Menu
 > レビュワー
 > 鉄腕麗人 さんの口コミ一覧。46ページ目
鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2593
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81828384858687888990919293949596979899100
101102103104105106107108109110111112113114115116117118119120
121122123124125126127128129130
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81828384858687888990919293949596979899100
101102103104105106107108109110111112113114115116117118119120
121122123124125126127128129130
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81828384858687888990919293949596979899100
101102103104105106107108109110111112113114115116117118119120
121122123124125126127128129130
>> カレンダー表示
>> 通常表示
901.  ミッドナイトクロス
ヒロインの「悲鳴」に気づき、ジョン・トラヴォルタ演じる音響効果マンの主人公が彼女の危機を救うべく走る。  このクライマックスまで冴え渡るブライアン・デ・パルマのカメラワークを観ながら感心しつつ、一方で「意外とオーソドックスな映画だったな」と、その後に訪れるであろうエンディングを予想して思った。  そして、同時にジョン・リスゴーが扮する殺人者の存在性や解消されていない物語設定に若干の整合性の欠如を感じ、「不満」が顔を見せ始めた。    しかし、その直後、「不満」は速やかに叩き伏せられた。  安直な予想を覆す圧倒的に印象的なエンディングに言葉が無かった。  時に軽妙ささえ巧みに醸し出しながら展開してきたサスペンス色豊かな映画世界が、一転して上質な「悲劇」へと帰結する。    過去に傷を持つ男が、或る事件の遭遇によってかつての正義感を揺り起こす。それは、不遇を極めている人生からの起死回生の脱却を図った一人の男の姿だったと思う。  しかし、人生の無慈悲は、ふいに生まれたその転機のきっかけさえも、無情過ぎる悲劇をもって消し去る……。    大いなる失意の中で音響効果の仕事に戻る男。  試写を観ながら「いい悲鳴だ」と繰り返し呟くその様は、男が静かに精神の闇に沈み込んでいく様子が如実に表れており、胸が詰まるラストカットだった。     本編への重要な伏線となる劇中映画を用いたオープニングからはじまり、ラストの美し過ぎ悲し過ぎる花火シーンに至るまで、全編に渡ってブライアン・デ・パルマの卓越した映画術が冴え渡っている。  おそらく、一度観ただけでは気付かないような細かな映画的工夫も随所に散りばめられていることだろう。   そして、ジョン・トラヴォルタは、映画世界の展開とそれに伴うテンションに混じり合うように呼応し、音響効果マンの主人公を演じ切ってみせている。    群衆の賑わいに掻き消される悲鳴。誰にも届く筈の無い悲鳴が、主人公にのみ届くという映画的な巧さと絶望感。  鑑賞前に予想していたものとは全く違う感情を覚えたが、それこそが映画の醍醐味だと思う。  良い監督と良い俳優による文句なしに良い映画だった。
[DVD(字幕)] 9点(2012-02-02 13:47:26)(良:1票)
902.  カンフー・パンダ2
この“パンダカンフー映画”シリーズを立て続けに観て思ったことは、最新アニメーション映画において「声優」のキャスティングはこれまでとは少し違った意味で重要になるなということだった。 一昔前までは、客寄せのために著名な俳優を声優としてキャスティングするよりは、本職の声優を起用した方が良いと思っていた。  しかし、アニメーション技術の更なる進化により、造形されるアニメキャラクターの言葉遣いや仕草までもが、声優を担当する人間そのもののキャラクター性に合わせられるようになった。 詰まる所、映画の中で動き回っているのはデブのパンダだけれど、それを演じているのは明らかにジャック・ブラックだと思わずにはいられなくなった。 もし、何らかの事情で、このデブパンダの声をジャック・ブラック以外の人間がやることになってしまったら、その映画はもの凄くチグハグで違和感たっぷりの映画に成り下がってしまうだろうことは容易に想像ができる。  もはやこの映画はアニメーションだけれど、ジャック・ブラック主演でアンジェリーナ・ジョリーやダスティン・ホフマンらが脇を固める映画シリーズだと言わざるを得ない。 アニメーション映画のクオリティーはそういうレベルにまで達しているのだということを改めて感じる質の高い映画であることは間違いない。  ただし、そういったアニメーションの高い技術や、ハリウッドの一流俳優たちが演じるキャラクターの安定感に対して、ストーリーそのものにあまりに意外性がないことも事実。 「王道的」と言えばそうかもしれないが、だからと言って面白味が薄いのであれば、それはやはり問題だろう。 前作に対して、主人公には劇的な成長は無いし、敵役やその他キャラクターとの対立構造も薄い。  更なる続編も企画しているのかもしれないが、ストーリーにひねりや毒っ気がもう少し無ければ、尻つぼみになってしまうことは避けられないだろう。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-01-29 11:23:24)(良:1票)
903.  スーパー!
