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1.  ブラック・スワン 《ネタバレ》 
終始何かに怯えた表情のニナが、凛とした余裕の表情を浮かべるラストシーンで、ようやくナタリー・ポートマンの顔になったことが印象的。私は鑑賞前、ストーリーはおろか監督すら把握してなかった(後から知って納得した)。前評判から何となく想定していたのは、主人公が役を奪い取るために色々策をめぐらしていく、舞台裏での黒鳥への変貌を追ったという物語。おかげで良い意味で裏切られた。とはいえ、無垢な存在のニナが自分を黒く染めていったのは私が想定した部分と重なる。ただ、母を裏切ったり、悪い遊びを覚えたり、突き刺したり、対象はライバルではなく、全て自分。「自分との戦い」というのはありふれた言葉だが、真実そうなのだろう。だが、それは高いところに到達した人にしか噛み締められない言葉である。プレッシャーや孤独に耐え、自分のなかの弱い部分を削ぎ落とす過程はライバルを蹴落とすことより苦しいはずだ。自分はどこまでも自分に添うものだから。だからこそ、自分に打ち勝ち「perfect」を手に入れたとき、何物にも代えがたい恍惚感を得る。当たり前のことだが、あの美しい表情はニナの表情であり、それを演じた、成功者ナタリー・ポートマンの表情でもある。俳優陣の名演は言うまでもないが、客観的にみたらベタな成功者の物語を、主人公の内面に肉薄することで下手なホラーよりよほど恐ろしく、禍々しい演出で描き、観客の感情をわしづかみにする監督のセンスはさすが。近年稀にみる大傑作だと個人的に思う。
[映画館(字幕)] 10点(2011-06-13 12:48:21)(良:5票)
2.  リアリズムの宿 《ネタバレ》 
映画で一番好きなのは?と誰かに質問されたら、これと答えるでしょう。山下敦弘という男、おそるべし。がつんと来ました。青春三部作はもちろん全部好きですが、回数としては本作を一番多く観ています。何度観ても笑います。山下監督の凄まじさは簡単には語りつくせないのですが、大きな魅力として緻密すぎる人物描写がまずあると思います。この作品における山本浩司の童貞っぷりはこっちまで恥ずかしくなるほど、たぶん童貞とはこうあるんだろうなあという、童貞の生態そのものです(前作では彼女がいる上に…自粛…だったのに!)監督もすごいけど、山本浩司はかなりの怪優。この人を発掘したという功績もあわせて考えると山下監督が日本映画界に与えた影響はかなりのものだと思っています。あと、乳首は女優が脱いだ基準なんていうどうでもいい持論(しかし結構的を射ているという。笑)をわざわざキャラクターに語らせるのも山下監督だからこそ。本当にとんでもないお人だわ。個人的には劇場公開作より遊び放題、やりたい放題ののOV(「不詳の人」など山本剛史関連作をはじめ…)のほうが好きだったりもするのですが、映画としては文句なしの一作。
[DVD(邦画)] 10点(2009-07-10 02:56:21)
3.  おみおくりの作法 《ネタバレ》 
ジョン・メイ演じたエディ・マーサンのルックスが、この映画の全てだといってもいい。穏やかで、実直で、いかにも役場にいそうな男。40代の男とは思えない脂のなさ。ジョン・メイが弔う死者たち以上に、生きているジョン・メイにつきまとう孤独のほうが、ずっとせつない。それだけに、今までの彼の生き方が肯定されるかのような、静かだがにぎやかなラストは心を奮わせる。驚いたが、ある意味序盤でなんとなく期待した場面だったので、そのとおりになって嬉しかった。
[映画館(字幕)] 9点(2015-05-03 13:58:50)
4.  ペコロスの母に会いに行く 《ネタバレ》 
認知症という状況自体は悲劇だと思うが、この映画は見事な人情喜劇に仕上がっている。森崎東監督の目線がとても温かいからだろう。たとえ惚けてしまっても、忘れたくないことや、大切なことが人にはたくさんある。生も死も老いもそこに美しくある。心に沁みる優しい映画だった。
