1441. 僕の彼女を紹介します
「猟奇的な彼女」の作品的なテンションを意識しすぎて、展開されるストーリーが物凄くアンバランスになってしまっていると思う。ラブコメ調を通すのかと思ったら、妙にシリアスになったり、いかにも感動を誘う感じになったり、結局これでは映画自体に感情移入することはできない。ほとんど無意味に挿入される仰々しいアクション、思いっきり「ゴースト」なラストには、失笑も免れないだろう。 ただしかし、それでも最後までこの映画が見れるのは、一重に主演女優チョン・ジヒョンの魅力のおかげに他ならない。ストーリーが破綻しているにも関わらず、彼女が表現する感情のみで感動させる。それは凄いと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2005-11-16 12:06:25) |
1442. 亀は意外と速く泳ぐ
“普通”のことを“普通”にしようとすることを、これほどまでに可笑しく見せる映画が今まであっただろうか?ゆるくゆるく流れるこの映画の時間の“ゆるさ”は、その在り方の反面、どこまでも計算されつくされている。まるでそれは、「この世の中はどこまでいってもどこにでもユーモアに溢れている」ということを高らかに、いやこっそりと提唱しているようだ。 たまらなく可笑しく、どこまでもくだらない。でも、だからこそこの映画には、どうしようもない愛くるしさに溢れている。だからこそ、人間たちのあたたかさと切なさが染み渡ってくる。 そういう愛すべき映画だと思う。 [映画館(字幕)] 9点(2005-11-14 20:11:02)(良:1票) |
1443. 刑事コロンボ/指輪の爪あと<TVM>
相変わらずのコロンボのキレっぷりに惚れ惚れする。今回は、相手(犯人)が探偵だけに、殊更にコロンボの思考が際立っている。必死になって隠滅作業をしようとする犯人を、まんまと出し抜いていく様は痛快そのもの。ラストの小気味良い仕掛けまで、コロンボシリーズらしい娯楽性がにくい。 [DVD(吹替)] 7点(2005-11-13 17:01:10) |
1444. 刑事コロンボ/構想の死角<TVM>
《ネタバレ》 観終わった後のエンドロールで初めて知ったのだけれど、この作品がスピルバーグ演出というのはなんだか腑に落ちない。 コロンボらしい犯人像で、コロンボらしい展開なんだけど、犯人を追い込むラストがどうも拍子抜けだ。殺害トリックのネタとなったメモ程度で、あの場合自白に追い込めるだろうか?あのメモ自体がコロンボの仕掛けだとか、あの殺害トリックは作者しか知らないとかという設定であれば、まだ納得できる。が、トリック自体本当に犯人自身が考えたもので、あのメモがどれほどの物証になるというのだろう。 そもそも、あれほどのトリックが考えつくのならば、作家としての才能も充分あったのではないか。 [DVD(吹替)] 5点(2005-11-13 16:56:03) |
1445. イン・ザ・プール
果たしてひとつの映画作品として完成しているのかは、計りきれぬ部分がある。おそらく、結構映画化が難しい素材であり原作なのではないかと思う。 でも、人間の可笑しみに溢れたセリフのひとつひとつが秀逸で、松尾スズキをはじめとする演者の巧みさも手伝って、とても質の高いコメディになっている。 設定や登場人物そのものが常軌を逸しているけど、だからこそ人間の素の部分が見えてくると思う。 決して肩を張らない“ゆる~い”感じが、なんだか心地いいかも。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-13 02:22:05) |
1446. マシニスト
《ネタバレ》 ハリウッドきっての“能面俳優”と言ってもいいクリスチャン・ベイル。彼の映画は近年何本か観ているが、なかなか本当の風貌が掴めない。そして、今作でのゲキ痩せっぷり。なんなんだこの痩せ方は。ファーストカットからその尋常のなさが画面から放たれる。凄い。 一年間眠ることが出来ない人間なんてものは、現実に有り得ることはないだろうが、もしそれが起こりえたなら、人間の風貌はこうなるに違いないと疑わない。あらゆる意味で蝕まれていく人間を表現しきったベイルの怪演を観るだけでも、この映画は価値がある。 ストーリー的にも決して悪くはなく、全編を通して主人公を陥れていくものの正体が、自らの“良心”であったというのは、面白い設定だと思う。ただ、この手の「自分とはまるで風貌の違う人物が自分の精神の姿だった」というアイデアは、もはや近年使い古され気味で、パッと見では目新しさを感じることができないのは、難しいところだろう。 しかし、映像的感覚も素晴らしく、総合的に見て非常に完成された映画であることは間違いない。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-10 13:00:30) |
