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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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101.  T-34 レジェンド・オブ・ウォー 《ネタバレ》 
昔の「鬼戦車T-34」(1965)を下敷きにした映画で、収容所から戦車で脱走してチェコ国境を目指すという基本的な流れは同じである。もとは砲弾なしの戦車が徒手空拳で暴れる形だったが、今回は主人公が捕虜になる前段階から始めることで戦車同士が戦う場面を入れ、また脱走時にも都合よく砲弾を持っていたことにして最後まで砲撃の機会を用意していた。 加えて旧作で、戦車を追いかけたが置いて行かれた女性に相当する人物を、この映画では最後まで同行させる形にして、旧作を見た観客の満たされなかった願いを気持ちよくかなえる話を作っている。終盤で出たクリンゲンタールKlingenthalというのは実在の地名だが、ここは街外れがすぐチェコとの国境になっている場所で(ストリートビューでチェコ側から見られる)、ここまで来たからにはもう脱出目前という意味だったらしい。 そのほか、のどかな道端で戦車とドイツ婦人が出会うとか、ちょっとした街に入ってビールをもらうといった展開にも見覚えがある。略奪はしないといいながら、結局いろいろ恵んでもらったりして和ませる雰囲気も出していた。当然ながら一般の人々を害するようなこともなく、前にも増して穏健で角を立てない作りに見える。なお最後に大戦中の戦車兵らへの献辞が出ていたのは旧作の形式を尊重したと思われる。  戦車映画としては当然旧作よりも派手に見える。別に戦車好きでもないので特に突っ込んで語りたくなることもないが、砲弾の行方にこだわった映像化は面白くなくもない。また弾が当たった衝撃がガーンというのは印象的だった(女性が気の毒)。 世間的には戦車がバレエ曲に合わせて踊るのが話題になっていたようだが、残念ながらあまり華麗でも可憐でもなく、やはり戦車には戦車にできることしかできないと思わされた。また星空の下のラフマニノフはいかにも通俗的に聞こえたが、世界的な作曲家はチャイコフスキーだけでなく人材豊富だということのアピールかも知れない。 なおヒロイン(プスコフ出身22歳おひつじ座168cm)はにっこり笑うと可愛い人だった。演者のイリーナ・スタルシェンバウムという人はドイツ風の名字なので、ドイツ語の通訳をしているのも自然に見える。最近ではDie stillen Trabanten (2022)というドイツ映画にも出演したそうで、西欧にも活躍の場を求めているらしい(国際情勢が厳しいが)。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-12-31 10:12:18)
102.  ゾンビ・プレジデント 《ネタバレ》 
原題を「逃げ出し立法院」と読むとユーモラスな語感になる。劇中の「プレジデント」は男なので蔡英文総統のことではないが、イケメンでないので馬英九総統でもない。 まず化学工場というのは実際に起きた反対運動が背景にあったと思われる。工場建設を目論む強国の名前は「聖雅利安」だそうだが、「雅利安」とはアーリア(人)のことのようで、実在の国名でなく正体不明の世界勢力のせいにしておけば波風立たないだろうという思惑か。ウイルスを扱った映画であるから、公開時には誰もが新型コロナウイルス感染症を想起しただろうし、またWHO参加の件に関連して、台湾が防疫面で世界に貢献できるはずとの意識も高まっていただろうが、そういうことまで最初から考えて作ったのかはわからない。 ラストはうまいことを言ってみせたようでもあるが、個人の家から "世界が家" という考えに直接つながってしまい、その間にある "国家" を飛ばしてしまって大丈夫なのかとは思った。防疫の主役が国家でなく個人だったにもかかわらず、その個人が国家の英雄として戦史陳列室に展示されていたのは国家というものの存在に否定的な態度にも見える。しかしそもそも立法院が荒れ気味だとか立法委員の志が疑われる様子など、国内の政治全般をおちょくってみせる映画という程度に理解しておくべきか。冒頭と終盤のコメントで、人々の投票行動に働きかける形になっていたのは民主主義の根本を外していないとはいえるが、立法委員をほとんど総取り換えしても結局同じだったというのは、まあ世の中そんなものだと笑い飛ばす寛容さ? 諦念? 適当さ?も感じられる。 なお日本との関係では、露天風呂の芸者?+サルとか核爆発とか盆栽とかが出るのは好意的なようにも見えなかったが、これで特に悪意もないということか。選挙の宣伝文句に「鼻血の王者」と書いてあったのは一瞬何語かと思った。  そのほか本筋に関していえば、ジャンルに「ホラー」が入っているのはゾンビが出るからというだけの形式上の分類であり、実態としてはひたすら目まぐるしく騒がしいドタバタコメディである。プロレスやゲームやカラオケといった大衆文化的な要素その他よくわからない各種ネタが盛り込まれていて、実際に笑うところもなくはない。こういうのが好きな人々もいるだろうが、少なくともホラー映画という先入観は持たない方がいい。個人的には特に褒める気にならないがそれほど嫌いでもない。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-12-03 12:28:45)
103.  金門島にかける橋 《ネタバレ》 
