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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1041.  地球が静止する日 《ネタバレ》 
序盤は最高。宇宙人の超越的な力と人類の反応をリアルに描き、知的ながらも見せ場としての面白さも十分。クラトゥの生体構造の考察等、科学的にそれらしく見せることを大事にしているのが好印象です。しかしキャシー・ベイツが現れると途端に話は失速します。国防長官としての対応にまるでリアリティがないのです。宇宙人との接触という歴史的事件に、なぜ合衆国の一閣僚が交渉を行っているのか。ファーストコンタクト時に人類では勝てない相手だとはっきりしたのに、なぜタカ派の姿勢を崩さないのか。そして、ヘレンの息子ジェイコブが話に加わることで、映画はさらに失速します。悪態たれるわ、やかましいわ、警察に通報するわのやりたい放題。こいつの為にヘリに乗ってた兵士が死んでるのに、一切反省なし。あれだけクラトゥに悪態つきながら、いざ自分の命を救われると「あんたいい人なんだね」ってたいがいになさい。そんなジェイコブと再会したヘレンの言葉が「ごめんね、私が悪かった」。親がちゃんと叱らないから、馬鹿ガキが調子乗るんだよ。本来、この墓地の場面が映画のキーだったはず。人類の英知と理性を象徴するヘレンと、人類の排他性と身勝手さを象徴するジェイコブ(子孫が偉大な民族になるとの神の約束を受けたヘブライ人の祖)が、血はつながらず人種が違っていても愛情で繋がっていること、生命を機械的なシステムとして捉えるクラトゥ達よりも深く豊かな生命倫理を人類が持っていること(父を生き返らせてくれと懇願するジェイコブと、それに当惑するクラトゥのやりとりに注目。科学者や政治家をやり込めていたクラトゥが、ここだけは子供相手にも関わらず会話に負けています)、成長によりジェイコブ(=人類の未熟な面)は変わっていくことなどをクラトゥは知り、人類抹殺の中止を決意する最重要シーンだったはずなのに、これが感情移入しがたくなっているのが本作の致命傷。ラストのクラトゥの自己犠牲(=イエスの贖罪)もまったく立たないまま話は終わってしまいます。実はハルマゲドン兵器だったというエヴァンゲリオン初号機状態のゴート(司令室とちょうど目が合う拘束室もまんまネルフ)や、文明を食い尽すナノロボット等、後半のアイデアもなかなかよかったのですが、ドラマ部分の失速によりせっかくの見せ場もインパクト半減。見るべき点は少なからずあるのに、大事な所でコケたのが残念です。
[映画館(吹替)] 7点(2008-12-27 01:14:40)(良:9票)
1042.  ノーカントリー 《ネタバレ》 
"No Country for Old Men"...「年寄りの住める国はなくなった」?世も末だとボヤくベル保安官は、極めつけの事件に遭遇していよいよ愛想尽かし、保安官を引退します。しかし本当に世の中は悪くなったのか?祖父の代に保安官補をやっていた老人は、自分の叔父が殺された時の話をします。1909年、強盗に家を襲われ家族の前で叔父は殺されました。また、ベルは昨日みた夢の話をします。登場するのは彼と彼の父親で、父は若くして死んだから息子の自分の方が老けていたと言います。つまりベルは父親よりも長生きしているのです。本当に社会は昔よりも悪くなったのか?今も酷いが昔だって酷かった。タイトルは「年寄りが懐かしむ古き良き社会などなかった」ということでしょうか。ではその社会の本質とは何か?それは殺し屋シガーが象徴する理不尽で絶対的な力。同じ標的を追う同業者、親切にしてくれた一般人、さらには雇い主まで殺してしまう彼の行動には理屈も合理性もありませんが、人の運命とはそういうもの。立派な人でも事故や病気で命を奪われるし、長生きする悪人もいる。運命の前で人の考える理屈やモラルなど取るに足らぬもので、その無目的さゆえ、それはコインの裏表のようにシンプルである。コイントスで自覚のないまま生きる道を得たおやじに、シガーは「この幸運を大事にしろ。みんなこれを分かっていない」と言います。運命とは予告もなくやってくるため、これを回避しても多くの人はその幸運に気付きません。しかし何十年も何事もなく生きていることが不運に捕まらなかった証なのだから、それを大事にしろとシガーは言うのです。そんなシガーに追われるモスは、幸運に対して無自覚な私達の代表。目撃者なしで大金を拾う幸運を一旦は掴むものの、その偶然性の分からないモスは現場に戻るミスを犯し、素性を知られてしまいます。また、シガーに追い付かれる寸前で発信器に気付き、待ち伏せする機会を得て襲撃から生き延びますが、またしても彼は幸運を認識できず、自分の力で切り抜けたと勘違いして対決姿勢を強め、それが自分だけでなく妻の命も奪う結果となります。一見頭の弱そうなモスの妻は、シガーと対峙した瞬間に運命を理解し、取り乱すことなくこれを受け入れました。シガーはその帰り道で交通事故に遭い、無敵の殺し屋は呆気なく重傷を負います。運命の前に人の能力など意味を持たないと言わんばかりに。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2008-12-21 00:48:57)(良:4票)
1043.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 
