1421. 楽園をください
《ネタバレ》 『戦争』という大きな枠組みの中で、どちらかと言えば『個人』の戦いやドラマを丁寧に描いた作品ですね。 それほど派手さはないものの、記憶に残るシーンや台詞が多いです。 いえ、むしろ多すぎたかもしれません。大事な場面や台詞が多すぎて、焦点がぼやけてしまっている印象です。結局一番言いたかったことやテーマのようなものって、なんだったんでしょうか。 それに、はじめのうちは誰が誰やらわからなくて、困ります。ジェイク、ジャック、ブラック・ジョン、ピット、ジョージ・・・。覚えられない。誰がメインかもわからない。 結局最後に残ったのはジェイクとホルト。中心人物たちの中で、もっとも中立に近い存在。ジェイクはドイツ系で、本来ならば父親と同じ北側でしょう。ホルトは元黒人奴隷なわけですから、奴隷解放を訴える北軍と戦うのは違和感を感じます。この二人は、戦争そのものを俯瞰して見ることができる、私達鑑賞者のレンズになっているような気がします。 だから、時折みせるジェイクの表情、それは猜疑心に満ちているようにも感じるし、迷っているようにも感じるし、鑑賞者の気持ちを代弁しているかのようにも感じます。 『自分達ゲリラは、結局私怨をはらすため、人によっては私欲を満たすために、戦争を利用しているだけではないのか。』と。 そこに大義はない、ということに、きっとジェイクたち劇中で気付いています。ですがそれに気付いても、最早一度上がった舞台からは誰も降りられないのが戦争なのでしょう。そう考えると、『Ride with the Devil』という原題は、見事に核心をついています。 その一方で、『楽園をください』という邦題もまた的を得ているようにも思えますけどね。 戦渦の中に身を置いた誰もが、最後にはそれぞれの楽園を望んでいたわけですから。 [DVD(字幕)] 6点(2015-05-07 01:52:59)(良:1票) |
1422. 学園天国
《ネタバレ》 学園ライトムービーとしてお手軽に見るには、なかなか面白い一本です。ストーリーはわかりやすく、キャラは個性的でそれぞれに魅力があります。下品になりすぎないコメディも大変良いですね。特に前半が面白いですよ。そしてメインのラブストーリー、お約束好きの自分にはストライクで、大変よかったです。 ストーリーは、人気者のクリスと、地味で認知度の低いライアンが、お互いのいとこ(アシュリー)と幼馴染(マギー)を狙って手を組むというもの。前半は、アシュリーを知り尽くしたクリスがライアンを導き、マギーを知り尽くしたライアンがクリスにマギーの好きなタイプを細かくレクチャーしていきます。 最大のポイントは、ライアンがクリスを手伝う最中で、突然マギーに対する自分の気持ちに気付いてしまうというところでしょう。べたですけどね(笑)ラブコメはべたでもいいんですよ(笑) 更にライアンは、性格の悪いアシュリーに愛想をつかしちゃいます。ところが、ここがこの作品の面白いところで、アシュリーは自分に対して冷たく乱暴に接する人には、余計に目がハートになってしまうキャラクター。この設定の扱い方、結構上手いと思うんです。つまりライアンが逃げればアシュリーが追っかけるという構図が、自然と出来上がっていくわけです。 そしてライアンがマギーに対する自分の本当の気持ちに気付くと同時に、マギーはクリスのことを好きになってしまうという、まさにお約束のラブコメ必勝パターンが炸裂。クリスにとってマギーは遊びだと気付いたライアンは、当然マギーを守ろうとするのですが、これがすべてから回り。ですがライトなラブコメなので、全然深刻にはなりません。多少の切なさを感じながらも、最後まで気楽に見れちゃいます。 真新しさは無いので過剰な期待は禁物ですが、個人的には、B級グルメの中ではおいしい一本だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2015-05-05 13:31:04) |
1423. ファイナル・デスティネーション
