1401. 1303号室
《ネタバレ》 S・キング原作の『1408号室』と同年製作。泊まると(入居すると)死ぬという設定はソックリですが、いわゆるパチもん映画ではない様子。本作独自の世界観は感じ取れました。オーソドックスなオカルトホラー。ただ、呪いのメカニズム(なぜ呪われるのか)や救命要件(どうしたら助かるか)等に言及しておらず、呪いの元凶となった悲劇の説明に時間を費やした印象。主人公に死の危険が迫っている感覚が薄く、邦画ホラーお得意のお化け屋敷映画の域を出ていないと感じました。(ちなみに個人的に一番怖かったのは、イった眼をした板谷由夏)。主人公(中越)の家庭環境と幽霊の生い立ちがリンクした終盤は、『仄暗い』を髣髴とさせる切ない人情話への移行を期待したのですが…待っていたのは無暗に後味の悪い結末。怖がらせるのと気分を悪くさせるのは違うのに。残念です。数多ある邦画のダメホラーに比べれば幾分マシかと思いますが、満足度は高くありません。 [DVD(邦画)] 5点(2009-02-25 20:56:32)(良:1票) |
1402. 口裂け女2
《ネタバレ》 「100メートルを3秒で走る」「ポマードと唱えると助かる」等、口裂け女伝説の荒唐無稽なディテールを上手く取り入れた脚本に、まずは拍手を送りたい。でもコレは前作でもやっていること。本作が前作を遥かに凌ぐのは、「恐怖」を主軸とした多様な感情の誘発に成功している点だと思います。来るべき悲劇に備えて、序盤はあくまで穏やかに。ささやかな幸せが丁寧に描かれます。「私きれい?」という有名な台詞や“針を口に咥える”描写等、不穏な空気を演出するスパイスがさり気無く効いています。これらは終盤の伏線も兼ねており、センスの良さと堅実な仕事ぶりが窺えます。事態を劇的に転換させる男の凶行。家族を、未来を、平穏な生活を、奪われる瞬間を目の当たりにして感情が定まりません。惨劇後、生き残った当事者2人の様子がまた秀逸。こういう壊れ方のほうがリアルだと思いました。最大の恐怖は、姉2人の選択。保身のためにある決断を下します。その思考は禁断の果実。「お腹の子のために…」「これからの生活のために…」罪悪感を減らす言い訳なら、幾らでも出てくる。それに非常事態に正常な思考が働かないのも在りそうで怖い。我が身を姉たちに置き換えた時、同じ過ちを犯さないといい切れない自分に戦慄します。自身の心の醜さに気づくことが一番恐ろしい。悲しくも怖いお話でした。なお忘れてならないのが、ショッキングシーンの扱い。どんなに残虐性の高い描写も、何度も出てくれば必ず慣れます。ですから少ないチャンスを効果的に活かすが上策。本作はその術を心得ていました。必須とも言える口裂け女の笑い顔など、たった1度しか出てきません。(惜しげもなくこのシーンを使用している予告編は、本編の前に観ないようご注意ください!)感心しきりの作品ですが、惜しむらくは三姉妹の人選でしょうか。本作で表現される心情は、単色の喜怒哀楽では区切れないものばかり。もう少し複雑な感情を表現できる女優さんなら、尚一層作品の質は上がったと思います。脚本の仕掛けや刺激的な要素が無くとも怖いホラーは作れるという良い見本です。 [DVD(邦画)] 8点(2009-02-22 20:42:09)(良:3票) |
1403. 映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝
《ネタバレ》 良い台詞や感動的なシーンは多々あるものの、どれも単発で終わっている印象があります。例えばラストのキー坊の演説。「地球人は反省した」と言います。さて、それはいつ、誰のことを指しているのでしょう。今回の緑の侵略を地球人は認識すらしていません。のび太たちも今までの生活態度を反省した様子はありません。キー坊の演説は希望的観測に過ぎません。キー坊とのび太の別れの場面。キー坊は「宇宙を見たいから」「勉強したいから」「長老のようになりたいから」と言い残して旅立ちます。のび太とキー坊は友達というより親子に近い関係。悲しみをこらえるのび太の姿に心打たれます。でもその一方、キー坊は地球に留まらない事は容易に予想できました。彼と同種は地球上には存在しないのですから。物語は前後が繋がってこそ価値があります。感動が溢れ出してくる。キー坊の演説を活かすためには、人間をきちんと懲らしめる必要があったと考えます。キー坊の旅立ちを意味あるものにするには、彼にこう言わせればよかったのではないかと。「いつか帰ってきます」。緑の巨人による地球侵略から事態収拾までの状況把握は至難の業で、出口の無い迷路に放り込まれたような不安に襲われました。どう決着が付いたのか分からず仕舞い。其処にきて前述のような感動話を挿入されるものですから、どう受け止めたらよいのか途方に暮れました。『ドラえもん』は日本が世界に誇れる極上のブランドです。そのブランドが競合他社の売れ筋の型番を模倣したらいけません。これなら旧作のリメイクの方がずっといいです。新生『ドラえもん』が満を持して放ったオリジナル脚本がコレでは、あまりに切ないです。新生ドラえもんには本当に期待しています。だから辛口です。ごめんなさい。 [地上波(邦画)] 5点(2009-02-19 22:58:21) |
1404. ダウン
《ネタバレ》 知名度や華やかさこそ無いものの、確実にワーストランキング入りできる実力を備えた作品。まず日本版劇場予告編のキャッチフレーズがイカス。「あなたはもうエレベーターに乗れない」。なんて控えめな煽り文句でしょう。メタボ対策に良さそうです。そもそもエレベーターを恐怖の対象に据える発想がズバ抜けている。アクションは扉の開閉と箱が昇ったり下ったりだけ。この条件で怖いシチュエーションを作り出そうというチャレンジ精神は買うものの、結果トンチンカンな方向へ突っ走っているような。エレベーターを掃除機に見立てるなんて(しかもサイクロン式か?!)斬新過ぎてついていけない。さらにオチが強烈。無難にオカルト路線かと思いきや、マッドサイエンティスト登場。歴史を塗り替える大発明をこんなチンケなものに使うとは。キャットに小判、ブタにパール以上の衝撃。博士はこの実験でどんな終着点を夢見ていたのでしょうか。ファンタスティッ~ク。おまけに本作はリメイクだと知り二度ビックリ。ただし、嫌味がないのは良かったです。バカ映画好きとエレベーターマニアの方はどうぞ。 [DVD(字幕)] 3点(2009-02-16 20:53:25)(良:1票) |
1405. ベースボールキッズ
《ネタバレ》 (物語の核心部分に触れていますので、未見の方はご注意ください。) 序盤は少年野球ドラマの王道をいく展開。野球下手っぴのお荷物少年がジャッキー・チェン映画バリの特訓を経て実力を身につけて行く過程は丁寧に描かれており、好感が持てました。でも気になる点がちらほら…。少年達が挨拶の際に帽子を取らないのは何故?特訓の約束をして待ちぼうけを食らった金田くん。何時間もただベンチに座っているのに違和感あり。努力家の彼なら、時間を無駄にしないのでは。ディテールは今一歩と感じました。でも大筋は外していないと思ったのですが…終盤にきて物語の方もおかしな方向へ。