1958年の「金門砲戦」を題材にして、当時国交のあった中華民国の映画会社と日活が共同製作した映画である。 ちょっと深刻味のある恋愛ドラマ程度かと思って見ていたが、「中華民國國軍」が協力しただけあって意外に戦闘場面の扱いが大きい。高雄から金門島に向かう艦船は結構な大艦隊のように見えたが、そこへ中共軍の砲撃や航空攻撃があって、やたらに水柱が立ったりして登場人物が危険にさらされていた。ちなみに5隻くらいいた背負い式の単装砲の戦闘艦は、アメリカに貸与されたベンソン級かグリーヴス級の駆逐艦かと思った。 本筋の恋愛物語については微妙だったというしかない。日本側ヒロイン役の芦川いづみという人は個人的に馴染みがなかったが、笑顔の口元に可愛らしさのある人だと思った。中華民国側ヒロインは怖い顔の場面が多かったが、脚がすらりとしてきれいなのはさすがと思った。  当時の国際情勢を背景にした映画のため、当然ながら現在とは世界観が違っている。中華民国側の人物が日本語を話すのは日本統治時代の影響かと思えばそうでもなく、ヒロインの養父は戦時中に日本と戦った大陸出身者だった。また島の人々が自分らを「中国人」と言う場面があったのは、中華民国=中国だったので当然としても、現在のような台湾アイデンティティとは無縁な世界と思わせる。それは金門島という場所柄(台湾省でなく福建省)からしても当然か。 戦って故郷を取り返したいと願う人物に対し、戦争以外の方法は考えられないのか、と主人公が言ったのは戦後日本的な平和主義だろうが、実際はその後年数を経て両岸の往来も容易になったので、結果的に主人公の願いが実現したとはいえる。しかし現実問題として平和を願えば平和になるわけでもなく、次にまた何かあった時は日本も他人事としては見ていられないという気にはなる。  その他の事項として、劇中出た「そうじゅうせつ」とは重要行事らしいが何なのかと思ったら、中華民国の建国記念日である「双十節」だとわかったのは少し勉強になった。 またこの映画とは別に少し前、日本の高校のマーチングバンドが台湾に招かれて大歓迎されたという記事をネットメディアで見た気がしていたが、これも実はこの記念日のゲストとして参加したのだそうで(2022/10/10)、日本と台湾の友情のかけ橋として期待されていたらしい。何か大昔の映画を見たような気がしていたが、現在にちゃんとつながったのが意外で少し感動した。
[インターネット(邦画)] 5点(2022-12-03 12:03:20)
104.  モルグ 死霊病棟 《ネタバレ》 
南米パラグアイの映画というのが最大の注目点である。撮影場所は国土の南東端にあるエンカルナシオン(Encarnación)という小都市だそうで、映像に出る建物は現地にある病院、公営墓地も実際にあるものらしい。  映画としては、病院の死体安置所など裏方で起きる怪奇談の形になっている。前半は大したことが起こるわけでもなく、変にものが動くとか音がするとか人影が見えるなどは病院という場所柄ありそうな話で、これなら気のせいにして無視しておけばいい程度のことだろうが、後半に入るとそれなりに多彩なドッキリの仕掛けがあってお化け屋敷の風情になる。しかしコップの動きとか、終盤で部屋に引っ張り込まれる間合いなどユーモラスなところもあって笑わされる。 映画宣伝には「恐怖の実話」と書いてあるが、全体の顛末からすれば実話らしいところは何もない。しかし脚本兼監督によると実際の医療機関に勤務している警備員・看護師・医師といった人々に取材したとのことで、そうすると前半で何気なく起きる地味目の出来事や、最後のコメントが実話相当の部分とも取れる。死体安置所では様々な連中が脈絡なく出現して一貫性がないように見えたが、要はこれまでここに来た多種多様な人々がいつまでも滞留しているという意味かも知れない。  主人公は最初から人格低劣で遵法精神に欠けたところを見せるので、多少ひどい目に遭っても笑って見ていられるものがある。序盤で出る彼女とのやり取りや優等生との再会エピソードは話全体との関係が曖昧だが、これは主人公の性格や境遇を説明するためのパートだったと思っておく。 終盤の格言のようなものはキリスト教の聖書に由来するものらしく、字幕では意味が若干不明瞭だが要は「自業自得」と解される(悪い播種→悪い収穫)。主人公は根から悪い奴でもなかったようだが、それはそれとして自分がやらかしたことの報いは避けられないということらしい。ラストの展開は意味不明だったが、要は酔っ払いの男と交代で今後は主人公が夜間警備をしなければならなくなったという意味か。 そういうことで細かく見るとよくわからない点も多々あるが、気楽に見ている分にはそれほど悪くない映画だと思った。医療現場では変な体験がありがちだというのは、日本だけでなく世界のどこでも同じということを改めて認識した(学びがあった)。ネコが侵入すると糞をするので嫌われているのも同じだ。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-11-19 10:15:47)
105.  死体語り 《ネタバレ》 
ブラジル映画である。場所はサッカーチームの名前や警察(サンパウロ文民警察)からして同国第一の大都会サンパウロである。Vila Gustavoという地名は主に中流層の住宅地だそうで、犯罪集団のボスがこの名前を聞いて怪訝な顔をしたのは、対立勢力の居場所として不自然だからと思われる。  最初は面白い設定で始まったと思ったが、結局最後は普通一般の心霊ホラーに移行してしまった感がある。死体と話せることの背景設定として、いわゆる霊魂というものが死後に身体を離れるのでなく、キリスト教でいう「最後の審判」までは遺体にとどまったまま墓にいる、という考え方ならユニークだと思ったが、劇中妻が家にまで押しかけて来たからにはそうでもないということか。あるいは墓にいられず神の世界にも行けない連中が、終幕時に外を歩いていたという意味か。 また「マーク」したのが誰かの説明はなかったが、少なくとも家族殺しを許さないのが神だというからには、キリスト教の神様がこの映画での行動主体として存在していたはずである。一方で序盤から神と悪魔について語る声が聞こえたり、TVの悪魔祓いを映したりして悪魔の存在を匂わせた上で、神がいるなら悪魔もいる、とまで言わせたからには悪魔も存在しなければ変なはずだが、悪魔の関与を明瞭にする場面は最後までなかったように見えた。例えば劇中の出来事を神と悪魔が分担していて、神が家族殺しの罪で主人公を見放してしまい、そこに悪魔が付け込んで破滅させようとしたのなら、劇中妻だけが極悪人であるかのように思わなくていいかと思ったが、そのように確信できる証拠もない。本来はそれなりに子のことを思っていたはずの母親(自分の無惨な姿を見せるなと言っていた)も死後に変わってしまったのなら残念だ。 なお題名に関して、原題は意外にも「死体は語らない」という意味である(nãoはnot)。これも例えば死体が話すように見せておいて、実は悪魔や神が話していたというなら間違っていないわけだが、実際はそうとも言えない場面が多かった。ただ少なくとも、全部が主人公の妄想だったというのはこの映画としてありえない。  そのようなことで、どのように筋を通そうとしているのかわからない映画だったが雰囲気は悪くない。最後に子どもらと一緒に助かった人物は最初から清楚系に見えたが、実際に信仰心の篤い真面目な人だったらしい。それにしても神だの悪魔だのと無関係にやたらに人が死ぬお国柄のようだったので、渡航時には十分注意してください。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-11-19 10:15:45)
