1241. ファム・ファタール(2002)
《ネタバレ》 宝石強盗。狂言誘拐。自分とウリ二つな女。予知夢。 現実感と虚構感が絶妙なバランスで交じり合う世界。これにまたミスマッチなのんびりとした音楽が流れます。 この独特な雰囲気。これがフランス映画特有の味わいなのでしょうか。アメリカ映画ではなかなか感じることができない空気感ですね。 レベッカ・ローミンは、善人の顔と悪人の顔、人間の二面性を見事に演じきっていたと思います。更にリリーは全く別人に見えるので凄い演技力です。 そしてもう一人の主人公、アントニオ・バンデラス演じるニコラス・バルド。やはりこの人、かっこいい。ずば抜けた美形ではないのに、表情の作り方や立ち居振る舞いでこうもかっこよくなるものかと、感心します。 サスペンスとしても面白いのですが、人間ドラマとしても非常に興味深い作品。何となくニキータを思い出すプロット。 最後の15分間は一瞬何が起こったのかわからなくなる展開。ほぼ反則技の大技ですが、個人的にはこれはアリです。 正直、ちょっと内容に対して、スローすぎるテンポに集中力が切れそうになることも。テンポはもう少し速いほうが好きかもしんないです。 『ファム・ファタール』って『男を破滅させる魔性の女』という意味と、『男にとっての運命的な恋愛の相手』の二つの意味があるのですね。なるほど。そう考えると、『こんな形で出会わなければ~』を体現したかのようなクライマックス。サクセスストーリー並みの幸福感が得られるだけでなく、まさにタイトルどおりの結末となったわけです。良い。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-28 16:32:24)(良:1票) |
1242. シリコンバレーを抜け駆けろ!
《ネタバレ》 ドラマ性の強いコメディで、サクセスストーリー。 夢を追う主人公が、落ちこぼれ3人とチームを組み、逆境に次ぐ逆境から最後は栄光をつかみます。まさに私にとって、どストライクの映画です。 大企業の第一線で活躍する主人公。しかし誇りを持つ仕事をしたいと、技術系の会社へ転職。そこで、人間的には落ちこぼれだけど、技術者としては超一流の3人と、1台99ドルの格安PCを作り上げます。 このPC、格安なだけではありません。まさに『あったら良いな』を体現した夢のようなPCで、超クールなんです。 いいですねー。夢があって凄く面白いです。 いろいろ人間的な欠点を抱えていたメンバー。チームの夢をかなえるために四苦八苦。少しずつ自分の短所を乗り越えていきます。それはもう見ていて気持ちが良いもんです。頑張る4人にずっと感情移入できます。 次から次へと妨害があり、逆風が凄いので、ラストの緊張感とカタルシスは半端ないです。 ですが、正義の鉄槌がくだるのが、アイデアを横取るフランシスだけってのが、何とも物足りないです。 99ドルのパソコンを完成させるなと圧力をかけてきた大企業の社長。負け犬呼ばわりした元カノ。この辺りにも何らかの『罰』や『後悔』を与えてくれたらもっともっとスカッとしたんですけどね。 とは言え、この作品は、笑いあり感動ありで、かなりの掘り出し物。 主人公アンディは騒いでばかりで何も作っていない気はしますが、そんな細かいことが気にならないくらいスカッとする気分爽快でご機嫌な映画です。 [DVD(字幕)] 8点(2016-05-27 12:46:54) |
1243. トゥームレイダー
《ネタバレ》 プロットは単純明快。アクション豊富。『キラーマシーン』や『動く石像』など、敵キャラの造形もばっちり。 こーゆーゲーム感覚で見られる映画、嫌いじゃありません。 メカニック担当のブライス。銃も扱える執事。商売敵なのか元カレなのかよーわからんアレックス。一人一人のキャラが個性的でわかり易いのも良い。 ただ、人をひきつけるようなストーリーではないので、世間様の評価が低くなってしまうのは至極納得でございます。 役者さん達の演技も、表面的でゆるい感じに徹しているので、緊張感の無さは強調される一方です。 エンターテイメント性はあるし、アクションも良い味だしているのですが、脚本・演出がここまでゆるいと退屈に感じちゃう人もいるかもしれません。 個人的に好きなテイストではあるのですが、人をひきつけるまでには至っていない惜しい作品。 でもまあ続編を見てみたいと思ったので、悪くない作品なんだと思います。 それから『トレジャーハンティング』を予想していたので、謎解きや遺跡のトラップなんかがほとんど無かったのは残念。 一番の見所であるロボットとのバトルを最初にもってきちゃったのもまずかったかもですね。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-26 04:26:44)(良:2票) |
