1141. 走れ、絶望に追いつかれない速さで
《ネタバレ》 人生とは、絶望に追いつかれない速さで走ること、というのは、人生とは「泳ぐ」ものだ(つまり、それを止めたら溺れて死ぬ)と考えている私の人生観にも少し近い。あくまで人生を甘く見ていない、と言えるのか、はたまた既に若干人生に絶望しかかっているというネガティブ故なのか、今作の主人公達はどちらかというと後者に見える。 そういった後ろ向きな人生観&具現化しつつある人生への恐怖と、その中に二人の友情が際立って輝かしく存在する様子を手短ながら的確に表現した前半は、率直に中々良い出来だったと思う。そこから、その「理由」を探しに行く淡々とした中盤も、ここも決して悪くないと感じた。しかし肝心の終盤、その「理由」が明らかにならないのはまだ許せるとして(それが分からないことがただ絶望であるのが主人公なのだから)、では何故主人公は立ち直ることが出来たのか、という部分まで曖昧模糊としているのは、アート系な作品ならともかく劇映画としては流石にちょっと不親切にも思われる。立ち直ってからもチョロチョロと話は続いてゆくが、もはやただ撮りたい映像を撮って詰め込んでいるだけにも感じられ、率直にこの部分は散漫だと思った(映像は非常に綺麗なので、ボンヤリ観ていけるとは言えるものの)。 重ねて、全体として映像は美しい。静かな演技・役者の仕事も総じて悪くない。実はお話にアイデアを欠いていた、という感じかと。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-10-13 22:26:36) |
1142. テキサス・チェーンソー ビギニング
《ネタバレ》 前作は比較的バランスの取れた「一般向け」スラッシャーホラーでした。今作、つくり自体は前作を踏襲しており、一見似た様なA級娯楽作品に見えるのですが(ジョーダナ・ブリュースターとか出てるし)、メインの後半があまりにもグロ過ぎて、到底一般向けとは言えないレベルのマニアック作品になっています。まあ、また同じ内容の話ではあるので、ショック描写を尖鋭化するのは差別化という意味では正解だと思いますが、実際に興行的にはやや前作を下回る出来に終わっていますし、果たしてどうだったのかと(私自身はこっちのが好みですが)。 お話の方は確かにさほど出来も良くなく、割と最初に(ほぼ)全員とっ捕まって、ナアナアに逃げ出しかけたりもするものの、基本的には単なる拷問映画になってしまっています(要は、主役のハズのジョーダナ嬢の使い方が宜しくない、かと)。出来が良いのはグロ描写と、実質主役のリー・アーメイの胸糞悪さ加減ですかね(終盤ボコボコにされて今作で唯一スカッとさせてくれることも含めて)。ラストのこの手のでは少し珍しい全くの救いの無さも(まあこの後の話を先につくっちゃったのですから、展開としては当たり前ですが)、個人的には偶にはアリかと。 [DVD(字幕)] 7点(2020-10-13 03:06:44) |
1143. テキサス・チェーンソー
《ネタバレ》 大まかな内容に加え、所々で素晴らしく原作リスペクトな点があってちょっと嬉しいですね。例えば、全体に行き渡る薄汚い質感や、走って逃げまくるヒロイン(それを追い回す動けるデブことレザーフェイス)なんかには、かの名作を観たときの感動が見事に蘇りました。特に、やっぱレザーフェイス怖いですね。デカいし、おぞましいし、何より得物のチェーンソーの恐ろしさたるや(痛そうだし、音も耳障りだし)。結論的に、名作ホラーリメイクとしてはかなり良く出来ている線です。少なくとも同じマイケル・ベイ製作の『13金』や『エルム街の悪夢』のリメイクらしきものに比べれば、軽く二回りは上質です。 ただ、私は元ネタで最も優れていた点は、他の作品には無い何とも言えない「ホンモノ」感だったと思っています。その点、今作は良く出来てはいるのですが、その部分の再現、というレベルには至っていないかと(端的に割とフツーのスラッシャーにも感じられます)。