バイオレンスを自称する他のすべての作品に対して「あんたら、本当の暴力をわかってないな」と言えるほどの強烈なバイオレンス作品。これに比べれば、スカーフェイスやグッドフェローズすら甘く感じられます。直接的なバイオレンスシーンはサウナでの死闘のみなのですが、暴力的でギラギラとしたオーラを作品全体が放っており、100分間すべてがバイオレンスシーンと言える状態となっています。コッポラやマイケル・マンが美学をもって描く闇の組織像もここにはなく、平然とモラルを侵し、人の不幸の上で生活する理不尽な縦社会がこれでもかと映し出されます。家族を大事にし孫をかわいがる一方で、10代の少女たちを売春宿に閉じ込めるセミヨンの憎々しさといったらありませんが、これがヨーロッパや、もしかしたら日本でも現実に起こっていることなのですから恐ろしい。監督と脚本家にはマフィアを糾弾したいという意思もあったようですが、現実社会の問題がよく物語に昇華しており、製作者たちがアンナやニコライに託した怒りに私たちも自然と共感できる形となっています。カタギからヤクザの世界を垣間見るアンナが私たちの視点となりますが、彼女の行動原理や直面する事態への反応が非常に自然なので、話に違和感がありません。口数の少ないニコライの人柄を僅かな行動や言葉からきちんと描けているのも見事。キリルから強要されたSEXのあと、情けなさと絶望感から泣くこともできない売春婦の少女に「まだ死ぬなよ」と声をかけるくだりは、作品の世界や彼の人柄を端的に示していました。また、本作の特徴である過激な暴力描写も決して露悪的ではなく、重みと必然性と作り手の責任感が伝わってきます。監督の手腕は神業の域に達していて、オリバー・ストーンあたりだと3時間以上かけそうな情報量を100分程度で無理なく片づけています。物語の進行と登場人物の感情が必ず同時に描かれ一切のムダが省かれており、駆け足も間延びもなく観客のバイオリズムにピタリと一致した構成となっています。テーマから逆算して描くべきものとそうでないものの取捨選択も的確に為されており、例えばFSB絡みの展開はいくらでも膨らませそうなものの、テーマの上では重要でない為触れる程度となっています。この監督は変な映画ばかり作ってるイメージがありましたが、いざシンプルなものを作らせても並の監督ではマネできないレベルにするのですから大したものです。
[DVD(字幕)] 9点(2008-12-19 01:12:22)(良:1票)
1044.  ウォーリー 《ネタバレ》 
廃棄物の山となった惑星で時折吹き荒れる突風の危険に曝されながら残骸を拾って生活って、まんまカート・ラッセルの「ソルジャー」ではありませんか!ディズニーもカート・ラッセルのB級SFから映画を作る時代になったんですね!…というのは間違った見方だと思いますが、男子の好きなものにディズニー風の味付けをして新たな作品を生み出すピクサーの新作は相変わらずよく出来ています。SFやロボットへの愛情に溢れており、機械の細かいギミックの面白さや巨大宇宙船の仰々しさ、EVEの破壊レーザーなど押さえ所は外していません。惚れた女に逢いに宇宙船に乗り込むというエピソードⅣの物語を軸に、HAL9000のような赤いひとつ目コンピューターの反乱が絡む話自体に新しいものはないのですが、ピクサー印の徹底的に作り込まれた脚本によりこれら旧作の面白さがわかりやすい形で甦っています。そしてやっぱり凄いのが序盤の地球パートで、本当にセリフなしで物語をやってみせています。「ソルジャー」ではカート・ラッセルという生身の役者を使っても主人公の孤独を表現しきれなかったのに対し、本作はセリフのないロボットに性格を持たせ、観客に愛着を抱かせることに成功しているのです。思えば、擬人化されたキャラクターはこれまでのディズニー作品に大きな障害を与えてきました。キャラクターと人間をダイレクトに絡ませることができなかったのです。トイ・ストーリーでは「おもちゃは人間の前ではしゃべらない」という決まりを作り、カーズではすべてが車で構成された世界という荒業をもってキャラクターと人間社会に何が何でも壁を設けざるをえなかったのですが、本作ではついにその壁を破ったことでロボット達の物語と人類の物語の二層構造となり、単なるキャラクターの冒険物語を超え、人類の進化や文明とはといった大テーマまで含んだ作品となりました。地球を使い捨ててもまだ反省せず、宇宙でも便利さに甘えた結果歩くことも考えることも子育てすらもやめてしまった人類というヘビーなテーマを、ユーモアで包みながらもかなり真剣に扱っています。ロボット君の冒険物語だけならいつものよく出来たディズニー映画止まりでしたが、このパートのおかげで深い作品になったと思います。ラスト、WALL.Eが生き返ることは読めるので特に感動はしませんでしたが、ロボットと人類が協力して文明を築くエンドクレジットにはグっときました。
[映画館(吹替)] 8点(2008-12-19 00:41:00)(良:4票)
1045.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
映画は、時代背景により観客に馴染むかどうかは変わるし、ストーリーテリングの進歩によってかつては受け入れられていた題材が成立困難に陥ることもしばしば。日本映画界から怪獣映画が消滅したのもこの現象によるし(アバウトな設定が持ち堪えられなくなった)、ハリウッドが精出している往年SFのリメイクが解釈を大幅に変えねばならないのも、かつての姿のままでは観客に馴染まないため。ジャンルの最終作と見られる「バッド・ボーイズ2バッド」の不調等により現在絶滅危惧状態にある90年代ドンパチアクションも同様で、あのような荒唐無稽なアクションはもはやマトモには成立しない状況となっています。「ダイハード4.0」はブルース・ウィリスが出ているだけの別モノとなったし、「デジャヴ」のようにSFの域に達する作品まで登場する状態。そんな中、パロディという手法を巧く活用することで、ドンパチアクションを見事に復活させた本作は実にお見事。成立困難な部分は「これはコメディですから」と言ってうまく逃げつつ、90年代アクションの醍醐味をたっぷり味わわせるのです。見ている側までイラつかせる敵の存在、そりの合わなかったやつが思わぬ加勢となるカタルシス、そしてムチャクチャなんだけどかっこいい銃撃戦など、あの時代の燃える要素がテンコ盛り。広場での銃撃戦などはもう最高で、敵は全部年寄り、自転車から二丁拳銃を撃ってくるおばあちゃん、デスペラードばりに袖から拳銃が飛び出す神父さんなどバカバカしさの極致を行きつつも、アクションのツボは完璧に押さえていて笑いと興奮の嵐となります。落ち着いた前半も一気にペースを上げる後半とのコントラストの役割を果たしており、またここで蒔いておいた伏線が後半をさらに盛り上げているのですから、非常によく練られた構成だと言えます。ジャンルへの愛情を追いすぎて自家中毒に陥る監督も少なくない中、その愛情を万人受けするエンターテイメントへ昇華させた本作は非常に素晴らしいパロディの成功例と言えるでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2008-12-06 15:34:37)(良:4票)
1046.  ターミネーター 《ネタバレ》 
小学1年の時に日曜洋画劇場で見て以来、現在に至るまで私を映画にどっぷりハマらせるきっかけとなった作品です。普段見るテレビとはまるで違う世界、ターミネーターがものすごく怖くて、アクションの凄まじさに驚いて、ラブシーンに気まずくなって、とにかく圧倒的に面白くて、まったく目が離せない感覚を人生ではじめて味わったのがこの時でした。以来数えきれないほど見ていますが、いま見てもやっぱり面白い。キャメロンの映画作りのセンスはあらためてズバ抜けています。舞台は真夜中で、出てくるのはゴミだらけで人気のない路地裏ばかり。同年の作品と比較してもアクションは派手な部類には入らないのですが、冒頭のテロップひとつで「これは人類の存亡を賭けた戦いだ」という史上空前のハッタリをかましてみせます。アクションにはさほどお金をかけない一方で(シュワ氏の存在感からとんでもない破壊者を見たような気になるものの、物を壊したり爆破したりの場面はかなり少ない)、ターミネーター絡みの特撮や彼が持つ銃火器には徹底したこだわりがあり、「ここを作り込めばあとは何とかなる」という判断が的確に為されています。最初から大手と契約してたスピやルーカスとは違い、ロジャー・コーマンの元で修業した苦労人キャメロンならではの強みでしょうか。脚本の出来も上々。例えばカイルがサラにこの戦いの背景を話すシーン。普通ならいったんここで話が停止状態になるのですが、本作ではなんとカーチェイス中の車内でこれを一気に説明させ、話を止めないのです。またこの車内ではパニックになるサラを「黙れ!僕が話していいと言うまで話すな!」とカイルが恫喝して話を聞かせるやりとりがありますが、このたった数十秒のシーンで、突如命を狙われることになったサラのリアルな反応を描き、一方でカイルが厳しい世界の住人であることをうかがわせます。本作はテンポの速いアクションですが、その中でも人間の生身のリアクションやドラマがきっちりと描けており、そのリアリティがSFとしての説得力をうまく補完しています。傷つくカイルを救おうとする中でサラに戦う強さが宿っていく過程は自然だったし、ラストではカイルの思い出を話をしている時に撮られた写真こそが、カイルがサラを愛するきっかけとなった写真でしたというオチ。SFや銃火器を好む一方で、最終的にはこういうセンチな話を好むあたりが、やはりキャメロンなのです。
[地上波(吹替)] 9点(2008-12-06 03:10:22)(良:1票)
1047.  インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
悪評を聞いていた為どんなひどい出来なんだろうと思っていたのですが、期待値を下げて見たせいかなかなか楽しめました。とにかく素晴らしいのがスピルバーグの演出力。あんなに男らしく腕っ節の強いヒーローだったインディ・ジョーンズを66歳のハリソン・フォードに演じさせ、ちゃんとインディに見えるように作ることはなかなか出来ることではないでしょう。イーストウッドが「許されざる者」で老境のガンマンを演じたのが62歳、ショーン・コネリーが「ザ・ロック」でいぶし銀の元スパイを演じたのが66歳であり、従来なら先例に習ってセルフ・パロディにするしかないところ。しかし今回はその選択肢を取らずあくまで現役のヒーローとして描き、ちゃんと活劇映画として成立させているのです。小走りするのもツラそうなほどヨボヨボを隠し切れないハリソンさんでしたが、見ているうちに段々違和感がなくなっていきます。アクションもハリソンさんの現在の見た目、年齢でも説得力を失わないラインにギリギリ納めてあり、「物足りない」と「やりすぎ」の間で微妙なバランスをとっています。次々と新手の現れるナチスを相手にしてた頃と比べると、20人程度のソ連兵を相手にする本作はどうしても敵がショボく感じてしまいますが、アクションの説得力を維持するためにはこれが限界だったと思います。ここまで難しい要素の多い企画において、新解釈や新機軸を入れることなく昔のルールのまま及第点の作品を作れるのはスピルバーグならでは。私は今回の出来で十分だと思ったのですが、脚本レベルでのもうひと捻りも考えられるでしょう。イリーナ・スパルコは超能力の研究者という設定でしたが、思い切って彼女を超能力者にし、インディの考えをどんどん先読みされていくという展開でアクションの限界をカバーする手もあったし、前半でインディに疑いの目を向けていたFBIを争奪戦に絡ませることもありえたでしょう。しかしそこまでやってしまうとインディ・ジョーンズが主人公をやる必然性が薄くなってしまうわけで、そんな話はナショナル・トレジャーにでもやらせとけばいい。やっぱり今回のものが可能な中でのベストな出来だったと思います。オチも含めて(神様が「お前ら頭が高い」とナチスを皆殺しにしたり、間寛平みたいなオヤジが「700年間ここを守っておる」と言ったり、前3作だってオチは結構メチャクチャでしたよ)。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2008-11-15 15:09:16)
1048.  アンドリューNDR114 《ネタバレ》 
