61. サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~
《ネタバレ》 スーパーヒロインだけでなく市長まで女性にしているし、とことん女性賛歌の映画って感じですね。 例えば、悪の美女であるレーザーとの決着が付いておらず、取り逃がした形になってるのも「続編に繋げる為」というより「たとえ悪役でも女は倒さないよ、倒すのは男だけ」っていうメッセージに思えちゃうんです。 主人公の一人であるエミリーがシングルマザーっていうのも象徴的であり、明らかに「正義の味方」側から男を排除してる。 一応、序盤には脇役として男キャラも何人かいたはずなのに、途中からどんどん出番が減っちゃいますからね。 そんな中、一番出番のある男性キャラが悪役のクラブであり「主人公リディアと恋に落ちて、土壇場で裏切る」というオイシイ役かと思われたのですが…… これまた全然活躍しないで、裏切った途端あっさりラスボスに蹴飛ばされて終わりっていうんだから、徹底しています。 世の中には男性賛歌の映画なんて溢れてる訳だし、こういう映画もあっても良いとは思うんだけど…… ここまで極端だと、流石に戸惑いが大きくて、素直に楽しめなかったのが残念です。 米国では妙に人気がある「嘔吐ギャグ」も、個人的には全然ピンと来なかったりするもので、最後の最後にそれが飛び出すっていうのも、何か印象的したね。 極端な女性賛美も、嘔吐で笑いを取るのも、別にそれが悪い訳じゃないんだけど、何となく肌に合わないっていう、居心地の悪い気分のままで映画が終わっちゃいました。 痩せた美女じゃなく、太ったオバさんがスーパーヒロインになるって発想は面白かったし、薬を飲んだ途端に超人に変わるのではなく、地道にトレーニングを重ねて強くなる描写も好みだしで、良かった部分も色々あるんですけどね。 エミリーの祖母に「実は私達、サンダーフォースなの」と正体を明かそうとしたら「レズビアンなの」って告白だと勘違いされちゃう件も可笑しくって、個人的には、ここが一番お気に入りかも。 爆弾と共に身を投げる直前、リディアが「友達でいてくれて、ありがとう」とエミリーに告げる場面もグッと来たし、映画のクオリティ自体は高かったと思います。 他にも、主演のメリッサ・マッカーシーはベン・ファルコーン監督の妻とか「ソー:ラブ&サンダー」(2022年)にも二人は本作を連想させる役柄で出演してるとか、色々と面白い小話に事欠かない映画ですね。 こういう形のスーパーヒロイン物もあるって事で、この手のジャンルが好きな人なら、チェックしておく価値はあると思います。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-10-19 09:59:07)(良:1票) |
62. 噂のアゲメンに恋をした!
《ネタバレ》 海外ドラマ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」にて、女子刑務所内で本作が上映される場面があったもので、興味を抱いて鑑賞。 かなり煽情的な場面が多く、コレをノーカット上映で観せられたら、囚人達は相当興奮しちゃうんじゃないかと、そんな風に思えましたね。 「噂のアゲメン」となる主人公の設定も面白く、上手く考えたもんだなと感心。 愛を交わした相手が別の男(次の男)と結ばれちゃうという、悲惨な呪いのはずなのに、それが転じて「この男と寝れば、次の男と幸せになれる」と女性達に認識されて、一夜限りのモテモテ男となる訳ですが…… この映画は、そんな「悲惨さ」と「モテモテになれる優越感」その両方を均しく描く事に成功してるんですよね。 後者に関しては「女を取っかえ引っかえ」してる場面を愉快に描いてたりするし、オスの本能で、つい嬉しくなっちゃいます。 この場面、レズビアンの警官には制服を着せたまま交わったりしてるし、何ていうか「男心」を分かってる感じなんですよね。 他にも信心深い女性とか、性転換した元クラスメイトとか、面白いキャラが色々揃っており、彼女達が文字通りの「使い捨て」な扱いだった事が、惜しく思えたくらい。 終盤にて、遠くに旅立つヒロインを止める為、主人公が空港に向かうというラブコメお約束の展開があった訳だし…… そこで婦警さん達が再登場して、主人公の手助けをしてくれる展開なら良かったのにって、そんな風に考えちゃいました。 美人とは言い難い女性に「目を瞑って、綺麗な女の人を想像して」と悲し気に訴えられ「キミを見てる」と応えてから事に及ぶ場面は、ちょっと感動しちゃったし、こんな設定にも拘わらず主人公が「良い奴」キャラだったっていうのも、ポイント高いですね。 そんな主人公が、ヒロインを失いたくない一心で暴走してしまい、他人の迷惑を考えないストーカー男になりかけるんですが、土壇場で踏み止まり、元の「良い奴」に戻ってヒロインと結ばれるって構成なのも、実に気持ち良い。 ペンギンの求婚に因んで「石」を渡すプロポーズも御洒落だったし、本編では拝めないままだった「三つの乳房」をエンドロールで見せてくれるサービス精神も、嬉しい限りでした。 そんな本作の難点としては…… ヒロインがドジっ子キャラだったのに、その属性が途中から忘れられた形になるのが、勿体無く思えた事。 そして最後の「南極でのキスで舌がくっ付いたオチ」は洒落にならないし、二人が心配で笑えなかったとか、そのくらいになるでしょうか。 こんなの低俗だと眉を顰める人もいるでしょうけど、こういうのも立派に「観客の見たいものを見せてくれる映画」だと思うし、自分としては素直に評価したいですね。 中々面白い、良い映画だと思います。 [DVD(吹替)] 6点(2022-10-18 15:06:21)(良:1票) |
63. バブルへGO!! タイムマシンはドラム式
《ネタバレ》 馬場監督の映画ではお馴染みの「田中真理子」と「吉岡文男」の名前が出てくるという、それだけでもファンとしては嬉しくなっちゃいますね。 インタビューによると、元々は「タイムマシンを題材にした映画を撮りたい」という気持ちがあり、バブル要素は後付けで話を作り上げたとの事ですが、それも納得。 終わってみれば「タイムスリップした先はバブル景気の頃でした」というのは大して重要ではなく「タイムマシンによって過去を変えた結果、現代の状況が良くなる」という、王道なハッピーエンドストーリーでしたからね。 とかく世間では「馬場監督」=「バブル映画」というイメージで語られがちだけど、一番の傑作と言える「メッセンジャー」(1999年)はバブルと関係無い内容だったし、少なくとも監督当人は、そこまで「バブル」に拘ってる訳では無いんじゃないかなって気がします。 実際どうだったかはさておき、馬場監督がバブル期に手掛けた過去作よりも「贅沢過ぎて有り得ない世界」が描かれており、意図的に「バブル」をギャグとして描いてると分かる辺りも、興味深いポイント。 監督自身も「俺なんかがそういうストーリーを考えたとき、最高! っていうバブルは思いつかない。絶対」と語られていますし、誇張されまくってるであろうバブル期の描写が、ナンセンスギャグっぽくて面白かったですね。 案外、本当にバブル期を経験した年代の人こそ「有り得ねぇ」「こんなんじゃなかった」と笑いながらツッコみ、自分みたいにバブル期を直接知らない世代ほど「当時は凄かったんだ」と真に受けちゃう人も多いんじゃないかなって、そんな風に思えました。 「百円玉」「髪を掻く仕草」などの伏線が、ちゃんと分かり易いのも親切だし「クラブ」や「ヤバい」という言葉の意味が、時代を経て変わってるのを示す場面なんかも、如何にもタイムトラベル物っぽくて、ニヤリとしちゃいましたね。 かと思えば、首相に「話せば分かる」と訴えるという五・一五事件をパロった場面もあったりして、本当に幅広く色んなネタが散りばめられているので、観ていて飽きなかったです。 主演の阿部寛は実際に「バブルのド真ん中にいた」との事で、バブル期の世界を遊び過ごしてる姿に説得力があった辺りも良い。 