想定を大いに超越する“トンデモ”映画だった。 同時期に製作された「キック・アス」と殆ど同じプロットだと思っていたが、これはまさに“似て非なるもの”で全く「別物」の映画と言っていい。同様のカタルシスを得られると思って観てしまうと、とんでもないしっぺ返しを食らうこととなるだろう。実際そうだった。  この映画で描かれているものは、「キック・アス」のような新たなヒーロー像を構築したエンターテイメントでは決してない。 己の人生に絶望し、それを歪んだ正義感に繋ぎ合わせ、悪に対する憎しみを最大限に増幅させてしまった凡人の“狂気”の様だ。 主人公の想定外の暴走は、観ている者の心を問答無用にかく乱し、「衝撃」なんて飛び越えて、唖然とさせる。  自ら去った愛する妻の奪還、心のよりどころである神への信心、主人公を突き動かす要因は様々だが、そのすべてはほんの小さなきっかけに過ぎなかったのではないかと思う。 “ヒーロー”の「仮面」を被り、悪の抹殺行為が過剰に加速していく様は、主人公の男がそして人間そのものが元来持ち得る「衝動」が、膨らみ、弾けてしまった結果のように見えた。  あらゆるものを失い、主人公は“一応”目的を果たす。 ラストではそれでも何かが救われたように描かれているけれど、それこそがまさに“フェイク”で、偽物のヒーローが辿り着いた先はやはり「悲劇」だった。  映画において、何と言っても衝撃的なのは、エレン・ペイジである。 即席ヒーローと化した主人公に呼応し、相棒役“ボルティ”に扮するリビーを演じた彼女のパフォーマンスは、文字通りに終始“弾けている”。癇癪玉のように突如として弾け、これでもかと弾け続け、ふいに弾けとんで終わる……。 主人公が徐々にその狂気性を高めていくのに対し、リビーはそもそものキャラクター性が暴走的で狂気じみている。 リビーの行動を引き起こしたのは主人公だが、主人公の行為を破滅的に深めたのはリビーであるという絶妙な関係性が、この映画の肝と言っても過言ではない。  その重要な役所を、相変わらずの小さな体で“妙ちきりん”に魅せたエレン・ペイジこそが、この映画の最大の見所と言ってもいいだろう。  前述の通り、決して気分の良い映画ではない。ただ、批判も肯定もとにかく観てみないことには何も始まらない。
[DVD(字幕)] 9点(2012-01-29 10:46:48)(良:1票)
904.  チョコレート・ファイター
数年前に観た「マッハ!!!!!!!!」は、あまりに覚えづらいタイ人監督の名前と、「体を張る」ということの本当の意味を伴ったアクションを強烈に印象づけた映画だった。 ただし、主人公を演じたトニー・ジャーというアクション俳優のパフォーマンスがあまりに超絶過ぎるのに対して、ストーリーは陳腐なので、もはや一流アスリートの超人芸を映し出した記録映像を延々と見せられているようで、映画としてのカタルシスを得ることが出来なかった。  「マッハ!!!!!!!!」はそういった形で、とても勿体ないと思えた映画だったが、今作は数年かけて育て上げた天才少女ジージャー・ヤーニン(井上真央似)を主人公に配し、足りなかった映画的カタルシスを備えた“タイ産”美少女アクションに仕上がっている。  ストーリー的に嘲笑を抑えきれない部分はやはり多い。色々な意味で、決して“良質”な映画とは言い難い。  ストーリーテリングが必要以上にシリアスなのに、諸々の場面設定はチープだし、キャラクターの行動の整合性も欠けている。 そもそもがこの手のジャンル映画としては、あまりに話が暗過ぎるし、特に序盤の鬱積感は観ていて辛ささえ感じる。  でも、そういう諸々の粗や鬱積を“助走”として、少女の体そのものから文字通り「解放」されるアクションがもの凄い。 エンディングで映し出される「NGシーン」もとい「事故映像」が伝えるままに、描かれるアクションは痛々しいまでにリアルで半端ない。それが、今回は「記録映像」に留まっていない。 ブルース・リーをはじめ、ジャッキー・チェン、ワイヤーアクション、チャンバラに至るまで、あらゆる格闘アクションに尊敬とオマージュを捧げたアクションが、映画の中で「進化」し、“ジージャー”という新星の唯一無二のオリジナルアクションへと「昇華」していく。その進化の過程に対して、何よりもカタルシスを覚えた。  繰り返しになるが、ストーリーはお世辞にも褒められたものではなく、極めて陳腐だと言わざるを得ない。 ただし、DVDを観終わった深夜のリビングで、思わず「フォワーーッ」と発しながらハイキックをしてしまった。 もちろん“ジージャー”のそれと比べると、「ハイキック」と呼べるほど自分の足は上がっていなかったけれど、映画を観終わってそういう反射的な行動を引き起こさせる、これを「本物のアクション」と言わずして何と言う?