1244. オーシャンズ13
《ネタバレ》 1作目に雰囲気が近いですね。 今作は、アル・パチーノ演じるウィリー・バンクに騙されて、すべてを失ったルーベンの敵討ちストーリー。 前回の借金返済のマイナススタートに比べれば、攻めの姿勢のスタートなので、最初から高揚感があります。ダニーがバンクに、『ホテルを元に戻すなら、許してやろう』なんて、超上から目線で言っちゃうわけですから、アツい。 1作目のようにあっと驚く展開はありません。 ライナスの親がFBIの真似事して助けに来てくれるのも、すでに前作で使用済み。つまり、これは前2作ですっかりファンになった人たちに、楽しんでもらうための作品なのでしょう。ですから、『前2作を鑑賞していないと、話がわからなくてあたりまえ』ってスタンスは、開き直っていて逆に清々しいです。 『ホテルの格付けを最低ランクにさせる。』『カジノで大損させる』『ダイヤを盗む』と、今までで、最も容赦のないストーリー。 とにかく完膚なきまでにこてんぱんにやっつけてくれます。 裏をかこうとしたベネディクト&トゥルアーの更に裏をかきます。 バンク、ベネディクト相手に、すべての駆け引きで常に一手先を読み、完全勝利。とにかく見ていてスカっとするし、爽快です。 高尚な展開や演出を望まなければ、十分に楽しいエンターテイメントでしょう。 ただ、あまりにもオーシャンズチームが強すぎるため、アル・パチーノが防戦一方に終始してしまうのはいささか物足りません。 オーシャンズチームが窮地に立たされるシーンが一つでも入っていれば、もっとメリハリと刺激のある作品になっていたかもしれません。 あと、ついでに言うと、ホテルの評価をぼろくそにつけられて呆然とするバンクが見たかったですね。 『ソールが実はオーシャンズチームでした』ってネタバレするだけではやや消化不良です。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-05-23 13:10:47) |
1245. コーリング
《ネタバレ》 このストーリーだったら、余計なホラー演出は全体のバランスを崩してしまうのでは・・・。『シックス・センス』のように、ホラーとドラマの調和がとれたものもありますが、本来は両極端な別ジャンル。何でもかんでもミックスさせれば良いってものでも無いみたいですね。 また、どーしても夫に子供のことを伝えたいのはわかりますが、そのために夫を臨死体験に導いちゃうっていうのはどうでしょう。ガイドの人が助けてくれなかったら夫は死んでいたかもしれません。子供は天涯孤独の身になります。それが、本当に『愛』だと言えるのでしょうか。 とは言え、ラストのオチはまったく予想していないものだけに、『驚き&感動』で、鑑賞後の評価は高くならざるを得ません。 伏線はいろいろ張ってあったのに、その伏線に後から気付く脚本・演出は、極めてレベルが高いと思います。 いろんな意味で、ラストに救われた作品だと言えそうです。 ラストがなければ、流行にのっただけの、主題不在の失敗作に終わったことでしょう。このラストで、一気に観る価値のあるドラマへと進化しています。最期に、娘と遊ぶシーンを入れてくれたのも、嬉しい心配りです。どこから見つけてきたか知りませんが、お母さんにそっくりな娘さんです。 すごく良い映画だっただけに、せめて音楽だけでも違うのにしてくれたら良かったのに。 最愛の人をなくし、悲しみに暮れるケビン・コスナーに深く共感していたわけです。 それなのに、『子供が目ぇ見開いて起き上がる。』『窓の外に奥さんが立っている。』『死体に腕をつかまれる。』『片付けたものが全部もとの場所に戻される。』 何かあるたびに、ハラハラドキドキ。いったいどういうスタンスで見れば正解だったのか、いまだつかめず。 ホラー演出が邪魔だというたくさんのご意見に、深く同意です。 [DVD(字幕)] 8点(2016-05-21 15:11:05) |
