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1.  二十四の瞳(1954) 《ネタバレ》 
木下恵介監督の代名詞的な映画で、日本映画としても名作の一本として数えられている本作。11年前に田中裕子主演のリメイク版を見た時に「いい話だけどなんか古臭くてイマイチだなあ。」と思ったこともあって、なかなか手が出なかったが、今回やっと見た。なんだろうなあ、リメイク版では特になんとも思わなかった小豆島の風景やそこに暮らしている人々の営みがとても叙情豊かに綴られ、もうそこで引き込まれてしまった。そして、高峰秀子演じる大石先生が自転車に乗って颯爽と登場するシーンも最初から何やら暗い表情だった田中裕子の大石先生とは違って明るくはきはきとしている。この冒頭部分でもはやリメイク版との差がはっきりとしている。リメイク版と比べるとゆったりとした流れではあるが、その分、大石先生と十二人の子供たちとの絆がより強調されていて、だからこそ後半の戦争に駆り出されていく男子五人を見送り、病気で臥せっているコトエを見舞う大石先生の姿に感情移入することが出来るし、後半の大石先生はことあるごとに泣いているが、こちらも思わず「何もしてあげられないけど、一緒に泣いてあげる。」と劇中の大石先生の言葉をそのまま大石先生に返したくなるほど泣けた。劇中音楽を唱歌で統一したこともこの物語の感動をより深くしており、「仰げば尊し」や「浜辺の歌」など聴いているだけで涙が出てくる。一年生の時に浜辺で撮った写真も出てくるたびに切なくなり、ラストの同窓会のシーンで戦争で失明したソンキ(岡田磯吉=田村高廣)が写真を指で追いながら誰がどこに写っているかを挙げていくシーンでもうこの写真の中の二十四の瞳はもう全員揃わないんだと思うと泣けて泣けて仕方ない。戦争さえなければ、時代が違えば、この同窓会にはもちろん全員が出席でき、大石先生も夫や娘を亡くすことはなかったろうにと思うと凄く切ない。木下監督はここに戦争の儚さ、虚しさといったメッセージを込めているのがひしひしと伝わってきて、これが反戦映画と言われている理由もよく分かる。そしてまさにこの映画は普遍的なメッセージ性を持ったいつまでも語り継がれていくべき不朽の名作と呼ぶに相応しい映画だと思う。最後にもうちょっとだけ言わせてもらえれば、これを見てしまうと田中裕子版がいかにもつまらない映画のように思えてしまう。(好きな方、ごめんなさい。)大石先生は高峰秀子、高峰秀子、高峰秀子、誰がなんと言おうと高峰秀子以外に考えられない。
[DVD(邦画)] 10点(2010-05-06 15:05:41)(良:1票)
2.  山椒大夫 《ネタバレ》 
「安寿と厨子王」はタイトルだけ知ってたけど、どんなストーリーかは全く知らなかったので悲惨なストーリー展開にはかなり驚いた。安寿と厨子王が連れて来られる山椒大夫の荘園が現在からすればモロに北朝鮮みたいな感じなのも恐ろしい。全体としては「雨月物語」や「近松物語」と並んで世界的評価の高い作品というのが頷ける素晴らしい映画で、安寿が入水自殺する湖のシーンや親子が引き裂かれるシーンなど映像がとにかく美しく、溝口映画にはやっぱり宮川一夫のカメラだなあと感じる。母親を演じる田中絹代も冒頭とラストでは本当に別人のようになっていて女優魂を感じた。まさに完璧な映画だと思う。それにしてもこの時代の溝口健二ってとても晩年とは思えないくらい傑作を連発していてほんとにすごい。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2006-09-14 16:51:53)(良:1票)
3.  近松物語 《ネタバレ》 
