981. セブンス・コンチネント
《ネタバレ》 これはデビュー作になるのかな?ハネケの作品の中では一番面白かったかも。面白いという表現が極めて不似合いな作品ではありましたが。身の回りの何もかもを捨て去って心中した家族、という実際にあった事件を描いてはいるが、なぜ心中に至るのかその原因は描かれない。その原因を誰も知らないから。知っているのは何もかも捨て去ったという事実だけ。映画はその事実だけを映す。つまり捨てられ、壊された物を。あるいは捨てられ、壊される以前の物を。扉を開ける人は映されず、廻されるドアノブだけが映される。朝食をとる人は映されず、スプーンで運ばれるフレークが映される。生活はひたすらシステマチックに見え、画面は常に無機質で無感動を装う。しかしいよいよ最終局面というところで死のうとするその「必死さ」が痛々しく飛び込んでくる。意図されたものかは知らないが、機械的な生と人間的な死が豊かなコントラストをもって描かれている。痛々しく描写する、、、ということは、第七の大陸を目指したこの家族をこの映画は否定していると言えるのだと思う。救いを見出すとすればそれだけである。 [DVD(字幕)] 7点(2007-06-25 13:56:33)(良:1票) |
982. サンライズ
《ネタバレ》 生涯ナンバーワン映画がどんどん更新されてゆく。でももうこれ以上はないでしょう。凄すぎます、この映画! 無駄なく完璧に描写される導入部。表現主義映画の真骨頂といえる都会の女との密会シーン。そして『陽のあたる場所』をはるかに凌ぐボート上の恐怖演出。都会へと移動した後の細やかな夫婦の心理描写。その完璧なまでの光に号泣した教会のシーン。ここで終わっても10点である。しかしまだ中盤。酔っぱらった子豚騒動は『ベイブ』も真っ青。ミュージカル映画を彷彿させる華麗なダンスとそれを見る男と女の面白おかしいシーンはチャップリンの映画のよう。その後の嵐のシーンではその風の凄さを荒れ狂う遊園地の遊具で見せつけるのだが今のパニック映画も顔負け。そしてボートの転覆とココで活きて来た「藁の束」という小道具の使い方の巧さ。観客をどぎまぎさせる展開の妙。そしてそして、、あぁ、なんて美しいのだろう、この女優。特別に11点てのを作ってください、管理人様。 [映画館(字幕)] 10点(2007-06-22 15:38:53)(良:2票) |
983. めし
《ネタバレ》 「夫婦三部作」(『めし』『夫婦』『妻』)の中で夫婦の溝が最も浅い。どの夫婦にもあるだろう表には出ない些細な不満。そんなどこにでもあるような話に魅入らせてしまう成瀬はやっぱり凄い。なにげない会話が画面に映されたときの人の動き、目の動きが、なんでもないシーンをとんでもないシーンにしてみせる。女だから、妻だから、当たり前のようにこなさなければならないこと、我慢しなければいけないことがある。男にだってある。それをちゃんと見ていてくれる人がいなければストレスになるのは同じ。当たり前のことを当たり前にこなす毎日の疲れ、その疲れを癒してくれる言葉もなし、そのうえ自由気ままな姪っ子に対する嫉妬、、、。居心地の良い東京へ逃げ帰る。ここで登場する杉村春子と杉葉子がまたいい。何もかも解かっている母に甘える。夫の仕事を手伝いながら活き活きと主婦をこなす妹を見る。またまた登場の姪っ子に、同じように現状から逃げているだけの自分を見る。そこに夫が迎えにくる。「迎えに来る」という行動をして言葉以上のものを伝える夫。最後のナレーションはたしかにこの時代特有の価値観なのかもしれないが、夫婦の物語は普遍に満ちていると思うし、なによりも画面は今観ても新鮮で上質なのである。 [映画館(邦画)] 8点(2007-06-21 12:57:48) |
984. お茶漬の味
