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61.  探偵物語(1983) 《ネタバレ》 
 若いころにこの映画を見ていたら、多分「角川のアイドル映画だからこんなものかな」と軽く受け止めて、後に何も残らなかったと思う。久々に昭和の邦画もいいかなと思い視聴したところ、かなり新鮮で意外だった。   通常は器用者と不器用者のコンビで、互いに足らないものを補い合って調子を整えるのだろうが、あいにく直美と探偵は不器用者同士。2人ともぎくしゃくして始終波長が合わない。マル被である直美に尾けられたまま元嫁を訪ねる探偵の不恰好さも、見知らぬ男と一緒にホテルへ入る直美の破天荒ぶりも、双方ともに目を覆わんばかりの不器用ぶり。また、二股も辞さない女好きの大学生や、殺人の疑いをかけられた哀れなやくざなど、とにかくこの作品に登場するあらゆる人物が、ひとクセもふたクセもある愚かでややこしい者ばかり。  なのに視聴後には、ほろ苦く、じんわりと胸に温かいものが残る。赤川次郎作品は学生のころ2冊ほど読んだが、そのときは、「軽い大人のおとぎ話」としか思わなかった。今回鑑賞した彼の世界には、市井の人々を見守る原作者の温かい気持ちが、底辺にしっかり流れている。少なくとも、面白ければ何でもいいという無責任な作りには見えなかった。愚かで哀れだけれど、決して書き割りの脇役としてではなく、世間にはこういう類の人々がいるとすんなり納得できるほど、血の通う人物として1人1人がちゃんと演出されている。そういう意味では、メインキャラたちが住む環境は、ドラマ『探偵物語』のbad cityとそれほど違わないのではと思った。   この作品では、カメラワークが面白いなあ!とうなるシーンがたくさんあってここに書ききれないが、中でも直美が最後に探偵の部屋を訪れた場面。双方の凝り固まった気のぶつかり合いがすごい迫力で、まるで喧嘩を売った売られた感が否めない。これが愛の告白シーンとは。八つ当たりのように「寂しかった!」と言い捨てる彼女もすごいが、好きと言われて甘えるなと返す探偵も容赦ない。甘いムードが一切ない、ナイフで突いたら血がにじむような空間。探偵の目はテーブルの下でスカートを揉みしだく直美の拳を見ていないけれど、視聴者にはばっちり見える演出も心憎い。また直美は、浮気が原因で妻に子供をおろされたという探偵の「大人の事情」を知らないが、視聴者だけが内情を知ったままで話が進むと、無口な探偵の人柄がかえって深みを帯びてくる。何とも印象深いシーンだった。   それにしても直美の変人ぶり(ペンダント選択の時点で変人キャラ決定)や、メンタルの強さには舌をまく。当たってくだけろの精神がハンパなく、その結果どんなに傷ついても、そばに誰かがいようがいまいが涙ひとつ見せない。探偵の方は、道義的には命懸けで元妻を助けるほどの行動力はあるが、年の離れた女子大生の愛を受け止めるほどの勇気がない。その2人のラストのキス。台詞が一切ないまま別れるのに、驚くほど不自然さがない。それは、2人のこうした性格が見ている側に十分伝わっているからだと思う。もしどちらか、または双方が何か言えば、どんな台詞も野暮になった。映画の和洋を問わず、大風呂敷を広げた末に強引にまとめるなど乱暴なラストの作品が多い中、これほど粋にまとめた邦画を見たのは、久しぶりだと思う。
[インターネット(邦画)] 8点(2017-06-16 13:53:16)
62.  列車に乗った男 《ネタバレ》 
それぞれの人間関係や過去は、全て語られるわけではなく、視聴者が想像できるぎりぎりの流れだけを見せてくれる。そのぼかし方が絶妙に上手い。マネスキエがジグゾ―パズルをいじっているシーンがあるが、この映画自体がまさにパズル。映像の端々や台詞で垣間見せてくれるヒントを頼りに人間関係を解けとでも言っているようだ。  たとえば、強盗仲間であっても心を許して抱擁するほどの、実は人一倍人情の深いミランだからこそ、ルイジをかばって撃たれてしまうわけだし、マックスとドライバーのサドゥコは、警察と司法取引でもして仲間を売ったと思われる。初め、マックスは警察の潜入捜査官なのかと思ったが、ミランが彼に「太ったな」と昔馴染みをうかがわせる言葉を出しているから、違うだろう。