SFオンチの監督の手に渡ったのがお気の毒としか言いようのない作品。エスねこさんが詳しくレビューされていますが、本来これはほんまもんのSF作品。作り物が人間よりも人間らしくなった時、ホンモノとニセモノの境界はどこへ行くのか?というSF定番の問いかけを軸に、その境界の真っ只中に立たされるアンドリューの苦悩が感動的かつ哲学的に描かれる…はずの作品だったのですが、SFとしてはあまりに雑な仕上がりのためおいしいところはほとんどスルー、ロボットと人間が結婚して良いおじいちゃんとおばあちゃんになりましたという志の低い作品に終わっています。アンドリューと人間社会のつながりが本作最大のテーマと言えますが、肝心の社会風俗の描写があまりに杜撰なのです。彼らの世界ではロボットはどの程度普及しているのか(マーティン家は金持ちだったが、金持ちしか持てないものなのか?)、何の目的で家庭で使用されているのか(あのドン臭いデザインでは邪魔なだけにしか見えない)という極々基本の部分すらよくわからない状態。中盤より彼は自分で収入を得るようになりますが、どこが評価されて彼の商品が売れたのか、そしてあの世界でロボットが収入を得ることがどれほど例外的なことなのかがわかりません。勝手に進化をはじめたアンドリューに対する人々のリアクションも不自然で、彼が人間とタメ口を聞くようになろうが、マイホームを持ち服を着るようになろうが、金属からロビン・ウィリアムズの顔に変わろうが「あぁそうなんだ」程度で普通に受け入れられてしまうのは、作品のテーマとそぐわないのでは?人間になろうとするアンドリューと、その進化についていけない人間社会との軋轢こそが本作の主題だったはずなのに、200年があまりに順調すぎたと思います。ロボットとの愛情を育むこととなるポーシャにまるで葛藤がないのも不自然。ロボットと愛し合い、おまけにセックスまでするという人類史上誰も経験のないことをやってしまう女性なのに、普通の結婚とさして変わりのない様子。社会もふたりの結婚を素直に認めちゃってるし。どうしてここまでSF要素を切り取ってしまったのかと、不思議で仕方ありません。
[DVD(吹替)] 4点(2008-10-06 01:17:45)(良:3票)
1049.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
信仰の自由を求めたプロテスタントと自分の土地を求めた小作人により建国されたアメリカは、本来は貧しくも清くマジメであることを美徳とした国でしたが、ゴールドラッシュにより一攫千金に目覚め、石油により物質的な豊かさを追い求める国に変貌したのが19世紀終わりから20世紀はじめ。その時代を舞台にした本作は現代アメリカのデフォルメとなっています。ダニエルによる石油採掘を人々が歓迎する中、唯一土地を売らなかったのがホームステッド法(未開発の土地を農民に払い下げる制度。未開の地を家族だけで開墾するという大変な困難が待っていました)により苦労の末土地を得たおじいちゃんだったのは、古き清貧のアメリカ人と物質主義の新しいアメリカ人の対比でしょう。この期に及んで土地を提供しないこのおじいちゃんは、ダニエルからすれば「どうせ値段を吊り上げるハラだろ」としか見えていません。しかし実際には、札束で相手の頬を叩くような相手に大事な土地は渡せないけど、人として接するなら喜んで提供しましょうというのがおじいちゃんの意思でした。そんなおじいちゃんが人として大事だと考えているのが信仰でしたが、その信仰もすでに死んでいます。伝道師のポールは大袈裟なパフォーマンスで人を集めますが、彼の言動には神に対する畏れや敬意、人々を正しく導こうとする信念などはなく、金儲けの道具として人々の信仰心を利用しているのみ。「私は悪人です」と正直に言ってるダニエルよりも、正義面して人々の心につけこんでるだけ彼の方がタチが悪いともいえます。そしてラストではおじいちゃんは死に、その孫は農民として地道に働くことではなくハリウッドの俳優を目指し、伝道師はおじいちゃんの土地をダシにダニエルから金をせびろうとし、そのダニエルはおじいちゃんの土地の石油を黙って勝手にかすめ盗っていたという、古き良きアメリカは死に、なんとも浮わついた人たちだけがこの国に残ってしまいましたというオチ。お見事です。また、弟と名乗るヘンリーが現れた途端にHWを捨て、そんなヘンリーがニセモノだとわかるやまたHWを呼び戻すというダニエルの行動がありましたが、利害が一致すれば独裁国家でも支援し、都合が悪くなればかつて仲良しだったフセインやタリバンと戦争してしまうという、なんとも節操のないアメリカ外交みたいで興味深かったです。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2008-09-12 01:46:54)(良:2票)
1050.  ボーン・アイデンティティー
映画館ではじめて観た時は「よく出来た佳作アクション」という印象でした。ダイ・アナザー・デイ、トリプルX、トータル・フィアーズ、そして本作を断ってブラッド・ピットが主演したスパイゲームとエージェントものが多く作られた時期でしたが、ド派手な見せ場を売りにした作品ばかりの中、見せ場を切り詰めて地味ながらも穴のない仕上がりとした本作は異色な存在だったと同時に、派手なだけのアクション映画に観客が飽きはじめている空気をうまく感じ取って作ったもんだと感心した記憶があります。とはいえ飛び抜けて面白いわけでもないので「佳作」。現在見返しても単品ではその印象は変わらないのですが、アクションの金字塔となったシリーズの第一作として振り返ると、本作の重要性、非凡さがうかがえます。ジェイソン・ボーンは基本的に知性を武器とし、衝突を避けながら行動していることは論理的に筋が通っているし、いざという時に飛び出す殺人技はこの上なくプロっぽいし、また彼を仕留めるべく放たれた刺客達はストイックなかっこよさに溢れてるし、CIAは役人の勤める官僚組織としてきちんと描写され、お役所ならではの強力なネットワーク、権限の脅威が物語で効果的に使われているしと、このシリーズの持つ優れた点は、すべて第一作の時点で完成されているのです。第二作以降の慌ただしい編集、カメラワークがないので全体的に落ち着いた雰囲気なのですが、影になって役者の顔が映っていないカットがあったり、役者がアクションを起こした後にカメラがその後を追っていたりと(アクション映画にありがちな、見せ場にカメラが先回りしているというショットが一切ありません)、視覚にリアリティを重視しているのも第一作からのようです。「派手な見せ場を入れろ」という映画会社とケンカしてでも作品を守り、結果的にそれが3部作を支える柱となったわけですからダグ・リーマンのビジョンは的確なものであったと言えるし、余計なものは加えず第一作の継承・発展に集中したポール・グリーングラスの手腕も抜群であったと言えます。そんな中、唯一残念なのがマリーの存在で、「どうしたの?」「何があったの?」といちいち聞き返してくる彼女がアクションのテンションを相当下げています。マリーと別れて挑んだ「教授」と呼ばれる刺客との戦いの異様な盛り上がりを見るにつけても、彼女はもっと早く退場させるべきだったと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2008-09-06 01:44:53)(良:1票)
