1. マッド・ハイジ
《ネタバレ》 いや、「マッド」が足りてないよ。 もっとハチャメチャなハイジを予想していたんだけど、ちょっと暴れっぷりが足りない。 予告編観て期待しすぎた私の責任かもしれないが、もっとマッドに敵をなぎ倒すのかと思ったら、意外に正統派。妙な師匠に弟子入りしちゃったりしたもんだから、少し矛先が鈍った感が否めない。もっと勢いで突っ走る映画を期待していただけに、その点は少し残念。 しかしながら、「アルプスの少女ハイジ」とほぼ同じキャストの登場は、我々世代には間違いなくヒット。ペーターは不憫だけど。 映画館で観ようかどうしようか迷ったんだけど、映画館で観たらまた違った印象だったのかも。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-01-06 15:32:54) |
2. アナログ
《ネタバレ》 映画を観るときに私が重視しているのは、その映画の空気感と言うか、全体に漂う匂いみたいなものじゃないかと思う。 この映画は舞台設定もキャストもあんまり癖がなくて、デジタルなものとは違う、明確な線引きのない柔らかな匂いが非常に心地よかった。抑えて抑えて演じている感じ、かな。 悲しくもあるけど、いくらか希望も見えるラストもちょうどいい温度だったと思う。 波留さんもいいんだけど、二宮君、やっぱりいいなあ。好きな役者だな。 そしてエンドロールでちょっと驚いたのは、原作ビートたけしだって。そうかあ。いい本書くなあ。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-01-06 15:23:33) |
3. シビル・ウォー アメリカ最後の日
《ネタバレ》 アメリカの内戦かどうかはさておき、問題なのは、この映画のような状況が現在起こってもさほど不思議ではない情勢に世界が傾いている、ということじゃないかな。 極右にしろ極左にしろ、自国第一主義の政党が民衆の支持を得ているのをニュースで見ることが増えた気がする。味方なのか敵なのか、どちらかを選ぶことを強いられる世界。 世界の有り様の分岐点にさしかかった現代にふさわしい映画かもしれない。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-01-05 11:54:51) |
4. 悪魔と夜ふかし
《ネタバレ》 まあ普通に撮ってもつまんないから、ドキュメンタリー風(あくまで風に)に撮ってみよっか、って感じの本作。 視聴率を狙って危ういところを綱渡りするのは日本でも同じで、時々稲川淳二氏の「生き人形」を扱ったテレビ番組のYouTubeとか検索しちゃうもんなあ。でも、一番観たい部分がなくて結局がっかりするんだよね。 だからこの映画のプロットはとても魅力的。面白いもの撮ろうと思ったら本物が出てきちゃった的なね。出演者の煽り方も上手いし、問題のシーンを巻き戻して確認するところなんてゾクゾクが止まらない感じ。ラストはポルターガイストとスキャナーズを混ぜたようなクラッシックな映像で大満足。 [映画館(字幕)] 7点(2025-01-05 11:45:06) |
5. 怪物(2023)
《ネタバレ》 結局ね。関係者全員から話を聞いたところで、そこに監視カメラでも設置されていない限り、真実は「藪の中」ってことだよね。それが如実に現れるところは、正直なところ学校かもしれない。 学校には警察のような捜査能力も権限もなく、保護者は子どもの言うことを信じ、わが子を守ろうとする。それは当然なことだが、かと言って教師が学校でのすべての事象に責任を持つ必要はない。あの生気の抜けたような校長の姿も、実際にはそんなことはなくて、保護者から見たらそんな風にしか見えなかった、ということだろう。 自分以外の目に見えない力に押しつぶされ、自らを見失っていく得体の知れない恐ろしさ。またその力は圧倒的で、とても自分一人で立ち向かえるようなものじゃない。SNSが発達したことで、それがより顕著な世界になってしまった。 こんなことはそこらじゅうにあるぜって、そんな映画かな。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-01-05 10:51:59) |
6. 十一人の賊軍
《ネタバレ》 私の読解力が足らないせいもあるんだが、最初が少し説明不足かな。山田君演じる「あにやん」は妹が新発田藩士に手籠めにされたことを怒ってるんだと思ってたが、途中で妻だったと説明があり、やっと理解。いや、これは説明が不足しているのか、それとも方言が強くて理解できなかったのかちょっとわかんないんだけど。 で、そんなことがあって、あにやんは終始新発田藩を憎み、藩の力にはならないことを貫くんだけど、弟分のノロをはじめとする仲間が無残に殺されることを見過ごせず、結局命を落とす。 主役級の山田君にそんなに仕事させなかったのは良かったんじゃないかな。こういう映画って誰か一人最後まで生き残るやたら強い奴がいるもんなんだけど、そうじゃない演出は、他の登場人物が生きて逆に良かった。 印象に残ったのは、紅一点のなつ。演技は正直拙かったけど、もらった小判を予言通り女郎に身を落としたあにやんの妻に渡すところなんか、仁義に厚くてぐっと来た。 そして賊軍の中でも一人異彩を放っていた爺さん。あの腕の立ち方は只者ではないと思ってたけど、長州藩の槍の指南役だったとは。ラストで種明かしする演出が憎い。だって相手は奇兵隊だもんね。「義理あって…」のシーンはちょっと鳥肌立った。長く斬られ役をやってきたエキストラ専門の人みたいだけど、まさに「侍タイムスリッパー」を地で行く感じかな。殺陣も素晴らしくキレキレでこの映画に重厚感を与えていると思う。 最期に仲野君。 彼はこういう義理に厚い実直で真っすぐな役がぴったり来る。 ラストシーンの、指を失った右手に刀を結びつけるシーンからは圧巻。怒涛。 私も彼と一緒になって、阿部サダヲに一太刀浴びせたいと手に汗握って観ていた。 結局奴に一太刀浴びせたのは、娘のさなだったのは無念。 いや、見応えのある映画だった。 最近の邦画、頑張ってるなあ。こういう映画、もっと観たいね。 [映画館(邦画)] 8点(2024-11-03 16:17:51) |
7. 355
《ネタバレ》 正直に言ってしまうと、ジェシカ・チャスティンとダイアン・クルーガーの共演が観たくて鑑賞。典型的なアメリカンと典型的なドイツ人って感じでキャスティングとしては最高。しかも劇中なんか反目し合ってて、そこもポイント高い。 しかし、他のレビュアーの方も書いておられたが、キレキレアクション満載のスカッとする映画を期待していただけに、中盤で挟まれる人質殺戮シーンで一気に気持ちが重たくなってしまった。その後の弔い合戦(しかも重めの)的な流れも、恋人に裏切られる展開も重たさ倍増で予想外。 女性版「エクスペンダブルズ」が観たかったのだよ、私は。 まあこれは私の身勝手な希望なんだけども。 しかし、今回のようなちょっと蓮っ葉な役もできるし、王室の高貴な女性も演じられるしで、ダイアン・クルーガーでつくづく魅力的な女優だなあ。そこに加点。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-12 15:53:47) |
8. ドラキュラ デメテル号最期の航海
《ネタバレ》 まずタイトルが素晴らしい。 「デメテル号最期の航海」なんて、ゴシックホラー感満載で、観たくなること請け合い。 しかも謎の積荷である木箱の存在と、そこに刻まれた紋章…とくれば、ワクワクがとまらないはずなんだけど。 まあそもそも観ている側に「ドラキュラ」とは何ぞやという予備知識があり過ぎるために、ドラキュラを未知の存在として楽しむことができない、というジレンマがあるんだわな。ただ今回の「ドラキュラ」は、吸血鬼というよりもコウモリのお化けという感じで、その点には新鮮味が感じられたのだが、やはり登場人物と同じようには「ドラキュラ」という存在に恐怖を覚えることができなかったのは残念。 トランシルヴァニアの村の住民を食い尽くし、新たな血を求めてロンドンに渡る、そのための犠牲者を積んでる、ということが徐々にわかっていく展開は、「ジェーン・ドウの解剖」と同じように恐怖が増幅していく感じがしてゾッとして良かった。 この時代にドラキュラ映画を撮る難しさを考えさせられる映画。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-12 15:26:05) |
9. 市子
《ネタバレ》 呼吸器を外す。 それ以外に何ができたというのか。 市子の、狂気に満ちた、それでいて静かな、幸せになりたいと願う気持ち。 慟哭。 いや、つらい映画だった。 演じている方もつらかっただろうな。 戸籍も持たず、誰にも頼ることができず、その日その日を生きていく。 安らぎのない毎日を想像して、やるせない気持ちにさせられる映画だった。 戸籍があって、保険証もあって、住むところがあるだけで恵まれた生活なんだな。 そんなことを考えながら観た。 いや、強烈な映画。 [映画館(邦画)] 8点(2024-10-10 18:36:49) |
10. パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女
《ネタバレ》 最初のまさに「パーフェクト・ドライバー」なカーチェイスのテンションで最後まで観たかったというのが正直な感想。 でもまあ、「トランス・ポーター」でもジェイソン・ステイサムの格闘シーンで目先を変えるし、ずっとカーアクションって訳にもいかないよね。 運ぶのが子ども、っていうのがちょっとずるい感じがして、妙齢の男でも良かったのかな、とか思ったりはするね。 プロ意識の塊のヒロインにはかなり好感が持てる、なかなかの映画。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-10 18:26:10) |
11. ありふれた教室
《ネタバレ》 強烈。 現代の教室というか教育界の持つ得体の知れなさは、万国共通なんだね。 正しい主張も、やり方を少しでも間違えれば逆に断罪の対象になってしまうという何とも恐ろしくも現実を捉えた映画。 先生たちも決して一枚岩ではなく、もろい関係性の上に何とか職務を遂行している、なんとも夢も希望もない教員の仕事を描いた映画で、これ観たら先生になりたいなんて思ってた若者も、躊躇するだろうな。 でも、現実。 いや、日本ではもっとひどいよ。 [映画館(字幕)] 8点(2024-10-10 18:16:11) |
12. ツイスターズ
《ネタバレ》 まあね。前作「ツイスター」が名作だっただけに、比べられてしまうよね。 ヘレン・ハント信者の私には、今回のヒロインと比べるつもりは毛頭ないんだけど、全然悪くなかった。いや、むしろ好きだ。 しかも、「ドロシー」が出てるじゃん! 私にはそれだけでノスタルジーを刺激されて大満足な一本だったし、もちろんスペクタクル感満載の満足度の高い映画。 [映画館(字幕)] 7点(2024-10-10 17:40:08) |
13. ドロステのはてで僕ら
《ネタバレ》 まあ2分間のタイムリープの仕組みはあんまり理解できなかったんだけども。 ヨーロッパ企画お得意のスタイルはやっぱり面白い。 演技が多少オーバーになるのも、2分前と2分後を比べるには必要な動きなんだろうし、セリフが大げさになるのもその理屈でいくと違和感はあんまり感じない。 日常の中に非日常をポンと落とし込んで、それをあんまり深く考えないでとりあえず楽しむって、現実にはほぼ考えられないシチュエーションだけど、現実にあると楽しいだろうな。 こんな風に非現実を楽しむ心の余裕と大らかさが欲しいと思わせてくれる一本。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-10-10 10:53:10) |
14. キングダム2 遥かなる大地へ
《ネタバレ》 原作は未読。 1作目が予想外に面白かったので、2作目も。 ここでの見どころはなんと言っても、清野菜名が演じるあの超絶に強い女剣士。 ぶっきらぼうでやたらめったら腕が立つキャラクターは非常に魅力的。 剣さばきも所作も全てが美しい。ちょっと体力に不満はあるけど(笑) 大将同士の対決は、待たされた割に少々物足らなかったが、本作もエンターティメントとしてはかなり満足度が高い。 3作目以降、清野菜名がどう主人公に絡んでくるのかわくわくするなあ。 長澤まさみの登場がなかったので次回作に期待。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-10-07 13:17:31) |
15. 侍タイムスリッパー
《ネタバレ》 現代人が幕末にタイムスリップではなく、幕末の侍が現代にタイムスリップという設定がいい。 この幕末、というのが絶妙で、侍が刀を差すことが許されない時代にどうやって己のアイデンティティを確保するのか、ということを涙に笑いを織り交ぜながら見せてくれる映画。 しかも会津藩。 自分だけが生き残って未来に生きていることに、何か意味を見出さずにはいられない武士の魂の叫びがぐっと来た。 そして、かつて死闘を演じた仇敵との再会。これは完全に予想外で、まさに見どころの一つとなっているのだが、こういうポイントがところどころ配置してあって、観るものを飽きさせないシナリオも抜群。 そして失礼ながら。 ほぼほぼ私が知らない役者だったのが良かった。そのおかげでどっぷり映画の中に浸って、最後まで楽しんで鑑賞できた。「今はその時ではござらん」は名セリフだね。 いや、いい映画。 [映画館(邦画)] 8点(2024-09-30 12:33:51) |
16. エイリアン:ロムルス
《ネタバレ》 「…トロモ」の残骸を見せるシーンで、「エイリアン」の続編としてのっけから期待度大。 アッシュと同型のアンドロイドは出てくるし、コンピュータは今時の鮮明な画面ではないカタカタ動く旧式。これがエイリアンの世界観なんだよなあとどっぷり浸かりつつの鑑賞。 いや、それにしても。 小学校4年に映画館で観た映画の続編を、五十を超えてから観ることができるなんて、なんたる至福。そして、何年経っても色あせることのないエイリアンの造形の妙。HRギーガーのデザインのなんと素晴らしいことか。そんなエイリアンをこよなく愛する自分にとっても、この映画は非常に満足度の高い作品だったと思う。 無重力で強酸性の血液で宇宙船が傷つかないようにするなんて、ありそうでなかった発想だし、最後の最後まで期待を裏切らない危機の連続。いや、面白かった。何よりレインが新たなヒロインとして輝いていて魅力的だった。 ただ。 ただ、だよ。 あの人間とエイリアンが合体した新種の醜悪さは、ちょっと許せなかった。 あんなデザイン、子どもでもできるし、何より美しさが微塵も感じられない。ギーガーに対する冒涜ではないかとさえ思ってしまった。。 そこだけはやはり気になったというか、もの申したい。 リドリーもそこは許しちゃだめだよなあ、と思いつつ2回鑑賞。 エイリアン、もう完全にサーガだね。 [映画館(字幕)] 8点(2024-09-24 14:56:18) |
17. アビゲイル
《ネタバレ》 誘拐した少女が実はヴァンパイアだったなんて、予告編だけで観たくなること請け合いの筋立て。 しかし、誘拐犯たちを返り討ちにしたところでよくあるホラー映画になってしまうので、そこはいろいろと仕掛けが設けてあって、最後までけっこう退屈せず面白く観ることができた。そもそもホラー映画なんだから、あんまり小難しいこと言わないで、怖がらせてくれたらいいのだ。 誘拐犯たちを集めたのは実は少女自身だったり、凶悪に思える少女にも実は弱い部分があったり、予想外の展開につぐ展開だし、誰が先に殺されるのかもなかなか見えなくて興味深いし、盛大に血しぶきが上がるしで、ホラー映画としても満足の一本。 [映画館(字幕)] 7点(2024-09-24 14:27:29) |
18. 哭悲/THE SADNESS
《ネタバレ》 予告編を観てそれなりに準備して観たのだけれど、なんだか嫌な気持ちになる映画だった。 まあ監督もそこを狙って作ったんだと思うから、一応成功なんだろうけど、ちょっとね。 人間の本能というか欲望を隠さないウイルスってことみたいなんだけど、そうなると食欲と性欲が筆頭になるのかな。 それと弱いものを徹底的に痛めつけたいという得体のしれない不快な欲望。 ちゃんと思考した上で行動に移してるから、不快度は相当に高い。 このウイルスに比べたら、ゾンビなんて悪意のかけらもないからスッキリ観られる。 でも考えてみると、この悪意の塊をぐちゃぐちゃにやっつけるシーンに快感を覚えること自体が結局我々の本性で、監督もそれを狙ってるのだとしたら、それも嫌だな。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-09-16 12:15:23)(良:1票) |
19. マッドマックス:フュリオサ
前日譚とはいえ、もう前作の内容をあんまり覚えていないのだが、シャーリーズ・セロン役をやるなら、アニャは適任ではないかと思う。なにせあの鋭い眼光は只者ではない。 自ら爆弾となるボーイズとか、相変わらず狂気に振ったキャストは異世界の設定として迫力充分。これはもう一度「怒りのデス・ロード」を観たくなる。…でも多分観ないけど。 「マッド・マックス」と冠する必要はもはやない気がするので、そこんとこはちょっと異議あり。 [映画館(字幕)] 6点(2024-09-16 11:56:56) |
20. 事故物件 恐い間取り
《ネタバレ》 事故物件に住み、心霊現象がそれなりに撮れたら次に行く、という執着のなさがこの映画の売りなのかな。最終的には引っ越しを繰り返すうちに霊が溜まって?いくんだけど、その部屋で起こったであろう惨劇にあんまり深く突っ込まないで淡々とこなしていく感じ。 「残穢」のようなおどろおどろしい根源的な恐怖ではなく、映像としての恐怖を狙った映画なのかな。 こういう映画は、名の知れた人ではなく、無名の俳優が出た方が臨場感高まるよなあ、亀梨君とか木下さんとかメジャー過ぎて没入感乏しいなあと思いつつ鑑賞。 しかし江口さん、存在感あるなあ。 [インターネット(邦画)] 5点(2024-08-30 10:54:56) |