あまりスター俳優を自分の映画に起用したがらなかった溝口が唯一、長谷川一夫を主演に迎えた作品。見る前はどういう仕上がりの映画なのか不安な面もあったが、見事に芸術的な映画になっていた。個人的にあまり好きではない長谷川一夫もこの映画では流し目やドアップもなく、あくまで一役者として芝居をしていてとても良い。それに映画全体が非常に美しく、処刑場に向かうラストの長谷川一夫と香川京子の晴れやかな笑顔も感動的だった。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2006-01-02 13:22:46)(良:2票)
4.  雨月物語
僕も初めて見た溝口作品はコレ。それまで黒澤狂いで、邦画の最高傑作といえば「七人の侍」だと信じて疑わなかったからこの映画の凄さには衝撃を受けた。ラストの田中絹代のナレーションによる独白が悲しくて印象的。この映画を見て昔の日本映画を黒澤作品意外にももっと見てみようと思った。
[ビデオ(邦画)] 10点(2005-08-02 22:37:26)(良:1票)
5.  東京物語 《ネタバレ》 
「晩春」、「麦秋」に続く小津安二郎監督と原節子の紀子三部作の最後の作品。尾道から子供たちに会うために東京に出てきた両親と子供たちのすれ違いが描かれた映画だが、ここに現代でも通じる普遍性を感じることができるし、やはりこの普遍性こそが本作を不朽の名作たらしめるゆえんではないかと思う。実際に今見ても現実味を感じられるし、真に迫るものがあり、なにか身につまされるものもあった。子供たちの両親への対応がとても冷たいのだが、それは彼らには彼らの生活があるからであってたとえ親子であってももう別の人生を生きているということがリアルに伝わってくる。だから終盤の京子(香川京子)と紀子(原節子)の会話の部分も、兄姉を非難する京子を諭す紀子の言葉にすごく納得できる。(この部分、初めて見た時は京子のほうに共感してたと思ったんだけど、見方が変わったみたいだ。)周吉(笠智衆)が再会した友人(東野英治郎)と酒を飲みながら交わす会話も二人のさびしさをよく表していて印象的だったし、とみ(東山千栄子)が紀子の部屋へ泊るシーンのやりとりもすごく良い。笠智衆はもちろんだが、このとみを演じる東山千栄子がなんといっても素晴らしかった。この老夫婦が「それでもやっぱり、孫より子供のほうがかわいい。」と話し合うシーンは親のわが子への愛情が永遠であるということをあらためて感じることができ、素直に感動してしまった。(今、これを言えるような親が少ない気がする。)でも、当の子供たちは自分たちの人生を生きるのに精いっぱいで両親にかまっていられないという現実の悲しさ・・・、そういうものが見事に描かれていて、見終わった後には「家族」や「親子」というものについていろいろ考えさせられた。二十歳くらいの頃に初めて見た時は正直、そこまでの良さは分からなかったのだが、久しぶりに見て世界的な名作と言われる理由も分かるし、そしてもちろん、小津監督の最大の代表作、間違いなく日本映画の美しい名作の一本であると確信することができたし、再見して本当に良かった。何度でも繰り返し見たくなる映画というのはあるが、この「東京物語」は自分が年を経るごとに繰り返し見たくなるような映画だと思う。もう10点以外ありえない。(2020年1月6日更新)
[DVD(邦画)] 10点(2005-04-12 21:09:24)(良:1票)
6.  七人の侍
最後の合戦シーンの迫力は凄かった。一年がかりで撮影しただけあって、さすがに細かいところまで丁寧に作ってある。ただ、長すぎるのが難点で、個人的にははこの後の「用心棒」や「隠し砦の三悪人」、「椿三十郎」のほうが見やすいと思うのだが、それでもこの映画は10点以外考えられない。見ていない人は一度は見るべし。必見の名作である。
[ビデオ(邦画)] 10点(2005-03-05 13:37:12)★《更新》★
7.  ゴジラ(1954)