1051.  ラスト・ボーイスカウト
メンツの時点で中身は推して測るべしな90年代アクションですが、あらためて見返してみると、冒頭15分のみ完璧な仕上がり。「フットボールはお祭りですよ!」とバカバカしいまでの盛り上がりの音楽でスタートしたかと思いきや、本編最初のカットは一転して重々しい雨のスタジアム。何やら電話を受けた選手が深刻な顔をすると、試合の真っただ中に突如銃を取り出し、相手チームの選手を射殺するという空前絶後の掴みで物語が開始されます。次に来るのは登場人物の紹介場面。真っ昼間から酔い潰れるいかにもしがないブルース・ウィリスですが、そんな彼が部屋のわずかな変化を察知し、クローゼットにいるであろう妻の浮気相手に対して鋭い脅しをかけるたった数分の描写で、人物像をほぼ完璧に見せ切っています。妻の浮気相手がよりにもよって主人公の親友であることも、本来は敏腕であろう彼が、家族からも友達からも尊重されない人間になり下がっている現状を見事に表現。また、奥さんは郊外に似つかわしくない美人なのですが(梅宮アンナ似)、恐らくは主人公が輝いていた頃に結婚し、その後何かのきっかけで落ちぶれていったために家族からも見放されることになったことを想像させます。本筋となるアクションも主人公達のドラマも非常にエッジの立ったものを期待させ、「ただのアクション映画じゃないぜ!」というオーラをムンムンに放っているのです。しかし、そんな秀逸な冒頭15分を過ぎると映画の質は一気に低下します。シリアスな雰囲気からはじまった作品が、リーサル・ウェポンのようにベラベラとしゃべりまくるただのバディアクションに早変わり。あれほど家庭が荒れていたはずなのに、いきなり「お父さんを探しにきた」と言ってアクションに加わる娘などは、物語前半と後半ではまるで別人となっています。丁寧に陰謀を説明してくれる敵ボスのカックンぶりや、安物のニコラス・ケイジのような中ボスの壮絶な印象の薄さも見逃せません。取ってつけたような大団円を迎えるラストも最悪で、無精ヒゲを剃り、髪型もバッチリ決めたブルース・ウィリスのわかりやすすぎる変化ぶりに笑ってしまいました。本来はよくできた脚本だったのに、一般客向けに角をとってしまった結果、どうにももったいない出来になってしまったようです。トータルではあまり評価できない映画なのですが、作品中の荒れた部分は物凄く魅力的なので部分評価で6点とします。
[DVD(字幕)] 6点(2008-09-01 02:51:38)(良:1票)
1052.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 
観客を飽きさせないよう派手なアクションをやればやるほど「んなアホな」のスパイラルに陥る作品が多い中、本作は見せ場の連続なのにバカっぽくなく、そこにリアリティを感じさせる作りとなっています。特に素晴らしいのがロンドン駅での追っかけで、追っ手の配置や視界を先読みしながら対象を的確にナビゲートする様はあまり見たことのない珍しい見せ場。ボーンはただの強い殺し屋ではなく、状況判断やとっさの決断力にも長けた人間であることをちゃんと画で見せてきているのです。「陰謀のセオリー」「ロング・キス・グッドナイト」等、記憶を失った政府の殺し屋映画はいくつもあり、ボーンシリーズもネタ的にはありふれた作品なのですが、そんな中で新しさを発揮しているのは、世界を股にかけるエージェントに必要であろう知性を描いているためでしょう。目の前の危機を腕っぷしで乗り切るかつての主人公達とは違い、二手先三手先を読んで行動し、衝突はなるべく避けるという「当たり前」のことをきっちりやっているのです。またボーンが相手とするCIAも同様で、きちんとした官僚機構として描かれているので、悪役としての存在感を発揮しています。「CIAは巨大な官僚組織である」のは当たり前なのですが、これまでのアクション映画は見事なまでにこのおいしい部分をスルーし、その結果ボスと手下数人が勝手に暴走して主人公に倒されるという、何ともこじんまりとした組織となり下がっていました。そこにきて本シリーズは、個人の通話でも自由に盗聴できるハイテク機器を操り、世界中即座にエージェントを送りこむ豊かなネットワークを持ち、警察機構に指示を出すこともできる強大な権限を持った組織として描いています。そこに従事する人々も魅力的で、その切れる頭で出世したと思われるパメラ、現場の叩きあげで汚れ仕事をしているうちに感情も麻痺してしまったアボット、組織のためなら何でもやってしまう出世の鬼ヴォーゼンら、「官僚組織にいそうな人々」の熱いやりとりも見ごたえ十分です。賛否の分かれる細切れアクションについてですが、画面も話も「リアルに見えること」を意識した本作においては、その必要性があったように思います。アクションの中にリアリティを感じさせたい場合、「仮に現場に居合わせればこのように見えるだろう」という雰囲気を作り出せる手ぶれ映像や細切れの編集は、やはり威力を発揮しているのです。
[映画館(字幕)] 9点(2008-08-26 02:26:24)(良:4票)
1053.  バンテージ・ポイント 《ネタバレ》 
テロが起こった23分間をグルグルと違う視点から映し出し、少しずつ全体像を見せるというのはこれまでありそうでなかった手法。なかなか面白い見せ方だし、「現時点で観客に何を見せるべきか」という情報の取捨選択も非常に的を射ていたように思います。デニス・クェイドがモニターで何かを発見し、「これは大変だ!」と言って突然走りだすシーンなどのじらし方は本当に絶妙でした。脚本もよく練られていて、この手法を最大限活かせる体裁になっていたように思います。テロリストが一枚岩ではなく、騙されたり脅されたりして犯行に加わっている者が混ざったことで、事実が解明されていく過程の面白みが格段に上がっています。また、広場でのテロはあくまで陽動作戦だったというアイデアを挟んできたのも、23分間を何度も何度も見せるという、ともすれば同じ画を見せられてアクション映画としての面白みを失いかねない本作において、舞台を増やす為の得策だったと思います。