汚穢に塗れた質感も前述どおり素晴らしく不快ですが、ほんの少しのやり過ぎ感(からのつくりもの臭さ)も覚えますし、何より、ソーヤー一家の狂気という部分がいかにも映画的な月並で、一種マイルドな感じにもなってしまっています。痛いことに、その原因は実はリー・アーメイにある様にも思われます。彼を(偽)保安官に設定したことで、狂気が少し薄れ、かつ「ビジネス」な感じに見えている気がする、というか(ただ、アーメイを使うならやっぱ軍人か警官で、とゆーのは重々分からんでもないですが)。 [DVD(字幕)] 6点(2020-10-13 03:06:41) |
1144. ネバダ・スミス
《ネタバレ》 なかなか面白い質感・雰囲気ですね。様々な出逢いを通して主人公マックスは成長していく訳ですが、その彼らは皆マックスの往く道の傍をただ通り過ぎてゆくだけ、深入りすることはありません(終盤のジョナス・コードとの再会なんかもそうですが)。しかし、マックス自身はその数々の出逢いから確実に大切なことを学び取り、自らの人格を磨いてゆきます。その部分の押し付けがましさの無い奥ゆかしい感じが、西部劇的な緩やかなテンポと相まって逆に深く心に沁み入るものを生んでいる、と言うか。オーラス、暢気で静かで、それでいて仄かながらしっかりと哀愁を醸して終わっていく様子・音楽の使い方も非常に好みです。粋な、洒脱な西部劇ですね。 マックイーンも出色の出来ですね。原作では物語冒頭では16才で映画でもその設定を踏襲している、という部分には、確かにかなりの無理があります(序盤、まだガキじゃないか、なんて言われる場面もありますが、ナニゆってんの?という感じです)。しかし、その部分に無理をしたくなるのも分かる程に、実直で芯の強い、何よりもとにかく渋カッコいい主人公を抜群に好演しています。マックイーン起用を決断した時点で、勝利が約束された様な映画、だとも言えるのではないでしょうか。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-12 11:05:44) |
1145. 最低(2009)
《ネタバレ》 最低なのは、率直に男どもである。浮気性・甲斐性無し・息を吐くように嘘を吐き・そしてほのかに(一部は完全に)変態、等々、かなりどーしようも無い男の最下層。しかしそんな彼らには、そんな彼らをどーしても好きだ!という女が何故か必ず(時として複数)付き纏っている。その意味では、最低なのは女どもの「男を見る目」かも知れないし、否、そーいう駄目男に女が惚れ込んでいるサマがこれも何故やら大好物で、挙句(短編とは言え)このテーマで映画3本も撮ってしまうという監督こそが、最も最低な変態なのかも知れない、とも思う。 ①最低:のっけからこれ見よがしに「最低」な男2人。しかし彼らには、それぞれ自分を好いてくれる女性が(片や3人も)居るという、この短編集のテンプレート。やっぱそーなると理由が気になるよね。実は優しい、見た目の(風変わりな)好み、或いはカラダの相性、とかかもね。う~ん、面白いすね。 ②微温(ぬるま):嘘と隠し事に満ち満ちた、4者の織りなすカオスな恋愛関係。中で彼らに共通するのは、皆自分が二股の当事者であることは認識してるということ、そして(それなのに)誰も自分が悪いとは思っていないこと、である。あっけらかんと破廉恥なサマにはもはや唯々笑うしかないが、にしてもこれはかなり笑えるヤツですね。個人的には、ベランダに積んであるトイレットペーパーにも久しぶりに泣くホド笑いましたよ。 ③足手:ごく大目に見れば、発端としては(ギリ)無くはない話であるし、男も女子も友人も、ある程度は理解のできる(ある意味)常識の範囲内な行動をとってゆく。しかし、理解不能なのはラストの三竦みである。な~んだコレ?監督はどーいう指示を出している?私の思考の及ぶ範囲ではない…というか。この不可思議な一瞬こそ、短編映画のひとつの醍醐味ではなかろーか。この三篇では一番好き。 [DVD(邦画)] 8点(2020-10-10 00:04:26) |
