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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2593
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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1801.  重力ピエロ
「映像化不可能」という文句は、もはや伊坂幸太郎の原作に対する常套句となりつつある。 今作「重力ピエロ」も、類に漏れずその常套句が掲げられたが、そのニュアンスは他の作品とは少々異なるものだったと思う。 「アヒルと鴨のコインロッカー」のような文体によるストーリー構成の妙にその要因があるわけではなく、主人公の兄弟をはじめ描き出される「人間性」の妙こそが、映像化に対する最大の難関だったと思う。  結果としてまず言いたいことは、素晴らしい映画であったということだ。 伊坂幸太郎の独特の世界観に息づく絶妙な人間性を、決して物語を破綻させることなく、リアリティをもって映画として紡ぎ出すことに成功している。  それは、原作の真意をしっかりと汲んだ上での監督の確かな演出力、そして、絶妙なキャスティングによる俳優たちの奇跡的な演技力によるものだ。  「小説の映画化」に対して総じて言えることだが、文体によって緻密に描き出されるキャラクターを、生身の人間が「映画」という制限された領域の中で不足なく表現することは、途方もなく困難なことだ。 それが、この原作の登場人物たちのように多様性と二面性を表裏に持った複雑なキャラクターであれば、その途方もなさは更に果てしないものだ。  この物語は、ミステリアスな展開に彩られながら、悲劇を越え、遺伝子を越えて、一筋縄ではいかない「親子の絆」を堂々と描き出す。 それは、まさに重力を飛び越えて空中ブランコをこなすピエロのように、飄々とした中に確実に存在する「自信」と「誇り」に溢れている。  伊坂幸太郎の文体で描き尽くされたに思われたその「最強の家族」の姿を、この映画の俳優たちは、単なる「再現」を飛び越えて、見事に息づかせてみせた。
[映画館(邦画)] 9点(2009-05-24 02:24:57)(良:3票)
1802.  ハリウッドランド 《ネタバレ》 
レンタル店の“ミステリー”にジャンル分けされていた今作。 もちろん、ハリウッドで実際に起こった俳優の自殺事件と、その真相を明らかにしようとするプロセスを描いている以上、そのジャンル分けは間違ってはいないと思う。  ただし、この映画の面白さは、謎が解明される顛末にあるわけではない。 往年のハリウッドのきらびやかさと、その裏に確実に広がっていた「闇」を、綿密なディディールの中で描いたところに、その醍醐味はあると思う。  ヒーロースターの死の謎を、しがない私立探偵が運命的に追い求める。 メイキングの中の言葉の通り、「人の人生を追うことで、自分の人生を見つめ直す」映画であると思う。  華やかな銀幕の世界の裏側に隠された深い闇。 それは必ずしも「犯罪」に直結するものばかりではなく、俳優をはじめとする映画に関わるすべての人間に確実に潜む“心の中の闇”であったのだと思う。  「光」は「闇」があるからこそ初めて成立する。その避けられない現実の皮肉を、ミステリーという娯楽性によって巧みに彩ってみせた作品だと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-22 23:49:26)
1803.  カポーティ