1246. トムとトーマス
《ネタバレ》 『まったりとしたロードムービー』を、何故か勝手にイメージしていました。 実際はスリリングかつサスペンスフルなストーリー。予想をはるかに超える面白さ。目立った粗もほとんどありません。 子供が主役とは思えないくらい危険な展開に、ハラハラしっぱなしです。まさか飛行機が飛び立つとは夢にも思いません。 一人二役をやったアーロン・テイラー・ジョンソン君。初めて拝見しますが、とても魅力のある子役です。 父親、パイロットの女性も大変良いです。更には、学校の先生、お金を貸してくれた画商、見逃してくれた警備員など、脇役の人たちも皆良い人。そして誰も彼もが演技が上手です。 その一方で、院長を中心とした悪党3人組がとことん危険で悪い奴っていうのも、善悪の区別がはっきりついてわかりやすいですね。 大衆向けのエンターテイメントであれば、これくらいがわかりやすいっす。 児童福祉課の女性職員の元に届いた、施設行方不明者の写真。そこにあったトーマスの写真。しかし記された名前は『トム』。この辺りの盛り上げ方が、本当にうまいですよねー。背筋がぞくぞくします。 まあ唯一注文をつけるとしたら、『トム』と『トーマス』に周囲の人間が気付くのが本当にラストになってからなので、周囲の人間のリアクションを楽しむ機会がほとんど無いということ。 それに、二人がアクセの片割れを証拠にすることにこだわっていましたが、あれだけクリソツだったら証拠はいらんでしょ。 でもでもでも、そんな細かいことが気にならないくらい、こいつは面白い映画ですよー。 絶対オススメですね。 [DVD(字幕)] 9点(2016-05-20 01:46:37)(良:1票) |
1247. 死びとの恋わずらい
《ネタバレ》 ジャパニーズホラーを満喫できる佳作。 転校生、占い、未解決事件、廃墟、悪夢。ジャパニーズホラーに必要不可欠な要素がぎっしり。『日本の湿ったホラーが見たい!』というときにはまさにうってつけです。 カッター、カビ、冷蔵庫、お堂、古い新聞、破れかけのポスターなど、雰囲気を盛り上げてくれるギミックも盛り沢山。 さあ、舞台は整った。あとは、『謎』が充実していれば、完璧です。 『龍介君とはいったい誰なのか?』『おかしくなっていく母親が執着する壁のカビに隠された真実とは?』『女子高生の間で伝わるいわくつきの「辻占い」とは?』 怖いけれど、怖すぎない。血しぶきが舞うけど、グロすぎない。そして続きが気になって仕方がない。 この吸引力こそが、日本のホラーが持っているパワーです。 ・・・そして、ラストのオチで期待を裏切るのも、日本のホラーでは、本当によくあること。 この作品も例外ではありません。 現実と悪夢、リアルと幻想の境界をうまいことぼかし、抜群のバランス感覚で完璧なまでの進行を見せていたのに、最後の最後で何故ファンタジーに逃げるのでしょう。だって精神病院から抜け出した頭のおかしい二人が、転校手続きなんてできるわけないじゃん。せめて二人は本当の親子で良かったのではないですか。奇をてらえば良いってもんじゃないのに、とにかくあっと言わそうという日本のホラーの悪いところが最も残念な形で出ちゃってます。 ラスト15分ですべて台無し。ですが、龍介君が榎本はるかに殺されるくだり。ここだけはサイコティックで現実感もあり、現在とばっちりリンクするのでグッジョブ。むしろ、それだけで良かったのです。 [DVD(邦画)] 6点(2016-05-18 14:54:40) |
1248. スナッチ
《ネタバレ》 確かに、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』にテイストが似ていますね。 別々の場所で始まった物語が、少しずつ絡み合い、最終的に一つの結論へ到達する。この手法は面白いですよね。 最後がどう帰結するのか、読めるようで読めないですし。 一番読めなかったのは、パイキーグループの逆襲。てっきり『アビー&トニー』、『ボリス』、『ソル&ビニー』、『ブリックトップ』の四つ巴戦になると思っていたので、意外な帰結ではあります。 こーゆーパターン、テイストが好きという人は、ここでのレビューを拝見するだけでもたくさんいます。それは何故か。 映画でもマンガでも、『正義VS悪』よりも、『悪VS悪』のほうが、絶対盛り上がるからでしょう。