141. 大魔神
民話が底流にあり、日本的な、実に日本的な特撮時代劇で見事な出来。東宝の円谷特撮に対する大映京都人の意気込みを感じる。 大魔神の重量感の表現や、左馬之助を成敗し見得を切るシーンにおける目力の迫力は特筆モノ。スーツアクター・橋本力の眼力をそのまま活かしたことが成功の大きな要因といえる。 穏やかな埴輪顔から荒ぶる武神へと変貌するコントラストの妙。音楽は、わかっちゃいるけど「ゴジラ」だねえ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2018-03-25 13:59:19)(良:1票) |
142. ひまわり(1970)
油彩画のような色使いで、奥行きのある重厚な画作り。特に前半はフィルムの質感が活かされた陰影に富む映像美。 たくましい生活感と愛にあふれる女性像は、家族愛を描くイタリア映画らしさを感じる。さらに、戦争が引き裂く愛にネオレアリズモの一端をみた。 S・ローレンとM・マストロヤンニの演技は喜怒哀楽が程よい表現。他の出演者ではL・サヴェーリェワが愛らしく適役。出演場面がわずかながらアントニオの母役A・カレーナも忘れ難い。 一面に咲き誇るヒマワリ畑は戦没者の墓標でもあろう。冷静に搾油・食用目的と考えれば景観美は感じないが、印象的でいい場面だ。情感たっぷりの音楽も心に残る。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-11 12:52:14) |
143. 蒲田行進曲
カツドウ屋魂あふれる展開でテンポが良く、銀四郎とヤスのはじけっぷりが楽しい。小夏の愛しさ・一途な女心も花を添える。騒々しいのが玉にキズ。 人生においては一瞬であれ長期間であれ誰でも場の主役になる時がある。その意味ではひとつの人生讃歌と言える。階段落ちは見ごたえがあり劇中劇の面白さも味わった。ラストの大団円は爽快で後味が良い。主題歌もいいね。 [映画館(邦画)] 7点(2018-02-25 12:40:49) |
144. Kids Return キッズ・リターン
物言えぬ多くの人を泣かせて“キッズがリターン”は虫のいい話。オイラだったら泣かされた側に心を寄せる。二人の主人公に共感はない。 青春期の苛立ちや迷いを軸に、無軌道→居場所探し→成長・成り上がり→挫折→再生のお定まりパターン。ボクシングと不良の組み合わせもステレオタイプで新味なし。つまらないネタを繰り返す漫才コンビの青春は逆に引き立つ(引き立たせたい?)。 最後の「まだ始まっちゃいねえよ」・・・強引な成り上がりで兄貴分のシマを分捕り、半殺しにされた奴が振出しに戻れるとでも?のうのうと自転車に乗るラストの展開は大甘。序盤の校庭シーンのリフレインで映画の主題に沿った場面だが、半殺しから立ち直りまでに脈絡が感じられない。 by く○屋の店員 [CS・衛星(邦画)] 2点(2018-02-12 11:39:12) |
145. 駅馬車(1939)
J・ウェインの登場シーンが印象深い。駅馬車はさまざまな人生の交差点とも言え、グランドホテル形式の人間模様が見ごたえあり。加えて、馬に飛び乗るシーンに代表される躍動的なアクションは、西部劇にダイナミズムをもたらした。アメリカ民主主義の原型を思わせる議論も面白い。 駅馬車の通過を下から撮影する構図は、「民族の祭典」のロー・アングルと関連なかったかな? [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-04 13:49:24) |
146. ウォーターワールド
冒険譚としてはまずまずだが、製作の狙いや観客層のターゲットが曖昧で絞り込まれていない。ファミリー向けにしてはバイオレンス過剰だし、コメディ・タッチも中途半端。何より主人公に魅力がない。 劇中に登場する乗り物(船、飛行機、気球、ジェットスキー)の魅力をうまく活かしており、特に三胴船トリマランは装備が工夫されてカッコいい。ディーコンは憎らしいというよりマヌケで笑いを誘う。 クライマックスのバンジー救出場面におけるジェットスキー衝突は、長い間珍場面と思っていた。あれじゃあ少女を奪おうが失敗しようがどっちみち3台衝突は不可避でしょ、と。でもよくよく考えると、あくまでギャグと解釈すれば納得。要は「おバカな3人」なんだね。 弱点だらけだが妙に気になる映画。 [ビデオ(字幕)] 3点(2018-01-21 10:49:50)(良:1票) |
147. 忠臣蔵(1958)
親子・夫婦・主従等の人間関係を描き分け、よく知られたエピソードを散りばめたオーソドックスな作り。豪華な出演陣を観るのも一興で、遊興で舞い踊る大石は通俗的だが雪中の討ち入りは見ごたえがあった。史実どおりにリアリズムで描くのはどだい無理なんだから、ある程度講談調になるのはやむを得ない。 別れの場で大石を抱きしめる母。主君の仇を討つとともに、幕府の理不尽な処分に対する異議申し立てという一大プロジェクトを成し遂げる大石とてひとりの人間、普遍的な母親の情愛は心にしみる。 赤穂藩の四十七士に加え、その家族・協力者(理解者)・市井の人々、さらに吉良方と上杉藩の動き等、多くの物語を取捨選択して一定の時間(166分)に手堅くまとめた。 憎々しい吉良、毅然とした態度の多門伝八郎が印象深い。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2018-01-07 17:49:37) |
