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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 823
性別 男性

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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  トイ・ストーリー 《ネタバレ》 
おもちゃに対する愛情と、おもちゃを愛してくれる子ども達に対する愛情に溢れた作品。 おもちゃが動き回るという夢のような世界が展開されており、このような気持ちはいつまでも忘れてはいけないと感じさせてくれる。 また、そういうえば自分が遊んだおもちゃ達はどこに行ってしまったのだろうとどこか切ない気持ちにもさせてくれる。 さらに、冒頭のアンディがおもちゃと遊ぶシーンは、アメリカの子どもも日本の子どもも変わらず、万国共通なのだろうか、どこか懐かしい感じにもさせてくれる作品だ。 おもちゃとともに遊び、おもちゃとともに成長していくのは普遍的といえそうだ。 ストーリー自体は、隣家からの脱出と引越の車への到着という取るに足らないものなのだけれども、他のアドベンチャー作品にヒケをとらない“激しい冒険”を堪能できるというのも不思議な仕掛けだ。 悪ガキの日光による攻撃や、飛ぶことのできない翼などを事前に描いておいて、それをきちんとオチとして回収するのは心地よく感じる。 1本のマッチを使って、ロケットを発火するのだろうと思わせておいて、一旦観客をドキドキさせるようなテクニックも見事といえる。 また、ウッディとバズというまさに正反対の性格の“二人”が繰り広げる見事なバディムービーだ。 自分の居場所を奪われたと思う者と、自分をヒーローと思う者という組み合わせは過去に例がないであろうほどの新鮮な面白みを与えてくれるとともに、自信やアイデンティティを失ったバズを救ったのは、ウィディであり、アンディの愛情(足裏に書いた名前)であったことはどことなく感動的でもあった。 他のキャラクターもただのお飾りではなくて、高い個性を感じられる。 ピクサーの製作陣が一つずつにきちんと愛情を込めたのだろう。
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-31 22:35:28)(良:2票)
2.  ボーン・コレクター 《ネタバレ》 
途中までは本格的なサスペンスを堪能することができ、結構良かったと感じていたが、オチの付け方を完全に誤ったような仕上りとなっている。 犯人に対して面白みが何もなければ、頭脳戦を繰り広げていたのに、ただの肉弾戦で終わるというのも面白くもない。 ナイフを使って殺したいのならば、このような無駄な苦労をせずに、もっと以前に可能だったのではないかというツッコミを入れられるような作品に対しては高い評価ができない。 「証拠捏造」「人間トイレ」がどうのこうのと、色々と語っていたが、犯人の動機も目的も理解できず、それほど悪くはない作品が全て台無しとなった。 それなりの知能犯と思っていたが、結局のところ昔の書物に書かれていたことを実行していたに過ぎないというのも面白くない。 全体的に犯人を追い詰めるという感覚がなく、犯人の掌で転がされているうちになんとなく事件が終わってしまったという感覚だ。 したがって、スリリングではあるものの、どことなく緊張感が欠ける作品となっている。 また、冒頭は尊厳死をほのめかしていたものの、ラストでは疎遠となっていた姉や姪と再会したり、アンジェリーナ・ジョリーと恋愛関係気味となったりと、一転して和気あいあいとしたほのぼのとした感じで終わるというのも、「これで良いのか?」という気がしてくる。 本作においては、“誰が犯人であるか”というよりも“現場の状況から犯人が残したヒントを探り出す”という点に重きを置かれていることは分かる。 それならば、スピーディーに処理するのではなくて、もう少し観客と共にじっくりと現場や謎解きを共感できるように演出した方がよかったかもしれない。 もっとも、紙の切れ端のパズルを解決したとしても面白くないネタではあり、もう少し工夫する余地はありそうだ。 オチやストーリーは面白くないが、デンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーが好演している点は評価したい。 特に、アンジェリーナ・ジョリーが喜怒哀楽を上手く表現していた。 ただ、父親を自殺で失い、恋人と上手くいかず、自分に自信も持てずに憂鬱そうにしていた割には、途中からは一転して優等生に変わってしまった点は物足りないところではあるが、本作においては十分光を放っていたといえる。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2010-08-16 22:22:20)
3.  踊る大捜査線 THE MOVIE 《ネタバレ》 
マニュアル主義、プロファイリング、官僚主義、責任のなすりつけ、中間管理職の限界、ネット犯罪、サイコ犯罪、少年犯罪、犯罪とゲームとの同一化、家族間の乖離、男と男の友情など、様々なことを盛り込んだ割には意外とまとまっていることに驚かされる。 ラストの重傷及び敬礼が余計という気がしないわけではないが、なんとかして盛り上げようとする製作者の意図であり、“映画”としてはぎりぎりでアリというところではないか。 稚拙で単純という手法かもしれないが、目くじらを立てるものでもない。 現場や所轄を無視して、マニュアルにこだわり、上層部の意見にふりまわされる挙句に、全体像が掴めず、誘拐捜査が難航する辺りはなかなか面白い。 「羊たちの沈黙」のように小泉今日子に相談するシーンがやや突飛すぎるかもしれないが、マニュアルや既存概念を超えてみろというメッセージとも受け止められる。 現場を徹底的に洗い続けた結果、犯人に辿り着いた和久の捜査や、真下や雪乃によるネット捜査による成果もマニュアル主義を批判している。 また、副総監と和久、室井と青島という脈々と受け継がれるキャリアとノンキャリアの友情や、捜査の在り方を変えたいという熱い思いが感じられるようにもなっている点も評価したい。 自分の若かりし日を思い出すような和久の暖かい眼差しも印象的だ。 閉鎖的な警察機構、上司の命令を聞かなくてはいけない組織体系、責任の所在を曖昧とする行政組織の体制の中で、自分の理想を実現できないというもどかしさや苛立ちを抱える室井と、「室井さん、指示してくれ」と叫ぶ青島との関係性や信頼性が見事に描かれている。 警察機構の中で身動きが取れなかった室井に対して、青島なりのやり方で室井の背中を押したということがきちんと伝わってきた。 そのおかげで降格を免れない事態に陥ったが、きっと這い上がってくれると室井のことを信じているのだろう。 リハビリを懸命に続ける姿から、自分は現場で頑張る、室井は偉くなるために頑張って欲しいという青島の決意が感じられる。 改めて見直してみると、結構“熱い”作品だったと感じさせる。 10年近くが経過した後の新作と比べると、その“熱さ”に対する落差が残酷とも言える。 せっかくの優良コンテンツが単なるおふざけになってしまったことが残念でならない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-07-17 23:05:22)
4.  ハートブルー 《ネタバレ》 
評価が非常に難しいが、良くも悪くも個性的な映画に仕上がっている。 事件の捜査よりもスカイダイビングやサーフィンを重視するという斬新さ、登場人物の行為が一切理解できないムチャクチャで強引な展開、キレのある追いかけっこなどで随所にキラリと光る演出等には意外と夢中になれる。 既存の刑事モノや覆面捜査モノ映画の公式には則らず(お約束には従うところもあるが)に、好きなことを好きなように撮るというのは大事なことかもしれないと感じさせる。 追いかけっこはなんとか撮影できるかもしれないが、スカイダイビングやサーフィンをここまでキレイに撮影できるのかと感心させられもする。 かなりムチャクチャなストーリーだが、才能のある者は細かいことには気にしないのだろう。 ルールに従っていない映画だけに、パトリック・スウェイジもルールに従わずにもっともっと弾けてもよかったとも思わせる。 「時計じかけのオレンジ」のアレックスのようにもっとクレイジーになってもよかったか。 彼を撃てない、彼を逮捕できないというように、規格外の彼の魅力にキアヌが惹かれる要因をもうちょっとアピールして欲しいところ。 パトリック・スウェイジがまだまだ“ノーマル”だと思わせるところが多い。 彼がもっとクレイジーになってくれれば、強引な展開も何もかも許されてくるようになるのではないか。 キアヌはあの程度でもよいだろうが、パトリックに毒されて、彼もルール無用のクレイジーになったと感じさせてくれれば、彼の最後の行為も納得できそうだ。 パラシュートなしでのスカイダイビングだけではなくて、ドーナツをおもむろにホウバル、大事なところでヒザが痛み出すなど、冒頭からクレイジーな資質を見せてはいるが、今一歩何かが足りない部分もある。
[DVD(字幕)] 6点(2010-03-28 13:51:42)
5.  フェイク 《ネタバレ》 
実話をベースにしているということもあり、非常に生々しく描かれている。通常のマフィア映画には、どことなく華やかで金回りがよく、ドンパチをすき好んでいるというイメージがあったが、本作のマフィアはせこくてしょぼい。決して、華やかな世界というわけではないということがとても面白い。作り物のフィクションとは異なり、苦労や人間味を感じられるため非常にリアルだ。 マフィアの実態だけではなくて、潜入捜査の実態もリアルに描かれている。常に限界ギリギリの精神状態にある様をジョニー・デップが非常に上手く演じている。夜間に自分の部屋のモノを突然ぶち壊していたが、そうしたくなる衝動が伝わってくる。いつバレるかと不安な日々を過ごし、いつ殺されてもおかしくない追い込まれた状況に陥る。逃げたくてももはや逃げることすらできず、本物のマフィアのメンバーになり切るために自分自身を殺して、自分の精神までも汚していかざるを得ない。「靴を脱ぐ脱がないという日本料亭でのいざこざ」「船の記事」「自分の知り合いとの突然の出会い」といった断片的ではあるが、そういったエピソードが彼を追い詰めていることもよく分かる。 彼も追い詰められているが、もちろん彼を支える妻もまた追い詰められているのがよく分かる仕組みにもなっている。いつ連絡がくるのかも分からない、イベントがあっても家に戻ってくるのかも分からない、いつ殺されるのかも分からない、いつ捜査が終わるのかも分からない。