106.  108時間 《ネタバレ》 
製作国はアルゼンチン・スペイン・ウルグアイとのことで、監督はスペイン人、主な出演者はアルゼンチン・スペインの混成になっている。ほか原案段階から関わって製作にも名前が出ている映画プロデューサーの人物がウルグアイ人らしい。場所設定としては映画解説によるとブエノスアイレスだそうで(撮影地は別)、閉鎖された精神病院が舞台ということで陰鬱な映像になっている。 なお時代設定が1975年と1984年である理由はわからない。その間の1976~1983年はアルゼンチンが軍事政権だった時代であり、いかにも意味ありげなので誰か解説してもらいたい。  長時間寝ないでいるとどうなるかという映画だとすれば、多少変な現象が起きてもどうせ幻覚だろうからサイコホラーかと思っていると、結局最後は心霊オカルトホラーに移行した感じだが、あるいは最初から両者がシームレスにつながっていたようでもある。序盤から出ていた「辺獄」という言葉は宗教用語らしいが、日本的にいえば死者が成仏できないでいる霊界くらいに思っておけばいいのではないか。 特徴的なのは演劇をテーマにしていることだが、要はいわば降霊術で死人を役者に憑依させて本人役をやらせていたらしい。演出家としては断眠によって役者が霊界とつながることを意図したのだろうが、その段階まで近づけない者(親友)がいる一方、霊界の影響で自ら破滅してしまう者(共演の男女)もいて危険なのはわかっていたようである。ただその霊界につながる力は実は狂気と同質のものであり、現世において狂気を知る者だった主人公は霊界の住人に乗っ取られることもなく、自分を保ったまま演技として成功させたということか(?)。これこそが本来の演出家の意図だったのかも知れない。 最終的には、主人公は現世にいながら狂気・霊界の両方とつながる者として、両方の存在に頼られる立場になったらしい(?)。向こうに行ってしまった演出家ともいつまたつながるかわからない、というのが最後のオチかも知れないが、それがいいことか悪いことかはわからない。  全体として、いろいろ考えて作ったようだが何かと面倒臭い話で、悪くもいえないが特に好意的にもなれない映画だった。なお他のレビューサイトでも書かれていたが、確かに主人公はショートヘアの方が可愛く見える。 ちなみに関係ないが、いつまでも寝ないでいると「ねないこだれだ」と言っておばけが出る(怖い)。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-11-05 10:11:50)
107.  未成仏百物語 AKB48 異界への灯火寺 《ネタバレ》 
AKB48メンバー8人が寺の本堂で怪談を語り、最後は住職の読経と皆の焼香で終わる。わざわざ映画館で見るものでもないが、実話の再現ドラマや怪談語り、心霊スポット探訪や有識者?との対談といった多彩な内容でTVの心霊特番のような趣がある。 個人的に関心があったのはAKBよりも実話怪談の映像化という点である。これの原作として売られている怪談集の全21話のうちドラマと語りで5話が採用されており、それぞれ名の知れた怪談作家の作なので実話怪談としての質は確保されている。 以下、メンバー8人がそれぞれ1話を担当する。  〇ドラマ「見逃し」 原作 黒木あるじ 原作本を読んでからだと表面的なレベルで止まって見えるが、これはこれで正解。深入りしなくていい。 〇対談 part1 実在の事故物件を訪ね、その筋の権威である大島てる氏の解説を聞く。ちなみに東京都某区東××にある物件の写真が出るが、ストリートビュー(2020.1月)で見ると現在は改装して外観を一新している。 〇ドラマ「宇宙人」 原作 松村進吉 そもそも宇宙人だと思い込んだ理由が不明。原作では当人が不思議ちゃん的人物だからということで大らかに納得したが、ドラマでは人物像が微妙に違うので単に意味不明になっている。なおヒロミ役の濱崎優姫という人はいい感じ。 〇心霊スポットツアー 毎年恒例の「心霊スポット巡礼ツアー」で知られる三和交通タクシーで八王子市内の2か所を訪ねる。この会社は応援したい。 〇ドラマ「お泊まり」 原作 松村進吉 話を作り過ぎ、教訓は不要。本来は実話とされていたはずのものがこのようにしてウソっぽくなる。 〇対談 part2 part1に引き続き、別の事故物件で大島てる氏が語る。 〇語り「見初められる」 原作 小田イ輔 何の感慨も残さずに終わってしまうが、原作では最後の一言が締めの納得感をもたらしており、逆に怪談作家はそういう点に気を使っていることがわかる。 〇ドラマ「あそぼう」 原作 黒木あるじ 単純化が過ぎる。原作ではもう一段の展開がある(座敷童ではない)。  原作とは別に映画としての独自性を出すのは普通かも知れないが、一つひとつにAKBメンバーのトークで安易な解釈をつけるとか、いい悪いの区別を簡単にしたがるのは、怪異をあるがままに受け入れようとする気構えに欠ける気がする。この企画ならこのやり方で妥当だとしても、原作もこういうものだと思ってもらいたくはない。 ただし、こういう企画自体は実はそれほど嫌いでない。
[インターネット(邦画)] 3点(2022-11-05 10:11:47)
108.  鬼戦車T-34 《ネタバレ》 
