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コメント数 600
性別 男性

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1.  緋色の街/スカーレット・ストリート 《ネタバレ》 
リメイク元の「牝犬」はなんだかんだ言ってダメ人間に寄り添うようなラストが用意されていたのと対照的に、ラングは重すぎる罪を負ってしまった男をこれでもかというほど冷淡に突き放しています。偶然の折り重なりがラング映画の運命を形成するのですが、本作の運命はあまりにもむごい。地味な非モテが身の丈に合わない恋に燃えただけでこの仕打ちとは!クライマックスの発狂シーンはラングのすべてが詰まっています。照明、音響、装飾が男を奈落の底に突き落とし、ついに心の中に自分しか存在しない地獄のような世界に閉じ込められてしまった。彼が完全に心を閉ざしたのはこれまた偶然です。ラングはなんて嫌な奴なんでしょう!上流階級に対する風刺も込められたアメリカ期ラングの最高傑作だと思います。
[DVD(字幕)] 10点(2017-01-17 04:29:30)(良:1票)
2.  パリ、テキサス 《ネタバレ》 
これまでの人生で、マンガや映画、ドラマ、ノンフィクション・ドキュメンタリーなど様々なものに泣かされてきたけど、本作では本当に身体が枯れてしまうんじゃないかと思うほど泣いた。涙をながすことと自慰行為をイコール視する人がいて、彼らの意見には膝を打つ部分もあるんだけど、本作で私が流した涙は人間の根本に関わる涙だったと思う。息子との再会によってようやく人生と、過去と向き合う決心がついた男が身を落とした元妻とガラス越し、電話越しに対面せざるを得ないという非情な現実、徐々に男がかつて愛した夫だったと気付き、ただただ涙を流す女の辛さ。悲劇の中の悲劇だ。本作のことは絶対に忘れられない。
[DVD(字幕)] 10点(2016-03-14 03:06:48)
3.  バニー・レークは行方不明 《ネタバレ》 
とんでもない傑作だー!私は幽霊や殺人鬼が出てくるホラーよりも、本作のような普通に見える人間が実は狂気を孕んでいた!というタイプのミステリー・ホラーのようが好き。物語はそう珍しくもない子どもの失踪もので、陳腐に撮ろうと思えばいくらでも撮れたはず。それなのに本作がめちゃくちゃ面白いのは、バニー・レークが一度も画面に登場しないのでアンとスティーブンが全く信用出来ない人物になってしまうからだ(散々指摘されているけど)。そこへ同タイプの映画のように怪しい人物や警察への批判じみた演出を織り交ぜることでおもしろさが増し、唯一無二の映画に仕上がった。ソール・バスが手がけたオープニングもかっこよくて文句なし!こういう映画をもっと見たい!
[DVD(字幕)] 10点(2016-02-22 10:05:35)(良:3票)
4.  家族ゲーム 《ネタバレ》 
怪作ですね。伊丹十三と松田優作の距離感のキワドさに笑い、家庭教師吉本と茂之の会話の間に笑い…。ここ笑いどころですよ!というこれみよがしなギャグはほとんどなくて、むしろギャグでもなんでもないシーンでずーっとニヤけさせられるような、不思議なコメディです。家族が向き合うことのない食卓の歪な存在感が象徴するように、本作はとにかく歪んでいます。弟が勉強を頑張るように慣れば兄が怠けだし、子供部屋に行くのにエレベーターを使ったり、その場所では音楽が流れているシーンでも映画上では音楽を流さなかったり、ニヤけた息子が母親に生理のことを質問しだしたり、伊丹十三の玉子焼きチューチュー…気持ち悪い!すべてをぶち壊すラストの7分間長回しは圧巻の一言。いつ松田優作が壊れ始めるのか、兄弟が便乗し始めるのかは繰り返し見なおさないとわからない。両親が3人の壊れた行動を無視しているからそういう「テイ」なのかと思ったら「さっきからなにしてるんだお前!」って、そりゃないよ!この家族壊れすぎ!母親は茂之の将来を案じる一方で若いうちに子供を産んでしまったことを後悔しているし、父親は「金属バット殺人が起こるから」という理由で子どもの教育に介入しないし、吉本は金を貰うためだけに茂之に勉強を教えていて、茂之はいじめてくる幼馴染への嫌がらせ目的で勉強している。まさに偽りの家族。家族ゲームに興じているだけだったんですねえ。これを見破って歪な食卓返しをした吉本は流石。…そういえば、レーザーディスクに付属されていた解説文では松田優作の無表情とバスター・キートンの無表情を重ねあわせる一文があったけど、それはいくらなんでも考え過ぎでは?
