1381. ちょき
《ネタバレ》 ひなびた和歌山の静かで美しくてやさしい情景に包まれた、淡くてささやかな物語。この雰囲気は個人的にはとても好み。こういう愛のかたち、素晴らしいことだと率直に思う。このふたりなら、慈しみ合い、支え合っていけるだろうと。 主演女優はエライ透明感のある美人さんで、素朴な演技も含めて少し唐田えりかちゃんを思い出した。その意味ではひとつ枠が空いたので、今後も頑張ってくれると嬉しい。 [インターネット(邦画)] 7点(2020-03-28 22:41:09)(笑:1票) (良:1票) |
1382. 黒猫・白猫
気が付くと、珍しく幾度も観直しているという作品。溢れ出る生命力を浴びることで、明日への活力を分けて貰えるような気がするからだろうか。この映画の登場人物の様に、愉快に、力強く、無頓着に歌い踊る様に生きてゆきたいと、無意識に願っているのかもしれない。 とは言え、クストリッツァの才気炸裂・真骨頂な内容は、一見は適当なようで細部まできめ細やかにつくり込まれた実に高い完成度を誇る。今作ではそれをコメディ面に全振りしており、とにかくとてもユニーク・唯一無二な「笑える」要素が満載。しかし、何と言ってもこの作品の魅力は、これこそが「生きてる」ってことだという様な登場人物(あと動物)たちの無軌道で型破りな活力・生命力だと思う。何度見てもこう思う、「人生は、生きることは素晴らしい」と。 [DVD(字幕)] 9点(2020-03-28 18:24:58) |
1383. 一度死んでみた
《ネタバレ》 非常にコテコテかつおバカ極まりないギャグで塗り潰された風な作品だが、個人的には別にそんなに嫌いでもなくまあまあ笑える箇所も多かったし、終盤の宇宙服で出てくるシーンはツボに入ったようで相当に笑った。不必要にギャグ以外の要素を盛り込み過ぎず、ごくシンプル・コンパクトに纏めているのも適切だと思う。あと出演者がよく見ると無駄に豪華。 広瀬すずちゃんは大学3年生ながらノリは女子高生なガキさ加減だが、そこそこハッチャケた演技はこれも悪くは無く80点は付けてよいと思うし、歌も下手ではない(ただ、間違ってもあれはデスメタルとは言えないと思う)。出演者全員バカみたいなコメディ演技のオンパレードだが、一人だけスカしてるリリー・フランキー(と堤真一の絡み)が、結局個人的には一番面白かった。 [映画館(邦画)] 6点(2020-03-27 22:03:52) |
1384. 飛行士の妻
《ネタバレ》 主な登場人物は3人。飛行士の愛人(妻ではない)と、その愛人の恋人?の矢鱈と鬱陶しい若造、そして(何故か)通りすがりの小娘である。全体として5つほどの各々長い会話シーンを主たる構成要素としているが、ひょんなことから飛行士を尾行することになった若造と小娘が他愛無く駄弁った挙句暢気にお茶したりしてるシーンが何と小一時間のぶっ通し、その後、愛人と若造のこれもグダグダな愛の囁きが30分弱と、この2つで映画の大半を占めている。 前者は、無邪気な小娘がキャッキャとはしゃぐ様子がまず実に健康的で面白いが、この小娘が齢15にして(演者も16、7のホントの小娘)頼りない若造をモノの見事に手玉に取る手管を身に付けているというのが、如何にもおフランスな風情でこれまた面白い。そして本作のハイライトたる後者。ここでは愛人の支離滅裂極まりない言動がとにかく超絶に面白い。正に雲を掴む様なフワフワ気紛れ分裂症女という感じで、何を考えてるのかサッパリ理解できないが、ほんの1日を描いたこの映画をつくるのに際し、ここまで綿密にキャラ設定をつくり込んでそれを女優に精密に演じさせる監督のやる気に満ち溢れた見事な仕事には、ただただ感服する。 この手の(殆ど内容の無い)ホンワカ恋愛会話劇としては、個人的には白眉と言ってよい優れた作品に思う。マイナー作品だが、是非。 [映画館(字幕)] 8点(2020-03-22 03:30:48) |
