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《ネタバレ》 映画を観る前に、コーネリアス・ライアンの「遙かなる橋」を一読することをおすすめします。そうすれば"マーケット・ガーデン作戦"の概要や地名などの位置関係が把握できます。若い頃映画館で観たときは、オールスターキャストのわりに全体のまとまりがなかったなという印象でしたが、何度も見返すウチに、アッテンボローの意図がわかってきた気がしました。「プライベートライアン」にもいえることですが、最前線で戦う兵士には、上層部の立てた作戦がわかるわけもなく、命令を受けたらその通り戦うだけのことです。また、戦場が市街地である場合、民間人を巻き込んだ、非日常的な世界が展開されるのは当然のことです。V1やV2によるロンドン空襲を防ぎたいというイギリスの政治的意図に巻き込まれた、連合国兵士やオランダ市民の悲劇として観たら、この映画の目的はある程度達成されたと思うのです。アンソニー・ホプキンス演じる前線指揮官は、作戦の無謀さのために多くの部下を亡くし最後は捕虜になります。オランダのレジスタンス一家は、ドイツ軍の存在を伝える努力をしますが、最後には少年の死という結末を迎えます。そういう悲劇が繰り返される中で、随所随所にさまざまなエピソードがちりばめられているわけです。たとえば、ロバート・レッドフォード演じるアメリカ軍の決死の渡河とその無意味さ、ジーン・ハックマン演じるソサボフスキー将軍のポーランド師団の悲劇(余談ですが、実物の写真とそっくりです!)、ジェームズ・カーン演じる下士官の話、家を接収されたオランダの老婦人の話、リブ・ウルマンとローレンス・オリビエらの献身的な看護活動などなど。戦闘車両に関しては、最近の作品に比べてしまうと、ドイツ軍戦車や装甲車の描写がものたりなくて仕方ないのですが(「プライベートライアン」のタイガーI や「レニングラード」のIII号戦車、「コレリ大尉のマンドリン」のヘッツァーなどに比べて、あのレオパルドでは、「バルジ大作戦」のM47製キングタイガー(笑)と同レベルです)、そういう脇役を差し置いても、人間ドラマとして観たとき、非常に興味深いものを感じるわけです。戦争の無意味さを描いた作品として、あらためて見直す価値があると思います。蛇足ながら、あの音楽はいいですね(微笑)。overtureなどついつい口ずさんでしまいます。
【オオカミ】さん 8点(2003-01-27 21:03:24)
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