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Yuki2Invyさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1701
性別 男性
自己紹介 基本的に3~8点を付けます。それ以外は、個人的に特別な映画です。

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1.  さらば、わが愛/覇王別姫 《ネタバレ》 
抗い得ぬ時代の波に翻弄されるとある一つの世界を描いた作品にも見えるのですが、同時に、その世界におけるたった一人のとある人間の人生というものを完全に=完全なる完成度で描き切ったごく希少な映画でもある様に思われます。その人物は、その世界と同様に、逃れ得ぬ業を根源とする自らの相容れぬ感情・性格=魂の咆哮に、これも同じく翻弄され続けて居る様にも見えるのです。まずは、その常人には届かぬだろう域に達した複雑怪奇な人間性を、これでもかと抉り出すサマのそれ自体が稀有なことと、その抉り出されるソレ自体にまた実に見事で完全なる説得力が備わって居たこと、に非常に深い感銘を受けたのであります。が、何よりもまた同時に、その私の理解の到底及ばない奇異なる一人の人間というのが、何ゆえにこんなにも崇高に美しいモノに見えるのか、ともはや驚愕しないことには居られなかったのですね。それは、正義・善悪だとか、運命だとか、幸せだとか不幸せだとかそんな一面的で単純な価値観で割り切れてしまうだろう自分自身の人間性というのが、心の底から恥しく・悔しくなる様な感覚だ、とでも言いますでしょうか。  重ねて、その分裂症ぎみに複雑怪奇な主人公の生の有様において、他方で一つ明確に一貫しているのが、京劇という芸術における彼の存在そのものだ、と思うのですね。彼は、生まれながらにしてその様な存在であり、またその様にしか存在できない人間でもあり、そして唯その様に生きて、そして死んでいったのだ、と。これこそが、一つの芸術の真髄・極致を描いたモノであるとしたら、だからこそ今作におけるその彼がこんなにも美しい存在に見えたのだとしたら、芸術というのは実に哀しいコトですね、と。私が今まで観た中でも、五指に入るべき深遠な作品に思われました。
[映画館(字幕)] 10点(2023-08-04 00:58:58)
2.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
実は、今作を公開当時に3Dで観なかった…てのは結構(映画)人生最大の悔恨であったのですが、いずれリバイバルはあるだろーな…と思ってたところ続編公開に併せて3Dリマスターが公開されましたので、勇んで参上してきました。いや~確かに、間違い無く絶対に3Dで観るべき映画でしたよね(カメラワークとかがもう立体感を前提にしてますもんね)。初見時と同じく、お話の内容自体はだいぶシンプルな作品だ…という認識は今回も決して変わらなかったのですが、コレもシンプルにアクション映画としてもやはり史上屈指のクオリティ(盛上り・爽快感・没入感)だな~と思いましたし、何より今リマスターによって作品の擁する第一のクオリティ⇒すなわち今作が我々にもたらすのは「世界観」を越えたもはや新たな「世界」そのものだ…とゆーのはより鮮烈かつ明白になったかな、と思いましたです。なので、従来の評価より一点加点してこの評価とさせて頂きます。傑作。  いちおう、今回の3Dリマスターの変更点は、まず2K/SDR⇒4K/HDRのアップスケーリングをはじめとする映像の精度向上がメインとのコトです(+音響もハイグレードになったらしい)。作品自体は現時点そもそも、オリジナル版(162分)に加えてより長尺の特別編やエクステンデッド・エディションが在るとゆーコトのよーですが、今作のベースはあくまでオリジナル版で、ただし今冬公開の続編に関わる新規映像が挿入されておりそれ故に尺は若干延びている(5分程度)という感じかと。機会があれば是非。
[3D(字幕)] 10点(2022-10-02 00:09:23)
3.  アンダーグラウンド(1995) 《ネタバレ》 
色々と映画を観ていると、稀にどうしようもなく「天才性」を感じさせる作品に出会うことがある。本作は特に(通常の辻褄を超えて展開し始める)後半は、もう殆どがその類いの「常人の才覚では撮れそうもない」映像となっている様に思う。  「何故、どうして」という点で全く常人の理解が追い付かない本作は、初見では十分に理解するのは難しいかもしれない(少なくとも私はそうだった)。しかし、そういった細かい点を超越して作品全体から迸る得も言われぬパワーとメッセージは、初見だろうが何だろうが多くの人の心に確実に響くであろうし、そして二度三度と観直すと本作もまた、細部まで精密につくり込まれた類稀な完成度を誇るクストリッツァの仕事だということが分かってくる。生涯に渡って何度も楽しめる、素晴らしい映画だと思う。  シーンとしてひとつ、空飛ぶ花嫁の結婚式は、全ての映画の中で私が一番好きなシーンだと言ってよいかも知れない(初めて観たときはやはり疑問と、そして感動と笑いが止まらなかった)。もう一つ、演技面ではどうやってサルにあれ程に上質な演技を仕込んだのか、そのうち聞いてみたい。  もう一点だけ、批判されることも少なくない本作のテーマ面について、私は監督の「歴史を肯定する」姿勢には賛意を表したい。人間と、人間の生業(としての歴史)は、全て多面的なものであると思っている。本作は決して、歴史の負の側面を虚飾で覆い隠そうという作品ではない。清濁併せ呑み、醜さもさらけ出した上で、ポジティブな側面を力強くかつノスタルジックに描いた本作は、テーマ面の表現についても傑出した作品であると強く感じている。
