141. ホテル・ルワンダ
ルワンダ内戦のことを知らなかったわけではなかった。教科書にも載っていたし、当時ニュースでも新聞でも見ていたはずだ。しかしそれだけだった。自分にとって全てはブラウン管の向こう、紙面の片隅の中にしか存在していなかった。学校では入試の出題範囲外として「ないもの」扱いさえされた。「ないもの」扱いしていたのは僕も同じだった。日常生活は何も変わらなかったし、ルワンダについて考えようともしなかった。9.11の時は連日夜通し食い入るようにテレビを見続けていたというのに…。世界情勢を見つめる自分の見識の狭さを容赦なく突き付けられる別の意味で「地獄」の二時間でした。国中で殺し合いが続き、目の前で隣人が殺され、いつ自分も殺されるか分からないという状況に立たされた時、世界中がただ傍観している。これほど怖いことがあろうか。あれから12年、ルワンダを描いたこの映画は諸事情から日本での公開が危ぶまれていたという。この国はまたしてもルワンダから目を反らそうとしていたのだ。観賞後、僕は何に対してというわけではなく、久しぶりに猛烈な不快感に襲われることとなった(ちなみに1点減点の理由は全編英語だったこと。内容に関しては文句ナシです)。 [DVD(字幕)] 9点(2007-04-29 23:11:42) |
142. ライムライト
これはまさしく、晩年のチャップリン自身をそのまま映画に投影したような作品。老いた自分を道化として描き、その道化にチャップリンの人生哲学を次から次へと代弁させる。本作はチャップリンの遺作ではないけど、文字通り彼の「遺言」のような印象さえ受ける。でもやはり、ドタ靴に山高帽姿のサイレント時代の作品に比べるとイマイチな印象を受けました。いい映画だとは思いますが、面白い映画だとは思えなかったです。 [DVD(字幕)] 6点(2007-04-28 22:26:52) |
143. パビリオン山椒魚
予告編にもあったとおり、キンジローが本物か偽物かなんてどうでもいい話でした。出だしはちょっと面白そうだったのに、オダギリジョーが壊れてからは全く別の物語に。それまでの設定も伏線も全てブチ壊し、狙って仕込んだであろうギャグも全てスベりまくり、オダギリジョーも香椎由宇も滑舌悪くて何を喋ってるのか意味不明と、とにかく後半は全く見所ナシです。 [DVD(邦画)] 1点(2007-04-28 22:16:00) |
144. インファナル・アフェア 終極無間
《ネタバレ》 時間軸をいじくる映画はその繋ぎ方を誤ると一気に面白みが欠ける……この映画はまさにそれの典型では? 過去や未来へ頻繁に場面が切り替わるおかげで、今一体どういうストーリーが展開されているのかが分からなくなり、物語の焦点がぼやけてしまった気がします。また本作は、第一作のヤンとラウ、ウォンとサムといった対立軸が無くなったため、ラウが一人でジタバタしているような印象を受けます。だから最後の展開もイマイチ盛り上がらない…というか、乗り込む前に証拠の中身ぐらいはキチンと確認してからにしましょう。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-12 22:31:50) |
145. インファナル・アフェア 無間序曲
前作と比べると何をやっているのか分かりにくい部分が多かったです。致命的なのはやはり若き日のヤンとラウが前作と繋がらず、かつイマイチ存在感が薄いこと。この辺はよく引き合いに出される『ゴッドファーザーPARTII』と比較しても一目瞭然でしょう(あの映画は過去と現在が見事にハマっていたからこそ面白かったのだから)。あの頃のデ・ニーロのような完璧な役作りは無理でも、せめてもっと似ている役者にやらせるとかしてほしかったです。でもこの作品って実質的には、若き日のヤンとラウの物語というよりは、ウォンとサムの話といった印象ですし、そういう視点で見れば前述したような不満も幾分解消されます。そういや終盤のサムの行動って、どことなく『ゴッドファーザーPARTII』のフランキーのそれと似てるなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2007-03-12 22:25:24) |
146. インファナル・アフェア
こんなことを言っちゃおしまいですけど、スパイが誰でどうやって情報を流しているかなんて通信記録を調べたら一発で分かるんじゃないですかね? 見たところ誰もそこまで気を配ってないし、現にそれっぽい場面もありましたしね。でもそれをやっちゃうと30分で終わってしまうか(爆)。それはともかく、このテの香港映画を見たのは初めてだったせいもあり、最後まで普通に楽しむことができました。続編の二本にはやや不満もありますが、とりあえずこの第一作には大満足です。 [DVD(字幕)] 8点(2007-03-12 22:18:53) |
147. ディープ・ブルー(2003)
映像は確かに凄い。どこかで見たことあるシーンも多々見られるが、とりあえず視覚的なインパクトは十分。でも映画としては(というかドキュメンタリーとしても)多いに不満。NHKのドキュメンタリーなどが限られた時間の中でいくつかのテーマを絞って見せていくのに対し、この映画はあまりに脈絡がない。ひょっとしたら「弱肉強食」がテーマだったのかもしれないが、どちらにしろ中途半端な印象は否めない。あと無意味なCGの活用もやめてほしかった(特に海底のシーンは酷い)。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2007-03-06 22:11:32) |
148. スピード(1994)
《ネタバレ》 このお話、劇中の第三者の視点から見ると本当に悪い奴はK・リーヴスなのかD・ホッパーなのか分からないだろうなぁ。というか町中で暴走に暴走を重ねまくるキアヌの方が悪? 飛行機ブッ壊したり地下鉄脱線させたり、ちょっとやり過ぎじゃないだろうか。 [DVD(字幕)] 6点(2007-03-06 21:57:34) |
149. オズの魔法使
後から考えると物語に全然整合性がないようにも思えますが、それはひとまず置いといて素直に極彩色の一大ミュージカルを楽しむべき。まぁセットや衣装に古くささを感じるのは作られた時代を考えれば当然(それでも空飛ぶサルとかは素直に凄いと思うけど)。逆にその手作り感のおかげで、映画というよりは非常に大掛かりな舞台を見ているかのような錯覚にさえ陥ります。その辺りが、この映画が長く愛される理由なのかも。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-06 21:44:31) |
150. 狼たちの午後
《ネタバレ》 僕にとってアル・パチーノといえば『ゴッドファーザー』、ジョン・カザールといえば『ゴッドファーザー』なんです。だからこそ、一見シリアスな雰囲気で始まった銀行強盗があんな方向に行ってしまうともう可笑しくて可笑しくてしょうがない。この映画の余韻が続いている間は『ゴッドファーザー(特にPARTII)』は見られんなぁ…。それはともかく、人質の銀行員や外で待ち構える警察との絶妙な駆け引きが冴え渡る前半に比べると、電話による会話を多用した後半はやや冗長だった気もします(ソニーの「妻」も何なんだか)。もうひとひねり欲しかった。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-06 21:37:40) |
151. フラガール
《ネタバレ》 プロット自体はありきたりかもしれないが、そこに「昭和」「炭坑」「貧困」という要素が加わることで、この映画はそこいらの能天気なサクセスストーリーとは一線を画するものになったのだと思います。その境界線となっているのはやはり「生活」に対するリアリティ。彼らは生きる為に石炭を掘り、生きる為にフラダンスを身につけ、生きる為にヤシの木を守る。全ては生きるため。生き続けるため。ただ夢や希望を追うだけの映画では決して感じられないある種のパワー、それこそが『フラガール』最大の魅力かもしれません。ま、炭坑娘たちがフラガールへと変貌する過程がアッサリし過ぎとかトヨエツの存在感が中途半端だとか、ツッコミどころもなくはないのですが…。 [映画館(邦画)] 6点(2007-03-01 23:38:21) |
152. スカーフェイス
《ネタバレ》 どうしても間延びした印象は否めませんが、狂犬モンタナの存在感の前では全て帳消し。「Okey!」連発のラストはもう凄過ぎる。あんた本当にアホや(褒め言葉)。そういやアル・パチーノって『ゴッドファーザーPARTII』でも寝室を襲撃されてましたね。自宅の防衛力が弱い男だなぁ(?)。 [DVD(字幕)] 9点(2007-02-28 23:52:49) |
153. 仁義なき戦い
主要な登場人物が多いにも関わらず展開が早い早い。誰が誰だか分からないうちにどんどん死んでいくので、一体どういう抗争が起こっているのかが一回観ただけでは正直言って分かりづらいです。ただしこれも『ゴッドファーザー』と同様に登場人物が整理できた二回目の鑑賞で初めてその面白さに気付き、その後一気に『完結篇』まで制覇。イヤもう凄い、凄過ぎる。まさに人間見本市。人のいい広能、理想と現実の狭間で苦悩する鉄ちゃん、仁義に殉じた若杉の兄貴、卑怯な槙原、そして狡猾な山守。そう、オフィスをちょっと見渡せば皆揃ってるじゃん! こんな奴らばっかじゃん! そのことに気付き愕然として以来、仕事や人間関係で行き詰まるたびにこっそり夜中『仁義』を見て喝を入れる生活が続いている(ダメじゃん)。 [DVD(邦画)] 9点(2007-02-28 23:44:13)(良:1票) |
154. 羅生門(1950)
ようやく鑑賞しました。後年の黒澤映画と比べると割とこじんまりした印象を受けますが、あの羅生門の重厚なセットや三船敏郎の立ち回りなど、見せ方はやっぱり黒澤流。で、嘘が嘘を呼ぶ複雑な展開は良かったんだけど、ひとつだけ納得いかなかったのは武弘の「証言」。嘘か真かって以前にありゃ反則でしょう。それこそ『ユージュアル・サスペクツ』並に反則。 なんかあそこだけ話から浮いてしまっているようで最後まで引っかかってしまいました。残念。 [DVD(邦画)] 7点(2007-02-28 23:38:35) |