ゴジラ映画は小学生時代にハマッていて、ほとんどの映画を見ていたが、この1作目だけは白黒(2作目もだけど。)ということで見てなくてずっと後になってから見たのだが、怪獣映画というよりは普通の映画として非常に完成度が高く、脚本もよく出来ている。昭和29年という時代性もあり、映画には戦争未亡人が出てきたり、ゴジラが去った後の被害者が運ばれる病院が野戦病院さながらの雰囲気でリアルであり、長崎の原爆から命拾いしたというセリフもあり、当時はまだ戦争が人々に暗いかげを落としていたことが想像できる。この映画は大人の方にこそ是非見ていただきたい怪獣映画の傑作である。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2005-03-03 12:26:04)(良:1票)
8.  ローマの休日 《ネタバレ》 
中学生の頃、ラブストーリーは食わず嫌いでほとんど見たことが無かったが、先生から「今度テレビで『ローマの休日』あるから見て。」と薦められ見てみたら、感動してしまい、その放送を録画したビデオを10回近く繰り返し見た。王女が髪をショートにするシーンや、真実の口のシーン、そして何よりも別れのシーンとラストの記者会見のシーンが好きだ。その後、ラブストーリーも見るようになり、映画の好みも少し変わった。文句なしの満点!!。
[地上波(吹替)] 10点(2005-03-02 23:25:09)(良:2票)
9.  西鶴一代女 《ネタバレ》 
溝口健二監督の映画もかなり久しぶりに見る気がする。そんな本作は溝口監督が一躍国際的に名が知られるきっかけとなった名作として知られているが、始まって早々に溝口監督らしい力強い長回しに一気に引き込まれた。田中絹代演じる主人公 お春がお経の声に導かれるようにして羅漢堂に入っていく最初のシーンからもうすでにただならぬ雰囲気を感じるし、もちろん、溝口監督ならではの映像美もこの冒頭からよく出ている。物語はこのお春の転落人生を描いているわけだが、溝口監督は一切の妥協を許さずにこのお春という女の人生を描き切っているし、それに見事に応えた田中絹代のすごさ。ここにこの名コンビの真骨頂があるのではと思えてならない。お春の人生の転落ぶりは最初の高貴な身分から最後は夜鷹までと凄まじいものがあるのだが、そこに描かれているのは封建主義の理不尽さとそれに立ち向かう女の強さだ。冒頭の勝之介(三船敏郎、溝口映画にも出てたんだ。)との身分違いの恋からお春の怒涛の人生は始まっているが、これをはじめとしてお春の人生にはこの封建的な世の中の空気というものがついてまわっていたように思う。とくに輿入れした松平家でのエピソードにそれがよく出ており、あれだけ苦労して探した(この嫁探しのシーンがユーモラスに描かれていて笑える。)嫁であるお春を世継ぎが生まれたらもういらないとばかりに実家に帰したりするのは理解できないし、その子が殿様になるころにまたお春を呼び戻すのも虫が良すぎる感じ。そしてクライマックス、目の前を通り過ぎる殿様になった我が子を「私はあの子の母親です。」と後を追おうとするお春の姿は演じているのが田中絹代とあって思わず「陸軍」のラストシーンがオーバーラップしてしまうが、こちらもやはり切なかった。そんなお春が年を取るごとに美しくなっていくように見えるのだが、やはり溝口監督はお春の強さを美しさと比例させて描いているのだろうか。とくに下の方も書かれているように回想を終えたお春が倒れるシーンの田中絹代の美しさは尋常ではないものがあり、すごく印象的だった。最初に書いたように久しぶりに見る溝口監督の映画だったのだが、間違いなく映画史に残る名画であり、素直に見て、いや、出会えて良かったと思えるような映画だった。
[DVD(邦画)] 9点(2020-05-11 01:08:42)
10.  原爆の子 《ネタバレ》 