1146. 愛の小さな歴史
《ネタバレ》 私も、昔家族を亡くした経験がある。が、幸いにも私の家族の幸せは、そのことで損なわれたりはしなかった、と信じている。 この映画に描かれるものは、家族を一度「失い」それを取り戻そうと藻掻く人々の渇望、というか。それがどんなに絶望的であっても、そして例えどんな手段を使ってでも、その一縷の望みに追い縋る彼らの焦燥感からは、むしろ自分がこれまで意識してこなかった「当たり前のように生まれついて家族が存在すること」の幸福をひしひしと実感できる。生まれついての家族というのは、選べないし、後からつくる訳にもいかないのだから、「亡くした」とて決して替えは効かない。だからそれを失う(或いは手に入れられない)ことには、他の人間関係には無い「取り返しのつかなさ」という絶望が生じるのだろう、とでも言うか。 演技面では、何と言っても中村映里子が出色。スレンダーながら実にキレの有るパワフルな怒りの演技は大迫力だったが、本質的には彼女の感情は怒りではなく(自分が家族を持ち得なかったことに対する)悲しみであり、それを的確かつ「熱く」演技に含ませた、という部分からも、非常に優れた仕事だったと思う。 ラストも、やや安直なようだが、これは監督が一番言いたかった非常に重要なコトであろう。家族は失えば、再びはつくれない。でも、新しい家族は、つくれる。それこそが愛の、人間の連綿たる歴史の最も肝心なコトなのだろう、と。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-09 21:47:35) |
1147. 情炎の女サロメ
《ネタバレ》 映画全体のつくりがそこまで重厚長大というワケではないが、個々のシーンのつくり自体は非常にソリッドな史劇映画。とは言え、スペクタクルな場面が見せ場というワケでもなく、見どころは俳優陣の演技合戦というトコロ。 ヘロデ王&ヘロディア王妃には名優チャールズ・ロートン&ジュディス・アンダーソン。いずれも重厚で奥行きのある演技で、好色・狡猾・尊大・憎悪と恐怖、といった負の人間性を味わい深く醸し出す。洗礼者ヨハネ役のアラン・バデルは思ったよりも実は若造だが、民衆をアジる煽動者としての熱量のある演技はこれも中々(ただ、キリスト教の預言者としては若干ながら胡散臭い&存在感が重々しくない感じもする…カモ)。 そして肝心のリタ・ヘイワースだが、今作時点で35歳、と本来のサロメのキャラ的にはもう少し若い方が望ましい…のではないかとも思われるが、纏う色気はその分また抜群である。ただ、そもそもリタ嬢は別に若い頃からセクシー全開だったのだから、彼女だけに着目するなら10年前に撮っても好かった作品にも思われる(とは言えお蔭でカラー作品になっているのであり、色付きリタ嬢を楽しめるという意味ではこれも重畳ではある)。相手役スチュワート・グレンジャーも、それに十分値する爽やかイケメンでこれもグッド。 話も結構面白いですよ。見事に妖艶な「七つのヴェールの踊り」をクライマックスとするラストの盛り上がりも、率直に素晴らしい。 [DVD(字幕)] 7点(2020-10-09 07:05:18)(良:1票) |
1148. ヴィナスの接吻
《ネタバレ》 ヴィナスの彫像にキスしたら、なんとホンモノになっちゃった!とゆーのからしても、非常に軽~いノリのラブコメ。しかし、何と言ってもこのヴィナスを演じるエヴァ・ガードナーがとんでもなく美人(完全に全盛期、なのですかね)。彼女のフワフワと浮世離れした「女神」ぶりも、これまた観ていて実に微笑ましい。その上に、名曲『スピーク・ロウ』の醸し出す極上のムードも絶品(いちおう、元はブロードウェイのミュージカルというコトで)。洗練された繊細な甘さを纏う、古き良き時代の「粋」な良品。 [DVD(字幕)] 7点(2020-10-07 22:55:48) |