最初と最後に無名戦士の慰霊碑が映り、名も知れず死んだ英雄を顕彰する体裁になっている。碑文はロシア語とドイツ語で書いてあるが、ここはベルリン市内に今もある公園のようで(Treptower Park)当時は東ベルリンということになる。東ドイツならソビエト連邦の友邦であるから単純に敵扱いにはできないわけで、劇中のナチスは悪であっても一般庶民は傷つけなかった。 邦題からすると戦車映画だが、主役の戦車は砲撃もしないでただ走り回るだけである。邦題の「鬼戦車」のイメージそのままでもないが、途中いろいろ踏み潰したり突き破りながら爆走したりして、この車体自体が鬼(金棒なし)とはいえる。そういう鬼の所業だけでなく、お花畑の乙女(でもないか)とか、バットマンの像を倒してドイツビールをもらうとかの見せ場も入れており、悲壮感を強調しないユーモラスな作りになっていて、ちょっとした娯楽映画としてはよくできているように見えた。 なお映像的には半地下の窓から広場の戦車を見通す構図が面白かった。  ところで原題は「ひばり」という意味だそうで、どこに鳥がいたかと見返すと、最初と最後に空を映したときに声が聞こえた鳥がそうだったらしい。空高く昇っていく鳥に自由への渇望を重ね合わせたとすれば、世評で「大脱走」(1963米)のソ連版と言われているのも確かにそうかも知れないと思った。 森で若年兵が錯乱していた場面では、ドイツの林業は管理が細かいといいたいのかと思ったがそうでもなく、番号による支配の恐怖を表現していたらしい。自分としてはこれを見て、「収容所群島」で悪名高いソビエト連邦が他国のことなど言えるのか、と皮肉を言いたくなったが、しかしあるいはもしかすると、まさにそのソビエト体制に対する制作側の批判が込められた場面だったのではないか。どこまで勘繰るかにもよるだろうが、映画館での独裁者打倒の場面にも、少し前までソビエト全土を支配していた別の独裁者の姿を重ねていたかも知れず、これは英雄賛美を装った体制批判映画ではないのかと思った。  なおラストの展開について、これが当時の現地の観客にも素直に受け入れられたということは、過酷な抑圧や思想統制が続いた国でも("悪の帝国"ソビエト連邦)人の心が全部悪に染まっていたわけではなく、こういう素朴な良心や基礎的な倫理が一般庶民の中でちゃんと生きていたということだと解する。これからどんな非道がまかり通る社会や世界ができたとしても、せめて自分と自分の周囲ではこういう心を共有していきたい、と多くの人々が思い続けることが、支配と抑圧への最小限の抵抗になるのではと思った。
[DVD(字幕)] 7点(2022-10-29 16:02:48)
109.  誓いの休暇(1959) 《ネタバレ》 
劇中の屋外放送で、ノヴォチェルカッスクとロストフが奪われたと言っていたことからすると1942年(7/27前後)のことである。主人公が訪れたゲオルギエフスクというのが、上記両都市から南東に450kmくらい離れた実在の小都市(コーカサス山脈近く、鉄道駅あり)だとすれば、劇中時点のすぐ後で敵に占領されたとのことなので、終盤で鉄道が爆撃されていたのはその予兆だったことになるか。ちなみにストリートビューで見た限り(最新は2021年)、映像で見えたほど都会的な雰囲気の街ではない。  物語としては戦時中の話だが戦争映画でもなく、戦争という厳しい状況を背景にして人間の情を際立たせた映画に見える。主人公は一応19歳だと言っていたが、偉い将軍に年少者らしい甘えを見せたり、また戦友の妻に「大人は複雑」だと言われたりしていたことで、大人に対する少年の姿を表現した人物像なのだと納得した。 登場人物はいろいろ出て来るが、前半の負傷兵に続く次のエピソード担当のように出たのが変にカワイイ系美女だと思っていたら、この人がいわゆるヒロイン役だったらしい。そう思って見ていたところ、終盤に出た主人公の幼馴染がまた意外に可愛い感じでヒロイン役に劣らない。そうすると少女A×母×少女Bと主人公というのが人間関係の基本構造だったかと思った。 主人公は女性関係には特に積極的でもなかったらしく、今回が異性の心に初めてまともに向き合う機会だったようでもあるが、結局最後は母親が一番大事という形で終わっていた。自己防衛のためにママを引き合いに出しただけ(多分)のヒロインよりもよほどマザコンだったようでもあるが、それはそういう家庭環境だから当然だったのかも知れない。幼馴染はそれをよくわかっていたと見える。 ただ個人的にはその幼馴染が、再会時にずっと後に引いていたのが気の毒だった。この人も、主人公が戦争に取られたことで自分の気持ちに気付かされていたのだろうが、主人公の方は全く気付いていなかったらしいのが切ない。  全体としては主人公の青春映画の印象が強かったが、同時に戦時下の女性に焦点を当てた映画のようでもある。個別の場面では、電報を出そうとした男に怒りをぶつけた係員の顔に泣かされた。また戦友の妻に関して「働きながら帰りを待ってる」と説明されていたのは、男手を取られた家庭の事情があったということではないか。台詞のある人物で唯一、直接に戦争の惨禍で亡くなったウクライナ婦人は痛ましい。 そのほか映像面では、駅で画面の右上隅からヒロインが歩いて来て主人公を呼ぶ場面が印象的だった。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2022-10-29 16:02:46)
110.  ゾンビ・オア・ダイ 《ネタバレ》 
長い。無理して全部見たが脱力して眠くなった。 アゼルバイジャンの映画ということ自体が最大の特徴であるにもかかわらず、首都バクーのユニークな曲線ビルとか世界遺産とかが見えるわけでもなくご当地感は出ていない。邦題も無味乾燥なため異国情緒で人目を引く売り方になっていないが、ちなみにゾンビ・オア・ザ・デッドだと両方同じになる。 撮影は一応同国内でしたようで、言語は英語・トルコ語・アゼルバイジャン語とされている(IMDbによる)が、吹替版を見たので誰が英語だったかわからない。映像は現代風だが物語的にはかなり退屈であり、構成要素としては虐殺~脱出の努力~ゾンビという感じだが、原題のアポリアが行き詰まりというような意味とすれば脱出が主体でゾンビは賑やかしの添え物か。 以下、作文が面倒くさいので箇条書き。  ・劇中の武装組織は正体不明、実験していたゾンビ菌もどこから仕入れたのか不明だが、今はこういう勢力も生物化学兵器に手を出しつつあるという国際情勢の反映か。あるいは背後にまた別勢力がいるのか。 ・溝はどう見ても人工のものだが(壁に角がついている)、これと武装組織の関係がないようで存在の必然性が感じられない。虐殺した死体を埋める目的で掘っておいたとかいうなら説明はつくが。 ・主人公が苦悩する場面は取ってつけた感がある。またラストの意外な展開として設定されたらしいものに全く意外感がない。ストーリー上で何かの仕掛けがあったようにも感じられないままストレートに終わる。 ・主人公のオッパイが目立つ。映画としての必要性は別として劇中の状況では目立ちすぎだ。 ・「奴らはおまえの妻を犯し、お前の血を飲むだろう」という台詞があったが妻の血は飲まないのか。男は殺されるもの、女は強姦されるものという固定観念というか社会通念でもあるのか(いわばジェンダーロールとして)。 ・アゼルバイジャンは2020年に隣国と戦争したばかりで、その大義がどうかは別として物騒な国という印象がある。この映画はそれより前だが、見るとやはり物騒な印象でマイナスイメージしかない。この地域の平和を祈念して点数を+1にしておく。