人類史上初めて原爆が落とされた街 広島。その広島出身の新藤兼人監督がGHQの日本占領終了直後に放った広島原爆をテーマとした反戦映画。原爆で家族を失い、今は瀬戸内海の小島で教師をしている主人公 石川孝子(乙羽信子)が、あの日原爆に遭って生き残った教え子たちを訪ね歩くというストーリーなのだが、まだあれから七年しか経っていない広島で実際にロケをしていることもあり、いくらか復興しているとはいえ、原爆の傷跡がまだまだ残る広島の街はここにあの日原爆が落ちたということをリアルに物語っていて生々しく、この街の風景を見るだけで考えさせられるし、つらい。孝子が訪問したその日に原爆症で死んでしまう教え子の父や、少女が教会でもはやいつ死んでもおかしくない状態で横たわっているシーンは原爆が投下直後だけでなく、その後何年にも渡って身体を蝕んでいくという恐ろしさが伝わってきて切なく、胸が締めつけられる思いがした。新藤監督は広島出身の作家としてどうしても原爆投下間もない広島の現状をこの映画で描きたかったんだと思うし、新藤監督の原爆や、戦争、そして故郷への思いが伝わってくる。真夏の太陽の下で元気に遊ぶ子供たちも印象に残るのだが、この子たちに未来を託すという新藤監督の強い願い、戦争のない平和な世の中への願いが込められている気がしてならない。それはこれからの未来を生きるすべての人たちへの普遍的なメッセージなのだと思う。そしてそれは戦後69年経ち、新藤監督自身が亡くなった現在でも決して変わることはないだろう。被爆して間もない広島が舞台ということでも歴史的価値のある映画だが、そんな監督の普遍的なメッセージを発信し続ける映画として、これから先もずっと残っていくべき映画なのだと思う。
[DVD(邦画)] 9点(2014-08-01 02:13:03)(良:2票)
11.  次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊 《ネタバレ》 
第8作。今回は石松が主役で、出演者のトップクレジットも森繁久弥となっている。これまでもシリーズの中で印象に残る様々な活躍を見せた石松だったが、今回は石松を演じる森繁久弥の演技がとくに素晴らしく、夕顔に惚れて赤くなる姿や、夕顔との風呂でのやりとりなど微笑ましいシーンでの演技も良かったが、やはりラストの決闘シーンで見せる演技はかっこよく、そして、「おらあ死なねえんだよ!」と叫ぶシーンも素晴らしかった。これ一本でもじゅうぶん森繁久弥という俳優の素晴らしさと魅力が伝わってくるし、この森の石松という役は彼にしか出来ないのではないかという気さえする名演技だ。この話だけはマキノ雅弘監督によるオリジナルらしいが、シリーズとしてここで終わらせたかったというほどの意気込みを持って演出に当たっていたというマキノ雅弘監督の演出も、彼の石松に対する愛情のようなものが感じられて、シリーズの中でも傑作と呼ばれているのが分かるし、僕ももちろんそう思う。やっぱり僕もこの次郎長一家の中では石松がいちばん好きだから。 2009年11月10日追記:石松を演じた森繁久弥さんが亡くなった。96歳の大往生とのこと。このシリーズの石松役はもちろん、コメディーからシリアスまで何の役で出ていてもとても味のある演技が印象的な素晴らしい名優で、好きな俳優の一人だっただけに訃報に接し、大往生とはいえ、かなりショックが大きく、すごく悲しい気持ちでいっぱいでとても残念に思う。本当に心からご冥福をお祈りします。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-02-10 23:53:11)(良:2票)
12.  次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家 《ネタバレ》 