人物の伝記映画は、観るタイミングが難しい。 創られたエンターテイメント性が期待できないことと、描かれる「事実」に対する鑑賞者の知識量が、観賞後の感想に多分に影響してくるからだ。  フィリップ・シーモア・ホフマンという決して派手さのない俳優を主演に配し、アカデミー主演男優賞まで穫ってしまったことは、映画ファンとして興味深く、随分前から観たいと思っていた。 しかし、描かれる人物“トルーマン・カポーティ”に対する知識がほとんど無かったことが、食指を鈍らせていた。  カポーティ本人がどんな人物かは知らないが、映画世界の中で独特の人物像を創り上げ体現していた主演俳優の演技は、賞に値するものだったと思う。 全編通して、作品自体にも質の高さを感じたし、あまり抑揚がないテンポで展開しつつも、観る者を巧く引き込む語り口を備えていた。  ただし、もう少し主人公であるカポーティの心情を深く描きとる必要があったかもしれない。 主演俳優は独特のキャラクターの中で絶妙に押し殺した感情を表現できていたと思うが、描写自体がどこか軽薄な感じがあり、感情を移入することがあまり出来なかったことも事実。  カポーティという作家が、残虐な殺人事件を題材に書き上げたノンフィクション小説「冷血」。 そのタイトルが示すものは、殺人を犯した犯人のそれなのか、はたまた本を書くために事件とその犯人を冷静に見つめ続けた作家のそれななのか。  そういうことを考えると、単純に感情移入を許さず、その人物の本質を各々に見出すための余白を残した映画であるとも言える。
[DVD(字幕)] 6点(2009-05-22 23:49:03)
1804.  7つの贈り物 《ネタバレ》 
主人公のベンは、見ず知らずの他人7人に対し、“ある計画”の上で各人の運命を変える“贈り物”を与えていく。 主人公を演じるウィル・スミスの瞳の中に在る決して消えることのない“愁い”が、とても印象的な映画だった。  主人公の「行為」が本質的な意味で正しいかどうか、それを判断することはとても難しい。 別の方法を選択すべきだったとも思うし、本人にとってはそれ以外無かったという決断も理解できる。  自らの中で膨張する思いに耐えきれず、断固たる意志のもとに下した"決意”は、その正当性を度外視して、心が揺さぶられる。 そして、その一連の行動の中で、残酷にも恋に落ち、愛の元で最後のプロセスを実行する様に、涙が溢れた。  この映画は、観客それぞれの価値観において、大いに是非が分かれると思う。 ただ僕は、一人の男がひたすらに苦悩し、不器用で愚かな決断をする姿に、人間の人間らしい部分を感じずにはいられなかった。 物語の美徳的な部分ではなく、そういう人間の不完全さを目の前にし、感動した。
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-22 23:48:35)(良:1票)
1805.  魔法にかけられて
劇場で予告編を観た時から、これはただのディズニー映画ではないし、ただのパロディー映画でもないなという直感はあった。  「メルヘンなおとぎ話」+「現実のNYでの恋人模様」=「今まで見たことのないラブコメ」という構図が、とても面白く、巧い。  もっと安直なアニメと実写映画のコラボレーションを想像していた。 しかし、物語は、メルヘンの世界から現実世界へ送り込まれたプリンセスの揺れ動く絶妙な心理描写と、理路整然と現実世界で生きるシングルファーザーの心理変化までを、とても丁寧に描き出している。  メルヘン世界に対する現実世界の厳しさや哀しさを描き出しつつ、常にファンタジー性やファニー感を保ち、最後には登場するキャラクターも観客も、すべてを“ハッピー”にさせてしまうストーリー展開に、ディズニー映画の強さとプライドを感じた。   現実世界の人生は、当然おとぎ話ではないから、嬉しい時、悲しい時に歌って踊ってなんていられない。 でも、だからこそ歌って踊ってみれば、人生は大きく変わるかもしれない。  ディズニーが真剣にディズニー映画のパロディーに挑んだ意味と答えは、そういうことなのではないかと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-22 23:45:48)(良:2票)
1806.  バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 