[インターネット(吹替)] 2点(2022-10-15 10:34:20)
111.  ハーモニー・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
スペイン・ハンガリーの合作映画ということになっている。主要人物としては母親役と後半に出る女性役がスペイン系で、また端役の人々やスタッフなどにはマジャル人っぽい名前も見える(イシュトヴァーンとかゾルターンとか)が、主役級の男2人と子役はなぜかアメリカ人で台詞も英語である。 撮影場所はブダペストと、スペインのVielha, Lleida(カタルーニャ州の山の方)だとエンドロールに出ているが、劇中の場所設定としてはアメリカのような感じで、摩天楼のある大都市の近郊で雪原や雪山が見えたりするので場所感覚が混乱されられる。いろいろ混成状態の国籍不明映画だが、ほか登場人物が唐突に東洋の大国への憧れを語る場面があったりして(陽の昇る方角)、製作資金の出所に媚びたのかと思わせるのが興を削ぐ。とにかく南欧風の雰囲気が期待できる映画ではない(寒々している)。  内容的には、自分が見た範囲でいえばアイアムレジェンドを思わせるが、それほどの映像的な見せ場は当然ない。邦題はゾンビ映画を予想させるが、序盤と終盤にスリリングな場面があるだけで、ほとんどは人間ドラマとして展開する。ストーリーはそれなりにできており、意味は大体わかるが心に染みるものはなく、表面だけさらった感じで正直かなり退屈だった。無線の声とか後半の新たな人物なども形ばかりで半端な存在感しかなく、結果的には単なるアイアムレジェンド劇場公開版の安易な焼き直しに終わったようでもある。 物語で見せようとしていた割にその物語面での充足感がなく、ハリウッド娯楽大作志向の軽薄な印象だったので点数は厳し目につけておく。ちなみに邦題はともかくとして原題(英語)も実態を表現している気はしない。  登場人物としては、中心人物の子役は2002年生まれで当時12歳くらいだろうが、芸達者すぎて小賢しく見えるので好感が持てない。また後半に出た黒髪のクララ・ラゴという人(マドリード出身)は「スターシップ9」(2016)でも見たことがあり、今回も期待していたが役として半端なのは残念だった。役名がWomanとしか書いてなかったので、もしかしてゾンビ役かと思ったがそうでなくてよかった。
[インターネット(字幕)] 3点(2022-10-15 10:34:18)
112.  便座・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
日本国内向けの宣伝で、"BENZA OF THE DEAD" と書いてあるのは英題ではなく英語にもなっていないがそれなりに格好がついた題名に見える。本物の英題はニュアンスがよくわからないが、要は主人公が現にいる場所、及び人生の行き詰まりを意味するということかも知れない。または牛馬を入れておく仕切りの意味もあるとすれば、ヘザーという人物が「牝牛」と呼ばれていたこととも符合する。 登場するゾンビは普通のゾンビだが、便所がごった返すほど押し寄せて来る理由は不明である。特徴的だったのはサニタリーボックスの中身を好んでいたことで、個体差もなく全員群がっていたからには今回のゾンビ共通の特性だったらしい。これはレディース用レストルームだからこそ明らかになったことで男便所ならわからなかったはずだ。 またエンドクレジットによると、便所ゾンビの連中にはそれぞれ役柄があったようで、サンタゾンビとかジーザスゾンビは見た通りとして、マーケティングゾンビとか経理ゾンビとか人事ゾンビなどは各々それなりの役柄を演じていたのかどうか(経理っぽいのはいた)。"Bi-curious Zombie" というのはどういう演技をしていたのか探して見た方がいい(見落としたが)。 ほか性的に下品なところは多かったが排泄物は映らない。また映像面では、特に前半はクールな青をベースにして赤がアクセントになる色彩感がよかった。外の廊下は黄色系だったらしい。  ストーリー面では人間ドラマもちゃんとあり、様々な意味で行き詰っていた男が思いがけず励まされて前に踏み出していく物語ができていた。イブの初デートのあと一緒に帰れなかったのは切ないが、25日中には何とか母のもとへ帰りつくのだろうと思った。 コメディとしてそれほど笑うところはなかったが、ネズミ関連の夢オチ2回は嫌いでない。また先月(9/19)葬儀があったばかりなので、女王が便器の中からハローというのは不敬に思われたが、このように国民に親しまれた女王様だったのだろうとは思った(イラストと声が若い)。なおエンドロール最後の免責事項で、登場人物が実在の人物と似ていたとしても偶然だ、としたところで "real persons, living, dead or undead" と書いてあるのはよくある程度の軽いジョークだろうが、存命の人物なら女王も当てはまるかも知れないとして、real undeadというのも該当者がいるのかどうか。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-10-15 10:34:17)
113.  王の願い ハングルの始まり 《ネタバレ》 
15世紀に朝鮮国の世宗王が自国語の固有文字を作った話である。冒頭のテロップでフィクションと明示されるので、具体的に誰が何をしたかのレベルで史実と思わない方がいい。 まともに習ったことはないので細かいことはわからないが、劇中の文字製作過程はなかなか興味深い。ゼロから国王が考えたわけでもなく、表音文字の先行例である梵字や大陸諸民族の文字を参考にしたというのは現実味がある。最初に言語自体の音素がどれだけあるかを整理して、次いでそれぞれに当てる字母を考えていたが、点と直線でシンプルに作ることにしたのが記号的な外見の理由になっている。 先に子音が決まった状態では、若い僧とツンデレ宮女のメッセージ交換も子音だけのようだったが、その後に母音をどうするか一生懸命考えて、できた母音と子音を並べて書いた場面ではアルファベットと同じ音素文字の状態らしかった。そこからさらに視認性を高めるため「合字」して現在のような音節文字になり、最終的に「ㅇ」に新たな役割を与えて画竜点睛的な印象を出していた。