抜けようとしたミランを無理に引き込もうとしたマックスのタチの悪さは計り知れない。  また、マネスキエもミランも、土曜日にのっぴきならない「用事」があり、この時間制限が、ドラマの明確な設計図でもある。自身の死を賭けたXデーを控えて、2人が次第に互いの人生を「隣りの芝生」視点で眺め始める。彼らの思いが、じわじわと交差していく。その流れが、小憎らしいほど自然で、台詞がまた上手い。ジョークを挟んだり、しないと公言していた質問をするなどして、饒舌と寡黙の単調なリズムが、少しずつナチュラルに変化していく。それは食事風景にも言えることで、最低限の料理と酒しか載っていないだだっ広いテーブルだったのが、ラストデイには、驚くほど小さな食卓となり、その上に果物、水差し、ヤカンとぎっしり物が載った状態となる。初日にはミランが酒を遠慮しており、最終日にはマネスキエが湯?ティー?を断る。しかも、ホスト側ではなく客のミランが最後の食事を用意しているのだから、2人の関係の変化もここまできたかというユニークさがある。こうした細々な仕掛けが台詞・映像を問わず、さりげなく張り巡らされている。何度見ても何かしらの発見がありそうな作品だ。   ラストの一見不可解な映像は、2人の叶わなかった願望をファンタスティックにシミュレーションしたもの、つまり演出家による、視聴者へのサービス映像に見えた。また、ミランが乗ってきた列車は、単なる交通機関である車両に過ぎないが、マネスキエが乗り込んだのは、ユーラシア大陸から直接北米の、例えばワイアット・アープが活躍したトゥームストーンへでも向かう夢の列車だったろう。ただ、ミランがこの街に来なければマネスキエの乗車に繋がらないわけで、タイトルの「列車に乗った男」はやはり両者を指すのだと思う。しかし、2人同時の乗車はありえないので、「男たち」ではなく単数形なのだろう。
[インターネット(字幕)] 10点(2017-06-10 02:14:18)
63.  ベイマックス 《ネタバレ》 
 一般には高評価なのだろうけど、私にとっては『アイアン・ジャイアント』と『Mr.インクレディブル』のミックス?みたいな既視感がすごかった。前半はかなり面白かったのに、ヒロがベイマックスを武装化するあたりから、レンタルしたのをじわじわと後悔し始め、仲間たちがぞろぞろと戦隊化し始めると、もはや 「映画館じゃなくレンタルでよかった」と自分を慰めるよりほかなくなった。   私はこの愛らしいロボットに、ふわふわ感のテクスチャを終始一貫して楽しめると思っていた。マシュマロ、あるいは風船系ロボットというからには、ゴムとはまた違う危うい弾力を持ち、あらゆるストレスを吸収してくれる、変幻自在な、でも下手するとパン!と破裂してしまう、使えそうで使えないけど憎めないピント外れなカウンセリングロボ、おぉ、面白そう、ひょっとして、主人公の少年が諸々のトラブルをのりこえ成長して、逆にベイマックスを癒すぐらいになるのだろうかと期待していた。だから、サイボーグ002やマジンガーZや○○レンジャーを見たかったわけじゃない。 鎧なんか着せたら、せっかくの類まれなるラブリーなテクスチャが台無しになるじゃないか、白い肌?のまんまで話進めてよー!   それに、なぜヒロはおばさんにベイマックスを隠さないといけない? 教授がしつこくヒロたちを襲う必要なんてあるの? 何でもアリ感がハンパないマイクロボットは、24時間問わずオートマチックに製造されてるの? 無尽蔵に溢れてきてニョキニョキ伸びる建造物なんかは、途中からアナ雪のグロテスク版にしか見えなくなって、全くテクノロジー感に酔えずじまい。ストーリーに無理がありすぎるし、和洋を問わずいろんな作品のパーツがごちゃ混ぜに垣間見えるから、せっかくの可愛いベイマックスに全然集中できない。戦隊ものにしたって、初めからヒーローという設定のインクレディブル一家なら納得ずみの視聴だったけど、お堅いロボット工学の学生たちがいきなり超人化してド派手に活躍するなんて聞いてないよ、めちゃくちゃ恥ずかしい。視線を合わせるのが眩しくてしようがないほど、イケイケ感がダサかった。   視聴して、あることに気がついた。  裸一貫で十分魅力的なキャラ、トトロは、なんて偉大なんだ・・・・・・
[DVD(字幕)] 3点(2017-05-24 22:13:40)