1385. 美しき結婚
《ネタバレ》 結婚願望を拗らせた女性が軽ーく暴走していく様を描いたコメディ。主役は正直あんまし可愛くないし(頼れる親友のアリエル・ドンバール姐さんの方が100倍美人)、相当イタイ女なのも間違い無いのだが、ちょっと痛々しさが過ぎて、途中からは少し情が移って「何とかハッピーエンドに漕ぎ着けてくれ!」と懇願しながら観ていた。ので、中々スリリングで実は結構面白かった。 結局、その儚い希望は考え得る中でもそこそこ最悪に近い形で打ち砕かれるのだが、このたびの男の「振り方」が、この手の面倒臭い女の取扱の手本と言ってよい様な優れた対応であり、正直そこの「口説き」が本作の最大の見せ場である(前述どおり、それでもかなり失敗に見える形で決裂してはいるのだが、この事案は最悪の場合、命に係わる事象をも引き起こしかねないことを鑑みるに、十分に成功だったと言えると思う)。まあ、全体としては為る様に為っただけの物語であり、巧さは在るが目新しさは無い、とも言える。 [映画館(字幕)] 6点(2020-03-22 03:05:19) |
1386. ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey
《ネタバレ》 凄まじくご都合主義なアレコレにせよ、見た目が良ければオールOKな映画であるのは間違い無いのだから、素直にそれに従って、風変わりで派手にオシャレな諸々とマーゴット・ロビーのユニークなキャラづくりを楽しめば好いだけな作品だと思う。しかし、せっかく二度も観た(なんかしっくり来なかったから短期間で再見してしまった)のだから、気になった点を備忘的に記しておく。 ・どうせハーレイ・クインのキャラ映画でしかないのだから、大して本腰入れて描くつもりもないサブキャラを3+1人も放り込む必要はあったのだろうか。ただでさえ薄っぺらいお話が更に散漫になっているだけな様に感じるのだが。 ・オビワンに悪役は無理なのではないか、と思わせるほどにブラックマスクの出来が酷い。まあオビワンも悪さ(悪賢さというか)が皆無な純朴キャラが魅力だった様な所もあるし、これは彼の俳優としての属性である様にも思える。 ・やはり、本作においてジョーカーの影すら全く見えないのは、お話的にも不自然だし大きな見せ場を一つ潰している様なものでもあり、端的にバッドチョイスだと思う。女が主役、という部分に拘った結果なのかも知れないケド。 個人的に、本作から受ける印象は、少しばかり蜷川実花作品から受けるそれに近い様にも思う。女(監督)が気にしてるのは見た目だけ、なんぞと抜かしたら、それこそ昨今、全方位から袋叩きにあってしまうのも確実なのだけど。 [映画館(字幕)] 5点(2020-03-20 16:58:57) |
1387. 弥生、三月 君を愛した30年
《ネタバレ》 とある男女の30年を3月の1日ずつで、というのは中々面白いアイデアだと思い、初日に参上した。こうしたパッチワークな形式に耐えるべく、分かり易い(少しベタとも言える)話を分かり易く語るという形にはなっているが、30年分のタップリな見せ場を一定のテンポの良さを保ってスムーズに進行していく点では、非常に観易く楽しめる映画であったと思う。 難しさがあるとすれば、30年超の年月を一人の役者で演じ抜く部分には、特に中年の演技に困難な点があったのではないかと見えた(単に、ちょっと元気が良過ぎるかなっちゅうレベルではあるのだけど、まあ20代の役者なら誰しもが苦戦する所かも知れない)。また、ストーリーの時間の流れが断絶した中での演技でもあり、やや表面的で浅い芝居になっていると思われる箇所も散見された様に思う。 と、少し批判じみたことも述べたが、それは置いて、主演2人+1の演技は率直にかなり良かった。どこまでも一本気な波留、頼りないけど決して憎めない成田凌は中々に爽やかで上々だし、そしてすぐに死んじゃう杉咲花も、後半ではカセットテープの音声だけでその卓越した演技センスを存分に発揮しており、その点は非常に満足度が高かった。卒業式や出会いと別れ、そして桜。三月の持つこの上なくノスタルジックな情景をふんだんに盛り込んだ作品の空気もかなり心地良かった。まずまず。 [映画館(邦画)] 7点(2020-03-20 16:21:44) |