下世話な欲望の連鎖に、CIAの機密情報が絡んだらどうなるか? コーエン兄弟くらいしか思いつかないだろう題材を、どこまでも馬鹿馬鹿しく描いた映画だった。  シュールでブラックなユーモアセンスは、相変わらずのコーエン節で愉快だった。 ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、フランシス・マクドーマンド、ジョン・マルコビッチ、ティルダ・スウィントン、とアカデミー賞クラスの俳優をずらりと並べた豪華さは、強く興味深かったし、それぞれの俳優のアクの強い演技は流石だったと思う。 (特にブラッド・ピットの馬鹿野郎ぶりは、「ベンジャミン・バトン」を観た後だっただけに、殊更強烈だった)  しかし、そういう利点に相反して、映画としての魅力をあまり感じることができない。 馬鹿馬鹿しさの中にしっかりと“巧さ”のあるストーリーだけれど、面白くない。  その原因の一つとして、豪華な俳優を揃えたはいいが、それぞれの直接的な絡みが希薄であることがあげられると思う。 同シーンに存在はしているけど、台詞の掛け合いがあまりないので、巧い俳優それぞれが「独り相撲」をしている格好になっている。  結果として一番面白かったシーンは、スター俳優の登場しない、CIAの管理職同士のやり取りであった……。  キャスティングの段階で力を注ぎ過ぎてしまい、肝心の映画づくり自体に軽薄な印象を、観客に与えてしまったことは、残念。
[映画館(字幕)] 5点(2009-05-22 23:42:06)
1807.  パコと魔法の絵本
Q:「下妻物語」、「嫌われ松子の一生」の中島哲也が、“ディズニー映画”を撮ったらどうなるか?  A:こうなる。非常によろしい。  独特の世界観とセンスに対し、やはり冒頭は面食らってしまうというか、“馴染む”までに時間がかかることは否めない。その時点で「ムリ」と言ってしまう人がいても否定はできないだろう。 でも、映画なんてものはそもそも創作者のエゴイズムの塊であって、良い映画というものは必ずそういう中から生まれてくるものだ。  知らず知らずのうちに、極めて特異な「絵本」の世界に引きずり込まれ、キャラクターたちの飾り気の無い言葉にただ感動し、気がつくとある種の居心地の良ささえも感じてしまっていた。 それは、作り手が、自分たちが作り出す「世界」をどこまでも愛し、揺るぎない自身を持って描き出しているからに他ならないと思う。  悲しいけれど、どこまでもあたたかく、メチャクチャな映画世界にひたすらにまっすぐな思いを詰め込んだ素晴らしい映画だと思う。 
[DVD(邦画)] 8点(2009-05-22 23:41:46)
1808.  BLACK JACK ブラック・ジャック(1996) 《ネタバレ》 
敢えて言うまでもないが、「ブラック・ジャック」は“神様”手塚治虫が生み出した漫画史における「宝」である。 そのアニメ化や映像化はこれまで数多くされてきたが、原作の崇拝者としては、とてもじゃないが期待は出来なかったし、食指が動いたこともない。 今作を見たのも、ケーブルテレビでたまたま見られたからだ。  率直な感想としては、「意外と良かった」のではないかと思う。 劇場作品というよりは、OVAのレベルを出ない感はあるが、毒々しいほどの劇画チックなキャラクター造形は、「ブラック・ジャック」の世界観に対して決して間違ってはいない。  激情的なシーンでことごとく使われる静止画止めに、少し昔の「ルパン三世」のTVM版を彷彿させられたが、なるほど監督が同じ人なのか。(これはこれで味があって嫌いではない)  超絶的な世界記録を連発する「超人類」たちが、巨大製薬会社が生み出した新薬の薬害被害者だったというプロットは、突飛ではあるけれど、昨今のドーピングの氾濫などを踏まえると、リアルに感じる部分もあり悪くなかったと思う。 ただし、もう少し後半の展開に「厚み」が欲しかったとも思う。 クライマックスの乗り越え方や、クライマックスそのものがありきたりで軽薄だった。  そのあたりが詰まっていれば、かなり良い映画になったのではないかと思う。 繰り返しになるが、方向性は決して間違っていない。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2009-05-22 23:40:47)
1809.  CASSHERN 《ネタバレ》 
