81. 水の中のナイフ
《ネタバレ》 妻を前にして内心張り合って火花を散らす夫と青年。何時爆発するのかハラハラさせられていたら、夫婦のほうが爆発するも腐れ縁を続けて行く。湖上のヨットにおける密室劇で描かれる人間模様は夫婦の倦怠のみならず体制対反体制をも浮き彫りにさせるもの。斬新なアングルの瑞々しい映像美、バックに流れるジャズ、妻が歌う歌にも心奪われます。29歳での長編処女作とは、監督の無尽蔵の才能に脱帽します。 [映画館(字幕)] 8点(2013-08-03 21:58:16) |
82. モラン神父
《ネタバレ》 モラン神父が語る神は興味深いものでした。それ以上に印象深かったのが思慕を超えて、ぬくもりを感じたい触れ合いたいせめて手を繋ぎたいという欲に、姿を見つめる事さえ叶わなくなる報いを与えられる切なさでした。「来世で会おう」泣ける言葉です。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-02 01:09:32) |
83. 日本侠客伝 関東篇
《ネタバレ》 水産局長サマと結託して横車を押しまくる悪方一味と江戸一の面々の一進一退の攻防から血沸き肉躍る大乱闘へ至る展開は、豪華俳優陣から発せられる魚河岸の気風と相まって画面に釘付けでした。「堅気さんの仕事場血で汚してしまって・・ヤクザって奴は・・・」興奮を醒ましてくれる鶴田浩二の渋さに目が眩み身悶えしちゃいました。 [DVD(邦画)] 8点(2012-10-07 13:01:55) |
84. 華麗なる賭け
生涯愛に溺れる事はない男、虚無の中で生きる男。マックィーンの一挙手一投足に身悶えするひと時でありました。彼以外でこの男を演じられる者はおりません。 [DVD(字幕)] 8点(2011-09-02 23:48:55) |
85. さらば友よ
物語の「起」の拙さを忘れさせられる「承」「転」「結」が素晴らしい。オーラ全開の両優と、彼らの友愛模様を引き立たせた刑事役のベルナール・フレッソン。三者の心模様に痺れっぱなしであったところにあの結末。掛け値なしの名シーン、映画史に残るラストショットでありました。 [DVD(字幕)] 8点(2011-07-01 19:26:46) |
86. アパートの鍵貸します
安物の人物が織り成す安物の事の成り行き。しかし、ジャック・レモンが演ずる、譲れない一線は何があっても譲らないバドの姿勢と、台詞の一言一句、仕草の一つ一つ全てに心血を注ぎ込む監督の姿勢が本作の輝きを永遠のものとしているのでしょう。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-12-08 17:05:18) |
87. 怪談(1964)
色彩が言葉に表し難い素晴らしさであり、容赦ない厳しさと幻想が混ざり合った光景が、触感にまで迫ってきます。そして、登場するそれぞれが抱く無念の計り知れない深さも胸に押し寄せてきました。スタッフが作り上げた極上の舞台で豪華役者陣が入魂の演技を見せる。相乗効果が傑作を生み出しており、映画という文化の良さを実感させられる作品です。肩透かしを受けた四話目が割愛されていれば満点でした。 [映画館(邦画)] 8点(2009-09-15 00:12:48) |
88. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 本作をたまたまテレビ鑑賞したことがきっかけで映画の世界に引き入れられ、アラン・ドロンに中学生になるまで夢中になりました。約40年を経ての鑑賞です。当時は理解できなかった「太陽がいっぱいだ」という一言から満ち足りた表情で電話の呼び出しに向かうラストシーン。夢と命の終焉を告げる音楽はやはり切ない響きがありますが、「願いが成就した時が終わりであること」の幸福さを感じました。陽の光を浴びたいという狂おしい程の一念を青い瞳に宿したアラン・ドロンは今観ても一世一代の名演技でした。 [DVD(字幕)] 8点(2009-05-10 23:57:07) |
89. 赤い殺意(1964)