1447. エル・マリアッチ
じっとりとへばり付くようなメキシコの熱気と、犯罪が氾濫する街の雑踏が、ロドリゲスの原点にふさわしい刺激的な映像感覚で並べ立てられる。 主人公の男のとんでもない“不運”をあくまでドライにカラっと描くストーリーの質が映画に相応しかったと思う。 ただ、ラストのくだりが少々ガサガサしすぎというか、小気味よさに欠けていた。ラストをもっと爽快にまとめていれば、もっとスゴイ映画になったと思うが。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-07 11:46:00)(良:2票) |
1448. 宇宙戦争(1953)
正直、バリバリのVFX映画の完成形であるスピルバーグ版「宇宙戦争」を観た後では、ビジュアルの弱さに気後れしてしまうことは否定できない。映画としての緊張感という点でも、一方的に宇宙人に侵略され続けるという絶対的な絶望感を感じることがなかった。 ただ、ところどころのシーンで、その後のSF映画に影響を与えていると思われる描写は多々あり、この映画の価値はそれだけで充分あったのだと思わせる。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-02 11:40:48) |
1449. ソウ
《ネタバレ》 とにかく、痛々しすぎる密室における緊張感は一見の価値はある(と言うか痛々し過ぎて2度、3度と見ようとは思わない)。全編に張り巡らされた伏線と、“密室”という設定を存分に生かしたアイデアも見事だったと思う。 終盤、クライマックスにおいて、それまでの雰囲気を無視してやけにバタバタとし始めて、正直「なんだよこの終わり方は~(lll ̄■ ̄;llllllΣ)」と思いかけたところで、真の結末を見せる顛末には、まんまと衝撃を受けた。ああいう終わり方は、この種類の映画にふさわしく、この「SAW」という映画の結末に合致していると思う。すなわち、“SAW”とは、重要な小道具であるノコギリを示すと同時に、「見ていた」という要素をあらわすものなのではないか。 ただしかし、犯人の正体を筆頭に色々と腑に落ちない点も多い。冷静に考えると強引すぎるようにも思う。それが描かれなかった「謎」なのかは疑問だが、良い意味でも、悪い意味でも、全然眼中になかった続編「SAW2」に対する好奇心は膨らんだことは確かだ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-10-29 21:40:58)(良:2票) |
1450. ゴーストワールド
“変”なのは自分なのか取り巻く環境なのか?社会の常識と言われているものを迎合して“自立”しなければならないのか?そういう普遍的な10代の思い悩みを、ある部分においては斬新に、そしてある部分においてはとても純粋に描いた作品だと思う。 パフォーマンス的にも、ビジュアル的にも完璧な演者たちが織り成す、少し奇妙なこの映画世界は、実はどの世界にも存在する滑稽で純粋な人間の姿だ。 [DVD(字幕)] 9点(2005-10-26 17:04:13) |
1451. 穴/HOLES
「穴」というタイトル通り、ストーリー自体にも実際“穴ぼこ”だらけのような気もする。でも、それを「残った穴は想像で埋めて」と終幕で言い切ってしまうユーモアがこの映画の最大のウリであろう。登場人物たちも、物語も、設定も、どこかヌケている。そういうものを平然と流して、独特のユーモアに昇華させ、普遍的な爽快感を生むなんとも奇妙な映画だ。 [DVD(字幕)] 6点(2005-10-24 18:08:01) |
1452. レイクサイド マーダーケース