1149. ディープ・ブルー(1999)
《ネタバレ》 全体的にアクション(サメだの爆発だの水流だの)がかなり派手で、観ていて爽快だし結構まあまあ面白いのだが、肝心の科学的な部分がこれも全体的に相当にいい加減で、観ていて色々と引っ掛かりまくる。 ①サメの脳みそから液を吸い出して、その場で脳細胞に垂らしたら活性化しました!てトンデモすぎて科学実験とは言えんでしょ。 ②ヘリが墜落してスーパー大袈裟に大爆発しました!だからと言って、施設の水面下まであっちゃこっちゃ壊れだすというのは正直言っておかしくない?(そもそも水深もそんなにないんだから、そんなに高水圧な訳じゃないのだし) ③更にそもそも、あの施設は一体何なのですか。普通にどっかの湾内に施設をつくろうとせずに、沖合につくるメリットが何も感じられない。あんなの嵐が来たらそれこそ一発で沈むっしょ。 ④あと、結局この施設からの脱出(水面への上昇)が主目的となる話なのだが、施設の構造があまりちゃんと説明されないので、単純にイマイチ状況が掴みづらいのもまま惜しまれる。 ただ重ねて、パニック・アクションとしては十分に及第点である。かつては『ジョーズ』と本作以外のサメ映画には観る価値が無いとまで言われていたのだ。そう言わしめただけのクオリティは、今なお確かに在るであろう。 [DVD(字幕)] 6点(2020-10-07 00:54:32) |
1150. キックボクサー ザ・リベンジ
《ネタバレ》 今作もアクションはまずまずです。前作でも感じたことですが、臨場感の高い撮り方が中々に巧いですね。かつ、今作では非常に凝ったカメラワークの長回しアクションシーンが随所に見られ、アクションの分量が2割増しになっていることも踏まえ、その面に関しては78点まで付けられます。しかし話の内容の方がどうも…中盤は正直、サッパリ入って来ませんでした。それでも序盤と終盤はごくシンプルな筋なので(それはそれで工夫が無い、のかも知れませんが)、気にせずにボーっとアクションを眺めてゆく分には大した問題ではないのかも知れません。 マイク・タイソンが出てきたり、ヴァンダレイ・シウバやら(何故か)ロナウジーニョやらが1シーンだけ出てきたり、キャストはある意味無駄に豪華ですが、やはり今作も出色はラスボスのモンクット役の彼でしょう。ストロングマンという力比べの世界チャンピオンだそうですが、2メートル200キロの体躯は正に圧巻のリアル・ゴリアテ、素直に「デケエッ」となること請け合いです。前作に引き続きそこはグッドだし、その部分には観て損が無いと言えるでしょう。 [インターネット(字幕)] 5点(2020-10-06 22:07:38) |
1151. キックボクサー リジェネレーション
《ネタバレ》 全っ然悪くはないですよ。少なくともリメイク元に比べれば、軽く30年分は確実に進歩してます。話は元ネタと全く同じですが、別にそれが悪い訳ではないでしょうし、肝心のアクションも分量がまず豊富、登場人物の格闘技的な動きの質も思ったより高度、かつ「スポーツ」的で、アクションとしてもスポーツとしても両面で「観れる」クオリティだと言えます。肩肘張らずに楽しめる格闘アクションとしては、十二分に使い道のある作品だと言えるでしょう。 ただし…その水準を更に超えてゆくような突き抜けて良い部分があったかと言われると、少し微妙かとも思います。何と言うか、総じて何もかもが75点くらいのまろやかなクオリティだ、という感じなのですよね。例えば主演男優なんかも、前述どおりアクションも体格もルックスも全てまったく悪くはないのですが、いざ点数を付けるなら結局どの要素も75点、というか。元ネタだと、これが抜群のイケメンで躰もバッキバキだったヴァン・ダムなのですから、そこは正直に少ーし見劣りがするな、と。 更にその意味で言うと、師匠役で登場するヴァン・ダム本人も動きのキレや筋肉は到底全盛期とは言えず、ちょっと期待からは外れ気味と言う感じでこれも残念です。このように、総じて平均的な本作で唯一平均点以上と言えるのは、ラスボスのバウティスタの存在感ですかね(やはりスッゴいガタイですね)。とは言え重ねて、決して中々悪くはない作品です。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-10-06 22:05:18) |
