1041. ラスト・エクソシズム
《ネタバレ》 少女が産んだ赤子は本物でしょうか。また天を焦がす火柱は悪魔が存在した証?勿論そんなワケはありません。赤子はツクリモノ。薬品か何かを使って火力を高めたのでしょう。地元の牧師を中心とする狂信者による自作自演。主人公が行ったエクソシズムの“演出”と同じです。ところがコットン牧師はその事に気づいていません。目の前の事象をありのままに受け止め、悪魔の存在を感じ取っています。悪魔憑きを否定していたはずの彼が、いとも簡単に騙される不思議。そこに人間心理の妙があります。騙す側ほど自らが騙されるとは思っていない。否定が肯定に転じる時の反動は大きい。様々な要因が想定されますが、一番大きな理由は“牧師自身が悪魔の存在を望んでいたから”ではないかと。彼はニセのエクソシシト。どんなにその行為の正当性を主張したところで、後ろめたい気持ちは消せません(だから今回の撮影も了承した)。そんなニセモノが、“本物”に変わる千載一遇のチャンスが巡って来たのです。自己承認欲求の前には、常識も、理性も太刀打ちできなかった。小道具の十字架を握り締め狂集団に挑むコットン牧師は、まるでドン・キホーテでした。モキュメンタリーは記録媒体としてのカメラが意識される手法。客観性が担保されることで、如何に主人公が正気を失っていたかが強調されます。これは上手い。ちなみに、ジャンルは全く異なりますが、類似構造の『サボテンブラザーズ』と見比べてみるのも面白いかも知れません。 [DVD(字幕)] 7点(2012-10-09 17:44:57) |
1042. カイジ2 人生奪回ゲーム
《ネタバレ》 “地下チンチロ勝負”とは、『賭博破戒録』編前半の天王山。爽快感ではクライマックスの沼攻略を上回るかもしれません。その重要エピソードを削ったのは英断でした。そして大正解。各エピソードを中途半端な内容で再現し、大いに落胆した1作目の反省点が活かされたといったところでしょうか。そう、求められるのは原作エピソードの取捨選択。そういう意味では、原作の世界観に合わないオリジナルゲーム『姫と奴隷』や、地下労働とセットで意味を成す居酒屋での祝勝会等も必要なかったと思います。“沼攻略”については、原作の流れをほぼ再現出来ていました。ただし、カタルシスはありません。イカサマシステムへの対抗策が次々と披露されただけの印象。カイジらがどんな思いで、どんな代償を払って、乾坤一擲の勝負に挑んだのか。その過程は逆に省略してはいけないところです。言い方は良くありませんが、“上澄みを掬った”感は拭えません。本作も『カイジ』の映画化としては物足りないと言わざるを得ません。もっとも、そんな事は前作で学習済みです。失望感に対する免疫が本作の評価を“相対的に”押し上げている一因だと自分は捉えています。ただし、ご指摘の方もおられるように、人食いモンスター台“沼”の再現度や役者の熱演など、制作費に見合う長所があったことも付記しておかなくてはならないでしょう。さて、これで『カイジ』の映画化は一段落。次に福本漫画を映画化するとすれば、『無頼伝 涯』の人間学園あたりが面白そうですが、個人的には『最強伝説 黒沢』を強く推したい。主演は高橋克実で。 [DVD(邦画)] 5点(2012-10-06 19:57:39) |
1043. 踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!