ヒロイン格の真弓を演じた広末涼子も、わざとらしい仕草や演技が愛らしく、2007年当時は無かったであろう「あざと可愛い」って言葉が似合うような魅力がありましたね。 当初は「女を口説こうとする男」として彼女に接していた主人公が、その正体を悟った途端に「娘を守ろうとする父親」に変貌する様も微笑ましく、個人的には、ここの「軟派男が父親の顔になる瞬間」が、本作の白眉だったように思えます。 そんな具合に、色々と良い部分もある映画なんですが…… 正直に告白すると、総合的な満足度としては、決して高くなかったんですよね。 この度、馬場監督の映画五本を通して鑑賞し、デビュー作から徐々に面白さがアップしていく様を見守ってきていたもので(あの「メッセンジャー」の次に撮った映画となれば、さぞ傑作だろう)と、勝手にハードルを上げ過ぎてしまったのかも。 作品全体の演出が、やたらコメディタッチ……というより漫画的なのも(何か、馬場監督らしくないな)と思えて戸惑ったし、台詞の切れ味も鈍ってた気がします。 上述の「父親の顔になった主人公」って場面が好きだっただけに、ラストにて「結局、今も愛人を囲ってるような浮気者のまま」と示唆して終わるのも、ガッカリしちゃったし…… ここまで「何もかも上手くいくハッピーエンド」にした訳だから、そこは変に捻ったりせず「家族を大切にするパパになりました」で良かったと思うんですよね。 「国の景気なんかより、家族の絆が大事」って結論を出したはずなのに、最後の最後で「景気は上向いたけど、家庭不和の火種は残ったまま」になるだなんて、どうにも受け入れ難いものがありました。 そんな訳で、結果的に「最新作がデビュー作の次につまんない」って評価になってしまった事が、本当に残念。 でも馬場監督って、まだまだ現役で2022年にもドラマの監督を務めてる訳だし…… 自分としては映画の新作にも、是非期待したいですね。 以前チラっと語っていた「波の数だけ抱きしめて」 (1991年)の続編っぽい話とか、何とか実現させて欲しいものです。 [ブルーレイ(邦画)] 5点(2022-10-10 18:13:49)(良:1票) |
64. 波の数だけ抱きしめて
《ネタバレ》 とんねるずのパロディコント「波の数だけ抱きしめて2」も秀逸でしたが、元ネタである本作も、中々の傑作。 当初は別所哲也演じる吉岡卓也が主人公だったとの事で、言われてみれば序盤でヒロインに一目惚れする辺りが、それっぽいですね。 脚本を読んだ織田裕二の「最後に告白する男の方を演じたい」って意見を反映させて、本来は脇役だったキャラが主役になってるのですが、それによって「ヒロインに惚れてる男二人」の出番が同じくらいの比重になり、結果的に良い三角関係が出来上がったように思えます。 そんな三人だけでなく、メインの五人組は全員キャラが立っていたし、青春群像劇としての魅力があるんですよね、本作って。 「湘南中に聴こえるラジオ局を作る」という夢を叶える為に、皆で頑張る姿が眩しいくらいだったし、馬場監督の作品の中でも一番「若者達の青春」を感じさせる内容になってる。 現代がモノクロで、懐かしい過去がカラーという構成に関しても「初恋のきた道」(1999年)に先んじていたりするし、この辺りにも監督のセンスを感じますね。 しかも最後に仲間達と再会し、青春の輝きを取り戻してモノクロからカラーに変わるという「鮮やかな終わり方」な辺り、自分としては本作の方がより好みだし、上手くカラーとモノクロを使い分けてるなって感じたくらいです。 馬場監督の映画の中で、主人公とヒロインが結ばれないのは本作だけであり、そんなビターな味わいが評価を分けそうなんですけど、個人的には今回の味付け、大正解だったと思いますね。 「同じ女に惚れた男同士の、奇妙な友情」も良かったですし、ラジオを使っての告白が、ギリギリで彼女に届かなかったという切なさも、凄く好み。 それまでシャイで告白出来なかった主人公が、勇気を振り絞って「好きだ!」と何度も叫ぶ姿には、胸打たれるものがありました。 最後にエンディング曲ではなく、波や鳥達の「湘南の音」を聴かせて終わるのも良い。 過去を懐かしんで、ノスタルジーに浸るだけでなく「たとえヒロインが去っても、主人公には仲間達がいる」「味気ない灰色の世界から、もう一度輝ける」「湘南の海も、優しくそれを見守っている」と感じさせるような、最高の終わり方だったと思います。 何だか褒めてばかりになってしまいましたが、一応欠点も述べておくなら「群像劇としての魅力がある」っていうのは、裏を返せば「主人公が誰なのか曖昧」って事であり、その辺りが気になる人もいるかも知れませんね。 また、バブル期における馬場監督の三部作は、本数を重ねる毎に「物語の面白さや完成度」は増して「オシャレな雰囲気と、バブルの匂い」は薄れていく傾向にあるので、デビュー作の「私をスキーに連れてって」(1987年)が好きな人にとっては、この三本目は物足りないというか「こういうのが観たい訳じゃない」って気持ちになってしまう可能性もあるかも。 でもまぁ、バブル期に拘りの無い自分としては、上述の三部作は徐々に映画として成長していく様が楽しかったし、本作もお気に入りの一本ですね。 2016年のインタビューにて、監督は 「携帯電話の普及した今なら『お前のこと好きだよ』ってメール送って『じゃあ戻るわ』で終わっちゃう」 「今またこういう話を作るんだったら、ラジオ局を作るんじゃなくて、どこかの海岸でフェスをやろうって話になるんじゃないかな」 と語っているのですが…… 海岸でフェスをやろうとする映画、是非観てみたいなって、そう思えました。 [DVD(邦画)] 8点(2022-10-10 18:04:19) |
65. 彼女が水着にきがえたら
《ネタバレ》 馬場監督がアマチュア時代に撮った「イパネマの娘」という映画が原型の一品。 それと「冒険者たち」(1967年)の影響もあると監督当人が語っており(言われてみれば……)と納得しちゃいますね。 他の監督作に比べるとスケジュールがキツかったらしく、公開の直前まで撮影していたくらいなので、仕上がりに満足出来ず「一番後悔のある作品」と語っているのも印象深い。 それらの情報を踏まえ、鑑賞前の自分としては(つまり、一番の失敗作って事か)(配給収入では前作よりヒットしてるけど、まぁ売り上げなんて当てにならないしな)と思ってたんですが…… 意外や意外、中々に面白かったです。 とはいえ、この映画が失敗作というか「求められてるものとは違った映画」っていうのは、なんか分かる気がするんですよね。 監督の前作である「私をスキーに連れてって」(1987年)に対し、自分は「オシャレでバブルの匂いを感じさせるけど、純粋に物語として考えたら面白くない」って評価を下しましたが、本作は全くの逆。 映画としての面白さはアップした代わりに、オシャレさもバブルの匂いも薄れてるというんだから、そりゃあ大半の観客はガッカリしちゃうと思います。 もし自分が前作を高評価してたとしたら「ごくごく平凡な娯楽映画になっており、あの独特の味が失われてしまった」「スキーの魅力を伝えてた前作と違い、本作はスキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」なんて事を言い出してたかも知れません。 ……でもまぁ、そんな妄想をしてみたところで、やっぱり現実の自分としては「面白かった」「良い映画だった」と思ってしまったんだから、これはもう仕方無いですね。 主演の織田裕二も魅力的だったし、ちゃんと全編に亘って「海での宝探し」って目的があるから、話の軸がしっかりしてる辺りも良い。 最終的な目的が何なのか曖昧であり、途中で退屈しちゃった前作に比べると、明らかに話作りの成長が見受けられます。 上の方で書いた「スキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」っていうのも、実は当たり前の話であり、これって明らかに「宝探し」がメインの映画なんですよね。 