[映画館(邦画)] 9点(2014-01-23 18:33:42)
5.  かぐや姫の物語 《ネタバレ》 
竹取物語のストーリーはうろ覚えだがもちろん知っている。何をいまさらアニメにするのかと、半信半疑で観た。観終わって、私が知っている古典のほうは、こんなにも生きることと死ぬことに肉薄した内容だっただろうか、と驚いた。近年ない感動だった。風立ちぬ本編の前に流れたこの作品の予告編で不覚にもぼろぼろ泣いてしまったが、それがなければおそらく観に行かなかったかと思う。近くに座っていたうるさい子供も「かぐや姫の死」(と私は捉えた)にはさすがに黙った。すべての人の心に訴えかける、そういう映画なのだと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2014-01-23 18:01:09)
6.  童貞。をプロデュース 《ネタバレ》 
二十歳をとっくに過ぎた童貞というのは私が今まで見聞きした範囲では、決して多くはないようだ。ある程度の年齢になれば大抵の人には普通に恋人ができ、自然にセックスを経験するからだ。所謂「ヤラハタ」の童貞くんは、その標準的なラインを大きく逸脱するだけの理由があるから童貞なのだ、ということがよくわかる本作。二部構成で二人の童貞の生態を探っている。ターゲットの二人は異なったタイプの童貞であるが、二人ともとにかく頑固で笑える。一作目も二作目も監督の編集センスが秀逸で、テンポよく入り込めるのだが、個人的に蛇足と感じたのは一作目エンディングで峯田和伸が童貞君作の名曲(?)「穴奴隷」を熱唱するシーン。童貞臭はあっても、れっきとしたバンドマンであり、女の子にもきゃーきゃー言われる彼が、ガチ童貞の無垢な世界に足を踏み入れてはいけないと思った。あと、映画館を出た時に、これまた童貞チックなお兄さん二人組が一作目について「童貞じゃなくなった過程を見せてくれなきゃ意味がない」と批判しているのを耳にした。私はそれには断固反対だ。童貞が童貞でなくなった瞬間、童貞はただの男になる。「童貞。をプロデュース」というタイトルどおり、いかに童貞(が童貞としての己の生き様に固執して生活している姿)が面白いか突きまくったのが本作なわけで、拘りを捨てた普通の男に用はない。実際、一作目のメガネ君の一年後の姿にはなぜか諦念のようなものが漂い、童貞だった頃の彼のある種の輝きは消失していた。なんとまあ童貞とは可笑しくていとおしい存在だろう。「童貞たちよ、恥じることはない、誇りを持て。君たちはビューティフル・ドリーマーなんだから」松江監督のそんな温かい眼差しを私は勝手に感じた。いやあ、私も童貞になりたいくらいだよ。二重の意味で無理だが。
[映画館(邦画)] 9点(2010-09-24 02:13:38)
7.  空気人形 《ネタバレ》 
印象が「TOKYO!」の一編、ミシェル・ゴンドリー監督の「インテリア・デザイン」と酷似している。モノ化する人間とヒト化する物体。どちらも途方もなく寂しいファンタジーだ。私にとって東京という街は特別である。渇いていて、クールで、美しい街。積年憧れてはいるが、住んだところでおそらく永久に融合できないだろうと思っている。この映画は私の憧れる東京のイメージそのものだ。身体に満ちているものが空気だろうが血液だろうが関係なく、人は誰かに使われて、いらなくなれば捨てられる。その結論はあまりに寂しいが、そういうものだから生きていられるのだと思う。観たときの気分かもしれないが、顛末があまりにも現実に正直で、非常に感銘を受けた。そしてなにより、ぺ・ドゥナがこんなに綺麗だなんて知らなかった。
[映画館(邦画)] 9点(2009-10-08 19:29:13)(良:1票)
8.  ダイナー(1982) 《ネタバレ》 
