となりがこの通りかどうかは別として、これほどまでに天皇を一人の人間としてとらえた映画を、よりによってロシア人に撮られてしまうとは。終戦にともなう天皇の孤独や苦悩も、どこまで史実をもとにしたのか、ソクーロフの解釈が多くを占めているのかわからないが、イッセー尾形の勇気ある役作りに助けられて興味深く観ることができた。しかし劇場ではどうだったかわからないが、音声が聞き取りづらい。何を言っているのかわからないから英語字幕で確認する始末だった。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-27 17:07:31) |
76. ソウ3
じゃあ観なきゃ良いだろう!と言われればそれまでなのですが、ジグソウが神に成り代わって過ちを犯した人間に肉体的苦痛を与えるというやり方がどうも好きになれないというか、納得できませんでした。口では高尚なことを言っていても、これはただのサディストでしかないでしょう。本当の試練、苦痛というのは肉体を傷つけることだけではないのに、という疑問が抑えきれなくなりました。そんなこと言いながら第1作から観ているのですが(笑)。やはりジグゾウの正体が明らかになればなるほど、彼が小物にみえるというか、与える恐怖も独りよがりに見えてしまうんでしょうか。CUBEもそうですが、黒幕は黒幕で謎のままのほうが良いと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2007-03-27 16:56:44)(良:1票) |
77. 嫌われ松子の一生
《ネタバレ》 映画館で予告編を観て、女の子の妙な表情や色彩に嫌な感じがしていたので避けていたのだが、ツタヤで旧作扱いになったので借りてきた。観てびっくり。まったくとんでもない映画だった。 松子は心理学か精神医学か、その世界の用語で言えば共依存の典型的な症例なのだろう。両親の愛に恵まれずに育った松子が不幸に吸い寄せられるように転落していく悲劇の物語。しかし画面はひたすら華やかでミュージカル仕立てでアップテンポ、コメディタッチでもある。それがまた哀しさを際だたせるのだ。何よりも特筆すべきは邦画にありがちな映像の安っぽさや、たどたどしいテンポ、音楽の陳腐さが微塵も無い事。脚本、映像、美術、編集、特殊効果、音楽、何もかもが邦画の水準を突き抜けている。ただの1カットたりとも手抜きが見られない緻密な映像だ。そして主演の中谷美紀の迫真、美人女優のプライドも何もかもかなぐり捨てたような演技、存在感、まさしくプロの仕事。監督はCM畑出身らしいが、尋常ではない映像の細部までのこだわりはその為なのか。この監督は出演者やスタッフを罵倒して追い詰めることでも有名だそうだ。そういえばクリント・イーストウッドの現場は穏やかで決して声を荒げたりすることは無いそうだが、スタイルの違いなのだろうけど、日本人には罵倒、叱責でネガティブに追い詰めたほうが力を発揮するのかもしれない。 [DVD(邦画)] 9点(2007-02-14 20:35:15)(良:1票) |
78. 県庁の星
お役所のいかにもなお役所加減、民間とはいえ疲弊した場末のスーパーの停滞して疲れた現場が好対照で、リアリティを感じさせる。実際お役所もスーパーも裏側は知らないけど、ディティールが細かく丁寧に描かれていた。また、柴崎コウの存在感というか、役作りが素晴らしい。ぞんざいな喋り方から歩き方、ルーチンな仕事を長年やっていると思わせるような身のこなしやしぐさ、やはり売れっ子だけのことはある実力派の女優だと感じさせる。バイトに行くと、こういう人いるんです。誰よりも現場を知っているが、パートであるがゆえにどこか投げやりな所もある人。実はこういう現場を知り尽くしている人に社員より優秀な人が多い。そういう人を企業は採用すればいいのに、まあそうもいかないのだろう。そうもいかない企業はやはりそれなりなのかもしれないが。上映時間の都合か原作からの構成の段階で端折ったのか不明だが、ストーリーのすっ飛びはあるが、最後までぐいぐい引き付けられる良作だった。こういう企業再生ものでは米映画「ガン・ホー/突撃!ニッポン株式会社」と空気が似ている。 [DVD(邦画)] 7点(2007-02-14 20:31:06)(良:1票) |
79. 単騎、千里を走る。
チャン監督の作品を観るのは初めてだが、心にしみる良い物語だった。最近中国と日本は経済的には繋がりがかつてなく濃くなっているのに、どうもぎくしゃくしている面もあって、中国人の顔が見えなくなっていると感じていたが、こういう映画を観ると、結局我々は人として何も変わらないという当たり前のことに気がつかされる。チャン監督にとってヒーローであり、永遠のアイドルである高倉健を起用したこの作品は、彼の魅力が存分に生かされていると思う。しかし中国人キャストが皆素人であるということが驚きだ。ヤンヤンをはじめ、現地のガイドのお兄ちゃん、村人達、そして投獄されている父親。彼が「息子に会いたい」という鼻水を垂らしながら慟哭するシーンは、いったいカメラの前に立ったことのない素人にどういうマジックでその迫真の演技を引き出したのかと、そちらの方を知りたくなってしまう。メイキングで高倉健が「演技とはどういうものであるか、考えさせられた」と言っていたが、彼も思うところがあったのだろうか。逆に日本側シーンの寺嶋しのぶオーソドックスな俳優としての演技の方が嘘くさく感じてしまうほどだった。 [DVD(字幕)] 8点(2007-01-21 08:27:05) |
80. 不都合な真実
《ネタバレ》 大統領選で僅差で敗れたゴア氏は、こんなことをやっていたのか。彼は地球温暖化問題、つまりは地球環境問題に長く取り組んできたようで、今は世界中をこの問題の啓蒙のために飛び回っているそうだ。この作品はその講演内容をシンプルに映像化したもの。だから映像的に斬新であるとか目新しいとかいうことはないのだが、今地球に起こっている「不都合」どころではない背筋も凍るような驚愕の真実が、ゴア氏のユーモアを交えた巧みな話術と、豊富なデータによって明らかにされる。皆さん環境問題、地球温暖化と耳タコでしょうけれど、目を背けずにこの現実を見てください。ほんと地球マジヤバイです。しかしこの作品の良いところは、危機を煽るだけ煽って、はいサヨウナラ、ではないところ。アメリカ人らしい、明るさといおうか、前向きさ、といおうか(一番CO2を吐き出しているのは当のアメリカ人なのに・・・)、これだけ絶望的なデータを示しながらもなお「希望を捨てるな、我々は今まで幾多の危機を乗り越えてきたではないか。この人類未曾有の危機も必ず乗り越えられる」と訴える。それは特別なことではない。エアコンの設定温度を上げましょう、公共交通機関を使いましょう、リサイクルしましょう、といったことだ。正直なところ、それも焼け石に水かもしれないと思う。でも、何もしないよりは少なくともましなのだ。 [映画館(字幕)] 9点(2007-01-21 01:51:17)(良:2票) |