海に潜るのは宝を見つける為の手段に過ぎず、海に潜る事が主題ではないんだから、そこの捉え方次第で、映画の評価が変わってくるように思えます。 あと、主人公達は自由人ではあっても善人ではないってタイプなので、そこも評価が分かれそうですね。 この映画が好きな自分でさえ「強姦してでも、あの女からポイント聞き出せ」って谷啓おじさんが言い出した時は引いちゃったし、ヒロインが怒った「ゲーム」に関しても、ちょっと趣味が悪い。 自分は織田裕二が演じてるって時点で主人公に肩入れして観てたから(まぁ、こいつは模範的な善人って訳じゃないんだろう……)って早めに意識を切り替えられたけど、そうでない場合は、結構キツいかも知れません。 何か、さっきから「良かった所を語る」というよりも「微妙な部分を庇ってみせる」って感じの論調になってますけど、本当、良い所も色々ある映画なんですよ、これ。 「五十億の宝を手に入れたら、五十億の船を買って百億の宝を探す」っていう主人公達のスタンスも、浪漫があって良いなって思うし「アウトロー気質な男に振り回される、真面目で普通な女の子」って形で、原田知世演じるヒロインの魅力が際立ってるのも良い。 「もう一つの宝」の正体がヒロインだったってオチも、ベタで嬉しくなっちゃうし…… 水中でのキスシーンも、間抜けな感じで全然ロマンティックじゃないのに、その間抜けさが良いなって思えちゃうんです。 宝石なんかより価値のある「宝」を手に入れた主人公カップルは、宝石を持ち逃げされても呑気に笑ってるって終わり方なのも、もう文句無し。 皆はブスって笑いものにしてるけど、自分には可愛らしい美人にしか思えないっていう、不思議な女の子のような…… そんな、愛すべき映画です。 [DVD(邦画)] 7点(2022-10-10 17:55:29) |
66. 私をスキーに連れてって
《ネタバレ》 馬場監督の映画の中では、一番バブルの匂いがする代わりに、一番完成度が低い映画って感じですね。 「あの頃の雰囲気を楽しみたい」という目的で鑑賞するならば、同監督作の中では最も適してるでしょうし、バブル期とか関係無く、純粋に物語を楽しみたいというのであれば、かなり退屈な映画になっちゃうと思います。 そもそも商業映画デビュー作なので、作りが粗いのも仕方無い話ではあるんですが…… 馬場監督の映画の中で、始まって二十分ほどで(退屈だなぁ)って感じたのは本作だけですし、かなりキツい出来栄えです。 まず、根本的にストーリーが古臭いというか、ベタで王道な魅力も無いもんだから(わざわざ映画にするほどの話じゃないだろ)って思えちゃうんですよね。 主人公とヒロインの恋路にしたって、中盤でアッサリ誤解がとけて問題無く結ばれるし、新製品のお披露目イベントにしても「苦労した主人公達は結局間に合わず、別行動の仲間達が成功させた」ってオチになるもんだから、拍子抜け。 紆余曲折を経て恋が成就したとか、頑張って仕事を成功させたとか、そういうカタルシスを得られ難い作りになっており、観た後にスッキリした気持ちになれないんです。 最後に「バーンっ!」って銃を撃つ仕草で終わるのも(それ、最後まで引っ張るようなネタかな?)って微妙に思えたし、テンションが低いままで、映画の終わりを見届ける形になっちゃいました。 そんな訳で、どうしても高く評価出来ない一作なんですけど…… 監督のファンとしては、それだけじゃあ寂しいので、以下は良かった点を。 まずは何と言っても、オシャレな作りなのが良かったです。 ヒロインの真っ白いスキーウェア姿は素直に可愛いなって思えましたし「冬の間恋人にするなら最高ね」なんて台詞回しも良い。 素敵な内装の山小屋で、バニーガールに給仕されたシャンペンを味わう場面なんかも、憧れちゃうものがありましたね。 真理子さんが面白おかしく話してた「矢野を好きだった女の子」の正体が、実は真理子さん自身だったと判明する件にも感心しちゃったし、話の盛り上がりという意味では、あそこがピークだったかも。 スキーを楽しむ場面も中々爽快感があったし、車やトランシーバーなどのアイテムの使い方も上手かったと思います。 そして何といっても、ユーミンの曲が魅力的。 映画作りにおいて、映像よりも音を重視しているという馬場監督らしく、全編に素敵なナンバーが散りばめられており、ミュージックビデオ的な楽しみ方も出来ちゃうんですよね。 この映画のMVPって、画面には登場していない荒井由実(松任谷由実)なのではって思えたくらいです。 後は……「メッセンジャー」(1999年)でも加山雄三を起用してる馬場監督だけど、この頃から「若大将シリーズ」へのリスペクトを感じさせるのが微笑ましいとか、そのくらいになるでしょうか。 「時代と寝た映画」って言葉がありますけど、恐らく本作も、それに当てはまるんでしょうね。 ただ、時を越えて愛されるユーミンの曲に比べると、本作に関しては「昔の恋人」って感じであり、思い出の中でこそ輝く存在じゃないかな……と、そんな風に思えました。 [DVD(邦画)] 5点(2022-10-10 17:42:45) |
67. お買いもの中毒な私!
《ネタバレ》 「主人公に感情移入出来ない」というのは、映画にとって致命的な欠点だと思います。 本作のレベッカが正にそれに当てはまり(お買いもの中毒とか、そういうのを差し引いても性格に難有り)ってタイプだったんだから、困っちゃいますね。 借金取りをストーカーと言って誤魔化すくらいなら笑えるんだけど「親友の結婚式の為のドレスより、テレビ出演の為のドレスを優先させる」って場面とか、流石に身勝手過ぎて呆れちゃいます。 一応、最後に「お買いもの中毒」では無くなるハッピーエンドを迎えるんですが、何か「良い子に生まれ変わった」というよりは単に「浪費癖が無くなって、人生が上手く転がっただけ」って感じであり、根本的な解決には思えなかったのも痛い。 (この主人公の一番の問題点って、そこじゃないのでは?)って、映画とのズレを感じてしまう結末だったから、どうもスッキリしなかったです。 ただ、脇役には魅力的なキャラが揃っており、その点は良かったですね。 親友のスーズなんて、主人公より良い子で美人に思えたし、特にお気に入り。 父親役のジョン・グッドマンや、クリスティン・スコット・トーマスなど、見慣れた顔触れが揃っているのも、画面に安心感を与えてた気がします。 それと、典型的な「王子様」キャラであるルークに対しても、普通なら(こういうタイプ、女性は好きそうだよね)って斜に構えちゃうはずなのに、何か嫌いになれなかったんですよね。 それというのもレベッカが傍迷惑過ぎて、それに振り回されるルークが不憫に思えたからだろうし、そういう意味では貴重な感覚を味わえた気がします。 主人公ではなく、彼等の方に感情移入して「レベッカに呆れつつも、見捨てられずに見守る目線」で楽しむ事が可能って意味では、中々良く出来た映画だったのかも知れません。 後は……「BGMのチョイスや使い方も良かった」「金融の知識なんか無かった主人公が、ハッタリと強運で成功していく様は中々面白い」「買いもの依存症のセラピーグループも、良いキャラが揃ってた」とか、そのくらいかな? こうして列挙してみると、意外と長所も盛り沢山な映画だなって、驚かされますね。 根本的に自分には浪費癖が無い為、主人公のレベッカと相性が良くないのは当たり前って気もするんですが…… 別に人殺しの経験が無くとも、殺し屋の主人公に感情移入する事は可能な訳だし、やっぱり主人公の描き方には、もうちょっと気を遣って欲しいです。 「浪費癖に悩まされてるけど、友達は大切にする優しい子」ってタイプの主人公だったら、もっと好きになれた映画だと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2022-09-29 19:48:02)(良:1票) |
68. ダウン