155. 飢餓海峡
傑作と誉れ高い本作、いざ鑑賞してみると…う~ん。鑑賞のポイント(僕はサスペンスとして観ていた)がずれているのかもしれませんが、思っていたほど面白いとは思わなかった。前半の弓坂刑事と後半の味村刑事の捜査がうまくつながらないうえ、終盤などわずかな状況証拠をもとにただ自白を強要してるように思えてならない。当時はそれで良かったのかもしれないが、今の視点から見ると違和感を感じてしまいます。樽見の存在もどこか中途半端に思えるし、八重も純粋と言うよりはちょっと迷惑な自己チューに見える。ただラストの唐突な展開は意外だったのでこの点数に。 [DVD(邦画)] 7点(2007-02-28 23:11:09) |
156. 硫黄島からの手紙
今まで見た戦争映画の中では間違いなく一番「怖い」作品でした。とにかく刻一刻と迫り来る死への恐怖感がもうハンパじゃない(集団自決のシーンはトラウマ必至)。胃は2時間半の間キリキリ痛みっぱなしで口の中はカラカラ、映画を観ていてこれほどフィクションであることを忘れたのは初めてです。『父親たちの星条旗』とは対照的にドラマ的な面白さを一切廃し、ただただ敵に追いつめられていく日本軍の様子を淡々と捉えたドキュメンタリーのような構成だったからこそ、ここまで圧倒的な恐怖の再現が可能だったのでしょう。戦場にドラマなどない、あるのは血と恐怖と死が織りなす地獄のみ……。硫黄島からの手紙、確かに受け取りました。 [映画館(字幕)] 9点(2007-02-28 23:00:16)(良:1票) |
157. 父親たちの星条旗
本作とそれに続く『硫黄島からの手紙』を観てまず新鮮だったことは、戦争に対する一般市民の「距離感」。僕がこれまで観てきた戦争映画の多くは主に「戦場で戦う兵士/それを指揮する権力者/その犠牲となる罪無き民間人」という役回りによって構成されていたが、この硫黄島二部作はその基本構造を根底から覆している(特にそれが顕著なのが本作)。武器を持たない一般市民もまた、国債を買うことで戦争資金を生み出しているわけだし、自分たちの家族を最前線で戦う兵士として送り出している。つまり彼らもまた彼らなりに戦争に「参加」しているのであり、彼らが立つ場所は非戦闘地域ではなくあくまで戦線の最後方でしかない。ついつい忘れがちになるがそれが現実なのである。気がつけば「被害者/加害者」の二元論に陥りやすいこの問題について本作はまた新たな可能性を切り開いた。『硫黄島からの手紙』とともに長い付き合いになりそうです。 [映画館(字幕)] 8点(2007-02-28 22:40:13) |
158. 日本以外全部沈没
個人的には全くダメでした、これ。『いかレスラー』や『コアラ課長』は笑って許せるけれどもこいつだけは論外。制作者がこれを来たるべき近未来(高齢化と少子化が進んだことで減少した労働力を外国人に頼らざるを得なくなる時代)の日本に対するブラックコメディとして作ったのかは定かではない…というか絶対そんなこと考えていないだろうが、これは風刺ではなくたんなる悪ふざけ。しかも相当悪質で不愉快。「冗談です」と言えば何をやっても許されるとでも思っているのか? 表現の自由をはき違えていないか? こういう映画にいちいち目くじらを立てるのも大人げないですが、久々にアタマにくる程不愉快になったので『ケイゾク/映画』以来の0点! [DVD(邦画)] 0点(2007-02-28 22:11:45) |
159. ダ・ヴィンチ・コード
まずタイトルと宣伝コピーに偽りあり。ダ・ヴィンチもモナリザも本筋と全然関係ないやん! サスペンスという視点から見ると、テンポが速過ぎるうえに謎解きの過程が単純過ぎ。世界中の研究者が何十年もかけて検証・研究するようなことをラングドンはものの数秒で解いてしまうが(というか勘?)、ちょっとこれじゃあ説得力に欠けるでしょう。もっと悩め! そして「陰謀論」的な視点から見ても、これまたやたらと早口の台詞でバーッと説明するので全くチンプンカンプン。おかげで途中からオチがどうなろうがどうでもええわって気分になり(それでもなんとなくは読めますけどね)、挙げ句の果てには小型機で海を渡っていく主人公らを観ながら「あ~、なんかこれ『北京原人』の終盤と似てるなぁ」なんてどうでもいいことを思いついてしまう始末。それぐらいどうでもいい内容でした。 [DVD(字幕)] 3点(2006-11-04 23:47:52) |
160. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
少々ジーン・ハックマンの行動にやり過ぎ感を感じつつも、最後までハラハラドキドキしっぱなしの見事な二時間でした。緊張感も迫力もドラマの密度も、某大ヒット沈没恋愛映画とは比較にならないぐらい凄い。脱出グループもわりかし人数が多めなのに誰一人として影の薄い奴がおらず、それゆえ一人また一人とメンバーが欠けていくたびにグッと胸に込み上げてくるものがある。たとえパニック連続のジェットコースタームービーでも心を打つ群像劇は十分描けることを証明した名作。 [DVD(字幕)] 7点(2006-10-28 13:16:49) |