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2020-03-29 02:37:06)
4.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ/完全版
レオーネ的時間感覚がもたらす荘厳な映像空間は、これを観ることである一つの人生を追体験することを可能にする。そしてそれは、確実に絶望的な程に苦かった筈なのに、それでもどこまでも、ただひたすらに甘い郷愁であった。誰の人生においても、いずれ時が何もかもを融かすのだろうか。人生は所詮、夢まぼろしか。確かにこれは、人生が終わるときに観るべき映画だ。
[インターネット(字幕)] 10点(2019-12-31 01:52:45)
5.  二十四の瞳(1954)
子供たちの歌声と、瀬戸内海の美しい戦前日本の景色をバックに紡がれる物語は、誰もが決して忘れてはならない、この国のひとつの「時代」そのものである。これは、全国民が観るべき映画だと思っている。
[DVD(邦画)] 10点(2019-11-17 00:19:51)
6.  道(1954) 《ネタバレ》 
よく練り込まれた脚本で展開に無駄が無いのも見事だが、どこか寓話的なシナリオが描き出すテーマは単純ながらも非常に深い。己の存在がこの世界でどんな意味を持つのかという根源的な問い、人が人に寄り添う・支え合うという意味での一つの愛のかたち、それを失った絶望的な孤独。こういったものを極めて自然に描き出す俳優の見事な演技に心打たれる(特にアンソニー・クインの最後の場面は、個人的に一番好きな映画のラストシーンの一つ)。  ネオレアリズモ的な観点でも、貧しく荒廃したイタリアの情景は(物語の雰囲気上も重要ながら)ひとつの時代を切り取った映画としての価値をも本作に付与している様に思われる。フェリーニには本作以降も、このように本質的でかつシンプルなヒューマニズムを表現し続けて欲しかった。魂を揺さぶられる傑作。
[DVD(字幕)] 10点(2019-11-17 00:18:54)
7.  ロッキー 《ネタバレ》 
人生とは孤独で苦しい闘いであり、ボクシングとは正に生きることの縮図である。そして本作は「人生における真の勝利」を描いた映画であり、それはボクシングでの勝利ではなく(勝ってないけど)、一個の人生で「何者かに為れたこと」である。観るたびに、試合以降は何故か流れる涙を止めることが出来ない。テーマを聞くだけで魂が燃え上がる、最高の映画。
[DVD(字幕)] 10点(2019-11-17 00:15:04)(良:1票)
8.  きみの色 《ネタバレ》 
お話自体は実に普遍的な青春映画ですね(「きみは何色か」はそのまま「きみは何者か」でしょーから)。かつ、その中で感情の起伏やストーリーの抑揚とゆーのはかなり振れ幅小さくて、諸々と実にゆるやかに彼・彼女らは季節を巡ってゆく…という感じだと思いますし、その語り口としてもまた諸々を決して語り過ぎるコトもない…という感じでもありますね。繊細な映画だと思います。ただ個人的には、そのお話=描かれるモノ自体についても、確かに繊細な質感ながらも最後まで観ると実に見事に繋がってったジャン…とは思えてまして、青春映画としてもシンプルにごく非常に優れた作品だったと思います(⇒自分が何者かを知るべき人に、勧めるとしたら現時点で第一候補になり得る…かとも)。  重ねて、特に前半は(+その後も終盤手前位までは)、例の「何を描くか」よりは「どう描くか」の方に遥かに寄ってっている…て方の作品かとは思えて居たのですケド(⇒上で書いたとおりその認識は最後まで観たら好ましく覆されもしたのですケド)、とは言え圧巻なのはやはりその表現のクオリティ=画と色遣いの端的な素晴らしさ、に在るのだとは思われます。アニメ映画を逐一追っかけている身ではないモノの、最近ってこのレベルがスタンダードなのですか?と、ちょっと信じ難いな~て眼で終始観入ってしまって居ましたね。どのショットも、ど~見ても監督のこだわりとゆーか美学とゆーか今までに貯め込んだ蘊蓄とゆーか、選び抜いた・磨き上げたって感覚がひしひしと感じられる様な見事なる「一幅の画」ばかりだった様に思えて居ります。傑作かと。
[映画館(邦画)] 9点(2024-09-05 21:51:19)
9.  キングダム 大将軍の帰還 《ネタバレ》 
