1161. トレインスポッティング
救いようのない登場人物たちのどうしようもないストーリーなのですが、不思議と引き込まれてしまいます。レントン以下のダメ人間たちのキャラが丁寧に描かれているからでしょう。それにしても、「明るい絶望」って何なのだろうか。続編を観てみたい。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-23 23:27:38) |
1162. スターシップ・トゥルーパーズ
この映画、予算がないからと製作時に報道されていましたが、P・ヴァーホーヴェンはスプラッターがやりたくてわざと機動歩兵にパワードスーツを着せなかったのだと私は確信しています。リコの出身地をアルゼンチンと設定したり、この映画の中にはアメリカ合衆国が全然出てきませんが、ヴァーホーヴェンは米国の歴史と政策をシニカルにこきおろしていると感じました。全編に漂う安っぽい正義感は観る者の神経を逆なでしますが、この嫌悪感こそ伝えたかったものでしょう。彼はこの後オランダに帰るわけですが、本作を観ればいかにハリウッドと米国に嫌気がさしていたか判る気がします。ただあまりにスプラッター描写が凄いので、賛否が分かれてしまいますが。でもこれが彼の本当にやりたかったことなので、きっと本人は本望ですよ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-18 22:22:23)(良:1票) |
1163. レイジング・ブル
ボクシング映画はあまり好みではないけど、この作品は何度も観ちゃうんだなあ。スコセッシは実在のラモッタをリアルタイムで観ていただけに、単なる伝記物ではなく彼の栄光と没落を一大叙事詩として再現してくれました。同じブロンクス出身だけに思い入れも深かったのでは。キレるところはキレるけど、ジョー・ペシが他の出演作に比べると冷静な役柄でいい味出しています。ペシとデ・ニーロの掛け合いシーンは、まさに名優同志のシンフォニーという感じで魅了されました。ボクシング・チャンプから芸人になったと言えば、日本ではガッツ石松ということですかね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-10-15 23:20:33) |
1164. サルバドル/遥かなる日々
《ネタバレ》 オリバー・ストーンの気迫がひしひしと伝わってきます(良い意味でも、悪い意味でも)。ただ自分としては、ゲリラ側の描き方が非常に類型的なのが気に入らないところです。まあ、監督の心情が出ているところなので仕方ないでしょうが。右翼の暴力はダメで左翼の暴力は許される権利だと言っているのと同じですよ。ゲリラが捕虜を処刑するシーンなどとってつけたような印象しか与えません。ジェームズ・ウッズの熱演にプラス2点。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-10-13 11:49:31) |
1165. 天才マックスの世界
《ネタバレ》 この映画は色々な観方ができますが、私はこのセンスは好きですね。単純に言ってしまうと、名門ラシュモア校の生徒であることがアイデンティティだったマックス君のパーソナリティの喪失と再生がメインテーマだということでしょうか。味のあるビル・マーレイの演技が、気持ち悪いジェイソン・シュワルツマンの個性を中和してくれています。しかし、なぜあそこで「セルピコ」なんだろうか、悩むなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-10-07 01:11:08) |
1166. 国際諜報局
《ネタバレ》 60年代にレン・デイトンのスパイもの小説「ハリー・パーマー」シリーズは三作映画化されましたが、本作はその第一作目です。ハリー・パーマーは英国陸軍の軍曹ですが物資横流しで有罪となり刑務所へ。英国軍情報部MI5のロス大佐は情報部員になることを条件に彼を釈放させ、ハリー・パーマーのサラリーマン・スパイ生活が始まります。邦題は「国際諜報局」となっていますが大ウソで、そもそもMI5は007の所属するMI6とは異なる国内を対象とする防諜機関なのでハリー・パーマーのスパイ活動も容疑者の監視や盗撮といった私立探偵みたいな地味なものです。オフィスに戻ればすぐ日報と報告書を上司に提出しなければいけないなど、まるでどこかの会社の営業マンみたいな仕事ですが、きっと現実のスパイもこんな生活を送っているのでしょう。上司ロス大佐はシリーズ三作に登場するキャラですが、上流階級のオックスブリッジ出身という雰囲気が良く出ていて労働者階級のパーマーとの対比が面白いです。マイケル・ケインの演技がまた絶妙で、反抗的ながら自分の信念を曲げない冷静な男を軽妙に演じていて、パーマーは彼の生涯のはまり役と言えるでしょう。ロス大佐とパーマーのやり取りが洒脱で楽しませてくれます。ストーリーは国家機密を握る科学者の誘拐に端を発したスパイ同士の暗闘といったところですが、本作はとにかくハリー・パーマーの世界を楽しむのが正しい観方でしょう。このシリーズ三作は、三作とも監督やテーマ音楽が違い、それぞれ味がある映画になっているのが特徴です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-10-06 18:24:50) |