野球以外の要素でドラマを盛り上げようとする魂胆がいけません。不良少年のリンチの件は、まるで安普請のチンピラ映画のよう。それに最悪だったのが金田くんを殺したこと。彼を試合に出さない為の仕掛けが必要なのは理解できます。でもそれ以上に「お涙頂戴」要素の方が強い。安易な作話にガッカリします。さらに決勝戦。下手っぴ君の落球で試合に負けるのは、流れとしては妥当です。でも今回のエラーは彼に非はありません。責められなくて当然。“失敗を責めない”という状況を作らないと、少年たちの心の成長を描くことになりません。“一見定石通り”の脚本ながら、出来上がった物語が不細工なのは何故か。必然を積重ねることで、定石ははじめて定石と成りうるのだと思います。残念です。 [DVD(邦画)] 5点(2009-02-13 21:28:44) |
1406. ウルトラヴァイオレット(2006)
何度となく「あなたの想像を超えた世界」なるアナウンスが入りますが、正確には「あなたの知らない世界」が正しい(懐かしの昼のワイドショーみたい)。何のことはない、説明していないから解らないのですが…。ファージの能力も、彼らのイデオロギーも爽快なくらい謎。小出しの情報で何となく世界観は見えてきますが、理解した頃には物語は終わっている。ただ、説明過多よりはこれくらい不親切なほうが好みなので、個人的には問題なし。CGバリバリのモーターアクションよりも、ミラ・ジョヴォビッチの肉体アクションを楽しむ作品です。 [DVD(字幕)] 5点(2009-02-10 23:49:18) |
1407. 観察 永遠に君をみつめて
《ネタバレ》 「人の良心は何処からやってくるのか?」昔そんなテーマで話を聞いた覚えがあります。曰く、良心とは“心の内にある強い父親像”のこと。親に叱られて社会のルールや倫理規範を身につけていく子供。いつしか自分で善悪の判断がつくようになるのは、親の基準が身に付くから。心の中の父親(母親、祖父母等)が叱ってくる。他者の良心をコピーするという意味です。真偽の程は知りませんが、なかなか説得力がある。「子は親の鏡」なんて言い方と同じでしょうか。さて、本作の主人公、茂樹の場合。父親(小倉一郎)は子供とお友達感覚。息子のストーカー行為を知ってなお容認する姿勢。なるほど、主人公の中の良心がこの父親をコピーしたのなら、行き過ぎた性癖を許してしまうのも納得です。一方、人との距離感が分らないという弥生。集団生活の経験不足がうかがえます。また親の愛情も十分に受けていない様子。「見守って欲しい」は、本来親に対して求めるもののはず。彼女の人物造形にも説得力があります。主役2人の伴侶も、何処にでも居るタイプ。キャラ設定は確かです。だから御伽噺にリアリティが生まれるのだと思います。面白かった。個人的な価値観を持ち込むなら、弥生はド変態。茂樹は大馬鹿モノだと思います。特に茂樹には本気で腹が立つ。奥さんには絶対に秘密を隠し、誤魔化し通せ!泣いて詫びて縋り付けと思う。でも茂樹と弥生の関係だけを見れば、コレで恋愛物語として成立してしまうのだからホント嫌になる。ちなみに茂樹が弥生の想いに早い段階で気づいていたらという“もしも”。2人は幸せになれたのだろうか。勿論結果は誰にも判らない。でも茂樹はずっとそんな事を考えながら、この先の人生をやり過していくのだと思う。それが彼に科せられた罰だ。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-07 22:28:44) |
1408. ダブリン上等!