テロリストが女の子を避けようとした為に事件が解決というオチのつけ方も面白かった。まぁ観終わった後考えれば近年稀に見るほどご都合主義の連続ではありますが、複数の視点から語るアクション映画という特性をいかに盛り上げるかのみに集中して作られているので、90分はきちんと楽しめる作品となっています。作り手も話がムチャすぎるという点には十分自覚的で、一気に見せて一気に終わるという一発芸的な作りに専念しているのです。例えば、テロリストの背景や動機の説明がもっと欲しいようにも思いましたが、本作においてこれ以上描きすぎるとかえって犯人像が陳腐化してしまうし話のテンポも奪ってしまうので、作り手もうまいところで切り上げています。本作で唯一背景を語られる主人公のデニス・クェイドにしても、過去のいきさつや現在の心理状況、組織内での立ち位置をほんの数シーンで説明してみせるという、神業的な要約のみで終らせています。とにかく切るものは切って見せるべきものだけ見せるという、実に潔い映画なのです。唯一残念だったのが視覚的な斬新さに欠けたことで、映画自体が斬新な割に視覚的には普通だったので、妙なバランスの悪さを感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2008-08-25 22:20:24)(良:1票)
1054.  暴走特急
観ている間中、「決して危機に陥らない主人公」というムチャクチャな前提でよく映画が成立してるなと感心し通しでした。世のすべての物語は紆余曲折があるからこそ面白いのに、絶対に勝つことがわかっている、その過程で一切の危機に陥らず、主人公が顔色ひとつ変えずに映画が始まり終わっていく、そんな代物がよくぞ100分それなりに退屈させない出来に仕上がっているものです。これはセガールという映画史上もっともミステリアスな俳優でこそ出せる珍味であり、そういう意味ではセガールはそれなりに評価すべき人物なのではないかと思います。デ・ニーロですらコピー不可能な、世界唯一の芸当を持った俳優さんですから。監督や脚本家も地味に頑張っています。「主人公が危機に陥らない映画を作れ」と言われてまぁそれなりにまとまった形に脚本を仕上げ、映画として成立するレベルの演出をしてみせるというのは高等技術ではないでしょうか。首尾よく列車を制圧したものの、ライバックが乗ってるとわかるや「ヤバイ、俺達終わった」と焦りだすテロリスト、一方で「ライバックが乗ってるってよ、やったー」と喜び出すペンタゴンの偉いさん達、こんなセガール作品ではおなじみの光景を、笑わせずそれなりに見せてしまえるというのは影ながらの演出の巧さのおかげでしょう。この映画には、そんなコメディギリギリの描写が盛りだくさん。「こんなものは俺には効かんよ」と、痴漢撃退スプレーをまるで香水かのように自分の顔に吹きかけるテロリストのボス。ボスの強さアピールの描写でしたが、明らかにヘンなシーンなのに「あぁ、そうなんだ」とそれなりに見れてしまうのはこの映画ならでは。一方セガールはもっと強烈で、敵のスナイパーに肩を撃たれるも「貫通してるから撃たれてるうちに入らない」と他人事のようにコメントし、本当に何事もなかったかのようにその後のアクションをこなすという超人ぶり。こういうおかしな描写をサラっと見せてしまえる演出は素晴らしいことですし、「セガールにとってはそんなもんなんだろうな」と無意識に納得させてしまえるセガールの存在感も見事なことです。 ちなみに本作の脚本を書いたのはマット・リーブスという人物で、本作後テレビ界で実績を重ね、「クローバーフィールド」の監督を任されるまでに出世したようです。セガール塾での経験が「クローバーフィールド」につながったんだと私は信じています。
[DVD(字幕)] 7点(2008-08-25 19:03:27)(笑:1票) (良:1票)
1055.  バンド・オブ・ブラザース<TVM> 《ネタバレ》 
1話1話が充実していて、1時間とは思えないボリュームを全話に渡って味わえます。また全10話を通した時のバランス感覚も見事で、訓練の第1話にはじまり、そこいらの戦争映画を軽く超える圧巻の戦闘シーンを見せる2~4話(戦場における戦車の圧倒的なパワーが描かれた『補充兵』は特に気に入ってます)、エピソードごとに主人公を変え、毎回違った切り口でドラマを見せる5~8話(無能な司令官に振り回される『雪原の死闘』にはサラリーマンとして共感を禁じえませんでした)、第二次大戦の悲劇をシリアスに描いた第9話、そして締めくくりの第10話。どのエピソードも素晴らしいのですが、最終回の第10話には特に意義を感じました。戦場における友情や英雄物語を描きたいのなら8話で終ればよかったし、第二次大戦の歴史を描くのであれば9話まででよかった。しかし戦争が終わって占領軍となったアメリカ兵達の姿を描いた10話を終わりに持ってきたことで、この作品は他にない奥行きを得たように思います。ナチスが残した高級品を「戦利品」と言って勝手に持ち帰り、敗戦国民に対して横暴に振る舞い、元ナチスと言われる老人(真偽は不明)を不確かな情報から射殺する、そんな姿を最終話できっちり見せてくるのです。そしてラスト、ウィンターズからE中隊に対して言われるべき言葉を、ナチスの将校に喋らせるという演出も見事。このシリーズに対しては「アメリカ万歳ではないか」という否定的な意見もあります。確かに第9話まではアメリカ兵の視点のみで描かれており、悪役であるドイツにとっては公平性に欠ける描写もあったように思いますが、この非常に冷静な締めくくりを持ってきたことで、普遍的な物語になったように思います。あえて難点を言えば、戦争ものの宿命として個人の判別が難しかったことでしょうか。10話見ても顔と名前が一致しない隊員が何名かおり、「で、いま死んだの誰だっけ?」ということが毎話あったのが残念。「これが登場人物ですよ。みなさんしっかり覚えてくださいね」という意味で第1話があったんだなと、10話全部見て気付きました。ま、この混乱を逆手にとれば1周目は圧巻の映像に驚き、2周目は緻密なドラマを発見する、そんな楽しみ方もできそうなわけで、これは何度も見返し、そのたびに新しい楽しみに気付く作品になりそうです。
[DVD(吹替)] 9点(2008-08-21 02:06:16)