前作ラストで兇状持ちとなった次郎長一家の逃避行を描いたシリーズ第6作。今回は冒頭からシリーズ今までの雰囲気とは違う暗い感じで、笑えるシーンも少なく、全体的に湿っぽくシリアスな展開なのがかなりの異色作に感じるのだが、今まで第一部からずっと見ていて次郎長一家に親近感がわいていたせいか、泣けて泣けて仕方がない。なんといっても今回はお蝶さん。病に倒れても匿ってくれた場所に兇状持ちになっているが故に長居は出来ない次郎長親分たちに対して「大丈夫、元気になったわ。」と言うのが何とも健気で見ていて辛く、これだけでもう泣けてくる。親分に盃を返そうとする三五郎と石松、それに弱っていくお蝶さんを元気づけようと無理に笑う大政たちにもついつい感情移入して思わず泣きそうになった。お園さんがお蝶さんの回復を願って権現様に願をかけるシーンも思わず感情移入して見てしまう。そして最後、お蝶さんがいよいよ亡くなるというシーン、ここで一人一人に声をかけるお蝶さんの姿を見て、前回の親分との馴れ初めの話をするお蝶さんの姿や、そのほかいろんな事を思い出して、また自分がその場にいるような気分にもなってしまい、せつなすぎて泣かずにはおれない。お蝶さんを演じる若山セツ子の演技ももちろん素晴らしく、このシーンは本当に名シーンだと思う。最初に書いたようにほかの回とは雰囲気がかなり違うものの、こういう映画でもマキノ雅弘監督のうまさを感じることが出来るし、これはこのシリーズの中でもかなりの傑作だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-01-18 23:59:00)
13.  わが町(1956)
大阪を舞台に明治・大正・昭和の時代を豪快に生き抜いた一人の男の一生を描いた川島雄三監督の映画。川島監督の映画というと、これまで見た限りではちょっと風変わりな映画が多いという印象だが、この映画はとてもオーソドックスな人情劇となっていて久しぶりにとても温かい感動を味わうことができた。主人公のターやんがとても魅力的で演じる辰巳柳太郎が「無法松の一生」のバンツマを思わせていて素晴らしく、特に人力車を引く姿は思わずダブってしまう。ほかにも、妻と孫娘の一人二役を演じる南田洋子(孫娘がターやんを批判して殴ってしまう後半のシーンがなんだか切ない。)は勿論、殿山泰司、小沢昭一、北林谷栄なども実にいい。三橋達也も今回はダメ男ではない孫娘の幼馴染を実にうまく演じていて好印象。既に他の二人の方も書かれているが写真屋で孫娘がマラソン大会の写真を見て自分の両親の存在を知るシーンとラストのプラネタリウムのシーンはこの映画の中でも特に感動的で思わず涙が出そうだった。川島監督、こういう直球ストレートな映画でもこんな名作を作ってしまうなんてやっぱりただ者ではない監督だと思う。
[DVD(邦画)] 9点(2008-01-30 18:57:41)(良:1票)
14.  十二人の怒れる男(1957)
最初から最後まで裁判所の一室での陪審員たちの討論を描いているので内容的にはものすごく地味なのにだんだん白熱していく討論に目が離せなくなり、引き込まれていった。シドニー・ルメット監督のデビュー作らしいが、今まで見たこの監督の映画(といってもこれを含めて3本くらいしか見てないが。)の中ではいちばん面白い映画だと思う。白黒映画なのも効果が出ていて良かった。ラストシーンも印象的。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-01-04 19:33:43)(良:1票)
15.  お早よう 《ネタバレ》 
昔見た時もすごく楽しめた映画だったが、やはり久しぶりに見ても面白かった。小津安二郎監督の映画に登場する子供はどの映画でもみんなイキイキとしているが、子供が主役の喜劇映画である本作はとくにそれが感じられ、子供たちのオナラ遊びや、実と勇の兄弟が母親(三宅邦子)に「アイラブユー」、「オフコースマダム」とませた英語を話すシーンなどほほえましく、とにかく子供たちが本当にイキイキと元気に描かれていて、小津監督の子供の使い方のうまさや、喜劇のセンスの冴えもあり、やっぱり小津監督は喜劇映画の監督だと思わずにはいられない。中でもテレビ欲しさに一言もしゃべらなくなった兄弟が給食費のことを家族に伝えようとするジェスチャーのシーンはとくに笑ってしまったが、ここに小津監督のサイレント時代の経験が活かされているのは明白だろう。(筆談すればいいのにと思うのは野暮というもの。)