1388. スウィート17モンスター
《ネタバレ》 世界が私にやさしくないから、私も人にやさしくなんかしてやらない、というのは究極的には大きな間違い(それも致命的な勘違い)で、そーいう「世界」の側から見ればどーでもいい平等意識なんぞに矢鱈と拘っている時点でハッキリ言ってそいつはガキなのだ(実年齢に関わらず)。この世界において、人は平等などではない。個々人が世界に果たせる貢献に応じて、世界は平等に「対価」を払うというだけである。 個人的には「モンスター」は少し言い過ぎで、主人公のイタさはあくまで(ギリ)傍から見れば「微笑ましい」レベルであり(まあ母・兄からすればかなり厄介者ではあろうが)、そこの絶妙なコミカル加減が本作のメインディッシュなのは間違いない。周囲の人間も実は結構「イイひと」が多く(ニックですら、実は決してそこまで悪い奴じゃないと思う)、しかしこのかなりイタい主人公は甘い顔を見せてると永遠に気づかないのでちょっとキツめに接しとくか、という感じも奥ゆかしくて面白い。ただ、コメディとしては十分に面白いと思うものの、青春の「成長」物語としては極めてシンプルな内容で、話自体が全体としてそこまでよく出来ている訳ではない、というのが個人的結論。 とは言え、特に主演のヘイリー・スタインフェルドの熱演を筆頭に俳優陣の演技は揃って実に素晴らしかった。ウディ・ハレルソンも爽やかアジアンも率直にとても好かった。足し引きして、個人的には相当お気に入り。 [DVD(字幕)] 7点(2020-03-19 23:32:02) |
1389. 岬の兄妹
《ネタバレ》 非常に強烈な映画である。観たひとすべての心に確実に爪痕を残すだろう本作は、人間の感情を励起するという意味では、ひとつの高度な可能性を備えた作品だとも思う。 しかし、私自身は、この苛烈な嫌悪感に優るナニかを感じ取るというところまでは辿り着けなかった。嫌悪感が分厚過ぎて、その何者かが突き抜けてこれなかった、とでも言うべきか。本作が備えている多様な嫌悪感は、それだけでもある種、観て損は無いと思わせるに十分なユニークさを持っている、とも言えるのだケド。 [DVD(邦画)] 4点(2020-03-17 23:03:19) |
1390. プライベート・ウォー
《ネタバレ》 シリアで亡くなった女性従軍記者の伝記映画。悲惨な現実がPTSDに陥る程に彼女の心身を蝕みながらも、なお戦地に赴くことを止めなかった勇気・毅然たる意志には素直に感服する(その現実が悲惨であればあるほど、それを世界に伝えなければという使命感は強くなっていったのかと思う)。 戦闘・戦場描写には冷徹なリアリティに加え、映画としての見応えを効果的に高める凄惨さを兼ね備え、で在りながら、随所に非常に工夫された斬新で興味深い映像表現が盛り込まれている点でも良い仕事をしていると思う。そして主演のロザムンド・パイクは文句無しに出色の出来(最期の中継シーン、抑制しつつも感情の入った迫真の芝居には震えた)。観ることの意義もだが、色々と良く出来ている映画でもあると思う。オススメ。 [映画館(字幕)] 8点(2020-03-15 20:23:01) |
1391. ジュディ 虹の彼方に