64.  マザー・テレサ(2003) 《ネタバレ》 
冒頭の、混み合っている駅のホームで、誰にも看取られずに命尽きようとしている男性のそばに、マザーテレサがうずくまるシーン。そのとき、すっとカメラが引いて、周囲の人々が姿を消す。貧しい人に愛を注ぐのに、周囲の雑踏が全く目に入らなくなる、これが彼女の類まれな集中力。1人1人の頬を両手ではさみ、声をかけるマザーの慈愛のこもったしぐさは鳥肌ものだった。彼女が亡くなった当時、世界各国に散っていた元孤児たちが「マザー、マザー」と実母のように嘆き悲しんでいた報道を思い出す。 イギリスやスペイン等のキリスト教がらみの時代劇を観ると、宗教と国家権力がどろどろと癒着した残酷極まりないエピソードがいくらでも出てきて、そのたびぞっとさせられてきた。本来キリスト教は、貧しき隣人を愛せよと人類愛に満ちた教義で説くはず。それなのに、神に仕える神父や修道女が虐げられた人々に直接奉仕することが、どうしてこんなにも難しいのだろう。マザーが修道院を出て、自ら神の家を設立する過程を初めてこの映画で見て、そこからしてガツンと大きな衝撃を受けた。つまり、冒頭から私は驚かされっぱなしだった。真の意味で、神に自らを捧げている聖職者が、どれほど存在するのだろうか。 3ドルの水の価値に言及する彼女は、『シンドラーのリスト』で「これだけあれば○人救える」と人の命を金に換算して苦しむシンドラーの姿と重なる。神の鉛筆になる者の苦悩は凡人にははかりしれないが、彼らは何と尊い存在だろうと深く考えさせられた。
[インターネット(字幕)] 9点(2017-05-18 01:21:40)
65.  愛と喝采の日々 《ネタバレ》 
シャーリーとアンの取っ組み合いが、ミーアキャットの喧嘩に見えて、ちょっと笑えた。 ダンサーたちの魅力的な踊りも良かったけど、この喧嘩のシーンが一番好き。 些細な行き違いから決定的に別れてしまうつきあいなんて、日常いくらでもあるのに、ここまで本気で喧嘩できて即行で仲直りできる親友・・・・・・羨ましすぎる。
[DVD(字幕)] 8点(2017-03-07 16:47:59)
66.  イヴの総て 《ネタバレ》 
真っ白な肌、濡れた唇、伏せたまぶたが開くと、白目を剥いた上目づかい。一度見たら忘れられない目力、女の「野心」の顔は恐ろしい・・・。 恩義を自ら乞いながら下剋上を目指すなんて、後味が悪すぎ。 どんなに華やかなデビューを飾ったところでこんな女優、みっともないなあと思う。 ストーリーは大嫌いだけど、誰からも理解されずにストレスをためていくマーゴが可愛いかった。 後足で砂をかけるような生き方をする人間は、自然に人が離れていく。見ておいて損はなかったかな。
[DVD(字幕)] 8点(2017-02-24 20:08:38)
67.  レッドタートル ある島の物語 《ネタバレ》 
裏返った亀の腹が、ばりっと割れた瞬間・・・・・・ 静まり返った映画館の中だというのに思わず、「勘弁してよ!」とつぶやいてしまった。 まさか、大好きなマイケル作品でこんなシーンに出くわすとは夢にも思わず(涙)。 でも、次の瞬間、大きな安堵のため息・・・・・・  全編を見終わったあと、涙でしばし立ち上がれなかった。 『岸辺のふたり』以来、彼のカラーの長編が見られるというので、ずっと楽しみにしていた。 二次元でありながら、目の錯覚かと思えるほど水の中、自然光にあふれる大気、ありとあらゆる空間が、重力に縛られず変幻自在に表現されていた。 水に浮かんだ男の、海底で揺れる淡い影、女が翡翠の海に浮かべた巨大な甲羅、2頭のカメと並走して鳥のように泳ぐ息子、 これほど目にここちよい浮力を味わえるアニメは、そうはないと思う。 ああ・・・・・・やっと、自分の頭の中に念願の作品が収まった、という思いでいっぱいだった。  ただ、  宮崎氏だったら、「もののけ姫」のシシ神のように、カメを何かの象徴のように扱った気がする。 人間に恋をしたカメとなると、大自然の象徴が個人の人間に合わせてレベルを落とさなければならないので、どうしてもスケールが小さくなってしまう。 また、 いつ「紅の亀」が男を見初めたかがわからない。 人間界を暗示するボトルで巣立ってゆく息子の行く先は、カメとしての大海なのか、人間としての街なのかがわからない。 男と成長した息子があまりにもよく似ていて、まぎらわしい。 地震もなしに、いきなり大津波がやってきたことも引っかかる。 無理して言葉を飲み込んでいるような3人が、逆に不自然。 ・・・・・・と、つっこみたいところは多々あって、どうしても秀作『岸辺のふたり』と比べてしまう。 無理に長編にしたことで、マイケル作品の歯切れ良さが間延びされ、大味になった気がする。それが残念。  それでも、もう一度見直しても、多分、涙でぼろぼろになる予感・・・・・・