《ネタバレ》 自分が所持する円盤の棚を眺めてみると「昔の映画版は無くて、近年のリメイク版のみ持ってる」ってパターンの品が幾つかある訳ですが、これもそんな一品。 勿論「昔の方だけ持ってて、リメイク版は無い」ってパターンもある訳だけど、そういう場合って、やっぱり「所持してる方」が面白いから、自然とそうなっちゃうんです。 本作に関しても同様であり、自分としてはホラー色が強い「悪魔の密室」(1983年)より、こちらの方が好み。 二作とも監督はディック・マースなんですが(別の人が撮ったのでは?)って思えるくらい、毛色の違う品に仕上がっているんですよね。 ホラー映画というよりアクション映画、あるいはエレベーターパニック映画という感じです。 1983年版で印象深かった「ドアに首が挟まって、そのまま斬首される」場面もちゃんとあるし、かと思えば「底の抜けたエレベーターが暴走して、屋上を突き破る」場面とか、新たに追加された見せ場があるのも嬉しい。 主人公が元海兵隊という設定を活かし、最後は「バズーカでエレベーターの心臓部を撃ち抜く」という派手なフィニッシュを決めちゃう辺りも、良かったです。 あと、映画の本筋には全然関係無いんだけど、主人公がジュークボックスの愛好家であり、自宅にわざわざジュークボックスを置いてるって設定なんかも、妙に好きなんですよね。 こういう細かい部分で「作り手と波長の合う映画」って、それだけでも憎めないし、観ていて楽しくなっちゃいます。 導入部から色んな人物が登場する為、主人公が誰なのか分かり難いとか「来るかと思ったら来ない」という肩透かしな演出が多いとか、不満点も色々あるし、決して出来の良い映画とは言えないんですが…… 「まぁ、そこまで悪くないよ」 「俺は結構好きだよ」 と庇いたくなるような、愛着のある映画です。 [DVD(吹替)] 6点(2022-09-21 22:26:33) |
69. 失踪(1993)
《ネタバレ》 「ザ・バニシング-消失-」(1988年)は以前に一度観たっきりなのですが「後味が悪い」「殺人鬼を美化してる感じが苦手」という印象が残ってます。 そんな本作は過去作とは対照的に「ちょっと強引なくらいのハッピーエンド」「殺人鬼を美化したりせず、ちゃんと悪役として描いてる」って内容になっており、自分としては嬉しかったですね。 1988年版が好きな人にとっては「あの独特の絶望感、魅力が消え失せて凡庸な映画になってしまった」という事になるんでしょうけど…… 自分にとっては「凡庸な、在り来たりで面白い映画」という形であり、意外と満足出来ちゃいました。 監督は1988年版と同じジョルジュ・シュルイツァーであり(同じ人が同じ原作小説から、こうも異なる映画を撮ってみせたのか……)って事にも感心しちゃいましたね。 そんな二つの映画、最大の違いは、ヒロインのリタの存在にあると思います。 一応1988年版にも彼女に相当するキャラはいるんですが、もはや別人と言って良いくらいに変わっていますし、1993年版の「失踪」は、彼女が主人公と言えそうなくらい。 被害者であるジェフも、犯人であるバーニーも、どちらも異常者という歪んだ世界の中で、彼女だけが唯一まともであり「何を馬鹿な事やってんのよ」とばかりに乱入してきて事件を解決しちゃうのが、凄く痛快なんですよね。 ジェフのようにリタも言い包めてやろうとする犯人を、問答無用で角材で殴り黙らせる姿とか、もう最高。 陰鬱なバッドエンドだった過去作を、一人のキャラクターがハッピーエンドに変えてみせたという形であり、自分としては断然、彼女が存在するハッピーエンド版を支持したいです。 そもそも1988年版にて「計画も杜撰で不器用で、頭も悪い犯人」を、さも「特別なカリスマを備えたキャラクター」であるかのように描いてるのが、無理があったと思うんですよね。 腕にギブスを付けて女性を騙そうとする手口とか、恐らくはテッド・バンディが元ネタなんでしょうけど、模倣犯というより劣化版って感じ。 この犯人って、誘拐犯としても殺人犯としても徹底的に無能であり「偶々目撃者がいなかったから犯行がバレなかっただけ」というんだから、自分としては(何だ、そりゃ)としか思えなかったんです。 こんな奴を主人公格に据えて「殺人犯の勝ち逃げエンド」見せられても困っちゃうし、ちゃんと最後には負ける悪役に据えた本作の方が、ずっと自分好みなんですよね。 終盤にて、ジェフと格闘になったらアッサリ負けちゃう犯人の姿にも(そりゃそうだ、元々か弱い女性を狙って殺そうとしてた卑怯者だもん)と納得出来るし、大いに溜飲が下がりました。 正直、ジェフが地中に埋められるまでの展開は(1988年版の方が、丁寧に作ってあるな)と思っちゃいましたが…… ラスト二十分ほどで、一気に評価を逆転させてくれたと思います。 それと、犯人の不気味さという意味では1988年版に及ばないかも知れませんけど、被害者側のジェフが狂気に陥っていく様は、本作の方が上だなって思えた辺りも、忘れちゃいけないポイント。 「失踪したダイアンを助けたい」ではなく「ダイアンがどうなったのかを知りたい」という歪んだ好奇心に囚われた男を、決して観客から遠ざける事無く、適度に感情移入出来る存在として演じていましたからね。 流石はキーファー・サザーランドだなって、大いに感心させられました。 最後の最後「コーヒーは遠慮するわ」がオチというのは、ちょっと弱いんじゃないかと気になりましたけど…… まぁ、事件をネタにしたジョークを言って笑えるくらいに、主人公二人が「平和な日常」を取り戻したって事なんでしょうね、きっと。 あと、自分は1988年版を先に観てバッドエンドに落胆し、その後にコレを観て追加要素に驚いたって形だったので好印象だったけど、観る順番が逆だった場合は、また違う印象になってたかも知れません。 その場合、本作終盤の展開にカタルシスを感じる事も無く(何この無理矢理な逆転劇)と白けてた可能性もあるでしょうし…… 「映画を観る順番」「タイミング」「巡り合わせ」って大切だよなって、しみじみ思えた一本でした。 [DVD(吹替)] 6点(2022-09-21 01:56:49) |
70. スコーピオン・キング
《ネタバレ》 主人公の強さ、恰好良さという点では、もう文句無しの一品。 特に「強さ」に関しては、怪物と化した「ハムナプトラ」本編のスコーピオン・キングより、人間の時の方が強かったんじゃないのって思えたくらいですね。 物語のクライマックスにて、ラスボスを倒す方法が「普通に矢を射るだけ」なのに、それでも全然ガッカリしないで楽しめたし(こいつに矢を射られたら、そりゃあ負けるよ……)って納得出来たんだから凄い。 そんな主人公マサイアスの魅力に頼り切った品かと思ってたのですが、他にも魅力的な脇役が揃っており、そこら辺のサプライズ感も嬉しかったですね。 自分としては、スリの浮浪児が特にお気に入り。 無骨なマッチョ主人公との組み合わせが微笑ましいし、主人公の戦いを応援して、良い一撃が決まったら歓声を上げたりする様が、何とも可愛らしいんです。 いっその事、最後にマサイアスに弓を渡すとか、そういう見せ場があっても良かったのにって思えるくらい、彼を応援する気持ちで観ちゃいましたね。 予言者の代名詞的存在であるカサンドラをヒロインに据えたのも(ほほう)と思えたし「ゴモラは最高の街だ、ソドムも良いけどね」って台詞も、皮肉なユーモアがあって良かったです。 こういった具合に、どこかで見聞きした単語が出てくるのってテンション上がるし、舞台や登場人物に親しみを持たせる効果があったと思います。 「ラスボスとなるメムノーン王が細身で、マサイアスの宿敵としては迫力不足」とか「馬泥棒のアーピッドが処刑用の穴から抜け出せた理由が気になる」とか、細かい不満点も色々あるんだけど、まぁ御愛嬌。 「民を救う善なる王」であったマサイアスが、この後に所謂「悪堕ち」しちゃうのが「ハムナプトラ」本編で確定している為、ハッピーエンドに陰りを残す終わり方となってるのも(永遠に続く平和など無い)(人も物も、何もかも変わっていく)と感じさせるものがあり、結果的には良い味を出すのに繋がってた気がします。 これが初主演であるザ・ロックが、後にトップスターとなったのも、大いに納得。 映画自体が「5」まで続く人気シリーズになったのも、まぁ、それなりに納得出来ちゃいますね。 粗削りだけど、魅力と可能性を感じさせる一本でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-09-11 15:54:31) |
71. ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝
《ネタバレ》 始皇帝暗殺を題材にした「HERO」(2002年)を踏まえた上で鑑賞すると、今作でジェット・リーが始皇帝を模したキャラを演じてるのって、感慨深いものがありますね。 敵の強さや、スケールの大きさという意味合いでも今作がシリーズで一番だろうし、貴重な「悪の親玉であるジェット・リー」が拝めるってだけでも、一見の価値有りな映画だと思います。 ただ、面白さという点に関しては……正直、結構厳しいです。 エヴリン役が他の女優さんに変わってるとか、アレックスが幼児から大人に急成長してるのに戸惑うとか「続編映画ならではの違和感」も大きいんだけど、そういうの抜きで単品として評価しても(えっ、何で?)と思っちゃうポイントが多いんですよね。 上述のジェット・リー演じるハン皇帝にしたって、中盤で見せる三つ首の竜の姿が迫力満点だったのに、終盤では竜に変身せず、人型のまま倒されちゃうというんだから、もうガッカリ。 唐突に出てきて「雪山以外じゃ活動出来ないから」とばかりに、唐突に姿を消しちゃうイエティも、また然りですね。 せっかく魅力的なモンスターを登場させてるのに、それを活かし切れていなかったと思います。 他にも、前作と違って「死に際まで互いを救おうとする悪のカップル」を描いてるのは良いんだけど「彼らが強く愛し合ってる」という伏線が無いから、唐突で感動出来ないんですよね。 最後のオチが「ペルーでミイラが発見された」っていうのも、凄く微妙。 ガッカリした気分のまま映画が終わっちゃうので、何だか映画全体の印象まで悪くなっちゃいます。 そんな訳で、三部作の中では明らかに見劣りする出来なんだけど…… シリーズのファンとしては、文句ばかりじゃ寂しくなるので、以下は良かった点を。 まず「リックが二丁拳銃で戦う場面がある」って事に関しては、素直に嬉しかったですね。 時代設定に合わせ、主武装はマシンガンになっているのに、ちゃんと序盤で二丁拳銃姿も見せたっていうのは、ファンサービスとして正解だったと思います。 中華街を馬車で暴走したりとか、前作のようなカーチェイス場面があるのも嬉しい。 新たなヒロイン格となるリンも可愛かったし、特に「不死の命を捨てて」と言われ、嬉しそうに微笑む場面なんかは、胸がときめくものがありましたね。 アレックスと彼女の恋路が、悲劇に終わったりせず、無事に結ばれる結末であった事にも、ホッと一安心です。 やっぱり、このシリーズにはハッピーエンドが似合うと思います。 なお、2022年現在「ハムナプトラ」の四作目は作られておらず「ペルーのミイラ」がどうなったかについては、謎のままとなってる訳ですが…… きっとリック達なら、何時ものようにミイラを倒して、そして世界を救ってみせちゃうんでしょうね。 更なる続編があるのなら、アレックスとリンの間に生まれた子供。 つまりは、リックの初孫なんかが登場する事にも、期待したいものです。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2022-09-11 15:48:43) |
72. ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
《ネタバレ》 前作のファンとしては、あの後リックとエヴリンが結婚したという、その一事だけでも嬉しくなっちゃいます。 しかも可愛い息子まで産まれてるんだから、もう言う事無し。 続編で主人公とヒロインが別れてるとか、下手すりゃ主人公が死んでるとか、そんなパターンも結構あったりするだけに、本作のような「幸福な続編世界」に仕上げてくれた事には、心から感謝したいです。 そんな「可愛い息子」ことアレックスが、ちゃんと魅力的なキャラに仕上がっていた点も良いですね。 生意気過ぎず、良い子過ぎずってバランスで可愛かったし、頭の良さには感心させられるしで「続編から登場した新キャラ」なのに、異分子って感じが全くせず、自然に馴染んでる。 特に「母と同じように物をドミノ倒しにしちゃう場面」には笑っちゃったし、こういう形で前作のファンを和ませ(この子は間違いなく、エヴリンの子供なんだ)って感じさせる演出が、本当に上手かったと思います。 囚われの身でも「お前なんか、ボクのパパに敵うもんか」と言い張る姿も健気だったし、自分としては彼をMVPに推したいくらい、お気に入りの存在ですね。 ザ・ロック演じるスコーピオン・キングも迫力あったし、味方側だけでなく、敵側にも魅力的な新キャラが揃ってるっていうのも良い。 そして何より「続編の魅力」の一つである「強くなった主人公達」の姿を拝めるのが、ポイント高いんですよね。 単なる司書だったはずのエヴリンも、何度も冒険して鍛えられたゆえか、雑魚敵なら蹴散らしちゃうくらいに強くなってて、前作から彼女を見守ってきた身としては、もうニンマリしちゃうんです。 主人公のリックもますます強くなり「投げられたナイフを空中で掴む」なんて芸当を見せる程になってるんだけど、それがラスボスを倒す伏線だったりするから(おぉ、なるほど!)と思えて、観ていて気持ち良い。 中盤にて「実はリックは、人類の守護者メジャイという特別な存在だった」と明かされるんだけど、あまり戸惑わず(まぁ、リックだしな……)と納得出来ちゃうのは、その強さや特別性を、きちんと描いておいたお陰だと思います。 「貴方のキスって嫌いよ、貴方の言いなりになっちゃうから」とボヤくエヴリンとか、夫婦がイチャつく描写も良かったし、二階建てバスを用いたカーチェイスも面白いしで「1には無かった、2ならではの魅力」が盛り沢山だった事も、嬉しい限り。 そんな本作の欠点としては……クライマックスが納得いかないって点が挙げられるでしょうか。 例えば、スコーピオン・キングと並ぶボス格だったはずのイムホテップが「アヌビス神の横槍によって超常的な力を奪われる」って展開になるのは流石に唐突だったし、敵が理不尽に弱体化してから倒す形になるので、何かスッキリしないんですよね。 最後の最後で、命を懸けてリックを救おうとするエヴリンと、イムホテップを見捨てて逃げるアナクスナムンって形で「愛し合う男女」の明暗が分かれちゃうのも、ちょっと納得いかないです。 これって、2単体で評価すれば良い脚本かも知れないけど、やはり1の冒頭から「悪のカップルかも知れないけど、二人は確かに愛し合ってる」って事を感じてきた身としては「観客の幻想への裏切り」に思えてしまうんですよね。 自分としては「悪のカップル」も愛し合ったまま、心中のように退場する結末の方が、より好みだったかも。 その他「リックの二丁拳銃属性が薄まったのは寂しい」とか「ラブロマンスとしての魅力が失われてる」とか、細かい不満点もあるんだけど…… まぁ、それらに関しては「代わりにショットガン使う場面が増えてて恰好良い」「妖艶なエジプト美女の姿を拝める場面が増えてて眼福」といった具合に、また違う良さが生まれているので、差し引きゼロって感じでしょうか。 不思議とバランスが取れてるというか、かつての良さが消えてる分だけ、新たな良さも生まれてるって形。 「文句無しにパワーアップして、1より面白い映画になった」とまでは言えないけど…… 「2も1と同じくらい面白くて、しかも新鮮な魅力がある」っていうのは、充分に凄い事ですよね。 続編の成功例として、大いに評価されて良い映画だと思います。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-11 15:40:38) |