《ネタバレ》 手持ちカメラの多用や、ハイセンスを装うクレジットは鼻につきます。監督に非はないけど、邦題のセンスもダサいです。でも脚本は上等でした。濃いキャラの面々をきちんと描き分け、絡んで団子にならないさじ加減で各人の人生の糸を交差させる。上手いと思います。身から出た錆で窮地に陥る者もあれば、アクシデントで人生を狂わされる人もいる。いずれにしても、思い通りにならないのが人生です。石を投げつけてくるクソガキは、“人生の落とし穴”あるいは“不確定要素”といったところでしょうか。彼が基点となって、それぞれの人生が動いていく。“女を殴る”最低の行為をしたチンピラにはキツ過ぎるお仕置き。自分勝手な連中にも罰が与えられました。銀行マンは終身刑ですか。ご愁傷さまです。でも結果的には、ほとんどの者が好転したと見て良さそう。バス運転手も車椅子の王様になりましたしね。ずっと自分と向き合うことを避けて来たヒゲ娘。ギブスで固められた心の傷。ずっと外す勇気が出なかった。それだけ重症だったのも理解できますが、腐らせてしまったらお終いです。痛みに耐えて、次ぎのステップに進まなきゃ。辛い目にあった彼女には、いっぱい幸せになってもらいたいです。一方、ソース男の方は納得がいかない。あれだけダダをこねて、迷惑かけて、最後にヨリを戻してハッピーって何?腹立たしい。いや羨ましい(笑)。でも、あの2人が上手く行くとは限らない。「禍福は糾える縄の如し」は実証済みです。人生ままならぬから面白い。でしょ? [DVD(字幕)] 7点(2009-02-04 18:54:01) |
1409. ユーロトリップ
《ネタバレ》 渋谷を闊歩するスモウレスラーと忍者。女は全員ゲイシャガール。そんな日本が舞台の映画を観たらどうでしょう。きっと腹を立てるより、笑ってしまう気がする。あまりにもバカバカしくて。本作で描かれるヨーロッパ諸国のトラベルエピソードも似たようなレベルです。ハッキリとギャグに寄っているので素直に笑える。1%のリアルに基づいたファンタジー。ですから初対面のメル友とヤるために旅行に行って、本当にヤッちゃうウソみたいな展開もアリなんだと思います。締めも甘々の夢物語。個人的にはDVD特典の「もう一つのエンディング」の方がベタでしっくり来ますが。 [DVD(字幕)] 6点(2009-02-01 18:47:39)(良:1票) |
1410. 巨大毒蟲の館
久々に味わうこの脱力感!『北斗の拳』を鑑賞した時に極めて近い感覚です。ココが変、コレを直してと指摘する気が失せる凄まじさでした。ある意味パーフェクト。土台から、骨組みからして並みの映画とは違います。壁紙のセンスを問う前に、まず白アリを駆除しましょうというレベル。でもね、まるっきりアレな訳じゃない。おっぱいはちゃんと出てきた。おっぱいはイッパイ。貧乳率は異様に高いけど、顔は企画モノ女優っぽいけど、エロ日照りの時に文句を言う馬鹿はいません。それに「おっぱいが出てくる映画に悪い映画は無い」って誰かが言ってましたし。ちなみにDVD特典は本編鑑賞を省略できる完成度ですので、お忙しい方はそちらをどうそ。 [DVD(字幕)] 2点(2009-01-30 22:39:07) |
1411. 約三十の嘘
《ネタバレ》 「一つの嘘を隠すためには、三十の嘘を用意しなければならない」。嘘を隠す為の嘘にも、やっぱり嘘を用意しなければならない訳で、要するに嘘は嘘で塗り固められていくということ。いずれ行き詰るのは目に見えている。嘘を生業にする詐欺師たちにとっては大いなる不安。だから「確かなもの」を掴みたい。何か?当然「お金」でしょう。お金は嘘をつかないから。でも、それにしてはオカシな事だらけです。3年前の裏切り者を何故またチームに引き入れたのか?意味のない売上金の管理ルールを作った理由は?ハナから「お金」以外の価値観が見え隠れしています。中谷に至っては、再三「チームが大事」と口に出してしまっている。これでは、オチで驚きが生まれません。まずは“詐欺師=お金至上主義”という図式を明確に提示する必要がありました。巨乳ちゃんのスキル無くしては成り立たない詐欺計画にするとか、お金を一元管理する合理的な説明を用意するとか。典型的な詐欺師像が覆るから、中谷の惨めなお願いが感動に変わる。巨乳ちゃんの涙に意味が出てくるのだと思います。またご指摘の方もおられるように、列車内を一歩も出ないのはミステリーの王道スタイル。観客は本作のジャンルを勘違いしています。こちらは余計なミスリードでした。役者がみな熱演していただけに惜しい作品です。 [DVD(邦画)] 5点(2009-01-27 18:24:39) |
