1. もののけ姫
友人達に、「まあつまらなくはない」とそっけない感想を聞かされていたのと、監督が制作をこれで最後にすると言っていた(当時)ので、これが最後の作品という思いが重なり、なかなか見るふんぎりがつかなかった。しかし、最後の最後、都心から離れたはるか遠い映画館で見ることができた。スクリーンに広がったその光景は、体の震えが止まらないほど荘厳で迫力のあるものだった。もののけや人々が個性をもち、まるで生き生きとしている。そして何より「生きる」自分の命の価値を、考えさせてくれるものだった。ナウシカでは人<自然だったが、この作品では人が本当に自然と分かち合える人間を目指していこうという、また違う観点から見せつけてくれた。手のひらに、脈々と打ちつづけている血液の音を、感じさせてくれた一生忘れることのできない作品だ。 [映画館(字幕)] 10点(2005-08-29 22:13:24) |
2. イル・ポスティーノ
牧歌的な背景に身をゆだねながらもしっかりと生きていく人の美しさが忘れられない。 2人の男の、決して分かつことのない絆に。 主演のM・トロイージは、撮影終了12時間後に心臓病にて他界した。 10点(2004-09-16 13:08:04) |
3. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 子供の笑い声で泣けた事は、おそらくこれが始めてです。それほどテーマ性に優れており、恐怖とそして希望を感じずにはおられない。次々と礎になって死んでいく強調者達。絶え難い悲しみと絶望に耐えながらも必死に親子を守る男。これが単にホームドラマのようなセットだけの人間模様や、ハリウッドの様にVFXを多用しわざとらしくありえない演出なら、こんなには感情移入できなかったと思いますが、映し出される映像のリアリティには、CGにはできない息づかいまで感じられ、身の毛がよだつほどです。主人公の後をまるで従軍カメラマンの様に淡々とついていくカメラワーク、しかもその切れ目がまったくわからないほど自然で、まるで自分が本当にそこにいるかのような現実感。いわゆる「長回し」という技術だそうですが、これがハンパではない。2時間の映画内容のうち約半分がこの技術を使っていると思う程自然に、ふんだんに使用されています。この類まれな技術が、この作品の基礎となり、テーマ性を盛り上げてくれました。さすが、ロサンゼルス映画批評家賞では撮影賞を受賞をとっただけの貫禄があります。そしてキーの最後の言葉に泣き、そしてエンドロールの楽しそうな子供達の笑い声に、思わずむせび泣けました。文句無しに9点。 [DVD(字幕)] 9点(2007-05-08 03:34:29) |
4. トランスポーター2
期待の続編、という事でわくわくしながら見ましたが、期待を裏切らない軽快な演出、展開。最後までたっぷり楽しめました。まあ、一部無理のある演出でソレはないだろ、と思わなくもないですが、ステイサム好きなので許せます。コクのある功夫格闘と違い、あっさり軽快なマーシャルアーツ系のアクションが素晴らしい。多種多様に物を使い武器にしていく、あの想像力とテンポの良さは最高。格闘シーンが多めなので、カーアクションが若干影が薄いですが、ラストの走りは本当にカッコイイ。何度も見て楽しめる映画として、かなり好印象でした。3、ありそうで大期待。 [DVD(字幕)] 9点(2007-03-14 17:17:06) |
5. ポストマン(1997)
《ネタバレ》 素晴らしい!苦しむ人々達の一通の手紙にかける想い。必ず、世界は良くなる、と思い続けている想いがストレートに伝わる。気ままに生き、他人のことなどお構いなしの無情な旅人が、人々にふれあい、愛や希望を人々から受け取り、次第に彼自身が変わっていくさまが、そして彼自身が世界に希望を持たせようと奮い立つ演出がとてもいい。しかし難は対する悪役としての存在が「一人」だったこと。安直すぎるしリアリティに欠ける。他のさまざまな困難や葛藤など盛り込んでほしかった。その為スケールが小さく、こじんまりとした印象になってしまった。ラストもありがちで子供っぽい。しかし、それを補うほどにテーマ性に満ち溢れた良い作品だった。 [DVD(字幕)] 9点(2005-09-20 12:33:14) |
6. ヴィレッジ(2004)
注意>この映画を見る前にあまりネタばれレビューを読むことはお勧めできません^^ 英国風ののどかな田園風景のなか、村で生活している人々。誰しも平和に生きられたあの時代、一生続けばいい、と思わずにはいられませんでした。まったく基礎知識もなく(あってもわからないと思うけど。ネタばれしない限りは)観たので、ものの見事に良い意味で期待を裏切ってくれました。あの人々の不幸を思えば、このひとときの幸せも、否定することはできないと思います。なにより、憧れますね。 [DVD(字幕)] 9点(2005-08-16 07:53:03) |
7. 千と千尋の神隠し
あいも変わらず宮崎流タッチ。 どこかで見たようなキャラと風景たち。しかしだからこそ伝わる思い。人々の生きる力とその活気。 自分で歩き始めた幼い少女の切なる思い。 素晴らしいの一言でした。そこには重いメッセージは皆無ですが、ちょっと勇気をだせば必ず出来ることの大切さが伝わってきます。 9点(2004-09-16 13:19:56)(良:1票) |
8. ファイト・クラブ
全ての男共は野生に餓えていた。そして、何かを壊したがっていた。 存在する総てを。築いてきたものを。 そして己自身をも。 只一人、それさえも利用し、己を破壊するための目的として蔑む奴がいる。 それは、俺なのか、奴なのか、 答えは己を破壊したときに解るだろう。 そして、俺は目を、見開いた。 その答えを、俺のものとするために。 全編に渡り、二人の男の壮絶な生き様が展開されていく、 これは男のドキュメント・ムービーといっても過言はないだろう。 絶えず主人公の視点から指示される演出と構図。 逃げ惑う自身の影をあざ笑い、そして奮い立たせる男。 自身からの脱出。一歩先を行く男。 これは男を破壊するに足る、十分な映画だ。 9点(2004-09-16 03:35:40) |
9. バットマン ビギンズ
《ネタバレ》 他の監督ともまた違った、演出や構成にかなり満足いく作品でした。 ティムバートンのバットマンがもちろん一番ですが、それはヒーローとしてのバットマン。人間の心理を巧みに利用した「メメント」や「インソムニア」を監督したクリストファー・ノーランのバットマンは、「人間」としてのバットマンを見事に描いている。 アメコミからバットマンは好きでよく見ていましたが、ゴッサムから消えたバットマンが、再び街に戻ってきた彼を描くフランク・ミラーのバットマン「ダークナイト・リターンズ」のリアリズムが、色濃く反映されている様に思え、好感が持てる。 クリスチャン・ベールの笑顔が、若い頃のトム・クルーズに似ていてなかなかいい。 次回があるなら、また彼に演じて欲しい。 おしむらくは渡辺謙のまるで友情出演のような出方。相変わらず巧い英語に惚れ惚れするものの、格闘の立ち回りはズームばかりで(この映画全体にいえる事だが、格闘場面ではズームやブレ演出が多すぎ、純粋に演技を楽しめない。)彼じゃなくても良かったのではないかと思う程。それ以外を覗けば、僕の大好きな俳優ルトガー・ハウアーも出ているし、リーアム・ニーソンもかなりカッコイイ。バットマンギミックも凝っているのでファンにはたまらない、そんな結構良い作品。 [DVD(字幕)] 8点(2007-06-17 03:47:36)(良:1票) |
10. セルラー