主要レギュラーだけでも、青島、すみれ、真下、雪乃、スリーアミーゴに室井、そして和久さん。野球チームが作れます。サブレギュラーも含めたらサッカーの試合が出来る。それが『踊る大捜査線』。映画やTVスペシャルで、これだけ多くのスピンオフを生み出したドラマシリーズは類を見ないでしょう。際立つキャラクターが『踊る』の大きな魅力のひとつ。そして彼ら一人ひとりが掛け替えの無い存在でした。大切な2人が抜けた劇場版第3作。代わりに多くの新キャラを投入し、それでは足りずと過去の犯人たちまで呼び寄せます。その判断は妥当だったのかもしれませんが、本作には秀逸なキャラクターを活かす脚本が欠けていたと思います。青島は向こう見ずな所はありますが、馬鹿ではありません。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2012-10-03 19:41:22) |
1044. バイオハザードIV アフターライフ
《ネタバレ》 冒頭のアリス軍団の戦いぶりは圧巻。セクシーボディスーツを身に纏った美人さんが、集団でサムライブレードを振り回し、マシンガンをぶっ放しながら、更にはサイコキネシスまで使うというハチャメチャぶり。まるでラーメンのトッピング全部乗せ状態。お腹一杯。クローンとは、死んだら補充されるゲームのキャラクターにも通じる概念で、ゲームを原作とする本作にはピッタリなのかもしれません。ただし、“替えが効く”主役キャラクターが大挙登場するという流れは、実は大して面白くありません。死という恐怖が、リアリティを帯びないゾンビ映画は問題があるということ。もっともそれを見透かしたかのように、本作ではアリスから超人的なパワーを奪い取る仕掛けが施されますが、無敵感はスポイルされませんでした。マクレーン刑事もビックリのビル飛び降り(しかも必然性なし)は、まともな感覚を持った人間がやることじゃないです。お股ひゅんとするでしょうに。 [DVD(吹替)] 5点(2012-09-30 20:36:06) |
1045. 踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望
《ネタバレ》 劇場を後にし、まず口をついたのが「バスは無いな…」。一緒に劇場鑑賞した妻と一致した感想でした。青島のカンのみに頼った犯人追跡や、香取+バナナの悪ふざけ(スポンサーの意向があったであろう事は想像に難くありませんが、観客にとっては関係ない話です)、予告篇のためのみに撮られた青島の転倒シーン等、後半は難点満載でしたが、あのバス突入がトドメを刺しました。値千金ならぬ値罰金。なんとか踏みとどまっていたシリアス調の物語が一撃でひっくり返りました。確かにフォークリフトじゃなくて、バスの方がインパクトはあります。でも最低限のリアリティを担保しなかったら、コメディになってしまいます。コメディテイストは『踊る』の大きな魅力の一つ。でも完全コメディになったら『踊る』ではありません。超えてはならない一線を越えてしまいました。また久瀬(香取)が本気で真下の子供を殺そうとしていた事にもドン引きしました。単なるキチ○○ですやん。そしてそのテロが警察の組織改革の発端となるという、結果的にテロリストの思惑通りの結末。青島は和久さんに言われたはず。正しいことをしたかったら上に行けと。偉くなって、組織を中から変えろと。青島や室井が矛盾だらけの組織の中でも信念を失わず、正義を心に秘めて戦ってこられたのは、この思いがあったから。テロが引き金となって世界が変わるなんて希望、自分は見たくなかったです。前半の出来が素晴らしかったのとお疲れ様の意味も込めて6点を進呈しますが、後半の展開はいただけません。いくら室井がサル顔だからって「バナナだ」なんて台詞を言わせたらいかんですよ。 [映画館(邦画)] 6点(2012-09-27 19:57:52)(笑:1票) |
1046. バイオハザードV リトリビューション