“辛辣”という言葉だけでは覆うことができない“混沌”と“闇”にまみれた世界が映し出される。 これは映画である。が、事実でなかろうと、実際にこんなことが起きいても、いなくても、人間が想像し得る以上、これは現実に起こり得る“ケース”であると思う。だからこそ、映画においても答えは出ない。 主人公の男がそうであるように、現代の多くの人間が、眩い光を直視できないのかもしれない。 では僕は、直視できないこの殺人事件に対し、その背けた目線を何処に向ければいいのだろうか。 [DVD(字幕)] 7点(2005-10-11 05:09:20) |
1453. 恋に落ちる確率
とてもとても変てこな映画だ。映画の主人公そのままに、間違いなく観ている側も“不思議な世界”へ引き込まれる。この映画世界は何なのか?主人公の男の混乱した精神世界なのか?劇中の小説家が描く愛についての物語の世界へ入り込んでしまったのか?たぶん、明確な説明などは必要でないのだと思う。この映画の作り手が望んでいるのは、そういうことではないと思う。 観客のそれぞれが、それぞれの“捉え方”をし、それぞれの結末に対する感情を持つべきなのだろう。 きっと、観終わった直後では、自身の中においても感情としての答えは定まらない。でも今はそれでいいのではないかと思う。 遠い、北の国でつくられたこの映画は、ただ単に冷たいだけではない冷ややかな体温をしっとりと観る者に残す。 [DVD(字幕)] 7点(2005-10-06 02:39:08) |
1454. ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]
アメコミブーム、ヒーロー映画ブームもそろそろ臨界点で、正直なところ新鮮味がなくなっているのは確実だと思う。加えて、近年の秀逸なヒーロー映画の数々では、見事なビジュアルのアクション性はもはや当然の要素となっており、主人公であるヒーローの内面を繊細に描くことが必須となっている。その点で、今作は乏しかったように思う。設定自体かなり突飛ではなるが、不慮の事故によって望んでいない特殊能力を得てしまったわけだから、もう少し、キャラクター各々の内面的な葛藤があるべきではないか。外見が変貌してしまったベン以外はが、わりとすんなり受けつけるのは、少し雑な感じたする。 アメコミの娯楽映画なんだから、そういう内面感情は必要ないという言うのなら、それでもいい。でもそれならば、もっとストーリーや展開に“驚き”や“遊び”があるべきだと思う。どうもキャラクターが全体的に中途半端に描かれ、ストーリーにも抑揚が乏しかった感が拭えない。 ただ、個人的には、こういうそれぞれが違う能力を持ったチームというネタに弱いので、それだけである程度は満足できた。 [映画館(字幕)] 5点(2005-10-01 19:18:35) |
1455. シン・シティ
どこまでも果てしなく“遠慮”がない映画というものは、それだけで素晴らしく、偉大である。 徹底的に造り込まれ、限りなくキワどく、限りなくクールな映画世界に圧巻という言葉すら出ない。ひたすらに血生臭く、非道なこの街の空気感を彩る豪華な俳優陣それぞれのパフォーマンスと、悪趣味とスタイリッシュさとの絶妙な塩梅をこれでもかと見せつける映像感覚が凄まじい。 圧倒的なテンションの連続を見たかと思うと、描かれるストーリーは極めて繊細で切ない。まさに「こんな映画みたことない!」と断言するにふさわしい映画が誕生したと思う。スゴイ。 これは、ロドリゲス流超ハード“パルプフィクション”だ!! [映画館(字幕)] 10点(2005-10-01 19:01:43)(良:1票) |
1456. 香港国際警察/NEW POLICE STORY
うーむ。なぜこんなに評価が高いのか…。 確かにジャッキー・チェンのアクションは歳を感じさせずキレがある。その他のシーンにおいてもアクション性の高さと質については、「流石だ」と思う。 しかし、ひとつの映画作品としては、ことごとく中途半端で稚拙な印象を拭い去れない。完成された、緻密なストーリーを用意しろというのではない。ジャッキー映画にそんなものを求めている人は、一人もいないと思う。ただ単に、作品のテンションを統一してほしい。シリアスで悲痛な描写を入れたいという思惑は重々分かるが、そういう要素がジャッキー・チェンのアクション性と合致するとは到底思えない。 結果的に、ストーリーの展開が非常にアンバランスで、キャラクターにまるで説得力がなく全体的に支離滅裂に映る。 往年の「ポリス・ストーリー」で表現されてきた絶大な“魅力”はこういうものではなかったハズだ。まだまだ“動ける”ジャッキー・チェンに安心感を覚えつつ、もう一度、彼のベースへの原点回帰を願わずにはいられない。 [DVD(字幕)] 3点(2005-09-30 01:30:35)(良:2票) |
