1. ジャイアンツ
かなり不確かな情報で、今さら確認できないが、当初は、自動車産業の都市の話やベースボールの試合に勝って川に飛び込む熱狂的連中、それに、五人組の歌手グループなどの話が入っていたらしい。しかし、影のスポンサーの某新聞王から横やりが入り、それらのエピソードがボツになって、予定されてた題名も変えられてしまったとの事。当初の題名は何かって?「タイガース」 [DVD(字幕)] 8点(2012-04-24 21:36:28) |
2. 雪夫人絵図
《ネタバレ》 舟橋聖一の同名小説の映画化。華族の名門信濃家の雪が、婿で傲慢な直之に苦しめられているが、別れることもできず苦悩する。心の支えである小唄の師匠の菊中も肝心な時に頼りにはならず、悲劇的な結末を迎える。戦後の没落する華族の哀れさと心と体の欲求が分かれる女の性に苦しむ貴婦人の心中が見事に描かれている。また、夫人をいいように利用してきたと思っていた周りの男達も、実は夫人の虜になっていたという側面が最後に露呈し、時代の変化と自らの欲望に翻弄する様も垣間見れる。製作時点の時代背景なのか、夫人の肉欲を観る者の想像に任せている点が若干不満ではあるが、育ちの良さを一つ一つのしぐさで表現している小暮美千代の演技は見事だ。夫人に憧れる小間使いに旧華族出身の久我美子を配するとは偶然ではあろうが妙な皮肉を感じる。最後の芦ノ湖での場面は霧につつまれて見事に美しい。ボーイがお茶を持ってきたらこつ然と消えている夫人。さすがに上手い。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-09-18 11:22:34)(良:2票) |
3. 雨月物語
《ネタバレ》 確かに美しい。しかも幻想的なシーンが、人間の心の欲望の醜さを不気味に表現している。最後に主人公が帰ってきて、妻子を探して、家の中から一旦外に出て、戻ってきた時に田中絹代が囲炉裏で鍋を火にかけていたのには驚いた。このシーンが長まわしだからすごい。男の心の弱さ、女の悲しさと執念深さが伝わってきた。あの京マチ子とばあやの次第に不気味になっていく様子もなかなかだ。ところで京マチ子は最後までお面付けてたけど、この頃の素顔はどんな感じだったんだろう? [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-09-03 23:00:16) |
4. 二十四の瞳(1954)
先生は立派な職業です。大変だろうが、やりがいもあり、誰に対しても誇れる。今は心からそう思う。実は、一時期、一流企業のほうが給料はいいのになあ、と思ったことがあった。息子よ、すまん。そんな父を許せ。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-08-15 23:59:00) |
5. 無法松の一生(1958)
よく九州出身の上司が酒の席で歌っていた。色々な恋愛があるんだろうが、純粋で己の立場をわきまえた日本的な美的センスが感じられる。三船の演技は秀逸ですね。確かに、松の気持ちを考えずいいように使っていた未亡人を、現代の我々としては若干不満に感じるところですが、当時としては、夫を早く亡くして再婚もせず気丈に生きていく上では当然で、彼女を責めるわけにはいかないだろうな。貯金通帳は泣かせる。泣き崩れる彼女の涙に、松の気持ちも報われたと思うべきだろう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-12-23 23:55:39) |
6. おかあさん(1952)
田中絹代が時々見せる、言葉がなく目線だけによる演技が絶妙です。その、数秒の間に、悲しみや不安、時には、あきらめや納得が伝わってきます。息子と夫に先立たれ、末っ子を養子に出し、いずれは長女も嫁いでいくだろう。あるいは、あの時代このような母親が多くいたのかもしれない。つい、自分の母や祖母はどうだったのかと考えてしまう。最後の長女の「お母さん、あなたは幸せですか」という問いに何と答えるのだろう。その長女が見つめる中、預かっている妹の息子と布団のうえで相撲をとりたわむれる。母は強く悲しく美しい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-10-23 00:09:50)(良:1票) |
7. 銀座化粧
40過ぎまで(失礼)こんな事してちゃだめよ。早くいい人見つけなきゃ。と香川京子に言っていながら、自らは、子供を生きがいにしっかり心を決めている田中絹代。悲壮感はない。「心の恋人」と香川の意外な成り行きに、最初は裏切られたような嫉妬らしき態度をとっていたが、理由を聞けば、すぐに祝福する。銀座に生きる自立した女の真っすぐな心か。やっぱり田中さんにして良かった。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-09-24 17:00:25) |
8. 晩菊
昔の売れっ子芸者達が、年食ってから生きていく様が、時にシリアスに、時にコミカルに描かれている。杉村春子が昔の恋人に会うときのハシャギぶりと、実際会ってみると、すぐに現実の冷めた感情に戻る描写の落差に、何とも言えず苦笑いしてしまう。それはまるで、映画館へ向かう途中の期待に胸を膨らましている感じと、その映画が期待どおりではなく途中冷静に評価している感じだ。まあ、思い出は思い出で止めておくのが良い。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-09-23 23:06:01)(良:1票) |
9. 浮雲(1955)
あの戦争の敗戦によって、ほとんどの日本人が人生をリセットされたんでしょうね。上手く切り替えた人や逆に水を得た魚になった人だけじゃなかったのもわかります。ただ、それは一つのきっかけであって、原因とは言えないんだろうな。どんな時代にも自分の明日を描けない人はいますからね。とは言え、時代背景としては戦後の混乱期は設定にはぴったりですね。登場人物たちの表情が皆暗く、敗戦の負の部分を象徴するような映像が続くのが辛いですね。お互いを必要としているのに、一緒にいても満たされない辛さが伝わってくるなあ。その後、彼はどうしたんだろう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-09-20 12:58:27) |