73. ハムナプトラ/失われた砂漠の都
《ネタバレ》 「ミイラ再生」(1932年)のリメイク……というよりは、それを元ネタにしたオリジナル映画って感じですね。 元々はジョージ・A・ロメロが監督する予定もあったとか、過酷な撮影現場で主演のブレンダン・フレイザーは死に掛けたとか、面白い裏話も満載。 そして映画本編の方も、裏話の数々に負けないくらい、面白く仕上がっていたと思います。 そんな本作の魅力といえば、何と言っても登場人物達。 何せミイラ映画であるにも拘わらず、ミイラが甦るまでに一時間以上も掛かる構成になってますからね、これ。 じゃあ前半は何やってるのと言えば、主に人間同士が争ってる訳なんだけど、それがキチンと面白く仕上がってる。 それもこれも、魅力的なキャラクターが揃っているからこそ。 そして、ミイラ映画という枠組みに囚われない、柔軟な発想の監督だからこそ出来た事ではないでしょうか。 そもそも本作を「ミイラ映画」と評するのすら躊躇われるくらいで、どちらかといえば「冒険映画」という、そんな懐の大きいジャンルの方が、より似合う気がしますね。 鏡の角度を変えるだけで、暗かった部屋が明るく照らされる仕組みとか「ハムナプトラの遺跡」にも魅力たっぷりであり、観ていて少年心をくすぐられます。 監督の前作「ザ・グリード」(1998年)同様に、主人公にはお調子者の相棒がいるのかと思わせておいて、冒頭でその相棒ベニーに逃げられちゃう展開には驚かされたし、話作りも上手かったですよね。 思えば、あれで一気に物語に惹き込まれたし、たとえ監督に関する予備知識が無くとも、充分に「話の掴み」として成功してた気がします。 自然というか、面白い流れで「このヒロインは古代エジプト語の読み書きが出来る」「ヒロインの兄にはスリの才能がある」と説明してる辺りにも感心。 脚本だけでなく、視覚的な演出も優れており、刑務所長が体内をスカラベに侵食される場面なんかも、ショッキングで良かったです。 派手な出血や内臓露出などのグロ描写を用いずとも、こういう形で「エグい場面」を描けるのって、凄い事だと思います。 主人公のリックが二丁拳銃使いなのも新鮮だったし、何より恰好良い。 ヒロインのエヴリンもキュートであり、武闘派の主人公と、知性派のヒロインって形で、綺麗に色分けされてるのも良かったですね。 二人が冒険を通して結ばれて、ラストには財宝よりも価値のある「愛」を手に入れてハッピーエンドになるっていうのも、文句無しの終わり方。 そんな具合に、とにかく優等生というか、ほぼ全編に亘って面白い映画なんですが、あえて欠点を探すなら…… 主人公が頼もし過ぎて、緊迫感に欠ける(窮地に陥っても簡単に脱出するので、拍子抜けしたりする)って事くらいかな? 「観客を楽しませる映画」という意味では、本当に王道な作りであり、お手本になりそうなくらい、完成度が高い。 良い映画でした。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-11 15:25:19)(良:1票) |
74. ザ・グリード
《ネタバレ》 「乗客の殆どが消えた豪華客船に、主人公達が遭遇する」という、マリー・セレスト号事件のような粗筋なのですが…… この映画には「怪談」「謎解き」的な要素なんか皆無で、ひたすら分かり易いモンスター映画として作ってあるのが痛快でしたね。 上述の「乗客が消えた理由」に関しても、普通なら途中まで謎にして不気味な雰囲気を漂わすもんなのに、本作に関しては「怪物が豪華客船を襲撃する場面」を、序盤で描いちゃってるんです。 これには本当、驚かされました。 低予算の映画であれば間違いなく省略してたはずの場面を、惜しみなく見せるというサービス精神。 「観客の想像に委ねる」という形で「逃げる」事も許されたはずなのに、それを良しとせず「観客の想像より、もっと凄いのを見せてやるぜ」とばかりに、迫力満点な襲撃シーンを描いてみせた作り手の心意気には、もう感服するばかりです。 映画オタクって、つい低予算な映画を評価したがるものなんですけど、本作に関しては(予算があるって、良いもんだな……)と思えたし「必要な場面の為に、必要な予算を確保してみせた」というのは、立派な長所の一つなんだなって、蒙を啓かせてもらった気分。 そんな怪物襲撃の場面だけでなく、怪物と対峙する人間側の描写も、魅力たっぷりで良かったですね。 特に、主人公であるフィネガンの描き方が良い。 金の為なら怪しい仕事も引き受ける船長という、アウトローな人物なんだけど、部下を救う為に危険を冒したりとか「良い人」としての面も、ちゃんと描いてる。 強さや頼もしさも程好いバランスであり、銃を持った強盗達に一歩も退かないタフガイっぷりを見せた後「寿命が縮んだぜ……」と、小声で弱音を吐いたりするんですよね。 何とも憎めなくて、この手の映画の主人公としては、理想形の一つとすら思えました。 脇を固める部下のパントゥッチに、ヒロインである女怪盗のトリリアンも良い味を出しており、この三人が生き残るハッピーエンドであった事は、本当嬉しかったです。 他人を犠牲にして助かろうとした結果、悲惨な末路を辿る強盗犯のボスも印象深いし、本作が「勧善懲悪」を重視した映画であった事が窺えますね。 主人公達が生き延びた事を素直に喜び、悪人達が死んだ事に関しては「自業自得」と思えるのって、本当に理想的。 他にも「敵の本体が姿を現す際の、怪獣映画みたいなBGMが素敵」とか「怪物の目玉をショットガンで撃ち抜く場面が最高」とか、褒め出したらキリが無い映画です。 ただ、終わり方に関しては…… 出来れば「主人公達三人が生き残ったハッピーエンド」という、爽やかな形で終わらせて欲しかったですね。 「ようやく辿り着いた島には、更なる怪物が待っていた」って暗示させる終わり方も、まぁ悪くはないんだけど、せっかく「怪物を退治してみせた達成感」を上手く描けてた訳だから、そのまま終わっても良かったと思うんですよね。 「今度は何だ?」という主人公の決め台詞で終わるのに、その「今度」を描かず仕舞いっていうのが、何とも意地悪に思えて仕方無かったです。 総評としては「終わり方に難有りだけど、中々の傑作と呼べる一品」って感じに落ち着くでしょうか。 この作品の一年後、ソマーズ監督は「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999年)をヒットさせ、その続編も手掛けた訳だけど…… 自分としては「ザ・グリード」の続編も、是非観たかったです。 [DVD(吹替)] 8点(2022-07-21 21:15:24)(良:2票) |
75. レッド・ウォーター/サメ地獄<TVM>
《ネタバレ》 (夏だなぁ……サメ映画観なきゃ)という想いで鑑賞。 ルー・ダイアモンド・フィリップスが主演だし、割と期待値は高めだったんですが…… どうもチグハグというか「予想も期待も裏切る内容」って感じだったのが残念ですね。 これは低予算のサメ映画では結構ある事なんだけど、本作でも「銃を持った悪人の方が、サメより脅威」という現象が起きてしまっているんです。 それ自体は決して悪い事じゃないんですが、本作の場合は「銃を持った悪人を倒すカタルシス」が描かれていないのが問題なんですよね。 盗まれた金を探しに来た悪人達に、主人公グループが監禁される流れな訳だけど、主人公が頑張って反撃しようとしても、あっさり鎮圧されちゃう。 で、形勢逆転のキッカケになるのが「悪人達の仲間割れ」であり、それに乗じて主人公達が逃げ出すって形なので、何ともスッキリしないんです。 しかも悪人達の中で、最も有能でボスキャラと思われた人物が、無能な仲間に殺されるって形なので「強敵を倒した達成感」も得られず仕舞い。 流れとしては「一番有能な敵が不意打ちで無能な敵に殺される」→「その無能な敵もサメに殺される」→「主人公がサメを殺して事件解決」って形であり、どうもややこしいというか…… こんな複雑なストーリーの品よりも、最後の「主人公がサメを倒す」という一点に特化した映画が観たかったなと、つい思っちゃいました。 