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史実をなぞりながら、三谷風のギャグを入れてみせるという作りで、近頃ありがちな漫画的にデフォルメされすぎな人物造形といい、もう少し重厚に作れなかったかという嫌いはある。密室劇を得意とする三谷をして、デリケートな政治の駆け引きをしている最中に、中庭で響くような大声で自分の野望を語らせてるのはどうなのよ、という不満点もある。しかし清須会議という史実が面白いので、それをなぞっている限りそうそう変な出来にはならない。全体に浮ついた雰囲気を引き締めていたのは、唯一現実感のある存在だった丹羽長秀(本当にもうどこからどう見ても丹羽長秀!)で、彼がいることによって政治劇としてのリアリティにある程度説得力が生まれたと思う。なんだかんだ時計に目をやらず最後まで観ることができたのは、彼のおかげ。また勝家はやや漫画的すぎるとはいえ、秀吉と対比される近視眼な脳筋具合と、単純であるがゆえのある種の可愛らしさを両立できていたし、大泉洋は、中間管理職をやっているこの年代の秀吉には、適当な軽さがあって良い出来だったと思う。史実のハイライトであり、歴史の重要な転換点である、秀吉が三法師を抱いて現れるシーン。そこに描かれる秀吉と勝家、勝者と敗者の対比。そこで観ている自分は少なからず「おお」と思ったし、その時点でこの映画は成功していると思う(そこから先の蛇足感はご愛敬か)。役者の無言の演技で見せてほしいところまで言葉にしてしまったり、正直三谷は監督には向いてないと思うけれど、史実の面白さと役者の好演に支えられて、この映画についてはなかなか良くできたものに仕上がっていると思う。
【C-14219】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-02-25 16:47:29)
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