序盤からテンポのいい演出ですぐに引き込まれ、飽きない。何よりアイデアを判りやすく最大限に引き出し見せているので、感情移入し易い。カリフォルニアの美しい景観とすさまじいアクションのギャップも面白いし、主人公の一所懸命な演技につい手を貸したくなる。しかし、「トランスポーター」でおなじみのジェイソン・ステイサムが悪役なので、正義感ステイサム好きな僕にとってはちょっと違和感があった。あの目の奥にある優しそうな輝きはやはり真の悪役には向いてないのかな、と思いつつ、しかしキレのいいアクションや演技に惚れ惚れ。爽快感のある、かなり小気味良い作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2007-05-09 05:31:35) |
11. SPIRIT スピリット(2006)
《ネタバレ》 ジェット・リーの格闘映画出演最後となる作品らしく、かなり気合が入った作品でした。 ストーリーは単純かつ明快なのだが、それがかえって好感が持てた。 その分主人公の気持ちに入り込めたし、また素直に行動を共にできる。 「お互いが戦い、高めあい、自らに打ち勝つ」この教えを、なるべくワイヤーアクションを使わず体一つで表現するリーの演技には感動。ヒーローやザ・ワンにハデさでは劣るものの、最後を飾るに素晴らしい演出と構成。ただ、何故そこで中村獅童なのか、イマイチ説得力に欠けますが、演出で補っているので余り気になりませんでした。格好良かったし。しかし、リーの功夫がもう見られないのかと思うと残念ですが、ワイヤーアクションやCGをフルに使って老体にムチ打つようにアクション映画を作られるよりかは、渋い大人の演技で、格闘の無いカッコイイ演技派俳優になっていく事を期待します。まだ42だし。 [DVD(字幕)] 8点(2007-03-12 00:45:44)(良:2票) |
12. ファイナル・デッドコースター
《ネタバレ》 シリーズ3回目、期待して見たら期待通りの出来でした。 しかし、主人公にどうも同調できない。1,2と主人公自ら行動し謎を解いていくに対し、3の主人公は殆ど考えない。直感のみ。死が刻々と迫っているのに直前でしか対処できないのはイライラさせられた。まあ、そこが今回の狙いなのかも。後、警察側からの観点がまったく描写されてなかったので、学生達が殆ど勝手に奔走。縛られない自由な感じを出したかったのかもしれないが、まとまりがなく、眼で追うだけが精一杯。文字通りジェットコースター的。そういう意味では大成功。とにかく、皆の壮絶な最後がやはり面白い。 [DVD(字幕)] 8点(2007-02-26 00:57:52) |
13. サイレントヒル
《ネタバレ》 ゲームを映画化したもので、最初に完全に描ききった作品が多分これではないか、と思うほど忠実に、かつ独創的に出来上がっている。出てくる登場人物は殆どそのままだし、まるでいじる必要がなかったと言わんばかり。その上であえて主人公を男性から女性に変えたことで母性愛が発生し更に深みを与えた。例えばバイオハザードの、ヒロイック的な脚色は一般には向くが、ゲームファンとしてはある意味ガッカリだった。描くべき方向性を変えてしまったからだ。しかしこの作品には、その失敗は無い。ゲーム世界のあの異様・異形・異界、それを一人さ迷う恐怖。愛する子を必死に探すのみ。それらを全て描ききっている。そしてSFXに一切の妥協が無く、残虐さに戦慄し異様な美しさに愕然とする。少女の、最後のあの笑みが魅力的だが最高に恐怖を覚えた。そう、物語はまだ終わってない。 [映画館(字幕)] 8点(2006-08-02 04:04:29)(良:1票) |
14. キング・コング(2005)