他にも「嫌味な憎まれ役だったジーンが死ぬ場面は感動的に描く」「良い人枠なハンクはアッサリとサメに喰われ、その後に笑いを取ったりしてる」ってのも、何ともチグハグな演出。 普通は「憎まれ役をサメに喰わせて、観客をスッキリさせる」「良い人が死ぬ場面は感動的に盛り上げる」ってのが、サメ映画のお約束ですからね。 意外性を狙ったのかも知れませんが、結果的には「ベタで王道な魅力」が失われてしまっただけに思えました。 そんなこんなで、褒めるのは難しい作品なのですが…… ラスト数分で、思い出したようにサメ映画らしい内容になり、しかも「石油採掘用のドリルでサメを倒す」っていう痛快なクライマックスを見せてくれたのは、嬉しかったですね。 これまで色んなサメ映画を観てきたけど「ドリルで倒す」ってパターンは初めてだし、何かもうそれだけで(良いもん見たな……)って満足しちゃいます。 その後にダラダラと引っ張る真似もせず、警察のヘリが現れて「助かった……」という安堵感と共に終わる辺りも気持ち良い。 主人公の船の名前は「ビターエンド」だったけど、ハッピーエンドと言って良さそうな、スッキリとした終わり方でしたね。 終わり良ければ全て良し……ってのは大袈裟かも知れませんけど、一応「サメ映画を観た」って気持ちにはさせてくれたので、満足です。 [DVD(吹替)] 5点(2022-07-13 22:42:02) |
76. セットアップ
《ネタバレ》 ラブコメってジャンルは、とかく「お約束」な魅力を求められるものです。 本作に関してもそれは例外じゃないとばかりに、全編に亘って「お約束」な展開が続いていく訳ですが…… 最後に「主人公とヒロインが結ばれる」って「お約束」を達成し、そこでスパっと終わっちゃうという潔さが、物足りなく思えちゃいましたね。 この流れなら「ついでに喧嘩してた上司カップルも復縁する」っていう「お約束」な後日談も付け足すべきだと思うんだけど、それが無い。 これにはもう、本当ガッカリです。 ラブコメ映画に求めていた「お約束」が与えられず終わった場合、こんなにも物足りない気持ちになるのかって、吃驚しちゃったくらい。 そんな訳で、自分にとっては「ラストが微妙」という、明確な欠点がある映画なんだけど…… 途中までは本当に良く出来てるんですよね、これ。 特に序盤の、主人公二人の出会い方が秀逸。 夜中の「ピクルスの奪い合い」だけで(この二人はお似合いだ)(結ばれて欲しいな)って思わせるような魅力があったんだから、お見事です。 「球場でのキスカムでキスさせる作戦」「避難梯子で運んだピザ」のエピソードも良かったし、上司カップルだけでなく、主人公カップルの魅力も、しっかり描けてたと思いますね。 あえて言うなら、男側のチャーリーは「自分より立場が弱いインターンには横暴に接する」などの場面があり、あんまり良い奴とは思えなかったんですが…… それに関しては終盤にて「キミに釣り合う為に俺は変わろうとしてる」「頑張るよ」と伝える場面に自然に繋がってるし、全体の流れを考えれば、良い奴にし過ぎないバランスが正解だったんでしょうね。 ヒロインとなるハーパーの眼鏡姿もキュートであり「店でチップスをタダ食い」などの迷惑行為をしていても、どうにも憎めない。 これまで色んなラブコメ映画を観てきましたが、可愛さって意味においては、本作のハーパーは相当上位に食い込むと思います。 こうして振り返ってみると、本当に「好きな場面」の多い映画だなって、しみじみ感じちゃいますね。 これでラストさえ綺麗に終わってくれてたら「好きな映画」と、全体を指して言えたはずなのに、本当に惜しい。 キスする主人公達を見守る上司カップルが、お互い気まずそうに視線を交わし、復縁を予感させる…… そんな数秒間がラストに追加されていたらなと、恨めしく思えてしまう一本でした。 [インターネット(吹替)] 6点(2022-07-06 19:49:17)(良:1票) |
77. コヨーテ・アグリー
《ネタバレ》 若者が夢を叶えるまでを描いた、シンプルで気持ちの良い映画。 実在の店をモデルにしているようですが、特に柵のようなものも感じさせず、自然に仕上がっていたと思いますね。 アパートの屋上で歌う場面からは「都会で一人ぼっちの田舎娘」という切なさが伝わってきたし、ニューヨークを舞台にした意味も、しっかり有ったんじゃないかと。 一応、部屋に泥棒が入る場面などで「都会の恐ろしさ」も描いていますが「ニューヨークの人達も、良い人ばかり」という、牧歌的な世界観である辺りも嬉しい。 困窮してる主人公を見かねて、見ず知らずのオジサンが食事を奢ってくれる場面とか(良いなぁ……)って、しみじみ思っちゃいましたね。 冷たいイメージのある都会だからこそ、人の好意が身に沁みるという訳で、凄く印象深い。 「夢を叶える為にニューヨークに来たけど、妥協して別の仕事してる人なんて沢山いる」という事が丁寧に描かれているのも、本作に深みを与えていた気がします。 そんな「妥協した大人」の代表であるコヨーテ・アグリーの店長といい、主人公ヴァイオレットの父親といい、魅力的な脇役が揃っている点も良い。 自分としては、ケヴィン・オドネルというキャラクターが、特にお気に入りでしたね。 女性主人公なラブコメの相手役って、高嶺の花である「王子様」と身近で親しみやすい「彼氏くん」に分かれる訳ですが、本作のケヴィンは後者のタイプ。 幾つもの仕事を掛け持ちして、頑張って生きてる姿が眩しいくらいだったし、マッチョな二枚目なのに、意外とアメコミオタクだったりするのも憎めない。 一歩間違えれば「胡散臭い、女性に都合が良いだけのイケメンキャラ」になりそうなもんなのに、同性の自分から見ても好ましいバランスに仕上がってたんだから、お見事でした。 「アメイジング・スパイダーマン」や「最初のサイン」といったアイテムの使い方も上手いし、練習して瓶捌きが上手くなる場面など「働く楽しさ」が伝わってくる内容なのも良い。 そして何と言っても、ヴァイオレットがステージ恐怖症を克服し、唄い出す場面が素晴らしかったです。 これまで彼女を支えてきた人々が、歌声を聴いた途端に、嬉しそうな笑顔になる。 「夢を叶える事」だけでなく「夢見る人を支え、応援する事」も素晴らしいと伝えてくれる、文句無しの名場面だったと思います。 ヴァイオレットに対し、何かと嫌味な態度で接してたレイチェルが、野次を飛ばす客を黙らせる場面も痛快だったし、そういう「ツンデレな魅力」を感じさせるキャラクターが多かった気がしますね。 個人的には嬉しい事なんだけど、誰も彼もが「嫌な人かと思ったけど、実は良い人」ってオチになっちゃうので、その辺は好みが分かれてしまう部分かも。 後は主人公のステージ恐怖症について、描写が曖昧なのも(冒頭、友達と一緒にステージで唄ってるので後の展開と少々矛盾してる)欠点となりそうです。 こういう明るく楽しいノリで、若者向けの映画って、何だかそれだけで「傑作」とか「名作」とかいう言葉が似合わない気がしちゃうけど…… この映画には、そんな言葉より「好きな映画」って言葉の方が似合っちゃうんだから、仕方無いですね。 たとえ映画史に残る名作であっても、一度観れば充分だって感じる品も多いのですが、本作は定期的に観返したくなる。 オススメの一本です。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-06-30 15:14:53)(良:1票) |
78. ラッシュアワー3