1412. 河童のクゥと夏休み
《ネタバレ》 クゥを無力な小動物ではなく、怪物(妖怪)として描いたところが、本作のポイントと考えます。しかしクゥの“危さ”を、主人公家族は認識していません。観客も同様。拾ってきた犬と似たような感覚です。この無防備さ、無自覚ぶりが、実に人間らしいと感じました。相撲で妹を放り投げたり、カメラを念力で壊したり、その恐るべき能力はきちんと示されています。でもその事実を誰も本気で受け止めていない。だからリスク管理もせずに、クゥをテレビカメラの前へ立たせてしまう。一歩間違えば、どんな惨事が起きてもおかしくなかった。河童を家族の一員に受け入れた家族の善意にウソはありません。それが人間の素晴らしさだと思います。でも正しい判断だったワケでもない。クゥはいわば「自然」の象徴。生命を育む母であると同時に、無慈悲に命を奪う残酷さも併せ持っている。とても人間がコントロールできる代物ではありません。適正な距離を保ち、敬意を払い、お付き合いさせていただくのが筋。かつて人と河童が共存していた時代は、そういう関係が成り立っていたのでしょう。人間は遣りたい放題でここまで来た。繁栄もした。でもそれがいつまで続くのか。「力任せでは勝てない」。主人公がクゥから教わった相撲の秘訣は、いろんな事に当てはまりそうです。クセの無い絵柄は、飾りが無い分テーマと純粋に向き合えます。これは長所。でも反面、魅力に欠けるとも言えます。原監督は、絵力で勝負するタイプでない事は承知していますが、それにしても華がない。キャラクターデザインも然り。ここを改善できれば、更なる飛躍が期待できる監督だと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2009-01-23 22:29:17)(良:1票) |
1413. L change the WorLd
《ネタバレ》 原作も映画にも思い入れが無かったので、本作がスピンオフの体裁を整えていない事はこの際不問にします。それでも、本作単独で評価してコレはいただけない。“FBI”や“地球の浄化”等、規模のデカイ単語が虚しく響きます。だってスケールちっちゃいですもの。“change the world”なる壮大な副題をつけるなら、それなりの世界観を構築しなくては白けてしまいます。例え賑やかしだとしても、悪の秘密結社にショッカーは必要。FBIは何時から自営業になったのか。決死の逃亡劇がサイクリングって何?まさしく「羊頭を掲げて狗肉を売る」が如し。観客を、デスノートファンを楽しませようという気配りが感じ取れません。そういう映画は好きじゃない。 [地上波(邦画)] 1点(2009-01-20 18:56:01) |
1414. スクールウォーズ HERO
《ネタバレ》 自分は山下真司主演の大映ドラマをリアルタイムで観た世代です。でもうちの学校は、校内暴力はほとんど無かったと記憶しています。BE-BOPハイスクールに感化されたであろう短ランは流行っていましたが。自分はノーマルの学ランに“つぶしていない”鞄。どちらかと言うと真面目タイプでした。いや臆病だったのかもしれません。完全燃焼した青春ではなかった。ツマラナくは無いけど、もっと後先を考えずに行動しても良かったかなと。なので、本作に出てくる子供たちを見ると羨ましい。ラグビーに心血を注ぎ、負けて悔しいと泣ける無防備さ。リスク管理は不可欠だけど、過ぎると身動きが取れなくなる。下手に小賢しいより、バカになってチャレンジする方が幸せなんだと、今になって思う。子供は未熟なのでバカで当たり前。でも分別ある大人がバカになれるのはスゴイこと。ですから山上先生のように損得勘定抜きで動ける人間を心から尊敬します。物語的には3年生が卒業した時点で、「学校を立て直す」当初の目的が、ほぼ達成されています。