[DVD(字幕)] 8点(2012-01-27 00:48:57)
905.  デス・プルーフ in グラインドハウス 《ネタバレ》 
まったく“とんでもない”映画だ。 アクション?サスペンス?ホラー?映画のどのジャンルに当てはめようとしても、すべてに「?」を付けたくなる。というか、こういう風に論じようとすること自体が馬鹿らしく思えてくる。 つまりは、ハリウッドにおける永遠の悪童クエンティン・タランティーノが、またもや“大馬鹿映画”を作り上げたということに他ならない。  冒頭から延々と繰り広げられるのは、典型的な女子の駄話。実際その教養もなければ、オチもないガールズトークは、映画の大半を占める割合で展開される。 そこには退屈を覚えるというよりも、一体なんなんだこのシーンは!?と唖然としっ放しになる。 ただ何故だが眼は離せない。それはおそらく、「あー、こんなイケイケギャルたちの話に混ざりてー」という無意識の妄想が生まれているからだろう。  そんなイケイケギャル映画だった映画世界は、ミステリアスな雰囲気を携えて登場したカート・ラッセルが、狂気の殺人鬼(変態)に豹変した瞬間からオゾマしい恐怖映画に転じる。 その豹変ぶりは本当に「突然」で、作品中の惨劇シーン同様、激しい揺さぶりに酔いそうになる。  場面が変わり、また別のグループのガールズトークが始まるのだが、今度はいつ次の「恐怖」が訪れるのかと先の揺さぶりが止まらず、先には無かった居心地の悪さを感じずにはいられなかった。  そして再びカート・ラッセルが登場し、いよいよ始まりそうな次の恐怖に身構えた途端、映画は唐突なUターンの如き展開もとい“転回”を見せ、「女性至上主義」の圧倒的なカーアクション映画へ文字通りに突っ走る。 一体何が起こっているのか判然としないまま、映画は怒濤のエンディングを“ぶちかます”。 「THE END」のテロップが堂々と出た瞬間、馬鹿笑いを止められなかった。  「クソ映画」であることは間違い。けれど、クエンティン・タランティーノは多大な労力を注いで、端から「クソ映画」を撮ろうとしているのだから、文句のつけようが無い。 「カッコいい!」とか「エロい!」とか一瞬でも思ってしまったなら、その時点でタランティーノの完勝であり、観ている側は潔く完敗を認めるしかない。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-01-22 15:39:01)(良:1票)
906.  その土曜日、7時58分 《ネタバレ》 
「その土曜日、7時58分」この邦題も嫌いではないけれど、原題「Before the Devil Knows You're Dead」は、「悪魔があなたの死に気付く前に天国にあらんことを」というアイルランドの諺を引用しているらしい。 人生においてもはや“死に体”となった主人公を始めとする登場人物たちの様を如実に表したタイトルだと思う。  後戻りできない悪循環にはまった人生を好転させるため、“或る犯罪”を企てる兄弟。容易に思われた計画は思わぬ形で頓挫し、更に最悪な悪循環にはまっていく。 ドラマとして素晴らしい点は、描かれる「悲劇」が、必ずしもその犯罪に端を発しているわけではなく、主人公の兄弟をはじめとする彼らの家族が、そもそも孕んでいた屈折した関係性から生じているということ。  この家族は、決して心の底からお互いを憎んでいたわけではないけれど、長い年月の中で少しずつ鬱積し増幅した軋轢やコンプレックスが、後戻りできない悲劇を生んでしまった。 「家族」という最も身近で、最も微妙な人間関係を主軸に据えたサスペンスが、鈍く光る鋭利な刃物のようにゆっくりとそして確実に突き刺さってくるようだった。  ただでさえ深い面白味をもったストーリーを、時間軸をずらした構成で巧みに描き出し、サスペンスの緊張感と驚きを越えたその先に、濃密過ぎるほどの人間模様を映し出した演出は、まさに「巨匠」のそれだった。 長きに渡り、重厚な社会派ドラマを映画史に刻みつけてきたシドニー・ルメット、その遺作に相応しい映画だと思う。  ラスト、自らの手で悲劇の終止符を打たずにはいられなかった老いた父親が、一人光の中に消えていく。 その先に居たのは悪魔か天使か。その答えはあまりに分かりきっていて、悲し過ぎる。
[DVD(字幕)] 9点(2012-01-21 14:13:03)
907.  カンフー・パンダ
この映画は言うなれば、“パンダカンフー”版「スター・ウォーズ」である。 ストーリー、キャラクター性、あらゆる面でかのスペースオペラの世界観が色濃く反映されている。 スター・ウォーズファンのカンフー映画ファンならば、文句なしに楽しめる映画だろう。  何の取り柄もないカンフーマニアのデブパンダが、運命だか偶然だかで“伝説の戦士”に選ばれ、強敵を倒す。という、ありふれたプロットに想像通りにストレートなお話が展開される。 実際、ストーリーに“ひねり”など必要としない映画であることは間違いなく、アニメーション表現ならではの面白さとキャラクターの魅力だけで、「完成」している映画だと思う。  とは言うものの、いくつかの難点はあった。 一つは、主人公の成長の仕方が唐突過ぎるように思えたこと。 何も取り柄もないと思われていた主人公の唯一見出された資質が“食い意地”で、それを最大限に生かして潜在能力を引き出すという修行方法は、この映画世界に相応しいユニークさだと思った。けれど、そもそもその潜在能力が備わっている理由が明確にならないので、やはりあまりに都合良く思えた。  