これほどまでに悲哀と残酷さに満ちたヒーロー映画がかつてあっただろうか。そのあまりに過酷なヒーローの運命に対し、予想を覆された僕は大いに戸惑ってしまった。しかし、残酷な環境を打開すべく、自らの悲しい運命を打開すべくために立ち上がったヒーローの厳しい宿命としてこれほどふさわしい物語はない。常軌を逸するほどのビジュアルセンスで描かれた鮮烈で秀麗な映画世界は現実とはかけ離れているが、描かれる人間たちの悲しさ、テーマとして語られる人間の憎しみの螺旋の本質は限りなくリアルであった。そう、アニメ版「キャシャーン」と同様に作られていたヘルメット(ソーラーメット)をこの映画の主人公はついに被ることはなかった。それはこの映画のヒーロー:CASSHERN、しいては敵キャラも含めたすべての登場人物がただの人間であること、そしてこれが生身の人間たちの闘いであるということの象徴に他ならない。新進の映像作家が撮り上げたこの処女作を「散々たる」と安易に酷評することは実に容易である。事実、改善すべき箇所は大いにあろうが、僕はこの映画世界に溢れる確固たる厳かさにも似た空気感に圧倒されずにはいられなかった。
[映画館(邦画)] 10点(2009-05-05 18:42:07)(良:1票)
1810.  おくりびと
ほんとうは、大きな賞を受賞した作品を、その結果を得てから初めて観るということは本意ではない。 でも、だからと言って観ないというのも、また違う気がするので、地元の映画館でも公開延長となった今作をようやく観に行くことにした。  なるほど。素晴らしい。  「死」という、普段の生活の中では心ならずも敬遠してしまうテーマを、あくまで「日常」として捉え、真摯に対面することで、その本質を見事に浮かび上がらせてみせた傑作だと思う。  「納棺」という仕事と、それに携わる人間の姿を、決してあざとく美しく見せようとするわけではなく、あくまでその仕事の根幹にある“真剣さ”をまっすぐに描き出すことで、シンプルで深い感情をえぐり出す。  その中で、「死」という事象をそのものを、単に美化するわけではなく、人間が生きていく営みの一部分として存在するということを、とても雄弁に物語っていく。  当初は、「仕事」の後の食事がままならなかった主人公が、次第にモリモリと何でも食べられるようになる。 それは、決して遺体に触れるという行為に“慣れた”のではなく、彼が、「生」と「死」という一見相反するような二つの事象を、“対”のものとして受け入れ、その本質を受け入れた結果だと思う。  “映画人”として、この作品の誕生から付き添った本木雅弘が素晴らしく、彼の真剣な思いがあったからこそ、映画は成立したのだと感じた。  ストーリーとしては、実にストレートなプロットである。 ただ、だからこそ「死」という絶対的なテーマが際立ち、様々な感情を生む。  誰にも平等に訪れる「死」におけるどうしようもない“哀しさ”。 それは、どうやったって避けられない。 ただ、実はそれと同時に存在する深い“幸福感”に気付いた時、涙が溢れた。
[映画館(邦画)] 9点(2009-05-05 18:38:34)
1811.  GOEMON
賛否が大いに分かれた(というよりも殆どは“否”だった)前作「CASSHERN」から5年。紀里谷和明という映画監督の、創作者としてのエゴイズムと方向性が、圧倒的に正しいということを、改めて確信させるに余りある作品に、この「GOEMON」は仕上がっている。  既存のヒーローを描いた作品でありながら、、独創的で独善的なストーリー展開に突っ走った「CASSHERN」は、多数がどう言おうと素晴らしい映画だった。しかし、その分観客の許容範囲を狭めてしまったことも事実。  しかし、今回は史実に伝説として残りつつも、想像の部分が多分に含まれる”石川五右衛門”というヒーローを扱うことで、自由な表現が出来るから故に、単純明快なストーリーの上に、至高の娯楽が構築されたのだと思う。  当然のことだけれど、この映画に歴史的リアリティやその他もろもろの「常識」を求めるなんてナンセンス極まりない。 あらゆる固定観念を捨て去り、本当の意味でフラットな状態でひたすらに突き詰められた映画世界に没頭すべきだと思う。  日本映画に大きく欠けているもの。それは創造物に対する絶対的な「自信」と、それを持つためのエゴイズムだと思う。 そういうものを備えているからこそ、紀里谷和明という人間の創造物は、「日本」という枠を大きくはみ出るほどの、圧倒的なパワーに溢れている。 今後もそのスタンスを貫く限り、再び彼は「絶景」を見せてくれるに違いない。 