1152. ミッドナイトスワン
《ネタバレ》 映画全体の質の高さに比して、演技面はやや微妙、というか、正直言って若干しっくりこない。草彅クンは特に前半、感情をイマイチ演技に乗せ切れておらず、キレが無い(ただ中盤以降の比較的早くから彼は大分落ち着いた役柄に変わってゆくので、前半であまり感情をむき出しにしない様にしていたのはあくまでバランスを考えて、ということにも思える)。もう一人の主役たる服部樹咲ちゃんも、演技未経験というだけあってその素朴なお芝居は「今できることを精一杯やる」という感じだし、その他含む全体としてもさほど演技のクオリティで何とかしよう、という感じでもなかった様に思う(主演ふたりの出来に対する、これもバランスなのかも知れないと感じる)。 ただ、草彅クンは見た目・雰囲気の面では、その部分のリアリティとここぞの場面で醸す哀愁が絶品であり、キャラクター自体の出来は素晴らしかったと思う。樹咲ちゃんも、とにかくバレエ場面が上手い&綺麗でこれも素晴らしかった。演技だけが役者の仕事ではないのだし、私は今作をこの2人でつくったのは成功だったと思う。 お話の内容の方は、率直によく出来ていた。LGBTを題材とした映画としてもかなり壮絶に悲劇的だが、それもこの題材のひとつのリアルな側面なのは間違いないだろう。叶わぬ願いを追い続けるよう宿命づけられた凪沙がただ自分自身で在り続けようとする様には、人間の気高さを思うのだし、そして凪沙と寄り添い生きた一果が夢を叶えて生きてゆく人生の中にきっと凪沙も生き続けるのだろうこと、それはある意味「母」と子の絆であり、凪沙が確かにこの世に残したもの、だったのだろうと思いたい。 [映画館(邦画)] 8点(2020-10-05 18:59:05) |
1153. キックボクサー
《ネタバレ》 まだ若きヴァン・ダムは中々のイケメンだし、爽やかさというものもそれなりに醸せていると思いますが、それでもなんか主役ぽくないというか、率直に面構えが「ワル」すぎませんかね(特に目付きが悪い)。それはさておき、彼の鍛え込まれた肉体美(筋肉)は相当にハイレベルだと思いますし、格闘技的な部分の「動き」も確実にプロのそれではあります。ただ、彼の動きというのは完全にそのバックボーンたる空手、ないし伝統武術のそれであり、スポーツとしてのキックボクサーのものではないのですよね(それは彼の師匠含む他キャラも総じてですが)。 何が言いたいかというと、今作、カンフー映画的な小アクションもチョコチョコ入ってゆきますが、アクションの少なくない部分がムエタイ(キック)の試合なのですよ。それをこのヴァン・ダムその他の動きでやられてしまうと、K-1等で目の肥えた現代の格闘技好きの視点からすると、スポーツ的なハイレベルというトコロからはかけ離れた質感というか、率直にとてつもなく「チャチ」に見えてしまうと思います(正直、全くキックの試合には見えんのですよ)。他のスポーツもので言えば例えば『ロッキー』なんかでも、試合はもう少しばかりはスポーツ的な方のクオリティもつくり込めていましたよね(これは、スタローンがそのものズバリのボクシング経験者だった、からだと思いますが)。オーラスあたりはムエタイなのか何なのかよく分からないルールの地下試合になっていますが、これとて唯々中途半端、という印象が強いです。 その意味では、キックボクサーという題材自体がヴァン・ダムのキャラクターには少し合っていない、という様にも思います。単純に香港系統の古き良きカンフーの方がより適していると思いますし、この題材でやるならもう少し手間・時間をかけてキックの動きをヴァン・ダムに習得させるべきでした。ある意味、だいぶ手抜きな映画だと思いますね。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-09-29 23:42:28) |
1154. ウィッチクラフト 黒魔術の追跡者
《ネタバレ》 主人公たるセクシー肝っ玉母ちゃんが熟達の黒魔術師、という意味では、スリラーよりは確実にホラーに近いと言えるだろう。しかし、今作の恐怖とゆーのはより実際的(むしろ社会的)と言うか、超自然の力はごく善なるものに用いられ、逆に悪たる恐怖の源泉は実在してもおかしくない様な犯罪組織、ひいてはそれが蔓延る暗澹たる社会そのもの、と言うべきか。とにかく、こんな簡単に人身売買組織が女の子をそっくり纏めて誘拐できちゃって、警察含む公的機関も完全に取り込まれてて全く味方になってくれない、というトンデモない状況で、そこには率直に中々に高度な不快感を得られた(でも、いわゆる発展途上国って割とガチでこんなのが当たり前なのかもね…将来日本もこーなったらヤダなと)。 ただ、特にショック描写の諸々は(逆にある種のリアリティと陰湿な心地悪さは在るものの)かなり地味&マイルドで、それは肝心の黒魔術シーンも総じてそうだし(ラストとかも、目玉一個で娘の命が救えちゃうのはこの手のにしてはなんか随分とお得感がある)、他にも例えば人身売買とはゆーても女の子の暴行凌辱シーンがそのものズバリでテンコ盛り、とかいうコトでもない(それはそれで別にいんじゃね、とも思われるが、やや肩透かしなのもまた事実)。要は低予算ぎみ、という風に思っとけば間違い無いかもと(画面の質自体は意外とそこまでチープでもないのだけど)。 結論、普通のオカルトホラーではなく、ちょっと珍しい「社会派」ホラーとして観てみてはいかがでしょーか。個人的には、その意味では観る価値は十分あるよーにも思えますですね。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-09-28 23:30:06) |
1155. クライモリ デッド・ホテル
《ネタバレ》 今作は話の内容の方を少しばかり工夫し、ただ森で襲われる、というテンプレートからは若干の進化を図っている。しかし、そっち方面に注力した分、部分的にやや無駄にゴテゴテとした展開運びにはスピード感が無く、いつになったらアクセルを踏むのか、という風にも感じられる。そして何より、結局視聴者はショック描写の出来映えにしか興味が無いにも関わらず、その方面の出来は率直にシリーズでも最低レベル(月並+パワー&アイデア不足)。結論、いったん今作でシリーズが終焉したのもむべなるかな、というクオリティかと。 良い点としては、ロケーションのホテルはそこそこ豪華、かつ設備もシナリオ中に生かし切れていたと思う(些末な事だが)。 [DVD(字幕)] 4点(2020-09-27 23:51:37) |
1156. イップ・マン外伝 マスターZ
《ネタバレ》 シナリオの方はややダメ気味かと。 ・少し一貫性を欠き、筋がチョロチョロと二転三転して勘所がよく分からない ・雰囲気の面でも、序盤のファミリーでコミカルな感じに比べ後半がだいぶん重いのが若干チグハグ ・豪華助演陣の使い方も(お話的には)なんか雑 しかし肝心のカンフーアクションの方は、CGとワイヤーと早回しをフル活用し、かつそれらを見事に融合させた迫力抜群な出来映えがカンフー新時代を拓けるという程のクオリティ(とにかく電光石火、かつかなり「痛そう」で実にグッド)。マックス・チャンは演技もカンフーも流石の素晴らしさだが、豪華助演陣も各々の見せ場はこれも納得の風格(トニーの鋭さ、ヨーの華麗さ、バウティスタの筋肉)。 [映画館(字幕)] 7点(2020-09-27 20:25:25) |
1157. 死体語り