[レーザーディスク(邦画)] 10点(2015-06-10 19:56:23)(良:1票)
5.  七人の侍 《ネタバレ》 
非の打ち所が全くない脚本には敬服します。シーンの流れや登場人物の言動に全く違和感がない。一つ一つのセリフが重いですよ!観客に「なんだこれ?なんでだろ?」と一切思わせることなく話が進むので、3時間超えの作品とは思えないほど疲れない。どんな映画を観ても鑑賞後には疲労感が残ってしまう軟弱野郎なんですが、本作ではまったく…。すげえな。ヒーリング効果か! 話は侍探し、戦の準備、戦の三幕構成になっていて、それぞれに見せ場がしっかりとある。脇役だと思っていた人物がしっかり仕事をするなど、無駄の無さが目立ちます。なんというか、歴史ゲームの楽しさが詰まっているというか。人材集めに苦労しながらなんとか人数を集めて、百姓の統率を取るのに苦労しながら準備をして、そして大迫力の戦へと繋がる流れは、丁寧にプレーを進める信長の野望そのもの。弱小大名プレーの楽しさを映画で見せられた感じです。それでいて登場人物は全員がキャラ立ちしているからね!ゲームの何倍も面白いんだ。映画と区別がつかないゲームが話題になる昨今、ゲームが「面白さ」の点でどうしても映画を超えられないことを54年の映画が証明していたのです。 俳優の演技もまた素晴らしい!俳優と百姓たちの演技は置いておくとして、虜になったのが津島恵子と島村雪子の顔!島村雪子の出演シーンは1分も無かったと思いますが、3人の侍が覗き見する(観客が映画を通して人の顔を見るのと同じ行為である)時のドキドキの高まり方がケタ違いでした。火事に一瞬驚きを見せるも不敵に笑ってみせる。利吉が目の前に現れて驚き、燃え盛る小屋に戻る時の表情。後に明かされる事実も相まって、非情に印象に残る素晴らしいシーンを作り上げています。津島恵子のセクシーさも…あんな後ろ姿を見せられたら、そりゃ父親も普通じゃいられないよね。男にしてでも奪われたくないと思っても仕方がない。リアリティのある行動ですよ。 もう本当にすごい映画でした。本作より凄い映画に出会うことが果たしてあるかどうか?
[映画館(邦画)] 10点(2015-06-01 00:00:58)
6.  キートンのセブン・チャンス 《ネタバレ》 
素晴らしいですね。これまでのサイレント映画ベストワンは「キートンのマイホーム」でしたが、こちらのほうが面白かったです。警察騒動を彷彿とさせる過剰な人数ギャグが凄い、過剰なアクションシーンも凄い。 キートンが教会にたどりつく前と後でこの映画を分けることができますが、助走にあたる第一部もまた面白く、初期キートン映画にありそうなギャグが詰まっていました。ただ、ツカミのギャグがなかったのが残念かな。 第二部は花嫁候補たちから必死に逃げる姿に爆笑し、ジャッキー・チェンのようなアクションに興奮したり、ラストシーンの展開にハラハラさせられたり……。お見事としか言いようがない!走行中の車のスペアタイヤに飛びつくシーンなんて、香港国際警察の有名なシーンと全く同じじゃありませんか。あのアクションもキートンのオマージュだったんですね。 皆さんが文句を言っているBGMについては、あまり気になりませんでした。過去作のシーンとの繋がりが不明なBGMに比べればマシです。
[DVD(字幕)] 10点(2014-05-28 19:30:16)
7.  狂い咲きサンダーロード 《ネタバレ》 
バイクは人生そのもの。大衆に迎合し、誇りを失った暴走族の連中と決別した魔墓呂死特攻隊は「やりたいことをやって生きていく」ことを選択する。でも世間はそんなことを許すはずがない!背広を着ろ!家庭を持て!貯蓄しろ!社会の歯車になれ!正論は時として暴力になる。 暴走族のトップ連中は警察官になり、昔の仲間と緩く付き合いながら安定した生活を送っている。一方、特攻隊員は「スーパー右翼」として日々訓練を受け、組織に適応するものとそうでないものが現れた結果、やはり組織が勝利する。こんなことが許されてたまるか!生きたいように生きたいという願いがクライマックスを生み、最高のラストへ繋がるのじゃああああああああーーーー!!!!  バイク乗りにとって手は命。手を切り落とされるなんて去勢されるのと同じ。いわばルドビコ療法なんです。バイクは直進する乗り物で、精子のメタファーだと考えることができるということをふまえて考えると、周囲の男が男性性を喪失する中、男であり続けるために戦ったのに無理やり去勢されちゃう話なんですよ。唯一抵抗したのが仁さんなんだ。 すべてを失った仁さんが凄腕子供バイヤー(意味不明)の力添えで銃という明らかなメタファーを手に入れ、社会に反逆して勝利する。考えれば考えるほど『時計じかけのオレンジ』だなぁ。一度死に近い状態を体験し、再び男性性を獲得する。違いは後味がいいかどうかという点だけ。本作の後味はそりゃあ最高でしょ!あの笑顔に惚れない奴がいるもんか!石井監督の「若大将シリーズの加山雄三みたいに笑ってくれ」という注文に答えた山田辰夫かっけー!