《ネタバレ》 幽霊もゾンビも殺人鬼もクリーチャーも出ないのに、これだけ面白くハラハラできる映画が出来ることが素晴らしい。今まで見たホラー映画の中でも1,2を争う面白さです。 今作の最大の長所は恐怖を煽る演出。『トッド』や『先生』のように、『死ぬまでのプロセス』をじっくり見せるパターン。『テリー』や『ビリー』、ラストの『カーター』のような瞬殺パターン。つまり、『死の見せかた』が大きく2パターンあります。 実際、実生活において『事故死』っていうのは一瞬のうちに起こるものがほとんどです。それをただ垂れ流しただけでは、ただの事故映像であり、映画にはならないでしょう。『テリー』や『ビリー』のような瞬殺パターンっていうのは、従来のホラーでは、ホラーにはなりえなかったと思うんです。 ところが、それを『トッド』、『先生』のパターンと交互に見せることで、とたんに従来にはない新感覚のホラーになります。前後の文脈がなければただの『事故』ですが、前後に文脈があることにより、ただの『事故』から『ホラーによる惨劇』になるのです。つまり今作の『死の筋書き』というストーリーの存在により、今まで映像では成しえなかった新しい形のホラーができあがっちゃっているんですね。 また、それぞれの順番も非常に大事になってきます。『トッド』⇒『テリー』⇒『先生』⇒『ビリー』。野球でいうなら、速球とチェンジアップを交互に投げているようなもんです。この順番だったからこそ、21世紀を代表するホラー映画の傑作になったのだと思えます。 このシリーズは、どうしてもそのアイデアの性質から、一番最初に最大の見せ場である『大量死』をもってくる必要があります。最もインパクトの強い映像を一番最初に見てしまうわけです。最初のインパクトが強すぎると、それ以降は何を見せられても刺激が足りなく感じてしまうものです。これはホラー映画では大変危険な行為でしょう。 にもかかわらず、ちゃんと最後まで緊張感が持続するのがこの作品の凄いところです。 ディテールにも非常にこだわっていて、雑誌のきれはしに書かれた『Tod』、ビルの窓に映る『バスの影』、『シートベルトがちぎれる白昼夢』、その予見の演出は見事すぎます。ただ非常にもったいないのは、その演出が上手すぎるうえに、展開がスピーディーなので、初見では気づかずに見過ごしてしまう可能性が高いことでしょう。(※特にバスの影は、重要な会話シーンの中でさりげなく挿入されるので、一番難易度が高い。)この『予見の演出』に気付くか気付かないかで、この作品の面白さの感じ方って、また変わってくると思います。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2015-05-05 03:15:57)(良:4票) |
1424. トゥルー・クライム(1999)
《ネタバレ》 ちょっと軸がぶれているストーリー構成は賛否両論ありそうですが、はっきり言って面白いです。ともすれば重くなりそうなテーマを、ここまでエンターテイメント風味、いや、イーストウッド風味に仕上げてしまう手腕はさすがです。 エベレットのプライベートな問題に関する掘り下げ・描写に割いたウェイトが、大きすぎですね。ビーチャム親子とエベレット親子の対比を映し出したかったのかもしれませんが、今作においてはそれが上手く機能しているとは思えません。唯一のマイナスポイントと言えばそこくらいでしょうか。 ふたつの家族関係がうまく対比・リンクさせきれなかったため、『冤罪を晴らすストーリー』と『エベレット記者のプライベートなドラマ』の二本の軸ができてしまっています。プライベートパートも結構な力の入れ具合。そのため、ますます本筋のストーリーの邪魔に感じてしまうのかもしれません。いっそ添え物的に、もっとライトにポップに扱っても良かったんじゃないでしょーか。 ビーチャムとその家族の描写はパーフェクト!娘や奥さんに別れを言うシーンは、涙が止まらないです。個人的にはこの作品の一番の見所です。『涙活』です。奥さんの泣きの演技は終始胸を打ってしょうがないです。『涙活』です(笑) この家族のシーンがエベレットの捜査と交互に映し出されるため、観ている私達は、完全にビーチャム親子の味方です。だからこそ、そこからの死刑執行シーン、そして、薬が減っていくときの映像・演出が、尋常ではない緊張感を生み出しているのでしょう。やはり冤罪を晴らすストーリー一本でいってほしかったなあ。 ハラハラドキドキ、それでいて涙をさそい、編集者とのかけ合いトークでは笑いもさそう、、、ラストは完璧。上質のエンタメムービーです。 [DVD(字幕)] 8点(2015-05-03 20:18:50)(良:1票) |
