921. ニワトリはハダシだ
最初は在日朝鮮人や知的障害者というテーマから堅い映画なのではと思っていたが、冒頭の養護学校の先生の「オハヨ・オハヨ、スズメもチュンチュン・・・」という歌と、その後のサムと父親とのやりとりの中で「けっこう毛だらけネコ灰だらけ・・・」という「男はつらいよ」シリーズの寅さんが使う文句が出てきてこの二つで笑ってしまい、そこから一気に引き込まれた。とにかく養護学校の直子先生の元気なハッスルぶりや、原田芳雄と倍賞美津子演じるサムの両親、塩見三省のキレまくる刑事など出てくる登場人物たちがどれもこれも熱く魅力的。(中でも直子先生のはつらつとしたキャラクターは気に入った。)晩年を迎えて枯れているのではと心配だった森崎東監督の演出もパワフルでとても撮影当時70代後半だったとは思えないほどの勢いと若々しさがあり、前回見た森崎作品がデビュー作の「喜劇 女は度胸」だったのだが、その頃と比べても全く演出力が衰えていないと感じた。確かに映画としては後半がムチャクチャな印象があるし、変わったバカな映画かも知れないが、人情喜劇としての楽しさはじゅうぶんだし、それでいながら堅苦しくなりがちなテーマもさらっと描いていて、その中に森崎監督の社会に対する怒りも感じ取れ、これが森崎東という監督の本質なのだなと思う。今どきの日本映画には珍しい社会派喜劇の傑作。 [DVD(邦画)] 8点(2008-10-07 19:18:12)(良:1票) |
922. 影の車
野村芳太郎監督による松本清張ものの一編。後の同じコンビによる「鬼畜」と同じように子供が話に絡んでいる映画だが、本作では「鬼畜」とは違い、愛人の幼い息子が自分に殺意を抱いているのではと思い込む男の心理が描かれていて「鬼畜」とは全く違う怖さがあってなかなか面白かった。特にガスの充満した家の中に閉じ込められるシーンはかなり怖い。脚本を書いているのが橋本忍で主人公を演じるのが加藤剛(好演。)なこともあってか、破滅していく主人公やタイトルバックとラストの回想の海のシーンはどことなく「砂の器」を思わせている。愛人を演じる岩下志麻は一人の男を愛する情念の女を熱演していてとても大人っぽく、反面普通の母親役だが既に「鬼畜」で演じた緒形拳の妻役の面影があり、少し怖かった。それでもこの映画では子役の無表情な演技がいちばん怖い。そういえば「鬼畜」では岩下志麻と小川真由美が本作と逆の立場の役柄で共演していたが、本作を意識してのキャスティングだったのだろうかとつい考えてしまう。 [DVD(邦画)] 7点(2008-09-29 19:24:39) |
923. バッテリー
少年野球を題材にした作品で、子役たちもいい(特に主人公の弟役の笑顔が最高。)のだが、もともと岡山に住んでいる設定の子をはじめとして方言がポジティブすぎで、中学生なのに一人称ワシだったり、なんか話し方が年寄り臭すぎでどうも若々しさというものが感じられず、また顧問の先生が生徒に話しかける際も方言であるなどということは絶対になくかなりの違和感を感じた。このおかげで(まあ、狙ったのかもしれないが。)相当に田舎臭い映画になってしまっているのが地元の人間としてひいてしまう。また、思ったとおりドラマが浅く、母親との関係などじっくりと描くべきところがあっさりとしていたり、その他いろんなエピソードを詰め込みすぎていて長い原作(未読)を無理矢理2時間におさめようとした感がある。終盤重体になった弟が瀕死の状態で兄に話しかけるシーンはいかにもここで泣けという感じで冷めてしまったし、ラストの母親の応援シーンは皆さん書かれているとおりやりすぎだと思う。見ていなかったが、これだと今年NHKで放送されていた連続ドラマの方がよさそうだ。 [DVD(邦画)] 3点(2008-09-27 12:56:19)(良:1票) |
924. 氾濫
