101. 突然炎のごとく(1994)
なるほどね。地方の若者の閉塞感ややり切れなさが描かれてる作品だと思います。ただ、標準語を喋る山本太郎はかなり苦しそう。それにしても、何でこんなタイトル付けたんでしょうね?まさか山本太郎と小木茂光が「ジムとジュール」ってこと(笑)?他の井筒作品と比べるとかなり異色(無理してエレポップやってた頃のU2みたい、と言えば、分かる人には分かるかな)。井筒ファンからすると、フランス映画やジャームッシュ作品を意識した作品作りの中に、やっぱり滲み出てしまう井筒センスが、何か可笑しい。スタッフを観てみると助監督の木田紀生という人が共同脚本なので、ひょっとしたら若手の作品を井筒監督が助力して完成させたのかも。思うに、「犬死にせしもの(86)」以降から「岸和田少年愚連隊(96)」を撮るまでの井筒監督は迷いと試行錯誤の時期だったんじゃないかな。「宇宙の法則(90)」もあまり「らしくない」作品だったし。「岸和田~」以降の井筒作品は「もうゲージュツとしての映画はええねん!ワシャ大衆娯楽映画を撮るんじゃい!」と覚悟を決めたような気がします。そういう踏ん切りをつけたきっかけが、ひょっとするとこの作品なんじゃないかな・・・と考えをめぐらせると、作品自体より「井筒作品史」の一本として、面白い作品だなあ、と思います。 5点(2004-05-11 17:27:06) |
102. 桜桃の味
正直に告白すると、僕もかなり眠くなりました(笑)。良い映画だと思うのですが、流れがゆったりしていて、すごくストイックな作りなんで・・・。ただ、色々な点で興味深かったです。自殺願望のある主人公と彼が出会う人々(若いクルド人兵士やアフガン難民、神学生、トルコ系の老人など)の会話は中東の姿が感じられるというだけでなく人生に対する含蓄が感じられます。あと、この作品では会話をしていても、ずっと主人公の顔だけ映してたり、走る車を延々と映してたりしていて、人物の顔をなかなか見せないし、なぜこの主人公が自殺しようとしているのか、或いは後半、カップルの写真を撮るよう頼まれた主人公がなぜ自殺をためらうのか、一切説明はされないんですよね。多分観客の想像力をかきたてようとしてるんだろうけど、この手の作品をあんまり観てないとツラいかも。 6点(2004-05-11 16:41:40) |
103. インディアン・ランナー
「これだよ、これが映画なんだよ!」と、観た後叫びたくなるような、久々に映画らしい、重ーいボディ・ブローを食らったような作品でした。骨太でセンチメンタル、まるで古き良きアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせる作風。生真面目な警察官の兄を演じるデヴィッド・モース、凛とした美しさを湛えたその妻ヴァレリア・ゴリノ、とてもキュートでイカれた元ヒッピーのパトリシア・アークェット、そして危うげでセクシーなフェロモンムンムンのヴィゴ・モーテンセン!「ロード・オブ・ザ・リング」でアラゴルンにヤラれちゃった人は、こっちを観とかないと後悔しますぜ。 9点(2004-05-06 18:43:53) |
104. クロッシング・ガード
ひょっとして、映画というジャンルで「テーマ」は何か、という事を語るのはナンセンスなのかもしれないのだけれど、それを承知であえて書くと、この作品のテーマ、それは「果たして、人と人は分かり合えるのか」という事ではないだろうか?作品の冒頭ではストリップの馬鹿騒ぎの中に佇むフレディ(J・ニコルソン)と、その元妻が参加する遺族の集いとが交互に映される。これは、人と人との間にある、容易には埋められない「溝」を象徴しているように思える。娘を轢き殺した犯人に対する復讐を誓うフレディは遊び仲間にも、また同じ立場である筈の元妻にも理解されない。尚且つ自分に想いを寄せるストリッパーに対しても心を完全に開くことは出来ず、一人自閉的な孤独を抱えている。一方犯人のジョンもまた、友人にその心中を理解されてはいないし、彼の出所後に出来た恋人(ロビン・ライト)は彼に寄り添いながらも、彼を罪悪感から解放することが出来ない(ただ、彼がある意味フレディより救われているのは、彼には彼を無条件で愛し、受け止める存在―両親―がいるということである)。しかし、そんな被害者・加害者の関係にある二人はラスト、「亡くなった娘を悼む」という点で分かり合えたのではないだろうか?両者の関係は一般的ではない、極端なものだが、人と人とが「分かり合う」ためには、単なる思いやり・同情だけでなく時に暴力的であるような「格闘」も必要なのかもしれない。余談だが、戦争前イラクを訪れたショーン・ペンはその理由を問われ「イラクにも自分達と同じような人間がいて、同じように子供がいるという事をこの目で確かめたかった」という意味のことを語っていたと記憶している。ショーン・ペン、有言実行の男である。 9点(2004-05-06 18:37:16)(良:2票) |
105. ボーイズ・オン・ザ・サイド
本編観てる時はそうでもなかったけど、エンディングで本編のシーンが繰り返されるところでジワジワ感動が押し寄せてくる感じでした。悲しい話なのに、あったかい気持ちになれますね。 7点(2004-05-06 16:09:10) |
106. 靴をなくした天使