ゆえにクライマックスで得られるカタルシスが目減りしているのが惜しい。フーローの件も、同じく勝利の余韻を打ち消す作用があり、ラストで失速した感は否めません。それでも鑑賞後、十分な満足感が得られるのは、照英の熱演があったればこそ。実は『魁!!男塾』での、彼の吹っ切れた演技を見て本作の鑑賞に至ったのですが、予想通り素晴らしかった。バラエティ畑での「熱血バカ」というポジションは松岡修造が独占していますが、俳優界では照英が今や第一人者。表裏を感じさせないキャラクターは貴重。これからの活躍に期待したいです。 [DVD(邦画)] 7点(2009-01-17 19:56:35)(良:1票) |
1415. クレーマー case1
《ネタバレ》 クレーマーやモンスター・ペアレンツを扱ったTVショーが最近増えています。それだけ権利意識の強い人間が身の回りに多いのでしょう。苦々しく感じる視聴者の気持ちをコメンテーンターが代弁し、カタルシスを得るという仕組みです。本作も同じ方針かと思いきや、全く違いました。クレーマーの主張は常軌を逸していますし、対応するお客様担当もプロには見えません。折角タイムリーな題材を選んだのですから、まずはリアリティのある「クレーマーVSプロの苦情処理」で観客を楽しませて欲しかった。サイコサスペンスへ移行は、その後で良かったと思います。オチについては、演出が露骨なので早々にネタバレしているのが残念。録音もクオリティが低いです。柏原の痛んだ髪の毛は、業務の過酷さを物語っているよう。あれが役作りだとしたらスゴイと思う。 [DVD(邦画)] 3点(2009-01-13 21:58:13) |
1416. 地球最後の男 オメガマン
《ネタバレ》 (『アイ・アム・レジェンド』のネタバレを含みます。一応ご注意ください。)リメイクの『アイ・アム・レジェンド』と同じ世界観かと思いきや、全然違いました。『アイ・アム~』の“奴ら”はもはや人間とは思えません。凶暴な野生動物。アスファルトジャングルでのサバイバルといった趣です。一方本作の敵は人間。会話が成り立つ。生活様式や倫理観が違うだけです。それなのに相容れない事の不思議。少年はそれが理解できません。治療で光を取り戻す道は見つかった訳だし、それを拒むなら共生の道を探せばいい話。それが正論です。でも残念ながら現実は違う。それぞれの利益・主義主張を通すために、殺し合いも辞さないのが人という生き物。重火器を忌み嫌う彼らも、先の戦争から肝心なことを学んでいません。間違いなく人間。そして愚かなままです。主人公のラストの死に様は、まるでキリストのよう。旧世代の贖罪は叶ったのでしょうか。どうせなら、アルファの出現までを匂わせてくれたら、味わい深いものになったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-01-10 22:52:39) |
1417. 俺たちフィギュアスケーター
《ネタバレ》 スポーツサクセス系物語をベースにしたコメディ。定番のプロットを利用しているので、観易いと思います。ただ設定として苦しいのは、主役2人がハナから世界トップレベルのアスリートだということ。腐っても鯛です。今さら特訓して云々という次元じゃない。ですから“アイアンロータス”なる秘儀の習得というお題目を用意したワケですが、コレがマズかった。首チョンパはいけません。それまでの雰囲気と合っていない。ブラックも過ぎたら醒めてしまいます。このあたりの感覚は大切にして欲しいところ。死の危険性に言及するのは構いませんが、それは包帯グルグル巻きとギブスで足りる。「オイオイ関係ないところまでケガしてるよ」なんてツッコミが楽しいんですよね。とは言いつつ、ウィル・フェレルの濃さには笑えたし、愛しのナポレオン・ダイナマイト君が出ているので、個人的にはアリということで。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-07 20:52:14) |
1418. 降霊<TVM>(1999)