《ネタバレ》 『オズの魔法使』で、ジュディ・ガーランドは永劫不滅の輝きを手に入れた。映画文化が存する限り、彼女は全ての映画愛好者にとって極め付きの「美しい過去」で在り続け、だから彼女の物語は得も言われぬ「身に覚えの無い」郷愁を我々にもたらす。そして、彼女の人生全体を覆い尽くす闇こそが、その虚像の眩さを一層際立たせている。本作は、彼女が手にした永遠と、そのために払った代償の双方を描き出していると言える。 レネー・ゼルウィガーの演技・演唱は(特に歌唱面で)極めて高水準で、率直に言って(足し引きすると)『エディット・ピアフ/愛の賛歌』のマリオン・コティヤールと比較しても遜色の無いレベルと言ってよいだろう。ただし、結構ひたすらに鬱々と暗い話の内容自体の出来について言えば、個人的には本作は『エディット・ピアフ/愛の賛歌』には及ばない様に思う(ラストのカタルシスがやっぱ少し弱いかと)。もう1点加えても良いかとも思ったが、そちらとの点数の上下関係を考慮してこの評価とさせていただく。 [映画館(字幕)] 7点(2020-03-14 21:54:53)(良:1票) |
1392. ジュラシック・シャーク
《ネタバレ》 非常に有名なサメ系統の最低映画だが、空前絶後に手抜きなCG&とんでもなく雑で無内容なつくりは、逆に分かり易い突っ込みドコロ(=笑いドコロ)がかなり豊富で、ある意味素晴らしいZ級映画だとも言える。79分中15分がOPとエンドロールという点でも(エンドロールが13分くらいで殺意を覚えるほどに長い)、そのクソさ加減は他の追随を許さない。 [DVD(字幕)] 1点(2020-03-09 09:26:25) |
1393. 呪怨 -終わりの始まり-
《ネタバレ》 今作はリブートであり、色々話をいじくってマイナーチェンジしているのだが、あまり効果的とは思えない(俊雄が諸悪の根源に変わっている点もイマイチ話の凄みを損なっているように思うし、その他の変更も話を分かりにくくしているだけに感じる)。 予算節約なのか何なのか知らないが、佐伯家がとにかく明る過ぎて恐怖描写はどれも何にも怖くない(カネの掛け所を完全に見誤っている)。主演陣もかなりの大根揃いで、佐々木希はまだともかく(目がデカ過ぎてアップになるとイイ感じに不気味)、トリンドルは相当酷い(叫ぶ前に「せーの」てやってるのが丸分かり)。後半はその佐々木希が何をやってんのかサッパリ分からない(彼女が担任になって2週間くらいの話だと思うのだが、色々事件が起こり過ぎて時系列もなんか不自然)。大の付く凡作。 [DVD(邦画)] 3点(2020-03-09 00:51:55) |
1394. 惡の華
《ネタバレ》 言葉は受け売りだが、冷めた常識人より熱いバカ。変態だろうがクソムシだろうが、最も重要なのは過程や結果ではなく、意志だ。個人的には、どんなにイタイ行動であろうと(特にガキなら)それはよいのだ。「思い」がそこに在るならば。 残念ながら本作の主人公は本当に本当に空っぽで、そこには欲望も理性も慈しむべき他者への配慮も、普通の人間ならば当たり前に備えているだろうものがまるで欠落している様に見える。「仲村さんのため」という愛とも恋とも同情ともつかぬ感情が垣間見える「夏祭り」は個人的にはむしろまだマシで、前半の「教室」事件辺りはそれが本当に顕著で、過激な行動だけが完全に浮いている。言い方は悪いが、汚物を撒き散らす獣を見ている様なもので、観るに堪えず、微塵の共感も出来ない。漫画もアニメも未見だが、これってホントにこういう話なんですかね?ホントに、という意味では、台詞が微妙に当り障りの無い表現に改変されている様に感じる箇所が散見されるのも気になる。 もう一点、ド級に可愛い玉城ティナのイカレ芝居・ゲスい台詞回しを存分に堪能できるのは本作の数少ないウリだとも思うが、仲村と春日の関係が単純な恋愛感情に集約されてしまいかねないこの配役は、やや疑問に思う。私の勝手な思い込みかも知れないが、仲村が佐伯より明確にブスである方が(てゆーかドブスでいんじゃねーかって気もする)より正しくなる物語にも思う。 [インターネット(邦画)] 4点(2020-03-08 21:41:49) |