これは久々にめっけもんでした。人間を皮肉な視点で捉えながらも、愛情のある描き方をしていて、キャプラの映画やO・ヘンリーの小説を彷彿とさせます。ラストはなんとなく予想できるのだけれど、話の運び方が巧みで飽きないし、ダスティン・ホフマンやアンディ・ガルシアも良い味出してます。同じダスティン・ホフマンが出演してた「ワグ・ザ・ドッグ」と同じでマスコミ批判が盛り込まれているけれど(「マスコミに演出された分かりやすいヒーロー」は、まるであの「ジェシカさん救出」を連想させる)、「ワグ~」より上手く作品化されてると思います。ただ、惜しいなあ、ラストをオシャレに決め過ぎたのがちょっと個人的にマイナス。もっとホロ苦い感じにすれば、より余韻の残る作品になったと思うのだけれど・・・。 8点(2004-05-02 19:37:57) |
107. Q&A
個人的には「セルピコ」より好きです。人種的緊張もはらませながら、ジワリジワリと事件の核心に迫る過程が実にスリリング。欲を言えば、ラストがちょっとロマンチック過ぎたかな? 8点(2004-04-30 19:06:45) |
108. ウィズ・ユー
この手の話は嫌いじゃないんですけどね。も一つ何か足りなかったような・・・でもところどころいいシーンはあったし、子役のエヴァン・レイチェル・ウッドが可愛かったので。 7点(2004-04-30 18:56:36) |
109. ビッグ・ショー!ハワイに唄えば
うむむ。自称「ゲロッパ切り込み隊長」のワタクシは(切り込んだはいいけど、誰もついて来てくれないという説あり)、「ゲロッパ!」そっくりな雰囲気・テンポがそれだけで心地良かったのだけれど・・・確かに欠点を挙げる事はできるんですよ。加藤茶を初めとする日系ハワイ人が不自然すぎるとか、竹内結子が一人浮いてるとか(いや、結構好きなんですけど)、尾藤イサオの親父ギャグがさぶすぎるとか。何より「演歌」という若者ウケしないものを題材にしたのが致命的なのでしょう。確かに僕も演歌や都はるみには興味ないし、今までこの映画を積極的に観たい気持ちにならなかったのは事実。たださぁ、例えば戦争嫌いな人でも「良い」と思える戦争映画はあるし、ヤクザ嫌いでも「すげえ!」と思えるヤクザ映画はあるじゃん。そういう意味でこの作品は演歌嫌いでも面白いと思える演歌映画だと思うのだけれど・・・。話は変わりますが、以前インタビューか何かで井筒監督が語っていた所によると、彼にも何度か「映画監督をやめよう」と思った事があったそうです。確かに過去の作品を見てみると、中には「あちゃー、やっちゃったよ」と言いたくなるような作品もあるんですよね。だからひょっとすると、いつまで経っても芽が出ず、肝心な所で失敗してしまう赤城麗子というキャラクターには、井筒監督自身の姿が投影されてたりするのかなあ、と思ったりもするんですよね。確かに、「潔くやめる」という行為はカッコ良いのかもしれないけれど、失敗を繰り返してもしぶとくタフに物事を続けるというのも、やはり尊敬に値する姿なんじゃないか、と僕は思います。もし監督をやめちゃってたら「ゲロッパ!」は生まれなかったわけだしね。 7点(2004-04-28 18:56:37)(良:1票) |
110. 聖なる嘘つき/その名はジェイコブ
うーん、微妙。なんかッ設定が凝りすぎって感じが・・・。 6点(2004-04-21 17:29:44) |
111. 真実の瞬間(1991)
正直、物語の展開が単調だなあ、とか、ラストがあっさりしすぎだなあ、とか文句がないわけではない。いっそのこと3時間くらいの大作にしてもよかったと思う。でもきっとハリウッドの人間にとって「赤狩り」は目を背けることが出来ないテーマだったのだと思う。そういう「思い」みたいなのはヒシヒシと伝わってきました。 8点(2004-04-21 16:48:56) |
112. わが心のボルチモア
邦題に「わが」って付いてるんで、何となく「わが谷は緑なりき」を連想しました。「わが谷~」でアメリカに渡った兄弟の一人がこのおじいさんなのかなあって。戦後アメリカ史みたいなの(テレビの普及とか、中流階級の郊外への流出とか)も描かれているのだけれど、基本的には家族が軸になっていて、安易な発想ですが小津作品をちょっと思い浮かべたりもしました。もう少し年を取ってから、もう一回観てみたいです。 7点(2004-04-21 16:31:14) |
113. ひかりのまち
「何か足りない」、でも、求めるものが何なのか、自分でも分からない・・・という、各登場人物の孤独や不安、イラ立ちが実にリアルに描かれていました。マイケル・ナイマンの音楽がとても映画と調和していたと思います。もう少し経ってから改めて観てみたい作品のひとつです。 6点(2004-04-21 16:09:38) |
114. サイモン・バーチ
《ネタバレ》 「優しい」映画ですねえ、映像も、音楽も。アシュレイ・ジャッドがいきなり死んじゃうトコでひく方もいらっしゃったみたいですが、アーヴィングの作品って、大体いつもそういう「唐突で、不条理な死」が描かれてるし、大事なモチーフなんだと思います。個人的にはサイモンが無垢な少年ではなく、ちょっとエロガキ入ってるとこも好き。久々に「ガープの世界」や「ホテル・ニューハンプシャー」を観たくなりました。 8点(2004-04-15 16:32:10) |
115. ツイン・フォールズ・アイダホ
うむむ、微妙。音楽や映像はとてもきれいだったのだけれど・・・結合双生児(俗に言うシャム双生児)を題材にした理由が、そのものを描きたかったのか、それとも単なる象徴なのか、イマイチわからんかった。前者ならもうちょっとリアルに描くべきだし、後者ならも少しファンタジックにしても良かったと思うし・・・なんか、双子のお母さんが出てきた辺りから「あれ?」てな感じでした。 6点(2004-04-15 16:24:45) |
116. ザ☆ドラえもんズ ムシムシぴょんぴょん大作戦!