1425. ソルジャー(1998)
《ネタバレ》 今作の評価が全体的に低いのは、鑑賞前の期待値の高さにあると思います。名の知れた俳優、スタッフ、監督、脚本、それに多額の制作費の知識が事前にあれば、否応なしに期待も高まるというものです。だとすれば、今作を観たときにがっかりしちゃう人の気持ちもわからんでもないです。 私は何も知らずに観ました。知っていたのはカートラッセルだけ。何も知らずに観ると、純粋にクオリティ高めのB級作品として楽しめます。それに今作の映像、世界観が何と言っても好きです。好きなものは好きだからしょうがない。理屈じゃないんです。 砂嵐が来る瞬間の映像は迫力満点で◎。廃棄船がごみを投棄する映像もスケールの大きさを感じさせて◎。その割りに本筋のストーリーに関する映像は、意外と安っぽくこじんまりとしすぎちゃったのは、もったいなかったかもしれません。これは『インディペンデンスデイ』のときにも感じた感想です。そもそも舞台を最初から狭い範囲に限定し過ぎちゃったのが、一番の原因かもしれないですね。 否定的な意見の多いパワーバランス、強さのインフレについては、個人的にはアリです。訓練ではニュータイプが圧倒していたのに、実戦ではベテランのトッドが巧みな戦術でニュータイプを一網打尽にしていくのは、はっきり言って気分爽快です。これぐらい強すぎちゃって全然OKです。本物のソルジャーの真価は、訓練ではなく実戦でこそ発揮されるのだ(笑) [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-05-03 07:45:46) |
1426. シュリ
《ネタバレ》 テーマやアイデア、ストーリー性と人物相関がすごい良かっただけに、演出の雑さは結構残念。 イ・ジュンウォンとその同僚、イ・バンヒとその上司(隊長?)、その4人を初めとして、中心人物たちの存在感が半端じゃないです。 また、自爆する女性工作員など、妙に生々しく容赦のない映像は、まさにアジア映画の特色のように感じます。これはハリウッド映画ではなかなか感じることができない感覚です。。それでいて、甘酸っぱくぬるめの、ともすれば蛇足になりそうなラブストーリーを絡ませる、日常と非日常の融合のさせ方が凄いです。この衝撃を伴うギャップが、多くの人がこの作品に魅了されるひとつの要因かもしれませんね。 ですが、血生臭いアクションパート、ドラマパート、ひとつひとつの出来はそれほどまでに高いレベルに達しているとは思えません。特にドラマパートの作りこみ、人物描写は甘いと思います。 そしてアクションパートにいたっては、中盤、映画館での攻防がかなり雑にまとめられています。人質を取ってからいつの間にかシーンが切り替わって、包囲網を潜り抜けたことになっています。いったいどうやったの?イ・バンヒがいつの間にか電車に乗って帰路についているのは最早笑います。親友が死んじゃうシーンも、本当は感動的なシーンのはずなのに、『見せかた』が足りないのか、いまいち泣けません。 その一方で、イ・バンヒを撃っちゃうシーン、崩れ落ちるシーン、留守録を聞くシーンなんかは、ぐっとくるものがあります。 冒頭の訓練シーンの映像と、本編の映像との落差も問題かもしれないですね。実際後半一番ドキドキしたのは、研究所内でCTXの説明聞きながら、実際にCTXを火にかけて光を当てているシーンだったりします。『爆発しちゃうんじゃないの?』って、気が気じゃなかったです。そう言えば、あれだけ機密事項とか言っていたのに、気軽に普通の理科室みたいなところでアルコールランプ使って実験していたのはいったい・・? 最後に、本編とは全然関係ないんですけど、『東洋人の顔は皆同じに見える』と言う西欧の方々の気持ちが、この作品観るとわかっちゃう自分が悲しい。 [DVD(吹替)] 7点(2015-05-01 05:33:56)(良:1票) |
1427. ビッグママ・ハウス