1395. 東京喰種 トーキョーグール【S】
《ネタバレ》 完全に前作映画を観ていることが前提の展開運びなので、やや注意が必要かも知れない。ただ、前作と比べても今作は話の内容自体もテンポも驚くほど改善しており、かなり面白く観れたと思う。代役の山本舞香が清水富美加より更に良いかも知れない(超可愛い)。ただ、アクションは実はそれほど改善しているとは言えないのが残念な所(邦画でワイヤーアクションはちょっと物珍しい気もするが)。演技面では松田翔太の変態な演技はそこそこだが見応えはあった。 [映画館(邦画)] 6点(2020-03-08 01:51:49) |
1396. 東京喰種 トーキョーグール
《ネタバレ》 原作未読。設定や世界観&ダークでハードな話の内容自体は、原作が良いのだろうが決して全く悪くはない。役者の演技も好きなものが多い。窪田正孝の狂気の芝居もかなり良いし、脇役連中も中々(清水富美加はメチャ可愛いし、大泉洋や鈴木伸之も良い芝居に思う)。 問題は演出で、妙に盛り上がらないローテンションが終始続くので、正直かなり退屈。結局テンションが上がるのはアクションシーンなのだが、アクションのつくり自体はまま平凡だし、CGが流石に世界最高レベルとはいかず少しチープなのも痛恨。残念ながら、世界水準のダークアクションには程遠い出来と言える(ハリウッドがリメイクしたら、やや観れる作品になるかも)。続編については、清水富美加の降板をどうカバーするかが恐らく最大のキモかと。 [DVD(邦画)] 4点(2020-03-08 01:49:32) |
1397. Red(2020)
《ネタバレ》 今作時点で夏帆は実年齢28歳、役柄は30代前半だが、のっぺりとした清楚で薄い特徴的な顔立ちは、一見は本作の役柄ドンピシャな人畜無害で貞淑な若妻そのものである。しかし目だけが、なんか妙に凄かったのだ。やさぐれた母親役の余貴美子のそれと見紛うまでに、とでもいうか、20代とは思えない実に陰湿な情念と深い苦悩を湛えて、更にその奥に一種の不道徳さというか、やってはいけないことを平気でやってのける様な「育ちの悪さ」をも見事に醸し出していた。今作、全体的に表情自体の大きな演技はそれ程多くなかったようにも思うのだが、夏帆のこの「目の表現力」が、まず中々に優秀だと感じたのだ。 映画の内容的には、少しは公開時期を考えろ、とでも言いたくなる様なド直球な不倫映画であり、しかも前述どおり、端的に夏帆の方もだいぶん「悪い」様な話である。率直に、人によって完全に評価が分かれる類の映画だと思うし、個人的にも100%共感できるなどということは全くなかった。しかし、妻夫木聡の存在感を消し去ってしまうかの様な夏帆の熱演ぶり、そしてそんな夏帆に必ずしも積極的に感情移入・共感させようとしていない全体の構成の奥深さ、ラストの優れた見応えを含め、かなりの良作だと感じた。結構オススメ。 [映画館(邦画)] 8点(2020-03-07 22:05:20) |
1398. 悪魔のような女(1955)
《ネタバレ》 本作は、サスペンスではなくホラーとして観るのが一番良い鑑賞法であると思う(私がホラーマニアだからそう言ってる、ということではありません)。まず、世評に「世紀のドンデン返し!」とか言われているのを耳にしてしまうと「ああ、これはサスペンスなんだ」となってしまうので、そこがまず本作を真に楽しむ阻害要因になっているように思う。そして、邦題も実はイケてない。「うん?誰が悪魔なの?」となって、やっぱりサスペンスになってしまうからだ(つーか主人公以外には女なんて1人しか出てこないやんけ→ほぼネタバレやん)。シンプルに『悪魔』というタイトルだったら良かったのにと思う。 映画人生における後悔はいくつも在るが、本作を事前情報を入れた状態で観てしまった、というのは間違い無く最上位に入る。他に上位なのは「サイコをリメイクから先に観たこと」「シックス・センスのオチを先に聞いてしまったこと」とかだろうか。 [DVD(字幕)] 8点(2020-03-07 03:37:51)(笑:1票) (良:1票) |
