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サーファローザさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 111
性別 男性
自己紹介 日本映画好きです。以前、Yahooブログに1000本掲載していたのが削除されてしまいました(涙)DVDよりスクリーンで観た作品の方が点が高い傾向にあるようです。月に3・4回は東京にある名画座に通ってます。

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【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  裏窓(1954)
これは映画館で観たい作品ですよね。上映当時観ていたとしたら凄く衝撃を受けたのは間違いない作品。  カメラワークが凝りに凝っているし、他室の人間模様もしっかりと作り込まれていて、椅子に座って映画を観る客がまさにギブスの主人公の視点となって覗き見る感覚を味わえるのだと思うと、映画館で観たいと思った。 当然、台詞はありえないので人の動作で作る訳ですが、これが巧いですね。カメラワークと照明のテクニックが遺憾なく発揮されている。  最近、サスペンスものを観ていたので、主人公が犯人に仕立てられてしまう、そういうのを予想していたのだけど案外普通にクライマックスを迎えた。部屋に忍び込むグレイスケリーの行動力にびっくりですわ。普通行くか?    
[DVD(字幕)] 9点(2018-05-04 07:52:59)
2.  楊貴妃 《ネタバレ》 
昔映画館で観た時は寝てました。今回、DVDで鑑賞しました。 楊貴妃について詳しく解らない(鑑賞後に少し勉強)のですが、香港チームとのタックで脚本や時代考証にも向こうの名前があるので、考証は徹底的にやったんだと思いますし、それをしっかり再現しているのだと思われます。  しかし、それがこの作品では窮屈なものになった印象を持ちました。  楊貴妃が自らの意思で成り上がったわけではなく、担ぎ上げた楊一族が成り上がってそれが群衆・兵士達の不満・反乱に繋がる訳で、楊貴妃を「悲劇の主人公」として描く形。 溝口健二はこれまで女性内面の美や醜らを描写(献身愛・不義の愛、転落・復活、救済、、、)するのが上手いと思いますが、今回は、人形のような皇帝と貴妃ですので表面をなぞっただけになってしまった感が。それは、脚本が日本語は仕方ないとしても旧派調ぽい(確かに時代は古いが)というのもあるし、そもそもこの考証どおりの設定では描けないのかなとも思う。 いっそ、楊貴妃が民の不満や皇帝の安定ために成り上がった楊一族を断罪してしまうとか、逆に権力の恐怖がゆえに暴君となってしまうとか、史実と違えども彼女が変貌する契機を設けるか、もしくは、楊貴妃に絡む山村聰や進藤英太郎や山形勲のところをもっともっとエネルギーある悪人に仕立てないとなかなかキツイかなと思った。  最後のナレーションは雨月物語のようだし、雨月では改心した小沢栄太郎もこちらではのし上がって殺される役で本領発揮?だったかな。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-21 04:12:48)
3.  夕やけ雲 《ネタバレ》 