そしてその主人公が、圧倒的に凶暴に描かれる強敵に打ち勝つという様にも説得力が足りなかった。 何故デブでのろまなパンダが戦士に選ばれ、何故強敵を倒すことが出来るのか。そういう基本的な部分の理由付けが曖昧すぎたように思う。  生い立ちも含めた描かれなかった主人公のキャラクター設定は、続編への布石のつもりなのかもしれないけれど、この作品を単体で観た限りでは“軽薄”という印象を拭えない。  ただ、この映画は垣間見えるいくつかの粗を追求するべきものではなく、ユニークなキャラクターたちの愉快で痛快な言動そのものに面白味を見出すべき作品だろう。 そういう意味では、アニメ映画としても、カンフー映画としても、楽しみがいのある優れた娯楽映画であることは間違いない。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-01-20 13:15:12)(良:1票)
908.  ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
前作「ヘルボーイ」は、登場するキャラクター性やその造形美には魅力を感じたものの、彼らを充分に生かし切れていないストーリー展開によって、今ひとつ乗り切れないヒーロー映画としてイメージづけられた。 そのイメージが強く、4年後に製作されたこの続編にも「今さら……」という印象が拭えず、興味がわかなかった。慢性的なネタ不足のハリウッドなので、「とりあえず作っとくか~」程度の続編だろうと勝手に想像してしまっていた部分もある。  しかし、実際に鑑賞に至ってみて驚いた。 登場するキャラクターたちの魅力はそのままに、前作とは比較にならない壮大な世界観の中で、主人公ヘルボーイをはじめとするキャラクターたちが生き生きと息づいていた。  新登場のキャラクターや端役程度のクリーチャーのクオリティーも極めて高く、圧倒的な造形美に彩られている。 異形の者たちが集う市場のシーンでは、ありとあらゆるクリーチャーがごった返し、その作り込みは半端なかった。その他のシーンも含めて、画面に映し出されるあらゆる造形を見ているだけでも、充分に楽しい映画に仕上がっていると思う。  そういったクオリティーの高い造形美の中でも、描かれるストーリーは圧倒的に世界観は広がっているものの、良い意味で極めてコミック的で愛着がわく。 第一作目を観たときは、続編への期待など殆どなかったけれど、今作では所々に気になる伏線も散りばめられており、第三弾に対して大いに期待は膨らむ格好となった。  監督のギレルモ・デル・トロはすっかり売れっ子の映画監督になっており、引く手数多のようだ。 「ロード・オブ・ザ・リング」のスピンオフ作品「ホビット」2部作の監督にも就任したが、諸々のスケジュールの都合で降板したらしい。 他にも期待度の高い企画は進行しているらしいが、くれぐれも「ヘルボーイ3」の企画は頓挫しないように願いたい。 主演のロン・パールマンもかれこれ高齢ですし……。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-01-17 16:41:43)
909.  リアリズムの宿
冬風が吹きつける日本の寂れた裏通りを歩いていく冴えない男二人。 “顔見知り”程度の二人の絶妙な関係性が、妙な間と可笑しみを生んでいく。 そこには希望もなければ、絶望もない。“美しくないもの”をきっちり美しくなく描き出す辛辣さと、可笑しさ、それらに裏打ちされたリアリズム。  山下敦弘監督(「リンダ リンダ リンダ」)のこの映画をずうっと観たいと思っていたけれど、地元のレンタル店ではなかなか見つけることが出来ずにいた。 最近になって特に観たくなっていた最大の理由は、尾野真千子が出演しているからだった。 ふと訪れた自宅から遠いレンタル店でようやく今作のパッケージを見つけ、やっと鑑賞に至った。  つげ義春の原作らしく、創造以上に“つかみきれない”感覚は、エンドクレジットが映し出された瞬間に覚えた。 良い映画とも悪い映画とも大別できない浮遊感みたいなものを、観終わってしばらく感じていた。  その浮遊感こそ、この映画が描こうとしたことだと思う。 人の世は、楽しいものなのか、美しいものなのか、素晴らしいものなのか。 大概の場合、その答えは「ノー」と言わざる得ないけれど、それでもふいに訪れるわずかな“光”の“ようなもの”を求めて、ふらふら、ふわふわと多くの人間は生きている。  人も、物も、風景も尽くうらびれているこの映画は、その突き詰められた“うらびれ感”の中で、「それでももうちょっと生きてみるのも悪くない」ということを呟くように伝えてくる。
[DVD(邦画)] 8点(2012-01-16 22:42:37)
910.  マイティ・ソー