本当にこういう順序だったかはともかくとして、音の種類で系統立てて作るといったポイントも押さえていたように見える。ただ使用方法として漢字との関係をどう考えたかは説明がなかった。 この文字が公的に使われるようになったのは19世紀末頃とのことだが、その頃すでに一般民衆の間では使われていたとのことで、劇中王が「諺文」という名前に込めた願いはかなえられたことになる。なお字幕で王都の名前が「漢陽」と書かれていたが、現名の서울(ソウル、漢字なし)を発音のまま書けるのも世宗王のおかげということだ。  ところでこの映画では文字製作が仏僧の功績だったことにして、儒教に対する仏教の存在を大きく扱ったように見える。しかしだからといって仏教が全面的に正しいわけでもなく、少なくとも他人様の門前で迷惑なデモンストレーションをして金品をせびるタイプの托鉢は否定的に扱われていたらしい。劇中僧侶が「物乞い」を蔑んでいたのも、自分らがそのように扱われていたことへの強烈な反感があったからと思われる。 しかしその「物乞い」の役をわざわざ外国人にやらせる必然性があったのかは疑問である。特に歴史を扱う場合など、まずは隣の島国を貶めてみせなければ済まない特殊事情でもあるということか。ちなみに映画本来のテーマである文字に関していえば、わが国の仮名文字は劇中文字ほど理屈っぽく作られてはいないが、開音節の言語としては十分に実用的かつ美的な表音文字として9世紀頃にはできていた。 ほか「先代王の約束を守れぬとあらば文明国の名折れ」という台詞は全くその通りで笑った。これは反論できないはずだと思ったら結局適当にごまかされて終わっていたが、筋を通して言うべきことは言う、という態度はこの映画に学ばなければならない。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-10-08 10:23:21)
114.  木浦は港だ 《ネタバレ》 
変な題名が気になったので見た。邦題は原題の直訳らしい。 木浦は港だ、といきなり言われると、だから何だ、と言い返したくなるが、これはもともと木浦出身の李蘭影(이난영)という歌手が1942年(昭和17年)に発表した歌の名前のようで、序盤でタクシー運転手が歌っていたのがそうらしい。いわゆる日帝強占期の歌だが別に軍国色もなく、木浦出身者の望郷の思いを素直に歌っている。 映画では、序盤からエイの刺身とタコが名物だとか、ヤクザの町だというのをコメディ調で見せている。その後も多島海風の風景が見えていたり、登場人物の地元へのこだわりが語られたりしてご当地映画の雰囲気を出していた。茶畑・竹林・蓮が見えたのはどこか不明だが、同じ全羅南道の中だと思っておく(宝城郡・潭陽郡・務安郡か)。 ちなみに沈没船の引き揚げの話が出ていたのは、1975年に木浦の近くでお宝満載のまま発見された14世紀の「新安沈船」からの発想と思われる。ほかセウォル号沈没事故も同じく全羅南道だがこの映画より後である(2014年)。  映画としては基本的にコメディで、本気で笑える場面もなくはない。ヤクザ映画だろうが酷薄な雰囲気などもなく、後半からはラブコメ風になるのが意外だったが、終盤になるとアクション場面も若干あって総合的なエンタメ映画の風情がある。最後もそれなりにハッピーエンド感があって悪くなかった。 ただ大衆映画らしく性的に下品な場面も若干あるので子どもには見せられない。また排泄物の関係では、急いで入った便所で便器の蓋が閉じてしまった場面が特に汚いので潔癖な人には向いてないかも知れない。コメディ映画ではとりあえず糞便を映さなくては済まない風潮でもあったということか(今はどうか知らないが)。 その他の関係では、字幕で「ナワバリ」と書いてあるところ(3か所)では、原語の台詞もナワバリと言ったように聞こえた。また刺青がヤクザの証というのは本当かどうかわからないがそういうことになっていた。
[DVD(字幕)] 5点(2022-10-08 10:23:19)
115.  杉沢村都市伝説 劇場版 《ネタバレ》 
乃木坂46のメンバーが主演するホラー映画シリーズ3作の3つ目で、主演は伊藤寧々という人である。「劇場版」とあるが、ほかにOV版とかTV版とか小説版があるわけでもないらしいのは、同シリーズの「死の実況中継 劇場版」「デスブログ 劇場版」と同じである。 シリーズ3作はみな都市伝説を扱っているが、この映画の「杉沢村伝説」は本当にあった都市伝説であり、看板とか鳥居とか岩など結構忠実に見せている。もとの話では青森県にあったとされているが、それをこの映画では「噂で終わった」ことにしていたので別の場所ということになる。ちなみに登場人物が村へ行く途中で見えた看板の「高山・市民の森」は静岡市葵区の山間部にあり、山の斜面に茶畑らしきものが見える場面もあった。近年いわれるオクシズ(奥静岡)での撮影だったかも知れない。  内容的には、ホラーとしての密度はあまり高くない。主人公が村に行くまで全体の半分くらいが経過し、その間に怖さの演出もあるが雰囲気だけである。 村に行ってからの出来事は、もとの都市伝説に「津山事件」(1938)のイメージが含まれているので似た感じになるのは仕方ないとしても、殺人鬼の扮装まで「八つ墓村」(1977)や「丑三つの村」(1983)だったのはどうかと思う。同じく昭和初期の事件が廃村の原因だったという意味かも知れないが、しかし昭和初期にしては民家の柱にエアコンか室内照明のリモコンが取り付けてあったりして、撮影に使ったお宅の様子がそのままなところが見えたりする。屋外でも道がタイル張りだったりカーブミラーがあったりして、この世のものでないはずの村も時代に合わせて変化しているのかと思わせた。基本的に真面目に作ったようではあるが、何かと突っ込みどころの多い映画だった。  なお少しよかったのは女性2人が村へ行く途中の雰囲気で、道の近くに少し険しい山がそびえる風景は異界に踏み込む緊張感を少し出している(送電線は邪魔)。と思ったら交通量の多い道路に行きついたりして、現実との境界が入り組んだ様子を見せていた。 登場人物としては、主演の人は149cmとのことだが、同行した兄の彼女(演・美紀乃)もそれに合わせたのか小柄な人で、この可愛らしい女性2人が馬鹿な男連中のせいで危険に晒されるのが痛々しく見えた。兄がいなくなれば妹の自立が促されるはずとの発言もあったが、優しいお姉さんが一緒にいてくれれば全てうまく行ったのではと思うと少し悲しい。