言うなればこれは、『悪人たちだけの天下一武闘会』。これでアツくならなきゃ男じゃないね(笑)。 とまあそーゆーことですから、『ベニチオ・デル・トロの早期離脱』『トニーの情け無い最期』『アビーの帰国』。コメディの視点で見れば面白いのかもしれませんが、天下一武闘会を期待していたものとしては、期待が大きすぎただけに、拍子抜けした感のほうが強いです。 何も期待せずに見ていれば、もっとはまれたかもしれません。 何しろ、テンポの速さとアクの強さは天下一品。見ている間は全然退屈はしないですから。 でもこのキャストと監督で期待するなってのは無理な話。見る前の期待値って大事です。 それにしても、『犬』=『パイキー』、『ブタ』=『ブリックトップ』を象徴するものだと思えば、犬がブタの人形食っちゃったのは、ラストのオチを暗示させたりしていて、なんか面白いかも。 まあ何にせよ、『スナッチ』は娯楽のみを追及した作品。映画に意味を求める人にはほんと向かない作品。これぞジェットコースタームービーです。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-05-18 08:47:12) |
1249. トラフィック(2000)
《ネタバレ》 クライムムービーとして、社会派ドラマとして、大変完成度の高い傑作。2時間30分があっという間に過ぎます。ここまでの作品にはめったにお目にかかれません。 大きな3つのエピソード、事件が、同時進行で進んでいく様子は圧巻。 一つ一つの点にすぎなかったエピソード、人物が、線と線で結ばれ、次々とつながっていきます。ですが、よくある『最終的に一つの大きな結末を迎える』というわけではありません。それぞれのドラマがそれぞれの完結を迎える脚本が、リアルを感じさせます。 一つ一つのエピソードは、それぞれ1本の映画が撮れそうなほど、中身が濃いです。 登場人物がこれだけ多いのに、全く混乱することがありません。 エピソードも、人物描写も、細部にわたって手抜きが一切見られません。 あまりにも真面目に撮られているため、一見娯楽性が無いように見えるこの作品。確かにそーかもしれません。 ところがこーゆー作品は、ある瞬間、物語の中に入りこんでしまうと、鳥肌が立つほど面白いのです。その面白さっていうのは、『楽しい』ではなく、物語を読み解く面白さなのです。 ハビエールとマノーロは、将軍と麻薬組織のつながりを証明できるのか。ヘレーナは300万$を調達することができるのか。ロバートはキャロラインを見つけ出し救うことができるのか。レイとモンテルはルイスを証言台で証言させることができるのか。 下手なアクション映画やサスペンスより、よほどハラハラさせられたのは、きっと私だけではないはずです。 何が凄いって、これが純度100パーセントのフィクションであるということです。 これだけシリアスで重いテーマを扱っているのに、ぎりぎりのバランスで大衆向けに収めていることです。 そしてすべてのエピソードに、『救い』と『報い』の両方を用意していることです。 これぞ究極のエンターテイメントであります。 [DVD(字幕)] 10点(2016-05-17 08:17:21)(良:1票) |
1250. クリスティーナの好きなコト
《ネタバレ》 いやはや、下品で、まいります。 日本人とは笑いのつぼがかけ離れすぎているのを痛感しますね。 『よくあるストーリー』、『ひねりの無い作品』、嫌いではありません。 むしろ、使い古されたプロットを、『いろんなパターン』、『いろんなキャスト』、『いろんな演出』で見てみたいタイプです。 この作品も良いんですよね。 恋に本気になるのを怖がる女性が、本気になってしまって、友人の協力で想い人に会うために旅をする。 シンプル・イズ・ベスト。良いと思います。 それをキャメロン・ディアスが主演でやるんですから、どう料理してもおいしく料理ができそうなもんなのに、ひどい調理をしたもんです。調味料入れすぎて、素材の良さが壊れちゃってますよ。 コメディで『安易に』下ネタを『連発する』のは嫌いです。 ゲロの描写、何度も入れないで。トイレ汚い。カフェで急にミュージカルが始まる演出もついていけない。結婚式で何の脈絡もなく『僕達結婚式やめまーす。』はドン引き。 それでもキャメロンとセルマがそれなりに体を張っていたこと。視覚的に面白いシーンがあったこと。目の保養にもなったこと。ほんのわずかなシリアスパートは良い味を出していたこと。スターウォーズのチャンバラごっこで爆笑したこと。 以上を加味してこの点数です。 はっきり言って一人で見て良かったです。なんでか知らんがヤな予感がしたんです。大惨事を招くとこです。 こーゆーのは、配給会社が自主的にR15指定にしてほしいもんです。 平和な街にこっそり地雷しかけているのと同じです。 [DVD(字幕)] 5点(2016-05-16 05:08:31) |