148. 無宿
いい映画だが、その印象の多くは「冒険者たち」に負っている。良くも悪くも勝新は勝新らしく、健さんは健さんらしく、いずれも無難なキャラ設定。3人の中では梶芽衣子が一番心に残る。「『女囚さそり』の梶芽衣子」というより、「日活・太田雅子のその後」として受け止めた。 宝探しはしょぼい感じだが海辺の映像美と情感あふれる音楽はお見事。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2017-12-17 14:46:24) |
149. 大空港
パニック映画の原型という要素はあるもののパニック映画に非ず。今風の派手な爆発に頼らないところは拍子抜けですらあるが、主眼は「グランド・ホテル」形式の“人生の縮図”であり、空港に交差する各人各様の人生模様が描かれる。不倫が絡むのは安易な感じだが。 画面分割はカットの切り替えより刻一刻と進行する危機の動きが分かりやすく、緊迫感の醸成という点でもこの手法は成功。 神父は騒ぐ乗客に対しグッジョブ。老女エイダの無賃搭乗は出来過ぎの感ありで、ちょっと弱点。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-03 19:34:53)(良:1票) |
150. 死の棘
こんな演出も“あり”かな。劇中、わずかな時間に現れるハマユウの群落………花言葉が語る主人公のピュアな愛。 歌の歌詞に似た感想が偶然思い浮かぶ。 これも愛 たぶん愛 きっと愛 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-11-12 18:53:31) |
151. 龍三と七人の子分たち
《ネタバレ》 ヤクザの生態と年寄りの生態を掛け合わせたコメディ。出演者の顔ぶれに興味津々だったが、内容は薄い。 先を読めるギャグが多く、ジュウシマツの焼き鳥はもちろんのこと、そばかうどんかの賭けも飯物(カツ丼)ってオチがバレバレ。パロディ精神はいいが、全体的に「内輪受けを狙ったトークネタ」レベルで、映像としては面白みに欠ける。 モキチの死体は山田洋次映画の“死人のかっぽれ“に遠く及ばず。おまけにヤスの行動が消化不良で、飛行機で空母に着艦は肩すかし。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2017-10-29 12:42:27) |
152. キャット・バルー
愉快な西部劇だ。音楽も含めスラップスティック・アニメを実写化したようなドタバタが面白い。N・キング・コールとS・ケイの狂言回しもユーモラス。何よりL・マーヴィンの酔いっぷりがケッ作で、千変万化の表情が楽しい。決闘に備えたマーヴィンのマジメな顔がなおさら可笑しく、徐々に対決モードになるところは秀逸。酔いどれ乗馬はスタントマンと分かっていても見ごたえがある。 映画全体の流れからすると、皮肉にもシリアスなシーンが浮いた感あり。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2017-10-15 13:28:57) |
153. ソナチネ(1993)
《ネタバレ》 静謐な画面の連続が暴力を際立たせる。印象的な場面はいくつかあれど、“死”への態度がウソっぽい。乾いた暴力と、青を基調とした絵画の細切れのような画作りがかみ合わない感じ。音楽は映像とよく合っている。 随所にある遊び心は童心を感じさせるものの、花火の水平打ちは悪ガキどものバカ騒ぎを連想して不快。終始無言の殺し屋(南方英二)は間抜けで甘い展開。アニキ分の前でケンだけを殺せば復讐されるのは自明でしょ。 沖縄の青い空と海、マシンガン片手の敵方乗り込みも定型的。最後は「気狂いピエロ」を想起させる。一貫してフェルメール調かと思ったら、最後の最後はゴッホの「ひまわり」かい。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2017-10-01 17:03:40)(良:1票) |
154. プレイス・イン・ザ・ハート
《ネタバレ》 大恐慌後のテキサスの田舎町。生きづらい時代における弱者の象徴ともいえる3人(未亡人、失業した黒人、盲人)の共助と祈り、女性の自立がテンポよく描かれる。 多くの困難に直面する主人公に対し、同居人二人が生きるヒントや励ましを与え、お互いの不信感がやがて心を通じ合わせる展開がいい。ウィルが料理のまずさを口実に炊事を申し出るシーンはさりげない見せ所。 おっ、外壁の板に張られたポップをよく見ると、綿花栽培だけでなく野菜、卵、ミルクの産直やクッキー、ジャムなど6次産業化をやってるね。小規模農家の生きる道としては妥当だろう。フロンティア精神全開。 終盤、教会の礼拝は綺麗ごとの感が強いものの、白人から黒人へと杯を受け取りながら死者とも交わっていく姿は印象深い。人と人のつながりに救いを見いだす・・・ラストはハート・ウォーミング。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-09-17 11:58:09) |
155. 黄金(1948)