[インターネット(邦画)] 4点(2022-09-24 09:44:53)
116.  デスブログ 劇場版 《ネタバレ》 
乃木坂46のメンバーが主演するホラー映画シリーズ3作の2つ目で、主演は中田花奈という人である。「劇場版」とあるが、ほかにOV版とかTV版とか小説版があるわけではないらしい。監督はTVで「熱いぞ!猫ヶ谷!」「もっと熱いぞ!猫ヶ谷!!」といったものを撮っている人で、キャスト配列順の2番目にいる秋月三佳という人(ミキティ役)はこの番組との関連で出たものと思われる。 内容としては、当初はコメディ調でガールズトークが面白く、また登場人物の超素朴なやり取りに爆笑させられたりもするが、短い場面をあまり掘り下げないで次々つないでいくうちに、これはやはりホラーだったのだと思わされる展開になっている。ほのぼの感の中に微妙な不安を織り交ぜながら進める形になっており、これで途中までは結構面白いと思って見ていた。 しかし中盤以降、疑惑の対象が次々変わっていくようなのはいいとして、最後の収めどころがどこだったのか全くわからないのは困る。加えて主人公の感情表現が延々と続く場面が多く、特に呼吸が荒いのと、よろつく演技がくどいのには閉口した。これはさすがに演者のせいとばかりはいえないだろうと思われる。 そういうわけで、決して嫌いではないが褒められない映画になっている。  なお前記2人以外の出演者は宮原華音、高橋優里花、青木梨乃、森田桐矢といったところであり、自分としては知らない人ばかりだが(主演も同様)、このうち誰かに関心があれば見てもいいかも知れない。個人的には高橋優里花という人(「まど」役)が、やかましいがなかなか面白かった。  [2022/9/24追記] 8年も経って見返すようなものでもないが、同シリーズの「死の実況中継 劇場版」「杉沢村都市伝説 劇場版」を見たついでに再度見た。ほとんど初見時の印象そのままだが、学園ラブコメの雰囲気から入るホラーというのはユニークかも知れないと改めて思った。 事件の元凶が絞り込まれず拡散して終わったように見えるのは、当面のストーカーが逮捕されたとしても、似たようなのがそこら中に蔓延しているので全く安心できない世の中だという意味か(??)。それだとネットで個人情報を晒すことの危険という、当初の問題提起から逸れた形で終わったようでもあるが、しかしそんなことはこの時点で既に常識だった気もするので、それだけでは不足と思ってヒトコワ要素を補強したということか。何にせよ最後はひどい締め方で、主演の人はお疲れ様だった。
[DVD(邦画)] 3点(2022-09-24 09:44:49)
117.  死の実況中継 劇場版 《ネタバレ》 
乃木坂46のメンバーが主演するホラー映画シリーズ3作の1つ目で、主演は能條愛未という人である。「劇場版」とあるが、ほかにOV版とかTV版とか小説版があるわけでもないらしいのは、同シリーズの「デスブログ 劇場版」「杉沢村都市伝説 劇場版」と同じである。 劇中の都市伝説は架空のもののようで、映画の冒頭から主人公(が演じる劇中ホラーの登場人物)が殺されるまでの一連の部分がそうだとすると、①まず人が死ぬ映像を見たことで呪われ、②その後に来たメールのアドレスを開くと「メリーさんの電話」風の展開になる、という順序になる。うち②で本人が普段使う道を何かが走って来る動画付きなのは悪くない。また“あなたの後にいるの”的な演出は少し怖かった。 ただ①②がスムーズに融合しておらず、題名の「死の実況中継」と、別の“赤い服の女”とでもいうべき話を無理に接合したように見える。またラストでこれが別の形で再現され、観客のところにも“赤い服の女”が来るという感じにしたかったようでもあるが、途中のメール受信が省かれていたのが半端な印象だった。動画チャンネルに貼られたリンクをそのままクリックする形ならよかったか。  当方としては気楽に見られる安手のアイドルホラーを期待していたわけだが、ストーリーは意外に面倒くさく作られている。理屈がよくわからないので適当にまとめると、主人公は進学後の新しい友人と先輩のおかげで高校時代の記憶の呪縛から逃れられるかと思ったが、旧友のせいで先輩と友人を失ってしまい(多分)、改めて自分の意志で立ち向かおうとしたにもかかわらず、結局は旧友との「共依存」関係に引き戻されて終わったように見える。呪縛はかえって強まってしまい、主人公が憎んでいた「理不尽」が続いたまま今生も来世も生き続けなければならなくなった、ということか。かなり真面目に作ったようで、同監督の「デスブログ 劇場版」よりはいいかと思ったが、褒めるには微妙な印象の映画だった。 キャストとしては、主人公役のアイドルは悪くない。序盤で錯乱する場面などはいきなり経験不足にも見えたが、登場人物の息を荒くして変な印象になるのはこの監督の特徴のようでもある(前記「デスブログ 劇場版」と「黒蝶の秘密」(2018))。なお劇中の映像サークルの人物像を結構作り込んでいたようだが、申し訳ないが見る側にとっては関心ない(全員まとめてバカ)。
[インターネット(邦画)] 4点(2022-09-24 09:44:46)
118.  スプートニク 《ネタバレ》 
ソビエト時代の宇宙開発を扱った映画としては「ガガーリン 世界を変えた108分」(2013)、「サリュート7」(2016)、「スペースウォーカー」(2017)といったものがある。この映画の「スプートニク」は、原義としては旅の道連れといった意味のようだが、世界最初の人工衛星の呼び名でもあり、これも新手の宇宙開発映画なのかとミスリードする意図があったかも知れない。 実際は荒唐無稽なSFモノであって実話系でもないわけだが、それでも日本国内向けの宣伝にある「SFサバイバル・アクション」というよりは、上記の宇宙開発映画の延長上の印象がある。栄光の歴史の暗部を扱ったのがこの映画だ、と断言するほどではないかも知れないが、事故の隠蔽や作られた英雄像など明らかに批判的な姿勢を見せている。  物語としては、浮ついたところのないサスペンス調の展開でじっくり見せる感じになっている。SF的な独創性はあまり感じないが悪くはない。 ドラマ部分のテーマは親子関係ということかも知れない。添い寝するとか玩具を与える場面では、宇宙生物を人間の幼児と似た感じに見せており、このまま成長を続けるとすれば、飛行士は持てるものを子に与えて死んでいく父親のようだともいえる。