1251. 17歳 ~体験白書~
《ネタバレ》 まさに17歳の若者の体験記。 そこには笑いも無ければ、驚きも感動もありません。とりとめのない、少し脚色されたドラマがあるだけです。 おそらく、イライジャ・ウッドが出てなければ、途中で観るのを止めていたと思います。 映画として、そのストーリーに面白さは感じません。 ただ、アパートの同居人を含め、登場人物が皆個性的なのは、この作品最大の長所でしょう。 個人的には、マンディ・ムーア演じるリサのほうが、ジェーンよりよほどかわいいです。 イライジャ・ウッド演じる主人公のジョーンズが、ジェーンではなくリサに惹かれ、二人の恋が成就するようなストーリーであれば、もっと興味を引かれたかもしれません。 一人の若者が精神的に成長し、自立していくドラマとしては、無理のない自然なプロットで良いと思います。 もちろん、『良いこと』と『面白いこと』は別のものだとして考えなくてはなりませんが。 ラストはジェーンと再会しないほうが良かったように思います。 ほろ苦い恋愛を経験し、今までの自分をアパートに置き、一人バイクを走らせるからこそ、主人公の成長を感じる終わり方としては最高だと言えます。そこでジェーンとのラブストーリーでしめてしまうと、結局主旨は何だったのか、物語の一番大事な部分がブレてしまいます。 [DVD(字幕)] 5点(2016-05-15 19:07:38) |
1252. オーシャンズ12
《ネタバレ》 前作と違い、『脅迫されて借金返済からのスタート』だから、最初から気持ちが萎えちゃいますね。 前作の良さは、一人一人の特性を活かした一大作戦の面白さ。正統派泥棒活劇。 今作にはそれがありません。メインを除いて、個性が死んじゃってます。 更には、ルマークという強力な第3者の力が、今回の作戦成功のカギというのも情けない話。つまりは、終盤ライナスやテスが繰り広げた卵強奪のドタバタはすべて茶番だったってことですもんね。そこから参加のソールなんて、ピエロも良いとこです。 オーシャンズを留置所から連れ出したFBIグループ、『実はライナスの母親でした。』 『ファベルジェの卵は実はオーシャンズが先に盗み出していました。』 この『実は・・・』というのが、今作のキーワード。 『結果』を先に見せて、そのプロセスを『実はこうなっていた』、と、後だしで真相を明らかにするパターン。面白いんですけどね、このパターン。『ああ、そーゆーことだったのか。』ってなるに決まっているし。ダニーやラスティのほうが、一枚も二枚も上手でしたって印象付けられるし。 ただそーなってくると、純粋にオーシャンズの力だけで勝ち取った前作に比べて、チーム戦ならではの爽快感がなくなります。 ついでに言うと、今作は観る人に対して明らかに不親切です。はっきり言って凄くわかりにくいです。『難しい』のではなく、『わかりにくい』のです。何度も巻き戻して確認するわけです。 ラストまで観ると、それなりに面白かったとは思えるんですけど、なんかノリと勢いでごまかされた気分です。 『ナイト・フォックス』にしても、どれだけの天才大泥棒かと思いきや、『知略』ではなく『体術』の達人。そんなんやり始めたら何でもアリになってしまう。 最終的には、借金返済は、勝負に負けたリッチピープルのナイト・フォックスが全部やってくれます。オーシャンズはビタ一文払っていないのが、まあ良かったです。それに『これからナイト・フォックスが、結局カジノから盗っちゃうぜ』って予感させる引きもよいです。 ただやはり個人的には、オーシャンズの活躍を見たかったわけであります。 『借金返さねーと、全員あの世行きだぜ』って言うやつから、更に金を盗むくらいの話が見たかったです。 今回は、実際仕事しているのは6人くらいなので、6点あげますね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-05-15 15:47:32)(良:1票) |
