1. 地獄の黙示録
カーツ大佐はベトナムでの闘いで自分の中(アメリカ)に潜む偽善と嘘に気付いたのではないだろうか。 ベトナムの子供に予防注射をしたが、その子供達はベトナムの兵士により腕を切り落とされたと・・・。彼ら(ベトナム人)には恐怖は存在しない。狂気そのものなのだ。 偽善や自らの社会的地位と確立、或いは浅はかな思い上がりで戦場に来たアメリカ人兵士達とは“殺し合う”という意識が全く異なっていると痛感したのだろう。カーツの言う「恐怖を友にしなければいけない」とはそのことを指していると感じる。 人間の内にある暴力性を訴えかける戦争映画は腐るほど有るが、この作品はそんな単純なモノではない。闘うために必要な“恐怖と狂気をコントロールすることが出来る道義心”或いは“自由に対する欲望と精神的強さ”が自らに有るのかどうか、それをカーツは身をもって経験したのではないか。ベトナム兵士はそれを持ち合わせていた。しかしカーツ(アメリカ)は己の中にある恐怖に屈し、精神は分裂した。つまり敗北したのである。闇の心すなわち恐怖である。 この作品はベトナムが舞台では有るが、ソマリアやイラク等の中東におけるアメリカの関与にも十分に連動した内容であり、それに対する批判と警告を指したコッポラによる独自の考えである。偽善と虚による闘争心と本能を題材とした哲学なのだと思う。 [DVD(字幕)] 10点(2006-01-29 09:58:24)(良:1票) |
2. バリー・リンドン
皆さんのレビューに多く有るように、この映画は本当に“絵画的”なビジュアル表現が成されています。色使いはレンブラントorマネを思わせるし、光の捉え方などはフェルメールのように神々しい。特にシンメトリーの構図や奥行きの捉え方などを見る限り、美術的なセンスに抜きん出ているように思える。こういった写実的な作品が作れるかと思えば、『時計仕掛けのオレンジ』のような印象派的で現代美術的な作品(ウォーホールorサフディ)も有る。感心するのは原色による補色の使い方が特に上手いこと。 つまり、この監督は写実は的な感性と印象派的なセンスを併せ持っているのである。普通は(かつての芸術家たちは)どちらかに別れるモノなのですが・・・。そこがキューブリックの凄さなのである。「何だか分かんないけど、世間でスゴイ!と言われているから凄いんだろう」と適当にあしらってはならない作品ですよ。コレは。 美術的なセンス、ビジュアル的なセンス、カメラ知識の豊富さ、皮肉がこもった反社会派的な洞察力、台詞の面白さ、脚色の上手さ・・・。天才と言うしかないですね。 [DVD(字幕)] 9点(2005-09-02 17:09:31)(良:1票) |
3. 時計じかけのオレンジ
昔から美術に興味があって、高校から現在に至るまでその系統の事柄にたずさわって来ました。そのせいか今でも自分の部屋にはゴッホの『ひまわり』が壁に貼られている。若い頃に、思いつきというか、シュールで格好言いというだけの理由で貼られてたものである。自分自身、若い頃はゴッホ.ピカソ.シャガール.キリコ.ダリ.ウォーホールといった印象派アーティストの作品は好きでは有りませんでした。彼らの技法は個性を出す為だけのものだと思っていたからです。 しかしある日、何気なく部屋で仰向けに寝ころびながら上目遣いに『ひまわり』の画を見た時に気付いたのです。一瞬のことですが、ひまわりがそよいで見えたのです。動きの有る絵。ゴッホの訳が分からない筆遣いはそういう狙いというか、静止画とは違う次元のモノを表現していたのに気付きました。 このキューブリックの『時計じかけのオレンジ』も同じ事が言えると見終わった後つくづく思いました。 若い頃って経験が浅いから大きな目で見れない(見えない)事って有りますよね。大人になっても見えてない人もいるようでは有りますが・・・。 [DVD(字幕)] 10点(2005-08-13 18:16:02) |
4. ルパン三世(1978)