別に悪くはない映画だが、増村保造監督の映画としては「巨人と玩具」のような圧倒的なテンポの良さが感じられず、「妻は告白する」や「清作の妻」のようなインパクトのある作品でもないのでなんだか普通すぎて物足りない。また若尾文子も可愛いのだが、「青空娘」や「妻は告白する」と比べてあまり魅力を感じられず正直言って残念。ただ、ドロドロした人間関係や男たちのダメさ、いい加減さを描いているところに若干の増村監督らしさを感じることはできるので増村作品としては発展途上の映画という感じもする。船越英二が沢村貞子に対して「確かに三度ほど女房を変えたけど、僕はその都度真剣だった。」とか言っててなんか怪しいと思ったらやっぱり女たらしな男の役。この俳優は「黒い十人の女」とかでもそうだけど、こういうダメな男の役とかやるとハマるなあ。 [DVD(邦画)] 6点(2008-09-22 19:25:18) |
925. 竜馬暗殺
坂本竜馬を描いた作品というと、まだ小学生だった15年くらい前にNHKで放送されていたアニメ「おーい!竜馬」の印象が未だに強く、竜馬本人のイメージも爽やかな青年という印象だが、そのイメージを覆すようにこの映画の竜馬はアブラギッシュで汗臭く、濃いキャラクターに描かれていてなおかつ演じる原田芳雄がそのキャラクターに非常にマッチしていて新鮮に感じた。相棒・中岡慎太郎を演じるのが石橋蓮司。この16年後に作られた同じ黒木和雄監督の「浪人街」を先に見ているものだからまたこの二人の濃いキャラクターが黒木監督の映画で見られたのが良かった。(時系列にいくと本作が先なのでこういう書き方は少し変なのだが。)70年代の映画にもかかわらず、それ以前に作られた映画のようなざらついた白黒の映像、そして時代劇にもかかわらず、70年代の時代の雰囲気が伝わってくるような演出も効果的だった。ラストの「ええじゃないか」の踊りの中に消えていく中川梨絵が印象的で見終わったあと余韻が残るのもいいし、テーマ音楽も良かった。しかし、少し時間が長く感じたのがちょっと残念だった。まあ、見ている時の自分が少し疲れていたせいもあったかもしれないが。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-09-20 17:07:41)(良:1票) |
926. 世界大戦争
《ネタバレ》 小学生の頃に読んでいた東宝特撮映画を紹介した本の中で紹介されていたのでタイトルだけはその頃から知っていたが、実際に見るのは今回が初めて。見る前は軽い娯楽作という印象が強かったのに大シリアスな映画だったのは驚き。フランキー堺は喜劇映画以外ではあまり馴染みがなかったが、喜劇とは違うとてもいい演技を見せていて素晴らしい。前半の人々の慎ましい日常生活の描写が丁寧である分、主人公が物干しで夕日に向かって家族の未来を思いながら叫ぶシーン、星由里子と宝田明の「コウフクダッタネ」「アリガトウ」の無線でのやりとり、パニックの中、娘の所に駆けつけようとする母親(中北千枝子)の姿、町中のみんなが逃げ去った後、ささやかに食卓を囲む主人公一家の姿など後半は涙が止まらないシーンばかりで今これを書いていても思わず泣きそうだ。子供たちが歌うお正月の歌も物悲しい歌として見終わったあといつまでも耳に残る。(たぶんしばらくは聴く度にこの映画思い出すだろうなあ。)ラストの笠智衆のセリフも言っているのが笠智衆なだけに説得力があり、よけいに胸をうってまた泣けてくる。21世紀の今見るとラストのテロップに異様なリアリティーを感じずにはいられない。この映画は一応はSFという形をとってはいるが、これ以上の反戦・反核映画は今後出ないのではではないかと思う。もちろん文句なしの満点をつけたい。 [DVD(邦画)] 10点(2008-09-18 17:37:20)(良:1票) |
927. 心中天網島