1253. あしたはきっと…
《ネタバレ》 部活動の雰囲気が懐かしくてたまらんですねー。こーゆー普通の学校生活の様子が見られる映画って意外と少ないです。 部活動の風景見られただけでも、この作品を観た甲斐があったなー。 でも映画としてはどーかなー。 面白いかなー。 よくある女子高生の恋愛を普通に流しているだけだもんなー。 まさかのタイムリープがスパイスとして効いてはいるけど、今更タイムリープはもう新しくないしなー。 しかも、タイムリープがそんなに劇中効果的に使えているとも思えないしなー。 そして、超個人的な趣味志向ながら、吹石一恵があまり好きではないんですよね。 演技がちょっとオーバーでわざとらしくて、若干冷めちゃうんですよ。 あれだったら、脇の女子高生達のほうがよっぽど上手です。 それに、倉持先輩や、寺島裕司(佐藤隆太)の彼女のほうがずっとかわいいんですよね。 ストーリーはたいしたドラマではありません。最終的には、何事も中途半端だった主人公が、おばあちゃんの力を借りて、少しだけ人として成長する、というありきたりの着地点に落ち着きます。 でも悪くない。 わざわざ観るほどの作品ではありませんが、たまにはこんなのも悪くない。 [DVD(邦画)] 6点(2016-05-14 06:32:41) |
1254. ひみつの番人
《ネタバレ》 人には言えない秘密を抱えた14歳の少女エミリーが、まっすぐに夢を見据えて努力する。最後は秘密も打ち明けて、自分の人生と向き合う。 思っていたより、大分良いお話じゃないですか。特に終盤の『衝撃⇒感動』のたたみかけは、おじさんちょっと胸にきちゃいましたよ。こんな単純な話に胸打たれるとはね。 ただ、ほんとこんなことを言うのは野暮ってもんかもしれませんが、こんなビジネス成立するはずない。 発想は面白いと思います。 ただ子供だって馬鹿じゃないんだから、本当に秘密にしたいなら誰にも言わないでしょ。子供が並んでお金を払っているだけでも人目をひきますよ。しかも有料。50セント。 そんで、何でそんなことを始めたのか、その辺りの説明は一切なし。なぜなら『秘密』だから。 子供たちが何故お金を払ってまでエミリーに大切な秘密を打ち明けるにくるのか。その動機に関する説明も一切なし。なぜなら『秘密』だから。 なんてことでしょう。『秘密』のキーワードひとつで、すべて説明がつくではありませんか。 『ただ、舞台設定がそうなっているから。』と言わんばかりであります。 ただこの作品が一番言いたかったことは、きっと、終盤でバイオリンの先生が口にする一言なんでしょう。『秘密を持っていたら、本当の人生を送れない。』 いや、もう本当その通りなんですけどね。 でも私はこんな子供向けの作品で、もっと大事な教訓を学びましたよ。 人の秘密なんて聞くもんじゃないな、と。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-13 03:36:00) |
1255. トランサー -霊幻警察-
《ネタバレ》 はっきり言って面白くはないのですが、素材は凄く面白いです。 幽霊を殴れる『接触グローブ』。『幽霊の能力を5分だけ半減させるカプセル』。『自分の血液をこめる銃』。必殺アイテムが盛り沢山。 さらには、次々と無制限に武器やアイテムを生み出せるドラ○もんのような味方までいます。 つまり、アイデアやテイストは凄く楽しく、可能性に満ちています。 ですが残念ながら、映画としての完成度がとても低い。 ひとつひとつのシークエンスは、凄く良いものもあります。 『子供の霊と母親の霊』のエピソードなんかは、凄く感動します。 良いシーンと悪いシーンの差が激しいんですよね。 そしてなんと言っても複数ジャンルのつめこみ。これが良くない一番の原因です。 ホラーの雰囲気で始まったかと思えば、急にコメディタッチに。からのアクション。一息つくと今度は友情ドラマ?いや、やっぱコメディ?え、ラブストーリー?とにかく最後まで一貫性がありません。 しかもそれぞれのジャンルが融合することなく、てんでバラバラに自己主張をしている感じです。 もう頭がパニックです。そう、これはきっと『パニックもの』です。 とは言え、C級映画だからといってむやみに切り捨てられない事情があります。 おそらくはこの映画でしかお目にかかれない貴重なシーンがあります。 『心配蘇生の電気ショックによる遠隔アタック』『バタフライ泳法でせまる幽霊』 個人的には爆笑の2シーンです。これだけでも一見の価値はあるかもしれない・・・。いや、ないな。 [DVD(吹替)] 4点(2016-05-12 03:19:09) |