《ネタバレ》 プレイステーション版・初代『バイオハザード』しかプレイしていない自分が言うのも何ですが、まるで原作ゲームへ原点回帰をしたかのような印象を受けました。ある意味1作目以上にゲームらしい映画だったと思います。フィールドを限定。各ステージをクリアして、制限時間内に実験施設からの脱出を目指す。実にシンプルで分り易いストーリー。後半からは『エイリアン2』を髣髴とさせるエモーショナルな要素が加味されましたが、あくまで基本線はアクション。エンドクレジットで一際大きく映し出されていた『CAPCOM』の表記に偽りはありませんでした。クローンアリスの“別の人生”チャプターも、原作ゲーム本来のテイスト。今やミラは、シュワやスタローン以上に無敵感があるので、ひ弱なキャラクターというのも新鮮味がありました。敵キャラのパワーバランスが変な件(斧を持った奴にヘッドショットが効かないのに、特大脳みそオバケには効く不思議)、アリスのマシンガンが弾切れしない等、ゲームが原作だからこそこだわって欲しい箇所はあったものの、そんな不満も大スクリーンで展開されるシューティング&格闘アクションの迫力の前には吹き飛びました。バイオハザードに凝った脚本など不要。アクションで押し通せば良し。そう実感できたⅤでした。以下余談。自分は映画ポスターコレクターなのですが、バイオハザード(原題Resident Evil)は米本国版と日本版のデザインが違う事が多いように思います。日本版は一貫してアリスの正面ショットがメイン。ミラの美しさを全面に押し出しています。プロモーションの方向性は、日本が正しいと思います。 [映画館(吹替)] 7点(2012-09-24 18:25:36) |
1047. 夢売るふたり
《ネタバレ》 物語は主人公夫婦の市場での仕入れシーンから始まりました。そう、モノを売るためには、まず仕入れなければならないのです。それがままならぬモノならば、今手にしている分を手放すしかありません。タイトルは『夢売るふたり』。夫婦は自らの夢を切り売りしました。夢を叶えるためのお金を手に入れるために。この矛盾。鮮度の落ちた魚を調理したくないと言った主人公が、職人の命ともいえる包丁で、刺青魚を捌く羽目になる皮肉。清々しいほどの因果応報の物語でありました。大人のための寓話でした。主演を務めたのは、今や連ドラの主役も張るほどの人気者、阿部サダヲと、今最高に脂が乗っている映画女優、松たか子。人気実力を兼ねそろえた2人をキャスティングした時点で、本作の成功は5割以上約束されたようなもの。事実、期待通りの演技を披露してくれました。もっともこの成功を10割にまで引き上げたのは、やはり監督の手腕なのだと思います。これほど“手堅い”映画を観たのは久しぶりでした。それにしても『告白』といい、『ヴィヨンの妻』といい、ここ数年の松たか子の充実ぶりは驚異的です。今、怖い(そして強くて弱い)女を演らせたら、彼女の右に出る者はいないでしょう。黒目パワー恐るべし。以下余談。初めて札止め満員というものを体験しました。先に『鍵泥棒のメソッド』を観ていた自分は出足が遅く、自由席の前から2列目に。字幕でなかったのは助かりましたが、流石に疲れました。でもビッグなおっぱいはなかなかの迫力。これなら『ヘルタースケルター』も… [映画館(邦画)] 8点(2012-09-21 18:28:27)(笑:1票) (良:1票) |
1048. 鍵泥棒のメソッド
『WEEKEND BLUES』の感想にて、自分は『WEEKEND』と『運命じゃない人』が監督の頂点とならないように、と書きました(やっぱり偉そうですね。スミマセン)。その後、『アフタースクール』が制作された訳ですが、前述の作品には残念ながら及ばぬと感じました。内田監督なら“もっとやれるだろう”という思いがありました。それほど2作品が凄かったのです(『アフター』も十分な佳作なのですが)。果たして本作。前作から4年。期待半分、心配半分で鑑賞に望みましたが、この場にて声を大にして叫ばせていただきたいと思います。「こんな映画が観たかった!」。内田監督の代名詞とも呼べる巧みな脚本もさることながら、本作で特に素晴らしかったのが人物造形。俳優の持ちうるポテンシャル(演技力からパブリックイメージに至るまで)を存分に活かしキャラクターに命を吹き込んでいきます。その手腕のお見事なこと。今の広末をこれほど魅力的に撮れる監督が他にいるでしょうか。所作、言葉遣い、服装、その一つ一つに全て意味がありました。また『アフター』の感想と重複してしまいますが、画面から監督の人となりが伝わってくるのが内田映画の良いところ。根底にあるのは人間愛、人間に対する信頼。人間を丸ごと肯定しているから、皮肉に嫌味がありません。それが素直に笑える理由。この傑作コメディを映画館で観ないなんて選択はありません。極上のクスクス感と喜びの胸の痛みを多くの観客と分かち合ってください。観終えた瞬間から、車の盗難防止アラーム音が愛おしく聞こえるようになるでしょう(笑)。