1781. The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛
《ネタバレ》 ミシェル・ヨーというきちんと演技のできる人が、アウンサンスーチーという世界に感銘を与えた実在の人物という重大な役柄を得て、その持てる力を存分に発揮した作品。彼女は作中で再三にわたり、「誰も死んではならない」と繰り返す。それは民衆のみならず、敵対する軍部の人間についてもそうなのだろう。だから、どんなに怒りが込み上げても(とりわけ、軟禁が一度解かれたものの、民衆との接触を禁じられた際の静かな怒りの表情は凄い)、それを感情に任せて相手にぶつけることなく、「次に自分は何をすべきか」に考えは常に向いているし、その意志の力があるからこそ世界規模での支持を得られたということも伝わってくる。また、夫婦間において、愛情や信頼だけではなく、相互に敬意が存在する描写も的確。年月の経過の描写にも無理がない。というかリュック・ベッソン、いきなりこんなに本気を出されると、びっくりするんだけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-07-03 01:02:46) |
1782. ブルース・リー/死亡遊戯
つくり方自体がアウトテイクのかき集めみたいなものなので、その時点で映画作品として成立していないが、その点を抜きにしても、延々と続くじめじめした雰囲気がもたらす脱力感は、拭いようがない。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2015-07-02 18:43:42) |
1783. 鷲と鷹(1969)
演出も展開も何だか妙に単調で見場がないのだが、そもそも中心の二人が何を目的として何をしようとしているのかが練りこまれていないので、銃撃戦とにらみ合いだけで2時間持たせるのは、やはり無理があると思うのだが。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2015-07-02 18:39:09) |
1784. ミッション:8ミニッツ
《ネタバレ》 「リプレイ」的世界観に立ちながら、8分間という短いサイクルと人工プログラムという背景設定によって、見事に換骨奪胎して新たな創造を提示した佳作。列車内の主人公が実体を伴っていないことは鏡のシーンで早くも明示されるし、現実の主人公も同様であることも前半で明示される。つまり、全体を通じて、主人公には、脳による意志の力しか存在していない。この作品が優れているのは、その意志の力を強く讃美し、その一点ですべてを覆せる(テロもそうだし、プログラムもそうだし、主人公の人生もそう)という希望を与えていること。8分間の設定もテロ阻止の目的も、そのメッセージに至るまでの手法にすぎない。だから、この作品は、単なるサスペンスやSFの枠を超えて、見る側の心に到達するものになっている。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-06-30 02:37:56)(良:1票) |
1785. ザ・スパイダースの大進撃
《ネタバレ》 前作に比べると、一応は事件らしきものが起こって怪しげな連中がうろうろしたり、マチャアキと順の二人にスポットを当てて中心人物っぽく設定したりと、とりあえず、一般的な映画の体裁を整えようという意思の一端は見受けられる。しかし、突然競技場だの国会議事堂の上だので演奏するシーンが意味もなく挿入されたりだとか、さしたる必然性もなく鹿児島まで飛んで行っちゃったりとか、肝心の本体の無軌道ぶりは健在。何よりも凄いのは、執拗に狙われるタンバリンとか書類には結局何の意味があったのか、一切何の説明もないこと。創作活動が即断即決で実行されてしまったときの底なしパワーを、まざまざと感じさせる。あと、作中で演奏されるスパイダースの楽曲にはマイナーな曲が多く、その意味でも貴重。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-06-30 02:27:14) |
1786. リンカーン弁護士
《ネタバレ》 かりに現在の依頼者に過去の事件の真犯人疑惑(あるいはその確証)があるとしても、その依頼関係を継続したまま、さらにその依頼者の手続を利用して手掛かりを露出するなど、まったく論外です。したがって、法廷ものとしては0点なのですが、サスペンスとしては終盤までまあまあスリルを維持する出来ではあるので、点数はそこに対して。しかし、依頼関係の点は措いたとしても、中盤で早々にルイスが自認してしまうのは、心理の綾を削ぎ、面白くなくしてしまっていると思う。あくまでもルイスは全部否認し続け、主人公もどっちに進むべきか迷う、の方がはるかに良かったと思うけど。あと、マリサ・トメイが老けちゃってるのが残念。 [DVD(字幕)] 5点(2015-06-29 03:11:27) |
1787. バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
《ネタバレ》 長回しは大好きなので、前半の50分間はとても気持ちがいいわけです。そこから後半いろいろ展開していくのですが、終幕は何となくぐだぐだで、特に、着地点を病室に求めてしまったのは何とも残念。閉塞した空間だからこそ妄想の意味もあるわけで、しかもそれまで散々ステージがステージがと言ってきたのだから、決着はやはり劇場内で行ってほしかった。それとその手前、銃で処理するというのもやや安直で、たまたまパン1で登場したら、期せずして芝居が1ランク上に行ってしまった、というさらにその手前のくだりの方が、よほどドラマになっていた。 [映画館(字幕)] 6点(2015-06-28 23:21:29) |
1788. クライマーズ・ハイ(2008)
《ネタバレ》 しつこいくらいの内部対立や足の引っ張り合いの描写を見ていると、いったいこの作品は何が言いたかったのか、心底不思議になってくる。この未曾有の大事故発生直後という超緊急時期に、何ら前向きでない怒鳴り合いをする社員も、事故の報道自体に消極的な上司も、これは自分の記事だ何だと寝言を言う記者も、どこかの新聞社にはひょっとしたら本当にいたのかもしれない。しかし、そんなものはわざわざ映画として表現する価値はまったくない。何よりも腹立たしいのは、主人公にさんざんもっともらしいことを言わせていながら、肝心のこの作品のつくり自体が、「現場」も「御巣鷹」も「鎮魂」も、何も感じさせないこと。小手先の登場人物の言葉遊びだけで終わっていること。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2015-06-28 03:10:37)(良:2票) |
1789. ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦
《ネタバレ》 スパイダースというのは、そもそも存在自体が奇跡だったようなグループなのである。日本の芸能界(本来の意味)の至宝である、堺正章、井上順、かまやつひろしが、同じ画面内に存在して動いている。そのことだけでも奇跡である。そのスパイダースを、存分に映像面で駆使しようとして単純明快に作られた作品。悪い内容になるはずがない。●ただし、決してスパイダース頼りというのではなく、中身も案外(?)きちんとしている。「テレビで偶然見たチノちゃん(松原智恵子)に会うために、『一直線』に歩いていく」というただそれだけのコンセプト、それを真剣に大真面目に描こうとする制作態度(だからこそ醸し出される面白さ)。何よりも凄いのは、歩いていく七人が常に縦一列等間隔という絵面上のこだわり。「型」が存在するからこそ「型破り」が面白い、という笑いの鉄則を、とてもよく分かっていらっしゃる。●その上で、牛が列車に轢かれた瞬間にステーキになっている(それを当たり前のようにバクバク旨そうに食べるメンバー!)とか、死刑執行室の13階段まで一直線に進んでいくとか、今では誰もが委縮しちゃって手を出さないような描写まで平然と取り込んで進んでいく、膨大なエネルギー。これぞ60'sならではの熱さ。制作者は別に自分たちを熱いと思っていないのが、さらに熱い。●そして、意味もなくフル演奏(しかもステージ衣装で!)される「風が泣いている」とか、突然ゲスト的に登場するヴィレッジ・シンガーズが歌う「バラ色の雲」とか、無駄なファンサービスがさらに洒落ているのです。そこまでされたらもう何も言えん。●純粋に映画としては一応この点数ですが、この貴重な自信満々の暴走ぶりという価値においては、紛れもなく10点。●山内賢と仲間たち(ヤング&フレッシュ!)の演奏まで見られてしまうのは、もはやオマケとかサービスとかいう領域をはるかに超えているが、本職のGSより明らかに演奏が上手いのは、いかがなものかと思うぞ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-06-28 02:40:04) |
1790. アリスのままで
《ネタバレ》 ジュリアン・ムーアという人の演技が凄いのは、何かを誇張したり変形したりすることなく、その辺にいそうな一般の人というベースに立った上で、確実な造型や表現をするという点である。本作は、これまで積み重ねてきたそのキャリアを全開させた、まさに集大成のような作品。日常生活の中でふっと物忘れが通り過ぎ、それがいつしかじわじわと広がっていく。その表現の丁寧さがあるからこそ、ラストの一言も存分に生きている。●もちろんそれは、彼女の演技力を引き出した脚本や演出の細やかさあってのことで、特にそれは、中盤で出てくるスピーチに集約されている。アルツハイマーの一番怖いのは、何かを忘れたり分からなかったりすることではなくて、世間から途絶していくこと、過去も含めた自分の存在がなくなること、自分が必要とされなくなること。その確かな視点で統一されているからこそ、この作品は、単に闘病を描写しただけではなく、見る側の個々の人生観をも問う普遍的なレベルに昇華している。●アレック・ボールドウィンの作中の夫同様の好サポートぶりは、キャスティングを見たときから予想していた通りであったが、「ブルークラッシュ」で馬鹿主人公を演じて以来私の中では馬鹿扱いだったケイト・ボスワースの落ち着いた確実な演技は、予想外の驚きだった。 [映画館(字幕)] 7点(2015-06-27 21:35:58)(良:1票) |
1791. ドラゴンへの道/最後のブルース・リー