1256. オーシャンズ11
《ネタバレ》 騙されないぞと思いながら見ていたのに、結局騙されてしまう。そーゆー映画って本当に面白いです。 騙されてしまう理由があります。視点が途中で入れ替わるんです。ずっとオーシャンズ11の視点でストーリーが進んでいるのに、終盤、いつの間にか視点がベネディクト側にシフトしています。気付けば、観客もベネディクトと一緒に騙されてしまう妙味。この視点の切り替えは上手いですよねー。警察なんて完全に騙されました。 この作品は自分と大変相性が良いみたいです。 『悪名高いカジノグループから、現金をかっさらう』このたった一つの仕事を1本の映画にしてしまう。ストーリーは単純化され、プロットは明確になります。わかりやすくて、でも工夫や仕掛けもたくさんあって、のめり込みます。ディテールが丁寧で、ちょっとした伏線もしっかり回収してくれるのが気持ちいいです。 まさに、『極端に奇をてらわなくても、作りこめばここまで面白い映画ができる』というお手本のような作品です。 キャストが豪華すぎるくらい豪華なのも、映画ファンにはたまらないです。 一人一人がそれぞれの専門分野で活躍するノリは大好きです。鑑賞中、まるで自分も一緒に仕事に参加させてもらっているかのような錯覚を味わえるのが本当に楽しい。スピード、テンポ、バランス、キャスト、演出、どれをとっても文句のつけようがありません。 個人的にはかなり好きな作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-05-09 09:20:47) |
1257. ドメスティック・フィアー
《ネタバレ》 『定番もの』って嫌いじゃないです。安心して楽しめる良さがあります。 小粒ながらもしっかりと地に足をつけたサスペンスで面白いと思います。 『両親の離婚、母親の再婚などが原因で問題行動ばかり起こすダニー』⇒『ダニーの殺人事件の目撃証言を誰も信じない。』因果関係のひとつひとつがわかりやすいですね。いわゆる『オオカミ少年』的なストーリーですが、こーゆーちょっとした丁寧さが好きです。 『身近な人が犯罪者』なんてのは、もう使い古された題材ではあります。似たような映画やドラマはあっちこっちで作られています。だからこそ、こーゆー正統派サスペンスって下手な小細工が出来ない分、脚本や演出、役者の力量といったものが非常に重要になってくると思われます。その点において、この作品はとても力の入った緊張感あるサスペンスに仕上がっているのではないでしょーか。 キャストの人選、配置にもセンスを感じます。適材適所だと思います。まあ、ヴィンス・ヴォーン演じるリック・バーンズだけは、最初からサイコっぽい顔しているので全然良い人そうには見えませんでしたが。そこは脚本の力で無理矢理良い人扱い。本当はこの人が凄い善人であれば、実はサイコ野郎ってわかったときに大きな衝撃を受けるのでしょうが、登場したときからすでに目つきがサイコっぽいんだもんなー。 懐古主義って言うとおおげさですが、ベタな映画大好きな人には、問題なく楽しめる良作だと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2016-05-07 12:59:09)(良:1票) |
1258. ローカルボーイズ