家族の存在が、ジョー(ドニー)の支えかもしれないが、それほど簡単には支えられるものではないという家族の苦悩も垣間見られる。 また、ドニーとレフティの関係も一つの見所となっている。お互いを信じられないマフィアという世界において強固な絆・信頼性を築くというのは本当に難しいことだろう。純粋なマフィアではなくて、潜入捜査官だからこそ出来たのかもしれないが、こういった矛盾がまた面白い。「お前だから許せる」というレフティの言葉がとてつもなく重く感じられる。本来ならば、マフィアの中では“駒”として生きなくてはいけないが、逆にFBIの中で“駒”として生きており、マフィアの中では“仲間”として生きている。レフティとは親友や親子のような絆を築けたが、FBIではメダルと現金のみという締め括りも皮肉めいている。成果をあげた捜査ではあったが、何かがおかしいと投げ掛けているようだ。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2009-12-13 22:29:28)(良:2票)
6.  ニクソン 《ネタバレ》 
この時代について詳しいわけではないので、はっきり言って誰が誰だか完全には分からなかった。 また、本作に描かれた内容が事実に即しているのか、中立なものかを判断する尺度も持ち合わせていないので、そういった観点からも批評はできない。 決して面白い映画ではないと思うが、映画自体のレベルは非常に高いと感じられた。 確かに、焦点はボヤけているとは思う。 本作では「ニクソンはこういう人物である」とはっきりとは描かれていない。 「ニクソンは最低の大統領だ」と一義的に決め付けて、その方向に向けて製作することは簡単かもしれないが、あえてオリバー・ストーンは方向性を決め付けずに多角的な視点からニクソンを描き出そうとしていると感じられた。 父親、母親、兄弟との関係、妻や娘との関係、部下や支持者との関係、戦争を反対している若者との関係、他国の指導者との関係など余すところなく描かれている。 ニクソンという人物が薄っぺらく描かれているのではなく、かなり深みが増して描かれている。 そのため、本作を見たそれぞれが、それぞれの思いでニクソンをジャッジできるのではないか。 賛否両論のある者を描く際にはもっとも適したアプローチをオリバー・ストーンは行ったと思う。 Wikipediaを読んだ方がよほどマシと思える映画ではなく、やはり彼の手腕は本物だと感じられた。 ニクソンについてよく知らないので、あまり書くべきではないが、本作を見た印象としては、「白を黒と言い張り、黒に変えてしまうほどのパワーのある政治家」のような気がした。 まさに政治家らしい政治家といえるかもしれない。 政治家として黒と主張すること自体は悪くはないが、貧困な家庭環境等の影響のためか、根底となる“魂”が歪んでいたような気がする。 彼の外交政策は評価するところが多いにも関わらず、彼が嫌われた理由としてはその辺りにありそうだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-17 22:07:25)
7.  シャロウ・グレイブ 《ネタバレ》 
劇的な展開はラストまで繰り広げられず、ダラダラとした部分も垣間見られるが、それがなかなかいい味になっている。 彼らは一応「友達」という設定であるので、“金”のためにいきなり殺し合いをすることはない。 大金を手にした途端に、彼らの中で劇的な変化はいきなり生じないが、今まではキレイに回っていた三者の“歯車”が微妙に狂い始めて、徐々に“金”という悪魔に“友情”が蝕まれていくような“不気味さ”が上手く描かれている。 メガネが死体切断を自分だけで行ったために、メガネが総ての苦労を背負ってしまったことが要因だろうか。 処理を行ったことによる後遺症に悩んでいるのに関わらず、能天気で浮かれる二人を見て、キレてしまったのだろう。 苦労をして手に入れた“金”は全部自分のものとでも思ったのではないか。 本当の友達であるならば、三人で協力して行い、全ての苦労も分かち合えば、こういう結果にはならなかったということか。 ギャングや警察の登場により、三者のパワーバランスが徐々に崩れていき、三者の亀裂が徐々に大きくなるところも面白く描かれている。 結論やオチもそれなりには面白いものとなっている。 捻りのあるユニークなオチであるが、彼らの中に勝利者を生んでしまったことはやや引っかかるところはある。 金を山分けせずに隠したメガネ、リオに高飛びしようとした女医、金に細工をした新聞記者、三者ともに友達を信頼していないのである。 その中で、彼だけが勝利者たるに値する人物というようには描かれてはいなかった。 むしろ、三者ともに破滅に向かうというオチでも良かったかもしれない。 勝利者を生ませるということは、「友達を信頼できるかどうか」というテーマとやや矛盾してしまうところもある。 確かに、彼は大金を独り占めしようとするよりも、「アパートを出て行った者負け」という展開に持ち込んだので、他の二人よりもある程度はマシな部分は垣間見られるが。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-10 21:41:05)(良:1票)
8.  ユージュアル・サスペクツ 《ネタバレ》 
過去に鑑賞したことがあるので、ネタを知っている状態で再見。 ネタが分かっていても、ぐいぐいと引き込まれる仕上りにはなっている。 過去や現在、真実と虚偽が入り混じる複雑なストーリーではあるが、再見してみると、それほど複雑でもないことが分かる。 絡まった線のように見えて、解き解そうとすると意外とシンプルで分かりやすい。 また、絡まり方も複雑で堅くなっているのではなく、誰でも解けるように丁寧に易しく絡まっていると思われる。 しかし、いくつかの謎や辻褄が合わないところも散見されてしまう。 一番の問題は、ソゼが逃げられる状態でありながら、わざわざ捕まって、警察に嘘八百を並べ立てることとだろう。 「ソゼ=キートン」と警察に誤認させるという目的があったと考えることもできるが、納得はいかないところではある。 しかし、これを否定すると、映画が成り立たなくなるので、深くは考えない方がよい。 辻褄が合わなくなることは承知で、こういう映画は構成されているので、粗を探すよりも単純に鑑賞する方が面白いと思う。 ネタに関しても、それほど嫌悪感はなかった。 「誰がカイザーソゼであるか?」ということをメインにして、観客に問うているのであれば、この結末に対して、ぶち切れるかもしれないが、本作のメインは「事件の顛末」を解き明かすことであると思われる。 ネタが分かっていて鑑賞していたためか、「真犯人は誰かを予想する」「どういうオチかを予想する」類の映画とはやや異なる方向性で製作されている気がした。 なかなか見所のある映像的なカットも多い点が特徴。 ブライアン・シンガーのことを完全に理解しているわけではないが、彼らしくないスタイリッシュなカットも評価できる。 ケヴィン・スペイシーの演技も素晴らしく、彼の怪演があったからこそ、これほどの映画史に話題作となったのだろう。 そういう観点からも高い評価はしたいところだが、驚かされるものの手放しで評価したくなる映画でもない。 ネタを知っていたにせよ、知らなかったにせよ、何か足りない部分はありそうだ。 これに何かを付け加えるのも蛇足となるので、そういう意味では完結しているともいえるが、何かが足りない。 他の映画のネタバレができないので、ここでは書けないが、オチが素晴らしい映画とされているものにはオチだけではなくて、それ以外にも重要なことが描かれていた。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-21 02:09:09)(良:1票)
9.  イグジステンズ 《ネタバレ》 
クローネンバーグ監督の「ビデオドローム」を見ている人ならば、この世界観をより理解できるだろう。 「ビデオドローム」の世界を別の角度から、分かりやすく描いたような仕上がりとなっており、クローネンバーグ監督の入門編ともいえる作品かもしれない。 本作を見てもダメならば、「ビデオドローム」は見ない方がいい。 クローネンバーグ監督作品を自分はあまり多くは見ていないが、この独特の世界観には上手くハマることはできた。 「ビデオドローム」同様に、現実の世界と虚構の世界との区別がつかなくなることに対するクローネンバーグ流の警鐘ともいえる作品となっている。 虚構の世界において、主人公がゲーム感覚の人殺しをヒロインに諌めておきながら、現実の世界において、主人公が躊躇なく人殺しをしてしまうところに、クローネンバーグ流の強烈な皮肉を感じる。 虚構の世界において、ゲーム感覚の人殺しの問題点に気づくということ自体もひとつの虚構ということなのだろう。 虚構の世界で感じた善の意識など、しょせんはまがい物であり偽善でしかない、現実の世界において何一つ影響を与えないということかもしれない。 ただ、一方で虚構の世界におけるゲーム感覚の人殺しは、現実の世界において影響を与えたり、問題となっている。 善の感覚は現実に影響しないが、悪の感覚は現実に影響するというのは、矛盾しているようで矛盾していないのかもしれない。 思った以上に、本作は哲学的にはなかなか深いのかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2008-07-04 23:13:05)
10.  ブギーナイツ 《ネタバレ》 
アンダーソン監督は素晴らしい才能の持ち主だと分かる作品だ。 凡人の監督が本作を監督しても、これほど面白い作品には仕上がらないはずだ。 独自の世界観や映像を追求するだけではなく、王道的な“流れ”をきちんと踏まえている点も好感がもてる。 「導入」→「成功」→「綻び」→「失敗」→「再生」という非常に分かりやすい流れを辿っている。 自分らしさを上手く出しながら、観客が楽しめる作品に仕上がっているのは流石だ。 また、驚異的なのはバランスの良さだ。 これほど多くのキャラクターがいるのに、どのキャラクターも光を放っている。 そして、どのキャラクターも心の闇が映し出されている。 しかも、主人公をないがしろにするわけでもなく、主人公にも完全にスポットを当てているのが恐ろしい。 2時間掛けても1人のキャラクターすら描くことができていない作品が多いのに、これほど多くのキャラクターをきちんと描くことができるというバランス感覚のよさは素晴らしい。 そのキャラクターを演じた俳優陣も凄い顔ぶれだ。 当時はそれほど有名ではなかったのかもしれないが、これほどのメンバーが一同に介するとは驚きだ。 素晴らしい作品だが、あえて文句をいえるとすれば二点ある。 一点目は、監督と主人公の仲違いの理由がイマイチなのが、ややもったいないところだ。 