満点の採点で全く問題のない傑作ですが、内田監督には“これ以上”を目指していただきたいので、9点に止めておきます。次回作まで正座して(と言いたいところですが、自分にも生活がありますので、立ったり座ったり寝たりしながら)心して待ちますので、次回も極上の一品をお願いします。追伸。大事な事を言い忘れていました。『アフター』の感想にて、“魅力的な画作りを”との希望を述べましたが(またまた偉そうで申し訳ない)、本作では随所に観客の心を掴むイイ画がありました。中でも予告編でも使用されている“一人通天閣スペシャル”(@ダイナマイト関西)に、“2つのラストカット”(エンドクレジットが流れてもすぐに席を立たないで!!)。監督の主張が感じ取れる素晴らしい画でした。良い映画には必ず心に残るシーンがあります。(2020.2.27追記。韓国リメイク『LUCK‐KEY』鑑賞を機にオリジナルを再鑑賞。改めて本作の完成度の高さと“手数の多さ”に驚かされました。まるで内田監督から北斗百烈拳をくらったような。私の中のいい感じのツボめがけて全弾命中ですよ!無理矢理10点を回避していたのが申し訳ないので満点に訂正します。後発リメイクと比較する必要もないのですが、かの作品に無くて本作にあるもの。それが本編ラストカットに集約されています。ガバッツ。ガツッ!の部分。コメディとして最高の締めくくり。そしてこの“人間観”がたまらないんだよなあ。 [映画館(邦画)] 10点(2012-09-18 20:35:19)(良:1票) |
1049. 月に囚われた男
《ネタバレ》 久しぶりに(?)邦題が内容にマッチしている映画に出会いました。確かに主人公は月に囚われています。家族に会うという希望を抱きながら、地球から遠く離れた月で3年間働く。それだけのために生まれ、それだけのために死ぬ運命。孕むテーマは人間の尊厳や生死観にかかわる重厚なものでしたが、物語は意外なほど淡々と進みました。ドラマチックな展開などありません。まるでシリアスを拒絶するかのよう。この味わいが絶妙でした。なぜ彼らが真実を知っても取り乱さないのか。その理由に思いが届いたとき、物語は深みを増した気がします。個人的な希望を言わせてもらえば、ラスト。ワンカットで構いません。ハワイの風に吹かれるサムの姿を見たかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-09-15 18:39:43)(良:3票) |
1050. あぜ道のダンディ
《ネタバレ》 本作における“ダンディ”の定義とは、“やせ我慢してカッコつける”ということ。居酒屋で、主人公の親友が息子君に説明しています。確かに主人公の言動は、この定義に当てはまりました。お腹が空いても朝ごはんを食べない(朝食代の節約?)。ゲーム機の知識が無いのに店員さんに聞かない(無知をさらすのが恥ずかしい)。「お金はいっぱいある」と嘘を言う(子供に心配させたくない。でもバレバレですよ)。そもそも体裁を気にする日本人にとって、“やせ我慢”とは美徳の一部でした。ところが欧米のライフスタイルが浸透してきた昨今、価値観も一変しました。利益至上主義。やせ我慢なんてナンセンス。でも主人公にシンパシーを感じてしまうのは、自分も同じオールドタイプだからでしょう。単に恥ずかしがり屋の見栄っ張りとも言いますが(苦笑)。そんな本作のダンディ父さん。親友の前では弱音と愚痴吐きまくりです。2人の掛け合いがまるで漫才のようで可笑しかった。画面に向かって何度ツッコんだことやら。見た目はオッサン、中身は中学生って、一体何処の名探偵ですか。子育てや介護といった高いハードルを乗り越えてきた立派な大人が、子供に戻ってしまう滑稽さ。でも、こうやってバランスを取りながら、大人は苦い現実と折り合いを付けているのだと思います。ラスト、主人公は言います。「依然として後方」と。多分ずっと後方。逆転なんてありません。でもいつか来るはずの、ラストスパートのために、今は力を溜めるのです。そんなやせ我慢で、耐えられる今日がある。似合わない中折れ帽で、ダンディを気取る親父さんに、幸あれ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-09-12 19:56:51)(良:1票) |
1051. ゴーストライター