《ネタバレ》 夫婦の倦怠をコミカルに描いてはいるけども(小津作品独特の短い言葉の応酬が実に作風にマッチしている)、中身はかなりシビア。鈍感だと思われた夫は実は何もかも知っていてあえて何も言わない。心が広いと感じる方が多いだろうけど、諍いが面倒くさいだけ。無関心に近い。妻にとっては鈍感なほうがまだ救われる。もうどうにもならないところまでいったかと思ったら、あることをきっかけに仲直り。「夫婦はお茶漬の味」という夫にとっての理想が傍目には実現した瞬間。妻が「ごめんなさい」。夫が「わかればいいんだよ」。妻が一方的に歩み寄ったにすぎない。この時代、離婚による損害は女のほうが大きいのだ。かといってそれだけで仲直りをしたと言っているわけではない。離れて気づくことがあったのかもしれないし、仲良くしたほうが楽だと思ったのかもしれないし、とにかくこんなことの繰り返しが夫婦なのだ。とこの映画は言っている。見合いを否定し恋愛結婚まっしぐらの様相を見せる姪っ子もまた同じようなゴタゴタを見せてくれる、そんな未来像を予感させるシーンで締めているのも巧い。 [DVD(邦画)] 7点(2007-06-20 14:25:05)(良:2票) |
985. イタリア旅行
《ネタバレ》 ヌーヴェル・ヴァーグに影響を与えたと言われているらしいが、先に戦争を描いた3作品を観た後では、倦怠期の夫婦のドライブという地味な流れは物語上の抑揚が当然なくかなり退屈に感じた。車から見える風景や訪れる博物館や遺跡がバーグマンの心情を映し出しているのだが、バーグマンの独り言や表情がそのことを補填していて解かりやす過ぎるのも不満。それでも『ストロンボリ/神の土地』のように原因が描かれているわけでもない、ただひたすらヒビの入った夫婦関係を映しているだけなのに映画として成り立っているというのが凄い。そして修復不可能に見えた夫婦の絆の復活だけが実にドラマチックで感動した。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-06-19 10:47:06) |
986. スミス夫妻
ヒッチコックには珍しいロマンティックコメディということらしいが、数々のサスペンス映画の中でスクリューボールコメディを披露していたりとユーモアのセンスはもともとお墨付き、しかも観客へのサービス精神が極めて旺盛な監督ですから別に驚くこともない。この手のコメディの中で特別輝いているとも思えないのだが、開始早々からなぜか全くしゃべらない男女が映されるというサスペンスが発生していたり、ドタバタの原因が役所の手違いなどといういかにもヒッチコックのサスペンス映画にありそうなものだったりと、随所にヒッチコック風味が散りばめられていて数多あるロマコメとはまた違った楽しみ方が出来る作品ともいえる。中盤以降の妻は本当に夫から心が離れている風にも見えて、それでも夫はどこか悠々としているところに違和感を持ってしまうのだが、まあ、妻のことをよく知っているということなんですかね。 [DVD(字幕)] 6点(2007-06-18 14:22:58) |
987. LOFT ロフト(2005)
美しい、ただただ美しい。ほかに言葉が見当たらない。カメラがほんのちょっと動くだけでそれまで見えなかったものが見える。こんなの黒沢清は他の作品でもやってる。でもこの作品のそれは、本当に見えるはずのないものを映してしまったような錯覚を伴うほどに完璧。屋内はいつも暗い。しかしこんなにもはっきりとした「美」がこの暗い画面に残せるのかとひたすら感心。ただただ美しい画面を凝視する。けして目は疲れない。飽きることもない。たぶんこれが「映画」だから。 [DVD(邦画)] 9点(2007-06-15 11:35:43) |
988. 蛇の道(1998)
塾?の先生である哀川翔がある生徒の答に対して「そんなことしたら空間が裏返って時間が逆に流れることになる」と言う。また奇妙な計算式を書くなかで「デュアリティを組み合わせて・・・」と言う。教室には花束があった。デュアリティ=二重性。生者と死者。教室にいた者たちは家族の誰かを亡くした者たちか、あるいは亡くなった本人たち?ラストシーンの香川照之の前に突然フッと現れた哀川と女の子を見てそう思った。どちらにしても哀川が非常に危険な人物であることは間違いなく、まるでゲームのように人がどんどん殺されてゆく様は背筋が寒くなる。ゲームのようにと書いたが、哀川は全ての主導権を握っているだけでけして楽しんでいるわけではなく、ただ無感情に全てをコントロールするだけ。まるで人間ではない何か。『地獄の警備員』の大男が「暴力」そのものだったように、哀川は「悪意」、、いや「復讐」そのものか。 死者はここではないどこかでは生者なのか。殺された娘はモニターの中で永遠に生きている。死者と映画の関係は、その後『蜘蛛の瞳』そして『回路』へと繋がってゆく。 [ビデオ(邦画)] 8点(2007-06-14 18:52:06) |