単に横柄な態度によることで仲違いになるのではなく、もうちょっとドラマティックな展開でもよかったのではないか。 例えば、芸術性も何も理解していないのに、芸術性の違いによって監督と衝突させてみたり、ビデオ参入を決めたことに対して抗議したりというような展開でも面白いだろう。 作品が素晴らしいのは“スターである自分”が出演しているからであって、監督を含めて、その他は無用の存在という思い上がった姿勢をもうちょっと違う角度から描いて欲しかった。 二点目は、偽クスリを巡る銃撃戦があったが、あの部分は蛇足気味のような気がする。 主人公が駐車場でボコられて、監督に謝罪するという流れでも話はすんなりと通るのではないか。 一方、監督側の方も、企画モノの撮影の際に素人をボコボコにしたことで監督の傷も浮き彫りになっていたところである。 両者の傷が上手く融合することで、仲直りというクライマックスに持っていくこともできる。 あの爆竹が鳴る家の銃撃戦を挟むと、やや流れが悪くなったという印象を持った。
[DVD(字幕)] 7点(2008-05-19 22:30:22)
11.  危険な遊び(1993) 《ネタバレ》 
二人の子役の演技自体は素晴らしい。 プロットも悪くはないが、深みがまるでないのが問題だ。 単なるホラーモノの仕上がりであり、これでは殺し屋を子どもに置き換えただけではないか。 やはり、マコーレーの内面を描かなければ、意味がない作品だと思う。 単純に「母親の愛情を独り占めしたい」という欲求からの行動と思いながら鑑賞していたが、そういうニュアンスを醸し出しながらも一歩踏み出してはいない。 これでは、ただの悪戯のエスカレートという見方しかできない。 本作の内容ならば、動機や心理的な面に触れないと、個人的には高い評価はしたくない。 作者が狙ったのかどうか分からないが、非常に後味も悪い幕引きとなっている。 (嘘ではあるが)「I LOVE YOU」と叫ぶ実の子どもを見殺しにして、他人の子どもを助けるというオチの付け方はなかなかショッキングなものだ。 作中では軽く触れられていたが、まさか「母親の霊が乗り移った」わけでもないだろう。 甘い仕上がりとなるが、最後の最後で悪人が善人になるというパターンでもよかったか。 マコーレーが「I LOVE YOU」と母に告げて、自ら手を放すようなオチにすると、後味はぐっと良くなる。 マコーレーも実は寂しい子どもだったと観客にイメージさせることもできる。 「オーメン」のようなホラーならば、“悪魔のような子ども”というイメージでもよいが、そういう趣旨とは思えない作品だ。 大人が殺し屋の場合、突然の更生には違和感を覚えることもあるが、子どもの場合には更生する機会を与えてもおかしくないだろう。
[DVD(字幕)] 5点(2008-04-14 00:31:40)
12.  ブレア・ウィッチ・プロジェクト 《ネタバレ》 
アイディアと演技とやる気さえあれば、金を掛けなくても良作を撮れるという一例だ。 完全にフィクションと分かっていても、ドキュメントと勘違いしてしまうような臨場感や設定を評価したい。 夜襲などはあったが、下手にイベントやストーリーを付けずに、“得体の知れないもの”に対する恐怖感のみで、90分程度を乗り切った演出の努力も認めたいものだ。 目に見えるものを描くのは簡単なことだが、目に見えないものを描くのは、それほど簡単なことではない。 訳の分からないオチの付け方も逆に良いのではないか。 あれよりマトモなオチの付け方も考えにくい。 “訳の分からなさ”が鑑賞後にも、尾を引くように計算されていると思われる。 もし、仮にラストでウイッチが実体を表して、彼らを襲うというようなオチを描けば、恐らく興が醒めていただろう。 最初から最後まで、いっさい実体を表さないのは悪くないアイディアだ。 きちんとした実体を描くのがどちらかといえば“アメリカ式”(具体例:殺人鬼・ゾンビ)であり、こういった実体を描かない手法は、イメージとしては“東洋式”(具体例:幽霊・呪い)のような気がする。 日本ではこういった手法による恐怖は好まれるかと思ったが、意外と評価が低いのは意外だった。 低評価をした人を非難するつもりは全くないが、ぶち切れるほどの酷さや手抜き感、オフザケ感は感じられなかった。 カメラの揺れが生理的に合わないという点もあるのだろうか。 「凄い凄い」と騒がれて、ブームに乗って鑑賞したら、「なんじゃこりゃあ~!」という内容だったので、拍子抜け感や裏切られ感が強かったのかもしれない。 ミニシアターで「知る人ぞ知る作品」として本作としては扱われた方がよかっただろう。 メジャーになるべき映画ではなかったかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2008-04-03 00:29:49)
13.  ブラッド・シンプル ザ・スリラー 《ネタバレ》 