そんな子供たちだけではない、舞台となる集合住宅の住人たちの噂話も、冒頭の会費の行方についてのシーンからこんな噂話してる人、周りにもいるなあと妙に親近感がわいて、本当に近所の主婦たちの井戸端会議を見ているようで面白い。この部分では会費の問題が解決したあとに実と勇がしゃべらなくなり、杉村春子が挨拶をしても返さないのを会費を横領したのを疑われた親がそれを根に持って子供に相手をしないようにしてるんだと話すシーンがとくに印象に残り、笑える。(三宅邦子、かわいそうに。)この杉村春子も良いのだが、キャラがたっているのが三好栄子演じる彼女の母。会費の行方の真相についてもそうだが、なんといっても押し売り(殿山泰司)とのやりとりが愉快痛快で楽しかった。笠智衆のセリフで大宅壮一の言葉を引用している(前に見た時も印象に残った言葉だった。)が、この当時の映画業界人の中にはこの言葉に共感する人も多かったのではないかとつい思った。なにはともあれ、肩の力を抜いて気軽に楽しめる喜劇映画で、もし、小津監督の映画にまったく触れたことがないような人がいたら、まず最初にすすめてみたい映画だ。(2020年1月13日更新)
[DVD(邦画)] 9点(2005-04-12 21:19:21)(良:1票)
16.  めし 《ネタバレ》 
倦怠期の夫婦を描いた成瀬巳喜男監督のいわゆる「夫婦三部作」の最初の作品で、戦後それまで低迷していた成瀬監督がふたたび評価されるきっかけとなった代表作の一本でもある。成瀬作品をかなり久しぶりに見たのだが、成瀬監督らしい味わい深い映画になっていて面白かったし、それだけではなく、ちゃんと人間が生活しているという空気感も大切に、そして丁寧に演出されているところが良く、そういうところに成瀬監督のうまさを感じずにはいられない。結婚五年目の倦怠期を迎えた夫婦を原節子演じる妻の視点から描いているが、その心理描写もうまく、改めて成瀬監督は女性を描くのが本当に上手い監督だと感じさせられる。その原節子も平凡な夫との暮らしに何かしらの不満を抱いている所帯じみた主婦を演じていて、カリカリ、ピリピリした表情も見せるなど、小津安二郎監督の映画での彼女とは違った印象が残り、それが本作の中で効果的に使われているところなど、作風が似ていると言われる成瀬監督と小津監督の作風の違いもこの原節子の違いを見れば分かる。個人的には本作で原節子が演じた三千代という人物は今まで見た原節子が演じた役の中でも見ていていちばん親近感がわいたし、一般的に小津作品でその魅力が語られることの多い女優なのだが、成瀬監督もやはりそれとは別の魅力を引き出している。夫を演じる上原謙のダメ男ぶりもハマリ役で、こういう役が十八番のようなイメージの森雅之とはまた違ったタイプのダメ男を見事に演じていて、間違いなく本作は上原謙にとっても代表作と言っていいだろう。東京から家出してくる主人公夫婦の姪を島崎雪子が演じているが、彼女の芸名は「青い山脈」の原節子の役名をそのまま使ったもので、この二人の共演も見どころのひとつ。それにしても本作の主人公夫婦のような状況は現代でもじゅうぶんにあり得ることだと考えると夫婦というものはいつの時代もあまり変わらないものだと思わされるところもあった。「めし」というタイトルのつけ方も絶妙。
[DVD(邦画)] 8点(2017-02-11 18:33:39)
17.  野火(1959) 《ネタバレ》 
第二次大戦末期のフィリピン戦線を舞台に敗残兵となった日本兵たちの末路を描いた市川崑監督による戦争映画。市川監督の戦争映画といえばこの映画の数年前に日活で手がけ、後年自身によってリメイクもされた「ビルマの竪琴」が知られていて、そこでも捕虜となった敗残兵が描かれていたのだが、どちらかと言えば謳歌的で情感たっぷりに描かれていたあちらとは対照的に、この映画はかなり生々しく、より戦場における敗残兵となった日本兵の過酷な状況がリアリティを持って描かれていて衝撃的であり、怖い。