989. 地獄の警備員
これって『エイリアン』じゃん、設定だけは。もちろんSFではありませんが。殺戮の理由が語られないことが不評を買っているようですが、理由が語られないからこそ終始ホラー的恐怖感が持続しているのだと思う。ストーリーはモンスターパニックに沿っているけども、相手は人間でしかも殺人の動機が不明ってのが襲われる側にとっての現実的な恐怖の最たるものを導き、殺す理由が語られないことで警備員をひたすら暴力そのものとして描くことに成功している。『ドレミファ娘の血が騒ぐ』で「何故?と問うてはいけない」とあったがこの作品では「それを知るには勇気がいるぞ」と牽制する。意味を求めてはいけない。殺人者は人を殺す。意味は意味でしかなく、目で見えるものでもなく、つまり映画ではない。ここでもゴダールの遺伝子が蠢いている。 [映画館(邦画)] 7点(2007-06-13 10:33:42)(良:1票) |
990. ドレミファ娘の血は騒ぐ
何故「。」とか「、」を言葉にするのか?何故ブラームスなのか?何故戦場と化すのか?意味があるのか無いのか解からんが変態教授曰く「何故?と問うてはいけない」らしい。意味を求めてはいけない。しかしどの描写も意味ありげなもんだからもう一度観たいという欲求に駆られる。まあでも、解からなくたっていい。オープニングの洞口依子のアップと語り、そしてエンディングの洞口依子の歌がめちゃくちゃいいんだもん。黒沢清と洞口依子の出会い、それだけで価値がある。黒沢映画に頻繁に登場するアキ子という名の女と吉岡という名の男。この作品の吉岡はサイテー野郎だったのだが、それ以前にキャラクターに古さを感じずにはおれず、そこんところが残念。 [映画館(邦画)] 6点(2007-06-12 17:50:09) |
991. 神田川淫乱戦争
浪人生の部屋は「文字」が張り巡らされたり、他の映画のタイトルが出てきたり、セックスシーンにジャンプカットがあったりと「ゴダールの洗礼を受けました」と臆面も無く宣言している映画ではあるけれども、その点に関してはだからどうなのよ、とも思ってしまう。実験にしては斬新さが無いし、面白いとも思えない。というかワクワクとかドキドキがない。ポルノとコメディとゴダールが絡み合った映画なんだけど、一番肝心な黒沢清がいないからだと思う。それでも全然ダメってこともなく、なぜ浪人生を救出しに行くのかを女二人の「これはいかん」「実にいかん」という言葉だけで納得させてしまう展開はかなりいい。笑ってしまった。笑うといえば、神田川での女同士の格闘の末の流されてゆくお母ちゃんも笑った。劇場用映画デビュー作にしてこの破綻ぶりというのが黒沢清らしいと言えばそう言えるかもしれない。 [映画館(邦画)] 5点(2007-06-11 13:35:54) |
992. 地獄門
《ネタバレ》 冒頭の「平氏の乱」は見応えあり。画面せましと大人数の人が走る走る。そして京マチ子の着物の「赤」、長谷川一夫の甲冑の「青」が映える映える。その後の展開は、人妻への恋に狂った男の見境無しの横行が描かれてゆくのだが、この長谷川一夫がなんとも憎憎しい。その憎憎しさがあまりに露骨でわかりやす過ぎる気がするが、恋に狂うってことはそういうことなのかもしれない。それでもテレビの時代劇なんかでよく見るオーバーリアクションがちょっと気になる。それにしても「夫の身代わりに殺されようとする妻」も「復讐しない夫」も今の日本じゃありえない。当時はこの日本的な思想も含めて海外で評価された向きもあったと思うが、今の現代劇でこの設定が一番似合わないのが日本のような気がする。日本も変わったってことです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-06-07 13:04:00) |
993. 恋の門
ぶっ飛んだマンガチックな世界観がいい。映画監督初挑戦の意気込みだとか硬さだとかも感じられず、いろんなことに手を出してしまうというありがちな失態も(豪華キャスト総出演意外は)見せず、その世界観を最後まで逸脱せずに作り上げている。こういうぶっ飛んだ世界観だとそこに登場する人物のキャラクターがいかにその世界観に馴染んでいるかが重要になってくるのだが・・・馴染みまくり! 酒井若菜って何者?可愛いしエロいし、しかもその可愛さとエロさをコメディエンヌとして発揮している。ほとんど彼女がこの映画を引っ張っていってる。彼女の個性が抜きん出ているため、松田龍平のダメぶりも活きている。べつにいなくてもいいキャラを豪華キャストが演じているが、そんなサービスは要らない。主演二人でじゅうぶん見せてくれてるんだから。 [DVD(邦画)] 6点(2007-06-06 11:03:46) |