マーベルコミックのヒーロー大集合のお祭り大型企画「アベンジャーズ」は、大いなる疑心も付きまとうが、それを遥かに凌駕する期待感が先行している。イロイロ特色を持ったキャラクターが大集合!って設定は手放しでテンションが上がってしまう性質なので。  それはそれとして、神話世界のヒーローを描いた今作「マイティ・ソー」までが、そのプロジェクト・アベンジャーズの一端に食い込んでいるとは知らなかった。 まさに“神”レベルのキャラクターである“ソー”と、基本的には普通の人間である“アイアンマン”こと“トニー・スターク”らが同列に並んで成立するものなのだろうかと思う。 まあ、その懸念は実際に「アベンジャーズ」が公開されてから見極めることとしよう。  単体でみた今作を一言で言うと、「あらゆるイマジネーションが氾濫した映画」というところだろうか。 映し出される映画世界は、まさに“洪水”のような勢いで押し寄せ、入り交じり、混濁している。 実際に描かれているストーリー自体は、お伽噺的なものでシンプルなのだろうけれど、その氾濫具合によって訳が分からなくなってくる印象を受けた。  序盤は“神々の世界”の途方も無さに少々置いてけぼりになり、更に地球へ追放された主人公の立ち振る舞いや、唐突な溶け込み方に呆れた。 そのまま「駄作」と断じてしまってもよかったけれど、何となく拒否しきれない不確かな魅力が、結局のところそれを回避した。  色々な点で突っ込みどころは満載だ。描かれる物語は詰まる所、親子の確執や兄弟の確執の範疇を出ておらず、その当人たちがたまたま「神」だったから全宇宙を揺るがすほどの仰々しい騒動になってしまったという風に見える。 ただそれがこのコミックの世界観だと言われれば、正直批判する余地は無いようにも思えてくる。   鉄の巨人が突如地球上に現れて、それを目の当たりにした政府の人間たちが何を言うかと思えば、 「スタークのものか?」「いや聞いてない」というやりとり。 それを聞くなり、自分の中の“ワクワク感”がひょいっと頭を出してしまった時点で、この映画自体が面白かろうが面白くなかろうが、“マーベルのお祭り”にまんまとノせられている者としては受け入れるしかないのだろう。   (2018.5.7再鑑賞) 初鑑賞時は“ソー”というマーベル・コミックのキャラクター自体に対してビギナーだっため、どういうスタンスでこの「雷様」を捉えるべきか分からず、この映画世界を味わうに相応しいテンションを見出だせていなかったのだと思う。 結果的に、繰り広げられるイマジネーションが混濁しているように見え、「駄作」という印象さえ禁じ得なかった。  しかし、「アベンジャーズ」を含めて、その後のシリーズ作をすべて経てきた今となっては、再鑑賞した今作の印象が一転したことは言うまでもない。 改めて観返してみると、神話にまで通ずる超宇宙を股にかけた崇高なスペースオペラであり、生きる世界の垣根を超えた壮大かつ愛らしいラブ・ストーリーとして、見事に仕上がっている。 「宇宙戦争」「地球の静止する日」等の古典を彷彿とさせるクラシックSFとしての側面も味わい深い。  そして、屈強な雷神に愛されるヒロインとして、ナタリー・ポートマンの魅力的な存在感はあまりにも相応しい。  マーベル・シネマティック・ユニバースの作品群の中では、世評的にも興収的にもそれ程褒められた結果を得られた作品では無かったけれど、“ソー”という明らかに異質なスーパーヒーローの立ち位置を確立させ、紛れもなく愛すべきキャラクターとして成立させてみせたことは、この直後に公開された「アベンジャーズ」成功の最たる要因と言えよう。  贅沢かつ的確なキャスティングを成功させ、この難しい企画をまかり通してみせたケネス・ブラナー監督の手腕と、功績は大きかったと思う。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-01-15 01:32:11)(良:2票)
911.  トロピック・サンダー/史上最低の作戦 《ネタバレ》 
とても悲しいことがあって、こういう時だからこそ敢えて理屈抜きに大笑いできる映画を観ようと思った。 普段は積極的にこの類いの“コテコテ”のコメディ映画は観ない。だからベン・スティラーの映画を観るのも本当に久しぶりだった。  どのジャンルの映画においても同じことが言えようが、コメディ映画というジャンルは特に観る者によって好き嫌いが大別される。故に笑いどころのポイントが合わなければ、その人にとっては駄作以外の何ものでもなくなってしまう。 それはもう丁半博打のようなものだけれど、幸運にもこの映画は大笑いできる映画だった。サイコーである。  ある程度あらゆる映画を見続けている人であれば、映画の冒頭から本当に可笑しくて仕方なくなってくるのではないかと思う。 戦争映画のパロディというよりも、ハリウッドの映画産業自体を風刺しパロディ化した映画世界は、凄まじいほどにきちんと作り込まれていて、笑いと同時に大いに感心してしまう。 数多の戦争映画で描かれてきた戦場における狂気の様と、ハリウッドのメインストリートの住人たちの滲み出る狂気が絶妙にリンクしていく描写は、ストーリーとしてもとても優れていた。  世界中にコメディ映画は溢れているが、本当に優れた可笑しさは、ストーリー的にも映像的にも徹底したクオリティーの高さの中にこそ生まれるということを、この映画の作り手は熟知しているのだと思った。  ブラックで時にどギツイシーンも連発されるが、豪華な出演陣のパフォーマンスをはじめ、常に“中途半端”であることを避け、すべてにおいて“振り切っている”ことが、決して居心地の悪さを感じさせない理由だろう。  鬼畜豪腕プロデューサーの意味不明な“ラストダンス”も含め、問答無用にテンションを上げてくれる“今の自分”に相応しい映画だったと思う。   個人的に惜しむらくは、鬼畜豪腕プロデューサー役のキャスティングに最後のクレジットまで気付かないでいられたなら、最終的なテンションの上がり方はもっと劇的になっただろうなと思ったこと。 某スパイ映画の最新作を含め、「彼」の映画を最近立て続けに観たばかりだったので、“眼”と“動き方”から気付かずにはいられなかった……。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-01-14 16:17:03)
912.  素晴らしき戦争