欲望、モラル、信仰心、疑心暗鬼等、人間の業が良く描かれている。H・ボガートは欲得と悪意に敗れる人間の弱さを、W・ヒューストンは百戦錬磨の人生を、T・ホルトは善をギリギリ守ろうとする小市民の人生をそれぞれ体現。ボガートは「ケイン号の叛乱」や本作のようなひと癖もふた癖もある役柄がお似合いだ。 特筆すべきは人生の機微に通じた老人を演じるW・ヒューストン。人間味豊かな名演に酔う。 ラストは“面白うてやがて哀しき人生”かな。悪戦苦闘が徒労に終わり、「神の皮肉なユーモアだ」とハワードが最後に笑いとばすところは爽快感さえ覚える。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-09-03 13:20:06) |
156. まあだだよ
過剰でベタついた湿り気の師弟関係。そしてここにもある黒澤映画の説教臭さ。摩阿陀会の群像描写も心に響かず。「戦に負けて終戦なり・・・オイチニ」等の批判精神はいいが。 先生のお祝い話と猫の捜索話で2時間超は深みに乏しく話が広がらない。 一風変わった人格を松村達雄はうまく演じたが、恩師礼賛の嵐には辟易。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2017-08-20 13:20:58) |
157. 麻雀放浪記
焼け野原とバラックの風景をはじめとして「ギブミー・・・」やDDT散布、紙芝居屋など、戦後の世相を反映した画面の連続。見事なまでの画作りで、当時の日本社会の緻密な再現とともに独特の世界観が確立されている。わずかに、隅田川沿いを歩くシーンや上野の桜の特撮は画面の流れに溶け込んでいないのが残念。 ママが草笛を吹く中で流れ星ひとつ。酸いも甘いも一瞬の輝きに賭けるばくち打ちの心情を表す。「勝ち続けて丈夫な人は人間を失くす」・・・けだし名言、人生を語る問答は心に響く。 アウトローたちの生き様を描く群像劇の中で、賭博とともに生き賭博とともに死んだ出目徳が陰の主役とも思え、高品格は特異な存在感を放つ。天和をめぐる出目徳とドサ健の駆け引きも見どころ。だが冷静に考えればイカサマ合戦であるし“こんな世界に住む人たちもいたんだな”と受け止め、ヤクザな生き方に共感も反発もない。 自分の麻雀放浪を振り返ってみると、役満を1回振り込み・1回上がりの実害なし。ま、いっか。とかくこの世はゼロサム社会。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-07-23 13:02:01) |
158. ブラック・レイン
大阪ってこういう雰囲気?「ブレード・ランナー」のような退廃的・煙っぽい空気感が合うか疑問。 「黒い雨」は菅井のセリフに出てくるが、原爆とヤクザの存在を無理やり結びつけたような印象で、映画全体にテーマ性は感じない。物語の展開としてはチャーリーの殺されるシークエンスが弱い。ラストの原版のやり取りも意味深だが心に響かず。指詰めは「ザ・ヤクザ」と変わらぬハリウッドの日本観が滲み出てるね。「芸者遊び」とか「完」も同様でステレオタイプの感。どちらかと言えば「ザ・ヤクザ」の方がいい。 主要キャスト3人の適演に加え神山繁がいい味出してる。あの人誰?と思ったら、ああーあ、プロフェッサー田中かい。 最後にひとつ、ニックが吐く皮肉交じりのセリフ「Fuck you very much」はうまく心情を表して面白い。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-07-16 17:12:33) |
159. ゲームの規則
《ネタバレ》 第二次世界大戦前夜における上流社会の浮世離れを風刺し、戦争批判を込める。いつの世も変わらぬエスタブリッシュメントのゲーム(恋愛や不倫を含む広い意味で“お遊び”)に現を抜かす姿、自堕落、本音と建前の使い分け等々・・・オクターヴの狂言回しが効いている。 多様な人物の心理描写と併せ、パーティー会場の廊下と部屋を行き来するカメラワークは川の流れるごとく、群像描写が実にうまい。アルトマンの群像劇は嫌いだがこの演出は気に入った。 狩りのシーンは人間の冷酷さを象徴しており、戦争暗示の意図は理解するが不快感は残る。これでもかというほどの射殺は何とかならなかったかな? 終盤、シュマシェールが誤解してアンドレを射殺。それをラ・シュネイが客たちに向かって偶発的な事故なのですと説明。そこで客の一人が「事故の新しい定義ですな」と皮肉る。うーん、今でも古びない。「新しい判断」「もうひとつの事実」なんて平気でぬかす連中がいるものね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-02 19:13:02) |
160. ゆきゆきて、神軍
撮影を意識しているため奥崎の精神的・肉体的暴力が一層エスカレートし、逆に相手や家族の対応は抑制気味というバランスの悪さ。結果的にカメラが煽りの役割を果たし本人をつけあがらせていないか? 戦争犯罪を語れば歪んだ正義感が許せるというものではない。その要素を取り除けばただの犯罪者であり、天皇の戦争責任追及は暴力の免罪符に利用しているだけ。皮肉なことに奥崎の暴力自体が旧日本軍の体質を体現している。 鑑賞後に残ったものは問題意識のみ。 [インターネット(邦画)] 1点(2017-06-11 13:09:31)(良:1票) |