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-28 20:45:39)
68.  ミスト 《ネタバレ》 
後味が悪いとか下らないとか、あまりいい評判を聞いておらずほとんど期待せずに見たら、意外に考えさせられることの多い作品で、けっこう拾いものだった。今年(2016)5月に、年端もいかない1人の小学生が北海道で1週間近くも孤独に耐えて、生き延びた。いかに体力を温存して、1日でも長く助けを待つことが大切かということを、彼は小さな体で証明してみせた。映画の中では、閉じ込められた大勢の人々がうろたえおびえ、言葉は悪いが、勝手に騒いで自滅していった。非常時のパニックが、もっとも命を縮め、何の益をももたらさないことを、この映画は強く訴えている。  この映画に出てくる人々は、自分たちがこうむっている災難を、人のせいにせずにはいられない人たちだった。彼らの信仰は、信じた者だけが救われるというお得感や優越感、排他的な狭い視点に裏打ちされている。  また、この集団が私たち日本人であったなら、どういう流れになっただろうとも考えた。まず、義務感満載の旧約聖書を延々と説き続けるマダムを前にして、きっと誰かが代表して彼女にこう言っただろう。  私たち日本人は、正月に神社へ初詣でに行き、彼岸や盆には墓参り、厄がついたら宮司にお祓いをしてもらい、結婚式は教会で、死んだら戒名をいただきます、そうそう、クリスマスには救い主の誕生をお祝いするよりサンタの方が魅力です。あと、八百万の神さまも捨てがたいですが、まだ続けますかと。  特定の宗教の色に染まりにくい国民性は、本当にありがたい。もちろん、他の国の人々は短絡的だというつもりは毛頭なく、ただ、さまざまな宗教観にとらわれる手間もなく、いち早く一致団結して強者が弱者を守る知恵と勇気を絞る方が、よほど災厄を免れやすいと思うだけだ。深刻な地震に遭い、閉鎖的な環境に長時間閉じ込められた人々が、パニックをさけ、自分にできることを自ら探し出して、積極的に他者に奉仕する姿が、阪神淡路大震災、東日本大震災など、これまでにも何度も報じられてきたが、本当にこれはすごいことなんだと、この映画を観て改めて日本の被災者たちの辛抱強さ、たくましさに気づかされた。
[インターネット(字幕)] 8点(2016-09-14 02:18:52)
69.  エリア88
映画館で見た学生当時、目に見えない神崎に向けてシンが「なぜだーっ!」と叫ぶシーンで、彼のこの押し殺した怒りの感覚、どこかで見たことがあるとずっと引っかかっていたけど、ようやく○ン十年ぶりに解決。 「ベン・ハー」のユダだった! ところが、いったんそう感じてしまうと、最終までシンがユダ、神崎がメッサラーにしか見えなくなってしまい・・・・・・(汗)。 それはともかく、昔見た映画は、後年できるだけ見直すに限る。
[DVD(邦画)] 8点(2016-09-06 16:23:02)
70.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
高い発生率の南海トラフ地震におびえる太平洋側の住人としては、この映画は単なる娯楽として鑑賞できなかった。建築物の崩壊シーンはあまりにも生々しく圧倒的で、震災で身内を亡くされるなど、深刻な被災を経験した人がこの映画を観るにはかなりハードルが高い気がして心配になったほど。  巨大生物に善も悪もなく、ただ決して共存できない存在として描かれているため、ゴジラは生物というよりは、まさしく地震やその他の天災をつかさどる荒ぶる神の化身に見える。東日本大震災では、大きな地震や津波が起こったあと、二次被害として原子力発電所の重大事故が発生したが、そうした段階を踏んだ震災の様子が、ゴジラの上陸、建築物の破壊、放射能火炎放射らと重なって見え、考え込まざるをえなかった。