《ネタバレ》 コメディときどきサスペンスの良質エンタメムービー。エディ・マーフィーやマーティン・ローレンスのわかりやすくアップテンポなコメディが大好きです。今作は、前半から中盤にかけて特にコメディ色が強く、メインのストーリーがどうでもよくなります(笑) とは言え、レスターが次第に近づいてきているのがわかると、クライムムービーの雰囲気も出てきます。子供に絵本を読んであげるシーンはドキドキ。演出がうまく、なかなかの緊張感。コメディにしとくにはもったいない盛り上がりを見せます。 そしてそこから、マーティン演じるマルコムがFBIってばれちゃうまでの流れは、どたばたの中にコメディと緊張感をうまく共存させ、これぞクライマックスにふさわしい展開を見せます。非常に良かったですね。脇役たちの反応もOK. 個人的に、『実はFBIでした』っていうのが好きなんですよ。格好いいじゃないですか。嘘をついてはいたんですが、捜査上仕方なくっていうのが良いんですよね。そんで最後は、わかっちゃいるけど、すきっと爽快ハッピーエンド。こうゆう映画を休みの日にのんびり見るのが至福の一時です。(安上がりな自分) それに、冒頭の引き出しでお化けのおもちゃが飛び出るシーンや、レスターが夢に出てくるシーンなんか、ちょっとびっくりしちゃうんですよね。サスペンスやホラーだったらそれくらいで驚きゃーしないけどさ、のほほんコメディだと油断しているから意表をつかれます。そーゆープチドッキリをはじめとして、ハートフルで爽快なミニエピソードを、それこそメインのストーリーを邪魔しない程度に取り入れているのが楽しいです。非常にバランスの良い作品です。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2015-04-30 21:50:51) |
1428. ボイスレター
《ネタバレ》 小粒な人生を送る、小粒な自分にとって、小粒なサスペンスこそ最良の友。この作品はスマッシュヒット。これぐらいの規模だからこそ、逆にハラハラできるし、臨場感を味わえちゃうんですね。 ミスリードさせてやろうという空気、なかなか好きですよ。もちろん『ミスリードされるかー。』って思うんですが、それ以前に、これだけ怪しい人たちがたくさんいると、そもそも誰が犯人かなんてわかりません。結局は消去法で、ラスト二人になったときにはじめて誰が犯人かピンときます。それまではもう全然わかんないですよ。それに、展開がわりと速いので、考える間もないです。 こーゆー小粒ながらもしっかりとストーリーを練ってあり、緊迫感もスピード感もあるサスペンスは良質です。意外にも指を切っちゃう視覚的に痛いシーンなんかもちゃんと用意してあります。特に、あの人の指が切られるときが、結構な迫力です。 欲を言うならば、4人から2人に減らすのがちょっと早すぎちゃった気もしますね。ジュディ(でしたっけ?)なんか、もう少し泳がせても面白かったかもしれません。 まあ何にせよ、ラストまでノンストップで盛り上がれるオススメのサスペンスです。 [DVD(字幕)] 8点(2015-04-30 20:01:19) |
1429. 太陽に恋して
《ネタバレ》 クリスティアーネ・パウル演じるユーリをはじめとして、ユーリの友人や、トラックの運転手のルナなど、きれいな女優さんがたくさん。ドイツ映画なので、普段目にしない女優さんたちばかりで、とても新鮮です。 リズミカルなストーリー展開、享楽的で個性のある登場人物たち。エンターテイメントに富んだロードムービーです。ラブストーリーとしても、程よい切なさを感じます。 個人的にはちょっと飽きちゃうときもありましたので、点数にすると6点くらいになっちゃいます。ですがこれは単に『ロードムービーは飽きる』という個人的な体質の問題であり、この作品の良し悪しとはきっと関係ないでしょう。ラブコメ好きな方、旅好きな方、万人に愛される映像作品だと思います。 ラストのストーリーの収束のさせ方が、いたってシンプル、かつすっきり爽快で、これ以上ないハッピーエンドなのが良かったです。きれいにまとめましたね。 [DVD(字幕)] 6点(2015-04-29 15:49:29) |
1430. アバウト・ア・ボーイ