《ネタバレ》 初めて観ました。貞子、その亭主、貞子にまとわりつく男、亭主の愛人、それぞれ個性が際立った4人が織り成す人間模様の生々しさは、手に汗が滲むものでじわりじわりと画面に引きずり込まれてゆきました。従順で愚鈍な貞子は哀れみを誘いますが、なかなかどうして、打たれ強く生きる女性だったのです。依存するだけの男と中途半端に利口な愛人が共に自滅してしまったのとは対照的です。写真を見せられてもシラを切り通す貞子の姿は圧巻でした。誰が誰を手にかけるのか?と数多の想像が空振りしてしまった結末は、妻を露骨に使用人扱いする嫌らしい亭主の立場が将来は逆転するであろう事が想像されるもので、私の考えは浅いと思わされるものでした。 [映画館(邦画)] 8点(2008-11-02 20:26:20) |
90. 斬る(1962)
《ネタバレ》 冒頭のただならぬシーンから一気に惹きこまれ最後まで画面に釘付けとなりました。実の両親、旅で出会った女性の非情な最期に潔く臨む姿に心打たれてしまいます。出生の秘密を知り、慈愛に満ちた養父の仇を斬った時点から信吾の最期が予感され、養父と同じく慈愛に満ちた大目付が謀に倒れる一連のシーンでのウグイスの鳴き声にいよいよかと覚悟してしまいました。信吾が懸命に大目付を探す城内の無人で異様な静けさにこの上ない非情さを感じました。「わが剣を破る者があれば、剣とともにわたくしも滅びたい」の願いが叶わぬとも潔く果てた姿に感服しました。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-22 00:04:59) |
91. シンシナティ・キッド
エドワード・G・ロビンソン目当てでの初の鑑賞でしたが充分に満足できました。若き日のロビンソンが重なり合う、度胸満点で向こう見ず、野心に満ちたキッドを演ずるマックィーンに相対した姿に、歳を取ってしまったのではなく、歳を重ねた者が持つ凄みを見ました。大勝負の駆け引きは無論のこと、男と女の駆け引きも見応えがありました。そして、舞台となったニューオーリンズ、惹かれるものがありました。一度行ってみたいです。 [DVD(字幕)] 8点(2007-05-31 16:13:07) |
92. 穴(1960)
《ネタバレ》 無実の罪でなく、刑務所内で虐待された訳でもなく、犯した罪を償う責任を果たす事から逃れたいという身勝手な理由で練られた脱獄計画。最初は、あの手この手で知恵を絞って成功にこぎ着けようとするも結局は失敗、その原因は何か?の興味津々で観ていました。五人の知恵とチームワーク、特に砂時計を作る件には唸らされましたし、頭だけでなく力ずくでひたすらに穴をあけ続ける姿に成功させるという強い意志を感じました。あの異常な程の音は彼らの意志を表していました。ガスパールの描かれ方が絶妙で、裏切る、裏切らない、どちらにもとれて、もしかしたら成功するのではと次第に手に汗握って観ていました。鏡に映った光景は思わずアッと口走ってしまった強烈さでした。裏切り行為は情けないといえばそうですが、ガスパールと寝起きを共にしながら察知できなかった己の不明さを棚に上げて、目くそが鼻くそを笑うように感じました。署長もそう思っているのではないでしょうか、彼らより何枚も上手だったようで、やはり最後の一歩を踏むことは難しいようでしたね。 8点(2004-10-20 20:55:26) |
93. ローズマリーの赤ちゃん
《ネタバレ》 ポランスキー監督ならではの上質なサスペンス。とりわけミア・ファローが素晴らしかった。妊娠を喜ぶみずみずしい笑顔から不安と皆に対する不信でどんどんやつれていく姿は見ていてゾッとした。悪魔に魂を売り渡した夫(しかも己の出世の為)の顔に唾をはきかけ、悪魔の我が子をいとおしく見守り、育てようと決意する姿に強烈な母性を感じた。 8点(2003-12-26 16:12:05) |
94. オーシャンと十一人の仲間
決行までのテンポの悪さにダレる。アッサリとした決行模様に何一つ盛り上がれず。 そんな時でのジョージ・ラフトご登場に(嬉嬉嬉)1シーンのみではありますが、流石にホンモノの静かな迫力がありました。 そこから結末まで別のスタッフによる脚本演出かのようで結構ワクワクさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2024-03-27 18:39:04) |