4作目は徹頭徹尾、王騎大将軍=大沢たかおさんの話でしたね。ココまで来ると最早、漫画原作のバトル・アクション…の範疇を超えた、実に見事な「人間の物語」を観せて貰えたという思いにもなります。漫画原作なのだから単にリアル…とゆーのとも違うとは思えども、体格含めた外形的な表現に加えて迸る内面的な役づくりの質も含めて、邦画では(⇒否、その範疇のみならず)近年稀に見る…と断言してしまうべき素晴らしき男優の演技だったと信じて已みませんです。中盤の一騎討ちが個人的には最高でした⇒スクリーンサイズもそーですが、このシーンに関して言うなら音響の方にもこだわった劇場での鑑賞を全力でオススメしたいです(凄まじい臨場感・空気のそのものとゆーか)。今年最高の邦画になるって気も大いにしておりますので、是非劇場で。
[映画館(邦画)] 9点(2024-07-13 20:02:15)
10.  第七の封印 《ネタバレ》 
死から決して逃れられないのは遍くヒトの宿命であって、十字軍だろうが疫病だろうが・それが世界に降り注ぐ速さに多少の違いが在ろうが無かろうが、根本的なその状況自体に大差は無い…とまずは思うのです。かつ、今作の主人公・騎士アントニウスは迫り来るその死を前にして、其処からは逃れられぬという絶対的な人間世界の悲惨と・そして何も語らない神、というシステム全体の在り方に対する疑問を問い続けて居る…そのことはまた確かに、多分にキリスト教的な(or 少なくとも宗教的な)観点からの問いかけだと、私も再び思うのですね。  しかし、今作の登場人物の振舞いを通してはその「宿命」に対して、もっとヴァリエーションに富んだアプローチの数々というのを見て取れるとも思うのですね。それこそ、誰か一人にその咎を押し付けて生贄に捧げて満足する者、或いは、終末論的なナニかを振り翳して絶望に浸ることで逆に優越感を得る者、なんてのは、今現在に至っても・キリスト教の支配の下に無いこの国においてさえ、探せば幾らでも見つかるって光景だと思うのですよ。しかし重ねて、その一方で例えば、考えても答えの出ない問いに無為に陥ることを拒否して日々を享楽的=ごく前向きに生きること、であるとか、神でも仏でもない己の道理にのみ忠実で在ること、とか、それでもその強大なる運命をちゃんと恐れて・自分自身の無力さを知ることで逆に総てを受け容れること、だとか、私には、今作はむしろそういった後者の諸々の方にこそより大きな価値を見出しているのだろう…ということ自体は、思ったよりも容易く伝わって来てかつ共感も可能だった、と率直に思われたのですね(⇒とは言え、ゆーて私も2回3回は観た上でこうなったってダケなのですケドね)。  また、久し振りに再見して、やはり難解だと言われる作品かとは(再びどうしようも無く)そう思ってしまうのですが、それでもごくシンプルに、ごくポジティブなモノを描いている方の作品なのだな、と思うトコロにまでは今回チャンと至れたのですね。且つはその上で、台詞はどれも含蓄に満ち・そして映画全体としても全く無駄が無い、という類稀な完成度を備える作品だと思うのにも(同様に)至るコトが出来ました。やはり、傑作かと思いますね。
[DVD(字幕)] 9点(2024-03-25 22:29:47)
11.  DUNE デューン/砂の惑星 PART2 《ネタバレ》 
この2作目も、全体的なクオリティは完全に前作同等の高水準を維持していますね。どころか、映像のクオリティ(⇒特にその「スペクタクル性」)については今作後半は特に大幅に向上していったとも思いますし、ドラマとしても、そもそもが長大・深遠な物語+この映画化では1作目から作品のテンポ自体はごくゆったり進行してきたコト、も踏まえて、いよいよお待ち兼ねの今作後半でそれが佳境に入ってより断然面白くなる+そーすると尚更にこの超・豪華キャスト個々の役へのドハマり様(=その面での完成度の高さ+手抜きの無さ)も実に素晴らしく感じ取れる+何よりお話に一旦の決着が着くコトで間違い無く前作より娯楽性の面も向上している、というコトで、コレは1作目がイマイチだった人にも是非、出来るだけデッカいスクリーンで観てほしいってヤツでありますね。私は池袋のIMAXレーザーGTテクノロジーで観ましたケド、意外にも今作、1.43:1の全画面サイズになるシーンが(特に人の顔のクローズアップ場面では)結構多くって、ソコにも何だかお得感すらありましたよね。重ね重ね是非々々。  正直、今作って諸々と(個人的には)『アラビアのロレンス』みたいなモンだとも思えて居て、ほぼほぼ最高評価にするしかないレベルの歴史的な作品だとは確信しているのですケド、多少、その評価に迷うトコロが在るとしたら、そのテーマ性の部分=徹頭徹尾極めて「古風な」価値観に支配されているコト、位かとは思いますね。それ自体は当然、原作に忠実に準拠しているというポリシー故なのだとは思うのですが、それでも、他にその面に現代性を取り込んだ作品が数多く在る中で、正に今を生きる現代人が今作に共感できるのか、という観点からは、当然に個人差となってくるハズのモノだ(⇒ソコに差が在るコト自体はごく妥当だ)とも思われるのです。あくまで私個人としては、ソコは全く気にならなかった(=ある点で「史劇系映画」だと看做すならば全然フツーにそれらにも共感できた)というコトで、本来の点数と思われるこの評価としておきます。