[映画館(邦画)] 9点(2009-05-05 09:26:21)(良:2票)
1812.  ALWAYS 三丁目の夕日
真っ当な“映画好き”であるならば、VFXをふんだんに盛り込んだ邦画の大作映画には、問答無用に“疑心暗鬼”になってしまうと思う。 もう4年も前になるが、今作の公開時にもその例に違うことは決してなかった。 どうせ、ハリウッド映画に対して遥かに稚拙なVFXで再現された数十年前の東京の様をこれ見よがしに見せるだけの映画だろうと思っていた。  そもそも、予告編を観ただけで、粗筋は読め、感動させたいポイントも丸分かりの映画に、興味は無かった。  だが、観もせずに「面白くない」などと決めつけることほど、愚かなことはない。 面白くない映画を観て、「面白くない」と言うことが、本当の映画好きだと思う。  そうして、4年越しの初鑑賞となったわけ。  ん、……なるほどね。  「面白いね」   本当に面白くない映画に対して、これほど好評が続くわけはなく、自分の思いとは反面予想していたことではあったのだけれど。  ストーリー展開も、感動するべきポイントも、すべてが「予定調和」の中で成り立つ。 目新しさなんて、何も無い。 ただそれこそが、この作品の魅力であり、価値なのだろうと思う。  詰まるところ、「面白い」というよりは、日本人として感動しないわけにはいかない映画なのだと思う。  すべてはラストの夕日に象徴されることだと思う。 一日の終わり、すべてを赤く染める夕日が暮れていく。その美しい光景を見て、感動しない人間なんていない。  その絶対的な普遍さの中にいつもある“感動”を、ただただ真っ直ぐに描き、映し出した映画である。 そこに、映画の試みとしての巧さなんてなく、不器用もいいところだと思う。  ただし、その不器用な試みは、圧倒的に正しい。 
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-13 17:10:50)(良:6票)
1813.  ぐるりのこと。
人と人の結びつきなんて、とても“あやふや”で、脆いものだろうと思う。 結ばれることも、離れることも、実際紙一重で、ギリギリな状態。 でも、だからこそ、今一緒にいられることが、愛おしく素晴らしいものなのだと思う。  ふと一緒になった夫婦が、愛し合い、傷つき、泣き、笑いながら、それでも共に生きていく。 特別に劇的なわけではない。 普遍的だからこそ、その当たり前の“結びつき”が、キラキラと光り輝いて見える。  なんて素晴らしい映画だろうと思った。なんて人生は素晴らしいのだろうと思った。  木村多江+リリー・フランキー。 何とも味わい深い配役によって、とても魅力的な夫婦像を見せてくれた。 特に、木村多江の存在感が素晴らしく、10年という歳月の中で、子を亡くし深く落ち込んでいく繊細さと、そこからまた浮かび上がっていく力強さを、とても魅力的に表現してみせてくれる。 また、リリー・フランキーも、陰惨な数々の事件を法廷画家という視点で触れながら、心揺れる妻を静かに支える朴訥な夫を好演したと思う。  そして「ハッシュ!」以来の待望の監督作品となった橋口亮輔の繊細な人間描写が冴え渡る。  人間が傷つくことに、明確な理由なんて存在しない。 だから、そこから立ち直っていくことにも、理由なんてない。 どうするべきだとか、何をしてはいけないなんてなくて、それを求めようとしても難しい。  ただ一つ、ヒントがあるとすれば、それは、「時間」だと思う。 「時間」さえ経ることができれば、人間は大抵のことは消化できる。  そういう、人間の根本的な“つよさ”を描いた映画だと思う。
[DVD(邦画)] 10点(2009-03-29 10:54:18)(良:2票)
1814.  ロード・トゥ・パーディション
ギャングという彼としては異色の役どころを演じたトム・ハンクスの存在感が抜群だった。そこにジュード・ロウの怪演、ポール・ニューマンの貫禄の渋さが加わり濃厚なハードボイルドに裏づけされた親子のドラマに仕上がっていた。「アメリカン・ビューティー」においてその才能を知らしめたサム・メンデス監督のカメラワークが秀逸そのもので、映画全体を鮮烈な構図と陰影で際立たせている。あらゆる面で見事に完成された傑作。
