1201. 怒りの葡萄
《ネタバレ》 過酷な行程を経て到着した先での過酷な暮らし。支配する者とされる者の現実にぐったりさせられます。そんな中にあっても、キャンディを売った店員、釣りを受け取らなかった運転手、国営のキャンプ場の責任者に人情や誠実さは存在することが意義深く、一家の働こうとする意志に励まされる思いです。それ故に、仮出所中の身で殺人を犯したトムは罪を償うまでは、その決意もご都合主義に感じてしまいました。また、補助、援助、保護、投資を過剰に「施す」事よりも、正直に働く価値を子供に教え、働く場を「整える」事が政治の役目で、過剰に国に甘えずに働いて納税をする事が庶民の役目だと感じさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-25 02:52:42) |
1202. レベッカ(1940)
《ネタバレ》 飼い犬の名は口にしても、妻の名はただの一度も口にせず、自分の辛い感情のみを振りかざすマキシムは、自身の告白を肯定してもらって初めて妻の愛情を実感するという、全編を通して癇に障る男性です。健気な彼女ならずとも、ダンバース夫人を介して現されるレベッカの愛憎は恐ろしいものでした。演出がヒッチコックによるものだと知り、巧みさに納得です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-18 02:39:52) |
1203. 刑事コロンボ/偶像のレクイエム<TVM>
《ネタバレ》 最後に彼女の真意が現れるに至るストーリーはよく練られており、見応えがありました。今回の警部は「罪を憎んで人を憎まず」の思いを強くされたのではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-15 01:44:41) |
1204. 宣戦布告
《ネタバレ》 万が一にも起こりえないとは言い切れない内容が不気味です。潜入の目的と危機回避の経緯が明確に描かれていれば一層不気味さが増したでしょう。ところで、敵に遭遇して命のやり取りをするのに「発砲していいですか」「この武器使っていいですか」とお伺いを立てるシステムは事実ですか?酷過ぎますね。世の中の上から下まで長と名のつく者であれば肝心な時にこそ役に立たなければ軽蔑の対象となるだけです。5月27日の党首討論。野次で覆い尽くされた泥田のような場所で立ち回りを演じるお二人。これぞまさしく泥仕合。あの場におられる方々が、今、危機が現実になったとして役に立ってくれるのだろうかを考えると空恐ろしくなります。「わしゃ知らん」と遁走する外務大臣は映画の中だけであって頂きたいものです。 [DVD(邦画)] 7点(2009-06-01 03:25:58) |
1205. アルジャーノンに花束を(2000)<TVM>
「この世の生物は全て神様の創造物」神は個々に優劣をつけてはいないはずです。チャーリーの術前術後のIQの極端な差を見るにつけ、人間は優劣や幸不幸をIQで測る生き物なのかと考えさせられます。知らなかった事を知る喜びは彼の部屋の変化から伺えます。しかし、知ってしまった悲しみも生きる上には起こり得る事も本作の結末は示してくれます。予備知識は皆無。良いと言われる原作を読んでみたくなりました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-30 04:07:22) |
1206. アラバマ物語
《ネタバレ》 あのような判決がまかり通る事に、文明国家の秩序は法によって守られ、法は正義に基づくものであり、正義は万民に共通するものであるはずが、人間の持つ弱者への偏見、損得勘定、不正直によって正しくない結論が導かれるのだと思い知らされます。狂犬以下の父親の死に対して、誰も裁かれないという結末は、自業自得であるという感情が湧き上がると共に、神が下す天罰を人間が下すこと、法に妥協しても目には目を、やられたらやり返すアメリカという国の考え方が見え、すっきりしない後味が残りました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-12 01:08:18) |
1207. ニノチカ
《ネタバレ》 男女の小粋な会話は上滑りすることなく二人の心情を表しており、彼女が骨抜きにされてしまう過程には酔ってしまいました。その後のよろめき加減に白けていきましたが、17時40分の便で帰国したのには参りました。統率力、愛国心、誇り高さを失わない彼女に敬意を表します。出来すぎ感のあるラストですが、絶妙の存在感のある同士三人組が心地良い余韻を残してくれました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-10 16:46:50) |
1208. シャレード(1963)
予備知識はヘップバーン出演と音楽。初鑑賞。25万ドルの行方は、犯人は、2日間で3回名前が変わるグラントの正体は?全貌が明らかになるまでの展開は見応えがあり、マッソー・コバーン・ケネディの一癖も二癖もあるキャラクターの味わい深さも併せて、サスペンスものとして見事な出来映え。一方、作品の最大の魅力であろう主役二人のロマンス部分は、小粋な会話が上滑りしているように感じ、いまひとつ。その部分を差し引いても作品全体としては満足のいくものでした。センスの良いオープニングとエンディングが印象に残ります。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-03 15:57:08) |
1209. 戦艦ポチョムキン
人海戦術を駆使した映像並びに音楽の凄まじい迫力にただただ圧倒され、観終わってからも暫くの間、頭がク~ラク~ラしていました。かの有名なオデッサの階段シーンは一見の価値がありました。「超ド級」「一大スペクタクル」「気合だーっ」の異様なハイテンションは国策映画ならではなのでしょう。容認出来ない内容なのですが、今まで映画からこれほどまでにエネルギーを感じた作品はなかったと言うところにこの点数です。 [映画館(字幕)] 7点(2009-05-01 02:52:24) |
1210. 死刑執行人もまた死す
《ネタバレ》 冒頭、「死刑執行人」ハイドリッヒのゲスの権化ぶりに、どのようにして亡き者にされるのか期待した途端、銃撃され程なく逝ってしまいました。犯人探索におけるゲシュタポと地下組織及びプラハ市民の対決は、テンポのよいスリリングな展開を経て思いもよらぬ結末に至る上質なサスペンスと戦時下における多様な人間模様に、瞬時も目が離せませんでした。ごく普通の庶民のごく普通の肉親への情を持つマーシャが、八百屋の老婆の最期、父の遺言に触れて芽生えた民族の誇り。戦時中の当時に監督が訴えたかったのでしょう。売国奴チャカの末路に同情は出来ませんが、「自由を勝ち取るための戦い」の名の下に人が人を陥れる陰惨さを感じました。 [映画館(字幕)] 7点(2009-04-30 00:24:17) |
1211. リスボン特急
小学生の頃に観たいと思ってからウン十年、念願の初鑑賞となりました。犯行時に犯人達は一言も語らず非常ベルや列車の音のみが響いています。丹念な描写とあいまって見入ってしまいました。 そして全編を通じて登場人物全てが必要最小限しか語りません。しかし、その胸の内の溢れ出そうな想いは分かるのです。犯人一味のリストラされた重役とその妻、頬を黒い涙が伝っているゲイの情報屋、スコッチを空けるコールマン、シモン、カティのスリーショット等々。監督の力量と言えるのでしょう。 「刑事が人間に抱く感情は疑いと嘲りだ」と言い放つのとは裏腹さで現実を受け入れているラストシーンのコールマン。「因果な商売だが、これが私の仕事」との胸の内が想像されました。子供時分に抱いた憧れは薄れていますが、本作のドロンは素敵でした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 15:07:50)(良:1票) |
1212. 最高の人生の見つけ方(2007)
旅から戻った後の二人の食事風景が私には本作が言わんとしているところに思えました。白けた思いで眺めていた旅の模様でしたが、途方も無いほどの豪勢さであるからこそ、このシーンが生きてくるのだと感じました。また、伴侶を一生愛し抜ける事について考えさせられた作品です。両優は流石の好演で良作ですが、邦題がいただけません。人生に最高も最低もないと思いますし、見つけ方とはどう解釈してよいのか 考えても分からないです。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-23 23:41:51) |
1213. 幸せのちから
成功に到るまでの過程で丹念に描かれていた極貧生活は、理不尽さによるものではなく、払うべきものを払わぬ当然の報いによるもので誰の身にも起こり得る事です。子供に愚痴を一言も洩らさぬ姿勢に頭が下がります。かつ、貧しても鈍することなく、上司やビジネス相手に引き立ててもらえる資質に、気位が高いばかりだけでは成功できない事を気付かされます。父の頬を一筋の涙が伝う2つのシーンは押さえ切れぬ感情が胸に迫ってくる名場面です。ただ、観終わって今一つ物足りなさを感じました。それは成功の秘訣「数字と人に強いこと」の数字に強い部分の描写の物足りなさによるものでした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-26 22:45:55) |
1214. 社葬