木下監督ほんと巧いわ。いちいち書くとキリがないので省略しますが、この家族のキャラクターや心情を描写する秀逸シーンが頻発。 序盤で魚の配達をする主人公の少年が居て、父が「自転車で行け」というのに歩いていく(後の姉の久我美子の台詞で「岡持ち振り回して行った」も出る)、その配達の帰りに小さな妹が出迎えて一緒に帰るのですが、台詞なしでカメラが遠目から追っているのが良いです。で、終盤に同じく少年が配達終えて傘を持って出迎えるシーンが出てきて、ここでは少年は拒否をしてしまうのですが、少年と小さな妹の心情を風情と併せてとても良く描けていると思った。  これも一例で、姉の久我美子の個性も脚本でもカメラでもしっかり作っているなあと感じた。 結婚して実家へ白いドレスで車で凱旋のはずが突如現れた元カレに頬をぶたれて、そのまま車で帰ってしまう、母のアップ、走って家に帰って嗚咽とかこれも巧いと思いましたね。  でも、久我美子のような美人が貧しい魚屋の娘だったら、そりゃ弟に押し付けて嫁にいってしまうだろうな。 母が望月優子だから貧乏滲みる絶品の演技だけど、対する久我美子の奔放な反応が作品としての真っ暗な中に光を与えていたと思う。  作品時間は短いのに、少年には様々な試練や別れがやってくるのだが、テンポよく無駄なシーンが少なくて物語として芯がとおっていた。  木下監督は器用にこなしてしまう印象で、同時期の小津、溝口、黒澤、成瀬ら(厳密には同時期ではないが)が後世まで評価されてるのに比べると木下だけが何か置かれた印象があるが、それは演出描写の「型」がない「型」の必要がないほど器用な監督だからではないかと思ってしまう(やや大げさに言えばだが)。私の点数もそういうところがあるのかな。
[DVD(字幕)] 7点(2018-01-15 11:36:43)
4.  雨月物語 《ネタバレ》 
観るのは5度目くらい。最初はVHSのvideoで画面もセリフも荒くて良く解らなかったですが、リマスターされた溝口健二生誕祭だったりDVDでも格段に見やすくなりました。カメラワークと光の使い方が凄すぎです。  森雅之と京マチ子の「朽木屋敷」のシーンは衣装・美術・照明・カメラ・音楽を含めての形式美が素晴らしい。溝口のサイレント作品時にはドイツの表現主義(ガリガリ博士等)に影響を受け「光と影」をかなり応用していたのですが、朽木屋敷でも姿を影で隠したりと伺えます。 また台詞を途中でフェイドアウトして流れるカメラで次のシーンを繋いだり、森雅之の入浴シーンでも京マチ子が着物を脱いで湯に入る所を影で描写し、カメラは逆の方向に流れてそのまま広い庭で寛ぐ二人へ繋ぐシーンなど絵巻のようだ。 カメラの連続移動で時空を越えるというのはテオ・アンゲロプロス監督ですが、影響受けたはず。  また、森雅之が故郷に戻ってからのシーンも秀逸で、森が家をグルッと一周するのを追うカメラワーク、田中絹代の陰影、彼女の表情と所作、それらが嵌り最高のシーンだと思います。これだけ計算してやられると俳優さんが大変じゃないかと思います。  なお、溝口監督は出来上がりに不満があったようで『「雨月」はもっとカラいものなんだよ。小沢栄の男ね、あれもラストであんな改心したりしないで、もっと出世を続けて行くように書いたけど、会社から「甘くしろ」と指示があった』と(キネ旬より)。 確かに男二人の欲の渇望からも、最後には見事に改心するという流れは溝口作品からすれば甘いと思ったのが、それでも前述の田中絹代のシーンで観る者を救済したのだからOKでしょう。 いずれにせよ、このような映画はもう作れないと思います。死ぬまで何度も観るのだと
[映画館(邦画)] 10点(2018-01-10 00:49:57)(良:2票)
5.  リリー
洋画は初投稿かも。この作品は特に好きなので。。。数年前の早稲田松竹の「ミュージカルミニ特集」で「ウエストサイド」と一緒に観ましたが、レスリー・キャロンの可愛さが物語にガッチリとハマったこの作品が当たりでした。うかつにも泣いてしまった。上映してくれた映画館スタッフに感謝です!