《ネタバレ》 黒子を使った歌舞伎のような演出や、篠田桃紅の描いた絵をはじめとした独創的な美術セット、白黒映像の美しさなど印象に残るし、ファーストシーンが電話でこの映画の打ち合わせをする監督(篠田正浩)と脚本家(富岡多恵子)のやりとりというのも面白い。だがあまりにシュールすぎて展開についていきづらく、あまり入り込めずに終わってしまった。しかし、岩下志麻は美しかったし、音楽担当の武満徹が脚本にも参加しているのはすごいと思った。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-09-14 02:42:26) |
928. 紅顔の密使
加藤泰監督による娯楽時代劇。冒頭部分とクライマックスの合戦シーンの一部において画面を真っ赤に染めた映像が印象的だった。娯楽作としては退屈なシーンもなく面白かったものの、ただ話としては脚本にひねりがなく少し物足りない気がする。主演の橋蔵がこの作品でも実にカッコよく、相手役の女優もなかなかの美人だったのは良かった。悪役の親玉を演じる吉田義夫は「男はつらいよ」シリーズの冒頭の寅さんの夢シーンに出てくる悪役の印象が強いのでちょっとかぶって見える。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-09-12 02:40:29) |
929. 月形半平太(1961)
「月さま、雨が・・・。」「春雨じゃ、濡れて行こう。」というやりとりが有名な「月形半平太」の何度目かの映画化作品だけど、実際見てみるのは今回の本作が初めて。東映時代劇を見るのはかなり久しぶりだったが、半平太を演じる主演の橋蔵が実に魅力的でかっこよく、殺陣も華麗で美しく、役柄にもピッタリとはまっている。しかし、ストーリーがあまり面白くなく思ったよりはちょっと退屈してしまったのが残念。マキノ雅弘監督の映画はついこの間見た「決闘高田の馬場」に続いて2本目だったのだが、あの映画に比べるとかなりの物足りなさが残る。とはいえクライマックスの寺でのチャンバラシーンやそこでの橋蔵のそれまでとは違う鬼気迫るリアルな演技はとても良かった。以前、「この首一万石」を見た時も思ったが、橋蔵はこういうリアルな演技もうまいと思う。(あまり彼の出演作を見ているわけではないのだが。)それから、丘さとみらが演じる半平太を慕う女たちの使う京言葉がなんとも品があり美しく印象的だった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-09-10 18:32:54) |
930. 釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束
シリーズ第20作。わが地元である岡山でロケをしたということで公開時地元テレビのローカル番組でやたらと宣伝されてた。だからというわけでもないが、今回はテレビ放送を待たずしてDVDでの鑑賞。前作がかなりつまらなかったので全くと言っていいほど期待していなかったが、ここ最近あまり見られなかった浜ちゃんとスーさんの絡みが今回は多く、またここ最近の定番であった男女ゲスト二人の恋愛劇も今回はいつもより控えめだったので久しぶりにこのシリーズらしい作品になっていて(前作では守られていなかったシリーズのいわゆる「お約束」も今回はきちんとあって○。)楽しめた。浜ちゃんが自分の会社が進める建設事業の反対運動に加わるという話は初期の作品でもあった気がするけどまあいいか。ワンシーンだけ出てきてセリフも一言だけの小沢昭一がさすがに若い頃に出演していた川島雄三監督作ほどではないもののそれでもやっぱりどこか怪しさのただようインパクトのある役柄ですごく印象的。しかし同時にやはりどこか川島作品に出ていた当時と比べて物足りなさも感じる。ところで、星由里子が岡山弁しゃべってると10年ほど前のNHK朝ドラ「あぐり」での野村萬斎の母親役を思い浮かべてしまう。そういえばあのドラマ、高嶋政伸も出てたなあ。 [DVD(邦画)] 6点(2008-09-09 11:52:22)(良:1票) |
931. 惑星大戦争