安いファミレスで何時間もだべるのは女性特有の現象かと思っていたけど、男の人も結局変わらないんだなとつくづく感じさせられた。気の合う仲間とは同じ場所で何時間だって共に過ごすことができる。これはとても素敵な真理だ。くるりの「男の子と女の子」という曲でも表現されているのだが、女には触れられない男の世界というのは確実にある。少々わかりやすすぎる描き方ではあるが、仲間のなかで唯一物語の最初から既婚者(名前は失念)の妻・べスの存在はとてもリアルだと思う。夫のマニアっぷりに付き合いきれない彼女は、夫の友情にも決して侵入できないし、それどころか、友情の和を乱す異分子になりかねない。愛情は友情を超えられないというか、別個のものとして存在するんだろう。それから、女の友情は脆いというけど、確かにこういう永久不滅!な友情は、現代の結婚制度が変わらない限り、女同士で成立させるのはなかなか難しいものかもしれないと思った。実に悔しいけれど。ラスト、ブーケを取り合う女たちを生温かく(?)見守る彼らの表情は、小憎らしいが愛すべきものだ。個人的には文句なしの1作だが、洋画ということもあり、俳優の識別やそれぞれの背景を理解するのに時間がかかったのが難点(しかし、見返すのも苦にならないというのがすごい)。
[DVD(字幕)] 9点(2009-06-07 05:00:00)
9.  百万円と苦虫女 《ネタバレ》 
蒼井優という女優の存在を初めて認識したのは「リリイ・シュシュのすべて」だった。そのとき何となく只者ではないという感じはしたが、この映画で私にとって彼女は唯一無二の素晴らしい女優というポジションになった。本作の不器用な主人公・鈴子はとびきりの美人であってはいけない。かといって勿論ブスでもいけない。どこか陰気な感じで、生きにくそうだが、その後ろ向きなミステリアスさや儚さがそれなりに魅力的にも見える。当然、万人受けするわけはなく、寄ってくる男も限定される。さらに二十代そこそこという年齢設定も考えるとこの鈴子を演じられるのは蒼井優以外に私は考えられない。監督が蒼井優の魅力と持ち味を最大限に活かし、また蒼井優もその意図に沿った結果生まれた素晴らしい映画である。だからといってこの映画が蒼井優の魅力のみで成立しているとは思わない。ストーリーも秀逸である。特にラスト。森山未來演じる青年の裏切りの理由解明が蛇足という意見には全くの同意であるが、前に進む鈴子を応援するかのようにすれ違いのラストを選んだタナダ監督の心意気(?)に感動。とりあえず笹野さんのマイクテクはツボだった。
[映画館(邦画)] 9点(2009-05-21 18:51:58)(良:1票)
10.  ある過去の行方
出てくる人間たちの関係性が会話などで徐々に明らかになり、彼らに何が起こったかも少しずつわかっていくという形式が、ジャンルが「ミステリー」となるゆえんだろうけど、大きな謎によって観客を引っ張るというタイプの作品ではない。とにかくキャラクターの言葉や行動にひきつけられる。とても丁寧で、真摯な作風だと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2015-05-03 14:54:38)
11.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 
中盤、空を飛ぶかつてのバードマン。でも実際はタクシーで夢を見ていただけだった(かのような描写がある)。全てを懸けた舞台の終わりに文字通り命を懸け、それでも生きなければいけないと知り、彼は、もう一度、飛ぶ。その姿は画面上には見えないけれど、彼は内なるバードマンに別れを告げ、バードマンの仮面のような湿布をはずし、何にもすがらずに、飛んだ。今度は本当に飛べたのだと思う。生き恥を晒しながら、笑われながら、ズタズタになっても、やめない。それが執念なのか、挑戦なのかわからないけど、とにかくしぶとくいることで人はもっと遠く、高いところまでいけるということだと私は解釈した。情けなくて馬鹿みたい、でも、すごくかっこいい、そんな映画だった。
[映画館(字幕)] 8点(2015-05-03 13:49:21)
12.  ゼロ・グラビティ 《ネタバレ》 
3Dで観た。ありふれた言い方をするならハラハラ、ドキドキがたくさん詰まった映画。しかしその楽しさは、映画的でない。よく言われているが、遊園地のジェットコースターのようなもの。とても珍しい体験だったと思うが、映画としてこれがどうだったのか、と問われると、正直評価はしづらい。状況は理解できても、キャラクターに接近できないからだろうか。登場人物の紹介はなされてはいるが、たとえばジョージ・クルーニーのあの勇敢さがどこからくるのか、私にはよくわからなかった。とはいえ、これだけのものを作り上げる技術は絶賛されて然るべきか。
[映画館(吹替)] 8点(2014-01-23 18:18:12)
13.  桐島、部活やめるってよ 《ネタバレ》 
この映画において名前のついた登場人物は、全員主人公になれるような存在で、「それ以外」にスポットのあたる作品が観たかったというのが一番の感想。しかし、これはこれだ。一見仲よさそうな女子グループ内の微妙な関係性の嫌らしさとかよく描けていた。イケてる人は結局イケてる人としかくっつかないという夢も希望もない現実が提示されるも、でもそれすら部活という青春によって昇華するラストシーンのあまりの眩しさに、こんなの嘘だ!と毒づきつつも、ただただ圧倒された。高校時代、自分の立ち位置なりにもっと楽しめばよかった。
[映画館(邦画)] 8点(2012-09-27 11:22:22)(良:1票)
14.  マイ・バック・ページ 《ネタバレ》 
山下敦弘監督はどこまでいっても、どんな俳優と組もうと、変わらない。彼の撮るもの全て、山下映画。結局はそこに落ち着くのだ、ということを見事に証明した作品。勿論、描いているテーマ自体はこれまでとは段違いに深い。何しろ学生運動だ。人が死ぬし、政治的だし、重い。しかしそれらが収束するところは結局人間の情けなさや弱さである。主人公たちはとにかくしょぼくて、ダサい。人間くさい。最後の妻夫木聡の男泣きシーンを見て、なるほど、これが撮りたいがための二時間ちょっとだったのだと納得した。余談だが、取り調べで言い逃れる松山ケンイチが山本剛史の演じる尾崎充や船木テツヲにみえたことにはかなり驚かされた。嫌味といえばの山本剛史よ、もっともっとメジャーになってくれ(ファンの切なる願い)。  
[試写会(邦画)] 8点(2011-06-03 12:16:04)
15.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》 
でんでんと黒沢あすか夫妻の壊れっぷりと、吹越満の小市民感(というか至極まっとうな人間感)、凄まじい殺戮の融合。なんだかもう、わけがわからんけど、とにかく園子温らしく、全体的に赤いイメージの、ショッキングながらもパワーがある映画だった。 個人的にはスプラッターやグロいのはあまり得意ではないけれど、シリアスではなくどこかポップでもある(たぶんこれが園作品の特徴なんだと思うが)から、二時間半の長い尺も楽しく観られた。吹越満による「生きるって痛い」という娘へのメッセージ、そして娘のリアクション。ひどいオチだが、だからこそこのメッセージも生きる。ところで、「アウトレイジ」もそうだったが、バイオレンス表現があまりにひどすぎると笑えるというのはどういうメカニズムなんだろう。ダチョウ倶楽部や出川哲郎のリアクション芸を見て笑うのと同じなのか。大量出血も肉片も見慣れてくる頃には観客の倫理観も完全に麻痺していて、現実的に考えれば法的にも心情的にも許されないようなシーンでも構わず爆笑が起こる。そんなサディスティックで不思議な空間にいたことも、体感として忘れられない。「この素晴らしき世界」はまさしく、映画館で体験するべき。  
[映画館(邦画)] 8点(2011-02-15 12:15:07)(良:1票)
16.  2/デュオ
演技は俳優一人の技術の問題のように思われがちだが、(一人芝居でもない限り)良い芝居が出来るかどうかは相手役にもかかっていて、役者同士がお互いに感情を動かし合うことで生っぽさが生まれるんだということを改めて感じさせられた。西島秀俊と柳愛里の距離感は設定の上なのだが、実際の恋人同士にしかみえず、また少しずつ変化していく関係性も、虚構っぽさがない。特に喧嘩のシーンの掛け合いは、痛々しいほどにダメカップルのもので、こちらの感情までかき乱された。もしもあのシーンに台本があったとしたら、いろんな意味で驚嘆ものである。この映画において監督がどういう演出を行ったのか、非常に興味深い。そして西島秀俊は元々エリートなのに、どうしてこう、ヒモとかイヤーな男がはまるんだろう。本作はストーリー自体に面白味があるとは思えないが、逆にストーリーをこねくりまわさずとも、人間を「リアル」に描くだけでありきたりな話が途端にドラマになるのだということが提示されている。ヒューマンドラマというジャンルにおいて特に、質の高い映画だと思う。とはいえ、個人的にマイナスだったのが各俳優のダイアローグシーン。監督は何を意図したのかわからないが、あの手法でかえってせっかくの「リアル」が胡散臭くなった気がした。
[DVD(邦画)] 8点(2010-09-23 00:28:53)
17.  の・ようなもの
人の日常って何か可笑しい。落語家という面白さに近い職業の人間たちの話だから滑稽なのではなく、この映画では団地の奥様だの、おませな高校生だの、他の凡人たちもみんなくだらないことに腐心し、生き生きと生きている。つまり、スーツ着て満員電車に揺られてる普通のおじさんの人生も負けず劣らず、多分面白いのだ。要は心の持ちようであって。この映画をそんな風に、のほほんと楽しんで観ていられる自分の感性を大事にしたいと思わされた。疲れるとぎすぎすしてくるもので…。非日常に憧れる、病める大人たちに是非観てほしい映画。特筆すべき見所は、風俗女を演じる秋吉久美子。この映画の秋吉久美子っていい女感が半端じゃない。太っ腹で姉御で、去っていくのもどことなく寂しげながら、さっぱりしていて。たかるばかりの弱い女でいてはいけませんなあ…たかる相手もいないけど。
[DVD(字幕)] 8点(2010-07-03 22:58:58)
18.  告白(2010)
原作を先に読んでいた者としての感想は、本作は最近の邦画やドラマにありがちな、いわゆる「原作レイプ」な作品ではないと断言できる。それどころか、原作の衝撃を独特の映像の質感(ところどころハネケっぽい)や音楽のチョイスでより鮮烈に魅せており、原作ファンは勿論、原作者の湊氏も大満足の仕上がりであるはず(興行成績的にもおそらくウハウハだろう…って下衆ですいません)。個人的には、「告白」という作品の内容は、あまり好きではない。青春モノであり、センセーショナルであり、人の心の暗部が垣間見え、主観と客観が丁寧に絡み合って真実が提示され展開していくストーリー、そして血が流れるという、私のツボ満載なはずなのに…。多分、浅いのだ。人の心というものを描いている割には結構説明的で。感情→行動のつぎはぎが雑。「馬鹿みたいに熱血な教師」とか、「マザコンの孤独な少年」とか、「親バカのバカ親」とか、登場するのがさらっとメモ書きしたみたいな、変人だがある意味ステレオタイプなキャラクター。人間らしさがなく、いかにも「キャラクター」で感情移入が難しいのだ。もっとも、一般人にはどう頑張っても共感できないような異端者なのだが。ストーリーの衝撃で大分カバーはされているが、人間ドラマとしてはいまいち。ただ、映画化したことで、文章では表現しきれていない微妙な部分が中島監督や俳優陣の解釈によって少し肉厚になった感はある。特に松たか子は好演している。冷徹さにも、隠し切れない母親の顔が滲むという演技は本当に素晴らしい。内容自体どうこうではなく、俳優の演技や監督の演出といった、技術的な面に高得点を差し上げたい。本当に、全体的に暗いストーリーにあえてポップな音楽を挿入したり、早回しなどの特殊効果を加えたりとユーモラスな演出をする中島監督のセンスは冴えている。嫌われ松子~も原作を先に読んでしまったので何となく観ていないが、この感じならちょっと観てみたい。
[映画館(邦画)] 8点(2010-07-03 22:23:38)
19.  セブンス・コンチネント 《ネタバレ》 
私はつくづくマゾだ。ハネケ監督の作品は観たくなる。鑑賞後の心のざわつき、何ともいえない不安感は観る前から確実に分かっているのに、観てしまう。そして案の定、それらにじわじわ苦しめられる。圧倒的ではない。緩やかに、穏やかに、真綿で首を絞められるというのはこんな感じか。本当に、凄い。往々にして、ある監督の一番有名な作品は、その監督のカラーが色濃く出ていないことが多いように思う。ハネケ作を全部観ていない私の感覚だが、「ファニーゲーム」のように、分かりやすく不快感を提示する映画は、監督らしくない気がする。この映画は、身も蓋もない表現をすれば単なる一家心中の話である。だが、それだけではない何かを観客は確実に受け取っている。どこにでもあるからこそ、分からなくもない。分からなくもないから、怖い。誰にでもある「日常」から、破滅が生まれるということだから。そして、このタイトル。破滅は希望なのか、始まりなのか。いや、そんな筈はない。だから、哀しい。虚しい。ハネケ監督の作品はなかなかお目にかからないが、機会があれば全部観たいと思う。でも、他の作品を観れば観るほど、多分、この「セブンス・コンチネント」こそが、ハネケ映画なんだ、という思いが強まっていくような気がする。
[DVD(字幕)] 8点(2010-06-15 10:41:04)(良:1票)
20.  ソラニン 《ネタバレ》 
一度ある作品を読んで以来、浅野いにおの作風がどうも私には合わないと思っていて、彼の作品全般を読まず嫌い。それでいて宮﨑あおいのファンでもアジカンのファンでもない自分が本作を鑑賞しようと思った理由は「ただ何となく」。しかし「何となく」で観た作品に、えらく泣かされてしまった。作り物めいた台詞や逼迫している割に生活感がないところなど、私の好まないサブカルタッチは大きなマイナスだが、何といっても宮﨑あおいである。女優として蒼井優と似たポジション、同い年ということもありたびたび比較される彼女だが、この作品に関しては蒼井優ではダメで、やはり宮﨑あおいというキャスティングがぴったりだったと思う。喫煙し、彼氏と同棲しているという生々しい状況にありながらも、あざといばかりにピュアで可愛らしいキャラクター。「百万円と苦虫女」の蒼井優と違って、多分性根が逞しいのだ。現実にいたら仲良くなれるかどうかは別として(私は苦虫女・鈴子とのほうが気が合うだろう)、宮﨑あおいの演じる芽衣子は非常に魅力的な女性である。ライブシーンもしっかり練習したであろうし、芽衣子としてもあおいとしてもしっかりやり切ったラストは説得力がある。愛する人と死に別れる映画は数多くあり、私はその殆どで泣けないと思うが、本作の場合、種田が死に向かった気持ちや、二人が抱えるどうしようもない閉塞感はまさに私も味わったことのあるもので、そういったこと全てひっくるめて、やたら夢見がちな自分のことのように悲しく、また僅かながらほっとする映画でもあった。個人的にはサンボマスターの方がなかなかいい味を出していると思った。
[映画館(邦画)] 8点(2010-04-21 22:29:22)(良:1票)
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