《ネタバレ》 冷静に考えてみると、“秘密を何故自叙伝の中に隠す必要があったのか?”という疑問は残るワケですが、細かい事は考えず、『サスペンスの様式美』を楽しむというスタンスが正しいかと。引き出しの裏に隠されていた資料、カーナビゲーションに入力されていた行き先、顔を曝さぬ敵、島のロケーション、どれも素晴らしきサスペンスの流儀でした。堪能させていただきました。なお一番怖かったのは、元英国ファーストレディと寝なければならなくなった場面。震えました。もう、お断りする選択肢はありませんもの。ある意味、極道の女に手を出すよりもヤバイのに。絶世の美女なら諦めもつきますが、お美しいとはいえオバサン。縮み上がらずに抱けた、主人公の男気を尊敬します。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-09-09 20:10:35)(笑:1票) |
1052. エッセンシャル・キリング
《ネタバレ》 “主人公の台詞なし”も然る事ながら、より驚かされたのはBGMの使い方でした。状況、心情を煽る楽曲が皆無なのです。正確に言うと、微かに流れているシーンはあるものの(笛の音?でしょうか)、現場の状況音を掻き消す程の音量ではありません。観客が耳にするのは、常に主人公が耳にするものと同じ。風の音、雪を踏みしめる音、野犬の鳴き声、ヘリコプター音、時にはカーステレオから流れる大音量の音楽。主人公の視線に肉薄するカメラワークと相まった臨場感の創出はお見事でありました。普段、如何に私たち観客が音楽演出に慣らされているかを理解しました。映画のBGMは料理で例えるなら調味料。濃い味付けや化学調味料を使うと、確かに分り易く美味しい料理が作れます。でも一つまみの塩で素材の良さを引き出すような一品に出会うと嬉しくなります。料理人(監督)の力量が窺えるというもの。一見、単純な脚本に見えますが、主人公の回想シーンに込められた意図も興味深く(未来の出来事が挿入されていたり、主人公が目にしていない情景が含まれていたり…まるで神の視点のよう)、表層的な理解のみで語る事の出来ない作品であると感じました。分り易いエンターテイメントのみが娯楽にあらず。本作も立派な“娯楽”作品と考えます。映画における表現方法の奥深さを教えてもらいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-09-06 17:39:03) |
1053. 稀人(まれびと)
『呪怨』のホラーエンターテイメント路線とは違うモノを作りたかったという意気込みは理解できますが、如何せん面白くありません。観客に何を伝えたいのか、よく分からない。一言で言えば“考え過ぎ”でしょうか。 [DVD(邦画)] 2点(2012-09-03 18:51:30) |
1054. ドライブ・アングリー3D
《ネタバレ》 (ネタバレあります。未見の方はご注意ください)←本サイトで感想を投稿する際、いきなり核心に触れる内容を記述する場合は、念のためこのように注意喚起をしています(一応ネ)。本作の場合も“地獄を脱獄してきた男が、娘の復讐と孫救出のためにカルト教団と対決するバイオレンスカーアクション”と書きたかったため、冒頭の定型文を挿入した次第ですが、実はそこまで気を使う必要は無いのかもしれません。というのも、物語の肝である“地獄から脱獄”の部分を、クライマックスまで隠しておこうという意図が脚本からは感じ取れないからです。目玉を銃で撃たれたら、そりゃ死にます。死にますとも。言い訳なんか出来ません。“インパクトのある画”が欲しかったのでしょうが、中盤で設定の肝をネタ晴らしするような真似は如何なものかと。ラストで種明かしされても、『でしょうね』という感想しか出てきませんもの。アイデア自体はすごく面白いと思うので、雑なつくりが勿体無いと感じました。もっとも、このくらい大雑把な方がバカ映画には相応しいとも言えます。なんだかんだ言っても、憎めない映画ではあります。 [DVD(吹替)] 5点(2012-08-31 18:17:23)(良:1票) |
1055. モテキ