《ネタバレ》 役所と風吹がリビングを行き来する場面。霊が映り込むでも、恐怖を煽るBGMが流れている訳でもありません。でも無性に不安になる。役所が動く度に画面にリビングの鏡が映り込みます。たったそれだけなのに気が気じゃない。西日が差し込む部屋。陽の光が作り出す陰影。生ぬるい空気感が、自分以外の存在を喚起させる。でもだからといって、何が出てくるのでもありません。結局のところ“恐怖”とは、自分の心が創り出している事がよく分かる。経験や知識を拠り所とする内的要因です。観客の内にある“恐怖の素”を引き出すのが、黒沢監督は抜群に上手い。裏目を引き、堕ちていく夫婦の姿が恐ろしいのも同じこと。主人公夫婦と同じ過ちをしかねない自分自身に怯えるのです。オカルトの要素は無くても問題なかったでしょう。初出のTVドラマでこのクオリティには恐れ入ります。良作。 [DVD(邦画)] 7点(2009-01-04 22:09:59)(良:1票) |
1419. アメリ
《ネタバレ》 アン・シャーリーが善なる空想家なら、アメリは厄介な妄想娘といったところでしょうか。ただ妄想するだけなら害はありませんが、悪戯癖には困ったものです。やり過ぎのお仕置きや、他者の人生に介入するような真似は褒められた話ではありません。ですが、これも人生の“スパイス”と考えれば少しは許せるというもの。旅するドワーフに感化された父親は引きこもりから抜け出たようですし、“ほとんど病気”の2人はめでたく(?)結ばれました。美味しい料理にも、楽しい人生にも、スパイスは欠かせません。気になる彼に仕掛けた恋のトラップなんて微笑ましいです。でも、スパイスが過ぎたら料理は台無しになってしまいます。それに香辛料だけではお腹は満たされません。ずっと自分の人生と向き合う事を避けてきたアメリは、ルノワールの絵の中の「水を飲む娘」と同じと言えます。心ここに在らずだから、真ん中にいるのに存在感が薄いのです。本気でぶつからなかったら、自分の人生を手に入れられません。やがては絵描きのおじいさんのように、他人の絵を模写する事で大切な時間を使い切ってしまいます。やはり絵描きは、”自分の絵”を描かなかったらウソだと思います。おじいさんは、アメリにそうなって欲しくないと願ったのではないでしょうか。勇気の一歩はいつでも踏み出せます。でもそのタイミングは無限ではありません。疾走するバイクの如く、時はあっという間に過ぎていくのです。2人乗りが出来たアメリは幸せを掴んだ様子。もちろん一人乗りだって気持ちが良ければそれで構いません。大切なのは、納得できる人生を歩むこと。やらない後悔より、やって後悔。失敗だって人生のスパイスに違いありません。本作で描かれている様々な人生のかたちは、観客に優しくその事を問い掛けている気がします。 [DVD(字幕)] 9点(2009-01-01 00:00:01) |
1420. ロスト・チルドレン
《ネタバレ》 世界観に圧倒されます。色使いも魅惑的。これはもう絶賛させてください。右脳が喜んでいるのが分かります。キャラクターも秀逸。心根の優しい大男に窃盗団の美少女。子供をさらうクローン軍団の面子もかなり濃い。自分の大好物、“世界観”と“キャラクター”の出来は文句なく10点級です。今まで本作をスルーしてきた自分に大後悔。ただ残念ながら満点ではありません。左脳の方は退屈したから。最初の20分が辛かった。我慢して観ていれば面白くなる事は経験上確信しているのに、観るのを止めようかと思ったほど。世界観を披露することに熱心で、脚本で観客を楽しませる作業が疎かになっていると感じます。ストーリーの輪郭が見えてからも“ファンタジーだから”でお茶を濁す展開が散見されます。惜しい。本当に惜しいです。「機雷の刺青男」、「一つ目族」、「窃盗団の男の子たち」等の味のあるアイテムが、有効活用されていません。各パーツが有機的に連動し、働いてこそ物語が魅力的なものに変わるのに。それでも、これだけ楽しめれば大満足です。スゴイ映画に出会えて幸せです。(余談)本作で興味を持ったので、ジェネ監督の『デリカテッセン』を観ようと行きつけのレンタルDVD屋へ。でも未入荷とのこと。結構著名な作品だと思うのですが残念。『死霊の盆踊り』は2本も仕入れられているのにね(苦笑)。 [DVD(字幕)] 9点(2008-12-31 17:44:48) |