994. 肉体の門(1988)
五社監督の映画って宮尾登美子ものあたりまではまだいいんだけど「極妻」ぐらいから独特の世界観があって、あと何十年かしたらもしかしたら評価されちゃったりするのかもしれないけど、どうにも苦手。女優の表情がいちいち大袈裟で、中でも主役のかたせ梨乃のオーバーアクトは我慢ならん。振り返りざまに平手打ちするシーンなんか、なんでわざわざあんな複雑な動きをさせるのかわからん。そもそもこの監督は女優を綺麗に撮ろうとは思っていなくて、反対に醜く醜く撮ろうとしてない?『吉原炎上』の西川峰子の成れの果ても凄かったけど、この作品の西川峰子の爆風に歪む顔も凄かった。 [DVD(邦画)] 3点(2007-06-05 11:41:11) |
995. 天国の門
冒頭の卒業式のシーンが要らないというご意見もわからなくはないが、たしか(正確には覚えてませんが)「移民を守ろう」という類の言葉が校長からあったような気がするのですが、その後の主人公の「信念」とさえいえる行動の原点がこのシーンにあるわけですからやっぱり端折れないでしょう。しかもオープニングの長回しで見せる時間の経過とともに色が移ろう美しい情景は作品中でも最も美しいシーンでもあり、これを端折るなんてことは誰にも出来ません。時代が変わって映し出される町並みがまた圧巻。駅ごと作ったという本物の町並みはお金をかけただけの満足感は十二分に達成されている。不評なのは物語に起伏がないからでしょうか。大規模な戦闘の後の急な収束はたしかにやっと訪れたクライマックスがいつのまにかうやむやになったという感じがします。この作品に関しては長いということがネックなのではなく、むしろもっと長くてもいいから物語としての見せ場が欲しかったような気がする。長尺の史劇にはそういうサービスも必要だと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2007-06-04 13:33:48)(良:1票) |
996. レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
低予算ゆえの創意工夫がなされた『エル・マリアッチ』と無茶苦茶な『デスペラード』の良いところを合わせたような第三弾は、一見無茶苦茶ながらも前作よりもはるかにスタイリッシュで、スッキリしている。前作でハリウッド初作品ゆえに他人に譲った「撮影」も「美術」も監督自らの手に取り戻したからなのか、前作のチグハグさも解消されている。だから同じ無茶苦茶でも無茶苦茶さが一種の味となっている。そして無茶苦茶さがバージョンアップされた最たる場面がジョニー・デップの終盤の顔!血の痕がデビルマンみたいで怖いんだけどかっこいい、痛々しいんだけどちょっと笑っちゃうというとんでもない姿にやられた。こんな衝撃的な姿が終盤にあるならもっと前半でも活躍してほしかったぞ。バンデラスは前作のほうがかっこよかったけど、カメラが追う登場人物の人数が増えてるからしょうがないか。 [DVD(字幕)] 6点(2007-06-01 17:58:19) |
997. バットマン・フォーエヴァー
ティム・バートンが監督した前2作と明らかに違うのが敵キャラの描き方。前作までの敵キャラは主役であるはずのバットマンと同じかそれ以上の扱いをもって描かれていた。しかしこの作品では敵キャラはあくまでヒーローに倒されるためだけに存在するものとしてしか描かない。そういう意味ではシリーズで初めてヒーローが主役となった作品。ただバットマン自体のキャラが暗くて主役を一人で張るだけの器量がないのでロビンに助けてもらったという感じ。バットマンも暗いだけじゃなくてもっと怖いイメージがあったんだけどなぁ。バートン版でせっかく作ったゴッサムシティの独特の世界観も、全体の色調だけを受け継ぎながらもどこかチープになっているのは、より原作アメコミに近づけているからなのでしょうか?読んだことないのでわかりませんが。 [DVD(字幕)] 3点(2007-05-31 15:51:05) |
998. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
戦闘機の空中戦にしてもライトサーベルでの戦いにしてもひたすらアトラクション的である。今あるアトラクションムービーの中でも突出している。そこに監督の意図しないものは表れない。監督の想像以上のものも想像以下のものも無く、シリーズの回が進むにつれてその傾向は強まりどんどん映画から離れていく。しかし多くのアトラクションムービーのように観客に媚びるということがない。ジョージ・ルーカスはアニメ作家でもない限り不可能な「監督の意図と寸分違わぬ完璧な映像」をひたすら目指しているのだ。『帝国の逆襲』以降はハリウッドを離れ組合も脱退し自らのスタジオで作っているのだが、それも前人未到の完璧さを追求しているからこそで、この大いなる挑戦には賛辞を送りたい。そしてその限りなく完璧に近づいた「スター・ウォーズ」の最終作をそれまでの「スター・ウォーズ」と共に支持したい。さらに、コレを先々行上映で観たのだがこの映画館が通路まで客を入れるという気の利いたことをしており、ベイダーのマスクやおもちゃのライトサーベル持参の子供たち、そして大人たちでいっぱいになった劇場という今ではすっかり味わえなくなったワクワク感をもたらすこのシリーズはやっぱり凄いのだ。1作目で見せたタトゥイーンから見える二つの太陽が映されたとき、「やっぱり終わるのか」と感慨深くなった。 [映画館(字幕)] 7点(2007-05-30 13:00:58)(良:1票) |
999. スパイダーマン3
初日の上映開始間際に滑り込んだせいで座った位置が悪かったせいもあるが、一番前の端っこで、画面狭しと飛び回るスパイディに目がついていけず、何が映されているのかさえもわからなかった。なのでソコは映画館のせいにしておきますが、前作の列車を使ったアクションのような独創性というものは無かったし、アメコミのヒーローが日常にいることの違和感を笑いに転化させた前作のユーモア(ピザ配達シーン)も今作にはなく、敵キャラも映像技術だけが前面に出ていて面白みに欠ける。路上で鋭い眼光で腰をふりふりする主人公は悪が内面を支配しようとしているというよりもアホが内面を支配しているんじゃないかと思うくらい滑稽。「許す」というテーマも同じテーマの『どろろ』におけるどろろや百鬼丸に課せられたものに比べれば「許す」ことを誰もが納得し得る理由が嫌というほど提示されており結局アメリカにおいて「許す」というのはそれ相応の理由が無ければなされないものなのかもしれないなどと思ったりもして、それだったら許してないじゃん、って思った。 [映画館(字幕)] 3点(2007-05-29 10:36:58)(笑:2票) |
1000. パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
《ネタバレ》 このシリーズはジャック・スパローというお茶目なキャラを作り出したことである程度の成功は確約されたといってもいいだろう。しかしその存在が当たり前になった続編になると新たな魅力的なキャラが必要となる。とくにその続編が全く別のお話であったり全く違うカラーを持っていたりということがない場合は。そして登場したのがチョウ・ユンファが扮するシンガポールの海賊なのだが、外見はかなり魅力的ではあったがキャラクターとしては実に弱い。というかキャラとして確立しておらず、どういう人間なのかがよくわからない。よってキーラ・ナイトレイとのやり取りで、あって当然の感動が無い。謎を残しながらここまで引っ張ってきたという人気シリーズならではの策略も、その答えに意外性は無く、それでも唯一の意外性を見つけるならキース・リチャーズの登場が最も衝撃的だったといえる。クライマックスはさすがハリウッドのメジャー作品。映像プロ集団がよってたかればこれぐらいは屁でもないのだろう。このクライマックスの中で見せる「戦いの中での挙式」が洒落てていい。こういうユーモアが全くくさくならずに出来てしまうのがハリウッドの力なんだと思う。ただ、怒涛のクライマックスまでは長い辻褄合わせに付き合わなければならない。 [映画館(字幕)] 5点(2007-05-28 16:16:45)(良:1票) |