10. 山の音
川端文学の本筋は、こうした人間の心の奥に潜む堕落した欲求と理性との絶妙なバランスの危うさにあると思うんです。間違っていると言われる予感も多少ありますが。それはともかく、原節子の美しさ、というより清純さ、じゃなくて、ああいう感じは(ぴったしの言葉が浮かばない)、今の女優には無い独特のオーラを感じます。私だったら、戦争未亡人の世間ズレした美人よりは、子供だと悪口言われても、素直さと芯の強さを持った大柄(?)な妻を取りますね。え?お前ならどうするかなんか興味ない?そう言われる予感もしました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-09-19 00:26:55) |
11. 妻(1953)
妻としては、愛人を作って自分だけ幸せになる夫が許せないし、別れる訳にはいかないという気持ちですか。しかし、夫にしてみれば、せんべいをボリボリ食べる色気のない女より、けな気に息子を育てながら、仕事も趣味も一生懸命で気配りもする女に、つい気持ちが行くのが、人情というものなんですよね。ごたごたはあっても、法的には妻が有利(?)であるから、まあ、収まるところに落ち着くのかなあ。三國連太郎が良い味出してます。結婚って、何なんですかね。今更ながら考えてしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-09-14 23:22:28) |
12. めし
原節子のイメージが、若干変わりました。奥さんらしい態度、嫉妬に小言。なるほど、美人で他人から見るとうらやましがられる夫婦でも、こういう感じなんですね。この歳になるとわかるなあ。これが夫婦生活なんですね。最後は良い方向に向かっているけど、また繰り返すような感じもしました。まあ、それでも生きていかなければ、という事なんだろうな。「おい、腹減ったな。めし」って、言ってみたい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-09-13 23:38:27) |
13. どん底(1957)
つくづく人間は、しがらみから抜け出せないものだと感じましたね。現代においても同じですね。現在を嘆き、過去を懐かしみ、他人をねたみ、未来に踏み出そうとしない。憂さ晴らしが楽しみになっている。まあ、それが人間という生き物なのか。 [DVD(字幕)] 7点(2005-05-15 14:16:40) |
14. 道(1954)
《ネタバレ》 前半はジェルソミーナの純粋さと悲劇的な立場に誰もが涙する。金で売られ、主人は暴力で拘束する。それでも、妻であることを感じた時の喜びの表情が切ない感動を与えてくれる。自分が必要とされていると感じたら、どんな人でも、やはり、生きがいに結びつく。そして最後は、ザンパノの、愛を感じることが遅すぎた後悔の涙に、胸が締め付けられる。自分が死に追いやった女性が、最愛の女だったと気づいたとき、男は浜辺で泣くしかないだろう。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-04-09 01:42:46)(良:1票) |
15. ローマの休日
夜のベンチに絶世の美女が寝ていて、声をかけたら、寝ぼけたまま自分のアパートまでついて来ても、隣で寝るだけのグレゴリー・ペックの自制心は確かに見事だ。尊敬する。当然、私にはまねできない。 [DVD(吹替)] 9点(2004-10-30 00:13:47)(笑:3票) |
16. 大人は判ってくれない
人形劇を見る子供達の表情が素晴らしい。演技ではなく、子供が劇を見ている実際の映像である。この子達も成長するにつれ、大人が作った管理社会に、素直に溶け込んでいく子と、主人公のようにはみ出していく子に分かれていく。個を大切にしたほうである、フランスでもこんな感じだったのか。最後の海へ向かって走る映像が胸にしみる。すんなりと溶け込んでいった者には退屈な作品なのだろうが、少しでも、挫折を覚えた者にとっては、切ないくらい理解できる感覚だ。 8点(2004-10-24 21:57:13)(良:3票) |
17. 嵐を呼ぶ男(1957)
さすがの(?)私も石原裕次郎の全盛期は、知りません。加山雄三の若大将シリーズぐらいなら、多少記憶にあります。あの挑戦的な目と、ギラギラしたエネルギーの塊のようなしぐさが魅力的だったのでしょうね。高度経済成長のシンボルの一つかもしれないですね。何年か前ですが、叔父がテレビで放映していた裕次郎の映画に、「お、祐ちゃんか」と言って、うれしそうに見入っていたのを思い出す。どんな世代にも、ヒーローは存在する。 7点(2004-10-16 10:56:25) |
18. 大菩薩峠 完結篇(1959)
《ネタバレ》 やはり、最後は因果応報、見事な最後でした。斬り合いでは負けそうにないので、あの終わり方が納得かなあ。人の親としての一面が現れ、やっぱり人間でしたね。子供に因果が巡らなければいいんだが。 7点(2004-10-12 19:36:05) |
19. 大菩薩峠 第二部
だんだん多くなっていく登場人物に、気を緩めると誰が誰やら判らなくなる危険がある上に、すれ違いが多くなり、短気な人はイライラする危険が。しかし、見事な立ち回りや、魅力的な役柄の人物が多く、決してダレることがない。相変わらず女にモテル主人公がうらやましい、、じゃない。最後はどうなるのか興味深い。 7点(2004-10-12 19:25:08) |
20. 大菩薩峠(1957)
因果が絡み合った糸のように登場人物達を結びつけ、壮大な物語を構成していく。長いけど興味を失うことはないくらい次から次へと因果が巡っていく。悪運がなかなか尽きない上に女にもてる主人公がいい味を出している。その極意は、強引だけど、いやらしくないことと見た。うーん、無理かな。 7点(2004-10-12 19:08:15) |