1. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 「良い映画か」と聞かれれば、残念ながら違う。 マフィア一家の仁義的なものが展開されるだけの物語である。カメラワークや構成には特段語るところはないように思える。重く閉塞感の漂うストーリーである。 しかしがながら「好きな映画か」と聞かれたら、それはもう圧倒的に好きだ。 マーロン・ブロンドの強烈な存在感。あの擦れた声はとりあえず真似してしまうだろう。これだけキャラクターが際立っている映画も珍しい。マーロン・ブロンドが喋っているだけでうっとりする。大好きだ。 加えて音楽が素晴らしい。かつてミッシェル・ガン・エレファントのライブの登場SEではゴッドファーザー愛のテーマが必ず流れていたが、彼らの音楽と通じるところがないでもない。 [ビデオ(吹替)] 10点(2009-11-27 00:27:32) |
2. エレファント
《ネタバレ》 通信販売で銃が簡単に手に入るアメリカ社会の構図だとか、虚構と現実の区別が付かなくなってしまった若者だとか、あっけなく失われていく命の重みだとか、観た人が語るべきポイントは沢山あると思うのだけれども、僕にとってはそんなことどうでもよかった。 学校という場が持つ閉塞感、永遠に思えるざらついた時間、そのとき窓越しに見た空の色。「リリイ・シュシュのすべて」と似た、昔の自分と重なるような、息が詰まる感覚に襲われた。そして、おそらく、その棘は未だ抜けきれていない。 [DVD(字幕)] 10点(2008-01-07 20:00:22) |
3. ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生
《ネタバレ》 ゾンビ三原則「走らない、喋らない、考えない」の原点。自分だったら、こうすれば、と妄想が膨らんで膨らんで破裂してしまう不朽の名作。黒人やか弱い女性を主人公にするあたりにロメロ監督の主張があるのだろうけど、はっきり言ってそんなもんはどうでもよいのである。無数のゾンビがヨタヨタと阿呆みたいに歩いているだけで大満足。ゾンビが好きだ。 [地上波(字幕)] 10点(2006-12-29 21:37:16) |
4. HANA-BI
《ネタバレ》 花火は刹那に散る。けれど人が散るのは簡単ではない。生きている限り、しがらみとか世間とか、そういったものが厭でも周りを取り囲む。そういうモノゴトから少しずつ離れていく主人公の姿が、悲しくて、うらやましかった。 最後の銃声は、あれは花火を打ち上げた音だったのかもしれない。 [ビデオ(邦画)] 10点(2006-12-26 12:54:10)(良:2票) |
5. ゾンビ/ディレクターズカット完全版
《ネタバレ》 一体何度観ただろうか。自分だったなら、もしもこうだったなら、そんな妄想を何百回繰り返しただろうか。デパート内をヨタヨタと阿呆みたいに蠢くゾンビの姿は、とてつもない恐怖でもあるし、滑稽でもあり、時に悲哀すら感じさせて、同じくらい阿呆だった中学生の僕を完璧に打ちのめした。喜怒哀楽すべてが詰まった奇跡的な映画。 [ビデオ(吹替)] 10点(2006-12-24 20:14:34) |
6. あの夏、いちばん静かな海。
《ネタバレ》 北野監督本人も言ってるように、人は本来ほとんど喋らない。映画だからといってやたらと饒舌になる必要は全くないわけで、静かな映画、という感想はやはり的外れになるんだろう。 エンドロールが終わっても響いている波の音に聞き惚れ、二人が歩く姿にただただ見とれた。 [ビデオ(邦画)] 10点(2006-12-22 20:59:06) |
7. CUBE
映画を観る人は登場人物に自分を重ね合わせる。自分ならどうするか。何を考えるか。何を信じるか。自分の現在、過去、未来と照らし合わせ、鑑賞する。そもそも映画とは、そのためにあるのかもしれない。 この映画が他の映画と一線を画するのは、その点。イマジネーションを喚起する無限大の閉塞。そのために創造された状況。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-12-21 18:46:46) |
8. Kids Return キッズ・リターン
《ネタバレ》 ラストシーンのセリフを前向きと取るか後ろ向きと取るか、そういうことがよく書かれているけれど、それは観た人が自分の人生をこれからどうするのか、どうしたいのか、どうあるべきなのか、それによって決まるのであって、映画の中に答えがあるわけではないのだ。 弱々しくて、脆くて、それでも、どうしようもなく気持ちが高揚する。傑作。 [ビデオ(邦画)] 10点(2006-12-21 18:40:33)(良:3票) |
9. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 二人が言葉を交わさなくて良かった。余計なセリフを一言でも入れていたら台無しだった。青い、夢見るように美しい太平洋で再会した二人。数十年という年月の重みが溶ける瞬間、最初に口をついて出る言葉。こんなにも静かなのに雄弁に語りかけてくるラストシーンを他に観たことがない。 [ビデオ(邦画)] 10点(2006-12-21 18:38:19) |
10. リリイ・シュシュのすべて
もう5年も前になるのか。劇場の大きなスクリーンに映った田園の緑、青空に舞うカイト、葬列の赤が、今でも目に焼きついている。 思うに、この映画においてストーリー云々はどうでもいい。キャッチコピーにある「14歳のリアル」なんかもっとどうでもいい。現実にはなかったけれど、でもこうあってほしかった、こうあってほしくなかった、そんなシーンの断片。 [映画館(邦画)] 10点(2006-12-21 18:33:17)(良:1票) |
11. 第9地区
《ネタバレ》 予告編も見ずに行ったのもあるけど、不思議な映画。 冒頭からよく分からない。だけれども引込まれる。 意外にグロいなー、と思いつつも展開から目が離せない。ありがちといえばそうなのだけど、憎いラストシーンの数秒。 シリアスさとコメディーっぽい部分とチープなCGがうまく融合して、分類不能な物語になっている。この絶妙な配合具合は(おそらく)狙ってできるものではない。 なので、この作品を差別がどーのとか書いている人を見るとなんか違う気がする。 あえて言うならば全てに対する愛です、愛。 [映画館(字幕)] 9点(2010-05-11 19:49:40) |
12. 青い車
《ネタバレ》 小説、漫画、映画はそれぞれ表現できることが異なっていて、長短あるけれどどれも素晴らしいものである、ということが如実にわかる作品。 原作は、よしもとよしともとの傑作なのだが、あの間、余白、切なさは、当然のことながらよしもとよしともの漫画でなければ描けなかった。 しかしながらこの作品単体で言うとこれはもう素晴らしい。宮崎あおいの笑顔。宮崎あおいの仕草。宮崎あおいの憂いの表情。宮崎あおいの制服姿。宮崎あおいの流れる髪。宮崎あおいの指先。どれを取っても宮崎あおい好きに捧げるプロモーションビデオである。 ああ、最後のあたりが我ながら気持ち悪い。 [DVD(邦画)] 9点(2009-11-21 10:50:32)(笑:1票) |
13. tokyo.sora
《ネタバレ》 東京に暮らす数人のオンナノコの日常を断片的に描いた作品。日常であるだけに、そんなに大きなことも起こらないし、セリフも少なく、説明もあまりない。観る人にとっては極めて退屈な映画かもしれない。例えが適切か分からないけれど、魚楠キリコの漫画の雰囲気、というのがいちばん手っ取り早いか。 しかしながら、登場人物がこんなに愛おしいと思った映画は他にない。確かに、この映画の中で呼吸している、生きている、ということが画面越しに伝わってくる。何気ない間、何気ないセリフ、そして映し出される東京の空がとても切ない。 小説家を目指している人のエピソードが個人的には一番好きだ。 [DVD(邦画)] 9点(2009-01-06 22:37:15) |
14. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 こういう系統の作品は、驚かせた後に、いかに登場人物のその後を想像させることができるか、いかにもう一度観たいと思わせるかが勝負どころだと思うのだけれど、これは見事に成功している数少ない作品。 アイディア自体は数限りない小説や映画で観られるありきたりなものだけど、飽きさせない脚本で見事に物語が動いている。描かれていくバッドテイストなラストシーンの最後の最後に、あんなに切ないエンディングを持ってくるところが白眉。細かい粗を探せばキリがないけれど、僕はこの作品が好きだ。 [DVD(字幕)] 9点(2008-12-28 21:22:43)(良:1票) |
15. アヒルと鴨のコインロッカー
《ネタバレ》 原作がとても好きな作品だったから今まで観るのを避けていたのだけど、これは良かった。配役、音楽も素敵なのだけど、一番感服したのが、井坂幸太郎の小説の雰囲気を映画で堪能できたこと。さらっとした語り口で、現実離れしていて、意外なトリックもありつつ、切なく終わる。そういう小説の持ち味を、本当に巧みに表現していてビックリした。 だから、現実離れしているとか、人間の描写が犠牲になっているとかいう批判は、映画だけしか観ない人のものであって、少なくとも僕にとっては的外れなんです。 [DVD(邦画)] 9点(2008-02-16 23:39:32) |
16. 28週後...
《ネタバレ》 ストーリーとか登場人物の気持ちなんかはどうでもいいんです。 そういうのに拘るのなら小説を読めばいい。 荒廃したイギリスの街並みと、無数の虐殺。 廃墟に見られる美しさというか、空虚さを捉えた瞬間が素晴らしい。 褪せた色調、カメラワーク、そしてモグワイのような美しい轟音が一層拍車をかけて、 まさにスクリーンに映しだされた画、でした。 [映画館(字幕)] 9点(2008-01-20 21:27:19) |
17. マルホランド・ドライブ
わりと毎日吐き気がするので、医者に行って吐き気止めをもらったのだけど、その吐き気止めの副作用に「吐き気」があって、毎日の吐き気は止まったけれども、副作用による吐き気で毎日吐き気がする。どうしよう、と思って医者に行ったならば、「副作用による吐き気なので気にすることないですよ」と言われ帰宅するも、相変わらず吐き気は止まらない、どうしよう、というかんじ。わけの分からなさのなかにも一貫した論理がある。ような気がする。でもわけ分からない。そんなかんじ。 そしてこの文章の意味分かりますか。僕には分からない。 [DVD(字幕)] 9点(2007-01-27 22:37:20)(良:1票) |
18. Dolls ドールズ(2002)
日本の四季が色鮮やかに移ろう様は特別だ、とよく言われるが本当だろうか。安部公房は「どんな極寒の地にも四季の移り変わりはあって、日本人だけが特別なわけではない」ということを書いていた。でもそれは多分どちらも本当のことで、この映画は、日本人のための四季、それが日本人にとって特別であること、ただそれだけを映し出したフィルム。映像美。 [DVD(邦画)] 9点(2007-01-10 18:13:12) |
19. バッファロー'66
ギャロの趣味と美意識のみで撮られていて、だからギャロの独壇場、やりたい放題なのだけども、不思議と鼻につくところがなくて、褪せた色調が美しくて、音楽が素晴らしくて、雰囲気が微笑ましくて、うっかり自分には似合わない赤いブーツが欲しくなったりして、ああ、これは見事です。 [DVD(字幕)] 9点(2007-01-10 18:07:18) |
20. ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀
ゾンビ好きなので、作中のゾンビが走らず、喋らず、考えなければ、もうそれだけでかなり満足してしまう部分はあるのだけど、そういった部分を除いても、突っ込みを入れずに最後まで鑑賞できる数少ないゾンビ映画だと思う。オリジナルより良い部分もある。ゾンビの食事シーンやゾンビ狩りをするシーン、そしてホラー映画で女性が取り乱す場面が嫌いな自分にとって、強い女主人公という設定が何よりも良い。 [ビデオ(字幕)] 9点(2007-01-01 22:30:38) |