《ネタバレ》 シリーズを重ねる毎に「ダブル主人公」ではなく「主人公のリーと、その相棒のカーター」って形に変化していった二人。 自分としては元々リーの側に肩入れする気持ちが強かった為、さほど違和感を抱かずに済んだけど…… これってカーターの方が好きな観客にとっては、結構辛かったんじゃないかって思えますね。 前作のヒロイン格であるイザベラがリーと疎遠になったのも「カーターが悪い」って事になってるし、その辺ちょっと厳しいというか、ファンに優しくない作りだった気がします。 そんな明確な欠点がある映画なんですが、2に続いて3でも魅力的な敵役を用意してみせた点に関しては、素直に評価したいです。 本作でカーターの影が薄いのって、コイツのせいじゃないのかって思えるくらい、真田広之演じるケンジが魅力的。 「主人公リーの弟分」「今は敵対し、かつての兄貴分に愛憎入り混じった想いを抱いてる」って設定だけでもオイシイし、日本刀を鮮やかに振るう姿も恰好良い。 そんなケンジとの「エッフェル塔での戦い」は、間違いなくシリーズ屈指の見せ場だったと思います。 リーが弟分のケンジから「孤独な男」と断じられた場面で「孤独じゃないわ」と女装したカーターが助けに来る場面はグッと来るし「やるじゃん、シスター」「任せて、ブラザー」ってやり取りも面白かったしで、こうして感想を書いてみると(あれ? 意外と良い映画だな)って、鑑賞後の印象とのギャップに、自分でも戸惑っちゃうくらいですね。 では、何故そんな本作の「鑑賞後の印象」が悪かったかというと…… やっぱり、終わり方のせいだと思うんです。 本当、今観返してみても「唐突過ぎる」「呆気無い」「何でこんなブツ切りで終わらせたの」って、理解に苦しむくらい。 ……ただ、上述の「唐突の終わり方」に関しては、劇場公開版&ソフト版に限った話であり、地上波放映版では、未公開だったラストシーンが追加され、グッと自然な終わり方になっていたりもするんですよね。 劇中(扱いが酷いなぁ)と思えたイザベラに関しても、リー達と再会する場面が描かれ、しっかりフォローされていますし。 狙撃されたハン大使が無事に退院した事も明かされ、文句無しのハッピーエンドになってる。 そして何より「1や2と同じく、リーとカーターが休暇に旅立つ終わり方」「俺達は相棒じゃなく、兄弟だと認め合う終わり方」であった事が、本当に良かったです。 残念ながらNG集は拝めないってマイナスを考慮しても、自分は地上波放映版の終わり方を支持したいですね。 ちなみに、本作の劇中では「ケンジのタマ取って妹にしちゃえ」という台詞がありますが、ドラマ版(2016年)では実際にリーの妹が出てきたりもするので、気になった人は是非チェックして欲しいですね。 「映画版と殆ど変わらないカーター」「寡黙な美男子という独自の魅力を出してるリー」という主人公二人の描き方も良かったし、最後も綺麗に終わってるしで、この手の「人気映画をドラマ化してみた」パターンの中では、かなり良く出来てる方だと思うので、オススメしておきたいです。 [地上波(吹替)] 6点(2022-06-24 09:24:48)(良:2票) |
79. ラッシュアワー2
《ネタバレ》 ラッシュアワーシリーズって、三部作全てブレット・ラトナー監督のはずなんだけど…… (あれ、もしかして監督交代した?)と思えちゃうくらい、続編物としての欠点が目立つ作りなのが寂しいですね。 一応、1にあった楽しい雰囲気は維持されてると思うんだけど、何ていうか「1と2の繋げ方が雑」なんです。 前作のラストで「カーターは中国語を話せる」ってオチになったはずなのに、実際は手帳に書いたワードを読み上げる事しか出来ないって設定になってるし、1ではビーチボーイズを馬鹿にしてたカーターが「ビーチボーイズ最高!」と言ってる辺りも、1と2の間に何があったんだよと気になっちゃう。 シークレットサービスになれたと喜ぶカーターっていうのも、1のラストにてFBIになる事を拒否し「俺はロス市警で良い」と恰好良く啖呵を切った場面を考えると、違和感があるんですよね。 この辺に関しては、監督というより脚本家の交代が原因かとも思えるんですが、真相や如何に。 そんなこんなで、ちょっと褒めるのが難しい一本なんですが…… 一応「1には無かった、2独自の良さ」も、ちゃんと備わっていたと思います。 何と言っても最大の長所は、悪役美女のフー・リを演じる、チャン・ツィイーの存在。 林檎にナイフを投げる場面とか、戦う前に鮮やかな動きで髪を結う場面とか、もう惚れ惚れしちゃうくらい魅力的でしたね。 凛々しさと可憐さ、その双方を備え持っており、爆発で死んじゃうオチなのが悲しく思えたくらい。 リーが口の中にある爆弾を作動させない為、フーにキスする場面も可笑しかったし…… 父の仇であるラスボスのタンを撃つべきか、それとも正義の為に自制するかでリーが迷う場面にて、相棒のカーターが「撃て」と急かすのも、新鮮で良かったです。 こういう場合、相棒は撃たないようにと諭すか、わざと露悪的な事を言って思い止まらせるもんなのに「俺達以外には誰もいない」とか言い出す始末ですからね。 本作の主人公二人が、型通りの「バディ物」には収まらない魅力を持ってると示した、印象深い場面です。 前作と同じように「休暇に旅立つ二人」という、楽しい雰囲気のまま終わってる辺りも、嬉しいポイント。 上述の通り、続編映画としては色々と不満もあるんですが…… これ単体で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。 [DVD(吹替)] 6点(2022-06-24 09:20:13) |
80. ラッシュアワー
《ネタバレ》 米国におけるジャッキー人気を決定付けたという、記念すべき一本。 そう考えると、映画史においても重要な品のはずなのですが…… そんなアレコレを加味しなくとも、単純に刑事物のバディムービーとして、良く出来てると思います。 この手の映画の場合、主人公は「常識人タイプ」と「型破りタイプ」に分かれがちであり、本作も一見するとリー刑事が「常識人」カーター刑事が「型破り」なのかと思えるのですが、映画が進むにつれ、徐々にその関係性が逆転していく様が面白いんですよね。 カーターの方は「ビバリーヒルズ・コップ」(1984年)的な「陽気な黒人刑事」というキャラクターであり、どう考えても相手を振り回す側のはずなのに、無口で真面目そうなリーに振り回されるという意外性。 旧来のバディ物、そして刑事物に慣れ親しんだ観客であればあるほど、この展開には意表を突かれ、新鮮な魅力を味わえたんじゃないでしょうか。 監督のブレット・ラトナーがジャッキーのファンだったので、アクション・シーンもジャッキーが好きなように演じる事が出来たという、その一点も素晴らしいですね。 クライマックスにて描かれる「展示品を壊さぬように、必死にフォローしながら戦う場面」「絨毯ダイブ」などの魅力は、如何にもジャッキー映画的であり、彼のファンとしても、大いに満足。 そんなジャッキー演じるリーだけでなく、相棒となるカーターが魅力的なキャラクターであった事も、忘れちゃいけないポイント。 「誰にでも出来る、下らない任務」としてリーの接待を任されたカーターだけど、見事に誘拐事件を解決してみせて「高慢なFBIの鼻を明かす」って痛快さを描いてるんですよね。 リーの側だけでなく、カーターの側に感情移入して観ても面白いって辺りは、続編の「2」や「3」では失われてしまった長所であり、本作のバディムービーとしての完成度の高さを証明してる気がします。 「カーターは銃を二丁持ってる」「リーから銃の奪い方を教わっている」などの伏線が、きちんと張られている事にも感心しちゃうし、反目する主人公達が仲良くなるキッカケが「歌と踊り」っていうのも、お約束な魅力がありましたね。 幼女のスー・ヤンに、爆弾処理に長けたタニアといった具合に、魅力的な脇役が揃ってる点も良い。 商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが…… 本作に関しては、ヒットしたのも納得。 そしてシリーズ化したのも納得な、魅力のある映画だったと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2022-06-24 09:14:47) |