飢えに飢え、極限状態に陥った敗残兵たちが人間を殺してその肉を食べるということがこの映画の大きなテーマとなっているが、きっと実際の敗残兵たちも同じようなことをしていたのだろうと考えさせられるし、見ていて非常に重苦しいなんとも言えない気持ちになるのだが、一方で見ているうちにだんだんと引き込まれていき、目が離せなくなった。白黒の映像も効果的で、極限状態の人間の異常さ、恐ろしさといったものがこれでもか、これでもかと伝わってくる。そんな異様な状況の中でラスト、野火の上がる方向へ向かう主人公の「普通の暮らしをしている人間に会いたい。」というモノローグは、それでも人間らしく生きていたいという悲痛な叫びであり、ここに市川監督がこの映画にこめたメッセージというものを感じ取ることができた。主演の船越英二は撮影前に体重を減らして臨んだそうだが、一見すると船越英二とは分からないような風貌でまさに田村一等兵という役柄になりきって演じており、その鬼気迫るリアルな演技が見事で、彼の代表作と言われている映画だが、まさにその通りだと思う。また、「ビルマの竪琴」で描けなかった戦争の狂気的な部分を見事に描き切った傑作で、市川監督にとってもそれに並ぶ戦争映画の代表作だろう。あまり知られていないのは残念だが、是非とも2本セットでご覧になることをお勧めしたい。
[DVD(邦画)] 8点(2014-06-28 15:55:45)
18.  野獣死すべし(1959) 《ネタバレ》 
仲代達矢が主人公 伊達邦彦を演じる東宝の「野獣死すべし」。やはり以前に見た松田優作主演の角川映画とは印象がだいぶ違うのだが、本作のほうがシンプルなつくりで、分かりやすく、かつ当時は日本映画ではまだ珍しいハードボイルド映画の雰囲気も角川版よりもあり、こちらのほうが自分としては好み。本作の伊達邦彦は角川版以上にギラギラしていて、演じる仲代達矢の癖の強さもあって、何を考えているか分からない怖さがよく出ている。それをいちばん感じるのは花売りの老婆(三好栄子)とのやり取り。伊達から強要されて踊り続ける老婆を見つめるあの眼の演技は仲代達矢ならではで、これだけで伊達邦彦という男の怖さや冷酷さをすごく感じられた。それにこのシーンはこれが最後の出演作となる三好栄子も迫真の演技を見せていてとても見ごたえがある。予告編で20代スタッフを中心に制作というのを強調していたが、まだデビュー間もない須川栄三監督は白黒画面をフルに活かしていて、さきほど書いた映画のハードボイルドな雰囲気をうまく映えさせているのがうまい。それに、犯罪映画としてだけではなく、刑事映画としての面白さもあると思う。ただラストが尻切れトンボのような感じになってしまっているのはちょっと残念だった。
[DVD(邦画)] 8点(2014-05-15 18:36:39)
19.  麦秋(1951) 《ネタバレ》 
小津安二郎監督と原節子のコンビによる「晩春」、「東京物語」と合わせて「紀子三部作」と呼ばれる作品群の2作目。「晩春」と同じく原節子演じる娘・紀子が結婚するまでを描いていて、最初は「晩春」と同じような感じ(冒頭に登場する海は「晩春」のいちばん最後のシーンと重なる。)なのだが、あくまで父と娘の話に絞ったストーリーだった「晩春」と違ってこの映画では大所帯の家族が描かれていて、この家族のドラマとしても一級品。「晩春」同様にとても味わい深さのある映画になっていて素直に名作だと思った。原節子演じるヒロインの人物像は「晩春」と比べるととっつきやすいし、小津監督らしいユーモラスな会話も「晩春」より多く、楽しめる。とくに原節子が友達(井川邦子)の結婚をほかの友達(淡島千景)とからかうシーンは下手に描けば嫌味になって笑えないところを実にうまくユーモラスに描いていてあざとさを感じさせず、これだけで小津監督の喜劇のセンスの良さが分かるし、会話の歯切れの良さも現代の映画では感じることができないものだろう。子供の描き方が実にイキイキとしているのも小津監督らしい。それに黒澤明監督の映画でお馴染みの俳優である高堂国典もコミカルで面白かった。