「ブラッドシンプル」は、バーテンの黒人を除けば、主要メンバーは4人のみというシンプルな映画となっている。 構造としても、単なる不倫を巡るトラブルというシンプルなものとなっている。 しかし、シンプルなはずなのに、何もかもが複雑化しているという面白い映画だ。 主要メンバーの4人とも何が起こっているのかを全く理解していない点が面白い。 探偵は、ただ金が欲しかったという動機だろう。 そして、無くしたライターを不倫男に奪われたと思って、取り返そうとしているだけだ。 不倫された店主は、殺しを依頼したはずなのに逆に殺されようとしている。 しかも、目の前には銃を発射した探偵ではなく、憎い不倫男がいる。 ひょっとしたら探偵と不倫男がグルだったと思って、彼は死んでいったのかもしれない。 不倫男は、女が夫を殺したものと思い込み、全てを丸く治めようと奔走して疲弊し切っている。 すべて女のためにしたはずなのに、女はトボけて真相を話そうとしない。 やはり夫が語っていたように、利用されただけなのかと疑心暗鬼になっている。 女は、何が起きているのかさっぱり分からない。 不倫相手が夫を殺そうとしたと思っているが、逆に最後には夫が自分達を殺しに来たものだと思っている。 見事なまでの複雑さだ。 脚本の上手さを感じられる。 果てには3人が死んでしまい、この事件の真相を知るものは誰一人として残っていないのも面白い。 そして、注目すべきはやはりコーエン兄弟の演出としての手腕だ。 3発の銃弾によって緊張感が見事に高められている。 また、見事な撮影方法にも魅了される。 例の銃弾の跡のシーンだけではなく、光と影の使い方が実に上手い。 実体が見えない“影”に、見ている者も怯えるものとなっている。 さらに、足元からじっくりと映し出す独特の撮影方法もより緊張感を高める効果を発揮されている。 畑から走り出す車の美しさ、ラストに死にゆく探偵が見たもの、何もかもセンスの良さが感じられる作品となっている。
[DVD(字幕)] 8点(2008-03-16 02:29:33)
14.  バスキア 《ネタバレ》 
つまらはないが、面白くもない映画。 面白くない理由は、バスキアの「人生」や「苦悩」があまり見えてこないからだろう。 彼の「人生」の苦悩は確かにきちんと描かれてはいる。 貧乏時代の友人を失い、愛してくれた恋人を失い、支えてくれた画商を失い、「成功」を手に入れたはずの男がどんどんと「大切なもの」を失っていく。 「成功」したことによって、豊かになるのではなく、どんどんと貧しくなっていく様がきちんと感じられる。 また、自分の生い立ちにコンプレックスをもち、成功しても黒人ゆえに“下”にみられてしまうことが彼の人生に悲劇を生んでいるようにも思える。 偽札かどうか調べられるというキャビアの購買エピソードは面白いものだった。 レストランでの食事の際にも、白人の金持ち連中に自分がバカにされているのではないかと疑心暗鬼になり、彼らの分まで彼らに知らせずに払うという方法でしか、自分を満足させることができなくなっているエピソードは彼の人生を描き出していると思う。 そのように精神的に貧しくては、アーティストとして優れた作品を残すことはできないのだろう。 ヘロインによって身を滅ぼすのが分かる仕組みになっているが、肝心の彼の姿がどこか薄く感じてしまう。 大きな理由としては、他のキャラクターがあまりにも強烈なインパクトを発揮しているので、主人公の姿が見えてこないのではないか。 シュナーベル監督は画家だけあって、作家ではないというのが分かる。 主人公の内面を深く深く掘り下げて描くことはできていない。 一方、面白く感じられる理由は、まさに画家というビジュアル面の面白さだろう。 ウォーホルの死を聞き、取り残される「アヒル」がまさに画家的な描き方ではないか。 「夜になるまえに」ほどではないが、映像の面白さはやはり天性の才能を感じられる。 だが、肝心のバスキアのアートがあまり美しく描かれていない気がする。 本作を見ても、バスキアのアートがまったく印象に残っていない。 印象に残っているのは、冒頭のピカソのゲルニカ、中盤のウォーホルの小便アート、終盤のオールドマンが演じた画家がキャンバスに大量の陶器のようなものを貼り付けたアート(シュナーベルの得意分野)である。 バスキアの芸術の凄さではなく、他の芸術家の凄さしか感じられないのでは、「バスキア」という画家を描いた作品としては評価することはできないのではないか。
[DVD(字幕)] 6点(2008-03-16 02:15:42)(良:1票)
15.  恋人たちの食卓 《ネタバレ》 
メロドラマ風な安っぽさも感じるが、それぞれのエピソードが意外ときちんと有機的に機能しており、優れた映画として評価できる。 「親の気持ち子知らず」、「子の気持ち親知らず」というテーマがきちんと描かれていたのではないか。 父親としては、それぞれの娘に早く自立してもらいたかったのかもしれない。そうでなければ、三人の娘全員を大学に通わせたりはしないだろう。 二人が結婚し、もう一人も自立の目途が立ったので、ようやく行動に出たのではないか。 娘たちに自立してもらいたいが、娘たちに対する「愛情」も持ち合わせている。 日曜日の晩餐はその不器用な「愛情」の表れだろう。 しかし、父親のそんな気持ちを知らずに、長女と次女は父親の世話を重荷に感じながら、気まずい関係に陥っているのが、映画にとっていい味にもなっている。 長女の大学時代の失恋話も、次女(と自分自身)を納得させるだけの口実に過ぎなかったのかもしれない。 一番早くに実家を出たかった次女が、結果的に三女、長女、さらに父親よりも遅くまで実家に残るという構造が見事だ。 ラストも実に秀逸だ。「親の気持ち子知らず」、「子の気持ち親知らず」というテーマが見事に昇華されている。味覚を取り戻し、次女のスープの味が分かることで、「子が父を思う気持ちに、父が気付いたのではないか」と感じさせるものとなっている。 本当に美しいラストである。 やはり、アン・リー監督はアカデミー賞を受賞できるほどの才能を持ち合わせていると感じることができる。 撮影方法に関してもセンスの良さが随所に感じられる。 よくありがちな手法だが、レストラン内の撮影も見応えがあり、料理も非常に美味しそうに撮れている。