《ネタバレ》 ともすれば地味な作品なのに、不思議なほどに見入ってしまいます。感情の起伏がはっきり見てとれるので、見ていて飽きないのかもしれません。 ヒュー・グラント演じるウィルの人柄は最高。軽薄そうに見えて情が深く、無関心そうに見えて意外と優しく、嘘つきなんだけど、大事なところではいつも正直者。好きではないが嫌いになれない『ウィル』という人物を、最高のバランスで魅力的に演じきっていたと思います。こーゆー役をやらせたら、ヒュー・グラントは天才的にはまります。 正直ゆーと、ストーリーは個人的に物足りない部分はありました。マーカスの恋の行方や、友人関係、ウィルの人生設計の見直しなど、どれか一つでもいいんで、もう少しだけ踏み込んで、建設的なストーリー展開を見たかった気はします。ラストの『ウィルとマーカスには支えてくれる人たちができた。』っていうのがこの作品のクライマックスなんでしょう。ですが、その結果具体的に二人の生き方が、どう変わったのか見せてくれないと、ただ雰囲気が良いだけの映画になってしまいそうです。 その雰囲気の良さだけでも高得点あげられちゃうくらいには面白い。ですが、せめてウィルにはなんか自分のしたい仕事やなりたい自分を見つけて、空っぽの自分からの脱却をはかろうとするきっかけくらいは、最後に見せてほしかったかな。 マーカスは『ブレない母親思い』がかっこよかったですね。もうちょっと音楽か勉強か、何かを頑張る姿を見たかった気もしますが、友人達からバカにされいじめられても母親を大切に思う彼は本当にかっこいいです。個人的にはこの作品の一番のポイントだと思います。 どちらかと言えば、ストーリーうんぬんよりも、人物の魅力を味わう作品。 落としどころが気になって最後まで見てしまうタイプのずるい映画という気もします。 どちらにせよ、そのプロセスは十分に楽しめるヒューマンストーリーに仕上がっていますね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-04-27 04:00:33)(良:2票) |
1431. 追跡者(1998)
《ネタバレ》 トミー・リー・ジョーンズ主演の追跡者。今回はてっきり本当に悪いやつを追いかけるのかと思いきや、またもや冤罪。つまり、主役は前作同様二人いることになります。これでは他のレビュワーの方も指摘されているように、『逃亡者2』ですね。 今作のストーリーは『逃亡者』以上に複雑で、中盤以降にあっちこっちで鬼ごっこが始まる展開は嫌いじゃないです。ですが、ストーリーをひねりすぎると逆に単調に感じてしまう不思議。似たようなノリが続くためか、次第に頭がボーっとしてきます。あんまり複雑にしすぎると、頭が理解するのをやめてしまうのかもしません。娯楽作品を気軽に観るつもりで鑑賞したので、その割りにはちょっとストーリーがごちゃごちゃしすぎていたのかもしれないです。 飛行機が墜落するシーンや、仲間が撃たれるシーンなど、目を見張るシーンがありますし、ボートでの追跡シーンは映像がやたら綺麗で臨場感があって個人的に好きなシーンです。一つ一つの画を切り取ると素晴らしい作品なんですけどね。なんか見ていて今回は疲れちゃった。ラストあたりがきっちり盛り上がったから、ま、いいんですけどね。仲間が一人殺されちゃったのは、ちょっと悲しかったかな。あれでメリハリは確かについたし、復讐へのカタルシスを感じ取ることができるわけですが、それでも助かってほしかったです。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-04-26 15:41:09) |
1432. ルール
《ネタバレ》 都市伝説になぞらえての殺人ゲーム。ポップでシュールで猟奇的。殺しの手口が多岐にわたることや、いつ誰が狙われるかわからないドキドキ感は、スラッシャーものとしては及第点。それでいて、本当に残虐なシーンは巧みなカメラワークで映していないので、グロイ描写が苦手な人でも安心してスリルだけを味わうことができそうです。 また、同室のトッシュが明かりを点けたことを怒る前フリや、警備の女性がテレビの刑事アクションに憧れている前フリなど、芸の細かい伏線の張り方は結構好き。B級エンターテイメントホラーながら、ディテールまで丁寧に意識してあるのが良いですね。 惜しむらくは、せっかく都市伝説になぞらえていたのに、中盤以降は都市伝説が味付け程度に成り下がってしまったことでしょうか。もったいないですよね。せっかくだから、都市伝説を謎解きのヒントに使う演出があればもっと面白くなったかもしれないのに。 まあ、今回の一番の問題は、同じコートが流行りすぎていることでしょう。犯人に、ウェクスラー教授に、用務員に、ブレンダの友人まで、何故かみんな同じコートを持っています。それが、被害を大きくしてしまった一番の原因です(笑) スクリームと比較されがちな今作ですが、大きな違いは犯人に明確な動機があることでしょう。明確な動機があれば、犯人に『人間』を感じてしまいます。その瞬間、犯人は『得体の知れないモンスター』から、『同じ人間』になっちゃいます。動機があるっていうのは正しいことなんですが、サスペンスやホラーは意外と動機がないほうが面白かったりします。そこがスクリームと本作との大きな違いじゃないかな。 [DVD(字幕)] 7点(2015-04-25 15:34:33) |
1433. 洗脳
《ネタバレ》 いつの間にかクラスメートや友人が、一人また一人と別人のようになっていくのって、凄く不安な気持ちになります。この不安な気持ちって、ちょっとゾンビ映画に近いかも。自我を手術や施術で人工的に奪ってしまうっていうのは、手法が違うだけでゾンビにされちゃうのと同じようなもんだと思います。そういった意味では、今作はエンタメ作品として水準を超えるレベルの面白い作品に仕上がっています。 ただ完全なるB級作品ですので、過剰な期待は禁物です。もちろん、つっこみなんか入れ始めたらきっと止まらなくなっちゃうので、つっこみもご法度。いろんな謎を残したまま終わるのですが、気にしたら負けですね。一般的なホラー映画の例にもれず、『とりあえず、脱出したらクリア!』っていうノリでご鑑賞いただくのが正解なんでしょう。 個人的には、得体の知れない不安感、次第に迫ってくる恐怖感を楽しめる今作はアリです。 [DVD(字幕)] 7点(2015-04-23 13:32:55) |
1434. チャーリーズ・エンジェル(2000)
《ネタバレ》 こーゆー大衆向けの娯楽作品って相性良いはずなんですけど、そんなに面白いと思えなかったです。何故でしょう?ストーリーやアクションの既視感が強いのかもしれません。いかにも作りものっぽいキャラ設定に、わざとらしさを感じてしまったのかもしれません。普段はそーゆーの、あまり気にならないのですが、今作はなんとなく目に付きましたね。 スローを多用するのもあまり好きじゃないんですよね。『はい、ここを見て!』って強制されている感じがしちゃって・・。映画に全力で感情移入しようとする私にとって、スローモーションって鑑賞の邪魔にしかなりません。必然性がある場合は別ですが。例えば弾丸のシーンはOKです。 ついでに言うと、脚本が雑なのか、演出がまずいのかわかりませんが、単純明快なストーリーのくせに展開がわかりづらい部分があります。テンポが速くスピード感のある映画は好きなのですが、その速さに技術が追いついていない気がします。娯楽作品だからこそ、丁寧に作ってほしいものです。 ただストーリーとしては、こうゆう『とにかくガンガンいこうぜ』って感じのノリノリなアクションは嫌いじゃないです。コメディとしてはパワー不足かもしれませんが、アクションもの、カンフーもの、スパイものとしてはまあまあじゃないでしょうか。途中からスパイものじゃなくなっちゃうけど。 冒頭の飛行機から飛び降りるシーン、ドリューが撃たれるシーン、ルーシーとキャメロンが襲われるシーンなど、部分的に見れば目をみはるシーンも多いだけにちょっと残念な出来。何でもバランスが大事とゆーことかもしれないですね。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2015-04-22 14:49:31)(良:2票) |
1435. ムッシュ・カステラの恋