1457. 殺しの烙印
ある程度予想はしていたんだけど、やはり鈴木清順監督らしい挑戦的で破滅的な映画である。「とてつもなくクールだ!」と評してもいいし、「まるで意味が分からない」と酷評するのも仕方がないと思う。正直、僕自身も“微妙”という言葉を完全には拭い去れないところがある。 しかしながら、ゆき過ぎなまでに徹底的なハードボイルドさはやはりスゴイし、描きつけられる妖艶な男女の色香に色あせは全くない。 ストーリーも少々倒錯的なところはあるけども、実際はシンプルなプロットであり、あまり深く考えるべきではないのだと思う。 映し出される映画世界を、出来る限りそのまま感じ取るべき、ある種超越した娯楽作品なんだと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2005-09-29 03:28:52) |
1458. ライフ・アクアティック
新進の映画作家が生み出す奇妙で愛らしい世界観と人物像に魅了される。ストーリーは極めて破綻気味で、定石など端から期待してはいけない。そんなものはこの映画にはナンセンスそのものだ。 ハチャメチャなストーリーなのに、この映画が破綻せず、しっかりと成り立っているのは、この監督の確かな創造性と、ビル・マーレーをはじめする集結した俳優たちの高い能力との融合故であろう。 可笑しく、感動的な、大人のためのアドベンチャー映画だ。素晴らしい。 [DVD(字幕)] 8点(2005-09-26 18:02:29) |
1459. インファナル・アフェア 終極無間
《ネタバレ》 すべての結末を得た時、もう、ひたすらに絶句させられた。 二人の男の運命を軸とした人間の“業”の螺旋を描きつけた完璧な三部作だった。 三部作の各作品が、明確なひとつのテーマ(=無間地獄)をしっかりと描きつつ、それぞれがテイストを違えた映画として存在していることがスゴイ。もちろん、映画世界の雰囲気は変えずに。 PART1は、物語の核となる素材を軸として描きつつ、二大スターの対決を全面に押し出したサスペンスアクション。 PART2は、PART1で描かれなかった過去の時間に遡りつつ、マフィア側と警察組織側両面の様々な人間の心情を描いた一種の強烈な群像劇。 そして今作PART3は、残された謎と残された人間を更に深く描いたサスペンスドラマというふうに。 これほどまでに、テーマとしての重い一貫性を保ちつつ、文字通り“多面性”を持つ、凄まじい三部作を他に知らない。 特に、ラストの主人公ラウの葛藤が物凄い。“善人”になろうともがき続け、行く先を無くし、ついに“死”を選ぶが、それでも彼は“無間地獄”を歩き続けなければならない。何という悲痛な物語だろうか。心から底から滲み出るように「堪能した」と言える映画だったと思う。 香港映画は、またひとつ、世界に対し新たな衝撃を打ちつけた。 [DVD(字幕)] 10点(2005-09-26 01:41:13) |
1460. インファナル・アフェア 無間序曲
PART1である「インファナル・アフェア」を観終わった後は、続編の存在に対して、大いに不安と疑惑があった。ストーリー的にも1のあのラストからどう展開さすのかが疑問であったし、2大スターは出演せず、若手2人の主演ということに気弱さを感じたからだ。 しかし、そんな不安は冒頭から消し飛んだ。もうとにかく、とても丁寧に映画が作られている。とても繊細で力強い映像美に彩られる、PART1から過去に遡り、二人の主人公を軸としたあらゆる角度からの人間描写の緻密さが見事だ。 そして、一貫して描きつけられる“人間の業の螺旋”。まさに絶え間なく繰り広げられる無間地獄の様に、衝撃と共に深い感慨が残る。 [DVD(字幕)] 9点(2005-09-24 02:33:17) |