[DVD(字幕)] 7点(2008-02-11 01:59:43)(良:1票)
16.  クライング・ゲーム 《ネタバレ》 
事前情報を全く知らずに鑑賞したため、かなり驚かされることとなった。 ファーガスがジョディ(ウィテカー)に「(ディルと)結婚しているのか?」と問い掛けたときのジョディの返答から、確かに違和感を覚えたが…。 鑑賞中は「写真よりも実物は意外と大したことないなぁ」と思っていたが、その直感は間違いではなかったようだ。 だが、単なる驚きを与えるばかりではなく、「性を越えた恋愛」、「人間の性(さが)」などをきちんと描いた傑作だ。 ジョディはファーガスが「カエル」だと分かっていたのだろう。 だからこそ、ファーガスにディルを託したのではないか。 ディルはまさに「サソリ」だ。 「カエル」がいなければ、人生という名の川を渡れない。 もし、ディルの秘密が分かったとしても、ファーガスは自分の背中からディルを振り落とすような真似はしないと、ジョディは分かっていたのではないか。 ファーガスは「カエル」だが、ただの「カエル」ではない。 「サソリ」に刺されても、「サソリ」とともに川の底に沈むのではなく、「サソリ」も生かして、自分も生きようとする「カエル」だ。 この「サソリ」と「カエル」のカップルは、肉体的には結び合えないかもしれないが、感情面においては、強く結び合っているのが、よく分かるラストだ。 誘拐した側と誘拐された側ですら、分かり合えたのであるから、ファーガスにとってはディルと分かり合うことなど難しいことではない。 それこそがファーガスの性(さが)だろう。 一番分かり合えなかったのが、自分の同志というのが、皮肉な結果となっている。 それにしても、フォレスト・ウィテカーが凄い。 「ラストキングオブスコットランド」でアカデミー賞主演男優賞を獲得できたのは伊達ではないようだ。 「ラストキングオブスコットランド」の演技よりも、本作の方がインパクトがあり、非常に印象に残る素晴らしい演技だった。
[DVD(字幕)] 8点(2008-01-10 21:35:27)
17.  グレムリン2/新・種・誕・生 《ネタバレ》 
ハルクホーガンのシーンだけは見ておいて損はない。あれだけは素晴らしいアイディアだと思う。何も知らず映画館で是非あれを体験してみたかった。ハルクホーガンというプロレスラーにあの役をやらせるのも、なかなかセンスのよいチョイスではないだろうか。今の日本ならば、「長州小力」にやらせるようなものか。 悪趣味ともいえるかもしれないが、前作をパロッて、様々な映画をパロッて、おまけに自虐的という世にも不思議な映画に仕上がっている。 モグアイ達に様々な個性を与えて大繁殖させて、「ニューヨーク、ニューヨーク」の大合唱の間にすべてを抹殺。確かにメチャクチャだとは思うけれども、これだけ潔く金掛けてやってもらえば批判する気もなくなる。バカバカしさを超越した、このような映画を創れる人はジョーダンテしかいないのだろう。 とてつもない進化を遂げたのはモグアイ達だけでなく、本作も子ども向けの人気映画から一気にマニア向けのとんでもないメチャクチャなコメディに進化していると思う。ある意味で、前作よりも印象には残るだろう。
[DVD(字幕)] 4点(2006-12-31 00:06:28)
18.  トータル・リコール(1990) 《ネタバレ》 
バーホーベンらしく、映像にはこだわりが感じられる。この時代に、よくここまで映像化できたものだ。また、バーホーベンらしいグロさもSFストーリーによくマッチしている。 問題は、本作のすべてがリコール社の創り出したクエイドの夢かどうかという点だろう。 すべて「夢」であった方がバーホーベンらしいとは思うが、普通に観た限りは、「夢」のようで「夢」ではなく、全部「現実」だったのではないかと思わざるを得ない。 「夢」として観た場合には、リコール社でのやり取りを詳細に描きすぎたため、どうしても無理を感じてしまう。この部分も実は「夢」であったという解釈もできるが、クエイドは気を失っているので、やはりその説明が難しいだろう。「以前、火星に行ったことがあるようだ」というリコール社の社員のセリフも矛盾する点だ。 リコール社の社員と妻役のローリーが火星にいるクエイドを訪ねた際の「汗」についても、本作が「夢」であればストーリーとして活きてこないシークエンスだ。 また、火星における作り込みに手が込んでおり、ラストには爽快感もあり、「夢オチ」という流れにはもっていきづらいのではないか。 個人的には、もっと「夢」「現実」のどちらの解釈でも可能なほどに曖昧にしておけばよかったと思う。 そうすれば、同じ原作者の「ブレードランナー」のようなディカードは人間か、レプリカントかという論争が起きたかもしれない。 本作において面白い点は「夢」「現実」論争よりも、「植えつけられた仮の記憶による自分」が「本来の自分」を凌駕していくところではないかと思う。 「偽りの自分(クエイド)」が「本当の自分(ハウザー)」を捨てて、偽り(コーヘイゲンを裏切りレジスタンスに加担してコーヘイゲンを失脚させる)が真実(コーヘイゲンを倒し、火星を開放させる)となっていくところだろう。 「本当の自分」よりも「偽りの自分」の方に居心地のよさを覚えてしまうという感覚は面白いと思う。 「夢」「現実」とは別に、そういう意味においても「記憶」の曖昧さという点はしっかりと描きこまれている。