《ネタバレ》 リーが突く。リーが蹴る。リーが殴る。ただひたすらそれを鑑賞し続ける作品。もちろん、それだけでも価値はある。自分で監督までやっちゃったら、そりゃ、こうしたくもなるわな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-06-26 02:59:54) |
1792. クヒオ大佐
《ネタバレ》 目のつけどころはなかなか面白いと思ったが、描写がついていってなくて。ともかくも詐欺師を主人公に据えているんだから、真剣路線であれ、ギャグ路線であれ、詐欺の手口や手法、それを受けた被害者(候補)の反応や変化という基礎的事項をきちんと押さえないと話にならないでしょう。その辺が曖昧なので、ボロが出てからの終盤がグダグダになっています。あと、幼少期のトラウマからの二重人格という着地はそれなりに新鮮でしたが、それならば序盤中盤で逆方向に振るような前ふりがもっとほしいところでした。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-06-26 02:57:11) |
1793. スタンピード
《ネタバレ》 導入部こそなかなか手際よく進んでいるのだが、中盤からは何か登場人物のテンションがみんな下がっていき、結局収束部は平和に穏やかに終わってしまいました。牛一頭を延々と運んでいくという、ほとんどワン・アイディアものの世界なのですが、それであれば脚本上よほどのネタを投下することが必要です。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-06-25 00:16:03) |
1794. ジョアンナ
何とも無秩序でやりたい放題な、いかにもlate 60'sらしい作品。ただし、だからといって当然に面白くなるかというとそういうわけではなく、ストーリーや骨格がない分はどこかで別のパワーを発揮しないといけないのだが、そうはなっていない。 [DVD(字幕)] 4点(2015-06-23 18:12:43) |
1795. ニューヨーク、狼たちの野望
《ネタバレ》 こういう時系列操作もの・同一地点多視点ものというのは大好きなはずなのですが、どうも今一つ乗り切れませんでした。それぞれの柱の相互の絡み方が弱く、絡んでいる部分も構造が単純でやはり弱すぎる。意味があるのは、店頭で三者が交錯するシーンくらい。発想は悪くありませんでしたが、この種の作品の先達には及びませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2015-06-22 01:35:22) |
1796. ピンポン
根本的な問題点として、卓球というスポーツそのものに対する制作側の敬意と愛情がまったく感じられない。それっぽいキャラクターをそれっぽく動かしているだけでは、何の描写にも表現にもならないのです。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2015-06-21 21:38:29) |
1797. ミネソタ大強盗団
《ネタバレ》 このタイトル(原題含む)と設定からして、個性あふれる強盗団がいろいろ敵を乗り越えて大活躍、という光景を勝手に想像していたのですが…何か最後までチマチマジメジメした感じで、なぜこの素材を選択したのか分かりませんでした。野球のシーンはちょっと面白いけど、長すぎ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-06-21 21:33:05) |
1798. ネゴシエーター
主人公も悪役も、際立った何かを持っているわけではなく、ただシナリオ通りに動いているだけなので、面白くなるわけがない。エディ・マーフィの演技も、小手先でかわしているのがミエミエ(もっとも、それを発揮させる場を与えられなかった演出側にも問題があるが)。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-06-19 01:57:47) |
1799. 十三人の刺客(2010)
《ネタバレ》 前半は頑張ってロー・キーの絵を作ろうとしているのは分かるが、肝心の大事なところに光が当たっていないので、ただ単に「暗い画面」を作っただけになってしまっている。クライマックスの決戦、刺客群が頑張って斬りまくっても、当たり前のように敵の援軍が、それも着物は新品ピカピカで「今までどこかで休んでたの?」と言いたくなる援軍が、毎回同じようにワーッとやってくる。その繰り返し。だから、いろいろなところに力を込めても、奥行きも面白みも出てきていない。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2015-06-17 03:23:59) |
1800. 沓掛時次郎 遊侠一匹
《ネタバレ》 ありがちストーリーの積み重ねといっていえなくはないのだが、ひたすら主人公を格好良く撮ろうという方向性と、それに応えた錦之介さんの存在感によって、作品に一本の筋が通されている。弱気な台詞でも、こう喋ったら格好良いだろうという美学がつい滲み出ているのです。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-06-14 00:49:30) |