世に存在する「戦争映画」の全ては例外なく「反戦」を描いているだろう。 もちろんこの戦争映画もその例に漏れないが、これほどまでに高らかに「戦争」そのものを歌い上げ、それが巻き起こっている世界そのものを“テーマパーク”として表現しエンターテイメント化することで強烈に批判した映画は他になかろうと思う。  あたかもボードゲームに興じるように私利私欲を満たすために戦争を展開する上層部の人間たちの愚かさや、その駒のように盲目的に戦乱に巻き込まれ命果てていく民衆の虚しい様が、ミュージカルの中に盛り込まれその本質が露になってくる。 流行曲や賛美歌の替え歌の中で表現される「本音」の部分が、戦争におけるすべての愚かさをつまびらかにしていくようで印象的だった。  ある狙いを持ってのことだが、今作では第一次世界大戦の情勢が時に隠喩的に表現されるので、当時の世界情勢に詳しくない者にとっては正直分かり辛い部分も多く、退屈感に繋がってしまう要素も大いにある。 誰しもが映画として全編を通して楽しめる作品とは言えないが、明確で力強い「意思」をもって描き出された映画であることは間違いない。  監督のリチャード・アッテンボローは、今作が長編映画処女作らしいが、とてもじゃないが普通処女作で手にかけられる映画世界ではないだろうと、圧倒的な世界観に唖然とした。  ラストシーンでは、美しい緑の高原を文字通りに“埋め尽くす”無数の白い十字架の墓標が映し出される。 神々しいほどに静かで美しいシーンだけれど、そこにはこの映画でももっとも明確な“怒り”が表れていると思った。
[DVD(字幕)] 7点(2012-01-12 14:02:37)
913.  インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア 《ネタバレ》 
まず感じたことは、これほど“つかみどころ”のない映画も他に覚えがないということ。 それは面白味が見出せないということではなく、「ああこういう映画か」と認識するや否や、つかみかけた映画の世界観のテイストがするりと手の中から抜けていく感じを冒頭からエンディングまで終始受け続ける作品だった。  序盤は、ハリウッドのスター俳優としてこれからどう転じていくかという一つの岐路に立たされていたトム・クルーズと、その後釜を虎視眈々と狙い始めたブラッド・ピット、二人のスター俳優の新旧の“色気”が画面に映し出されるままにせめぎ合う完全な“女性の欲求くすぐり映画”だった。  そういう映画だろうという予想が、この映画を無意識に敬遠していた要因でもあったので、「ああやっぱりこういう映画か」と若干テンションが下がり始めた頃、掲題の女優が登場。一気に“ちっちゃいキルスティン・ダンストの才能爆発映画”に転ずる。 キルスティン・ダンストがこれほど子役の時代に出演している映画とは知らなかったので、前述の二人のスターをも凌駕する衝撃的な存在感を目の当たりにして驚きが隠せなかった。  その後映画は、ヴァンパイアたちの悲しく激しい対立と運命が描かれつつ、シリアスにそして切なく深まっていく。 「ああ、なかなか悲哀深い映画だった」と結論付けようとしたところ、ラストで更につかみ損ねた。  延々とインタビュー形式で綴られたヴァンパイアの悲しい運命の物語が、何百年に渡る“ぼやき”として軽快なロックと共に一笑に付せられた瞬間、映画ファンとしては幸福なほくそ笑みを浮かべずにはいられなかった。  豪華過ぎるキャスティングの印象が強かったせいか、ミーハー女子好みのある種ベタで王道的な映画世界が展開されるのだろうと思っていただけに、想定外に毒っ気が強く、カルト的な映画世界に最終的に圧倒された。 結局のところ最後まで“つかみ切れない”映画で、美しい部分はとことん美しいし、悲しい部分はとことん悲しいし、馬鹿馬鹿しい部分はとことん馬鹿馬鹿しい。 とにもかくにも、ちょっと他にない類いのユニークな映画であることは間違い。  ああ、生き血をすすりたい欲望を抑えるルイよろしく、なんだかじわじわと滲み出てくる「愛着」を抑え切れない……。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-01-09 02:51:59)(良:1票)
914.  聯合艦隊司令長官 山本五十六―太平洋戦争70年目の真実―
今年初めての映画鑑賞を終えて映画館を出た。映画館の屋上の駐車場から沈み始めたばかりの夕日が見え、その輝きの思わぬ美しさにしばし見入った。 様々な価値観はあろうが、僕自身のこの人生が、同じようにこの国に生きた数多くの生命の上に成り立っていることは疑いの無いことで、こうやって美しい夕日が見られるのも、彼らの生命のおかげだと思った。  伝記映画として、戦争映画として、この映画に目新しいドラマ性は殆どない。 逆に言うと、世間一般の知識が乏しい山本五十六という人物の人間性を真正面からきちんと描いている映画だと言えると思う。 実在の人物や歴史を描いた数多の映画と同様に、今作が総てにおいて真実を描いているとは思わない。 しかし、たとえ一側面であったとしても、山本五十六の人間ドラマは充分に感じることができたし、それに伴う歴史の無情さや愚かさも深く感じることができた。  太平洋戦争勃発時の司令長官として、戦中戦後に渡り山本五十六に対する世間の風評は大いに揺れ動いたように思う。時には過剰すぎる程に神格化され、時には諸悪の源として蔑まれていたことだろう。 実際にこの人物がどういった人間だったのかは、タイムマシンでもない限り知る由もない。