宮崎駿の「カリオストロ~」と比較されがちですが、あちらは「ルパン三世」をモチーフとして創った別物と考えるべきでしょうね。こちらが本当のルパンです。 ハードボイルドだが、少し下品。 絵には味が有って(荒っぽい)、静止したカットが多い。 思い切った遊びっぷりの描写(トラック追跡シーン)など、従来の「ルパン三世」の良さが存分に出ています。個人的にはこの作品以外のルパンは見る価値が無いぐらいに思っています。テレビの2時間シリーズに至っては愚の骨頂。 7点(2004-11-01 14:56:51) |
5. 少林寺木人拳
自分が見たジャッキー映画の中で一番古さを感じた作品。カンフー映画特有の設定である“復讐(敵討ち)”と“修行”“格闘シーン”がふんだんに堪能出来ます。 オープニングからしてカッコ良くて、蝋燭の有る暗い部屋での龍・蛇・虎・豹・鶴の五大老との格闘には心憎いセンスを感じます。 それにしても、この作品のジャッキーはトテモ不細工です。整形しているとは知らなかったので驚きました。ジャッキー(主人公)はひたすら台詞が無いのですが、これは『木人』と『黙人』をけているのでしょうか? 面白いところではユンピョウがチンピラ役として出ています。どうやら売れてない頃のようで思いっきりチョイ役です。 内容的にも良作で、ジャッキーは3人の師匠からカンフーを学びます(悪党・善良な尼さん・酔っぱらいの僧侶)。このバリエーションが最後の格闘シーンに活かされて、少林寺としての本当の拳法なるものが名実共に語られます。 7点(2004-10-11 13:22:17)(良:1票) |
6. カンニング・モンキー/天中拳
ジャッキー映画の中では一番お笑いの要素が高い作品。“アッチ向いてホイ”“ハッスル”“愛情一本”とか変な名前の技を名前を物乞いから教わったり(全て空回り)、カツラをヌンチャク代わりにしてブルース・リーのマネをしてみたり、間抜けな悪党が総登場して3つ巴の争いになったり・・・。その悪党達との闘いもコミカルな動きが中心で、娯楽カンフーとしてのテーストを徹底して貫いています。 それにしてもジャッキーの髪型がマッシュルームみたいで面白い。 5点(2004-10-11 08:29:04) |
7. ドラゴン怒りの鉄拳
中国映画でも有るまいが、日本人はケダモノ扱いですね・・・、とは言っても香港は中国系の人が多いのでこういう印象なのでしょう。ブルース・リーの作品にはよく日本人が出てくるのですが、大抵は酷い扱いです。まぁ、日本人が中国に対して過去に行ってきた愚行を考えると仕方のないことですけど。 兎に角この作品は“復讐劇”ということで、徹底的に殺っちゃってます。これはブルース・リー作品の特徴でも有るのですが、容赦なく殺すんですよね。血もドバドバ出ます。その逆がジャッキー・チェン作品ですが、ホント対照的ですよね。時代のせいかも知れません。 ブルース・リーの顔で見せる演技は(チョット笑えるんですけど)今作が一番良いですよ。 5点(2004-10-10 16:39:35) |
8. ブラック・サンデー
トマス・ハリスという作家は数少ない著作しか発表していないことで有名です(ブラック・サンデー、レッド・ドラゴン、羊たちの沈黙、ハンニバル)。私は個人的にこの作品の原作が大好きでして、彼の作品の中でもNO.1と評しています。勿論、レクター3部作も素晴らしい著書なのですが、イスラエルとパレスチナの対立から生じた、アラブとアメリカの確執をリアルに描いている本作は別格と言っていいほどの出来です。奇しくも、今考えると同時多発テロへの警告とも言えるような内容でして、先見の優を兼ね備えている面でも秀逸といえるでしょう。 残念ながら日本では未公開の映画で(爆発予告があるなどして~)、幻の作品となってしまいました。私はWOWOWで放送されたものをかろうじて見ることが出来ました。 アルファタ派を始めとするアラブ過激派の複雑な内部抗争や、イスラエル政府とアメリカ政府の微妙な駆け引き等、そういう細かい描写は流石に映画では堪能できませんが、「黒い九月」本部の襲撃や、除隊軍人局での一巻き、爆弾の威力などのシーンが上手く映像として再現されていると思うし、頃合い良くオリジナル感を出した脚本には好感が持てる。 8点(2004-10-03 10:01:12) |