見る前は「晩春」や「東京物語」のイメージからかこの映画でもヒロインの父親役は笠智衆が演じていると思っていたが、実はヒロインの兄役だったのはちょっと意外に感じた。(でもこれで年相応の役というからさらに驚き。)終盤近く、みんな離れ離れに暮らすことになった後のヒロインの父親(菅井一郎)のセリフが耳に残る。家族で写真を撮るシーンも印象的だ。「晩春」では結婚による親子の別離が描かれていたが、この映画で描かれているのは結婚による家族の別離で、核家族が当たり前となった現代を予見したかのような結末になっているのは小津監督の先見の明を感じるし、実際それは原節子が次に出演する小津作品である「東京物語」で切実さをもって描かれることになるのだなあと思わずにはいられない。今見ると多少時代を感じる部分もなくはないが、本作も「晩春」に劣らない名作だと思う。それにしても劇中に出てきた900円(←当時としてはえらく高価。)のケーキがとってもおいしそうだった。
[DVD(邦画)] 8点(2013-11-07 16:36:52)
20.  東京暮色 《ネタバレ》 
この間見た「淑女は何を忘れたか」が明るく楽しい喜劇映画だったのに対してこの「東京暮色」はやはり評判通りかなり暗い。でもこの映画に描かれている家族像は現在にも通じるものがあり、いやむしろ現代のほうがより切実に感じられる部分が多くあり、昭和30年代の映画だが、まるで現代の家族の問題を描いていると錯覚するほどリアリティーが感じられて怖いほどだ。原節子演じる出戻りの長女も、有馬稲子演じる子供を妊娠しながら相手の男に捨てられたも同然の次女共にどこかかげのある役柄で、とくに次女が抱える孤独感やさびしさは思わず感情移入してしまうものがあり、母親に対して自分は誰の子なのかと問い詰めるシーンや、電車にはねられたあとの病院でのうわ言も悲しかった。この次女は最初岸恵子が演じる予定であったそうで、結婚による渡仏のために有馬稲子が演じたらしいのだけど、有馬稲子はこの役を見事に演じていて、代役出演であることを感じさせていない。(岸恵子が演じていたらどんなふうに演じただろうという興味はあるが、この役は有馬稲子で正解だったと思う。)その次女が小さい頃に家族を捨てて男(中村伸郎)と逃げてしまった母親を演じる山田五十鈴の演技が素晴らしく、次女が死んだことを知って一人飲み屋で打ちひしがれるシーンはこの母親の辛さというものをうまく表現していてとくに印象的で、言葉など使わなくてもこの母親の気持ちというものが痛いほど伝わってくる。山田五十鈴というのは怖くて貫ろくのある役のイメージが強い人なのだが、こんな繊細な演技もうまいと感じさせるのはさすが。もちろん笠智衆と原節子もいいし、杉村春子のマイペースなキャラクターは暗い物語の中でほっと一息つける。小津安二郎監督の演出は次女が電車にはねられるシーンを直接描写しなかったり、次女の死のシーンも省略してしまうなど、ドラマチックになりすぎない演出がなされているのがいい(現在の映画だったら絶対に入れてるだろうなあ。)し、また全体的にクールな目線で描かれているのだが、さきほども書いた次女が自分は誰の子なのかと母親を問い詰める深刻なシーンに明るいテーマ音楽をかぶせてあえてミスリード効果を狙っているのもよかった。「東京物語」でも親子の問題を描いていた小津監督だけど、この「東京暮色」もそれと同じく笠智衆演じる父親が一人残されるラスト。この映画のほうが「東京物語」よりもラストにさびしさを感じるのは描かれている物語が「東京物語」よりも痛烈に胸にせまってくるものがあるからかもしれない。今まで見た小津作品の中では最初に書いたように暗くて救いのない映画ではあるのだが、それでも心に残るいい映画だったと思う。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-09-21 18:46:46)(良:1票)
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