1399. 半世界
《ネタバレ》 まず一点めは、紘と明の親子の関係。ガサツで無関心な父親と、それが許せない息子。思うに、人間社会ってここんとこは凄いスピードで進歩してて、社会生活に必要とされるコミュニケーション能力の水準なんかは特に急速に上がってきてる様にも思う。だから、ある面で子供の方が親よりも成長してしまってるなんてのが、結構普遍的な親子の在り方なのかも知れない。とりわけ今作みたいに、親が組織の一員として働いている訳では無い人とかだと、その面では特にそうなのかもとも思う。 率直に言って明の方が「大人」に見えるのですよね。まあこういう親子って割と多いのかもとも思うのだけど、今作ではそれが非常にリアリティが有るというか、納得がいく状況だなあと。でも紘にも事情はあって、親父の様に立派にやりたいんだけどそれもままならない、でもそれって、社会の要求に合わせて職人としての自分も進歩していかないとダメだからで、そういった所も総じて、紘は非常に頼りなく見える(それこそ中学生のバカなまま、中年に、親に、なってしまったかの様な)。 でも、ラストに明はそんな父親を肯定し、受け入れたのだと思う。子供が物心つくころには親ってもう完成しちゃってる歳だし、結局は子供の方から歩み寄るしかない。でも、父は最後に確かに、自分にも歩み寄ってくれた。ある哀しい結末を描きつつ、一方でひとつの望ましい親子の関係を描き切った映画だ、とも思うのですね。 もう一点は、瑛介の再生。厳しい言い方をすれば、彼も紘と同様(というのも何だが)、父に、夫に、そして「大人」に成り損ねた、といってもよいのかも知れない。でも最後には彼も、前向きな心を取り戻して逃げるのを止める。それは紘が彼とは違って、決して辛いことから逃げなかった、からなのではないかと思うのですね。 かなり繊細な映画だと思うが、色々と思う所が有るのを、はっきり台詞には出さないけど芝居の中に醸し出せるという腕達者を揃えているのもあり、十二分に伝わる優れた作品に仕上がっていると思う。一方で、紘だけはあんまり何も考えていない(という役な)ので、そこには稲垣吾郎を配した、というのも、実に適役だと言える。 [映画館(邦画)] 7点(2020-03-02 22:54:55)(良:1票) |
1400. 初恋(2019)
《ネタバレ》 ヤクザ・ヴァイオレンスなのだが、出てくるヤクザ(な人達)が腕っぷしはともかく頭が足りなすぎて、結果コメディになっているという怪作。そもそも染谷将太も大森南朋もヤクザにもマル暴の刑事にも見えないし、この2人がチャンとしてれば20分で終わる映画である。 ただ、物語の勢いも役者のハイテンションなノリもかなりスプラッタなヴァイオレンス描写も、序盤~中盤は正直言って非常に素晴らしく、企みが全て破綻してホームセンターに全員突撃!くらいまでは(特にコメディ的に)とても面白かった。残念なのはこのホームセンター以降、率直にやや息切れしてしまったように感じられる点である。これがもしハリウッド作品だったら、もっとアクションを派手にしていくことで後半も乗り切れたのかもしれないなあ、とも思う。 演技面では、前述の染谷将太の間抜けっぷりがまず絶品。和製ハーレイ・クインなベッキーも一見の価値アリな怪演。新人の小西桜子ちゃんはラリッてる描写以外は大した演技も無かった気がするが(ラストはそーでもないかも)、ヤクザに買われて薬漬けで客取ってる「闇」な部分が全く感じられないのは個人的にはイマイチ(狙ってのことかも知れないが)。 [映画館(邦画)] 6点(2020-03-02 19:51:32)(良:1票) |