《ネタバレ》 爽やか。青春の1ページ。 これといったストーリーは無いんですけどね。一つ一つのエピソードが丁寧で、こちらの心をいつの間にか掴んできます。 ランディとスキート兄弟の前に現れる伝説のサーファー、ジム・ウェズリー。彼に教えてもらってスキートは少しずつサーフィンが上達していきます。ですが、この作品は、スポーツ主体のサクセスストーリーではありません。サーフィンはあくまでみんなを結びつけるための舞台装置にすぎません。これは紛れも無い上質のヒューマンドラマです。 スキートは、サーフィンを教えてもらいながら、ジムに死んだ父親を重ねてしまいます。 ジムはジムで、スキート一家に、亡くした妻と娘の面影を重ねてしまうのです。 それに耐えられなくなったジムは、スキートたちの前から姿を消してしまいます。スキートの兄ランディは、裏切られたと勘違いしてしまいます。そう、ジムに父親の姿を重ねていたのは弟のスキートだけではないのです。兄ランディもまた、ジムに父親の姿を見ていたのでしょう。ジムとランディの再会のシーン、抑えていたランディの本当の気持ちがあふれ出て、本当に感動します。 ただし、この一連のシークエンス、もしかするとやや説明不足かもしれません。大事なシーンだからこそ、言葉での説明を極力控えているためか、行間を読む必要があります。凄く泣けるストーリーなんですけど、人によっては伝わらないかもしれません。それが惜しいなー。 それにしても、ランディ、本当に良いお兄ちゃんだ。こんな兄をもった弟は幸せです。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-06 14:44:27) |
1259. 公共の敵
《ネタバレ》 これは面白い。思わぬ拾いもの。 冒頭の刑事はなぜ自殺したのか。捜査令状も無しに、あんな好き勝手やれるものなのか。口の中から簡単に見つかる証拠が、なぜ今まで見つからなかったのか。あまりにディテールが雑なので、気になるところはちょいちょいあります。 ですが、そんなことが些細なことに思えるくらいの、パワーと勢いがこの作品にはあります。 『小さい悪は見逃すが、大きい悪は見逃さない。』なんて、そんなかっこいいものではないけれど、ソル・ギョング演じる主役のカン刑事に男のかっこよさを感じます。 そしてこの作品は、イ・ソンジェ演じるギュファンのサイコっぷりがあまりに見事。 そのサイコパスを、暴力でねじ伏せていくストーリーテリングは爽快ですらあります。 ヤクの売人や、ナイフ使いのチンピラ、果物売りの青年に、上司に後輩と、脇を固める人たちが良い味出してますね~。みんな良い人。 『アニキって言うな。刑事と言え。』というラストのセリフに、カン刑事が自分の未来にどんな決断をくだしたのか見えた気がして、気分がほっこり。 ですがラストのラストでは、街の悪党相手に大立ち回りを演じてフィニッシュ。そう、これってまんま『こち亀』の両さんのノリですね。 少々グロイ描写があるので、その辺は注意が必要です。ですが、ストーリー、テイスト、どれをとっても万人向けの娯楽作品に仕上がっていると思います。 [DVD(吹替)] 8点(2016-05-05 03:15:49) |
1260. パピヨンの贈りもの
《ネタバレ》 欠点はないが長所もない。 映画として安定感があるが物足りない。 そういう印象の作品です。 おじいさんと少女の心の交流を軸とした、ハートウォーミングなストーリー。ほのぼのとした空気の中にも、『子供に自分の思いをはっきり伝えることの大切さ』という強いメッセージを発信しています。 主演の二人は大変表情豊かに好演しているので、感情移入しやすいです。ぶっきらぼうながらも、時折見せるおじいさんの優しさが良いです。 少女は頭の良い子です。ですが子供特有の身勝手さがあります。 そんな少女のわがままに対するおじいさんの反応が人間臭くて、それが二人により親近感を抱かせる理由の1つにもなっているのでしょう。 ただし、二人のキャラの良さが、そのまま映画の面白さへつながるとは限りません。 ストーリーは『イザベラ』という蝶を探しにいくだけのもの。二人の心の交流だけで押し通していけば、どうしても平坦な展開になりがちです。ですから、少女の誘拐騒ぎというサイドストーリーがなければ、それこそ『良い映画なんだけれど、退屈』ということになっていたでしょう。 それに、『捕まえた幼虫がイザベラになる。』という結果は良かったものの、それがなければおじいさんは少女のせいで千載一遇のチャンスを逃したことになります。おじいさんにはおじいさんの、『今は亡き息子のためにイザベラを見つける』という大切な目的があったわけですから、手錠つけられてヘリに乗せられてってのはひどいんじゃないですかね。 ラスト、少女の母親の名前がイザベラというオチは良かったですね。 おじいさんの、『じゃあ二人ともイザベラを見つけられたわけだね。』というセリフも名台詞です。 [DVD(吹替)] 6点(2016-05-02 13:50:54) |