[映画館(字幕)] 9点(2024-03-16 11:50:30)(良:1票)
12.  枯れ葉 《ネタバレ》 
引退するって聞いたときには、やっぱ(少しだけ)驚きもしたのですが、その時からも何となく復帰の可能性は在るかな…とは思ってて、んで5年で復帰ってコトなのでコレは正直「好い頃合い」だと思ったのです。が今作、そんな個人的期待や前評判の高さをも完全に凌駕してゆくがマデに、意外なホドに非常に素晴らしい作品に仕上がってたのですよね⇒短いタームの引退期間でしたが何かしらが(想定外に)好い方向に変化・進化しちゃったのか?とすら。まず、内容とゆーたら、直近の監督作と比べても実に全く何の変哲も無い超・ありふれた物語だとは思うのですよ。勿論、幾つかの親しみ易いテーマはしっかりと置かれては居ます。がしかし、率直にそもそも「やっぱそーいうコトじゃない」と思わされてしまったとゆーか、映画ってやっぱ(何を語るにしても)それをどう語るか、どんな画(色)で+どんな言葉(音)で彩るか、唯それだけのコトなのだ、と再度気付かされてしまった…と言いますか。思いがけず寧ろ、コレこそが映画だ(=映画の技術の粋と言うべきモノだ)とまで、もう唸らさせれてしまった…と言った方が好いかも知れません。  画ヅラと言うならまず、やっぱ何処も彼処も再び魅力に溢れて居る…のですが(⇒北欧の日常風景てのは、色んな他作品でも観るたび実感するコトではありますが、やはり少し風変わりとゆーかちょっと見慣れない感じが常に新鮮に感じられるとゆーか、それもまた今作でも効果的だったかな~とは思いますね)、今作は中でもその「色合い」とゆーか、ごく落ち着いて涼し気なハイソな感じもあるのですが、一方で非常に「鮮やか」だったなァ~という感覚が強かったのです。何となく、直近のカウリスマキ作品には「青い」ってイメージが有るのですが、今作はその青を非常に単純に「儘ならないという意味での憂鬱」の表現として使っている様に見えて、でその中 or 隣とかに(それと相対すべき何かとしての)赤や暖色が配されるという、シンプルなそのコントラストが非常に鮮やかに効果的だった様に見えました。コレも、誰でも出来そう・思いつきそうなモンだとも思うですが、それでも重ねて「卓越した」技術だったと思うのですよね(ココまで来ると)。  音楽的にも、今作はまたほぼほぼ歌芝居と言って好い様なレベルでモロに「歌う」シーンが多くって、かつ監督作の特徴としての台詞の少なさ(+しかも更に各々の本音はソコでまず言葉にならないコト)も相まって、それらの歌に登場人物の真の感情とゆーのがほぼ全て仮託されている…と言っても好い状況だったかと思うのですね。そもそもタイトルの『枯れ葉』とゆーのも、コレは私もどーいう意味だろ?と思って観に行ったら結局、ズバリ例の名曲シャンソンのコトだった様です⇒あの曲のイメージが骨格と成っている・あの曲を流しながら終わってゆくべき映画だった、という(コレも)シンプルな手法のよーで。でも、随所で流れる数々の曲ってのは、有名なのもあればそーでないのもあるし、音楽的なジャンルも様々…である一方で、実に心地好い調和の下でその「物語り」を各自見事に遂行していたとゆーか、コレとかもまた卓越した手腕だったな+とゆーかコレって単に映画の空気感の醸成と言うより、正に監督の価値観とゆーか(或いは)人生そのものの曝け出しの方じゃなかったかな…と思わされてしまいましたよね。こーいうのを、こんなカタチでモノの見事にやってのけられるとゆーのは、別に表現者でも何でもない私からしても、実に本当に羨ましいコトだな…と(また)唸らされてしまいました。傑作。
[映画館(字幕)] 9点(2024-01-28 22:53:09)(良:1票)
13.   《ネタバレ》 
それこそ、30年くらい前に初めて観て(僭越ながら)こんなの今まで観たコト無いな…と思った記憶がありますね。それは特に「時代劇としては」という意味だったのですが、今だに強烈に印象に残ってるのは(中で)とにかく「血の表現」だったと思います⇒最高レベルってのはココまでやるのか…と。でも、今今に観直すとコレって、別に全然「リアルな血」ではないよな…とも思うのですね⇒あんなに河みたいにドロドロ流れないだろ…と。で、そもそもこの映画、よく観ると何処も彼処も全然「リアル」ではないとも思うのですよ。狂い果てた幽鬼の如き仲代達矢の有様(or メイク)と言い、諸々の地形もチャンと観るとなんか変なトコばっかですし、異様に煌びやかな衣装や具足・それも含めて全体的にも隅々まで「画が綺麗すぎる」とだって思ったりします(単にリアルな時代劇だってなら尚更に)。  何より、今回観たらコレ、時代劇は疎かドラマにだって皆目成ってないな…て思っちゃったとゆーか、登場人物も総じて全然リアルな人間には描かれてないのですよね⇒前述の仲代達矢や狂阿彌は勿論、息子三人だって一人として血の通ったキャラには全く見えて来ない。ある種、私原田美枝子さんって大好きなんですケド、今作にのみ関して言うなら寧ろ彼女ダケがひとり「間違えている」という風にすら見えます⇒「人間」過ぎる・「人間」としての感情をリアルに+ハッキリと表し過ぎている…と。結局、私が思うトコロの一番に来るコトとしては、見た目の印象やごく重々しい・重苦しい特大の見応えとは全く裏腹に、実に抽象的な表現で抽象的なモノを描こうとしている映画だ、と⇒だからやっぱり(私が他に観たコトあるモノの中では)何より「能」に一番近い…と思わずには居られないと言いますかね(ココまで表現が「ある意味で」抽象的だと、コジツケぽく思われるのは(私も)重々承知ですがモ~致し方無いかな…と)。  とは言え、そりゃ映画なんだから当然、本来の能よりは全然(全っ然)分かり易いとは思うのですよ。でも、逆にコレくらいはしてあげないと現代人には(最早)伝わらないんだよ!てコトにだって思えたりするのですよね⇒ソレはもう、現代人が「想像力」を致命的なまでに喪失してしまって居るからだ…と。今作で言えば、鶴丸が笛を唯々奏でる(というテイで笛の音が唯々流れる)中盤とオーラスの2シーンとゆーのが、私にとってはその「抽象的なモノを抽象的に伝える」シーンとして極致に到っていた…と感じられたのですね。小林正樹監督の『怪談』で、平家琵琶のシーンを観た時にもその様に感じられたコトではありますが、重ねて、嘗ての人々にとっては音曲・舞踊ダケでも伝わっていたソレとゆーのが、今や即物的に為り過ぎ&心の瞳を失い&退化し切った現代人にはこの程度の映画(映像)表現でアシストしてやらないと伝わらないのだろう…と(率直に)思われるのです。そして、今作もまたその意味では、そーいう古のテーマを古の技法に(部分的にも)則って垣間見るコトが出来るという点で、実に日本的で、そして優れた映画だったと思うのですね。傑作だと思います。
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2023-12-31 23:26:20)
14.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 
個人的には、冒頭からワリとシンプルに(=メタファーでシニカルな部分とか・現実と虚構が入り混じるコトとか、をあまり気にせずに単なる)コメディとして観ていってしまったのですが、まずはその意味にしてもワリと結構面白かった・笑えたと思うのですよね。その「虚構=非現実が混ざり込む」という観点からは、少なくとも近年の欧米の主流な方のコメディと比較してもだいぶエキセントリックな方のヤツだったとは思うのですが、ソッチの方がむしろ日本の現在の大衆的なお笑いの質感には近いかな~とも思いましたし、そもそもその欧米のコメディの「現実と地続きでシニカルでなければならない」みたいなのって本当に必須?とだって(個人的には)常々考えているトコロなのでしてね。でもまあ、中盤までは確かにそーいう「如何にも実在してそーな=真実味を帯びた方の」クセの強い業界人⇒主人公リーガンはモチのロン、親友だァ何だって結局カネのコトしか頭に無いパートナーにせよ、コレもやっぱ観る前からナニ書くか決めてる(何千回地獄に落としても事足りない様な)クソ評論家だとか、後は何より(誰とは言わず全員)劇中劇の肝心の芝居の中では総じてカスみたいな演技をしてるのに・翻って舞台裏でトチ狂って感情迸らせる様子自体は(逆に)実に見事な演技になってたり、とか、そーいう在りそーなトコロが(前述どおり)コメディとしてかなり面白かったなって感覚でしたケドね。  しかし、最後まで観終わるとある種、その隅々まで行き渡って「多面的な見方」が出来るコトとゆーのがそもそも、中々に含蓄深くってかつ真に(コメディとして)面白いポイントだったな…とも思うのですよね。件の撮り方にしても、コレが結構意味的に多面的で面白くって、それはつまりコメディってやっぱ比較的舞台劇的・固定視点的に「つくりもの」の映像として観るコトが多いんじゃねーか…と思ってるトコに、このハンディカムのドキュメンタリチック・POV的な撮り方ってのは(どーしたって必然的に真実性を帯びるコトになるって意味では)コメディとして異質・風変わりだったとも思うのです、が一方で、今作ではそれを妙なワンカット風に全部繋げてるってのはまた(前者に大いに反して)実に虚構的だ…とも思ったのですよね。他にもあとは結論の部分にしたって(結局は)そーいうコトにも見えていて、例えばとどのつまり今作でリーガンが成し遂げたコトって実は彼が目指した「芸術」でもナンでもなくって⇒所謂単なる(ネットを利用しての)「バズり=彼が理解すらしてないコト」でしかなかった様にも見えますし、それに依ってエマ・ストーンとの関係性が(最後には確かに)変わったのだとしても⇒それがあるべき姿のモノに為ったとは到底思えなかったりもしちゃったり、とかですかね。  前述どおり重ねて、そーいった多面的な視点で観れるコト自体をポイントに据えた&実際に内容的に実に多面的で含蓄深い作品、だったとは思うのですが、個人的には結局、その中で「コメディとゆーのが如何に虚構であるか」というトコロこそが、今作から最大に存分に思い知らされたモノだったって感覚がありますね。あくまで個人的には、人生の本質=人生で唯一つ確実に自分にとって真実だと言えるモノは、自身の認識するトコロの苦悩・苦痛以外のナニモノでもない、と思ってますからね。何故なら、人間の感じるコトのできるトコロの微笑ましさ(或いは幸福)とゆーのは、本質的には全て自分ではない他者におけるその感情(或いは他者のその感情を共有するという意味での自分のその感情)でしかない、と思ってるからですね。だからして、それこそそーいったモノが(事も有ろうに)映画に描かれている…なんてのは、本来のその必然的構成要素たる自分&他者の間に、もっともっとナニモノかを媒介に媒介しまくってやっと伝わって来てるモノ、でしかなくって、だから当然「虚構」でしかないんだ、と思ってるってコトでありますかね。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-12-24 17:28:23)
15.  博奕打ち 総長賭博 《ネタバレ》 
いや~、コレは確かに好く出来てる…95分の映画で、今作より好く出来てる脚本てェのはちょっと他に思い付かないな……  三島由紀夫がギリシア悲劇の如し…と評したらしいですが、確かに登場人物の行動原理ってのは何れもごく非常に古めかしいのですよね。中盤の桜町弘子や三上真一郎が特にそんな感じだと思うのですが、そんなトコロで命まで張らんでもエーやろ!とゆーのが(現代では)ややもすると「愚かさ」にも見えて来るのかも知れない…とは、私も確かにそう感じるのです。でも、コレは恐らく彼らの中で「自分の命」とゆーのが(当世とは比較できない程に)限り無く軽く、翻って逆に「筋を通す」とゆーコトが地球と同じ位に重い…という、この点こそが私には今作で最も「古典的」で、かつ「古典的悲劇的」なコトだと思われたのですよね。日本のこの時代のヤクザの世界こそ、そーいった古典的悲劇的「価値観」を描くのに実は打って付けだった…というコトそのモノが今作における一番重要な発見だったのではねーかな、と。そして、例え悪人=筋の通らない連中が非業の死を遂げてもソレは悲劇にはならないのもまた確かで、他方、作中で悲劇的に死んでゆく者達には何らか精神的な「負い目」が皆キッチリ用意されている、その意味では彼らは総じて「筋が通っている」人達なのだから、その彼らが揃って虚しく死んでゆくこの物語は立派に悲劇なのだ、と⇒若山富三郎はおろか名和宏すらも(結果的には)筋を通して死んでゆく…とゆーのは、構成としてこの上無く美しいな…と。  唯2つダケ、私が今作で批判しても好さそうかな…と思ったのは、一つは余りにも脚本の完成度が高すぎる故に(特に終盤が)逆に「出来すぎ」になってしまっている…という(どーしよーもない)部分ですかね。あくまで個人的な感覚ですがその終盤は、少なくとも曽根晴美と三上真一郎の殺し合いはオミットしても好く、あと寧ろ藤純子が湯ヶ島に来ちゃうのも少しやり過ぎだったかもな…と思いましたかね。まあ、どっちのシーンも単体での出来はまた素晴らしいし、かつ藤純子のシーンはオーラスのキメ台詞にも見事に掛けて来てるのだから(どっちも)ウマくやれてない、なんてコトは微塵もない⇒だから却って私のこの指摘の方こそが蛇足と言うべきヤツ…だとも(自分でも)思ったりはしてしまいますケド。。  もう一つ、今作はまた余りにもその任侠の任侠たる精神性を描き抜くという「非・娯楽的」な要素が強すぎて、娯楽映画としての任侠ものには(多分)なってないと思うのですよね。確かに、このジャンルでは頭抜けた傑作だと思いますし、多少この手の(単なる勧善懲悪ではない)作品の比率が増えていたとしても全然好かったとも思うものの、ソレでもこーいうヤツばっかだったらちょっと皆疲れちゃっただろーな、なんて思ったりもして…あくまで私個人としては、娯楽映画としての任侠映画の方が好みっちゃあ好みではありますかね(⇒ソコのバランスはワリと重視したい)。
[インターネット(邦画)] 9点(2023-11-03 11:30:27)
16.  裁かるゝジャンヌ 《ネタバレ》 
うーん…私は一体、いま何を観たのか?とゆーのをスグには断言できなかった、とでも言いますか。。例えば、画面の総合的なクオリティとか、或いは(サイレントではありながらの)諸々の演技の出来だとか、そもそもソコら辺はもうオーパーツ!とかってレベルでメチャクチャ高度だったと思うのですよね。でもやはり、ソレらとて(100年前のサイレント映画のヤツだから)現時点の一般的な映画のモノとは大いに質感を異にしているとも思いますし、でも他方、どう見てもつくりもの・ごく抽象的な表現でもあるのに、むしろ意外なマデに真に迫って深く深く心を穿ってゆくとゆーか(⇒私自身は、キリスト教徒でもナンでもないのですケドね)正直に本当に何が画面に映ってるのかが段々と好く分からなくなってってしまいました…と。重ね重ね、私は今映画を観たのか・宗教音楽を聴いたのか(⇒まあ伴奏音楽は現代の後付けだと思いますが)・小説を読んだのか(⇒サイレントのモノクロだからか実に高尚で文芸的な空気も感じ取れたのですよね)・それとも何か、現実の歴史の一ページとゆーのを奇跡的にも垣間見る機会を得てしまったのか……この上無く独特でそして唯一無二とも言える映画鑑賞経験、なんてのをしてしまったという風にさえ感じてしまいました⇒今まで観たサイレント映画の中では、間違い無くイチバン強烈でしたすね(その意味でのこの評点で)。
[DVD(字幕)] 9点(2023-08-29 00:04:16)
17.  ベティ・ブルー/インテグラル<完全版> 《ネタバレ》 
個人的に近年、ロマンポルノをはじめとした古今東西の「ポルノ的」映画作品とゆーのにワリと(否、相当に)慣れ親しんでいる身であるのですが、そーすると今作ってそのジャンルにおいてはかなり高度に「よくあるヤツ」だとゆーか、セックスシーンを効果的に用いて描く映画としては内容的にも質感的にも実に普遍的な作品だ…と思うのですね。最も肝心なるこの二人ってのも率直に、破れかぶれとゆーか無軌道とゆーかもっと端的には「愚か」とゆーか(=理性的な意味での「箍が飛んでる」)、まずは実に直情的で無思考で「本能的」な人間に描かれていると思うのです。そしてそーいった二人をま~た実にごく取り繕わない(=雑然とした小汚い)リアリティしか無い世界の中に放り込んで描くコトに依って、むしろその(彼らの人生の or 映画が描くべきトコロの)「目的」、つまりその愛こそが唯、世界で一つだけの「真実」に見えてくる…とでも言いますかね。その意味では、前述どおりこーいう映画をかなり観てきた私からしても、コレほど迄にその諸々が「映り込む」のを最初から全然気にしていない映画も珍しい…と思うと同時に、だからこそコレは完全版で観なければ=コレにボカシなんか入れた日にゃあ全く以て観る価値が四分五裂してまうな…とも思うのですね(⇒そしたらも~ナニ一つ「真実」ではなくなる、と)。実に(根っこのトコロで)ポルノ的で、そしてソレが120%成功している映画だな…と思わされてしまいましたよね。  ただソレで居て今作はまた同時に、実に文学的でハイソなクオリティをも兼備している…とも思わざるには居られないのですよね(コレはもう、フランス映画だから…とだけ言っておけば足りるモノなのか、或いは「愛」を描くコトこそが最も本質的に文学的なのだ…とでも言い加えた方が好いのか)。ベアトリス・ダルというお方は、後の作品の印象からすると(若い頃は)こんなに可憐だったんだ…とも(やはり)思ってしまったのですが、ルックス的にはこの頃からも少し口元がだらしないとゆーか、ただソレは(好意的に捉えれば)野性味とゆーかまたその描くべき「人間臭さ」の凝り固まった部分にも見えてくるとゆーか、そーいった諸々の「二面性」を含めてとにかくルックス的にもキャラ的にも超・ハマり役だったと思うのですね(重ねて、後に発覚した様に、彼女が実在人物としてもごく「飛んでるヒト」だったとゆーコトも踏まえて)。ジャン=ユーグの出来も相当に出色だったと思いますが、コレは正直「彼女の映画」だ…と言った方が好い様な気もしてますね。
[DVD(字幕)] 9点(2023-08-11 10:14:14)
18.  君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 
現実の世界・歴史と強固に繋がっている物語ではありますが、ジャンルとしてはごく純粋なファンタジーですね。前述の構造も含めて、ジブリだと『トトロ』とか『千と千尋』に酷似しているとも思いますが、個人的にはよりプリミティブな『不思議の国のアリス』の様なお話だな…とはいちばん最初に感じたトコロです。表現としては、誰しも「コレがジブリだ!」と膝を打つ様な監督固有のアニメーションが見事に健在だったコトに加えて、今作では炎や水といった抽象的な部分の(おそらくCGによる)表現に更に磨きをかけて⇒ソレを前述の手書き風アニメにより完璧に融合させている様子もまた見事だったと思います。もう一つ、コレは確実に意図的に監督の過去作=嘗てのジブリ作品中の種々の風景・象徴的要素を物語の中に非常にふんだんに織り交ぜてゆくのですよね(⇒観れば誰でもスグに気付くというレベルで)。でも、正直なトコロ、全体として非常に示唆的・比喩的に見える物語ではあるものの、話の内容や個々の描写・台詞自体にソコまで高度な意味が積まれている様には見えなかったor 少なくとも1回観たダケで分かる様にはつくってない(or 最低限私にはソコは伝わらなかった)という、控えめに言ってもごく「難解な」作品だとは、確実にそー思われましたですよね。  でも、しかし、じゃあナニも伝わらなかったのか?とゆーとそんなコトは全くないのですね。むしろ、私個人としては観終わった瞬間、コレは監督がもう、有りと有らゆるモノ全てを完全に肯定している作品だ…という実に暖かくてポジティブな感覚に包まれたのです。前述のセルフオマージュが意味するモノは監督の映像作家としての人生そのものだ、とも感じましたし、ソレも含めてナニかを次の世代に引き継ぐこと・或いは引き継げずに新しく真っ新に始めてゆくしかないコト、悪意の無い世界に生きるコトが叶わず、夢破れて斃れてゆくコトも有りうるというコト、すらも、全て一切合財が此処に至ってはこの世界の美しさに見えるのだ…と。重ね重ね私には、今の今、最後に監督の心の中に残って居るのであろうあの懐かしい風景の数々が、また今も尚こんなにも美しく+その感覚を全世界の人々と確実に共有可能だ、というそのコトこそが、映像作家としての監督の最も尊い部分なのではないか…と思われたのですよね(途中、ワリとウンウンと唸りつつも、今作を観て最後にはそう思うに至りました、と)。  この予想が外れてもナニも哀しくも・悔しくもありませんが、私自身はやはり、今作が監督の(正真正銘の)最後の作品だと信じておるのですね。そして、今作がその最後の作品であって本当に好かった…とも、また信じているトコロではあるのですね。
[映画館(邦画)] 9点(2023-07-14 23:06:54)
19.  肉体の悪魔(1971) 《ネタバレ》 
映画史上屈指の、トンデモないレベルの大・物議を醸した世紀の問題作!とのコトでして、今だに媒体に乗っかるダケでもプチ騒ぎになるという代物らしーのですね。まァ私も、ナンスプロイテーションの嚆矢だ、とか言うハナシを小耳に挟んだのでちょっと食指が動いちゃった…位の軽い気持ちで観てしまったのですケド、観ると確かにソレは嘘ではねーのですケドも=エログロのレベルも(1971年製作とは思えない)相当なハイレベルではありましたケドも、根本的にはそーいう問題ではない・ちょっとかけ離れたレベルのド級の倒錯映画ではありましたですね。とは言え、私が観た国内LD版は109分=アメリカ公開版というコトらしくて、んで111分てのがイギリス公開版⇒だケド本来の尺は115分、とのコトなので、コレでも(マジで)ヤバい場面はかなり削られてる…という顛末だとは理解しているトコロではあります。  でも重ねて、コレはナンスプロイテーションなんて低級な作品では全くない、完全なる+無類なる芸術…て方のヤツですよ(一目観れば分かる)。モチロン、描かれるのは唯々、人間の真に醜い側面「のみ」ではあるのですし、原題どおり本当にそーいうイカれたヤツしかほぼ出て来ない作品でもあります(グランディエの嫁が多少マシな位で)。しかし、喜劇と悲劇と狂気を綯交ぜに包含する深遠な世界観と言い、それで居て歴史に題材を取った(ある面で確実に)リアルな=共感せざるを得ない物語の構成を擁するコトと言い、美術・セットはじめとした細部までの綿密なつくり込みに裏打ちされた画面の卓越した出来と言い、超・極めて完成度の高い傑作だとしか言い様がありませんです。断言しますが、こーいう映画を4Kで観れる様にするべきなんですよ!(80年代ホラーをリマスターしてる暇があったら、コッチをどーにかしろよ!と言いたい)  完成度の高さ、という意味ではまた、演技の面も(もはや当然の如くに)諸々と実に鮮烈・良質な出来だったと思います。ヴァネッサ・レッドグレーヴの暗黒なる狂気とゆーのは、昨今でもホラーの界隈においてすらもちょっと簡単には拝見出来ないというレベルの代物だったと思いますし、そして後半はまた、主役のオリヴァー・リードのイギリス演劇風な圧巻の大演説!が物語をグッと引き締める素晴らしい出来だったと思うのですね。うーん…実に見事な……としか言えないです。。(海外版=完全版のDVDを調達してしまいそうです。。)
[レーザーディスク(字幕)] 9点(2023-07-09 18:44:52)
20.  オテサーネク 妄想の子供 《ネタバレ》 
監督の故国チェコの民話が題材で、お話の内容は確かに「御伽噺」と言うべきものです。だから、当然の如くにファンタジー的な質感に仕上げられても居て、その部分を表現するコトの一環として(監督が得意とするトコロの)ストップモーション・アニメの技法によるシーンもふんだんに織り込まれ、そしてソレがまた実に優れた効果を上げている…とゆーのも確かだとは思うのです。しかし、だからこの話はやはり「寓話」なのだ…という意見には、個人的にあまり賛同できないのですね。私自身は、今作は実に好く・そして徹底的に「人間・人間性そのモノ」を描き出した(抉り出した)映画だ、と思うのですよね。  確実に意図的に、醜いモノや、また本来はソコまで醜くないモノ、をよりグロテスクに・必要以上に醜悪に描いてゆく…一方で、だからこそ、その醜さを越えたからこそソコに、本当に根源的な善きモノのカタチが(ようやく)垣間見えて来るのだ…とでも言いますかね。今作の登場人物達は、須くが必ずナニかを「間違えている」(=何なら、一部はほぼほぼ「全て」を間違えている)とも思われます、が重ねて、その間違えているコトを「乗り越えた」からこそ、更にナニか真なるモノに辿り着ける…とゆーのを私も遂に「実感」できた…と言いますか。アプローチという意味で、これ程にユニークで、かつ本質的に「正しく」思われる手法(+そして一見は「そうは思われない」という手法)も、他にあまり見当が付かないな…てのが私の結論です(そしてこれは、ある部分で「手法」と言うよりは、確実に多分「哲学」に近い方のモノだ、とも感じるのです)。凄い監督・凄い作品だ、と思いますね。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-05-01 00:32:56)
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