1167. 大列車強盗団
《ネタバレ》 ギネス・ブックにも載った1963年に起きた伝説の列車強盗事件の映画化です。このとき強奪された金額は263万ポンドにもなるそうで、現在の貨幣価値に換算すると100億円に相当する額だそうです。この作品は強奪が計画される過程から犯行後に犯人一味が逮捕されるまでを、ドキュメンタリー調に描いています。冒頭スピード感あふれるカーチェイスシーンが展開されますが、このシーンを見たスティーブ・マックイーンがいたく気に入り、ピーター・イエーツを「ブリット」の監督に引っ張ったそうです。ピーター・イエーツは「動くもの」を撮らせたらピカイチの監督ですが、夜の闇の中を郵便列車が疾走するシーンがまた迫力があります。実話ものだけに主犯のロナルド・ビックスは仮名でスタンリー・ベーカーが演じていますが、ちょっとクールすぎるキャラになっていて格好良すぎかな。余計な描写は極力省いて、ひたすら強奪までのプロセスを追うストーリー展開が公開当時は斬新だったと思います。主犯のスタンリー・ベーカーだけが警察の追跡を逃れアメリカに入国するところでこの映画は終るのですが、当時ロナルド・ビックスは逃亡中で、“THE ? END”というエンドマークが出るのがシャレています。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-09-29 22:08:46) |
1168. パーマーの危機脱出
“ハリー・パーマー”シリーズ3作はそれぞれ違う監督がメガホンをとっていますが、本作は第2作目にあたりガイ・ハミルトン監督・製作ハリー・サルツマンという007のコンビが手掛けています。“ハリー・パーマー”シリーズはいかにも英国的な地味な雰囲気のスパイストーリーですが、本作でもマイケル・ケインのハリー・パーマーがいやいやながら情報部員をしているという設定が面白いです。本作はベルリンが舞台で、KGBとMI5のソ連高官亡命をめぐる騙しあいがストーリーですが、KGBの大佐を演じるオスカー・ホモルカのキャラが傑作です。このキャラは、第3作の「10億ドルの頭脳」にも同じオスカー・ホモルカで登場しています。ハリー・パーマーは、いつも裾の短いレイン・コートにフレームの太い黒ぶち眼鏡で観た眼はサラリーマンにしか見えないのですが、この頃のマイケル・ケインは実に渋くてはまり役だったと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-27 22:19:43) |
1169. 僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ
《ネタバレ》 確かにこんなに奇妙な話は実話じゃないと映画にならないですよね、創作すれば、「このご都合主義の脚本はなんだ!」と、間違いなくと非難ごうごうです。ただ実話で本人が存命中の映画化だけに難しいところもあったのではと思います。「ユダヤ人はマダカスカル島に送られたと思っていた」という主人公の言い分には、「本当にそうだったの?、虐殺されていることに気づいていたんじゃないの?」という疑問が湧きます。ドイツ人になり済ますという苦労は理解できますが、エリート少年として扱われ、結構楽しい思いもできたのではないでしょうか。劇中終戦間際に収容所を生き延びた兄と再会した時、「僕が女を追いかけてたとき、兄はゲットーから収容所に送られんたんだ」と独白するシーンがそれを暗示しています。この時代にユダヤ人が生き延びるということは大変なことだったのだ、ということはもちろん否定しませんが。ラストにイスラエルで存命の老いた主人公の映像が出たとき、「あっ、スピルバーグは絶対この映画観てるな、“シンドラーのリスト”のラストの参考にしたな」と思いました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-09-24 00:01:34) |
1170. ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
この監督の作風というか間のとり方は私のツボなのですが、これだけの出演陣揃えたならもうちょっとひと捻りあっても良かったんじゃないでしょうか。グイネス・パルトロウも良かったけど、やっぱりアンジェリカ・ヒューストンが貫禄を見せてくれました。ジーン・ハックマンを喰っていましたね。上手い! [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-09-22 19:35:55) |