1056.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 
ビギンズには辛い評価をした私ですが、それを撤回せねばならない続編が出てきました。スパイダーマンと比較してヒーローの見せ方がなってないなどと批判したのですが、この新生バットマンは他のアメコミ映画とは目指すものがまるで違うようです。マンガの世界を巧く作りあげ、ヒーローものならではの荒唐無稽なアクションを見せ、そして実写化した時の違和感をうまいトンチで乗り切ることが他のすべてのアメコミ映画のキモとなっていますが、このシリーズが目指すのはそれとは正反対。バットマンや敵のフリーク達を現実の世界に引っ張り出し、現実世界で彼らがどのような意味を持つことになるのかがこのシリーズの追うところです。なのでCG丸出しのヒーロー大暴れなどは一切なく、バットマンやフリークとはいえあくまで生身の人間が戦ってるよう見せることにこだわっています。前作では視覚的に未完成だった為この狙いがイマイチはっきりしませんでしたが、本作では見事にスクリーンに反映されています。そこいらの刑事ものよりもリアルに、しかもバットマンという非現実が真ん中に立っていても変に見えないようにという絶妙なバランスで作られているのです。またそんな生真面目なアクションの中でも、バットモービルからバットポッドが分離するというかっこいいギミックも見せてくれるので、監督も相当小慣れてきてるなと感心しました。脚本の充実ぶりも見事。たったひとりの狂人が大都市をパニックに陥れていく過程に疑問や違和感を覚えさせないのは、話が良く練られている証拠。そんな「よく出来た脚本」からさらに二歩も三歩も突っ込んで、ドラマとしての面白さ、「正義とは?ヒーローとは?」という問いかけまで盛り込み、かつ大量に仕掛けたネタをどれひとつ破綻させていないという神業的な仕上がりとなっています。特に素晴らしいのが二隻のフェリーの駆け引きで、戦いの当事者が「正義とは?」と悩む映画はいくつもありますが、傍観者である市民にその姿勢を問うというありそうでなかった展開を挟んできたことで、この作品の価値はぐっと上がりました。今回点数を9点としているのは、映画館で一度鑑賞しただけでは、情報量の膨大な本作の全貌を掴んだ自信がないからです。それにしても、このような観客に対して相当レベルの観賞力や集中力を要求する映画が史上空前のヒットとなっているのですから、アメリカというのもバカにならない国です。
[映画館(字幕)] 9点(2008-08-15 03:36:58)(良:2票)
1057.  ケインとアベル/権力と復讐にかけた男の情熱<TVM>
先日「午後のロードショー」でやってたのを見たのですが、「なぜこんなすごい作品を今まで知らなかったんだ」と思うほど面白かったです。本作はアメリカのテレビ映画ですが、劇場用の大作にまったく引けをとらない完成度。上映時間の使い方が抜群にうまく、長い長い上映時間にも関わらずまったく飽きさせない作りとなっています。3時間を超える伝記映画がどれもこれも冗長で退屈な映画になっていることを思うと、2時間枠で3日連続放送という超長尺でありながら話のテンションを徹頭徹尾維持できていた本作は驚異的とも言えます。また「24」や「LOST」のように飽きそうになったらとりあえずイベントを放り込むという適当な盛り上げ方ではなく、ふたりの男の確執というテーマから片時も離れず、すべてのイベントが主題に沿って展開され、ムダなエピソードが何ひとつないという見事な構成。ロミオとジュリエット風になってきた後半では「いよいよ息切れしてきたか」と思ったのですが、これもまたケインとアベルの物語を構成する重要なピースのひとつであったと後でわかり、この話はとんでもなくよく出来てるなとあらためて感心しました。「テレビ界のゴッドファーザー」とは言いすぎかもしれませんが、テレビにありがちな軽さがなく、重厚で見ごたえのある作品となっています。俳優の演技も見事。当時ともに30代後半だったサム・ニールとピーター・ストラウスが10代後半から60代までの主人公を演じるのですが、さすがにムリを隠しきれない10代後半はともかくとして(ここは若い役者を別に立てた方がよかったと思います)、野心に燃える20代、各自が帝国を築きあげる40代50代を経て、哀愁溢れる60代までを違和感なく演じてみせた芸の広さはなかなかのものです。NHKの大河ドラマのようなウソ臭さがないのは、メイク技術の違いだけではなく役者の力量の差も大きいでしょう。激動の60年を生き抜いてきた男の顔にちゃんとなっているのです。こういう知られざる傑作を突如放送するので、テレ東はあなどれません。レンタル屋に行けば簡単に見られる最近の大作ばかりを放送する他局のロードショーはもう10年近くも見ていませんが、テレ東だけはチェックしてしまうのはこういう出会いがあるからです。
[地上波(吹替)] 8点(2008-07-13 04:17:50)
1058.  続・激突!/カージャック 《ネタバレ》 
スピルバーグの劇場デビュー作ということでお勉強のつもりで見てみたのですが、これがあまりに面白くて驚きました。スピルバーグのドラマ作りは、この時点ですでに完成されています。前半のコミカルな描写にはたっぷり笑わせてもらったし、シリアスな後半とのコントラストの役割もよく果たしています。子供と幸せに暮らす夢など叶うわけがない、この短い祭りが終われば自分たちも終わると知りながらゴールへと近づいて行くポプリン夫婦が切なくて仕方がありません。気弱に見えつつラストに向けて冷静な一面を見せる役得なクロヴィスはさておき、感情的なルー・ジーンを描くのはかなり難しかったと思います。わめいたり突飛な行動をとったりのトラブルメーカーなのですが、観客から嫌われるギリギリのところで踏みとどまっているサジ加減はお見事。そこいらのベテラン監督ですら難しいことをデビュー作でやってのけているのはさすがスピルバーグです。また、そんなポプリン夫婦と擬似的な親子関係を築くタナー警部も良かった。後にスピルバーグがひたすら描き続ける父親との関係性というテーマですが、デビュー作の時点で早くも作品の中心となっています。すでに親を失っているクロヴィスと、「お前みたいな娘は俺が殺してやる」と言い放つ父親を持ったルー・ジーンにとっては、自分たちを大事に扱ってくれるのはタナー警部がはじめてだったのかもしれません。