劇場で2度鑑賞した稀有な作品です。細かな部分は忘れていますが、大奥の女たちも裸足で逃げ出すであろう、男たちの群れを作って裏切り裏切られの権力争いのリアルさとコミカルさが印象深いです。佐藤浩市演ずる社長の息子に「あなたは父親のパンツでも洗いそうですね」と揶揄された緒形拳が「いけませんか、家族のためならパンツだってサルマタだって洗いますよ」と憤然とするシーンは忘れ難く「こんな人と結婚できればいいな」と思ったものでした・・・・・・。 [映画館(邦画)] 7点(2008-07-14 02:10:46) |
1215. インファナル・アフェア
《ネタバレ》 ディパーテッドを鑑賞して本作の存在を知ったクチです。結末に到るまで展開は同じでしたので、常に「次」が分かるのですが、リメイク作の不要で醜悪な演出が皆無のため、全編に亘りヒリヒリする緊張感が漂う良作でした。唯一違いがあった結末もリメイク作とは雲泥の差で、公僕・納税者のあるべき姿について考えさせられます。職務に命を張れるのは、この国を自分たちの手で良くしたいという一念からでしょう。保身しか感じられないラウが、無念の最期を遂げた二人の墓に敬礼する姿はこれ以上ないうそ寒い光景でした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-02 19:37:17) |
1216. エビータ(1996)
《ネタバレ》 一切の予備知識無しの鑑賞でした。歌声の美しさもさることながら映像の美しさに目を見張りました。お話の中身はエバのサクセスストーリーです。台詞が全て歌であるのは面白い試みですが、彼女の人となりや価値観に共感できず、気分が盛り上がりません。狂言回しの男性の存在が絶妙で最後まで鑑賞できました。彼女は民衆に慕われましたが、国を治める者の役目は、貧しい者に単に施しを与えるのではなく、働いて対価を得て自活し、胸張って生きていく環境を整える事だと思います。夭折がアルゼンチンにどのような影響を及ぼしたのでしょうか。興味深いです。 [DVD(字幕)] 7点(2008-05-25 15:59:24) |
1217. イブラヒムおじさんとコーランの花たち
モモの父親とイブラヒムおじさんから、思春期の娘と息子を持つ者として、親としての自身を省みて、足りない所を気づかされる作品でした。「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」と常々思っており、苦しさの先に楽しさがあるとの考えで接してきました。今日からは、それに「幸せだから笑うのではなく笑うと幸せになれる」をプラスしていく事を、軽快な音楽と淡々とした展開の本作のように肩肘張らずサラリと実行していきたいです。ところで、私はあの女優がアジャーニとは気づきませんでした。出演に感謝です。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-31 11:11:10) |
1218. 華麗なる恋の舞台で
ジェレミー・アイアンズ目当てに鑑賞しました。私のふしだらな期待が空振りに終わった事を差し引いても、観て良かったと言える作品でした。舐めるな! ジュリアの煮えたぎる闘争心と自尊心が上品且つコミカルに描かれており後味が爽やかです。また、彼女は度々「私は友達が少ないの」と嘆きますが、チャールズ卿と付き人?の女性という魅力溢れる人物を見るにつけ、友達は少数精鋭で良いのだと励まされます。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-26 20:40:41) |
1219. 緑色の髪の少年
随所に表れるストレートであり過ぎる程の反戦メッセージは正論なれど感じ入るものが少なかったですが、おじいちゃんの言うところの幸福の緑色がもたらす少年の苦悩は見応えがありました。子供達が見せる異端視は未熟さ故ですが、それを諌めるべき大人達の異端者を屈服させようとする心裡が不気味であり、このような状況下で意思を貫く事が至難であるのは止むを得ないとは言え観ていて悔しさが募ります。現実を受け入れた少年の行く末に不安と希望を想像させられるラストシーンと陰惨な作品になる事を救ってくれたおじいちゃんの歌声が印象的でした。 [DVD(字幕)] 7点(2007-12-28 23:29:16) |
1220. 007/カジノ・ロワイヤル(2006)
シャワールームでのボンドの一連の行為は、セルフで温めなくてはならぬ身にとっては胸が締め付けられるものでした。このシーンをはじめ、女性に任務に対する駆け出しの感が全編に亘って表れています。他の作品での洗練されたボンドが本作が示す素地の上に年期を重ねたものなのだという事を考えると、ダニエル・クレイグ演ずるボンドは味わい深いものがありました。見応えのある展開でしたが、陰湿な悪党ぶりが味わい深かったル・シッフルの最期に捻りを効かせてもらいたかったです。 [DVD(字幕)] 7点(2007-06-03 01:28:54) |