[DVD(邦画)] 10点(2013-10-14 23:02:25)(良:1票)
8.  ブルース・ブラザース 《ネタバレ》 
いやあ、たまりませんでした。僕はブラックミュージックに全く明るくありませんので、ブラックミュージックが大好きな父と一緒に見ました。いろいろと解説してくれたおかげで、より楽しむことができましたよ。カーアクションやギャグも素晴らしいですね。いいふざけ方だと思います。謎の女のバイオレンスを何事もなかったかのような仕草でやり過ごす二人は、僕の理想的なコメディアンでした。最高です。ブラックミュージックへの道も開いてくれました。映画を見ること以上の影響をもたらしてくれる映画は、私の人生に一部になります。素晴らしい出会いでした。
[DVD(字幕)] 10点(2013-09-19 19:08:17)(良:1票)
9.  エド・ウッド
見れば見るほど素晴らしい。この映画のキーになるのは終盤、エド・ウッドが酒場でオーソン・ウェルズと出会うシーンにあると思います。深く考えなければ、この出会いをきっかけに吹っ切れたエド・ウッドが手腕を見事発揮し、珍品を作り上げてしまった。試写会は世界中の物好きな映画ファンたちが観客なんだと考えることができますが、問題は2つの事実です。エド・ウッドは酒で身を滅ぼしたということ、実際にオーソン・ウェルズに会っていないこと。このシーンは酔いつぶれたエド・ウッドの妄想だとも考えられるのです。そう考えると、試写会を終えた観客に騒ぐ気配が感じられなかったことにも意味が出てくる。もしエドがこのシーンを監督したら?細部なんて気にしないエドのことだから、告白してベガスに向かう幸せな二人の背景なんて気にしないでしょう。ディレクションはしなかったのではないでしょうか?映画が大げさでデタラメなエド・ウッド映画流の語り手のセリフによって始まるのに、ラストでの彼はセリフなしです。なぜだろう?…など、いろんなことを考えられるのもこの映画の素晴らしいところ。女装癖を告白し、ベラ・ルゴシと親しくなったエドがサングラスをしなくなったことにあえて触れないのも良いですね。下手な監督だと友人に「あれ、サングラスは?」というセリフを言わせていたかもしれません。
[インターネット(字幕)] 10点(2013-08-25 12:54:00)
10.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 
二郎は自己中心的で、美しいものにしか興味のない薄情者。実は二郎は自分の美しさにしか興味はない、ということを手紙の内容で悟った時の菜穂子の表情、彼女の決死の名古屋行き、二郎を支え、死ぬ間際に二郎のもとから去った菜穂子の人生は、僕の心を激しく揺さぶりました。これほど悲しい事はあるでしょうか?思い続けた男がこんな奴だったとは…でも、嫌いになれない気持ち。想像するだけで辛く、涙が出てきます。 一方、超がつくほどの秀才で、自信家で、薄情者で、美しいヒコーキをつくることに全力を注いだ二郎は、挫折の果てに見た夢で、妻・菜穂子に「生きて…」と語らせます。どれだけの苦悩・自殺欲が二郎を苦しめていたのか、想像もつきません。途方も無いものだったと思います。子供の頃から思い描き、人生のすべてを捧げた美しいヒコーキ作りは、多くの命を犠牲にしてしまいました。これまで戦争なんて関係ない、これは自分の夢だから、と無邪気にヒコーキを設計してきた彼に叩きつけられた最悪の現実。これを消化するためには、夢で菜穂子になぐさめてもらう他に、解決策はなかったのでしょう。当然、最後を見とれなかった妻への後悔・懺悔もあって、あのような夢を見たのだと思います。 ようやくヒコーキの呪われた運命と現実を知った二郎は、カプローニに認められ、共にワインを飲みます。この直前に映画はエンドロールに入りますが、二人が飲んだワインはきっと赤ワインだったのではと思います。同じ夢を描き、夢のなかで友情を育んできた二人。アキレスが亀に追いついたのが戦後だなんて、悲しくも美しい話です。 この作品が宮崎駿の引退作になるわけですが、これほど引退作にふさわしい映画はないのではないでしょうか。これまで兵器の美しさをこれでもかというくらいに映し出しながらも戦争反対の姿勢を貫いた宮崎駿が出した結論が、この映画なのですから。僕のオールタイムベスト映画です。
[映画館(邦画)] 10点(2013-08-23 17:21:42)(良:1票)
11.  ランボー 《ネタバレ》 
シルヴェスター・スタローンという俳優について勘違いしている人ほど衝撃的かもしれません。僕もこの映画とロッキーを見るまではスタローンはバカ映画に出てる人というイメージしかありませんでしたが、町を破壊するほど暴れまわった後のランボーがメソメソ泣きながらトラウトマン大佐に心情を吐露するシーンで号泣してしまいまして、心のなかで「スタローンごめんなさい!」と100回土下座しました。当時のベトナム帰還兵たちの心情をぶち撒けた映画として、尊敬せざるを得ません。ロッキーとランボー、2つのアメリカを象徴するアイコンを演じたスタローンに敬礼。
[DVD(字幕)] 10点(2013-08-15 23:20:47)(良:2票)
12.  ドライヴ(2011) 《ネタバレ》 
タイトルからからカーアクションを想像してしまうだろうが、カーアクションは中盤まで!それ以降はバイオレンス映画にシフトチェンジして突き進む。この映画の素晴らしさはアクションよりも感情を言葉にせず表現させていること。それが完璧なまでにうまくいっている。スーパーマーケットの駐車場でのドライバーの行動、初デートの風景、夜のロスをドライブ中に夫が帰ってくることを告げられた後のドライバーの挙動…ヨダレが出るほど素晴らしい!ライアン・ゴスリングの演技力・レフン監督の演出半端なし!そしてこの映画の一番の盛り上がりどころである、エレベーターでのキス、からの最悪のバイオレンス。これが映画だ。これほど映画を見ていることを幸せに思えるシーンはなかなか無いです。映画史に残る名シーンと言えるでしょう。ここを見るためだけに1800円払っても、惜しくない。他にもたくさん書きたいことはあるけど、あまりにも長くなってしまうので割愛。
[映画館(字幕)] 10点(2013-08-04 00:25:48)(良:2票)
13.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
押井の世界観が最もポップな形で提示されている作品だと思う。そのバランス感覚がとても面白い。終わり方も最高で、アニメ映画の私的ベスト5に入る。
[映画館(邦画)] 9点(2017-10-10 13:45:25)
14.  怪談(1964) 《ネタバレ》 
前半と後半でテーマがわかれている。前半は異界との性的な接触、後半は映像技術の見せびらかし。前半の「黒髪」「雪女」の素晴らしさは、欲に溺れた人間の因果応報を描いているだけではなく、異界の表現がきわめて的確で観客の心の奥底を揺さぶるからだ。「黒髪」は武満徹の音楽が、「雪女」は冒頭の空模様が世界観を見事に表現している。確かに芸術映画だ。客が入らないのも当然だよ。「耳なし芳一の話」は本当につまらない。酷すぎる。くどい。田中邦衛は面白い。「茶碗の中」は稲川淳二の怪談話にありそうな感じで、お気に入り。それぞれに点数をつけるとしたら、「黒髪」10点、「雪女」7点、「耳なし芳一の話」1点、「茶碗の中」7点。「耳なし芳一の話」以外の完成度の高さと「黒髪」の音楽、演出、美術の素晴らしさを評価します。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-12 23:53:02)
15.  M(1931)
冒頭から演出が冴えまくる。ドイツ期の最高傑作であることは疑いの予知がない。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-11 03:23:28)
16.  恐怖省 《ネタバレ》 
ラングのアメリカ期の最高傑作だ!交霊術中に主人公の過去が、苦しめられている運命が暴露される。悲鳴を上げる主人公、響く銃声、血を流す謎の男!なんてパワフルなシーンなんだろう。ラングは主人公の運命が暴露される瞬間を描くことに長けている。本作のそれは『M』に匹敵する力強さがあると思う。中盤の展開はややかったるいが、これまた暗闇の中で行われクライマックスの銃撃戦がすごい!発砲時の光のみが状況を観客に伝えてくれる。それ以外は雨が降っていること、手前に主人公とヒロインがいて、奥に敵がいることしかわからない。この曖昧さがたまらない!シビれる!突然敵が銃弾に倒れ、階段を上がってくる男の顔が見えないままクソどうでもいいラストシーンに移行するモンタージュの緩急もすばらしい。あれは警部なのか博士なのか、全然わかんない!でもそれがいい!かっこいい!
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-11 03:04:28)
17.  シン・ゴジラ
蒲田くんに会いたくて何度も何度も劇場に通った。蒲田くんに遭遇するたびに震えながら笑った。「えっ、蒲田に!?」というマヌケな台詞からの落差が大好き。
[映画館(邦画)] 9点(2016-12-11 02:51:20)
18.  小さな巨人 《ネタバレ》 
彼岸と此岸を状況に流されるように行き来して、唯一意志のこもった選択により勝利を勝ち取る。アメリカン・ニューシネマ期にはかなり珍しいタイプの映画だと思う。つまり、死なない。確かに語り手のジジイは120歳超えてるし、今にも死にそうだし実際死ぬんだろうけど、これは避けられない死だからアメリカン・ニューシネマのアンチ・ヒーロー的な死とは質が違う。歴史修正主義に対する抵抗がメインテーマであって、体制に結局負ける気がしてる僕らの等身大の抵抗と敗北を描くことを目的としていないのだ。だから死の質が違ってくる。■フェイ・ダナウェイがエロすぎる。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-11 02:32:25)
19.  卒業(1967) 《ネタバレ》 
メタファーまみれ。ミセスロビンソンは夢の工場ハリウッドの裏側でもあり、アメリカンドリームでもあり、単純にエロスであり…サイモン&ガーファンクルの音楽もいいし、ダスティン・ホフマンの居場所なさ気な顔も良かった。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-11 02:14:53)
20.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 《ネタバレ》 
『ALLWAYS 三丁目の夕日』の大ヒットを受け、昭和がブームになった。誰もが古き良き時代を懐かしみ、昭和を扱ったテレビ番組は好視聴率を記録し、展覧会などもさかんに開催された。私は思春期まっただ中にこの空気を体感し、昭和はそんなにいい時代だったのか、と思ったものだった。しかし、昭和には負の側面もたくさんあったのだ。戦後に絞っても、公害、冷戦、イデオロギーの暴走など、忘れてはならない事象がたくさんあった。しかし、昭和ブームはこれらを忘れさせ、架空の「昭和」に人々を誘った。オトナ帝国は2000年代中盤に実在したのだ。年々少年犯罪が増えているとコメンテーターは語った。しかし、戦前の少年犯罪は常軌を逸したものが多数あり、今よりもはるかに治安は悪かったのだ。郷愁は負の側面を忘れさせる。まさか子供向けアニメがこのことを題材にしていたとは知らなかった。どことなく「架空の懐かしさの雰囲気」をまとうスタジオジブリ作品への抵抗も込められていたのかもしれない。クレヨンしんちゃんらしいギャグの数々に笑い、ひろしが見た回想に泣いた。子供たちが抱く不安、無邪気な時代に帰りたいという大人の抑圧された願望の両方がわかる20代前半を生きる私だからこそ湧き上がる感情というものにすっかりやられてしまった。音楽もいいし、明言も多いし、素晴らしい映画だと思う。無性に「翳りゆく部屋」が聞きたくなった。
[インターネット(字幕)] 9点(2016-05-03 02:06:18)(良:1票)
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