《ネタバレ》 興味本位で見てみたが、予想をはるかに上回るつまらなさで、90分が異様に長く感じられるすごく退屈な映画だった。テーマ音楽のダサさもさることながら脱力感ありすぎのだるい展開は見ていて疲れる。出演者の演技も緊迫感がまるでなく、池部良や大滝秀治にいたっては演技は安心して見られるのだが出てること自体に違和感を感じずにはおれないし、宮内洋は風見志郎にしか見えないし、沖雅也は「太陽にほえろ!」のスコッチ刑事の殉職シーン良かったなあと思いながら見てたらこれではえらいあっさりと死んでしまってほとんどみどころらしきシーンなかった。いかにもやっつけ仕事丸出しの適当な脚本に福田純監督の演出にもゴジラ映画以上の適当さを感じる。本当にこんなんで「スター・ウォーズ」に対抗しようと思ったのかと思うと悲しすぎるほどの超駄作。ここまで見たことを後悔するような映画を見たのは本当に久しぶりだ。本来なら痛恨の0点といきたいところだがチョイ役で出ていた平田昭彦に免じて辛うじて1点。 [DVD(邦画)] 1点(2008-09-03 02:53:50) |
932. 裸の島(1960)
《ネタバレ》 セリフらしいセリフはないが、効果音や風景としての人の声は多少は入っているため、完全なサイレント映画ではなく「沈黙劇」と言ったほうが正しいかもしれない。(どこがどう違うのか、と聞かれれば困ってしまうのだが。)孤島に暮らす一つの家族の生活を淡々と描いた内容なので確かに見様によってはかなり退屈な作品かもしれないが、とても見ごたえのある作品だと思った。この作品は新藤監督以下、スタッフ・キャスト十数人が島に泊まりこんで毎日、毎日この映画で描かれているような農作業を実際に主役二人にさせていたというのを昔聞いた事があるが、やはりそういう演出法がこの作品のリアルさを生んでおり、主人公夫婦を演じる乙羽信子と殿山泰司の演技も俳優の演技というよりは本当の農民という感じですごくリアルだった。ただそうは言っても二人ともほかの映画との掛け持ちもあったであろう中でこのリアルさを出せるのはすごいと思う。ラスト、死んでしまったわが子を思い泣く妻を夫が黙って見ているシーンはそんな二人の演技がもっとも光っていてすごく感動的だった。林光による音楽もとてもよく見終わっていつまでも耳に残る名曲だと思う。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-08-29 20:52:04)(良:1票) |
933. 血煙高田の馬場(1937)
《ネタバレ》 マキノ正博監督の映画を見るのは初めてだったのだが、ものすごく面白かった。特にラストのバンツマが高田馬場まで走りぬけるシーンから決闘にいたるまでのくだりの盛り上がり方が尋常ではないすごさ。まさにこれがマキノ正博かという感じでこのシーンには本当に圧倒されてしまった。後の堀部安兵衛である中山安兵衛を演じるバンツマが飲兵衛だが、やる時はやるという威勢のいいキャラクターを魅力たっぷりに演じていてとてもかっこいいし、先ほど書いた高田馬場へと走りぬけるシーンをはじめ、やはりサイレント時代からのスターだけあって動きがとくに素晴らしい。志村喬も黒澤映画などで見せる重厚な演技とは全く違うコミカルな演技を見せており、新鮮なおかつ楽しい。全体的に見ても明るくこれぞ娯楽映画と呼ぶに相応しい作品で、戦前の日本映画はあまり見ていないのだが、こんなに楽しい作品があったとは驚き。また、これは間違いなく日本の娯楽映画の最高傑作の一本に入る映画ではと思う。やっぱり10点以外ないだろう。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2008-08-28 13:44:11)(良:3票) |
934. 夜の流れ
川島雄三監督といえばエネルギッシュで勢いがよく、パワーにあふれている特異な映画が多いという印象が強い。一方、成瀬巳喜男監督といえば派手な動きはあまりない静かな映画が多いという印象。そんな作風の違う二人の共同監督作で、オムニバスではなく一本の長編映画である。果たしてどういう出来の映画なのかと思っていたが、司葉子、山田五十鈴親子と三橋達也の三角関係と元夫(北村和夫)にストーカーされる草笛光子など話の焦点がイマイチ定まっていない部分もあり、全体としては傑作ではないが、駄作でもないという感じ。二人の監督がそれぞれどのシーンを撮影したのかはよく分からないが、とにかく司葉子の魅力が際立っていて、今まであまり意識して司葉子を見たことがなかった(主演作見るのもこれが初めて。)のだが、こんなにきれいな女優だったとは今まで気がつかなかった。山田五十鈴が包丁を握り三橋達也に心中を迫るシーンはいかに山田五十鈴が三橋達也のことを愛しているかが伝わってきて印象に残る。やはりこの二人の監督の共通点は女性を描くのも女優を美しく撮るのもうまい監督であることだとあらためて感じた。司葉子の出演作(とくに主演作)ももっと見てみたいと思った。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-08-23 20:10:00) |
935. 容疑者 室井慎次
《ネタバレ》 「交渉人 真下正義」を見たのでこれも取り合えず見てみた。内容が内容だけに地味だが、脚本にオリジナリティーがほとんど感じられなかった「交渉人 真下正義」よりはいくらか面白かった。しかし、全体的な印象としては2時間ドラマの域を出ておらずイマイチ見終わって印象には残らないし、シリーズのサブ主人公である室井をメインの主人公にすえていてしかも室井が逮捕されるという内容なのに青島が和久(和久はどうやら「男はつらいよ」シリーズにおける笠智衆没後の御前様のような扱いになってるみたい。)と一緒にセリフで出てくるだけで姿を見せないのはどう考えても違和感がある。田中麗奈の出ている映画を「がんばっていきまっしょい」しか見たことなかったのだけど、こんなに演技下手だったっけ。灰島弁護士役の八嶋智人の演技ははっきり言ってウザイ。 ところで柳葉敏郎、よく見ると顔立ちが高橋悦史に似ている。 [DVD(邦画)] 5点(2008-08-23 14:49:54) |
936. あじさいの歌
裕次郎と芦川いづみのコンビ作はかなり久しぶりに見たが、やはり若い頃の裕次郎はアクション作品よりもこういう文芸作品で等身大の青年役のほうが個人的には好きだ。相手役の芦川いづみはこの映画でも抜群に可愛く、美しく、彼女を見ているだけでこちらの顔が自然とほころんできて、これだけでもこの映画を見てああ良かったなと思う。劇中、芦川いづみが裕次郎に自分は世間的に見て美しいのかとたずねるシーンでは思わず見ているこちらがうなずいてしまった。それくらい本当に可愛くて美人で素敵なのだ。そんな可愛くて美しい芦川いづみを何年も自宅の外に出さなかった東野英治郎がはっきり言ってすごく羨ましい。って何書いてんだ俺。脇役陣をみると轟夕起子や殿山泰司、北林谷栄なんか出てて「洲崎パラダイス 赤信号」や「わが町」を見てる身としてはつい川島雄三監督を思い浮かべてしまった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-08-23 11:26:21)(良:1票) |
937. キサラギ
まあ想像していたよりは面白かったし、ところどころに笑える箇所とかもあって楽しく見たんだが、正直そこまで絶賛されるほどの映画だとは思えなかった。あと、ちょっと騒ぎすぎで役者の芝居に落ちつきがないように感じられるのも個人的にはちょっとね。ユースケ・サンタマリアを俳優として「踊る大捜査線」関連以外ではじめて見た気がするが、オダ・ユージという役名で「踊る大捜査線」に出てきたようなセリフを言っているのが笑えた。でも、演技は真下をやっている時とそう変わらないなあ。 [地上波(邦画)] 6点(2008-08-22 02:26:15) |
938. 静かなる決闘