1171. 愛と哀しみの果て
《ネタバレ》 実は私は邦題が「愛と~」とつく映画にアレルギーがあって、70~80年代に撮られたこれらの作品をリアルタイムで観たことがありませんでした。この映画も今回初めて観ましたが、さすがシドニー・ポラック監督らしく王道中の王道を行くロマンスで、想像していたよりはるかに楽しめました。自分の琴線に響いたのはブロア男爵役のクラウス・マリア・ブランダウアーの演技で、ロバート・レッドフォードの死をメリル・ストリープに告げに来るシーンに、怠け者で遊び人なのに彼が不思議とすごく男らしく感じてちょっとホロりとさせられました。ジョン・バリーの音楽がまた美しくてこの作品の印象を良くしています。あの素晴らしいアフリカの空撮は、やはり劇場のスクリーンで観ないといけませんね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-09-15 21:12:19) |
1172. まごころを君に
《ネタバレ》 「アルジャーノンに花束を」という小説があるとは知っていましたが、それが「まごころを君に」の原作だとはつい最近まで知りませんでした。おまけにこの映画の原題は「チャーリー」ですし、本当にややこしい。製作年度を考えると納得しますが、この作品は当時はやっていたアメリカン・ニューシネマ的な映画なんですね。チャーリーが知能を身につけてからちょっとぐれるところの見せ方は、製作者は大真面目なのでしょうが今の眼で見ると苦笑させられます。クリフ・ロバートソンは、この作品では一世一代の名演技を見せていますが、私個人としてはこの映画にちょっと疑問を持つところがあります。それは、「知能が高いということは人間の幸福なのか?」ということです。手術が失敗してチャーリーはもとの状態に戻りそれがこの映画では悲しい結末として描かれていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?冒頭とラストでブランコに乗って子供と遊ぶクリフ・ロバートソンの演技が素晴らしいだけに考えさせられます。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-10 19:59:23) |
1173. 恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ
《ネタバレ》 出だしは正統ミステリー調で始まります。冒頭リチャード・バートンが何者かにぼこぼこにされ瀕死の重傷を負います。そしてなぜかロンドンの警察に所属しているリノ・バンチュラ刑事(フランス警察が交換研修で送り込んだという説明ですが、リノ・バンチュラを起用するための苦肉の設定)が担当で捜査を始めます。バートンが精神科医にかかっていたことを知り医師リー・レミックから話を聞きますが、そこからバートンの妄想なのか現実に起こったことなのか判断つきかねる過去の事件が浮かび上がってきます。B級テイストの映画とは思えない豪華なこの配役、特に謎の男バートンの怖さを巧みに語る脚本の秀逸さ、なのにこの映画が日本で劇場未公開だったとは驚きです。大聖堂の破壊などスペクタル・シーンも、今の眼で見ればちゃちぃのですが、しっかり押さえています。バートンのサイコキネシスで旅客機が高層ビルに突っ込むシーンは、思わず9.11テロを連想してしまいました。掘り出し物です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-09-03 20:37:35) |
1174. ミクロの決死圏
《ネタバレ》 ビジュアル的には時代を感じさせるものがありますが、特筆すべきは作りこまれたセットや装置です。潜水艇は今の眼から見ても洗練されたデザインであることには驚かされますし、秘密基地(?)内の機器類や縮小化の過程などディティールへのこだわりは素晴らしいものです。人体にいられる時間が60分なので映画内の時間経過とほぼシンクロさせて、人物の背景描写や設定説明をばっさり省略しているのは、ある意味いさぎよいかなと思います。ラクエル・ウェルチの胸をみんなでよってたかって揉みまくるシーンは、ほんと名シーンでした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-31 10:41:37)(笑:1票) (良:1票) |
1175. トロピック・サンダー/史上最低の作戦