幼い頃1976年版キングコングを見て、あまりの怖さにトラウマとなった。以来同映画はまったく見なかったが、いい大人になった今、今作品を見た。驚くほど感情豊かで、しかもはっきりとした意思をもって行動する大きなゴリラは、まったく恐怖の対象ではなかった。ドキュメントでゴリラと共に生活する人を見た所為もあるかもしれないが、ちょっと乱暴で不器用な人間の様なゴリラを、ありのまま表現した感じで、大変親しみが持てる。アンと共に楽しそうにしているコングを見ている内、いつしか幼い頃のトラウマなど吹き飛んでしまっていた。人間の身勝手な欲望に振り回されるコングに共感し、そしてそれを悲しむアンの憂いを含んだ美しさに惚れ込んだ。もちろん映像的にも素晴らしく、恐竜と怪物のどこかで見た戦いをそのまま普通に表現せず、実に独創的に立体的に描ききっている。CG量が余りに多い為、実写と3Dの合成に無理がある描写も多々あるが、ありとあらゆる挑戦に挑んだ意欲作である事には間違いは無い。監督が前作に捧げたのも頷ける。 [DVD(字幕)] 8点(2006-07-19 16:51:45) |
15. ダーク・ウォーター
《ネタバレ》 邦画オリジナルに比べ、ホラー色がほとんど無くなったが、テーマ性の描写としてはかなり成功していると思う。子供時代に受けたトラウマを、自分の娘にだけはは同じ目に遭わせたくない、という葛藤と現実。しかしその容赦ない現実の厳しさ、過酷さが、孤独で弱い母親にのしかかる。それだけでも悲しい話なのに、更に追い討ちをかける展開。邦画版では怖さが目立って、あまりこの過酷な状況に目がいかなかったが、いい意味でリメイクに成功していると思った。序盤の展開は構図からシーン進行から全て邦画と同じで、意味あるものと思えなかったが、だんだん変わっていくので、その辺が見所といえる。とにかく、とりまく全ての連中が冷たい。そして無関心。社会の現実を、まざまざと見せ付けられた秀作でした。そしてエンディング、邦画でやっていなかった事をやってくれて、本当に良かった。少女の涙に泣き、そして最後に胸を張って去る少女に泣いた。 [DVD(字幕)] 8点(2006-06-12 01:20:54) |
16. フェイス/オフ
怒り、憎しみ、悲しみ、その感情全てを共感できる。そういった感情的にのめり込められる映画は、ロックアップ・コンエアー以来だ。とにかく、最初はこの変な演出手法に戸惑ったが、ハマルと凄い、感情の奥が垣間見られるアクション心理サスペンスだ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-09-13 20:24:59) |
17. ブレーキ・ダウン
最初まるっきり「激突!」のパクリかと思ったが、どんどんそれとは違う方向へ話が進む。スピード感もあり、サイコ的な緊張感もある。カートラッセルのたどたどしいアクションがなかなかリアリティがあり共感できる。「激突!」を超えた、とはいかないが、見事に追随したともいえる秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2005-09-13 19:33:15)(良:1票) |
18. ピアノ・レッスン
エイダを演じる女優の名演がたまらない。男を拒絶する氷のような女性が、男を愛する様になるにつれ、女性として生き生きとしてくるところなど、艶かしい魅力を感じる。そしてただひたすらに、彼女を思う男(スモークの頃からファンの)ハーベイ・カイテルが情熱たっぷりに演じているのも好ましい。 [DVD(字幕)] 8点(2005-08-19 08:11:17) |
19. パリ空港の人々
パリでもなく、ましてそれ以外の国でもない場所。それが空港である。パスポートを失い、身分を証明できなければそこを出ることはできない。美しい街パリを思い描きながらも、パリではない場所にいる人達の人間ドラマ。一人一人の人生が心に刻み込まれる、美しい作品。 [DVD(字幕)] 8点(2005-08-19 04:42:17) |
20. 感染
《ネタバレ》 つじつまが合わないとか、矛盾しているとか色々あるけれど、単純に怖くて楽しめる作品でした。むしろそういう矛盾点をわざと残したようにも思えます。なにせ、現在見えている色は本当の色とは限らない、と言っているんですから、、。 [DVD(字幕)] 8点(2005-06-24 17:37:01) |