《ネタバレ》 Jポップを存分に盛り込んだプチミュージカル仕立ての本作。主人公の心情とシンクロする楽曲のチョイスは自分の世代どストライク。歌詞のカラオケ風字幕も楽しく、Perfume出演のダンスシーンの爽快感は抜群でした。痛くて切ないセカンド童貞男(ホントはそんな概念は無いよ!)の“モテキ”を生暖かく見守る物語は、本命みゆきちゃんの最後通告で小休止。残る神輿女、先輩ライター素子とのエピソードでどんな風に締めくくるのかと思いきや、クライマックスでまさかの展開が待っていました。それにしても「幸世くんでは成長できない」は強烈です。ヒットポイントを根こそぎ削られます。幸世も相当堪えたでしょう。でも彼は諦めなかった。いや、諦めていたのかもしません。だけど、みゆきの顔を見て感情を抑えきれなくなった。彼女を捕まえても、かける言葉なんて用意しているはずもありません。ただ、逃げたから追った。一度は不発に終わったももクロの『走れ!』が蘇ります。逃げる女。追う男。引き倒し、泥だらけ。最悪です。でも大きな意味がありました。辛く苦しい現実から目を背けてきたみゆきに、幸世は“泥まみれ”という現実を突きつけたのです。図らずもそれは、みゆきと彼氏が今置かれている立場と同じ。感情のままに抱きしめてキス。その直情が女の心を打ち抜きます。好きな人を抱きしめること。唇を重ねること。そこには心を開放することの素晴しさと喜びがありました。彼女に本物の笑顔を取り戻させた幸世。もう「成長できない」なんて言わせない。抱き合う2人を360度から映し出すカメラワークは、一歩間違えば失笑もののダサい演出。しかしなんと美しいことでしょう。所詮はファンタジー?そう、もちろんファンタジー。でも心を動かされるのは、そこに大切なメッセージが込められているからです。ももクロを聞いて走り出そうとした主人公を「ドン引き」だと制止した素子が、ラストでは「走れ!」と笑顔で彼を送り出しているのは何故か。諦めることが肝要だと、損をしない事が大切だと、言い聞かせてきた自分自身の偽りに気づきます。何時の間に、そんなつまらない大人になってしまったのか。生の感情をさらけ出す事の輝きは、大人ほど懐かしく、そして眩しく感じるのかもしれません。ちょっとカッコ良く言い過ぎましたが、要するに童貞気質のトンデモ理論が無様に炸裂しただけです。でも、バカな奴ほど、情け無い奴ほど、愛おしいってコトで。 [DVD(邦画)] 10点(2012-08-28 17:42:01)(良:3票) |
1056. カウボーイ&エイリアン
《ネタバレ》 “もしも西部開拓時代の人類が宇宙人に襲われたら?”という設定は奇想天外ではあるものの、物語の骨子そのものは至ってオーソドックスです。奪われた家族を取り戻す、あるいは復讐のための戦い。ローテク人類が如何にしてハイテクのエイリアンに対抗するか。これが興味の中心です。これまでのSF作品でも苦心されてきた部分。本作ではエイリアンの武器を主人公が初期装備することで、パワーバランスを調整していました。興醒めする設定ではありますが、40代には慣れ親しんだパターン。『宇宙戦艦ヤマト』然り、『ザンボット3』『勇者ライディーン』然り。敵のテクノロジーを借り受けて対抗する事に抵抗感はありません。ただし本作の場合、ライフルやナイフでもエイリアンを殺せました。それならば地の利と人類の英知で対抗してくれた方が、ロマンはあったかなとは思います。主人公が武器の秘密を明かすタイミングが早かったり、説明役の別種のエイリアンが出てきたりと、脚本の質は今一つとの印象。結果的に、何を見せたいのか、何を伝えたいのか分り難いと感じました。 [DVD(吹替)] 5点(2012-08-25 21:24:19) |
1057. 大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇
《ネタバレ》 血の池も針の山も、あくまで空想の産物。さて、本物の地獄はどんな場所だったのか??地獄へのハネムーンという着想は実にユニーク。血の池じゃなくて、ビーフシチューの温泉。赤鬼も青鬼も角を切り落とすのが流行とは。この荒唐無稽なブラックコメディを成立させたのは、見事なキャスティングに拠るところ大かと。竹野内、水川コンビの力の抜け具合は絶妙でしたし、樹木、片桐、荒川の役作りは完璧でした(樹木希林なんて日野日出志の漫画のキャラクターそのまんま。)また最近大活躍の橋本愛も好印象。顔面真っ青でもその美少女ぶりが全くスポイルされないとは、いったいどれほど美人なんじゃい!物語に起伏があるわけでもなく、笑いも感動も大した事は無いですし、結構つくりは安普請だったりもするのですが、“この映画何となく好き”と言いたくなる不思議な魅力がありました。そうそう、音楽も気に入りました。本気でサウンドトラックを買いたくなったのは『嫌われ松子の一生』以来かも(注:サウンドトラック売ってないじゃん!)。本来の自分基準では6点が妥当なのですが、思い切って8点付けます。決して8点級の完成度ではありません。でも好きなものはしょうがないので、ご勘弁を。 [DVD(邦画)] 8点(2012-08-22 18:15:12)(良:2票) |