9. 名探偵登場
ミス・マープル、ポワロ(名前が違ってたけど・・・)は分かったのですが、変な中国人とか他の登場人物は分かりませんでした。シャーロック・ホームズは大好きでほとんどの作品を読んでいるのですが、その他の推理小説には弱いため今ひとつパロディーに乗っていけませんでした。ただ、独特の癖のあるシナリオには魅力を感じたし、少々安っぽいけどそこがまた良い味を出しているように思う。 しかし、ミステリーに相当詳しくないと100%楽しめない作品だとつくずく感じた。 5点(2004-08-26 11:41:02) |
10. ひまわり(1970)
《ネタバレ》 ホームで、去りゆくアントニオを見送るジョバンナ。若き日に夫を戦場に見送り、そして数年後に再び再会したアントニオを見送った。常に駅のシーンで『別離』が演出されており、人の持つ『切なさ』という感情を奮い起こさせる。 一人の女性の数奇ともいえる波乱の人生を、たくましく健気に咲き誇る「ひまわり」にたとえ、苦しみながらも強く生きた当時の女性達を讃えた素晴らしい映画だと思う。 ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニの心に迫る演技は、見ている者を引きつけ、監督のヴィットリオ・デ・シーカによる演出に釘付けとなる。 テーマソングを含めた音楽も印象的で、良い映画に必要な要素を全て兼ね備えています。 [映画館(字幕)] 7点(2004-08-20 17:52:48) |
11. ドラゴンへの道/最後のブルース・リー
味があって良いですね~。外人のザコキャラのファッションなんて凄まじいです。 あと、なに?あのオカマ。コロシアムでタンロンに木霊のように呼びかけるところは本気でむかついた。 それにしても、チャック・ノリスとの死闘はスピードも有るしリアリティーも抜群で素晴らしい。私が見たブルース・リー物の中ではダントツで一番好きです。 7点(2004-07-23 17:47:33) |
12. ドラゴン危機一発
ドラゴン(ブルース・リー)にピンチなど無かった。 あと、くれぐれも言っておきますが、人型に壁が突き破れるのはNG。 5点(2004-07-23 17:34:31) |
13. ブルース・リー/死亡遊戯
代役まるわかりの苦肉の作品ですね。それだけにブルース・リーの凄さが分かる。見所は後半の本物登場以降のみ。アクションのキレがまるで違う! 五重塔で闘うアイデアは、これ以降たくさんの作品がパクッています。 5点(2004-07-23 17:21:59) |
14. オリエント急行殺人事件(1974)
サスペンス物は色々推理しながら見れるのが楽しい。この作品はミステリーの中でも一級品であると思う。 この手の作品は何と言っても最後のオチが重要となってくるのだが、最後は驚愕の真相にたどり着きます。このオチはなかなか予想が付かないのではないでしょうか。復讐もここまでくると本当に恐ろしく思えます。 6点(2004-05-26 16:35:38) |
15. ペーパー・ムーン
詐欺を働きながら食い扶持を稼ぐのには感心できないが、聖書の押し売り(亡き夫からのプレゼント)の場合は、騙された方も“幸せな気持ち”になれるので多少譲歩しよう。アディが加わることにより、お金持ちからしか金額を要求しないのも良い。が、だからと言ってお金持ちから巻き上げるのもどうかとは思うが・・・。少し偽善チックな設定であるものの、そんな“人間くさい”ところが良いのでしょうね。 好きな場面は、車での親子喧嘩のシーン。口論の様相が非常にリアルに面白く表現されている。DVDの特典でも語られているが、あのカット割り無しの長まわしは凄いですね。納得がいくまで時間をかけて何度も取り直したようです。確かにテイタム・オニールの才能も認めますが、監督の作品にかける情熱も素晴らしい。テイタム・オニールのアカデミー賞受賞(助演女優賞)は、監督の力量無しには有り得なかっただろう。 気の利いた台詞も沢山あり、アディが新聞の“景気が回復傾向”という記事を読んで「私も安心したわ」には思わず笑ってしまいました。あと、冒頭の曲の歌の「紙の月でも本物になる」という詩が、上手くラストシーンに絡んできて何とも言えない感動が沸いてきます。 名作と呼ぶに相応しい要素を全て兼ね備えた作品であると言えます。 9点(2004-05-14 17:15:41)(良:2票) |