何度もくり返された 「生物なら倒せる」 というセリフは、決して避けることができない天災を人類が直接手を下して牛耳りたい、防ぎたいという願望が込められている気がする。  海外のGODZILLAで描かれる人間ドラマは、怪獣と対比させるためにやむなく必要だったのだろうが(そのため、どうしてもとってつけたような感が残る)、このシン・ゴジラは、擬人化した「震災」に立ち向かう人間ドラマであって、どちらも重要な両輪の役目を果たしていた。核を使わず、ピンポイントでゴジラをしとめる人間の知恵と勇気は、東日本大震災の折、放射能拡散を防ぐため、命がけで発電所に放水をくりかえした東京消防庁の人々、バルブを閉めに行った熟練者たちへの思いに重なる。この映画を観た外国人の中には、退屈な官僚たちの人間ドラマなど不要という感想を持つ人が多いと聞くが、日本人にしかわからなくてもいいと堂々と開き直りたい。
[映画館(邦画)] 10点(2016-08-06 01:08:26)(良:3票)
71.  GODZILLA ゴジラ(2014)
いろいろひっかかったり、首をひねりたくなるシーンもあったけれど、観終わった感想はただただ、「アメリカの皆さん、日本のキャラクターをここまで愛してくれてありがとう」 という一言のみ。日米にとっては腫れ物に触るような核やら放射能やらのイメージを、平気でしょって歩くゴジラが、なぜこれほどまでに世界で受け入れられるのだろう?
[地上波(吹替)] 7点(2016-07-30 00:54:50)
72.  重力ピエロ 《ネタバレ》 
重力をときはなち、一家の幸せを願う母、弟を守りたい長男、兄に気づいてもらいたい次男、息子たちを見抜いている父。皆さんのおっしゃるように突っ込みどころ満載だったが、この深い家族愛が貫かれている以上、何もいうまい。 レイプされて生まれた子供たちは、世界中に星の数ほどいる。彼らが人に愛され、愛することができる人間に、どうか成長してほしい。そう願わずにいられなかった作品。
[インターネット(字幕)] 7点(2016-02-28 00:46:27)
73.  海難1890 《ネタバレ》 
NHKをはじめとする様々なドキュメント番組、書籍などを通して、ある程度知識の底入れがあった。串本の人々が生活に余裕のない状況も顧みず献身的にトルコの遭難者を救助したこと、また、イラクの戦場の地で、トルコの人々が日本人のために危険を承知で陸路を選んだこと、この2点が事実であるなら、どう描いてもこてこての美談になるだろうという予感があった。つまり、映画で表現すれば 「やりすぎだ」 と言われても不思議ではない話が現実に起きていて、感動が偽物に感じかねないほどの美談だった、ということ。初めからそういう思いで鑑賞した。トルコ海兵たちを見送るために、浜の人々が総出でずらっと並んだ光景が出たときは、鳥肌が立つほどの感動がきた。(ここ、思い切りネタバレですが → ) エンドロールが終わって席を立とうとしたとき、トルコの現首相が大きく映し出され、私たち観客に向かってあいさつの言葉を述べられた。この映画は、単なる安っぽいプロパガンダ作品ではなく、日本とトルコ両国の絆を深めるための、尊い記録映画でもあるのだと思う。ちなみに、安倍首相は映らなかった。トルコで上映される場合は、日本の首相があいさつしていて欲しいと切に思う。
[映画館(邦画)] 10点(2015-12-16 23:36:05)
74.  思い出のマーニー 《ネタバレ》 
杏奈が人形を抱いているシーンはひっかけだったらしい、マーニーは杏奈が小さい頃抱いていた人形かと思い込んで前半を見ていた。かと思えば、七夕祭りのトラブルで重要なヒントがバッチリ出されているとか、後から考えたらいろいろ仕組まれていたなあと苦笑。杏奈があまりにもかわいげのないキャラクターだったので、逆に悔しいほどぐいぐい物語に引き込まれてしまった。ただ、彼女が夜間出歩くという設定は、かなりマイナスポイント。魅力的な大岩夫婦が、預かった12歳の女の子の夜歩きを叱責しない、無責任な大人に見えてしまうからだ。暗くなるシーンが来るたび (何時に帰る気だ!?)