1058. 名探偵コナン 天空の難破船
《ネタバレ》 ズバリ本作のポイントは、蘭ちゃんと怪盗キッドのロマンス。特に問題なのはラストの2人のキスシーンであると考えます。接吻の方は一応未遂で済んでいるものの、お尻へのタッチはどうだったのでしょうか。蘭ちゃんは“工藤新一がしない事をキッドにされた”と証言しています。それに死角にある男の手を未然に防ぐのは、塚原ト伝でもなければ無理な話。さらにサブタイトルの難破船はナンパの暗喩で間違いないでしょう。蘭のお尻はキッドに“触られた”と推測出来ます。それもアクシデントではなく、触る気満々の、いやさ、揉みしだく気ビンビンのチャラ男にお尻を揉まれたワケです。どうですか。コレ許せますか。我らがアイドル、蘭ちゃんを汚した罪は重いッス。 [地上波(邦画)] 4点(2012-08-19 02:38:42) |
1059. ピラニア 3D
《ネタバレ》 (他の動物系パニック映画の感想でも書いた気がしますが、自分がこのジャンルの映画で最重要視するポイントゆえ、内容が重複するかもしれませんがご容赦ください。)人間VS野生動物を描く場合、まず考慮すべき案件は何でしょう。それは両者のパワーバランスの調整と考えます。人間は食物連鎖ピラミッドの頂点。万全の体勢で戦ったら、野生動物は太刀打ちできません。本作の魚類博士の台詞にもあります。ピラニアの駆除は可能だと。当然です。ですから、人間の能力を下げるか、あるいは動物側の攻撃力を高める仕掛けが必須となります。今回のピラニアは太古の生物とのこと。これで攻撃力アップ。さらにピラニアの先制攻撃。不意打ち効果で、人間側の防御力ダウン。道具を持たぬ人間など野生動物の敵ではありません。これでバランス調整は完璧でした。にもかかわらず、何故さらに人間から知性を奪ったのでしょう。群れを成すピラニアに向けて、拳銃で応戦させたり(マシンガンならまだ分る!)、水に足をつけたままスクリューで戦わせたり、一体どういうつもりなのか。ここに監督の意図が隠されていると判断します。つまりコメディ映画としての主張ではないかと。“玄関開けたら2分でご飯”ならぬ、“水に浸かったら2秒でお骨”は、ホラーではなくギャグですヨ、ということ。ですから拳銃の弾もことごとくピラニアに当たるワケです。そういえばAV監督のイチモツの扱いもヒドかった。エロ・グロ・ナンセンスは相性の良い組み合わせ。オモシロを組み込む狙いは間違っていないと思いますが、如何せんこの程度のギャグではパワー不足でした。裏を返せば、本作のエロとグロは充実していたと言えるかもしれませんが。 [DVD(吹替)] 6点(2012-08-15 17:48:27)(良:2票) |
1060. ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
《ネタバレ》 一見さんでも十分に、常連さんなら十二分に楽しめるであろう本作。『地上スレスレ手足バタバタ』や『変装マスク』を一ひねり加えて見せるあたり、シリーズファンならニヤリとする変化球でしょう。製作陣がシリーズの肝をきちんと把握している証拠です。ただし、この手法はある種の禁じ手であるとも考えます。例えるなら『懐かしのメロディ』。えてして歌手はアレンジして歌いたがるものです。マンネリを嫌ったサービス精神なのかもしれませんが、観客が求めているのは定番の味。マンネリ結構。いやマンネリこそ頂戴したい。それは映画にも言えるのではないかと。やはり『手足バタバタ』はハントにやって欲しいし、変装マスクもキッチリ見たいと感じてしまいました。レギュラー定着のサイモン・ペッグは期待通りの活躍。今までには無かったコメディパートを見事に担ってくれました。緊張感をスポイルしない笑いは、サスペンスを引き立てる最高のスパイス。エンターテイメント作品としてレベルアップを果たしました。シリーズ転機となった佳作ですが、個人的には箸休め感覚。これ以上無いほど豪華な箸休めではありますが、次回はド定番のメインディッシュを期待します。今から待ち遠しいです。トム・クルーズがあの見事な肉体美を保持している間に是非! [DVD(吹替)] 7点(2012-08-12 16:27:49)(良:1票) |