や、別にどーってこともない子供向けの作品なんですけどね、これ。「帰ってきたドラえもん」と同時上映(ビデオにも併録)だったんでついでに観ただけなんですが、ドラニコフがけっこう良かったな。 7点(2004-04-15 16:08:07) |
117. 帰ってきたドラえもん
僕の場合、マンガ版ドラえもんの方がアニメ版より先だった。幼稚園~小学校低学年の頃はよく近所の同い年の女の子にコミックスを借りてむさぼるように読んだものだ。多分僕が初めてマンガを読んで泣いたのは、「帰ってきたドラえもん」のエピソードだったと思う(ちなみに初めて映画で泣いたのは「のび太の恐竜」。いずれにせよ、藤子F不二雄先生には足を向けて寝られないのである)。そのエピソードが映画になったのなら、これは観ないわけにはいかない。正直、映画としての出来というのは客観的に評価出来ない。オリジナルではなく、原作の名エピソードをそのまま映画化するというのは、企画として安易なのかもしれない。しかし、そんなことは関係なく、この作品を観ながら僕は、ただ号泣してしまった。そう、僕はかつて確かに「のび太」の一人(おそらく同じ事を思った、或いは思っている人は大勢いるはずだ)だった。その事を思い出させられたのだ。今改めて(TV放映版、或いはマンガ版)ドラえもんを見ると、あまりにわがままでドラえもんに甘え放題ののび太は鼻に付くし、子供の頃は気づかなかった事にも気付いてしまう。だが、だからといってドラえもんが所詮子供騙しの作品とは、やはり思えない。ドラえもんは、正しく子供の為の作品だ。もう一度言おう、僕は、いや、僕もかつてのび太だった。追記:原作の隠れた名作(と、僕は思っているのだけれども)で、のび太が100点取ったのに誰も信じてくれなくて・・・という話があるのだけど、あれも映画化して欲しいなあ。 8点(2004-04-07 19:06:43) |
118. 橋の上の娘
これは悪口で言うのではないのだけれど、一見お洒落に見えて、実は野暮ったい作品だなー、という印象でした。でもその野暮ったさがまた良い。僕の場合、ブランドをパリッと着こなしている人より、お菓子を作るのに砂糖と塩を間違えちゃったりするようなドジっ娘の方が好きなので(っていつの時代の少女マンガだ、それは)。それにしても人間関係って不思議だな。救ってるつもりが救われてて、支えてるつもりが支えられてて・・・。 7点(2004-04-07 18:15:09) |
119. マルコヴィッチの穴
このぶっこわれ具合がいいですね。この「マルコヴィッチの穴」というアイデアは何かの隠喩を含んでいるようにも思えるし、単にラリッて(笑)思いついただけなのかもしれないけれど、まるでハリウッド版「世にも奇妙な物語」のようでありました。ただ、予告編でおいしいシーンを先に観ちゃってたのが悔やまれる。出来れば何の予備知識も無く観たかった。 7点(2004-03-30 17:51:41) |
120. スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
《ネタバレ》 このシリーズには大して興味も思い入れもなかったのだけれど、アミダラ姫の身代わりとなる侍女の役をキーラ・ナイトレイがやっていると聞き、鑑賞、したのだけれど・・・白塗りメイクで全然分からん(なんせ彼女の母親も分からなかったらしいから)。DVDで観たのでコメンタリーでこの事について何か言ってるかな?と思ったのだけれど、ずーーーーーっとCGがどーしたとか効果音がどーしたとかっていう話ばっかしで役者に関するコメントはほぼ皆無。ま、こーゆー映画だからしょうがないのかもしれないけれど、きっとルーカスは役者より異星人やクリーチャーやメカの方に愛着をもっているんだろうな。 6点(2004-03-30 17:35:18)(笑:1票) |