[映画館(字幕)] 8点(2011-02-23 19:24:28)
6.  白痴(1951) 《ネタバレ》 
「黒澤明生誕100年」ということですが、「七人の侍」「用心棒」などはもう充分に評価されているのだから、こういう松竹・大映で撮った作品にも評価・批評が欲しいと感じます。作品はかなり原作を踏襲されていると思います。特に、台詞なんて「劇?」と思うほど、役者の演技が脚本設定どおりに制限されているかに感じます。ただ、それは主役4人を除いての話。原節子・森雅之・三船敏郎と久我美子の演技が凄いんです。他の役者さんには申し訳ないが、四人の引き立て役です。 冷静に観ると、札幌の冬の中であんな日本人同士の恋愛・嫉妬劇がある分けないじゃないかと思うのですが、それが、それが、那須ターシャこと原節子と森雅之のすざましい演技を観るにつけて、もはやどうでもよくなる。上手く書けないのですが凄い。「赤ひげ」「生きる」「七人の侍」などの名作たる所以に、人や社会との関連を訴える必然があるのですが、この作品は、青年の純真無垢なオーラに回りの人間が 己の良心とエゴが衝突し、波紋を拡げる。その緊張感が凄くて、森雅之と原節子、久我美子、三船敏郎の素晴らしい演技でもって描ききってしまう強い力があった。そもそも、激しい嫉妬や憎悪というのはなかなか日本人として表現できない印象があるのですが、原節子と久我美子の終盤のやり時なんか、凄いですよ。皆、良心は持っているのに。。。黒澤作品の名作の殆どは「脚本の妙」というものが必ずありますが、この作品は『日本人・侍・日本社会』を描くという次元ではなく、『人間』(核心的なもの)を描いている崇高な作品。傑作であると思いました。やはり、原作を読んでから観るべき作品なんでしょう(原作をきちんと理解していない私が言うのも変ですが)。  フィルムセンターで近々上映があるので必ず見に行く。あと、完全版!出てこいや(笑)
[試写会(邦画)] 10点(2010-11-02 21:38:05)
7.  どん底(1957)
役者が強く喚いたり、強い主張をしたりする黒澤明の演出の一部にはロシア文学の影響を感じます。特にゴーリキあたり・・・この原作は未読ながら、やはり、劇のような台詞回しが黒澤演出を感じさせます。これが、時代劇であれば良いのですが、現代劇とかになるとどうも違和感を持ってしまう。それに、「白痴」でもそうなんですが、ロシアの原作をした場合、舞台設定が消化不良で役者達の巧い演技が作品の質をなんとか高めているような印象があります。山田五十鈴の狂人ぶりなどは、なんか日本・江戸?という設定とは離れているような気がする。面白いのだが私にはなにか引っ掛る作品でした。 私個人の推測ですが山中貞雄の「人情紙風船」を意識しているのかな?と感じさせるシーンがいくつかありました。山中貞雄はさらりとみせている(庶民的な世界)のに対し、黒澤明は力が入り過ぎているような・・・
[DVD(邦画)] 6点(2010-11-02 20:36:39)
8.  お嬢さん社長
川島雄三松竹時代の作品。お嬢さんのひばり嬢が菓子会社の社長になるのは強引だったが、専務に諌言したり、宣伝で番組に出演したり、会社経営を建て直す部分をしっかり描かきつつ、ドラマあり、歌あり、得意のユーモアとテンポまで加わり見応え充分の逸品と仕上っている。美空ひばりの才能を生かしつつ、所々に川島節を持ってきているのは流石。「美空ひばりを前に出して一本撮ってくれ」とまだ若くて力のない川島雄三が言われて、「ハイハイやりますよ」と撮った感じがする。 
[映画館(邦画)] 6点(2010-04-08 18:08:42)
9.  夢を召しませ
松竹歌劇団を総動員した豪華レビューもので、少女が夢を見るところからは完全に川島雄三ワールドが展開される。「陰を食べる」というは、陰陽を日常・非日常で揶揄しているのかもしれない。しかし、まぁ、相当ヒネクレテいるのだが、その分、ラストのミュージカルシーンが一層映えて皮肉にも見せ場になっています。  あと、早送りとスローモーションを1950年にやるわ、岡本喜八や市川崑よりも前にアニメーションを導入していたり、時代を先取りしている。それが、作品に活きているかどうかは別にして。  後期川島作品は完成された「変調」なのだが、松竹時代は本当、悪戯心とイマジネーションやリズムのみで持っていっており、そういう意味では川島ファンを釘付ける魅力を持っている。  しかし、まぁ数多くの目茶苦茶なシーンを川島監督はどうやって演出してたのだろうか?想像しただけで笑いが止まらない。
[映画館(邦画)] 4点(2010-04-08 17:53:20)
10.  羅生門(1950)
1950年製作ということを考えると凄い作品だと改めて思った。  人間が自ら弁護・主張する際の歪曲誇張(なにか隣の某国のようだ)、それが三人三様違うとしたら私も恐ろしくなってしまいます。しかし、それぞれのエゴあれこそが真実でもあるようにおもう。  ストーリーの妙が出色、大きな羅生門のセット・雨などの美術も出色、宮川のカメラワーク(志村喬が山道を歩く様子を回り込んで撮るシーン、疾走するシーン 等々)も出色、そして、三船敏郎・京マチ子・森雅之が場面によっては正反対の性格を演ずるのですがその演技も出色、場面場面で雨・汗・風を使う独特の表現も○と、この1950年の作品としてかなりのアイディアと完成度が詰まっていると思いました。  ただ、巫女が登場するシーンが異様に不気味。怖い!巫女の声は森雅之でしょうか(笑)淡白なセットが余計拍車をかけています。  京マチ子を馬上に乗せ、護衛一人だとそりゃ襲われるでしょ? とか、幾つかのツッコミは野暮っすね。  映画技術・演出が素晴らしいだけではなく、人間の本質にも迫る内容をも併せ持った作品ではないでしょうか。
[映画館(邦画)] 9点(2010-04-07 17:28:19)
11.  あなた買います 《ネタバレ》 
大分前に、池袋新文芸座で観た作品で、野球界のスカウト活動の裏側を描いた作品です。単なるスカウト合戦に終わらずに、徐々に人間の信頼関係についてのドラマに持っていくところが小林監督の非凡さを感じました。伊藤雄之助や三井弘次を金欲しさに動く役に置いたのも正解!  そして、佐田啓二と岸惠子が喫茶店かなんかで出会うシーンがあるんですが、このシーンだけハリウッドの恋愛映画のようなオーラを発していて、このドロドロした雰囲気にモヤモヤしている観客を浄化してしまった。それだけ光がありました。
[映画館(邦画)] 8点(2010-04-06 22:34:13)
12.  女吸血鬼
池袋・新文芸座の「中川信夫オールナイト」で観ました。たしか「地獄」「東海道四谷怪談」「憲兵と幽霊」という最強のラインナップでとても楽しめました。その中の一本でした。新東宝なので題名に騙されてはいけません(笑) 新東宝の低予算という事を考えると、私は良くできていると、中川組の職人技が良い意味で出ている作品に思いました。特に、天地茂のダンディズムであり怪しげであるという特異なキャラクターで三原葉子と池内淳子に迫るというのが魅力たっぷり。そして、秘密基地のセットはいかにも新東宝で大爆笑しました(井上梅次=京マチ子の「黒蜥蜴」の感じで)。
[映画館(邦画)] 7点(2010-04-06 21:23:22)
13.  血槍富士
シンプルな演出に見えますが、従来のお決まりの時代劇とは違う、何か淡々としたロードムービーのような印象を持ちました。 宿における群像劇のような展開・演出は次作の「たそがれ酒場」にも感じます。リアリズムといっても溝口健二よりももっと距離を置いた、自然的なものも感じます。主人や槍持ちというよりも、むしろ、まわりの登場人物たちの哀歓や、その背景にある社会そのものを描き出すところに内田監督の狙いがあったのではないかと感じました。 とはいえ、片岡千恵蔵さすがです。常に仏のような表情だった彼が鬼の形相に変わる最後の場面は、やはり彼以外には出来ないと感じました。必見です。
[DVD(邦画)] 7点(2010-04-05 16:01:47)
14.  たそがれ酒場
ひとつの空間で戦後10年の日本の縮図を描いているんだと思います。本物の歌手を配して、様々な歌が披露されているのが印象に残ります。内田監督じゃなかったら、並の監督だったら持たせる事は出来ないのではないかな。
[DVD(邦画)] 7点(2009-11-01 17:21:31)
15.  稲妻(1952)
私的に1・2を争う傑作。 もう皆様が書かれているのですが、成瀬真骨頂といえる題材、動いてなさそうでアクション映画より動いているかのようなカットの素晴らしさ(本当に素晴らしい編集ばかり!!!)。  監督の遊び心かのようなシーンが好きで、川島雄三に小沢昭一が居るように、成瀬巳喜男には中北千枝子が居る。三浦光子と高峰秀子が談笑している軒の外に、赤ん坊をおんぶし、軒を行ったり来たりしている中北千枝子が小さく写っています。寅さんの登場シーンのようで笑ってしまいましたし、中北千枝子の家から帰る高峰・三浦の二人が橋の上で会話するのだが、その後方にある家の二階の窓からしっかり中北千枝子が覗き見していた。  その他にも、今では貴重である銀座の「柳」も観れますし、コミカルなカットから深刻なシーンにおいても様々な技を堪能できる作品でもあります。
[映画館(邦画)] 9点(2008-09-23 23:56:02)(良:1票)
16.  鰯雲
成瀬監督の演出に精彩を欠くといった印象もあるんですが、何より、この題材は素晴らしい。昔ながらの封建的ともいえる掟に従い頑なに守ってきた地主が、戦後の農地改革によって変貌していく、いかざろう得ない。 家長の葛藤、対する各人の意思を尊重すべし子供達との対立がスクリーンから静かに感じられる。脚本・原作がとても素晴らしい。成瀬独特の<背景⇒人⇒台詞>の流れるカットは狭い日本家屋において絶大なる効果を発揮するが、広い民家が舞台ではどうか。 そのせいか、かなり淡々と演出が続く。  それでも、家長である中村鴈治郎の頑固ぶりにはじめは「敵・反体制」のようなイメージを持ってしまうが、次第に、まさに「鰯雲」のような寂しさのようなものを植えつけさせられた(ワイドカラーでの鰯雲はとても素晴らしい)。 そもそも、あまり自分から動かして作るといった印象のない成瀬監督の演出を考えると、やはり巧いんだなあと思った。 この情感は、これまでの成瀬作品では表現でき得なかった物だと思う。 
[映画館(邦画)] 7点(2008-09-23 23:08:21)
17.  にごりえ 《ネタバレ》 
DVDではなんだか良く解らなかったのだが、文芸座で観て「フィルムの方が遥かに画像・音声が良いじゃねえか」と驚いた。私は「映画的」には第一話が素晴らしいと思う(原作は第三話と「たけくらべ」が好き)。 他の二作は写実的な描写であるのに対し、第一話は叙情味に溢れている。『嫁ぎ先の理不尽な扱いにお関は離婚を覚悟して実家へと帰るが、父に諭されて再び嫁ぎ先へと帰る』という話ですが、彼女が実家の門を出たところからの描写に映画の真価が発揮されていた。  上野広小路(鶯谷あたりから)までの暗い夜道、幼馴染(芥川)と出会うが、彼は落ちぶれているわけです。相手はお関の事を「裕福な家に嫁いだ幸せ者」と思っている・・・が、お関は「そうではない、私もとても辛いの・・・」と訴えたいのだが、言葉にできないまま上野広小路へと着く(右手にはセットながら不忍池が!)、二人の別れの先には全く希望は見えない。今井正はこの二人の刹那の時間そして空間に着目した。映画的だと思う。  第二作・三作ともに良い出来なんですが、二作目はドラマチックにカメラを動かしていたのが面白く、久我美子の行為は『是か否』ということが気になった。  三作目は、原作の素晴らしさに監督が映画化に困ったのではないかと思わせる印象を受けた。山村聡と淡島千景よりもとにかく杉村春子が持っていっているような・・・  三人の女主人公ともにともかく悲惨です。 ただ、第一作の丹阿弥谷津子が、一番の成功者のようにみえて一番残酷なような気がしました。子供・家族の経済的支援のために半ば奴隷になるかのような決心をし、更に幼馴染の落ちぶれを見、暗い夜道で別れていく。希望が本当にみえない。 溝口健二「浪華悲歌」のラストのような暗さです。
[映画館(邦画)] 9点(2008-09-15 23:10:56)(良:1票)
18.  親不孝通り 《ネタバレ》 
題材がいかにも増村さんがやりそうな作品ですね。オープニングで引き込ませる。アメリカ人学生と川口浩が賭けボーリングをやるんですけど、その模様を、二人の投げるショットを素早く繋ぐ。当時からすれば斬新な(スピード感溢れる)オープニングですね。オーニングで魅せる監督といえば、増村さんとあと川島雄三くらいでしょうか。 川口浩の姉(桂木洋子)は、証券会社のディーラーである船越英二と付き合っていて、妊娠するが、中絶&別れ、要は捨てられる。唯一の誇りともいえる姉の姿に激怒した不良学生・川口浩は、復讐するため船越の妹である野添ひとみに同じ事をする。途中で結末は予測出来たんですが、それでも、テンポ良く進む展開が飽きさせない。川口浩の不良学生振りを観ているだけでも面白味がある。 でも、不満に思ったのは女優陣。(以下ネタバレ)桂木洋子は中絶したが、野添ひとみはおろさなかった。桂木洋子は野添と川口の姿に感化され、一度は捨てた船越英二を決して放さないと決意するというものだが、私にはこの野添・桂木の演技が甘いと感じた(念のため、二人は私の好きな女優です)。野添ひとみの妊娠が発覚して、船越英二に会った瞬間に川口浩の復讐が成立するんですが、野添ひとみは「自立して川口浩の子供を育てる」という決心をします。その「女の強さ」が野添ひとみにはみえない。同じ事が桂木桂子にも感じた。二人とも「お嬢さん」といった上品の一方的なイメージしか見えなかった。増村監督が描いていたイメージはもっと凄いところにあったのだと思う。 強く印象に残ったシーンがあって、野添ひとみら女学生7人がワゴン車でピクニックに行くんですが、川口浩が運転を引き受ける。川口浩は山道を荒々しくドリフト気味に駆け上る。かたや、女学生連中は車内でピクニックを合唱したり、ファッション談義をしていて運転には全く気に留めない。ワイルド、スピード、そしてモダン。初期増村作品を象徴しているかのような全快のシーンです。 
[映画館(邦画)] 6点(2007-10-23 16:44:58)
19.  黄色いからす 《ネタバレ》 
巧いです。さすが、松竹小市民映画の職人・五所平之助!小市民家庭ドラマで、長く戦地(中国)に赴き、帰国した父(伊藤雄之助)、待っている母(淡島千景)、息子。息子は幼い時に父と別れ、母の手で育ったため、母に甘えなかなか父と折り合いがつかない。そこに新しく子供が生まれて、息子が疎外感を覚える。この徐々にズレていく家庭の心境を些細に描いています。学校でのクラスメートとの喧嘩、息子が母へ甘えるしぐさ、悪事を働き反省の色がない息子を伊藤雄之助は「お仕置き」と庭の小屋へ閉じ込めたり、息子が動物を飼い始め愛情を注いだり、出来事を巧く取り入れています。よって、家庭の日常が続く中で「家族各々の心境」も併せて変化しているのが良く解る。ここに五所監督の巧さを実感。勿論、五所監督の演出だけではなく、脇役にも実力派(田中絹代、久我美子)を配した役者の好演技もあります。伊藤雄之助は頑固な親父なんですが、時折、いつものおとぼけを見せる、このギャップが面白かった。
[映画館(邦画)] 7点(2007-10-23 16:31:09)
20.  結婚のすべて
「結婚のかたち」についての考え方を主題にし、新珠三千代と上原謙の「見合い夫婦」、新珠の妹の雪村いづみと三橋達也の「自由恋愛」の考え方・ジェネレーションギャップを対照的に強調して描いていて、これを早台詞でテンポが早く、かつ、コミカルに。また、各テロップも同時に進行させ、音やリズム・画の同調で繋いでたりと、とにかく小気味よい。これらに驚き、気持ち良く鑑賞できた印象があります。上原謙に、新珠、三橋達矢に団令子・仲代達矢など、監督デビュー作なのにキャストが豪華。ナレーションは小林桂樹。三船敏郎もチョイ役で登場。新珠三千代がこんなに美しいとは。私もNFCで鑑賞しました。DVDでもう一度観たい作品です。上映後に、主演の雪村いづみさんと岡本みね子さん(岡本監督の奥さん)を交えたトークショーがありました。(NFC「岡本喜八特集」) 
[映画館(邦画)] 7点(2007-10-11 15:20:49)
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