[映画館(字幕)] 9点(2009-03-03 15:31:57)
1815.  羊たちの沈黙
もはや言う必要もないほどであるが、この映画を超えるサイコサスペンス映画はいまだ誕生していない。衝撃的で秀逸なサスペンス映画は毎年公開されるが、それでも今作の域を超えないのは、それらの映画が今作を手本に作られているからであろう。今やこの映画は、サイコサスペンス映画のバイブルとなっていると言って過言ではないだろうと思う。今尚、変わらぬ迫力でハンニバル・<人食い>・レクターを演じるアンソニー・ホプキンスの偉大さもさることながら、彼さえも食ってしまうほどのジョディ・フォスターの大女優への瑞々しさが、この映画の最大の功労かもしれない。
[地上波(字幕)] 9点(2009-03-03 15:28:28)(良:1票)
1816.  Dolls ドールズ(2002)
日本とはこんなにも美しい国だったのか。今、日本に住む日本人だからこそ、この映画を観た後にはこういう感想を持つに違いない。現在の、あらゆる汚れに覆い尽くされた日本において、これほどまで自国の美しさを描き出すことは非常に難しく、価値のあることだと思う。心の底から導き出される恋愛の末の死、それは決して肯定されるものではないが、その愛の形こそ、日本が高尚な美しさとともに受け継いできた芸術なのかもしれない。
[ビデオ(邦画)] 9点(2009-03-03 15:23:15)
1817.  スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 《ネタバレ》 
歴史的なスペースオペラの頂なる映画が今完結した。  個人的には、SW自体の面白さに気が付くのが遅く、最近になってまとめてシリーズを見直し感嘆しこの最終作を迎えたのだけれど、それでもこの長き年月に渡って世界中を風靡してきた大作の壮大さと崇高さを感じて余りあった。  公開に際して多くの人々が「泣ける」ということを口にするので、さすがにそれはないんじゃないかと疑問を感じていた。 しかし、すでに分かりきったことであるはずなのに、アナキンがベイダーへと転じジェダイの騎士たちを葬りさっていくシーンでは胸が詰まった。 暗黒面のままに“成すべきことを成し”ひとり涙を流す様には、これまでのシリーズ作すべてを制する感慨深さが滲んでいた。  この映画を観たすべての人が「ほんとうに馬鹿な男だねえ……」という、まるで古い日本映画のよう普遍的な感想を持つはずだ。 普遍的ではあるが、観客が受ける心の揺れは計り知れない。 そうジョージ・ルーカスがその映画人生のすべてをかけて生み出したこの果てしない映画世界は、アナキン・スカイウォーカーという男の人生における愛情と苦悩が幾重にも折り重なった哀しく愛しい“不器用さ”を描くためにあったのだ。  結局、最愛の妻までも亡くしてしまった黒ずくめの彼の最後の叫びは、その後20年余り暗く乾いた闇の中で、静かに静かに響き続ける。  “新たな希望”に出会うその時まで。
[映画館(字幕)] 10点(2009-03-01 23:54:36)
1818.  12人の怒れる男(2007) 《ネタバレ》 
まず最初に言っておきたいことは、この作品は、1957年のアメリカ映画の名作「十二人の怒れる男」のリメイクであり、しかし同時に、ロシア映画としてのオリジナルであるということだ。  それは、同じ「素材」を元に映画を作ったとしても、制作される“国”と“時代”が違えば、これほどまでに“異質”な映画となるということを、雄弁に物語る。  安易に評決が出ると思われた或る殺人事件。陪審員として集められた名も無い12人の男たち。それぞれが個性的な人格と、思想を持ち、審理は思わぬ方向へ混沌としていく。 その様自体は、オリジナルに即したものであるが、集められた12人が、あらゆる民族の集合体である現代の“ロシア人”であることで、オリジナルにはない別のタイプの深みへと突き進んでいき、とても興味深かった。  特に関心が引かれたことは、あまり馴染みの無い“ロシア人”自体の気質だった。 