《ネタバレ》 西部劇の邦題のようなタイトルだが日本映画である。戦時中の野戦病院で患者に梅毒をうつされた若き医者を描いた黒澤明監督の初期作。冒頭の大雨の降らせ方や野戦病院の暑苦しい雰囲気などはいかにも黒澤監督らしい描写で、主人公の医者を演じる三船の「赤ひげ」とは違う渋みがかっていない若さや「酔いどれ天使」に続いて医者を演じる父親役の志村喬の味わいのある演技も良かった。が、三条美紀演じる主人公の婚約者が何も知らされないまま別れてしまうのはちょっとかわいそうすぎる気がする。黒澤監督は基本的に男性的な作風の監督であるが、女性の心情とかそういうものを描くのは苦手なことがはっきり分かってしまった感じがして、ここはもう少し女性の心理描写のうまい監督だったらとつい考えてしまった。でも、昔は黒澤作品大好きだっただけにやっぱりこれは自分の映画の好みの変化によって思うことかもしれない。ただ峯岸看護婦役の千石規子はすごく良かったので彼女に1点プラスの6点。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-08-21 23:42:38) |
939. 交渉人 真下正義
今頃になって初めて見たが、なんというか「機動警察パトレイバー」の映画1作目を見てれば見なくてもいいような内容で、カラスの出し方など押井守監督を意識した演出も多く、本広克行監督がいかに押井監督のファンかというのが伝わってくるただそれだけの映画だった。地下鉄暴走シーンが目玉なのかと思ったらそうでもなく、中途半端に笑いをとろうとするシーンが多くあったり、役者の芝居を含め全体的に緊張感がない。真下が犯人と交渉するシーンもなんか本当にこんな交渉術あるのといった感じでつい突っ込んでしまった。「踊る大捜査線」の映画シリーズは2作ともまあこんなもんだろうという感じで可もなく不可もなくという感想だったが、これはさすがに駄作だろう。あと西村雅彦がクラシックコンサートの指揮者というのは違和感ありすぎで笑った。全体的に見てこの後のテレビスペシャル「逃亡者 木島丈一郎」のほうが面白かった本作だが、国村準と石井正則の「大京映画」コンビ(2000年下半期朝ドラ「オードリー」より)のかけあいに懐かしさを感じたのでそこにプラス1点。金田龍之介を見ると、錦之介の「子連れ狼」で演じていた阿部頼母をつい思い浮かべてしまう。そりゃ、インパクトありすぎる役だったもんなあ。 [DVD(邦画)] 4点(2008-08-18 18:10:47) |
940. 東海道四谷怪談
四谷怪談を題材にした映画と言えば深作欣二監督の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」しか見たことがなく、ストーリーもあまりよく知らない状態だったので新鮮な気持ちで見ることが出来た。映画としては低予算なB級ホラー映画ではあるが、それでも歌舞伎のような音楽と演出がとても効果的に使われており、溝口健二監督の作品とためをはるぐらいの映像美にもあふれ、単なる怪談映画では収まりきらないような芸術的傑作になっていて正直驚いた。中川信夫監督の作品を見るのはこれが初めてだったのだが、これ一本でじゅうぶん巨匠のひとりだと感じた。出演している俳優陣も天知茂のニヒルな伊右衛門はハマリ役だし、名前は知らないがお岩役の女優もなかなか不気味で、とくに毒薬を飲んで顔が醜く変わった直後の演技はかなりインパクトがあり印象に残る。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で荻野目慶子が演じたお梅は高笑いだけが印象に残るだけの存在だったが、本作では若き池内淳子で清楚なお嬢様という感じで良かった。何はともあれ、いかにも日本的な怪談映画でありながらそれ以上に日本的な美しさ、様式美を感じさせてくれる、そんな映画だった。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-08-14 03:19:27)(良:1票) |