とヒヤヒヤするわ、雷を恐れるあまりかマーニーの口から唐突に和彦の名が出たために、幻想のサイロ内でさらに二重の幻想が盛り込まれるわ、マーニーが杏奈と突然別れねばならないタイミングの必然性がよくわからないわと、つまりファンタジーの部分がもろもろ整理しきれていないので、観ているこちらも気持ちよく浮遊感 (現実を離れることの解放感) を味わえない。最大の混乱は、杏奈自身がマーニーは自分の空想の女の子と認識していること。なのに、サイロで置いてきぼりにされたと動揺したり、激怒してマーニーを責めたりするから、彼女がこの金髪の親友をどう信じているのか、わけがわからなくなり、「もちろんよ、許してあげる!」という熱弁を聞いてわけがわからないまま感動して涙を流す羽目に。煙に巻かれながら泣かされるこちらの身にもなってほしい・・・・・・。(でも、視聴してよかったと思える作品だった)
[DVD(邦画)] 6点(2015-09-13 00:09:00)(良:2票)
75.  ソラリス 《ネタバレ》 
何の予備知識もなかった人には、さぞかし辛い視聴だったろうと思う。ソラリスという惑星が、飛行士たちのイメージから人間らしき 「生物」 を創り出してステーションに送り込んでいるなんて、この映像ですんなり納得できるのだろうか。また、身内を亡くして喪失感に苦しむ遺族が、宇宙の奇蹟によって再び故人と遭遇したら、気が動転して相手を宇宙に放り出したなどと、この感覚だけはどうしても受け入れられない(つまり原作から文句を言いたい)。夢でも会いたいと思う相手なら、何者に姿を変えていてもしがみつきたいほどの喜びではないのか。  ただ、不思議なことにこの作品は、どこか能に通じるものを感じる。言葉数や動きの少ない、俳優たちの抑えた演技が、力強い気を放っているようだった。特にレイアを演じるナターシャは、目が異様に大きく邪悪なものを秘めているようで、観ているこちらは不安をかきたてられた。しかし、まばたきのほとんどないその目は、能役者がかぶる面のようだ。表情が乏しい面の下では、自分が何者なのか、愛されているのか、夫とともにいられるのかといった、自己の存在を懸けた疑問にもがき苦しんでいる。もともと幸せを素直に受け入れられず、プロポーズも、妊娠も躊躇するなど、彼女は生前から自分の存在が希薄だと思いこんでいたのだろう。最初の自殺と違い、クリスを地球に帰すために自ら死を選ぶ彼女の愛は、たとえソラリスの生成物の立場であったとしても、深く胸をえぐられる。死生観あり、オカルト性ありと、『ソラリス』は能の演目向きのストーリーかもしれない。
[DVD(字幕)] 8点(2015-09-06 21:26:47)
76.  ペネロピ 《ネタバレ》 
この映画ほど「レリゴー♪」の歌が似合う作品もないのでは。「美女と野獣」の逆バージョンで、さすが現代版だけあって、他力本願ではなく「自分で呪いをといた」と胸を張るペネロピが最高にかっこいい。自分の顔を世間に公表するあたりから、彼女の勇気に感動しっぱなし。あの失恋の落ち込みレベルは自殺を考えても不思議じゃないのに、そこから始まった彼女の行動は、「死ぬ気ならなんでもできる」を地でいっている。人から愛されるより前に、まず自分自身を愛する気持ち、心の声に耳を傾けることが大切だということを、この映画から教えてもらった。
[DVD(吹替)] 8点(2015-09-05 15:24:52)
77.  ジュラシック・ワールド
以前の「~・パーク」の方は、太古に生きた恐竜(草食種、肉食種を問わず)に対する深いリスペクトが感じられたが、今回は、人間と恐竜が当たり前のように共存している設定になっていて、なにもかもが薄っぺらい。恐竜を調教して心を通わせるというのも、未知なるジュラ紀の野生を操ろうとする人間のおごりに思えて全く共感できないし、ハイブリッド恐竜ときては、もはや太古のロマンなどみじんもなく、生物としてできそこないのモンスターとしか思えないので、これだけ強くて賢くても、その命自体に魅力を感じなかった。いくらでも創作が可能な怪物は、歴史上存在した恐竜の生の重みにはかなわない。ジュラシック・ワールドは、命をおもちゃにし、見世物にし、兵器にしようとした。人間たちはその報いを受けて、命からがら逃げ惑うことになる。本作を単純に言うとそんなところだが、パークの方は、人間と恐竜が同じ時代に生を共にするというあり得ない奇跡を起こし、歴史の彼方からかいくぐってきた未知なる野生の魅力や恐怖を、あますところなく描いていた。ジュラ紀の恐竜が現代の車を襲うなど、『バック・トウ・ザ・フューチャー』のように時代差の生じる面白さにあふれていた。残念ながら、ジュラシック・シリーズは続きをどう描いても、初作の二番煎じになると思う。