主人公は自分が孤児だったこともあり、この男を生体兵器の育ての親でなく、孤児院にいる本当の子の父親にしてやりたいと思ったのだろうが、しかし父子の両方を助けるのは無理であり、せめて自分が親代わりになって子を助けようとしたらしい。 結局「皆を助けようとする」主人公の理想が否定された話にも見えるが、それなら何が優先なのかを問う話ともいえる。具体的には宇宙生物か飛行士か孤児院の子かの選択が迫られていたが、さらにいえば体制の維持強化か個人の栄達か、あるいは親子愛が守られる世界のどれが大事なのかということかも知れない。終盤では、ガガーリンが言ったとされる(劇中飛行士も言っていた)“神はいなかった”を否定するかのような台詞も出ていて、これが主人公の進む道を照らしていたと思いたい。  登場人物では、孤児院にいた子どもは役名が「Child in Orphanage」となっていてはっきり誰とは書いてない。子役のVitaliya Kornienko(2010年生まれ)は性別が女子である。 ほか雑談として、英雄は戦車に乗っているもの、と主人公が語っていたが、向こうで英雄といえば戦闘機乗りなどよりT-34戦車とかで爆走するイメージなのかも知れない。また「陸軍元帥ロバート・デュヴァル」とは何の冗談か(TV「将軍アイク」1979か)。日本なら三船敏郎元帥だ。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-09-10 09:11:31)
119.  サイレント・ランニング 《ネタバレ》 
時代は不明だが、アメリカン航空という会社がまだ存続している未来である。 設定としては地上の自然環境が全て失われてしまった世界のようで、これは昔の未来予想画で描かれていたように、地球全体が都市化されて地表が人工物で覆われたイメージと思われる。ただ2022年現在の感覚でいえば、今はやりのSDGsにも関連項目があるからにはそうなることは当面ない。 ファンタジックな印象のあるSFだが、見た目としては特に宇宙船のデザインが秀逸で、90年代に現実化した人工生態系「バイオスフィア2」を思わせる複数のドームが、軸線の周囲に別角度で設置されている(6個を6角形に)のがいい。こういうものは日本には作れない。 なお技術的な設定はわからないがエネルギー源は原子力だったのか。最後に設置した電球はいつまで保つのかと思うが、これは永遠だと思うのが観客に期待された鑑賞態度と思っておく。  主人公の思いとして、当初は自分が「森」を守る使命を負った特別な存在と思っていたが、結局は自分もその他人類と同類でしかないことを思い知らされたのではないか。同僚を死なせた罪悪感からか、苛立ってカートを暴走させて腐葉土?をぶちまけてしまったり、最後は大事な「森」の面倒さえ見なくなって荒らしてしまい、僚船から連絡があった時点では一瞬ほっとしたのではと思ったりする。またDroneと言われていた連中にとってもいい仲間とはいえず、主人公にとっての同僚3人と似たようなものだったかも知れない。そのような不完全な生物に「森」を任せられないというのは本人も自覚していたと思われる。 最終的な決断としては、地球緑化計画が実現不可能ならもう主人公の役目は終わっているが、次善の策として「森」を無期限で保存するために、いわば最後の責務として1号に後を託した形と思われる。主人公は海に流す瓶に例えていたが、本当に地球の生態系が完全に失われる間際になれば、こういう方舟的なものを残そうとする人間がいても変でないとは思った(共感可能)。 なお主人公の最後の行動には、同僚に対する贖罪の意味も当然あったと思われる。こうならなくて済むように、現実の地球では自然との共生に向けた努力が現に行われているわけである。結果的にはラピュタ風の終幕(こっちが先)と、今となっては古臭く聞こえるテーマ曲もけっこう心に染みたので悪い点はつけられない。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-09-03 10:03:12)
120.  吸血怪獣 チュパカブラ 《ネタバレ》 
配給会社によればグロテスク・ホラーだそうだ。チュパカブラとは南米で有名なUMAらしい。 原題は「チュパカブラの夜に」であって、午後に始まり翌日の朝で終わるが、その間の一晩に壮絶な殺し合いがあって登場キャラクターがほとんど死滅する。動物の死骸とか緑色の吐瀉物とかシチュー状の血液とか人体損壊とか内臓を焼いて食う(肝臓か)とか汚い・グロい場面が多いので、苦手な人は見ない方がいい。 話としては人間同士が延々と殺し合うだけで怪物は脇役のようでもあり、そこに貧相な殺人鬼まで絡んで来るのでまとまりなく見える。しかし本筋に見える家族間抗争と怪物が全く関係ないわけでもなく、さらに例えば今回帰省した男が、怪物の出現を含めた全ての発端に関わっていたと思うべきではないかという気もしたが、考えるための材料が揃っているかいないかわからないので面倒臭い。実際それほど暇でないので未解明で放棄する。 なおチュパカブラは最初の目撃例が90年代でわりと新しいものらしいが、この映画の時代設定は現代というより近代のように見える。あえて昔の話にした意図もわからないが、昔はこの程度のことはよくあった、という雰囲気は出ていたかも知れない。今はないともいえないだろうが。  その他の事項について、 ・エスニック調のテーマ曲が特徴的だが、軽薄なBGMがうるさいところがある。 ・チュパカブラは昭和の仮面ライダーに出た怪人のようで、着ぐるみの人間が中腰になってケモノらしく見せようとするのが間抜けくさい。 ・唐突に出た殺人鬼は役名が「Velho do Saco」(袋の老人)になっている。これはもともと悪い子を袋に入れてさらって行く怪人のことで、英語でいうブギーマンと同様に、聞き分けのない子を親が脅す際に使う言葉のようだが、それをこの映画では下世話な感じでリアル化してみせたらしい。本筋と関係あったのかはわからない。 ・動物の死骸が目立つ映画だが、エンドロールでは“撮影中に動物を虐待したり怪我をさせたりすることはありませんでした”(Nenhum animal foi maltratado ou ferido durante as filmagens)と書いてあり、本当はどうだったか別として一応気を使ったようには見せている。カエルは殺されなかったので無事かも知れない。
[インターネット(字幕)] 4点(2022-08-27 11:46:02)
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