《ネタバレ》 淡々としていても、面白い作品って結構あります。静かなんだけど、スローペースなんだけど、なんかひきこまれちゃう作品、っていうのがあります。それは登場人物が魅力的だったり、ストーリーが面白かったり、理由はさまざまです。ですが今作は残念ながら、私にとっては『ただ淡々としているだけの作品』でした。 出てくる人たちも、悪い人はいませんが、かといって魅力を感じるほどの人もいないんですよ。『良い人たち』っていうよりかは、『思ったよりも良い人たち』ってイメージなんです。つまり、第一印象がマイナスで、相対的に後半よく見えてきちゃうみたいな、そんな感じなんです。ドラマ全体がそんな感じなんです。 それに、カステラさん、純愛ふうですが、妻子もちやんけ。不倫やんけ。最後のほう奥さん泣いているのに、自分は女優となんか良い感じに見つめあって終わりって、奥さんが可愛そうですよ。僕は騙されませんよ。あなたは良い人なんかではありません。誠実な人はそもそも不倫なんかせんわい。 [DVD(字幕)] 4点(2015-04-22 02:32:35) |
1436. シンプル・プラン
《ネタバレ》 娯楽作品とは言い難い内容ですが、見る人を選ばないとっつきやすさがあります。シンプルな内容だからこそ、ディテールにこだわって非常に質の高い作品に仕上がっている気がします。 はっきり言って、お金をネコババしようが、警察に届けようが、もっと上手いやり方はいくらでもあります。つまり、この作品の何がすごいって、穴のあるストーリーにも関わらず、ハンクをはじめとする登場人物たちの選択が、『本当にそれしかない』と思わせる演出の上手さだと思うんです。 で、そのストーリーなんですが、人間の隠れた負の部分をひっぱり出しちゃっているんで、見ていて決して気分の良いもんじゃないです。 特に、いわゆる『世間からのはぐれ者』であるジェイコブとルー、それに対するハンク夫妻の対比が凄い。人としての道を確実に踏み外していくのは、良き夫、良き妻であるはずのハンク夫妻のほうである事実が怖いですね。世間一般の水準にあてはめた『善人』『真面目』なんてものが、いかに表面的なものかってのを見せつけられます。ジェイコブとルーなんか、お金が手に入ってもそんなに変わらないので、逆に人としてまともに見えます。 ジェイコブの『飛行機なんか見つけなければ良かった』という台詞が切ないです。ラストまで見たときに、冒頭のハンクのナレーションが意味を持ち始めます。欲にかられて失ったものの大きさを実感させられます。 好きなタイプの映画ではないので、この点数が精一杯です。ですが、私個人の好き嫌いを抜きにすれば、単純に映画としての評価は満点だと思います。ハンクたちは失うものばかりでしたが、この作品を観る人は教訓を得られます。 ただ、小説や映画に感情移入しやすい人は注意が必要かもです。鑑賞前は『これはフィクションです。』『これはフィクションです。』『これはフィクションです。』と3回くらいおまじないをかけておいたほうが良いかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2015-04-20 14:16:06)(良:2票) |
1437. マスク・オブ・ゾロ
《ネタバレ》 爽快感のあるエンタメ作品。剣戟アクションだけでなく、道具や馬を駆使したアクションも見ものです。ジャッキー映画に通じる笑いや面白さがあります。 ただ残念ながら、ストーリーに対して時間をかけすぎてしまった感は否めません。剣戟のアクション映画って、バランスが結構難しいのかもしれません。短すぎるとしょぼさを感じてしまうでしょーし、かと言って長すぎると、アクションシーンで逆に間延びしてしまうことだってあると思います。 今作に関しては、『予定調和なヒーローもの活劇』の部類ですので、主人公が死なないことはわかりきっています。だとしたら、こういう作品こそもう少しコンパクトにまとめて、スピード感を大切にしたほうがいいんじゃないかなーと思った次第です。 剣戟のアクションは好きなんですが、今作は何気に、『ゾロVSエレナ』の一騎打ちが一番見所だった気がします。いろんな意味で・・・ それから、馬が一歩前に出て地面に落下するシーンが凄い好きです。とにかく馬からよく落ちるヒーローです。後半、追っ手から逃げるときにまた馬から落ちたときには、さすがに『もーいーよ。』って思います。同じネタを押し過ぎです。だいたい『ゾロ』なんだから、馬ぐらいちゃんと乗ってほしいものです。でもその後のカーチェイスならぬ馬チェイスは非常に良かったです。漫画チックでお約束チックですが非常に面白いシークエンスです。この場面を予告で見せちゃっているのがもったいないですよね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-04-19 18:16:03)(良:1票) |