《ネタバレ》 主人公は最初っから死体と喋れるワケだが、この能力が話の主題なワケでもなく、これを単なる取っ掛かりとして展開されるのはオーソドックスな「幽霊の復讐」モノである。すると、迫り来る怨霊と主人公が喋れちゃう、というのが、これまた恐怖感を削ぐというか、結論的にはまるで怖くないホラーになってしまっている。そもそもその怨霊とゆーのが、生きてる時からウルサ型のクソなカミさんなのだから、こいつの襲来に際して感じられるのは「恐ろしさ」ではなくただただ「ウザさ」に他ならない。主人公にしても見た目が誠実そうな割には小悪党だし、カミさんも夫憎しと言えども自分の子供に手ェ出すとゆーのは如何にも頂けない。こーいうことならいっそブラック・コメディ風味に仕上げても好かったかも…なんと思ったり。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-09-27 00:38:27) |
1158. スクールズ・アウト
《ネタバレ》 何故かホラーに分類されてるが、ホラーなのは冒頭だけで、内容的にはかなりジメジメとしたサスペンス(サスペンスと言うホド謎解き要素が在る訳でも無いが)。要は、中学生の若々しい感性(てか、中二病気質とゆーか)故に、世界に絶望し、自己破滅的な行為を企てるガキ共が主役という話。こーいうガキって昔から必ず居るもんだし、その気持ちも決して理解できなくはないが、本作はサスペンス的なノリでつくられているが為にあまりガキ共に共感させようという方向には話が進んでゆかず、ただ気味の悪いガキが何やらシコシコ企んでいる、という割と薄い話になってしまっている。ラスト、唐突にガキ共に寄り添っちゃうよーな(=この世界はやはり歪んでいたのだ!的な)オチも、何をイマサラ、という感じがしなくもない。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-09-26 23:32:53) |
1159. ストロベリーショートケイクス
《ネタバレ》 登場する4人の女性は、人生それなりに酸いも甘いも噛み分けて、社会にとりあえずの居場所を築くことにも一応は成功している人生の中級者。そして、気に入らない出来事が身に降りかかってきたりしつつも、日々をごく淡々と過ぎ越してゆくことが出来ている。 しかし、何かが足りないその心の隙間は徐々に着実に広がってゆき、いつしか限界を迎えてゆく。結局のトコロ、足りないそれは「愛」であり、もっと有り体に言えばオトコだ、と言ってる様にも感じられる。女の映画だから当たり前なのかも知れないが、何とも「女々しい」話だとも思うのですよね(ちょっとキツイ言い方かも知れないが)。 『三月のライオン』でも思ったが、無機質な都会の情景から詩情的な雰囲気を引き出す部分には監督の優れた手腕をまま感じ取れる。その雰囲気、あるいはまた随所に見られる一種の画的な美しさ、などというものも率直にわりかし心地良いとも思ったが、話の内容はやはりかなり「繊細」で、個人的にはあまり共感も出来なかった。もう一押し、ちとパンチの効いた何やらかが欲しい…という感じかも。 [インターネット(邦画)] 6点(2020-09-23 00:10:29) |
1160. アポロンの地獄
《ネタバレ》 最初と最後に現代と繋がる部分は正直言ってよー分からんかった。だからその部分を置いて考えると、本質的にはド直球な「古典の映像化」である。勘所はその表現技法であろう。リアリティを無視した、お手製感満載のどこか適当で(小難しく言えば)非実在的・抽象的なそれは、ロケーションやセットには拘りつつも非常に「演劇的」というか、中々に面白い(非・通常映画的な)質感・空気感を醸成することに成功していた。演技面でも、やや大袈裟なそれは大いに舞台劇感を醸していたが、演技自体は確かに力強く、かつそれなりに上質であった様にも思われる。単純に傑作ギリシア悲劇の映画版として観るなら、意外とそこそこ楽しめるのではないか。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-09-22 19:47:24) |