基本的には感情を押し殺し、突如として感情を爆発させる様は、ロシアという国に生きる人間の本質的なプライドと、ある意味での“危うさ”を感じた。  僕自身が、もう少し現代のロシア事情に精通していれば、それぞれの独白のエピソードに対しもっと真実味を感じることができただろうと思う。  そのロシアという国の社会性と国民性を全面に押し出したからこそ、辿り着く結末には、オリジナルを観ていたからこ味わえる良い意味での裏切りがあった。  単純に1957年のアメリカ映画に対する面白さを比較するのではなく、現代のロシア社会を描いた一つのオリジナル作品として、堪能するべき上質の映画だ。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-02-15 02:23:45)
1819.  たみおのしあわせ 《ネタバレ》 
男所帯で健気に暮らしてきた父と息子。 息子がようやく迎えた“結婚”という人生の一大イベントに向けて、変わらずに流れていく穏やかな日常が、少しずつ少しずつ変化していき……大揺らぎの結末を迎える。 そんな映画。  「結婚」を心から喜ぶ父子の愛らしい姿をゆったりと描いた“ほのぼの系”のドラマかと思いきや、ラストで一変、突如として混沌の渦の中に放り込まれる。  正直なところ、「好き」「嫌い」ははっきり分かれてしまう映画だろうし、映画を観終わった後のこの“不安定さ”に対して、個人的には「嫌い」と言わざるを得ない。  原田芳雄とオダギリジョーが絶妙な仲の良さを醸し出す親子像を見せてくれているだけに、そのままストレートにあたたかいドラマを綴ってほしかったという思いの方がやはり強い。  ただこの映画の監督が、演劇界の“変人”岩松了であることを考えると、真っ当なストーリーを期待する方が無理ということか。 観賞後のこの不安定感は、映画作品というよりも演劇作品として捉えた方が、しっくりくるのかもしれない。
[DVD(邦画)] 4点(2009-02-15 02:14:16)
1820.  HERO(2007)
2001年に放映された「HERO」はとても好きなドラマだった。 「検事」というこれまであまり題材にされなかった職業を描いたことによる斬新さと、サスペンスとエンターテイメントを巧く織り合わせた脚本力の高いドラマだったと思う。 ドラマ終了からすぐ続編シリーズへの期待が高まったが、「映画化」に対しては懸念の方が強く、それほど興味が涌かなかった。 テレビドラマの枠で小気味良く展開する方がこの作品の性質に合っていたと思ったからだ。  実際に観てみると、思っていたよりは、映画作品としての完成度は一定水準に達していると思う。 ただ、やはり少々無理矢理に“肉付け”して仕上げている感も否めない。 尺を満たすために全体的にテンポが悪く、無駄なシーンや展開も多かったと思う。  ドラマシリーズではほとんど描かれることがなかった法廷シーンは、とても面白味があったと思う。 時に冷静に、時に熱情的に弁論を繰り広げる木村拓哉演じる久利生は魅力的だったし、豪腕弁護士を演じる松本幸四郎との対峙は緊迫感があり良かった。  つまりは、もっと法廷シーンが多くて良かったし、被害者家族の描写や、証拠集めのプロセスなど「事件」に対する本質を更に深く描けていれば、ドラマシリーズとは一味違った「法廷映画」として更に完成度を高められたと思う。 そういう意味では、色恋に走り過ぎていたり、安易なエンターテイメント性にすがってしまっている部分が見えることは残念だ。  しかしながら、ドラマシリーズのファンにとっては楽しい作品であることは確か。 観て損はないと思うし、改めてドラマシリーズでの続編を期待したい。
[DVD(邦画)] 6点(2009-02-02 00:14:02)(良:1票)
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31415.44%
41716.59%
52439.37%
637214.35%
752720.32%
852220.13%
929611.42%
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