16. クレイマー、クレイマー
《ネタバレ》 夫婦間(家庭)に関する問題というのは“明確な答えの無い”永遠のテーマであり、特に男女(夫と妻)の生き方や価値観の相違から発せられる争いは、子供をも巻き込んでしまう小型ハルマゲドンといった様相を呈するほどの破壊力が有る。 同じ男として、どうしてもテッド(ダスティン・ホフマン)に肩入れしてしまうのだが、女性ならジョアンナ(メリル・スロリーブ)寄りになるのではないでしょうか? 男と女・・・、本当に難しいです。こんな難しいテーマに敢然と挑んだ制作者側の勇気を称えたい。 離婚後、テッドは会社をクビになるのですが、“家庭”を守る筈の人物が1人が欠けてしまうと、何もかも上手くいかなくなっていまうものですね。両親が揃っていることの重要性(幸せ)を再認識させられます。 ラストは見る人によって“この家族のその後”を想像できるような形で終わっています。そこがまた良いんですね。 7点(2004-03-22 17:11:57) |
17. ダーティハリー3
何と!この作品では、キャラハンが“アルカトラズ”に乗り込みます。「アルカトラズからの脱出」では自分が入っていたのに!(笑)。最後はバズーカで犯人を豪快に撃破するのですが、本当にもの凄いことしますよね。 それにしても一つ言えることは、“絶対にキャラハンの相棒にはなりたくない”ということです。必ず重傷を負うか、殉職するかのどちらかですから・・・。 4点(2004-03-16 16:00:58) |
18. ダーティハリー2
かなり昔に見た作品ですが、警官が犯人というパターンは当時にしてみれば斬新な展開でした。犯人グループである警官たちは「生ぬるい法律に代わって自分たちが悪人を処刑している」と主張する。ある意味、私も日本における未成年犯罪の対処や、理不尽極まりない犯罪の処罰に関して“非常に刑が甘いな”と感じているところもある。しかし、自分勝手に人を裁くというのは言語道断であり、とんでも無いことであるのは間違いない。そう言えば、当のキャラハン刑事も時折“法に代わって悪を処罰する”場面が有りますよね。キャラハンもあまり人のことを言えないような気もします。 アパートの爆破シーンや、車での追撃シーンなど、アクションの要素が盛り沢山なのですが、特にラストの造船場での銃撃戦が印象に残ります。 6点(2004-03-16 16:00:16) |
19. ダーティハリー
本当にキャラハンというヤツは危ない。刑事なのに飛び出しナイフを携帯しているんだから・・・。上司にも反抗的だし、協調性も無し。最後だって、人質が犯人に捕まっているのに狙撃しますからね。映画のキャラクターだから、その破天荒なところが格好良くて良いのだけれど、本当にこんな刑事がいたら困るな。問題児的な刑事を主人公にした映画は他にも沢山あるけど、この作品のキャラハンが一番危ないね。 スクールバスに飛び乗るシーンは名場面として印象に残ります。 6点(2004-03-16 15:59:41) |
20. スーパーマン(1978)
ストーリーは極めて破天荒だが、その思い切ったプロセスが逆に面白い。 それにしてもジーン・ハックマンは悪役が似合いますね。彼の悪役ぶりは見ている方が本気で腹が立ってきますから・・・。上手いんでしょう。 当然ですが、特撮は今となっては古く感じます。それに、地球逆回転というのはどうでしょうか。あまりにもやりすぎだし、逆に回転させたら本当に時間は戻るのでしょうか? まぁ、その辺はSFということであまり突っ込まないようにしないといけないのですが・・・。 5点(2004-03-12 16:44:48) |