[映画館(吹替)] 5点(2015-08-12 23:06:39)(良:2票)
78.  ザ・ディープ(2012) 《ネタバレ》 
主人公が海を泳ぎながら「私にもう1日ください」と神に祈る様子や、過去の思い出を断片的に思い返す様子、カモメに導かれるようにして島にたどりつき、街の明かりを一望した瞬間など、どのシーンひとつをとっても、映画のタイトルのようにどっしりと深い味わいがあり、哲学の重みさえ感じ取れた。波の下では生存不可能な厳寒の海に囲まれ、火山の害にもめげずに暮らしを立て直そうとするアイスランドの人々は、つねに神の存在を身近に感じているらしい。そして、情け容赦のない自然を相手に 「戦う」 というより、「共生」 して生きていこうとしているようだ。一神教にすがることはないけれど私たち日本人も、地震や津波、台風などの天災にさらされ続けながら、害のために荒れた地をならしては、新たに生活を築いていく。そう考えながら観ていると、次第にかの国の人々への親近感や畏敬の念が湧き起こってきた。心ならずも死を迎えた者への鎮魂や、試練を乗り切って得た生の営みの尊さを、ひとりの男の奇跡を通して静かに謳いあげている佳作だと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2015-08-05 00:51:09)
79.  おおかみこどもの雨と雪 《ネタバレ》 
雪の子供時代の声をあてた大野百花ちゃん、うますぎる! 怒ったりすねたり吠えたり笑ったり、これ以上の喜怒哀楽をどうやって表現すればいいのかってくらいガンガンくる。また雪自身が青大将を腕にまきつけたり、小動物の骨を集めたり、面白すぎて最高。一方、巣立ちのときを迎えた雨の方は、人間界を選んだ姉と違い、10歳ではや成獣となる。遠吠えをするおおかみ姿のりりしいこと! 2人の子供たちをいつまでもずっと見ていたかった。また花は、うかつにもおおかみおとこと同棲して、子供も産んで、子供の正体を隠す子育てを選んだため、批判されても仕方ないかもしれないが、彼女がいなければ、おおかみおとこは永遠に、誰とも触れ合えなかったかもしれない。社会的にハンディを負っている人々にとっては、彼女のように苦労を恐れず人生を受け入れてくれる人は、何ほどにも代えがたい存在に違いない。それに、子供たちの正体をさらすということは、世間の差別と戦うこと。シングルマザーの子育てに、そんな余裕など絶対ないと断言できる。成長後の子供たち自身がカミングアウトの選択を持つ方がいい。私は、人や獣を問わず惜しみなく愛を与える花が好きだ。雨も、雪も、命を散らしたおおかみおとこも、この家族が本当にいとおしい。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-12 22:50:18)(良:1票)
80.  ゴーストライター
どんよりと重い曇天、陽を受けない冴えない砂浜。別荘の巨大なガラス窓では、そうした2種の灰色が上下でせめぎ合っている。夕方から夜間にかけての映像も多いし、ほとんどBGMがないもの静かな雰囲気、激しく対立する起爆剤があるでもなく俳優たちのセリフもこそこそと低くていまいち覇気がない、なのに、ジャンルはサスペンスであって、印象に残るシーンも数多くあり、数々の映画賞を受賞・ノミネートしている不思議。監督がロマン・ポランスキーと知って納得した。全編を通して漂っている上質な静けさと、それにマッチしたうす寒い島の風景が見ていてとても心地いい。もう一度観るときはストーリーを度外視して、映像美を主に楽しみたい。ただ、エメット宅の訪問のシーンでは、『アイズ・ワイド・シャット』の似たような場面を想い出し、少し迫力不足を感じてしまった。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-01 15:44:46)
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