無知ゆえに人生を踏み外したポプリン夫婦を温かい目で見守り、厳しい対応をできるだけ後に回そうとするのですが、警察として最後の最後には事件を終わらせねばならないというタナー警部の苦しい心境がよく描かれています。20年後、クリント・イーストウッドが「パーフェクト・ワールド」でこれとまったく同じ疑似親子の物語をやりましたが、本作の方がよく出来ていると思います。そんなわけで期待以上に素晴らしい作品だったのですが、惜しむべきはやはりこの邦題。勢いのあるサスペンスだった「激突」と、ゆったりとした人間ドラマである本作は正反対の作品はず。なのに続編としてしまっているのは、舞台が宇宙なのは同じだからという理由で「2001年宇宙の旅」と「スターウォーズ」をシリーズとするぐらいに強引です。こういう適当な邦題は作品の価値を殺してしまうので(実際、「激突」のパチモンだと思って本作をスルーしてる人は多いはず)、もうちょいよく考えてもらいたいものです。
[DVD(吹替)] 8点(2008-06-30 02:36:31)(良:1票)
1059.  日本沈没(2006)
炎に囲まれ絶対絶命の少女、草彅剛は間に合わない!ああ、もうダメなのか。その瞬間、炎の中からレスキューヘリが飛来、ロープにぶら下がった柴崎コウが危機一髪で少女を救助!…この冒頭で「この映画はダメだ」と覚悟を決めました。これは恐ろしくセンスのない人たちが作った映画だなと。本作のようなシュミレーション映画には、何でもできるスーパーマンは絶対に出てきてはいけないはず。そんな人物が出てきた途端に日本沈没の危機感が大きく失われてしまうのに、ド頭でこれをやってくるのは相当なもの。最後まで見ましたが、冒頭で感じた予感は残念ながら的中しました。それなりに見せ場があるにも関わらず、2時間をここまで退屈にさせるのは凄いことです。この映画は企画意図そのものに問題があったのではないでしょうか。CGでそれなりの映像を作れるようになったし、若い客が喜ぶデカイ企画をやろう。女性ウケは大事だから、アイドルの恋愛要素は必須で。往年の作品のリメイクなら中高年の動員も見込める。そんな足し算の論理で考えられた企画のように思います。しかし出来上がった映画は、結果的に引き算の積み重ねになっているのが面白いところ。シミュレーション映画としての完成度を追えばある程度のグロテスクな展開や描写は避けられないし(惨い場面をひとつも入れずに危機感を煽ることのできる監督は日本にはいません)、恋愛要素を描ききろうとすればアクションのテンポを奪ってしまうし、年齢層の高い客層は知的好奇心を満足させる内容でなければ退屈します。しかし方向性を決めずにすべてのターゲットを狙いにいった結果、作品の質を決定する要素をすべて切ってしまっているのです。何味にするのか考えず、とりあえず喜ばれそうな食材だけ放り込んだ料理。砂糖も塩も入れてないので物凄くマズくなってます。こういう映画はよろしくないですね。あらゆる層にアピールしてとりあえず映画館に来てもらうけど、関心があるのは入場料払うまで。映画館に来たお客さんを入場料分きっちり楽しませることの努力は特にしていないという。最近では大コケする邦画も出てきていますが、それは本作などが適当な商売した結果、観客が学習した結果だと思います。1点は本作で唯一プロの仕事をしていた特撮パートに。さすがは大量破壊描写について世界随一の伝統を持つ日本特撮界だけあって、対費用効果ではハリウッドより良い仕事してます。
[DVD(邦画)] 1点(2008-06-29 19:43:04)(良:2票)
1060.  ダイ・ハード2
通常の映画がクライマックスに持って来るレベルのアクションを次々に見せつけられて所見時は大興奮でしたが、現在の水準から見てもアクションは特盛大サービス状態。「1」を超えるものを作ろうとひたすらスケールの拡大、見せ場の充実を図っているのですが、「これ以上やりすぎるとかえって緊張感がなくなる」というギリギリのところでうまく踏みとどまっているので、満身創痍で戦っている生身の感覚がまだちゃんと残っています。アクションの自家中毒に陥っていた「3」「4」よりはひとつ上の仕上がりと言えるでしょう。また、レニー・ハーリンを監督に引っ張ってこれたのも幸運で(「エイリアン3」の監督に内定するなど、当時はハリウッド中が注目する若手監督でした)、この人の手腕が作品にかなり貢献しています。「動く歩道を起動させ銃をキャッチ!」「迫りくる飛行機からギリギリで身をかわす!」と、バカバカしいまでのカタルシスをバッチリ味わわせてくれます。中でも白眉なのが飛行機爆破からの脱出で、外には銃を構えたテロリスト、ドアはロックされ完全に身動きの取れなくなったところに山ほど手榴弾が投げ込まれ絶対絶命のピンチ!→寸前でコックピットからズドーンと脱出!という稀にみる大脱出の演出は本当にすごかった。「1」の屋上ダイブではまだボヤく余裕のあったマクレーンですが、ここではシリーズ中もっともテンパった顔となっており、見ている私も一緒に手に汗握った名シーンでした。また、悪役の見せ方もなかなか良いです。ハンスのようなスマートな敵はもう作れないと判断したのか、今回の悪役は筋肉隆々の肉体派揃い(変な方向に行ってしまった「3」「4」を思うと、この判断は成功だったと言えます)。しかもボスクラスが3人とこちらも質より量で勝負していますが、フルチンで妙な空手を披露するボスの登場にはじまり、空港ホテルを隊列を組んで歩く私服テロリストのみなさんなど、物凄くヘンなんだけど訳のわからん威圧感や凄味をワンシーンで伝えることに成功しています。体どころか顔まで筋肉で出来ているかのようなウィリアム・サドラーが存在感をムンムンに放っていますが、他の作品の彼は全然パっとしないことを思うと、ハーリンがいかに効果的な見せ方をしていたかがわかります。以上、かなり良い出来の映画なのですが、奇跡的な完成度だった「1」があるので損をしている作品ではないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-29 19:27:11)
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