[DVD(字幕)] 7点(2006-12-30 23:56:21)(良:1票)
19.  恋人までの距離(ディスタンス) 《ネタバレ》 
非常に上手いなと唸らされる映画。 出会いから別れまでを1日程度で無理なく描けている点が見事だ。 国籍も違う見知らぬ旅人同士が、二人にとって見知らぬ地ウィーンで、徐々に惹かれあう過程(視聴室での二人、観覧車の二人は見事)、本音をぶつけあう姿(ピンボールを交互にプレイする二人、親友への擬似電話を掛ける二人は見事)、そして別れをじっくりと堪能できる。彼らの約束と別れたあとの二人の表情が余韻を引きずる。花火のようにパッと燃え上がった恋が、一瞬で静まり返って、お互いが冷静に振り返るいくばくかの時間と二人が過ごした場所が静かに映し出される点がとても印象的だ。 恐らくジェシーはこのままアメリカに帰ってもこの出会いを引きずるだろうと思われる(一度スペインとの遠距離恋愛で失敗しているのに、再び失敗を繰り返すのが男の悪くもあり、良いところだ)。 一方、セリーヌも最初は渋い表情をしているが、徐々に笑顔を取り戻している。彼女の中で、別れの苦しみというよりも美しい思い出として記憶されたのではないか。やはり、女性の方が切り替えはかなり早いようだ。 また、この二人が再開するかどうかの余地が残されている点はたいへん面白い。鑑賞者の恋愛感によって、又は性別によって、二人が再開するかの考え方は異なるだろう。続編を無視して、自分の目線で判断すると、男はまた必死に旅費を貯めて、半年後ウィーンに戻ってくるだろうなと思われる。女はどうだろうか、一概に判断はつかない。恐らく直前まで悩むのではないか。戻ってくるかもしれないし、戻らないかもしれないという女性ならではの不可思議さが描かれていると思う。 さらに、男と女が対比的に描かれている点も面白い。男はやはり子どもっぽさがあるし、ヤリたがる。また、見栄を張ったり、つまらないことに腹を立てる一方で、とても現実的な点がある(ミルクセーキの「詩」は最初からできていたのではないかと夢のないことを言ったりもする)。 女は幸せな環境に育ったとしても、何かに怯え、どこか満たされない想いを抱え、その不安をなんとか埋めたい、人生を実りあるものにしたいとと願っている。やはり、現実的な考えよりも、ロマンティックな考えを優先している。 考え方や性格も異なる二人だけれども、惹かれあわずにいられない男と女の関係の不可思議さを感じられる素晴らしい作品だ。
[DVD(字幕)] 8点(2006-12-22 22:53:30)(良:1票)
20.  007/ワールド・イズ・ノット・イナフ 《ネタバレ》 
ドラマ性や人間性を重視しようとした意欲作。しかし、アクションとドラマのバランスを失し、ものの見事に中途半端な作品に仕上がった。 やや貫禄はついたがボンドも中途半端、Mの誘拐も中途半端、心の痛みを感じないエレクトラも頑張ったが中途半端、エレクトラを本気で愛していたレナード(肉体的な痛みを感じない)も中途半端、ドクタークリスマスはギャグだろう。彼女の魅力を最大限に引き立てる服装を考えての結果だと思うが、核物理学者にあんな服装をさせるというセンスを疑う。 本作の最大の見所というのは、ボンドがエレクトラを撃つということだろう。ボンドが女性(しかも愛した女性)を正面から銃で撃つのは始めてではないか。番外編の「ネバーセイネバーアゲイン」で危機一髪のところでファティマを特殊アイテムで撃ち殺したくらいしか記憶にない。「サンダーボール」のフィオナに対しては敵からの射撃の盾にしただけだし、「ゴールデンアイ」のオナトップに対しては、未必の故意によるものだが飛行機事故を利用したものだ。ボンド史に刻まれるであろうこの一大イベントがあのような結果に終わったのは残念でならない。あの場面ではエレクトラを殺しても、殺さなくても状況は変わらない(むしろ、殺さない方がレナードと交渉できたかもしれない)。このシチュエーションでただ撃ち殺すという行為の代償は、彼に「冷酷さ」「非情さ」のイメージを与えるものだ。製作者の意図はそこに尽きるのだろう。 しかし、これは単なる殺しであって、あまり効果的ではない。自分にはなぜこのシチュエーションでMを使わないのかという疑問しか沸かない。エレクトラがMを盾にして、「銃を置かないと殺す」と脅せば、彼女を殺す大義がうまれる。エレクトラを撃つことにやや躊躇するボンドにMが撃つように諭せば、Mの役割や彼女誘拐の意義も生じるだろう。自分の魅力を使ってなんとか寝返させようとする理想主義のボンドと、現実主義のM、戻れないところまで来てしまったが葛藤するエレクトラの三者の演技を光らせる絶好の機会だったが、製作陣はあまり深みを描くことを放棄したようだ。 二作目の「ロシアより愛をこめて」以来17本に登場し、作品にユーモアとファンタジーさを添えたQは本シリーズで不可欠な素晴らしい存在感を示していた。我々に二つの言葉(弱みをみせるなと逃げ道を残しておけ)を残して見事な去り方をされたと思う。
[DVD(字幕)] 4点(2006-12-01 23:38:07)
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