1438. ヒットマン(1998)
《ネタバレ》 テンポの良いストーリー展開、軽快なアクション、匙加減の絶妙なミステリー、非常にバランスの良いエンタメ作品です。リー・リンチェイはもちろんのこと、脇役の面々も大活躍。殺し屋達のバトルなので、リー・リンチェイの独り舞台になっていないところが、かえって面白いです。 『誰が炎の天使なのか?』っていうちょっとした謎を楽しめちゃうのですが、正直そんなに大したミステリーでもないのに、意外とミスリードされてしまうかもしれません。噂の凄腕ヒットマン『炎の天使』がまさかの人物なんです。『おまえかよ。』って感じです。 ラストは個人的に一番好きなタイプのハッピーエンド。 観る人を選ばない、誰でも気軽に楽しめる作品です。オススメです。 [DVD(吹替)] 7点(2015-04-17 14:29:19) |
1439. 絶体×絶命
《ネタバレ》 大変面白い。スピード感のあるサスペンスアクション。ほぼ一日内の出来事で構成されているのが、臨場感を生んでいて良いです。 ストーリー、脚本の面白さもさることながら、脇役も含めて登場人物の設定が非常に良い。『マッケイブ・・・狂気ときまぐれな優しさを併せ持つカリスマ的犯罪者。』 『フランク・・・本当の親バカ。いや、バカ親。』『息子・・・病気でもう長くはないけど、元気に走り回る。』 『ホーキンス医師、警部、ネイクなど・・・第三者的視点だけど、なんだかんだ言ってフランクを応援する善意の第三者。』 特に脇役のみなさんが、名も無き人たちまで含めて、きっちりストーリーに絡んできてくれるのが嬉しいです。それぞれが、映画の中で必要な役割を担い、きっちり仕事をしているのが、作品の質を全体的に底上げしていると思います。 マッケイブは理想的なダークヒーローですね。不必要な殺しはしないのですが、必要であれば躊躇しない。警察関係者だけはきっちり殺そうとする。そのはっきりしたアンチ・ヒーロー像は、はっきり言ってかっちょいいっすね。ラストのオチもこれ以上ないくらい最高です。 不満点を挙げるとすれば、2点。まず一つ目は、カメラ割りのためか、アクションのスピードが速すぎるためかわかりませんが、一瞬何が起こったのかわかりにくいシーンがいくつかあります。 二つ目は、フランクの行為。病院内での息子優先の行為はまだ許せる範囲でした。ですがラストのカーチェイスはさすがにアウト。死人が出てもおかしくないです。息子のために他人の命を軽視する。ドラマ仕立てのアクション映画ではよくあることですが、興醒めしちゃいます。 [DVD(字幕)] 8点(2015-04-15 14:13:35)(良:1票) |
1440. 悪いことしましョ!(2000)
《ネタバレ》 ストーリーに魅かれて見たのですが、期待していたものとは随分趣きが違いましたョ。『好きな人を手にいれるため、悪魔が願いごとをかなえてくれる。』てっきり、現実世界の中で、いろいろな奇跡を起こしてくれるものだと勝手に思い込んでしまった自分が悪いのですョ。まさか世界もキャラもすべて変わってしまうとわ、びっくりですョ。予想していたのとは全くちがう演出、これはやられましたョ。最も苦手なパターンですョ。途中で見るのやめようかと思ったョ。 次の願いを叶えさせるために、わざとうまくいかないように仕向けるっていうのは面白いアイデアですョ。ただそのやり口が卑劣でチープでしョ。『実は麻薬王だったョ。』『実はアソコがとても小さいんですョ。』『実はゲイですョ。』『実はリンカーンでもうすぐ暗殺されますョ。』そんなこと言い出したら何でもアリになってしまうョ。どう考えてもフェアじゃないョ。ずるすぎるョ。そんなのちっとも面白くないョ。第一、性格や知性まで変えてしまったら、もはや別人だョ。ラストは良かったけれど、好みに合わない映画だったョ。 あと、もう一つだけ言わせてョ。ビッグ・マックとコーラの注文は、契約書にサインをする前のやつだから、それをカウントするのはおかしいでしョ。 [DVD(字幕)] 4点(2015-04-15 04:45:02) |