金かかってますね~。内容は語るほどのものではないのですが、ちょっとやりすぎという面が強すぎです。序盤のグロい描写はちょっとひどすぎ。一番参ったのは、ベン・スティーラーのわざとらしい演技ですかね。監督としては知的で力量があり、音楽の使い方にも素晴らしいセンスを持っているのは確かで、そろそろ出演するのを止めて監督に専念したらと言いたい。とは言え、トム・クルーズの熱演に敬意を表してプラス2点です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-29 20:16:08) |
1176. シンシナティ・キッド
この作品ではマックイーンはお得意のアクション演技は見せず、エドワード・G・ロビンソン、カール・マルデンという二人の名優に負けない抑えた演技を披露してくれます。もともとマックイーンは演技力のある役者ですので、ポーカー・プレイヤーとしての説得力ある駆け引きが堪能できました。ただこの映画でのエドワード・G・ロビンソンは迫真の名演で、さすがのマックイーンも影が薄くなってしまいました。この人本当にギャンブル強そうに見えますねえ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-02 00:31:10) |
1177. シェイド(2003)
《ネタバレ》 皆さんの評価は厳しいですが、私は結構楽しめました。ポーカーというゲームは心理戦ですがはったり(ブラフ)という特有の駆け引きがありますので、映像で表現するのは難しくブラフの応酬をいかに面白く見せるかということがメインにならざるを得ないでしょう。この映画は勝負師ではなくいかさま師たちを描いているので、結構巧みにプロット設定がなされているのではと思います。やられるとわかっているのですが、今回も見事に騙されてしまいました。役者陣は豪華ですが、まさかあんな役でジェイミー・フォックスを使うとは驚きました。本作ではプロデューサーも兼ねているボー・ホプキンスが、すっかり貫禄が付いた姿を見せてくれたのがうれしかったです。 [DVD(字幕)] 7点(2009-07-21 23:50:01) |
1178. 遥かなる戦場
《ネタバレ》 戦史上有名な「バラクラバの軽騎兵の突撃」を、トニー・リチャードソンらしいシニカルな視点で再現しています。英国史における「バラクラバの軽騎兵の突撃」は、日本史でいうと「日露戦争の旅順港閉塞作戦」みたいな英雄的な戦闘という位置づけになりますが、無能な高級軍人たちの愚行が原因で起きた悲劇であると喝破しています。この映画の面白いところは、時代背景やクリミア戦争勃発にいたる経過をリチャード・ウィリアムスの手によるアニメーションで説明しているところで、当時の諷刺画を基にした画でヴィクトリア朝時代の雰囲気を見事に再現しています。軍装や時代考証は行き届いていて、当時の英国軍の服装や装備が50年前のナポレオン戦争時代から進歩していないことが良くわかります。前半は主人公たち3人の三角関係が物語の中心になりますが、戦争が始まる後半になるとそんな話は影も形もなくなってしまい、脚本のバランスの悪さが目立ちます。公開当時この作品は、興行的に失敗し批評家からも酷評されましたが、歴史物としては良くできた作品だと私は思いますし、再評価されても良いのではと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2009-07-21 01:03:24) |
1179. トッツィー
まさか自分がダスティン・ホフマンの女装にここまで引き付けられるとは予想外でした。なんというか、存在感がある女装ですね、すっかり見入ってしまいました。男に戻ったホフマンの眉毛が薄いのがまたおかしい。雑誌の表紙を飾ったりなどのエピソードは、ちょっとやりすぎ、いくらなんでもばれるだろうと突っ込みたいところですが、このシチュエーションはファンタジーなのだからまあしょうがないでしょう。また、全編に流れるデイブ・グルーシンのスコアが懐かしい80年代の雰囲気を思い出させてくれます。主題歌"It Might Be You"は、多分誰でも聞いたことのある名曲です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-07-17 01:39:51) |
1180. ブロードキャスト・ニュース
《ネタバレ》 主役三人の丁寧な演技が光り、それぞれの個性がきちんと描かれているのが良かった。この監督はこういう役者の演技を引き出すのが本当に上手。中でもアルバート・ブルックスは、こんなに上手い演技をする俳優とはこの作品で初めて知りました。ラスト、バラバラになった三人が7年後に再会し、各自の道を進んでいることを確認しながらまた別れてゆく展開は、大人のストーリーだと感じました。それにしてもホリー・ハンターはちっこいですね、ジョーン・キューザックと抱き合うシーンではまるで大人と小学生ぐらいの背丈の違いでした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-07-16 23:14:40) |