95. ある戦慄
《ネタバレ》 マーティン・シーンのデビュー作にしてそのチンピラ胸糞具合はなかなかのものでありました。 乗客に順番に絡むネチネチぶりと、各人の触れられたくないものがあぶり出される姿に胃が痛くなりました。 幼女に迫るところで「もう観てられん!」リモコンを手にした途端の展開に溜息が。 私がそこに居たら・・・・ 奴等に一言も言えなかったでしょう(恥) ただ、助けてくれた人への感謝と怪我の心配はしてたでしょう。それすら出来ない皆にドン引きです。 あれだけの騒ぎの中最後まで寝てた酔っ払いは、何かを象徴しているのか いろいろ考えさせられる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2024-03-19 01:28:46)(良:1票) |
96. ピンクの豹
シリーズ第1作。デヴィッド・ニーヴンとクラウディア・カルディナーレの異色な組み合わせ。滲み出る上品さはお二人ならではですね。ロバート・ワグナー、キャプシーヌも洗練されています。そしてそしてのピーター・セラーズ、異質な存在感ですが流石に大人しめ。作品全体も大人しめで物足り無さがありました。 オープニングの音楽とアニメーション、リアルタイムで鑑賞された方には衝撃だったのでは。作曲者・製作者共に天才です。+2点 [インターネット(字幕)] 7点(2024-03-18 01:01:37)(良:1票) |
97. ナポリ湾
予備知識無く、クラーク・ゲイブル、ソフィア・ローレン共演にケープバッファロー vs ライオンが思い浮かび「アジャジャ~」 何時も辟易させられるギャアギャア&ドヤ顔が封印されたローレン(初々しくて美脚にウットリ)を受け止めるオレ様具合が無いナイスミドルなゲイブルのロマンスは惹かれるものがありました。子役の男の子、ヴィットリオ・デ・シーカの芸達者ぶりも作品にかみ合っています。 兼高かおる世界の旅を見ているかのようなナポリ湾と人々の描写も素敵。 イタリア人の対米感が窺えるシーンにクスッとさせられ。 心配が杞憂に終わった小粋な作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2024-02-19 13:09:45) |
98. 36時間(1965)
《ネタバレ》 ノルマンディー上陸作戦の異色作。冷静に考えれば結構に無理筋であっても興味津々。パイクから答を引き出せるのか、パイクはどうやって謀られた事に気づくのか。理詰めな展開に更に惹き込まれ。毎度お馴染み敵役ゲシュタポのシャックは憎たらしさMAXで作品のアクセントになっていました。軍医の最期と二人の逃走劇がアッサリしていたのが物足りないところでしたが、大いに楽しめた掘出物の一品です。 [DVD(字幕)] 7点(2023-08-29 23:40:39) |
99. シェナンドー河
南北戦争時、奴隷無しで広大な牧場を6人の息子と1人の娘と長男の嫁とで営むチャーリー・アンダーソンは南軍に肩入れする義理は無いと兵役拒否を貫く。子供達全員が敬意を持って接する父親は、ペラペラ能書き垂れるだけの人物で無く、喜怒哀楽一言一句に聴き入りました。同じ57歳でも「スタンピード」と違って魅力溢れるジェームズ・スチュワート演ずる強い父親像に釘付け。とりわけ絞め殺そうとしたのを思い留まるシーンに泣かされました。長男夫婦の災難が唐突だったのが惜しかったかと思うところです。 南北戦争を背景とした重厚な家族ドラマを堪能しました。 [DVD(字幕)] 7点(2023-08-26 18:52:33) |
100. 冒険者たち(1967)
《ネタバレ》 過去に観ていますが内容は忘れています。 レティシア退場がピークでその後は盛り下がる一方。 悪玉の存在と雑な対決模様を眺めていたところでのアラン・ドロンの最期の一言に胸が締め付けられる事に。流石の千両役者でありました。音楽が後押しするほろ苦い三角関係青春ものの名作です。 [DVD(字幕)] 7点(2023-08-13 10:04:05) |