が、少なくともこの映画を観た限りでは、そういった世間の盲目的で安定しない風評に反するかのように、自分の目で世情を見据え揺るぎない信念を持ち続けた人間だったのだなと素直に感じた。  混沌とする世界の中で、一国の重圧と期待と悲しみを一身に背負い生き抜いた一人の人間の姿を見ることができた。 同時に、戦争とそれに伴う悲しみは、“誰か”のせいで生まれるのではなく、その国全体の“愚かさ”によって生まれるのだとういことを思った。  役所広司の演技にも目新しさは決してないが、安定しており、何よりも“説得力”が備わっていた。 主演俳優の演技に呼応するように、作品全体に安定した説得力のある良い映画だったと思う。  「歴史」を描いている以上、あらゆる価値観から賛否は渦巻くのだろうけれど、少なくとも今現在この国で生きている自分は、より責任を持って今この時を生きていかなければならない。  そして、今この国に生きる人々の多くは、太平洋戦争から70年を経た今だからこそもっとこの戦争の事実を知らなければならない。  そういったことを何よりも強く感じた。
[映画館(邦画)] 8点(2012-01-08 22:51:01)(良:2票)
915.  アイアン・ジャイアント
謎の巨大ロボットと少年との心の交流を描いたどストレートなアニメ映画だった。 新鮮味はなく、ありきたりと言ってしまえばその通りだけれど、王道的な映画世界を堂々と描き切った“巧い”映画だと思った。  ありふれたお話だが、まずストーリーの転じさせ方が巧い。序盤の何気ない描写がしっかりとクライマックスやラストの伏線となり、ちゃんと惹き付けてくれる。 時代背景が冷戦構造のまっただ中だったり、主人公の少年の父親はおそらく戦死していたりと、テーマである「暴力反対」が決して押し付けがましくなく、心温まるストーリーの中ですんなりと入ってくる。  監督は現在公開中の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」のブラッド・バード。 他にも「Mr.インクレディブル」も監督しており、とても「娯楽」を描くことに秀でた人だと思う。 娯楽映画こそ、作り手の才能が大いに影響されるジャンルだということを改めて感じた。  映画は、アニメ映画らしく心地よいラストで締められる。素直に「ああ、良かった」と思った。
[DVD(字幕)] 8点(2011-12-30 14:26:20)(良:1票)
916.  劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ
エンドロールまでしっかり観終わった後、ラストのライブシーンを繰り返して、主人公の女子高生が大きく息をついてからガッツポーズを決めるカットを二度観た。 その後も特典映像の劇場版予告編を見終わったまま、DVDをプレイヤーから取り出せないでいる。 まさに余韻に浸っている状態だ。沢山の映画を観ていると稀にこういう状態に陥る。  実在のバンド「神聖かまってちゃん」のライブまでの日々を軸にし、まったく関わりのない別々の環境の人間たちのくすぶる心情と葛藤がつらつらと描かれる。 作り手が自らの趣味趣向を全面に押し出したマスターベーション的な映画世界が繰り広げられるんじゃないかという危惧は大いにあった。 そもそも、某ラジオ番組で話題に出ていなければ、こんなタイトルの映画は見向きもしなかったろう。 “見向きもしなかった”ことを考えると、本当にぞっとする。  冒頭から安っぽいデジタル撮影の映像が映し出され、上手いのか下手なのか、はたまた自然体なのか素人くさいのか判断に悩む出演者らの演技が繰り広げられる。 作り手の自己満足が入り交じったチープな映画世界が展開しているようにも見える。  しかし、すべてが終わった後には、無駄なものが何もない映画に思えるから不思議でならない。 “チープ”という印象がいつの間にか消え去り、“良い映画”という印象も覚えぬまま、気がつけば“大好きな映画”になっていた。  「神聖かまってちゃん」なんてふざけた名前のバンドはその存在すら聞いたこともなかったし、必然的に作品の中で流れてくる彼らの音楽にすんなりと共鳴できたわけでもなかった。 しかし、ラストのライブシーンでは彼らの音楽とともに、登場する様々な環境の人物たちの様々な思いが混じり合うようにして流れ込んでくるのを感じた。  プロ棋士を目指す少女は将棋盤を睨みつけ汗を拭う。 くすぶっていたそれぞれの火種が、バンドの音楽とともに突如として燃え上がる。 彼らの問題がそれですべて解決したわけでは決してないけれど、そこには次に進むための一筋の光が見える。  「感動は理屈ではない」なんてよく言うけれど、本当に自分の中で理屈が成立する前に訳が分からぬまま気持ちが高揚し、涙が溢れ出そうになってきた。  まだまだ吐き出したい思いは溜まっているけれど、うまく言葉にできない。 年の瀬、想定に反してスゲー映画を観てしまった。
[DVD(邦画)] 10点(2011-12-30 12:07:56)(良:2票)
917.  SOMEWHERE
父親を起こすエル・ファニングの愛らしさ。 ヘリコプターの爆音で伝わり切らない父親の謝罪。 痛いくらいに青く美しい空。 幸福な時間とそれに伴う虚無感。  想定外にストーリーに起伏がなく、映画スターだが自堕落な生活を送る父親と別れて暮らしている娘との束の間の時間の共有をただただ切り取っただけの映画だった。 両者の関係性に劇的なドラマがあるわけでもなければ、何が起こるわけでもなく映画は終わる。  絶対に退屈な映画であることは間違いないのに、それを忘れさせ、不思議な心地よさの中で愛おしい時間を見つめていた。   ソフィア・コッポラの真骨頂という触れ込みは間違っていない。 こういう何気ない描写を何気ないまま映し出し、そこに言葉にならない情感を生むことにこの女流監督は本当に長けている。 プロットとしては、同監督作の「ロスト・イン・トランスレーション」にとてもよく似ている。映画の美しさにおいては負けずとも劣らない独特の秀麗さを見せてくれている。  ただしかし、「ロスト・イン~」が“傑作”と疑わなかったのに対して、今作は絶対的な物足りなさは感じる。 それが主演俳優の差か、微妙なシナリオ構成の差か、はっきりとは分からないが、映画としての美しさは溢れているものの、“面白味”に欠けてしまっていることは間違いない。  それでも、冒頭に記したようなとても印象深いシーンが幾つかあるだけで、良い映画だとは思う。
[DVD(字幕)] 7点(2011-12-27 01:06:47)
918.  ピラニア 3D
ラストシーン、いや“ラストカット”を目にした瞬間、この映画は絶対的に低俗で馬鹿馬鹿しい“愛すべきB級モンスター映画”の一つとして、僕の脳裏に住みつくことと相成った。  今さら「ピラニア」なんてタイトルのモンスターパニック映画のパッケージを見たところで、普通なら食指は伸びない。 ジャケットのイラストの仰々しさだけに注力したC級以下映画だろうとスルーすることが定石である。 しかし、某ラジオ番組のPodcastでやけに評価が高かったことで記憶に残り、陳列されていたパッケージを手に取った。   湖で繰り広げられるフェスタで浮かれまくり、乳と尻を振りまくる若者たちの“大群”が、古生代の凶暴過ぎるピラニアの“大群”に問答無用で襲撃され、お色気満載のボディがおびただしい“肉塊”へと無惨に変貌してしまうという、詰まるところ悪趣味極まりない映画である。  でも、エロくて面白いんだからしょうがない。   ビッグネームとしては、クリストファー•ロイドとリチャード•ドレイファスがキャスティングされいる。 両者ともちょい役だけれど、その配役にも映画ファンとしては実に軽妙なセンスを感じ堪らなかった。
[DVD(字幕)] 8点(2011-12-27 01:01:07)(良:2票)
919.  トロン
映画の善し悪し以前に、この時代にこの題材をチョイスし世界観を構築したマニアックさが凄い。  ビデオゲームがようやく市民権を得始めた時代に、その電脳世界に入り込んで、そこに存在する擬人化されたプロムラミングと攻防戦を繰り広げるという設定を当時一体どれだけの大衆が完全に理解できたのだろうか。 黎明期のコンピューターグラフィックスはつたなく、アニメーションの表現にも達してしない。  それでも不思議と画面に惹きつけられるのは、そういった表現に対する革新的な挑戦があったからだと思う。  決して現代の“ユーザー”が満足できる映画世界が堪能できるとは言えないが、こういう挑戦的な映画娯楽の可能性を広げる礎になったことは間違いないと思う。  そういう意味も含めて、このオリジナル作品の後に、2010年の最新続編を観ると、いろいろな部分で感慨深さが残る。それはそれで、良い映画体験だ。
[DVD(字幕)] 6点(2011-12-26 00:00:48)
920.  ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
50歳手前のトム・クルーズが、とにかく走りまくり、飛びまくり、吹き飛ばされまくる映画だ。 この映画に対して「どういう映画だ?」と問われれば、こう答えたいと思う。 正直言って、彼のそのパフォーマンスだけでも「脱帽」だと言えるし、必ずしもトム・クルーズのファンでなくともその部分だけでも観る価値はあると言える。 ハリウッドの映画スターとして存在し続ける彼の在り方は、まるで一流のベテランアスリートを見ているようだ。彼自身の俳優としての鍛錬と向上心が、“トム・クルーズ”というハリウッドスターの存在性と輝きを保持し続けているのだと、思わずにはいられなかった。  映画自体は、「ミッション:インポッシブル」というスパイ映画シリーズとして「面白い」としか評する言葉は必要ないと思う。PART2、PART3の出来が決して良くないので、そもそも質の高い映画シリーズとは言い難い部分はあるが、今作は、それらを補える程の面白味を携えたPART4として仕上がっていたと思う。シリーズ最高傑作と言っても間違いないと思う。  こういったシリーズ物の悪しき特徴として、最新作の設定において前作の苦労があっけなく水泡に帰してしまっているということが多々ある。今作にしても、前作で必死になって守り切ったものが、すでに喪失してしまっているというくだりがある。 それに対しては大いに難癖を付けたかったところだったが、今作はエピローグで見事に消化してくれている。  そのこともあり、ラストのシークエンスがより爽快感に溢れ、50歳を過ぎようがなんだろうが、トム・クルーズの更なる続編に期待は膨らんだ。  とにかく映画の中のあらゆることが超格好良くて面白い。それだけの映画だ。
[映画館(字幕)] 9点(2011-12-25 23:59:09)(良:2票)
0160.62%
1592.28%
2762.93%
31415.44%
41716.59%
52439.37%
637214.35%
752720.32%
852220.13%
929611.42%
101706.56%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS