女の中にいる他人 の なるせたろう さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > オ行
 > 女の中にいる他人
 > なるせたろうさんのレビュー
女の中にいる他人 の なるせたろう さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 女の中にいる他人
製作国
上映時間102分
劇場公開日 1966-01-25
ジャンルドラマ,サスペンス,モノクロ映画,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》  これはひとの貪欲な欲望=快楽が招くありきたりな悲劇なのだろうか? 
 いや、きっとこれは成瀬巳喜男版『ミスティック・リバー』なのだ。
 「王」とは、自分を頼る民たちのために自ら血にまみれることを辞さない者だとするなら、罪の意識から逃れられずに何処までも「王」たらんことを拒むのは、小林圭樹演じる夫。しかし、夫が王に君臨できないというならば、代わって自らが王たらんとするのは、新珠三千代演じる妻。当然のごとく行われる王交代の儀式=殺人。
 そこへ至る過程の中で、成瀬は、夫の言動によって刻々と変化する妻の表情を、非情なクローズ・アップで、だがあくまで映画的に美しく、幾度となく捉えて魅せてくれる。妻と親友を失った三好達也の無念と哀しみは、ただの一言であっさり片付けてしまうというのに。だから本作は題名が示すとおり、やはり妻=女こそが主人公なのだ。
 もともと成瀬作品には「残酷さ」(やましんさん言うところの「怖さ」?)が常にどこかしら顔を出しているのだが、本作でそれは特に際立っている。久しぶりに夫と二人きりの幸福な時間にはしゃぐ川辺での妻の姿。遊園地に行って家族皆で乗るティーカップの歓声。夜空に打ち上げられる花火とそれに魅入る子供たちとの切り返し。極めつけは、ラストのあまりにも美しすぎる海辺のストップモーション(プラス、林光の音楽!)。それはまるで、『ミスティック・リバー』の原作にあった最後のパレードのシーンでの、「このひと時が永遠に続いてくれれば」との願いに応えてみせたかのようだ。
なるせたろうさん [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-12-28 16:10:48)(良:1票)
なるせたろう さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2007-06-22せかいのおわり10レビュー7.77点
2007-06-15嗚呼!!花の応援団(1976)1レビュー4.40点
2007-05-29ラ・スクムーン10レビュー7.10点
2006-07-29僕のスウィング10レビュー6.53点
2005-12-28女の中にいる他人10レビュー7.10点
2005-08-18マダガスカル10レビュー5.91点
2005-06-13ミリオンダラー・ベイビー10レビュー6.91点
2005-05-20シベリア超特急10レビュー1.61点
2005-04-22かげろう(2003)10レビュー5.81点
2005-04-15キリクと魔女10レビュー7.23点
女の中にいる他人のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS